- 402 :川д川きみにとどけのようです:2010/01/29(金)
01:51:57.51 ID:3vlC+VJX0
僕の名はモララー。
大学2年生だ。
普通の家庭に生まれ、普通に勉強して、普通に進学した。
人生はそこそこ面白く、代わり映えのしない、それなりの毎日だ。
変わらない日々に不満はないものの、心のどこかで日常を壊してくれるような出会いに憧れている、そんな普通の健全な男だ。
ある秋の日、僕は町を歩いていて前から気になっていた定食屋に入ってみた。
普段は学食で事足るので、他の店には滅多に行かない。
でもその日は何となく気が向いて、何となくドアに手を掛けていた。
( ・∀・)つ ガラガラガラ
「いらっしゃいませー」
古めかしい扉を開け、落ち着いた店内に足を運ぶと存外若い声に出迎えられた。
店内は昼をだいぶ過ぎた時間の割には人が多い。僕は手近な席に座り、メニューを手に取る。
- 405 :川д川きみにとどけのようです:2010/01/29(金)
01:54:07.39 ID:3vlC+VJX0
(#><)「おいこら、ねーちゃん、この店は客に何てもの食わせてくれんのじゃ!」
メニューを手にした途端、あまりにテンプレートな台詞が耳に飛び込んできたので、僕は思わず顔を上げ、そちらを向いた。
その瞬間、僕の目に飛び込んできたのは──
川;д川「すみません、何か問題があったでしょうか」
( ・∀・)
僕の心を一瞬にして奪った女性の顔だった。
(#><)「何か問題がじゃねーよ、見てみぃ? この卵?」
.||
(#><)つ◎「黄身にトドの毛が入っとるやないかい!?」
(;・∀・)「デカッ!!!」
〜 川д川きみにとどけのようです 〜
- 406 :川д川きみにとどけのようです:2010/01/29(金)
01:56:16.23 ID:3vlC+VJX0
川;д 川( >< )
しまった、思わずつっこんでしまった。
難癖つけていた客と店員であろう女性の目がこちらを向く。
ここでとぼけるのも無理があるので、僕は続けるように促す事にした。
(;・∀・)「あ、すみません、どうぞ続けてください」
僕の言葉に店員さんと男は頷き、口論を再開する。
物分りの良い方々で助かった。
川;д 川(><#)
( ・∀・)「しかし……」
随分とひどい難癖をつける男もいたものだ。
あんなでかいゴミを店員さんが見落とすはずはない。
大方、店員さんが女性なのをいい事に、難癖つけてただで飲み食いしようとする不逞の輩だろう。
- 409 :川д川きみにとどけのようです:2010/01/29(金)
01:58:24.73 ID:3vlC+VJX0
.||
(#><)つ◎「見てみぃ、このトドの毛。この店はこんなものを客に食わせるつもりなんかい!?」
( ・∀・)(大体、トドの毛って何だよ……こんなところにトドが──)
川;д
川「すみません、うちのブーンが粗相をしてしまい……」
( ^ω^)オウッ?
(;・∀・)「トドいたぁぁぁぁっ!!!」
( ^ω^ )川;д 川( >< )
(;・∀・)「あ、いやその、トド……昨日やっと届いたなー、年賀状ってその思いまして……」
再び続けるようにそっと左手を出して促す。
店員さんと男、それにトドは頷いて口論が再開された。
物分りの良い方々だ。
- 411 :川д川きみにとどけのようです:2010/01/29(金)
02:00:36.18 ID:3vlC+VJX0
それはそうとして……
(;・∀・)(いや、何でトドがいんだよ……)
( ^ω^)オウッ
件のトドは状況が飲み込めてないのか、店員さんの周りをドタドタと楽しそうに回っている。
あのなつきようからするに、ブーンと呼ばれたトドは店員さんのペットか何かだろう。
色々とつっこみ所はあるが、これであの店員さんが男の難癖を突っぱねる事は難しくなった。
川;д川 ヾ(><#)ノシ
( ・∀・)
平謝りする店員さんだが、男の言葉は次第にエスカレートしていく。
店員さんの悲しげな横顔に、僕はひどく胸が痛むのを感じた。
( ・∀・)(でも……どうしようも……うん?)
- 412 :川д川きみにとどけのようです:2010/01/29(金)
02:02:44.54 ID:3vlC+VJX0
僕は改めてトドを見やる。
( ^ω^)オウッ オウッ
ずんぐりとした胴体。
もっさりとした口。
短いながらも生えかけた牙。
どこからどう見ても──
( ・∀・)「ちょっと待った!」
川;д川「え?」
(#><)「あん?」
( ^ω^)オウッ
6つの目が一斉に僕に注がれる。
僕はその目に少したじろいだが、意を決して立ち上がり、2人と1匹の方へ向かう。
- 414 :川д川きみにとどけのようです:2010/01/29(金)
02:04:54.53 ID:3vlC+VJX0
( ・∀・)「そこのあなた、今トドの毛が入ってたと言いましたよね?」
.||
(#><)つ◎「あ? 言ったがどうした? 見てみぃ、これを? どっからどう見てもトドの毛やないかい?」
川;д川「あの……」
何か言い掛けた店員さんを目で制し、僕はブーンと呼ばれたトドの方へ向かう。
( ・∀・)「なるほど、つまりあなたはそれはこのブーンの毛だと言い張るわけですね?」
( ^ω^)オウッ
(#><)「そうや、他におらへんがな」
( ・∀・)「なるほど。では何故それがトドの毛だとわかるのですか?」
(#><)「そんなもん見ればわかるがな。下町のムツゴロウさんと呼ばれたワイなら見間違えたりせんわ!」
( ・∀・)「ほう、ではその毛はトドの毛に間違いないと」
.||
(#><)つ◎「くどいわ。こいつはトドとの毛や間違いない。ワイの命賭けたるわ」
- 417 :川д川きみにとどけのようです:2010/01/29(金)
02:07:06.43 ID:3vlC+VJX0
( ・∀・)「わかりました。それはトドの毛だと認めましょう。……しかしそうなるとおかしいですね」
(#><)「何がや? 何もおかしいことあらへんがな?」
( ・∀・)「そうでしょうかね? よく見てください、このブーンを」
( ^ω^)オウッ
(#><)「なんや、どっからどう見てもトドやないかい!」
( ・∀・)「……いいえ違います」
( ・∀・)「彼、ブーンは……セイウチです」
ズバァァァン!!!
( ^ω^)オウッ?
||
- 419 :川д川きみにとどけのようです:2010/01/29(金)
02:09:16.94 ID:3vlC+VJX0
(;><)「な、なんやと……」
( ・∀・)「ご覧ください、この牙。短いながらもちゃんと生えてますよね?」
( ^ω^)オウッ
||
(;><)「ぐむぅ……」
( ・∀・)「この牙こそ、彼がセイウチである事の証です」
( ・∀・)「わかりますよね、あなたも下町のムツゴロウと呼ばれたほどの男なら?」
(;><)「クッ……」
(;><)「姉ちゃん」
川;д川「は、はい?」
- 420 :川д川きみにとどけのようです:2010/01/29(金)
02:11:26.29 ID:3vlC+VJX0
- ダンッ!
(;><)っ□「騒がせたな。釣りはいらんで」
( ・∀・)「……」
川;д川「……」
( ^ω^)オウッ
ガラガラガラッ...ピシャンッ!
(;・∀・)「ふぅ……」
何とか追い返す事が出来た。
あながち知識に自信を持っていた男だけにやばかったが、東町のムツゴロウさんと呼ばれた僕の前ではその知識が
かえって仇になったようだな。
川;д川「あ、あの……」
(;・∀・)「ああ、すみません、ついでしゃばった真似をしてしまって」
川;д川「いえ、その、でしゃばったなんて……」
- 422 :川д川きみにとどけのようです:2010/01/29(金)
02:13:43.76 ID:3vlC+VJX0
関係のない僕を巻き込んでしまって申し訳ないと彼女は言う。
でも、彼女が申し訳なく思う必要はない。
何故なら僕は……
川*ー川「ありがとうございました」
(*・∀・)
君の笑顔に恋をしたから。
僕はもう、君の関係者なのだから。
〜 川д川きみにとどのけのようです おしまい 〜
( ・∀・)b「ちなみに、セイウチにも毛はありますよ」
( ^ω^)オウッ
||
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