169 :彼女と彼と雨音のもようです:2008/10/15(水) 22:16:40.51 ID:aa+xrj5lO

ミセ*゚−゚)リ 「しとしとしと」

先日の夜半頃から降り出した雨は、一向に止む気配はない。
我々が予定していたささやかな外出計画は断念せざるを得ない、と結論を付けてから既に、三時間ほど経過している。

ミセ*゚−゚)リ 「しとしとしと」

秋の長雨とはよく言ったものだ。
ノイズがかった灰色一面の空は、少なくとも約一名の気分を陰鬱にするのに一役買っているらしい。

ミセ*゚−゚)リ 「しとしとしと──……そろそろつっこんでしかるべきじゃないかなぁと私は思う」

( <●><●>) 「わざわざ雨音をリアルタイムで再現しなくても、雨が降っていることには気付いていますよ?」

ミセ*゚д゚)リ 「そーじゃないでしょ、そーじゃ。もうちょっと、こう、何かあるよね?」

私が読んでいた文庫本から目を離さずにそう答えると、彼女は口を尖らせ、不満げに述べる。
予想通りの反応に、思わず浮かびそうになる笑みを抑えるように視線を雨空に泳がせた。



171 :彼女と彼と雨音のもようです:2008/10/15(水) 22:18:24.91 ID:aa+xrj5lO

ミセ*゚−゚)リ 「雨、止みそうにないね」

( <●><●>) 「そうですね」

雨音をBGMに抑揚なく彼女は言う。

ミセ*゚−゚)リ 「お出かけ、出来なかったね」

( <●><●>) 「そうですね」

互いの声が途切れると、そこには雨音だけが取り残される。

ミセ*゚−゚)リ 「私って可愛いよね」

( <●><●>) 「どうですかね」

しばしの喧騒。
雨音は掻き消され、代わりに響くは罵声に怒声。



173 :彼女と彼と雨音のもようです:2008/10/15(水) 22:20:08.79 ID:aa+xrj5lO

ミセ*゚ぺ)リ 「ぶっちゃけ、退屈なわけですよ」

( <●><●>) 「雨の日は雨の日なりの暇の潰し方があると思われますが」

ミセ*゚−゚)リ 「そういう君はまた読書かな?」

ミセ*゚−゚)リ 「というか、晴れの日だろうが雨の日だろうか槍の日だろうが君の暇の潰し方は読書じゃないかな?」

( <●><●>) 「貴方もゲームなどで時間を潰せばよいのでは?」

ミセ*゚−゚)リ 「む……、ゲームなどと、ゲームを馬鹿にしてますね?」

( <●><●>) 「してませんよ。昨今では市民権を得た立派な趣味ですよ」

ミセ*゚−゚)リ 「いいや、絶対馬鹿にしてるね。読書に比べて薄っぺらいとか幼稚だとか思ってると見た」

ミセ*゚−゚)リ 「ゲームだってなかなかすごいんだよ? 私もやったけど、記憶力が上がる何とかトレーナーとか──」

( <●><●>) 「……またベタな」

ミセ*゚−゚)リ ?



175 :彼女と彼と雨音のもようです:2008/10/15(水) 22:23:03.63 ID:aa+xrj5lO

彼女は自分の発言の矛盾に気付いてないのか、きょとんと首をかしげている。
私が再び文庫本に目を落としたのを見ると、諦めたのか、あーあ……、とか言いながら寝転んだようだった。

( <●><●>)

ミセ*゚−゚)リ

再び、雨音だけが響く単調な時間が訪れる。
私に取っては心地よい静寂でも、彼女に取ってはそうではないのだろう。
しばらくの後、もぞもぞと起き上がり、こちらに向けて指をビシりと突きつけるのが視界の端に映った。

ミセ*゚ー゚)リ 「この空気を打破するために、特効薬の投与を提案します!」

私は目だけを彼女の方に向け、続きを促した。

ミセ*゚ー゚)リ 「お出かけ敢行」

( <●><●>) 「雨はおそらく今日中には止みませんよ?」

ミセ*゚ー゚)リ 「秋雨じゃ、濡れて参ろう」

( <●><●>) 「それは春雨です」




177 :彼女と彼と雨音のもようです:2008/10/15(水) 22:25:16.93 ID:aa+xrj5lO

( <●><●>) 「それに、春雨は霧雨であることが多く、傘をさしても意味がないからそう言ったという説もあり──」

ミセ*゚д゚)リ 「ストップ、ストップ、君が薀蓄を語りはじめると長くなるから止めて」

彼女は心底嫌そうに私の言葉を遮る。
どの道、外出向きの雨ではないのですよ、そう言って私は言葉を切った。

ミセ*゚ー゚)リ 「んじゃ、特効薬はあきらめました。カンフル剤を注入しましょう」

( <●><●>) 「カンフル剤が何かわかってて言ってますか?」

ミセ*゚ぺ)リ 「んー……、何か空気を換える清涼剤……みたいな?」

( <●><●>) 「元々は興奮剤です。循環器系のですが。どちらかと言えば立て直すことの比喩表現として──」

ミセ;゚д゚)リ 「はい、ストップ、ストップ、わかった、わかりましたから、解説いらないから」

ミセ:゚o゚)リ 「いっつも思うけどさ、君の頭の中には辞書でも詰まってんのかな? てか、ハードディスクだよね、HD」

( <●><●>) 「必要最低限の知識があるだけだと思っていますが」



178 :彼女と彼と雨音のもようです:2008/10/15(水) 22:27:23.25 ID:aa+xrj5lO

ミセ*゚−゚)リ 「春雨の話とかどこで役に立つの?」

( <●><●>) 「今、この場では多少役に立ったように思えましたが」

ミセ#゚皿゚)リ 「あー言えばこー言う……」

( <●><●>) 「そうやって理論武装することで己が身を守るのですよ」

何からさ? との問いには、何事からも、と答える。

ミセ*゚−゚)リ 「なんだかなー……。そんなに知識詰め込んでどうするの、って感じ」

( <●><●>) 「半ば、趣味のようなものですよ」

ミセ*゚−゚)リ 「ああ、そっか、普段から頭の中にハードディスクガリガリ書き込んでるんだ。

ミセ*´−`)リ 「だからその音でこの、げ〜んなりするような雨音も気にならないんだね」

( <●><●>) 「そんなところでしょうね」




180 :彼女と彼と雨音のもようです:2008/10/15(水) 22:29:19.60 ID:aa+xrj5lO

ミセ*゚ー゚)リ 「よーし、やっぱカンフル剤投与の方向で。興奮剤なんでしょ、循環器系の?」


ミセ*゚ー゚)リ 「──キスしよっ!」

    ブフーッ!
( <○><○>).・。 ’

ミセ*゚ヮ゚)リ 「うわ、君が動揺してるとこ初めて見たwww」

(;<●><●>) 「あなたは突然何を言い出すのですか? われわれはそういう関係ではなかった記憶しておりますが」

ミセ*゚ぺ)リ 「君のHDの書き換えを要求します。 ただの友達がこんな風に2人っきりでいると思いますか?」

( <●><●>) 「ただの友達でも、部屋に来て遊ぶこともあるでしょう」

ミセ*゚−゚)リ 「小難しい本ばっかり読んでないで、たまには恋愛小説とか読んでみたりしてみない?」

そうすれば、女の子の気持ちも少しはわかるかもだよ、と彼女の弁。
生憎、その手の本は趣味ではないので、御遠慮したいとこだ。

( <●><●>) 「そういう冗談は止めた方がよいですよ」

ミセ*゚ぺ)リ 「……はいはい、ごめんなさいでした」



182 :彼女と彼と雨音のもようです:2008/10/15(水) 22:31:55.18 ID:aa+xrj5lO

何度目かわからない雨音だけが全ての部屋が訪れる。
いささか過ぎた冗談をすげなく流した事が不満なのか、彼女は再び床に寝転がっている。

ミセ*゚ー゚)リ 「よくいうじゃない? タダより高いものはないって」

( <●><●>) 「……言いますね」

静かになったと思った矢先、意外に早く彼女のほうから沈黙を破ってきた。
質問の意図がつかめず、肯定の色の返事を返す。

ミセ*゚ー゚)リ 「そうすると、ただの友達も高いものなんだよね?」

( <●><●>) 「意味がわかりません。そのタダとこのただは違うでしょう」

ミセ*゚ー゚)リ 「ただはタダ、高いもんなんだよ」

ミセ*゚ヮ゚)リ 「てなわけで、お代プリーズ」

ふと気付くと、トンデモ理論を並び立てる彼女は、いつの間にか立ち上がっていた。
背後に広がる窓越しの空を見ても、現在時刻の判別が付け辛い。

そんなどうでもいい事を考えながら、1つ気になっていた事を尋ねてみる。



183 :彼女と彼と雨音のもようです:2008/10/15(水) 22:34:13.53 ID:aa+xrj5lO

( <●><●>) 「……なんで、循環器の興奮剤がキスなんですか?」

ミセ*゚ー゚)リ 「え、口と口で──」

( <●><●>) 「口は循環器ではありません」

ミセ;゚д゚)リ 「あるぇー? じゃ、じゃあ、循環器ってどんなの?」

( <●><●>) 「心臓や腎臓、脾臓などですよ。血液を循環させる──」

ミセ*゚ー゚)リ 「ああ、じゃあ、やっぱキスでいいじゃん」

ミセ*^ー^)リ 「ハートは興奮するでしょ?」

( <●><●>) 「……しません」

ミセ*゚ペ)リ 「するってば。そんなの試してみればわかるでしょ?」

( <●><●>) 「それ以前に、私はただの友達だと──」

ミセ*゚ー゚)リ 「“思ってました” 過去形。私の気持ちに気付いた今はどうかな?」

そういって微笑んだ彼女を、私の頭の中のハードディスクはどう記録しているのだろうか?




189 :彼女と彼と雨音のもようです:2008/10/15(水) 23:16:22.84 ID:aa+xrj5lO

( <●><●>) 「わかりました……出かけましょう」

ミセ*゚д゚)リ 「おお──って、えぇ?」

( <●><●>) 「御代は特効薬の方で」

ミセ;゚д゚)リ 「え、だって雨──」

( <●><●>) 「私には雨音は聞こえない仕様のようですからね」

ミセ;゚д゚)リ 「あれは比喩──」

( <●><●>) 「雨でも行ける場所はありますよ、行きましょう」

そう言って私は部屋を出る。
背後から、待って、準備が、服が、と言う彼女の発言は全て聞こえない振りで。

ミセ;゚д゚)リ 「そういうアグレッシブなキャラだったっけ?」

( <●><●>) 「……雨音というのは雨自体の音ではないんですよね」

ミセ*゚o゚)リ 「ふぇ? どういう意味?」

( <●><●>) 「ぶつかった物で音が変わるんです」




192 :彼女と彼と雨音のもようです:2008/10/15(水) 23:19:07.37 ID:aa+xrj5lO

ミセ*゚3゚)リ 「んー」

( <●><●>) 「……なんですか?」

ミセ*゚ー゚)リ 「え、今の流れ的に口と口がぶつかるための前フリじゃないの?」

( <●><●>) 「違います」

降りしきる雨は、まだまだ止む事はないだろう。
奏でる雨音は、千変万化。私に当たり、彼女に当たり、それぞれの音を紡ぐ。

互いに無音のはずの雨粒同士が当たった時は、どんな音が鳴るのでしょう?
無音と言うには多少、騒がしすぎる雨粒もありますが。

ミセ;゚ω゚)リ 「あるぇー?」

( <●><●>) 「ミセ;゚ω゚)リ←その顔、ムカつくからやめろ」


                        終 


ミセ*´ω`)リ ショボーン




お題
・雨音
・特効薬
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