- 28 :( ^ω^)あの雲の向こうへのようです:2008/11/02(日) 13:48:12.47 ID:y4fPpVbq0
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ドクン、ドクンと心臓の鼓動が自分の耳に届く。
緊張? いや高揚だ。今度こそ、僕は確実に成功させる。きっと、絶対に。
さあ、いくぞ。今こそ──
(#^ω^)「アイ キャン フラァァァァァイッ!!!」
・・・・
・・・
( ^Д^)「よお、ブーン。また落ちたのか?www」
(=゚ω゚)「よく生きてるよぉwww」
(#^ω^)「うるさいお。計算上は完璧だったお」
( ^Д^)「計算www馬鹿のお前に計算できるわけねーよm9www」
・・・・
・・・
( ^ω^)「ただいまだお」
- 29 :( ^ω^)あの雲の向こうへのようです:2008/11/02(日) 13:50:26.28 ID:y4fPpVbq0
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僕は、痛む身体を引きずり、家に帰った。
声を掛けた所で誰からも返事はないのはわかってる。
カーチャンは3年前に死んだ。トーチャンはどこに行ったかわからない。
(゚、゚トソン「おかえりなさい」
( ^ω^)「……」
(゚、゚トソン「あ、すみません。御留守のようでしたが鍵は開いておりましたので勝手に上がらせてもらいました」
( ^ω^)「ここには金目のもの何かなんもないお」
(゚、゚トソン「そのようですね」
こいつは何なんだ? うちに何か用か?
いや、わかってるだろ? 用事があるのは多分僕に。泥棒なら、僕の帰りを待たないはず。
ただ、この世で僕に用事があるやつなんていないはずだがね。
(゚、゚トソン「この辺りで飛行機を飛ばしてる方がいらっしゃると聞いてやってきました、トソンと申します」
( ^ω^)「ブーンだお。……飛行機? なんだお、それ?」
- 33 :( ^ω^)あの雲の向こうへのようです:2008/11/02(日) 13:53:34.14 ID:y4fPpVbq0
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(゚、゚トソン「空を飛ぶ機械です。ご存知ありませんか?」
こいつは既にガレージを見たんだろうな。確信を持って話しているようにしか見えない。
( ^ω^)「羽付きのことかお。……残念ながらあれは今のところ空を飛ぶ機械じゃなくて、空から落ちる機械だお」
(゚、゚トソン「図面を拝見させていただいても?」
僕は、この得体の知れない客を、何故か追い出す気になれず、ガレージから図面を持ってきて、無言で渡した。
(゚、゚トソン「……なるほど。ついでに、機体もよろしいですか?」
( ^ω^)「……落ちてぶっ壊れたばかりだから、明日回収に行くお」
(゚、゚トソン「そうでしたか。では、明日、御一緒しても?」
( ^ω^)「勝手にすればいいお」
僕はそう言って、帰るように促した。
- 35 :( ^ω^)あの雲の向こうへのようです:2008/11/02(日) 13:55:32.20 ID:y4fPpVbq0
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(゚、゚トソン「わかりました。では、おやすみなさい」
そういって、彼女は、廊下に出て、奥の部屋へと消えて行こうとした。
(;^ω^)「ちょ……、どこ行くんだお?」
(゚、゚トソン「見たところ、部屋も余っているようですし、泊めていただこうかと」
(;^ω^)「わけわかんねーお。つーか図々し過ぎるだろ」
(゚、゚トソン「明日、御一緒するならこの方が効率よくありませんか?」
結局、僕は彼女に押し切られた。変なやつ。そう思っていたが、本当は少し──
・・・・
・・・
(゚、゚トソン「なるほど、これでは飛びませんね」
翌朝、墜落場所に着くなり機体を調べ始めた彼女は、ものの5分程度でそう言って来た。
- 37 :( ^ω^)あの雲の向こうへのようです:2008/11/02(日) 14:00:03.44 ID:y4fPpVbq0
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(#^ω^)「あんたに何がわかるってんだお!?」
(゚、゚トソン「少なくとも、あの図面とこの機体との差異ぐらいは」
畜生、こいつ本当にわかってやがる。
あの図面通りに、僕が再現できていないことを。
しかし、彼女は、続けて驚くべき事を口にした。
(゚、゚トソン「まあ、あの図面自体が未完成のもののようでしたが……」
(;^ω^)「──え? ちょ、っちょと待てお。あれが未完成ってどういうことだお?」
(゚、゚トソン「言葉通りの意味です。ところどころに修正途中の個所が見られましたし、まだ書き掛けの可能性も──」
(#^ω^)「そんなことねーお! トーチャンは、トーチャンはあの図面の羽付きで──」
僕とカーチャンを捨てて去って行ったんだお
- 40 :( ^ω^)あの雲の向こうへのようです:2008/11/02(日) 14:02:05.41 ID:y4fPpVbq0
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この世界は、晴れる事のない厚い雲で覆われている。陽の光は、その厚い雲越しに届くわずかなもの。
あの雲の向こうには、青い空が広がっている。
かつて、そんな言い伝えを信じて空に飛び立った1人の愚か者がいた。
(゚、゚トソン「見たところ、貴方は技術的には素人同然ですね。
本当にこれを飛ばしたいのなら、ちゃんとした機工技師に助力を仰ぐべきです」
( ^ω^)「簡単に言うなお。これがどれだけ馬鹿げたことなのか、あんたはわかってないお」
(゚、゚トソン「この図面は理論上、完璧です。未完ですが、足りない分は腕の立つ技師なら補えるかもしれません」
( ^ω^)「た、たとえそうだとしても、こんなことに力を貸してくれる馬鹿はいやしないお」
(゚、゚トソン「頼んでみたのですか?」
答えない僕に、彼女は続ける。
(゚、゚トソン「頼んでみたのですか? それすらせずにそう仰るのでしたら、それはそれでいいでしょう。
貴方の空への思いは所詮その程度だと言うことでしょうから」
- 42 :( ^ω^)あの雲の向こうへのようです:2008/11/02(日) 14:04:13.90 ID:y4fPpVbq0
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(#^ω^)「お前に──お前に僕の何がわかるってんだお!!!」
(゚、゚トソン「わかりません。私は貴方ではないのですから」
全く怯む様子も見せず淡々と言う彼女に、僕は毒気を抜かれて立ちすくんだ。
彼女はそんな僕に、先ほどよりは柔らかい調子で言葉重ねた。
(゚、゚トソン「ですが、私は私の事はわかります」
(゚ー゚トソン「──私はこの飛行機を雲の向こうへ飛ばしたいんですよ」
・・・・
・・・
( ´_ゝ`)「なんだ、ブーンじゃないか。珍しいな」
( ^ω^)「兄者、弟者はいるかお?」
( ´_ゝ`)「いるも何も、あいつがあそこから出るわけない──」
(゚、゚トソン「こんにちは」
- 43 :( ^ω^)あの雲の向こうへのようです:2008/11/02(日) 14:06:11.65 ID:y4fPpVbq0
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(*´_ゝ`)「おいおい、ブーンさんよ、こちらのべっぴんさんは誰だよ? 紹介しろよ」
( ^ω^)「いるならいいお。勝手に上がらせてもらうお」
僕は、兄者の質問には答えず、離れの倉庫へ向かった。
トソンが兄者に捕まり、質問攻めにあってるようだが放っておく。
( ^ω^)「弟者、ブーンだお。今日は頼みがあって来たお」
(´<_` )「なんだブーン──」
( ^ω^)「弟者、僕の羽付きを飛ばすための改造を手伝って欲しいお」
僕は、弟者がこちらを向くなり土下座して頼み込んだ。
もう今日だけで何度もやってることだ。それを屈辱とか何だとかは思わなくなっていた。
(´<_` )「──顔を上げろ、ブーン。最初から全て話せ」
・・・・
・・・
- 44 :( ^ω^)あの雲の向こうへのようです:2008/11/02(日) 14:08:09.46 ID:y4fPpVbq0
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(´<_` )「まあ、確かにそんな酔狂なことに付き合う技師はいないだろうな」
弟者の言葉通り、これまで頼んだ技師には全て、けんもほろろに断られた。
(´<_` )「このご時世、一銭にもならんような仕事をしているほど暇ではないだろうし」
陽の差さない大地は、痩せて貧しい。人々は、その日の糧を得るために冷たい大地と日々格闘している。
そんな中、空を夢見る僕は異端だ。村人からの視線は冷たい。
( ^ω^)「悪かったお。この話は忘れてくれお」
(´<_` )「だが──おもしろい」
諦めて辞そうとした僕に、弟者は意外な言葉を口にした。
( ^ω^)「……弟者?」
(´<_` )「聞こえなかったか? 手伝ってやるといってるんだ」
- 46 :( ^ω^)あの雲の向こうへのようです:2008/11/02(日) 14:10:33.75 ID:y4fPpVbq0
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(*^ω^)「本当かお? 弟者──」
(´<_` )「だが、1つだけ、気に入らんことがある」
(;^ω^)「な、なんだお……?」
(´<_` )「何故真っ先に俺のとこに来なかった?」
(;^ω^)「それは……」
友達まで、冷たい視線に晒したくはなかったから。
それならいっそ、金で請け負ったと言い訳がつく、親しくない人間のとこがいいと思ったから。
(´<_` )「お前は……馬鹿だな。既に離れに引きこもって機械いじりしかしてない俺に冷たい視線なんか関係ないだろ」
そういって弟者は、シニカルな笑みを浮かべた。
- 47 :( ^ω^)あの雲の向こうへのようです:2008/11/02(日) 14:12:40.06 ID:y4fPpVbq0
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(゚、゚トソン「お話はまとまったようですね」
いつからそこにいたのかわからないが、離れの入り口の方からトソンが声をかけてきた。
( ^ω^)「トソン。うん、弟者が手伝ってくれる──」
(゚<_゚ )「ブーン、今の話は無しだ」
(;゚ω゚)「えぇぇ!!! 何でだお!?」
(゚<_゚ )「貴様、いつの間に女なぞ作りおった
(;゚ω゚)「ち、ちげーお、トソンも弟者と同じで、羽付きを飛ばすための協力者だお!」
(´<_` )「なんだそうか。ならいいや」
( ^ω^)「ん、トソン? どうかしたかお?」
(゚、゚トソン「いいえ、たいしたことではありませんが、ただ……」
- 50 :( ^ω^)あの雲の向こうへのようです:2008/11/02(日) 14:14:56.27 ID:y4fPpVbq0
-
(゚、゚*トソン「ようやく私も仲間として認めてくださったんですね」
そういって、トソンはわずかに笑みを浮かべた。笑ったトソンを見るのは、これで二度目だ。
(゚<_゚ )「ブーン──」
(;^ω^)「だからそんなんじゃねーっての!」
( ´_ゝ`)「おやおや、女性に興味のない弟者君がどうしたことやらwww」
(´<_` )「うるさい穀潰し。兄者も手伝え。無償で。24時間」
(;´_ゝ`)「ええ、俺も?」
(゚、゚トソン「ありがとうございます」
(*´_ゝ`)「大船に乗って気で任せておきたまえ。ドゥフフフフwww」
( ^ω^)(きめえwww)
僕は、ようやく空を目指すのスタート地点へ立てた気がした。
- 51 :( ^ω^)あの雲の向こうへのようです:2008/11/02(日) 14:17:00.51 ID:y4fPpVbq0
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・・・・
・・・
(´<_` )「理論上は完璧だ。機体設計も完璧。構築も完璧。整備も完璧。全て完璧」
( ´_ゝ`)「流石だよな、俺達」
(゚、゚トソン「ですが……」
空には未知の要素がある。僕達の全く知らない世界だ。こればっかりは、飛んでみないとわからない。
(´<_` )「はっきり言ってしまえば、雲を抜けられる可能性は2割、いやもっと低いか……」
( ´_ゝ`)「今までとは違って、今回は飛べることは前提だ。落ちたらおそらくは……」
( ^ω^)「そんな半端な未来予知はいらんお。飛ぶってったら飛ぶ。そんだけだお」
僕はあの日決めた、トーチャンがいなくなった日に、そしてカーチャンが死んだ日に改めて。
いつか雲を抜け、トーチャンを追うと。
- 52 :( ^ω^)あの雲の向こうへのようです:2008/11/02(日) 14:18:57.46 ID:y4fPpVbq0
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( ^ω^)「色々世話になったお」
(´<_` )「つまらん別れの挨拶はいらん」
( ´_ゝ`)「俺達が交わすのは、再会の約束の挨拶だけだ」
(゚、゚トソン「またお会いしましょう」
そういえばまだ、トソンに聞いていないことがあった。
( ^ω^)「……トソンは、何で羽付きを飛ばしたかったんだお?」
(-、-トソン「……私も、昔、雲の先を目指した人に捨てられたんですよ」
ただそれだけです、そう言って、トソンは寂しそうに笑った。
( ^ω^)「……そうかお」
- 54 :( ^ω^)あの雲の向こうへのようです:2008/11/02(日) 14:22:20.16 ID:y4fPpVbq0
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( ^ω^)「じゃあ、雲の先でそいつに会ったら何て伝えればいいかお?」
(゚、゚トソン「……」
(゚ー゚トソン「多分、貴方がお父さんに伝えたいこと同じです」
( ^ω^)「把握。この馬鹿野郎って伝えとくおwww」
・・・・
・・・
( ´_ゝ`)「そういえば、この機体のプレートは何だ? H……O……T?」
( ^ω^)「ホライゾン・オーバー・トップ号 機体の名前だお
地平線を越え、頂点を目指す、そんなかっちょいい名前だおwww」
( ´,_ゝ`)「だせえwwwwww」
(#^ω^)ビキビキ
- 55 :( ^ω^)あの雲の向こうへのようです:2008/11/02(日) 14:24:21.52 ID:y4fPpVbq0
-
( ^ω^)「んじゃ、ちょっくら行って来るお」
(´<_` )「土産、よろしく」
( ´_ゝ`)「晩ご飯までには帰ってくるのよ」
(゚、゚トソン「幸運を」
( ^ω^)「……行くお! アイ キャン──」
(#^ω^)「「「「「フラァァァァァイッ!!!」」」」(´<_` )( ´_ゝ`)(゚、゚トソン
・・・・
・・・
(゚、゚トソン「行ってしまわれましたね……」
(´<_` )「きっと帰ってくるさ」
- 57 :( ^ω^)あの雲の向こうへのようです:2008/11/02(日) 14:26:36.36 ID:y4fPpVbq0
-
(゚、゚トソン「色々とお付き合いいただき、まことに感謝しております。大した御礼もできないのですが──」
(´<_` )「友達に損得は考えない、そんなもんだろ?」
(゚ー゚トソン「……そうですね。でも、せっかくだからこれはお渡ししておきますね」
(゚<_゚ )「!!!」
(´<_`*)「ありがとう」
(゚、゚トソン「いえいえ。貴方には通ずるものがありましたので……」
(´<_` )「そうそう、あいつの本名な、内藤ホライゾンって言うんだよ。
親父さんのことがあって、その名前を名乗りたくなくて、あだ名で通してたんだよ」
(゚、゚トソン「そうなんですか……。それが何か?」
(´<_` )「あのプレート、覚えてるか?」
(゚、゚トソン「プレート? 機体の? H……O……T?」
- 58 :( ^ω^)あの雲の向こうへのようです:2008/11/02(日) 14:28:36.19 ID:y4fPpVbq0
-
(゚、゚トソン「!」
(´<_` )「そういうこと。ホライゾン、弟者──」
(゚、゚トソン「トソン……ですか」
(´<_` )「あいつはそういうやつさ。俺達と、俺達の熱い思いも一緒に乗せた──」
ホット
(゚ー゚トソン「そんなHOTプレートなんですね」
あの厚い雲の向こうに、彼はきっとたどり着くでしょう。彼は1人ではないのですから。
そしてきっと帰ってきます。私達の元へ。あの満面の笑みと共に。だから──
(゚ー゚トソン「いってらっしゃい」
おしまい
( ´_ゝ`)「……あれ?俺は?」
- 59 :( ^ω^)あの雲の向こうへのようです:2008/11/02(日) 14:30:31.97 ID:y4fPpVbq0
- ・・・・
・・・
( ´_ゝ`)「そういや弟者のやつ、トソンちゃんから何もらってたんだ? ……お、これか。本?」
「なんだい、兄さん、急に呼び出したりして……」
「ごめん……俺妊娠しちまった見たいだわ……」
「そ、そんな……、あ、あの日の……」
( ゚_ゝ゚)「これは、禁断の♂×♂……」
( <_ )「……見てしまったんだな、兄者」
( ゚_ゝ゚)「おおおおお弟者!? いいいいや、俺は何も──」
(´<_`*)「兄者……、俺は前から兄者のことが……」
( ゚_ゝ゚)「NOOOOOOOOOO!!!」
(゚、゚*トソン「オチのないお話でしたとさ」チャンチャン
ホントにおしまい
- お題
・ホットプレート
・損得は考えない
・未来予知
・「ごめん……俺妊娠しちまった見たいだわ……」
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