3 :◆iW2kGg44LU:2008/10/31(金) 22:38:46.32 ID:fCQo7WwM0

 − 第三章 夜空と私とクラスメート −

 〜 第一話 〜


おはようございます、都村トソンです。

本日は大学の入学式です。幸いにも、天候にも恵まれ、清々しい朝を迎えました。

(゚、゚トソン 「ブーン、コーヒーお願いできますか?」

( ^ω^) 「はいお」

ブーンは嬉しそうにマグカップを2つ、食器棚から取り出して、食後のコーヒーを入れる作業に取り掛かります。

あれから、コーヒーを入れる役割をブーンに任せてみることにしました。
まだ2日目ですが、一応ちゃんと入れる事はできるようになっています。

まあ、インスタントなのですが。
昨日だけで練習と称して何杯も飲まされましたし。


4 :◆iW2kGg44LU:2008/10/31(金) 22:40:54.90 ID:fCQo7WwM0

( ^ω^)つU~ 「はい、どうぞだお」

(゚、゚トソン 「ありがとう、ブーン」

私は、ブーンから受け取ったコーヒーを口に含みます。
うん、だいぶ私の好みの入れ加減に近付いてきました。

最初の頃は、すごい苦いとかすごい甘いとか極端でしたが、今はそんなことはありません。
正直に申せば、私はブーンの事をちょっとお馬鹿だと判断しておりましたが、実際はそうでもなく、
物覚えはそこまでよくはないですが、1つの事に何度も取り組む根気はあり、緩やかながらも
きちんと学習していけるということがわかりました。

まだ知らないことだらけで、目にするもの全てが新鮮だから、何度も挑戦できるのかもしれませんが、
この調子なら、その内読み書きとかも教えて大丈夫そうではありますね。

( ^ω^) 「コーヒーおいしいお」

(゚、゚トソン 「……」

……ただ、ブーンが飲んでるあれをコーヒーとは認めたくはありませんが。
いったい砂糖はいくつ入ってるんでしょう?


5 :◆iW2kGg44LU:2008/10/31(金) 22:42:45.28 ID:fCQo7WwM0

(゚、゚トソン 「さて、そろそろ出かけないといけませんね」

( ^ω^) 「お? あの、がっこうとかいうやつかお?」

(゚、゚トソン 「そうですよ。正しくは大学ですが」

( ^ω^) 「がっこう行くときは、そんなきゅうくつそうな服着て行かなきゃダメなのかお?」

(゚、゚トソン 「今日は特別です。入学式といって、今日から学校に来ていいですよ、といった祭事、まあ歓迎会ですね、
      がありますので、礼服、今着ているスーツみたいなちゃんとした服を着て行くのですよ」

( ^ω^) 「おー……。よくわからんけど、おしゃれさんだお」

(゚ー゚トソン 「ありがとう」

ブーンはテレビからもいくつか単語を覚えたりしています。
間違った意味で覚えてるものも多いので、その都度訂正してあげる必要がありますが、先ほどのは間違いではないでしょう。

他人からおしゃれなどと言われたのは初めてな気はしますが。


8 :◆iW2kGg44LU:2008/10/31(金) 22:46:19.78 ID:fCQo7WwM0

(゚、゚トソン 「それじゃあ、行ってきますけど、帰りの時間はちょっとわからないんですよね……」

( ^ω^) 「大丈夫だお。ちゃんとよい子でお留守番してるお」

(゚、゚トソン 「お腹がすいたら──」

( ^ω^) 「戸だなの食パン、れいぞうこのポテトサラダ、あとはお湯わかしてカップめんだおね?」

(゚、゚トソン 「よくできました。ちゃんとしたもの用意してなくてごめんね」

( ^ω^) 「カップめんおいしいお。食パンもはちみつぬっていいおね? ポテトサラダをのせてもいいお」

ブーンにはコーヒーを入れる時に電気ポットでのお湯の沸かし方を教えてあります。
比較的安全ですし、お湯が使えれば、色々と食生活には便利ですしね。

(゚ー゚トソン 「うん、この分なら大丈夫かな。お留守番、よろしくね」

( ^ω^)ノシ 「うんお、いってらっしゃいだお〜」

(゚ー゚トソン 「いってきます」


 〜 第一話 おしまい 〜

    − つづく −   


10 :◆iW2kGg44LU:2008/10/31(金) 22:49:08.62 ID:fCQo7WwM0

 〜 第二話 〜


部屋を出た私は、まず4階に向かいます。デレといっしょに行く約束をしているので、迎えに行くわけです。
位置取り的には、私が迎えに来てもらう方が順当なのですが、ブーンのこともありますし、理由を講じて
私が迎えに行くことにしました。

(゚、゚トソン ピンポーン

(゚、゚トソン 「……」

(゚、゚トソン ピンポーン

(゚、゚トソン 「……?」

(゚、゚トソン ピンポーンピンポーンピンポーン
ガチャ
ζ('、`*ζ 「ふぁーい……」

(゚д゚;トソン 「……」

ζ('、`*ζ 「……あれ? トソンちゃん? おはよー、早いねえ」


13 :◆iW2kGg44LU:2008/10/31(金) 22:51:14.53 ID:fCQo7WwM0

(゚、゚;トソン 「……デレさん? 今が何時かご存知ですか?」

私は、そう言いながらデレに腕時計を突き付けました。
デレは目をしばしばさせながら、しばらくそれを眺めていましたが、突然──

ζ(゚д゚;ζ 「にょわァーーーーーーー!!!」

と叫ぶと、脱兎のごとく部屋の中に引き返していきました。

(゚、゚;トソン 「えーと……」

扉は私が押さえておりましたので、現在は開いている状態、つまりは中が覗ける状態ということですが、
デレは着替えるでしょうから閉めるべきなのでしょうね。

(゚、゚トソン 「少々寒いですが、仕方ありませんね」

私は、扉を閉め、外に出て待っていようとしましたが、中からデレの、

<「ごめん! 急いで着替えるから上がって待ってて!」

との言葉に大人しく従うことにしました。


15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/31(金) 22:53:07.11 ID:fCQo7WwM0

(゚、゚トソン 「ここがデレの部屋ですか……」

いかにもデレらしい、というのは、出会って数日の私が言うのも気が引けますが、女の子らしい可愛らしい
調度品に占められています。

どこか素っ気無さのある私の部屋と大違いです。同じ間取り、同じ広さだというのに。
ペニサスさんの話だと、荷物は私の倍だったらしいですからね。
そう言われれば頷ける話ではあります。

(゚、゚;トソン 「しかし……」

私の部屋と同じ広さということは、必然的にワンルームです。
簡単に部屋の隅々まで目を通すことができます。

そして現在、デレはその部屋で着替え中なわけで……

ζ(゚д゚;ζ 「ごめんねー。マッハで着替えるからねー」

ンソト;゚、゚) 「そんなに慌てずとも、少々早めに約束しておりましたからまだ大丈夫ですよ」


16 :◆iW2kGg44LU:2008/10/31(金) 22:55:20.80 ID:fCQo7WwM0

何と言うか、まあ……見えるんですよね、ええ……。

お年頃の娘さんらしい、程よく発育されたお身体が。

同姓ですので、そう意識する必要もないのですが、何となく気恥ずかしく、うつむいてしまうと、
そこにある慎ましやかな2つの丘……一応は平地ではありません、と比較して……

ンソト; 、 )

ζ(゚ー゚*ζ 「ホント、ごめんねー、その辺適当に座って──どうかしたの、トソンちゃん?」

ンソト;゚、゚) 「いえ、別に」

ζ(゚ー゚;ζ 「何か顔が引きつってない? 具合でも悪い?」

心配するデレに、問題ない、ちょっと初めて上がる家なので緊張しているだけ、と誤魔化しておきました。
……私もまだまだ成長の余地はある……はずですよね?

うん、気にしたら負けです。他人は他人、自分は自分です。……ええ。


17 :◆iW2kGg44LU:2008/10/31(金) 22:57:21.02 ID:fCQo7WwM0

(゚、゚トソン 「──?」

少し気が落ち着くと、先ほどまでは気付かなかった違和感を感じました。
なんでしょう? 誰かに見られているような──

(゚、゚;トソン 「流石にカーテンは閉めましょうね、デレ?」

ζ(゚ー゚;ζ 「え? ああ、大丈夫だよ、ここ4階だし、誰も見てないって」

そういってあっけらかんとデレは笑いますが、一応、用心はしておくべきでしょう。
私は立ち上がり、薄いピンクの花柄のカーテンを閉めました。

ζ(゚ー゚*ζ 「ありがとね。でも、トソンちゃんは心配性だねー」

(-、-トソン 「デレはもう少し警戒心を持つべきですよ」

確かに、私は心配性ですが、デレの考えはさすがにまずいのではないかと思います。
この辺りは言い合っても平行線でしょうかね。


19 :◆iW2kGg44LU:2008/10/31(金) 23:00:14.77 ID:fCQo7WwM0

ζ(゚ー゚*ζ 「よし、着替えおしまい」

(゚、゚トソン 「お化粧はされないのですか?」

ζ(゚ペ*ζ 「うーん……、まあ、時間もないからパパっとね、髪だけでも」

さすがにお若い、まだまだすっぴんでいけるお年頃。いや、同い年なんでしょうけどね。

ζ(´д`*ζ 「さすがに朝ごはん食べてる時間はないよねー」

(゚、゚トソン 「途中でコンビニにでも寄りますか?」

ζ(゚ー゚*ζ 「ううん、いいや、たまにはダイエットってね」

そういうデレにダイエットが必要そうな要素は見当たらないように感じます。……ただ1点を除いては。

ζ(゚ー゚*ζ 「それじゃあ、いってくるね〜」

デレは、無人のはずの部屋に一声掛け、廊下に出ます。


21 :◆iW2kGg44LU:2008/10/31(金) 23:02:09.75 ID:fCQo7WwM0

(゚、゚トソン 「誰に挨拶を?」

ζ(゚ー゚;ζ 「え、お部屋に挨拶とかしない?」

(゚、゚トソン 「1人暮らしならしませんね、私はですが」

ζ(゚ー゚;ζ 「あはは、ま、まあ、クセみたいなもんだよ」

これもデレらしいと言ってよろしいのでしょうか。だいぶデレの人柄はわかってきたように思えます。
基本的に根が善良なのでしょうね。

私達は連れ立って階段を降り、マンションの外へ出ました。
デレが銀色のシンプルな腕時計をちらりと見て言います。

ζ(゚ー゚*ζ 「時間的には……ちょっとやばいかな?」

(゚、゚トソン 「そうですね、少し急ぎましょうか」

ζ(´д`*ζ 「走るのは嫌だな〜、この辺坂ばっかだし」

(゚、゚;トソン 「全面的に同意します。坂じゃなくても嫌ですが」

つい先日この辺りを駆けずり回った私は、身を持ってそのキツさを理解しています。


22 :◆iW2kGg44LU:2008/10/31(金) 23:03:59.94 ID:fCQo7WwM0

ζ(゚ー゚*ζ 「よし、じゃあ競歩で」

(゚、゚;トソン 「普通に早歩きで行きましょう」

ζ(゚ー゚*ζ 「うん、じゃあ大学へれっつごー! ここ右だっけ?」

(゚、゚;トソン 「……残念ながら左です」

私達はそれからも終始こんな感じながらも大学へ急ぎました。
デレは今までどうやって学校に行っていたのか疑問に思いましたが、本人の話だと、1度覚えてしまえば
忘れないとのこと。ただ、覚えが遅いだけらしいですが……。

(゚、゚;トソン 「しばらくはいっしょに行かないとダメそうですね……」

ζ(゚ー゚;ζ 「あはは、ご迷惑をおかけします……」


 〜 第二話 おしまい 〜

    − つづく −   


24 :◆iW2kGg44LU:2008/10/31(金) 23:06:07.72 ID:fCQo7WwM0

 〜 第三話 〜


VIP大学は小高い丘の上にあります。
……と、学校案内などには謳われておりますが、実際のところ、この辺り一帯が山を削り、
造成したような区画ですので、正しくは丘ではなく山ですね。

大学の歴史自体は古いのですが、近年、キャンパスをこちらに移したので、建物などは比較的新しく、
施設も近代的ではあります。

私達は、その歴史深いようで浅い門をくぐり、大学生としての第一歩を踏み出しました。
……などと、言えば体裁はいいですが、実際のところ、入学式に遅れないために早足で山を踏破、
息も絶え絶えで、覚束ない第一歩でした。

ζ(´д`;ζ 「ねえ、トソンちゃん、トソンちゃんは免許持ってたりしない?」

( 、 ;トソン 「そんなキャラに見えますか? デレこそ……持ってないですよね、確実に」

門をくぐり、しばらく中へ進んだ辺りでちょっと休憩、とデレが言い、近くのベンチに私達は座っていました。
自転車でも買おうかと言うデレですが、こう、坂ばかりだとそれも余り意味をなさないでしょう。
それに、帰り道が逆に怖そうです。


26 :◆iW2kGg44LU:2008/10/31(金) 23:08:01.20 ID:fCQo7WwM0

(゚、゚;トソン 「さて、式場は講堂ですよね?」

さすがに高校までとは勝手が違うでしょうから、早めに行っておかないと不測の事態に対応できません。
既に、早目と言える時間ではありませんが。

ζ(゚ー゚;ζ 「トソンちゃん、意外とタフだねー、もう息整った?」

(゚、゚;トソン 「ここであまりのんびりしている時間もなさそうですしね」

幸い、講堂までの道順は、これでもかとばかりに案内の看板やら張り紙やらがあり、迷う必要はなさそうです。
ケアがいいと言うか過保護と言うか、何にせよ、示されてる通りに講堂に向かうことにしましょう。

(゚、゚トソン 「そろそろ行きましょうか。デレ、大丈夫ですか?」

ζ(゚ー゚;ζ 「あー、うん、平気、平気」

そう言って、勢いよく立ち上がったデレですが、その反動で前に数歩よろけてしまいます。

ζ(゚ー゚;ζ 「うわっ……た──」

川д川 「キャッ──」

そして、間の悪いことに、歩いてきた1人の女性にぶつかってしまいました。


27 :◆iW2kGg44LU:2008/10/31(金) 23:10:02.76 ID:fCQo7WwM0

川д川 「ごごごごごご、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、私、ぼおっとしてて、
     すみません、すみません、すみませんんんんんんんんんんんんーーーーーーーーっ」

(゚o゚;トソンζ(゚o゚;ζ

突然、ものすごい勢いで謝罪を述べ、呆気にとられる私達を尻目に、尻餅をついたそのままの姿勢で
後退しながら去って行かれました。

(゚、゚;トソン 「……」

ζ(゚ー゚;ζ 「……ええと」

(゚、゚;トソン 「……お、お怪我はなさそうでしたね」

ζ(゚ー゚;ζ 「うん、あっという間に見えなくなっちゃったよ……」

(゚、゚;トソン 「あの体勢でよくもまあ……」

ζ(゚ー゚;ζ 「す、すごかったねー……」


29 :◆iW2kGg44LU:2008/10/31(金) 23:12:18.06 ID:fCQo7WwM0

さすが大学、すごい人もいるんもんだね、と、若干ずれた感想のデレを促し、私達は講堂へ向かいます。
先ほどの方もこの大学の生徒さんであるならば、またどこかでお会いすることもあるやもしれません。
今日の謝罪はまたその時にでも改めて……。

・・・・
・・・

講堂に着いた頃には、もう式が始まる寸前でした。
とは言え、書面を提示し、入場するだけではあったので、逆に待ち時間等なかった分、良かったかもしれません。

ζ(゚ー゚*ζ 「さすがに人いっぱいだねー」

(゚、゚トソン 「一応は中堅所の大学ですからね。規模的には中々のものでしょう」

席は学部、学科ごとにある程度は決まっていますが、その範囲内なら自由のようです。
私達は、手近な2席並んで空いている椅子に腰掛けました。

ζ(-o-;ζ 「ふー……、何とか間に合ったね」

(゚、゚トソン 「ええ、幸いなことに」


32 :◆iW2kGg44LU:2008/10/31(金) 23:16:41.64 ID:fCQo7WwM0

ζ(゚ー゚*ζ 「でも、ごめんねー、朝から色々と」

(゚、゚トソン 「まあ、大事ありませんでしたし、結果よければ、ですよ。お気になさらずに」

それって、結果的にダメだったら殴られてたりしそうだよねーと、デレが笑って言いましたが、
もちろんそういう意味ではありませんよ? デレも冗談で言ってるだけでしょう。

ζ(゚ー゚*ζ 「お昼は私がおごるよ」

(゚、゚トソン 「だから、お気になさらずとも……。今後、私が迷惑掛けることもあるかもしれませんから」

お互い様だと言うと、デレは、何かこれからも私ばっか迷惑掛けそうな気がする、と笑って言いました。
私もちょっと笑ってしまいましたが、実際にその将来ビジョンが垣間見えた気がして、引きつり笑いに変化していました。

ζ(゚ー゚*ζ 「まだ始まんないねー。入学式ってどんなことやるのかな?」

(゚、゚トソン 「式典のしおりによると、まず偉い人、学長さんですか、のお話」

ζ(゚ー゚*ζ 「ああ、まあ、最初はそんなんだよねー」


33 :◆iW2kGg44LU:2008/10/31(金) 23:18:40.67 ID:fCQo7WwM0

(゚、゚トソン 「次に、偉い人のお話。その次に、偉い人のお話。その次の次は偉い人のお話」

ζ(゚ー゚*ζ 「……」

(゚、゚トソン 「その後は偉い人のお話、そして次は偉い人のお話……」

ζ(-д-;ζ 「う、うん、わかったからもういいよ」

(゚、゚トソン 「まあ、式典などというのはこんなものでしょうね」

ζ(-д-;ζ 「寝てよっかなー……」

(゚、゚トソン 「途中で起立とかありますよ?」

ζ(゚ー゚*ζ 「その時は起こしてよ」

(゚、゚トソン 「私が寝れないじゃないですか」

ζ(゚o゚;ζ 「ええ、トソンちゃんも寝るつもりだったの!?」

冗談ですけどね。


35 :◆iW2kGg44LU:2008/10/31(金) 23:20:42.68 ID:fCQo7WwM0

退屈しそうな内容かもしれませんが、人生において1度しかない機会です。
ちゃんと聞いておくべきでしょう。何かしら得られるものがあれば幸い程度には。

そういった旨の話をデレにすると、トソンちゃんは真面目だねー、と呆れてるんだか尊敬してるだか
わからない調子で返されました。

ミセ*゚ー゚)リ 「まあ、でも、大概この手の何とか長とか付く人の話って退屈なんだけどね」

(゚、゚トソン 「否定はできませんね。時には、ご自分の経験を生かした、年長者としての含蓄を持った
      有意義なお話しを聞ける場合もないわけではありませんが」

ミセ*゚ー゚)リ 「がんちく? 有意義な話とか稀も稀でしょ。大概、がんばれとか、真面目にやれとかの一言に要約できるって」

ζ(゚−゚*ζ

(゚、゚トソン 「深い意味を内に蔵することです。若い我々にはない経験を積んでおられるはずですからね、
      こういう場に出てこられる方々というのは」

ミセ*゚ー゚)リ 「目立ちたがりなだけだよ。自尊心ってやつ? それが満足すれば何でもいいみたいな」


36 :◆iW2kGg44LU:2008/10/31(金) 23:22:49.77 ID:fCQo7WwM0

ζ(゚ー゚;ζ 「ね、ねえ……」

(゚、゚トソン 「どうしました、デレ?」

ζ(゚ー゚;ζ 「ねえ、トソンちゃん……? お知り合い?」

(゚、゚トソン 「いいえ」

怪訝な顔で聞いてくるデレに私は即答しました。
先ほどから私達の話に加わってくる、私の隣の席に座るこの方はどこのどなた様なのでしょうね?

ミセ*゚ー゚)リ 「?」

ζ(゚д゚;ζ 「ええ、普通に話してたじゃん!」

(゚、゚トソン 「たまにこういう風に勝手に話に入ってくるおっさんとかいませんか?」

ζ(゚д゚;ζ 「いるけど、この人どう見てもおっさんじゃないじゃん」

おっさんと言ったのは物の喩えです。
こういう人は世代性別関わらずいるものでしょう。要は性格の問題ですね。


38 :◆iW2kGg44LU:2008/10/31(金) 23:24:35.26 ID:fCQo7WwM0

ミセ*゚ー゚)リ 「???」

ミセ*゚ー゚)リ  (゚、゚トソンζ(゚ー゚*ζ

ミセ*゚−゚)リ

ミセ;゚д゚)リ 「誰!?」

ζ(゚ー゚;ζ 「え、いやどっちかと言うとこっちのセリフじゃ……」

ミセ;゚д゚)リ 「私の隣って佐藤さんじゃなかったっけ? あれ、佐藤さん、何か縮んだ?」

(゚、゚トソン 「佐藤さんではありませんし、ここは自由席(?)なので、隣がどうこうはないかと」

どうやら隣のお方は、知っててスルーしてた私とは違い、素で間違えてらした模様です。

ミセ;゚−゚)リ 「あれ?」

ミセ;-へ-)リ 「?」


39 :◆iW2kGg44LU:2008/10/31(金) 23:26:59.30 ID:fCQo7WwM0

ミセ*゚ー゚)リ 「あ、そっか! ここ高校じゃないんだっけ、ごめんごめん、つい……」

ζ(゚ー゚;ζ 「ええっ? どうやったらそんな間違いするの?」

……中々の大物のようですね。これは苦手なタイプかもしれません。

ミセ*゚ー゚)リ 「まあ、それはそれとして」

ミセ*゚ー゚)リ 「私は、来佐ミセリ。ええと、佐藤さんと隣の人は何て名前?」

(゚、゚トソン 「佐藤です」

ζ(゚ー゚;ζ 「トソンちゃん、あからさまなウソつかないで!」

(゚、゚トソン 「いや、関わると面倒そうなんで」

ζ(゚ー゚;ζ 「確かに変な人だけど、本人の前でさすがにそれはひどいよ」

デレも大概ひどいとは思いますが、まあ、さすがに今のは冗談が過ぎますか。


41 :◆iW2kGg44LU:2008/10/31(金) 23:28:46.83 ID:fCQo7WwM0

ミセ;゚−゚)リ 「え……と……」

ζ(゚ー゚;ζ 「あ、ごめんなさい、私、井嶺デレです。で、こっちが──」

(゚、゚トソン 「都村トソンです」

なんとも微妙な空気の自己紹介をしている間に、入学式が始まるようです。
私達は、そこで一旦おしゃべりを止め、壇上に注意を向けます。

( ´∀`)

壇上には初老の、何とも温厚そうな方が上がっておられます。
おそらくあの方が学長なのでしょう。

( ´∀`)  「──────」

話の中身に関しては……まあ、当たり障りもなく、それに対する返答を述べよと言われたら、
がんばりますとしか言えない様なお話でした。


43 :◆iW2kGg44LU:2008/10/31(金) 23:30:53.94 ID:fCQo7WwM0

その後も、何の起伏もなく入学式は続き、ふと思い立って隣を見れば……

     zzz     zzz
ミセ*-、-)リ (゚、゚トソン ζ(-、-*ζ

かく言う私も眠気を抑えるのが大変なんですけどね。

何はともあれ、これで私も晴れて大学生なんですよね。その感慨だけはわずかにありました。

、(-、-トソン 「ふぁ……ねむ……」

(゚、゚トソン 「今頃ブーンはどうしてるでしょうかね……」

ちゃんとごはん食べてますでしょうか……。
今日は帰りに何か美味しい物を買って行ってあげましょうかね。
2人で私の入学式のお祝いでもしましょうか。

その後は、取り留めない思索に耽っていたら入学式は終わっていました。


 〜 第三話 おしまい 〜

    − つづく −   


44 :◆iW2kGg44LU:2008/10/31(金) 23:32:40.22 ID:fCQo7WwM0

 〜 第四話 〜


ヽミセ*-o-)リノ 「ふぁっ……、やっっっと終わったぁー」

(゚、゚トソン 「ずっと寝てた人がやっとも何もないとは思いますが」

ζ(つ、-*ζ 「ほーんと、長かったねー」

(゚、゚トソン 「デレもですよ……」

結局2人とも、ほぼ最後まで眠っていました。懸念してた通り、途中、起立の場面もありましたが、
面倒なので2人とも起こしませんでした。この規模なら立たなくても目立ちはしなかったでしょうから。

それはそれとして……

ミセ*゚ー゚)リ 「で、これからどうすればいいんだっけ?」

ζ(゚ー゚*ζ 「確か、オリエンテーション?だっけ」


46 :◆iW2kGg44LU:2008/10/31(金) 23:34:30.26 ID:fCQo7WwM0

(゚、゚トソン 「その前に1時間ほど休憩ですね。その間に食事を取れということでしょう」

ミセ*゚ー゚)リ 「マジ? 私お腹空いてたんだよね〜。学食行こう、学食!」

ζ(゚ー゚*ζ 「私も私も! 朝食抜きだったからお腹空いてるんだ」

(-、-トソン 「あぁ……、いや、その前に──」

(゚、゚トソン 「あなたはいつまで私たちに着いて来られるのですか?」

ミセ*゚ー゚)リ 「え?」

(゚、゚トソンζ(゚д゚*ζ ソウイエバ!!!

ミセ;゚ー゚)リヾ 「私?」

(゚、゚トソン 「別に着いて来るなとは言いませんが──」

ζ(゚ー゚*ζ 「あ、言わないんだ。てっきり……」

ンソト;゚、゚) 「デレ、あなたは私をどういう風に見ているのですか?」


50 :◆iW2kGg44LU:2008/10/31(金) 23:37:17.59 ID:fCQo7WwM0

ミセ*゚ー゚)リ 「まーまー、いいじゃん、あれだよ、袖刷りあうも多少の縁?」

(゚、゚トソン 「袖振り合うも多生の縁ですね、正しくは」

そういうことが問題ではないのですが。この後、昼の休憩の行動を共にしたとしても、
その後のオリエンテーションは──

(゚、゚トソン 「まず、あなたの学部は……いっしょでしょうが、学科が違えばオリエンテーションは別ですよ?」

と言う訳で、学食へ向かう道すがら、お互いの学部等を確認いたしました。
……残念ながら同じ教育学部の人文社会課程のようですね。

つまりはクラスメートですか。

・・・・
・・・


51 :◆iW2kGg44LU:2008/10/31(金) 23:39:09.47 ID:fCQo7WwM0

私達が所属するのは教育学部。こちらはそれなりに馴染みのある名前なので、特に説明はいらないでしょう。
学科の方はあまり聞き覚えのない名前でしょうが、端的に言えば総合学科です。
教育学部ですが、教員免許は必修ではありません。一部取る事もできます。

比較的自由度が高く、人気な学科なのですが、就職が割とキツいらしいとのお話も。
自分が将来どんな仕事に就きたいかの明確なビジョンを持っていない私などには、ある種のモラトリアム期間
と考えると、それなりに適しているのかもしれませんね。

ミセ*゚ペ)リ 「学食混み過ぎ」

ζ(´д`*ζ 「しょんぼり」

(゚、゚トソン 「十分予測され得る事態だったとは思いますけどね」

今日の入学式に来ていない1年生は稀でしょう。
そしてその1年生がこの1時間の間に集中して学食に集うとなればこうなることは目に見えていました。

ミセ*゚ー゚)リ 「佐藤さん……じゃなかった──」

(゚、゚トソン 「都村です」

ζ(゚ー゚*ζ 「トソンちゃんだよ」


52 :◆iW2kGg44LU:2008/10/31(金) 23:41:15.84 ID:fCQo7WwM0

ミセ*゚ー゚)リ 「ああ、そうそう、トソンだトソン。佐藤さんだと何か違うと思ってたんだ、
       佐藤さんはもうちょっとバイんバイんだったしね」

そういってケタケタと笑う来佐さん。佐藤さんの何がバイんバイんだったか詳しく聞きたいところですが、
少なくとも貴様は他人にどうこう言えるレベルじゃないだろうと──

ζ(゚д゚;ζ 「ト、トソンちゃん? ちょっと顔が怖いんですけど……」

(゚ー゚#トソン 「そうですか? 至って普通ですが」

勝ち組は黙ってた方がよろしいのではないでしょうか、ええ。

ミセ*゚ー゚)リ 「トソンはさー、何て言うか、冷静だねー」

ζ(゚д゚;ζ 「ミセリちゃん、にぶっ!」

私達は、たわいもない話をしながら昼食をとりました。
学食は前述のごとく、混み過ぎていたので、購買でパンなどを買ってキャンパスの芝生に座っています。

スーツ姿なので、多少は気をつけないと色々とまずいですが。


55 :◆iW2kGg44LU:2008/10/31(金) 23:43:07.94 ID:fCQo7WwM0

ミセ*゚ー゚)リ 「へー、じゃあ、トソンとデレはおんなじマンションなんだ、それって何か便利そうだよねー」

ζ(^ー^*ζ 「そうだねー、便利かも」

(゚、゚トソン 「今の所、恩恵を受けた覚えはありませんが、いずれは……ないかも……」

ζ(゚д゚;ζ 「ええ、何かそれひどくない?」

本当にたわいもない話です。

(゚、゚トソン 「来佐さんもどちらかのマンションに?」

ミセ;゚ー゚)リ 「てか、ミセリって呼んで。何で私だけ他人行儀な呼ばれ方なの?」

大学生になって出来た初めての友達との。

ζ(゚ー゚*ζ 「ミセリちゃん免許とか持ってない?」

ミセ*゚ー゚)リ 「残念ながら持ってないねー」

(゚、゚トソン 「使えませんね」

ミセ;゚д゚)リ 「そんなバッサリと?」

取り留めない、明日には内容を忘れてしまいそうな会話。でも、楽しい一時でした。


56 :◆iW2kGg44LU:2008/10/31(金) 23:45:01.75 ID:fCQo7WwM0

・・・・
・・・

(゚、゚トソン 「そろそろ行きましょうか。教養棟の1Fの4号室でしたかね、オリエンテーションは」

ミセ*゚ー゚)リ 「うむ、案内せい」

ζ(゚ー゚*ζ 「よろしくね、トソンちゃん」

この方々は……。勝手に行かれて迷われるのも厄介なので、大人しく引き従えて行くことにします。
講義室での指導教官によるオリエンテーションがあるようです。

私達は当然のごとく、迷わずに教養棟の目的の教室にたどり着きます。

ζ(゚ー゚*ζ 「さすがだねー、トソンちゃん」

(゚、゚トソン 「感心するほどのことでもないんですけどね」

ミセ*゚ー゚)リ 「普通だよねー」

(゚、゚トソン 「……」


58 :◆iW2kGg44LU:2008/10/31(金) 23:46:56.46 ID:fCQo7WwM0

教室には、出席番号順に席につくように指示がありましたので、私達はそれぞれの席に別れました。
残念なことに、デレとは少し離れ、ミセリは隣で最前列です。

( ゚д゚ ) 「全員揃ってるかー?」

ほどなくして1人の男の方が教室内に入ってきました。おそらくこの方が指導教官なのでしょう。

( ゚д゚ ) 「私が君たちの指導教官のミルナだ。まあ高校までの感覚で言えば担任のようなものだ」

よろしく頼む、と、体育会系っぽい野太い声で挨拶をされました。
隣で、ミセリがボソッとこっち見んなとつぶやいたのが聞こえましたが、確かに、眼光鋭い方ですね。

数点の資料を配布した後、ミルナ先生は簡潔に今後のスケジュール、4年生までの大体の流れ、
授業の履修の仕方等を短い時間で説明されました。

その中で、私達にとっての当面の問題は授業の履修でしょうね。
話には聞いていましたが、自分で授業を選んで取るというのは初めての経験で、中々悩みどころではあります。

ミセ;゚ー゚)リ 「え? 時間割とかないの?」

(゚、゚;トソン 「あるにはありますが、その中から実際にどの授業を選ぶかは本人次第と言うことですよ」


60 :◆iW2kGg44LU:2008/10/31(金) 23:49:03.07 ID:fCQo7WwM0

途中でミセリが何とも間の抜けた質問を小声でしてきました。
私も小声で説明をしますが、最前列ですし、おそらくミルナ先生にも聞こえてると思われます。
黙認されてる様なのは、無駄話ではないと判断されたのか、いずれにしろ、少々強面の外見の割には
話のわかる先生のようです。

ミセ;゚ー゚)リ 「え? 何選べばいいの?」

(゚、゚;トソン 「名前見て自分が気に入ったのを選べばよろしいのでは?」

( ゚д゚ ) 「授業の履修については簡単には決められんと思う。この後、2年の総代、委員長みたいなもんだ、
      が話に来るとからそいつらの話を参考にするといい」

やはり私達の会話はミルナ先生には聞こえていた模様です。
やんわりと助け船を出して、私からは以上だ、と去って行かれました。

ミセ;゚ー゚)リ 「大学の授業ってそんな風なんだ……。知らなかったよ」

(゚、゚トソン 「受験前に大学の調査とかしなかったんですか?」

してないねー、とミセリ。個人的には調査以前に知っててもおかしくない知識だとは思うのですが。
小説やドラマ等でも出てくる事のある設定だと思いますし。


62 :◆iW2kGg44LU:2008/10/31(金) 23:51:00.08 ID:fCQo7WwM0

私は、少々呆れて、何とは無しに講義室内を見渡します。50人程度は収容できるほどの広さです。
このクラスの自体の人数は20名と、他の学科のクラスよりは少ないらしいです。

ふと、デレの方を見やると、先ほど渡された学生便覧を眺めています。私も目を通しておくべきで──

川д川

(゚、゚トソン 「あれは……?」

デレの後ろの席で、どこかで見かけたような顔が見えました。
私は、どこで見たかに気付くと立ち上がり、そちらへ向かいました。

ζ(゚ー゚*ζ 「あ、トソンちゃん──」

デレがどうしたの、と言う前にデレの背後を指差しました。指してから気付きましたが、指差すのは少々失礼でしたね。
と言うか、お互い前後の席で気付かないものなのでしょうか?

川д川  ζ(゚ー゚*ζ(゚、゚トソン

ζ(゚ー゚*ζ 「──あ! 朝の──かに?」

(゚、゚;トソン 「かに!?」


63 :◆iW2kGg44LU:2008/10/31(金) 23:52:54.94 ID:fCQo7WwM0

後ろの席の人物が誰かに気付いたデレが、驚いたように言いました……が、……かに?

ζ(゚ー゚;ζ 「あ、いや、シャカシャカーって蟹みたいに……」

(゚、゚;トソン 「蟹は横では?」

ζ(゚ー゚;ζ 「じゃ、じゃあ海老?」

そういう話ではないと言うか、本人の前でそれは失礼ではないかと。

川д川 「あ……?」

ずっと俯いて配布された資料に目を通しておられた後ろの方も、さすがに目の前でこれだけ騒げば不審に思われたのか、
顔を上げ、こちらを見ます。

川゚д川 「ああ──!!!」

即座にこちらのことに気付かれたのか、講義室内に響き渡るほどの音量で叫ばれました。
何事かと、室内の皆の注目が集まる中、彼女は再び、

川д川 「ごごごごごご、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、私──」

ものすごい速さで謝り出されました。今回は逃げ出されはしないようですが。


66 :◆iW2kGg44LU:2008/10/31(金) 23:54:52.44 ID:fCQo7WwM0

何にせよ、この状況は2人掛かりで苛めてるように見えなくもありませんので、何とか落ち着かせなければならないでしょう。

ζ(゚ー゚;ζ 「ちょ、ちょっと落ち着いてください!」

(゚、゚;トソン 「私達はあなたを責めに来たわけでは──」

川д川 「すみません、すみません、すみま──」

「ミセリちょーっぷ!」
ミセ*>д<)リつ)д゚川<ゲボァ

(゚д゚;トソンζ(゚д゚;ζ 「「何してんのーーー!!!」」

近付いて来るなり後ろの方の首筋にチョップを決めるミセリ。
余りに突然な事に、止める間もありませんでした。

ミセ*゚ー゚)リ 「え? いや、ちょっと落ち着かせようと……」

(゚、゚;トソン 「初対面の人間にいきなりチョップは如何なものかと」

初対面じゃなくてもダメな気がしますが、とりあえずこいつは何か色々ダメなのが今日だけでだいぶわかりました。


68 :◆iW2kGg44LU:2008/10/31(金) 23:57:06.79 ID:fCQo7WwM0

ζ(゚ー゚;ζ 「だ、大丈夫ですか?」

川д川 「うう……」

川д川 「だ、大丈夫です。取り乱しましてすみませんでした」

ケガの巧妙と言うべきか、彼女は奇跡的に落ち着きを取り戻されたようです。
それを見たミセリが、さすが私、計算通り、とかうるさいので、
次にミセリが何かやらかした時は私もチョップで鎮めようかと思います。

(゚、゚トソン 「重ね重ね失礼いたしました。あの、落ち着いてお話を聞いていただきたいのですが」

まず非礼を詫び、ミセリに頭を下げさせ、今朝のこと、こちらの不注意で転倒させてしまった事をお詫びしました。
貞子さん、彼女の名前ですが、貞子さんが仰られるには、自分も前方をよく見ていなかったから、自分が悪い、
少々人見知りが激しいのでろくに詫びもせずに失礼したとの事をでした。

ミセ*゚ー゚)リ 「少々ってレベルじゃないよねー」

(゚、゚トソン 「あなたは少し黙っててください」


69 :◆iW2kGg44LU:2008/10/31(金) 23:59:15.71 ID:fCQo7WwM0

(゚、゚トソン 「では、お互い様、と言うことで、ごめんなさい、貞子さん」

ζ(゚ー゚*ζ 「ごめんねー、貞子ちゃん」

川д川 「あ、はい、こちらもすみませんでした、デレさん、トソンさん」

ミセ*゚ー゚)リ イイハナシダナー


ガラッ
*(‘‘)* 「うぉらぁ、お前ら席に着きやがれです!」

/ ゚、。 /

そんな折、前方のドアから2人の女性が入ってこられました。
おそらく、ミルナ先生が仰られてた2年の総代の方々でしょう。
私は貞子さんに一礼して、席に戻りました。


71 :◆iW2kGg44LU:2008/11/01(土) 00:01:16.09 ID:r/lU6tuv0

*(‘‘)* 「2年のヘリカル沢近だ、よろしくしやがれです」

/ ゚、。 / 「2年の鈴木ダイオード……。よろしく……」

ミセ;゚ー゚)リ 「ちっさ! デカッ!」

隣からボソッと感想が聞こえてきました。確かに見た目、すごく背の低い先輩と高い先輩の2人です。
その感想には概ね同意ですが、流石に初対面の、それも先輩に対して失礼でしょう。
それに私とミセリの席は──

*(‘‘)* 「おい、そこのアホ面!」

最前列なんですからねえ……。

ミセ*゚−゚)リσ 「え? こいつ(゚、゚トソンですか?」

沢近先輩から指差されたアホ面は、こともあろうに私の方を指差します。

*(‘‘)* 「てめえーですよ、パセリ頭」

ミセ;゚ー゚)リ 「パ、パセリじゃなくてミセリですよ」


73 :◆iW2kGg44LU:2008/11/01(土) 00:03:03.39 ID:r/lU6tuv0

*(‘‘)* 「おう、そうですか。じゃあ、お前、1年の総代な」

ミセ;゚д゚)リ 「え?」

*(‘‘)* 「総代って名前の聞こえはいいですが、要は雑用係なんですよ。やってみてそれがわかりました」

/ ゚、。 / 「でも……教授の覚えはいい……」

*(‘‘)* 「クラスの代表として連絡係やったり、指導教官から連絡事項承ったりとかやるんですよ」

*(‘‘)* 「まあ、でも、やっぱ面倒なんで進んでやりたがる人はいねーんですよ」

畳み掛けるように説明を続ける小さい沢近先輩。大して、時折、ぽつぽつと口を挟む大きい鈴木先輩。
見た目だけではなく、性格も正反対のご様子です。

*(‘‘)* 「というわけで、毎年、総代決めるの長引くらしいんですよ」

/ ゚、。 / 「時間の浪費……」

*(‘‘)* 「だから、今回は1番目に付いたやつにやらせようと初めから決めてたんですよ」

なるほど。御二方の説明で今の流れを大体把握できました。ご愁傷様、ミセリ。


74 :◆iW2kGg44LU:2008/11/01(土) 00:05:04.90 ID:r/lU6tuv0

ミセ;゚д゚)リヾ 「えーと?」

*(‘‘)* 「で、その隣の? そうそう、あんたですよ。このアホ面の友達ですか?」

この場合、隣の、というのは確実に私のことでしょうね。
今この場におられる先輩方は2人。それから察するに、総代とは2人、あるいは正副あるのかでしょうね。
正直、ミセリ1人で総代とかやらせても不安しかありませんし……。

(゚、゚トソン 「違います」

ミセ;゚д゚)リ 「トソォーーーーン!?」

うるさいですね、親しく話しかけないで下さい。友達だと思われてしまうじゃないですか。
私は忙しいんですよ。ブーンのこととかありますし……。

*(;‘‘)* 「え、友達じゃねーんですか?」

(゚、゚トソン 「全く知らない人です」

ミセ*;д;)リ 「!!!」

/ ゚、。;/ 「何か……泣いてる……けど?」


76 :◆iW2kGg44LU:2008/11/01(土) 00:06:55.29 ID:r/lU6tuv0

<「あの……」

そんな時、後方から聞き覚えのある声がおずおずと上がりました。

ζ(゚ー゚*ζ 「私が、ミセリちゃんといっしょにやってもいいですか?」

*(‘‘)* 「おお、立候補ですか? 全然オッケーですよ。あんた気に入ったですよ、名前は?」

/ ゚、。 / 「偉い……な」

ミセ*;д;)リ 「デレー!!! 愛してるぅー!!!」

そういったわけで、1年の総代はミセリとデレに決まったわけですが……この段階で気付くべきだったんでしょうね。
この2人では確実にこちらにしわ寄せが来るという事を……。

それはまた、別のお話ですね。


 〜 第四話 おしまい 〜

    − つづく −   


78 :◆iW2kGg44LU:2008/11/01(土) 00:09:09.53 ID:r/lU6tuv0

 〜 第五話 〜


その後、明日の授業履修についてのオリエンテーションの簡単な説明と、一枚のプリントを全員に渡されました。

*(‘‘)* 「その紙は、授業の感想とか取りやすさ、取りやすさは単位のもらいやすさですよ、が記されてますですよ」

/ ゚、。 / 「先輩達から……受け継がれてる……伝統」

*(‘‘)* 「だからお前達も先輩達への感謝をその紙を次代に伝えることで表しやがれですよ」

/ ゚、。 / 「総代2人……任せた」

といった所で、先輩方のお話は終了、解散と相成りましたが、総代2人は就任の挨拶をミルナ先生にする必要がありましたので、
必然的に私は2人に付き合うことになりました。

( ゚д゚ ) 「そうか、4年間よろしく頼むぞ」

ζ(゚ー゚*ζ 「はい、がんばります」

ミセ*゚ー゚)リ 「任せてください」


81 :◆iW2kGg44LU:2008/11/01(土) 00:11:01.32 ID:r/lU6tuv0

(゚、゚トソン 「……私は関係ないのですが、1つ聞きたいことが」

( ゚д゚ ) 「ん、なんだ、都村?」

(゚、゚トソン 「2人はうちのクラス、学年の代表ということですが、留年した場合どうなるのですか?」

( ゚д゚ ) 「んー……、その場合は誰かに引き継いでもらうことになるかな」

(゚、゚トソン 「そうですか」

ミセ;゚ー゚)リ 「え、なんでこっち見て言うの?」

深い意味はありません。そうミセリに言い、私達はミルナ先生の部屋を辞しました。

・・・・
・・・

ミセ*゚ー゚)リ 「んじゃ、私はこっちだから」

ミセリは、大学とホワイトVIPの中間辺りでそう言いました。
ここからもう少し歩くらしいですが、距離的にミセリのマンションの方が大学に近いようですね。


82 :◆iW2kGg44LU:2008/11/01(土) 00:12:54.57 ID:r/lU6tuv0

ζ(゚ー゚*ζ 「あ、こっちなんだ。その内遊びに行っていいかな?」

ミセ*゚ー゚)リ 「もちろん、デレは親友だからね。いつでもオッケー! 今日の事は一生忘れないからねー」

(゚、゚トソン 「それでは、また」

ミセ*゚ペ)リ 「貴様の仕打ちも一生忘れんからな?」

ζ(^ー^*ζ 「バイバーイ」

私は再びデレと2人、帰路へ着きました。
ああいうのでもいると騒がしいですが、いないと静かでいいですね。

ζ(゚ー゚;ζ 「全くフォローしてなくない?」

(゚、゚トソン 「え?」

どうやら声に出していたようです。私としたことが……、思ったより疲れているのかもしれませんね。


84 :◆iW2kGg44LU:2008/11/01(土) 00:14:55.85 ID:r/lU6tuv0

ζ(゚ー゚*ζ 「しっかし、今日は色々疲れたね〜」

大学生としての初日。まだ、授業はありませんが、初めて体験することばかりで、気疲れするのは仕方のないことでしょう。

(゚、゚トソン 「デレには申し訳ないことしましたね」

ζ(゚ー゚*ζ 「え? 何が?」

総代の話ですよ、と言うと、デレは、私がやってみたかったから立候補しただけだよ、と笑います。
私も、デレと2人ならやってみても良かったのですがね。

ζ(´д`*ζ 「にしても、疲れたぁー……、こういう時は──」

(゚、゚トソン 「こういう時は?」

dζ(゚ー゚*ζ 「ずばり、甘いもの!」

なるほど、それには大いに同意するところですが、既に総代の挨拶等で予定よりだいぶ遅くなっています。
もうしばらくブーンを待たせても大丈夫でしょうかね?


85 :◆iW2kGg44LU:2008/11/01(土) 00:17:09.32 ID:r/lU6tuv0

(゚、゚トソン 「下の喫茶店にでも寄ってみますか? コーヒーは美味しかったですよ?」

ζ(゚ー゚*ζ 「あー、それいい──」

ζ(゚д゚;ζ 「うあ゙、そうだ、ごめん! 私、用事あったんだった! い、今何時?」

私はデレの腕を指差しました。デレは、その意味にすぐに気付き、自分の腕時計を見ます。

ζ(゚д゚;ζ 「うあちゃー、こんな時間? ご、ごめん、トソンちゃん──」

(゚、゚トソン 「お急ぎなら私の事は気にせず行って下さい。また明日、学校……いえ、部屋まで迎えに行くべきですか?」

ζ(゚д゚;ζゞ 「出来れば部屋までお願いします。ごめんねー、埋め合わせはまた今度」

(゚、゚トソン 「お気になさらず。お気を付けて」

ζ(゚ー゚*ζ 「うん、またねー」

そういってデレは走って行きました。方角的にはマンションの方ですが、1人で行かせて良かったのでしょうか?
迷ってなければよろしいのですが……。


87 :◆iW2kGg44LU:2008/11/01(土) 00:19:03.58 ID:r/lU6tuv0

(゚、゚トソン 「それにしても……」

用事……ですか。確かデレは、こちらに全く知り合いがいないようなことを言ってましたが……。
しかし、本日は入学式です。親御さんやらがお見えでも不思議はありません。
自分の所が来ないからすっかり失念してましたが、デレ辺りは親御さんがお越しだった可能性もあります。
その辺は聞いておくべきでしたね。

(゚、゚トソン 「ただ……デレならそういうことは自分から話してそうですが……」

もし、親御さんでないとしたら他に考えられるのは……。

(-、-トソン 「男性……ですか……?」

デレはモテそうな感じはします。その線も有り得る話ですね。
おっと、邪推は無粋ですね。自重しましょう。

(゚、゚トソン 「帰りますか」


88 :◆iW2kGg44LU:2008/11/01(土) 00:21:00.07 ID:r/lU6tuv0

しかし、デレの提案はちょっと魅力的でした。
折角ですから、ブーンへのお土産もかねて、どこかで甘いものでも買って帰りましょうかね。

(゚、゚;トソン 「と言ったものの、土地勘がないのは困り者ですね」

この近くにそのようなお店がありますでしょうか。ケーキ屋とか和菓子屋とか、どちらも私はいけますが。

私は、少し通学路を外れ、人通りが多そうな道へ出ました。上手いことに、商店街らしき通りのようです。

(゚、゚トソン 「あれは……」

饅頭・庶凡屋と看板が出されたお店があります。良さそうですね、行ってみましょう。

(´・ω・`) 「へい、らっしゃい。お? お嬢ちゃん、見ない顔だね? あれかい?」

入るなり気さくな感じで店員さんが話しかけてきます。垂れ下がった眉毛で気の弱そうな感じですが、
口調からはその真逆な印象が受け取れます。

あれかい? と店員さんが指をさした方角はおそらく大学のことでしょう。
この時期はそういう客も多いのでしょうね。そもそも、私もそれっぽいスーツ姿でしたし。


91 :◆iW2kGg44LU:2008/11/01(土) 00:22:54.96 ID:r/lU6tuv0

(゚、゚トソン 「あ、はい、この辺りに引っ越してきたばかりです」

(´・ω・`) 「やっぱりそうかい。この店、と言うかこの商店街の客はほとんど常連ばかりでね。
       だが、毎年この時期には新しいお客さんが来るんだよ」

快活に笑いながら店員さんは言います。
確かに、この近辺に住んでいなければ余り来ないような奥まった通りですね。

(´・ω・`) 「そういうわけだからね、新しいお客さんにはなるべく常連さんになって欲しい訳だよ」

(´・ω・`) 「申し遅れた、僕はこの饅頭・庶凡屋の店長、ショボンだよ。よろしくね」

(゚、゚トソン 「都村トソンです。御察しの通り大学生です」

(´・ω・`) 「と言うわけで、本日は都村さん限定大サービスデー。何か買ってくれたら、おまけいっぱい付けちゃうよ」

(゚、゚トソン 「私が1つしか買わなかったらどうするんですか?」

(´・ω・`) 「もちろん、おまけ付けるよ。男に二言はないからね」

なかなか面白い方のようです。私は、ここで何か買っていくことに決めました。
ブーンはどんなのが好みでしょうかね。あのコーヒーを見る限り、甘いものは好きみたいでしたが。


94 :◆iW2kGg44LU:2008/11/01(土) 00:25:38.03 ID:r/lU6tuv0

私はショーケースの中をざっと見渡します。結構な種類がありますね。

(´・ω・`) 「ああ、やっぱりこれだけあると決めかねるかな? 味見する?」

(゚、゚;トソン 「い、いえ、さすがに売り物を頂く訳には。それに、和菓子なら大体はどんなものかわかりますし」

(´・ω・`) 「でも、うちの和菓子の味はわからないだろう? ほら、遠慮しないで」

そういって、ショボンさんはいくつかの饅頭やらお餅やらをショーケースから取り出しました。
そして、お茶入れるね、と言って店の奥に入って行かれました。

(゚、゚;トソン 「えーっと……、おかまいなく?」

・・・・
・・・

(゚、゚*トソン 「どれも美味しかったです。逆にどれを買うか迷うぐらいに」

(´・ω・`) 「嬉しいこと言ってくれるじゃないの。そうそう、こっちもね、味には自信があるんだよ」


95 :◆iW2kGg44LU:2008/11/01(土) 00:27:41.17 ID:r/lU6tuv0

そういってショボンさんは新たに別の饅頭を取り出そうとします。
私は慌ててそれを制します。さすがにこれ以上はまずいでしょう。
私は、これ以上食べるとお腹いっぱいで買う必要がなくなってしまう、とショボンさんに伝えました。

(´・ω・`) 「そうかい? 小食だね」

(゚、゚トソン 「一応、女性ですので」

それは失礼した、と、ショボンさんは笑っています。
頃合でしょう。私は、買うものを決めてショボンさんに伝えます。
季節的にもこれがいいかなと思いました。

(´・ω・`) 「ほい来た。おまけも入れとくね」

(゚、゚;トソン 「先ほどの味見で十分なのですが……」

(´・ω・`) 「まあまあ、そう言わずにね」

そういってショボンさんは次々と饅頭やら餅やらを放り込んでいきます。


97 :◆iW2kGg44LU:2008/11/01(土) 00:29:33.93 ID:r/lU6tuv0

(゚、゚トソン 「何と言いますか、商売っ気が無さ過ぎませんか?」

私は、そんな気前の良すぎるショボンさんがちょっと心配になって尋ねました。

(´・ω・`) 「そうでもないよ。結局ね、こういう客商売は人との繋がりでもあるんだよ」

(´・ω・`) 「こうやって、サービスしておけばまた来てもらえる確率もあがる」

(゚、゚トソン 「確かに、私はまた来ようと思えましたが」

だろう?と、ショボンさんは愉快そうに笑います。
確かに仰られることはわかるのですが、実際に頂いてみた感想としては、

(゚、゚トソン 「この味なら、そういうの抜きでもリピーターは付きそうですけどね」

(´・ω・`) 「その評価は素直に嬉しいね。この特製ショボン饅頭はサービスだから受け取って欲しい」

(゚、゚;トソン 「明らかに買った分よりおまけのほうが多いように見えますが」

気にしない、気にしない、と、結局は終始笑顔のショボンさんに押し切られました。


98 :◆iW2kGg44LU:2008/11/01(土) 00:31:27.30 ID:r/lU6tuv0

(゚、゚トソン 「では、ありがとうございました。また来ますね」

(´・ω・`) 「ありがとうはお客さんの台詞じゃないんだけどね」

(´・ω・`) 「お買い上げありがとうございました。また来てくださいね。今度はお友達も連れて、とかね」

(゚ー゚トソン 「なるほど、商売っ気が無いと言ったのは取り消します」

(´・ω・`) 「ははは、うちは若い女性客が少ないんでね」

そう言ってショボンさんは笑いながら手を振って見送ってくれました。

(゚、゚トソン 「良い買い物でした」

また今度お伺いすることで、今日のお礼は致しましょう。お味の方も上々です。

(゚、゚トソン 「次はデレ達も誘いますか……」

ただ、おそらく私がデレ達を連れて行っても、またサービスサービスで
私たちが買うことにより発生する利益分以上をおまけに付けそうですけどね。

だから、やっぱり商売っ気は無い人なのかもしれませんね。連れて行くべきか迷います。


100 :◆iW2kGg44LU:2008/11/01(土) 00:33:52.58 ID:r/lU6tuv0

しかし、ペニサスさんといい、ショボンさんといい、この辺りの人達は気前の良い方々ばかりですね。
私は、ずっしりと重い、庶凡屋の号が入った袋を抱えてそう思いました。

まだ越してきて間もないですが、この辺り一体の穏やかな雰囲気は気に入っています。
私に水が合っているということでしょうかね。

(゚、゚;トソン 「それにしても、一人暮らしでこの量は……」

ブーンがいなかったらしばらく体重計恐怖症にかかるところですね。

……ブーンが食べなかったらどうしましょう?


 〜 第五話 おしまい 〜

    − つづく −   


101 :◆iW2kGg44LU:2008/11/01(土) 00:36:25.66 ID:r/lU6tuv0

 〜 第六話 〜


(゚、゚トソン 「ただいま」

(〃^ω^) 「おかえりだおー」

(゚、゚トソン 「少々遅くなりました。すみません」

( ^ω^) 「お? あやまることじゃないお? トソンはお勉強に学校に行ったんだお。 おつかれさまだお」

帰宅した私を、ブーンはトテトテと走ってきて迎えてくれました。部屋で誰かが迎えてくれるというのはいいものですね。

私は、普段着に着替えながらブーンに尋ねます。

(゚、゚トソン 「1人で退屈ではありませんでしたか?」

( ^ω^) 「お? たいくつしてないお」

ブーンはコーヒーを入れながら答えます。大方、テレビでも見ていたのでしょうか。
また色々とテレビで得た知識を聞かされそうです。


103 :◆iW2kGg44LU:2008/11/01(土) 00:38:52.11 ID:r/lU6tuv0

私は、ブーンに何をしていたのか聞いてみました。
しかし、ブーンは私の予想とは違う返事をしてきます。

( ^ω^) 「お空を見てたお」

(゚、゚トソン 「空……ですか?」

空とはあの空のことでしょうか? 私が窓を指差してそう聞くと、ブーンはそうだお、と嬉しそうに答えます。

( ^ω^) 「お空見てるとたいくつしないお」

( ^ω^) 「それに、お空を見てると何かを思い出しそうなんだお」

(〃´ω`) 「前にもそうやってながめてた気がするんだお」

空ですか。そう言えば、前に話してくれたブーンの記憶の中で、部屋から空が見えた、というのがありましたね。
それが何かしら、ブーンにとってのキーワードみたいなものだから覚えていたのかもしれませんね。


106 :◆iW2kGg44LU:2008/11/01(土) 00:45:22.88 ID:V61enQn9O

(゚、゚トソン 「空ですか……」

私は再び同じ言葉をつぶやき考えます。昔、ブーンは空に住んでいたとかでしょうか? ブーンは雲のように白いですよね。
そう言われれば、私といる時も、時折、窓の方をぼうっと見ているときがありましたね。
ひょっとしたら、ブーンが忘れてしまった夢は、空に関係するものだったのかもしれません。

( ^ω^) 「晴れたお空、くもったお空、雨のお空、いろんなお空の顔があるお」

空は天気によって様々にその色を変えます。

( ^ω^) 「今日はきれいな青いお空だったお。お日さまがあって、白い雲がいっぱい流れてて、いろんな形に変わったお」

同じ天気でも、季節や時間によってもその姿を変えます。
1つとして、同じ空はありません。ブーンが言うように、退屈しないだけの顔を持ち合わせているのですね。

(゚、゚トソン 「……ブーン、お腹はすいてますか?」

( ^ω^) 「すいてるお」

(゚、゚トソン 「もう少し我慢できますか?」

(;^ω^) 「お? うーん……、できる……と思うお」


108 :◆iW2kGg44LU:2008/11/01(土) 00:49:31.10 ID:V61enQn9O

今日は一日快晴でした。雲は出ていましたが、多分空が隠れるほどでもないでしょう。
ブーンはいつも割りと早く寝てしまいますので、あの空はそんなに眼にしてないはずです。

(゚、゚トソン 「じゃあ、今日は別の顔をした空を見に行きましょうか?」

(〃^ω^) 「お! どんな顔なのかお?」

(゚ー゚トソン 「それは見てからのお楽しみにしましょう」

(〃^ω^) 「おー! ワクテカだおー。わかったお、おなかガマンするお!」

私は、早速準備に取り掛かりました。準備といっても、ただ、今日の晩ご飯を外で食べられるようにお弁当にするだけですけどね。
飲み物はどうしましょうか? 魔法瓶の1つぐらいはあったはずですが、コーヒーにすべきか、お茶にすべきか──
そうそう、お茶といえばあれを忘れていました。

(゚、゚トソン 「ブーン、机の上にある紙袋にお饅頭が入ってます。全部食べたら晩ご飯食べられなくなるからダメですが、
      1つ、2つなら食べていいですよ」

( ^ω^) 「おまんじゅうってなんだお?」

(゚、゚トソン 「甘い食べ物ですよ」


110 :◆iW2kGg44LU:2008/11/01(土) 00:51:54.38 ID:V61enQn9O

その言葉に、ブーンは目を輝かせて袋をガサガサと漁り出しました。
買った方のはいっしょに持って行きましょうかね。そうなるとお茶のほうがいいようですね。

(〃^ω^) 「いろいろあるおー!」

(゚、゚トソン 「どれでもいいですよ。あ、そのパックのやつは別にしておいてください。それは後で」

私は、キッチンに立ち、お弁当の準備をしながらブーンに答えます。
ほどなくして、どれにするか決めたブーンが声をかけてきます。

( ^ω^)つ(´・ω・`) 「これにするお。おもしろい形だお」

  ブフーッ!!!
’。・. (゚д゚トソン

(;^ω^) 「ちょ、トソン、きちゃないお」

(゚、゚;トソン 「ご、ごめんなさい、つい……」


113 :◆iW2kGg44LU:2008/11/01(土) 00:54:26.34 ID:V61enQn9O

ひょっとして、あれがショボンさんが言ってた特製ショボン饅頭でしょうか……。
よりによって自分の顔って、どんなセンスですか、ショボンさん……。

そう言えば、若い女性客が少ないみたいな話をされてましたが、私は、その話を聞いて
和菓子のイメージとかの問題かと思っていましたが、このセンスが問題なのではないでしょうか?
結構似てるとは思いますが……。

( ^ω^)}ω・`) 「おいしいお、おいしいお!」

私は、おいしいと感想を述べるブーンの方は見ずに、よかったね〜と返事をしていました。

・・・・
・・・

(〃^ω^) 「きれいだおー」

(゚ー゚トソン 「そうですね、綺麗ですね」

私達はあの日、ブーンが出て行った公園に来ています。


114 :◆iW2kGg44LU:2008/11/01(土) 00:57:04.61 ID:V61enQn9O

ブーンに見せたかったのは夜空。今日は月も出ており、せっかくだからとこの公園にまで
足を伸ばしてみましたが、幸いなことに、まだ一部桜も残っていました。

(゚、゚トソン 「さあ、この辺にしましょうか」

( ^ω^) 「うんお!」

私達は、小さなレジャーシートを敷き、ささやかな花見兼、月見を始めました。

(〃^ω^) 「おにぎりおいしいお!」

端から見れば、ブーンが見えない人からは、1人で花見をしている寂しい人に見えかねませんが、
そういうのは気にしないことにします。そんな小さなことよりも、大事なことが目の前にあるのですから。

(゚、゚トソン 「一応、お水も持っては来てますが、少し肌寒いからお茶の方がいいかもしれませんね」

( ^ω^) 「お?」

(゚、゚トソン 「熱いですから、気をつけてね」


116 :◆iW2kGg44LU:2008/11/01(土) 00:59:30.80 ID:V61enQn9O

ブーンにはお茶は出したことはありません。
子供のような味覚のブーンにはどうかと思っていましたので、もっぱら水でした。
お茶もそれなりには苦いので、これにまで砂糖を入れて飲まれたら、見ている方の精神衛生に悪そうでしたので……。

( ^ω^) 「これって、トソンがたまに飲んでるやつかお?」

(゚、゚トソン 「ブーンに飲めるかわかりませんが……」

( ^ω^)旦~ 「……お、ちょっと変わった味だお。でも飲めるお」

(゚、゚トソン 「それは良かった。食後のデザートはお茶で頂きたかったですからね」

その内、コーヒーだけじゃなくてお茶もブーンに入れてもらいましょうかね。
そう言うと、ブーンは、これはコーヒーと入れ方違うのかお? 僕がやるお!と、喜んで引き受けてくれました。


・・・・
・・・

(〃^ω^) 「ごちそうさまでしたお」

(゚、゚トソン 「お粗末さまでした」


117 :◆iW2kGg44LU:2008/11/01(土) 01:02:04.18 ID:V61enQn9O

私が弁当箱やらを片付けている間、ブーンはじっと空を眺めています。

( ^ω^) 「お昼のお空とぜんぜん違うおー」

(゚、゚トソン 「そうですね、今日は月も星もあるから、まだ明るいですが、ないと真っ暗ですからね」

( ^ω^) 「つき?」

あれですよ、と私は空に浮かぶ月を指差します。

(;^ω^) 「あれはお日さまじゃないのかお?」

(゚、゚トソン 「違いますよ。あれは月といって、お日さまの代わりに夜に出るものです」

(〃^ω^) 「しらなかったお、お月さまかお。はじめましてだお」

ブーンは月に向かってぺこりとお辞儀をしています。
星は知っていたようでした。その辺の差は昔いっしょにいた人の影響でしょうか?

( ^ω^) 「お日さまは真っ白だけど、お月さまはちょっと違うお。何かいるように見えるお」


119 :◆iW2kGg44LU:2008/11/01(土) 01:04:02.96 ID:V61enQn9O

(゚、゚トソン 「そうですね。月には昔からウサギがいると言われてますね」

( ^ω^) 「うさぎってなんだお?」

耳の長い、小さな動物ですよ、と教えておきます。
今度、図書館で図鑑などを借りてきましょうかね。

( ^ω^) 「うさぎさん、会ってみたいお」

(゚ー゚トソン 「会えるといいですね」

私達は、ショボンさんのお店で買った桜餅を頬張りながら月を眺めていました。
まだまだ、ブーンには教えることがいっぱいありますね。

(〃^ω^) 「桜もちおいしいお! これ、あの桜の木になるのかお?」

(゚、゚トソン 「そういうのではありませんよ。巻いてある葉っぱはそうですが……そのままでは食べられませんよ?」

( ´ω`) 「おー……、ここに来たらいつでも食べられたりはしないのかお?」

(゚ー゚トソン 「また買って来てあげますよ」


120 :◆iW2kGg44LU:2008/11/01(土) 01:05:31.67 ID:r/lU6tuv0

夜空を見ても、残念ながらブーンは何も思い出しませんでした。
それほど期待してたわけでもありませんし、ゆっくりのんびり探していきましょう。
ブーンの記憶、ブーンの夢。

(〃^ω^)旦~ 「お茶もおいしいお」

~旦(゚ー゚トソン 「暖かいですね」

こうして、私の大学生活1日目は恙無く過ぎていきました。


 〜 第六話 おしまい 〜

    − つづく −   


122 :◆iW2kGg44LU:2008/11/01(土) 01:07:51.18 ID:r/lU6tuv0

 〜 (゚、゚トソンの日記 〜

今日から大学が始まりました。

とは言え、まだ授業はありませんし、ほとんどが準備期間のようなものです。

初日からいろいろな人との出会いがありましたが、大してつまづきもせず、無事にこなせたと思います。
問題がなかったわけではないですけどね。ミセリとかミセリとかミセリ(ry

つまづいたと言えば、デレがぶつかった貞子さん、あの方も同じクラスとは、人の縁は奇妙なものですね。

大人しそうな方ですから、私などとは性格が合うかもしれません。
明日はもっとお話してみましょうか。

奇妙といえば、ショボンさん。
饅頭は美味しかったですし、サービスも良かったんですけど、あの特製饅頭のセンスだけは……。
もう1つ入ってたのでブーンにあげました。


124 :◆iW2kGg44LU:2008/11/01(土) 01:09:58.21 ID:r/lU6tuv0

夜にはブーンと2人でお月見?お花見?に行きました。
夢を見る存在に夜更かしさせて良いのか迷いましたが、本人も楽しそうだったので良しとしましょう。

外で食べるご飯は美味しかったです。そう言えば昼も似たようなランチタイムでしたね。
ああやってわいわい食べるのは楽しいものなのだと、改めて思いました。

ブーンは夜空を見て何を思っていたのでしょうね。
私も夜空を見ていたはずですが、ずっとブーンのことばかり考えていましたね。

色々と考えるべきことはありますが、今はブーンが夢を思い出す手助けをしたいと思っています。

果たしてブーンの夢はどんなものなのでしょうね……

(゚ー゚トソン「まあ、部屋に帰ったらすぐ夢の中でしたけどね、ブーン」


 − 第三章 夜空と私とクラスメート おしまい −


   − 夢は次章へつづきます −   



番外編


132 :番外編 ◆iW2kGg44LU 2008/11/01(土) 02:59:35.04 ID:V61enQn9O

ヾミセ*゚ー゚)リノ 「とりっく・おあ・とりーと」

グハァッ!  ズビシ!
ミセ*゚д(#’。・. ⊂(゚、゚トソン

ミセメ;д;)リ 「痛! 何これ? 痛!!!」

(゚、゚トソン 「お菓子ですが?」

ミセメ;д;)リ 「お菓子!? これ大豆じゃん! 節分じゃん!」

(゚、゚トソン 「日本人ですので」

ミセ;゚д゚)リ 「そういう問題?」

(゚、゚トソン 「それよりなんですか、突然?」

ミセ*゚ー゚)リ 「いや、だってさ、他じゃハロウィン短編とかさ、季節もんやってんのに、ここ何? 春?
       季節感なさ杉じゃね?っちゅう話ですよ?」

(゚、゚トソン 「取り敢えず、春が○るたびや新○活に謝っておきなさい」


133 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2008/11/01(土) 03:02:37.84 ID:V61enQn9O

(゚、゚トソン 「むしろタイムリーに時事ネタをやれる現行の方が少ないでしょうけどね」

ミセ*゚ー゚)リ 「まあ、それはそれ。兎に角、トソンはダメダメ。もっとハロウィンらしくカボチャとかね──」

川д川 「で、では私が南瓜を……」

ミセ*゚ー゚)リ 「おお、貞ちゃんナイス!」

(゚、゚トソン 「これは……、よく味のしみこんだおふくろの味」

ミセ*;ー;)リ 「うま! このカボチャうま!!」

川д川 「お粗末さまです」

ミセ;゚д゚)リ 「うまいけど何か違ーーーーう!!!」

(゚、゚トソン 「冬至カボチャですか。ある意味季節を先取りしてますね」

ミセ;゚д゚)リ 「何でみんな純日本人なの? クリスマスとかやらない派?」


134 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2008/11/01(土) 03:06:14.03 ID:V61enQn9O

ζ(゚ー゚*ζ 「まあ、ハロウィンとかあんまりなじみないから仕方ないんじゃない?」

ミセ*゚ー゚)リ 「おお、デレちゃん! 君が最後の砦ですよー!(!←ここ重要)」

ζ(゚ー゚*ζ 「はい、すあま」

ミセ;゚д゚)リ 「ハロウィンとか季節とか一切関係ねー!!!」

ζ(゚ー゚*ζ 「たれパ○ダの好物なんだよ?」

ミセ;゚д゚)リ 「微妙に古!!! でも、やっぱりみんな純日本人!」

・・・・
・・・

ミセ;´д`)リ 「あいつらに期待した私が馬鹿でしたよ……」

    チョイチョイ
( ^ω^)つミセ;´д`)リ ?

( ^ω^) リ(゚д゚;セミ 「どちらさま!? てか、この向き苦しいんで変わってもらっていいっスか?」


136 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2008/11/01(土) 03:10:06.86 ID:V61enQn9O

ミセ*゚ー゚)リ 「え、これ、くれるんですか? ありがとうね、白い君」

( ^ω^)ノシ

ミセ*゚ー゚)リノシ

・・・・
・・・

ミセ*゚ー゚)リ 「ふふーん♪ あの子は何くれたのかな〜?」

ミセ*゚ー゚)リ □ ガサガサ
     パッ
ミセ*゚ー゚)リつ(´・ω・`)

ミセ*゚ー゚)リつ(´・ω・`)

ミセ;´д`)リつ(´・ω・`)b


おちないけど、ハッピーハロウィン( ^ω^)人(゚、゚トソン


148 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2008/11/01(土) 13:55:34.50 ID:V61enQn9O

(´・ω・`) 「……完成した」

(´・ω・`) 「ようやく新製品が完成した」

(´・ω・`)つ /´・ω・`\ 「新製品、特製ショボンプリンだ!!!」

・・・・
・・・

(´・ω・`) 「というわけで、ちょっと洋菓子にもチャレンジしてみたんだけどどうかな?」

(゚、゚トソン 「味はお宜しいかと」 }´・ω・`{

(´・ω・`) 「……何で端の方しか食べてないの?」

(゚、゚トソン 「キモいので……」

(´・ω・`) ショボーン

( ^ω^)}ω・`\ 「あまいお、おいしいお!」


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