4 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 22:56:51.37 ID:PtawDFyA0

 − 第八章 ツンと私と乙女の夢 −

 〜 第一話 〜


おはようございます、都村トソンです。

私達は久しぶりに駅前に来ています。時刻はまだ、早朝と呼べる頃合。
天気予報では晴天と謳われた五月は半ばの日曜日です。

世に言う黄金週間は、私達全員帰郷もせず、いつものような日々で終わり、
明けて人出が減った頃、全員でのお出かけを計画しました。

ζ(゚ー゚*ζ 「どうしたの、トソンちゃん? 朝っぱらから眉間にしわ寄せて」

(゚、゚トソン 「いえ、夏休みなど、帰郷の際はどうしましょうか考えてまして」

随分先の話だね〜、とデレは笑いますが、問題を先送りにしても仕方がないので、思いついた今、
指針を決めようとしていただけなんですがね。


5 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 22:57:11.13 ID:PtawDFyA0

GWに帰郷しなかったのは、もちろんブーン達のことがあるからです。
今後も、関わってくる問題なので、どうするかは決めておきたいのですが。
そういったことを、デレに話すと、

ζ(゚ー゚*ζ 「そうだねー、どうしようかなー。……うん、やっぱりいっしょに帰るかな?」

それがもっともシンプルな解決案でしょうね。
他に考えられるのは、こちらに残る人に預ける、お留守番させるですが、預けるのはまだしも、
お留守番はちょっと不安があります。不測の事態が起こった場合など、何も出来ずに後悔するのは嫌ですから、
やはり私もつれて帰るべきでしょうかね。

(゚、゚トソン 「私もそうしますか」

ζ(^ー^*ζ 「それがいいよ」

ひとまず、先のことは大体固まったので、今は目前のことでも考えましょうかね。

(゚、゚トソン 「ミセリは置いていきましょう」

ξ゚听)ξ 「そうね」


6 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 22:58:39.70 ID:PtawDFyA0

ζ(゚ー゚;ζ 「2人とも、もうちょっと待ってあげようよー」

確かに、まだ時間的な余裕はあります。ですが、ミセリの為に貴重な時間を費やすのも考え物でしょう。
折角わざわざGWを避け、人出を避けての計画です。

( ^ω^) 「トソン、もうちょっと待とうお! みんないっしょが楽しいお!」

(゚、゚トソン 「ブーン……」

ブーンは今日という日をそれはもう待ち望んでいました。いつもは朝に弱いブーンですが、
今日はもうお目々パッチリ、元気いっぱいです。

そんなブーンを待たせた挙句、こんな健気な事を言わせるとは、ミセリ許すまじですね。

ミセ*゚ー゚)リノ 「おっはよー、ごみーん、チビっと遅れちゃ──」

 ウォォォォ! ドゲシ!!! ゲファ!!
ヽノパ听)┌┛#)゚д゚)リ.・。 ’


7 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 22:59:03.41 ID:PtawDFyA0

ミセ*;д;)リ 「ちょ、ヒートちゃん? いきなり何を!?」

ξ゚听)ξ「「遅れるからよ(です)」」(゚、゚トソン

ミセ*;д;)リ 「お前らが純粋無垢なヒートちゃんを操ってんのかー!!!」

ノハ*゚听)⊂川д川 イイコイイコ

ミセ;゚д゚)リ 「貞ちゃん、お前もかー!!!」

来るなり騒々しいですね、ミセリは。私は、ミセリが来たのでようやく出発できると目をキラキラさせている
ブーンのそばに行きました。

(゚、゚トソン 「そんなに嬉しいのですか?」

(〃^ω^) 「うんお! ずっとずっと楽しみにしてんだお!」

(゚ー゚トソン 「そうですか」


10 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:00:42.84 ID:PtawDFyA0

(〃^ω^) 「トソンはー?」

ええ、そりゃもちろん、ブーンやデレ達と出かけるのですから、楽しみにしていましたよ。

私達は人数分、ブーン達の分は子供料金で切符を買いました。
意味がないようですが、人間になった時のため予行演習を兼ねて、電車は切符を買って乗るものだと教えます。
……人間になった時ですか。いえ、今は考えないようにしましょう。

ブーンやヒートちゃんは、切符自体が珍しいのか、すごくはしゃいでましたけどね。
出発段階でこんなにはしゃいでたら、着く前にへばってしまうのではないかと思えるほどに。

ミセ*゚ー゚)リ 「そいじゃ、いこっか? 出発しんこー!」

ノパ听)ノ「「おー!」」ヾ(^ω^〃)ノシ

ξ゚听)ξ「遅れてきたあんたが何で仕切ってんのよ?」

ミセ*゚ー゚)リ 「まあまあ、うちのリーダーじゃノリ悪いっしょ?」

そう言ってミセリは私の方を見ます。
ノリはともかく、私は前面に出て引っ張って行くようなキャラではないので、ミセリの言うことは一理あります。
それ以前に、私はこの集団の、いわゆるリーダーなどとか言われる様な者ではありませんし。


11 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:01:05.54 ID:PtawDFyA0

ミセ*゚ー゚)リ 「ね、お母さん?」

(゚、゚;トソン 「その呼び方は止めてもらえませんか?」

リーダーの方がまだマシかもしれませんね……。

・・・・
・・・

(゚、゚トソン 「さすがに、それほど混んでいませんね」

川д川 「連休も明けたばっかりだからね。今日は自宅でのんびり、って考える人が多いと思うよ」

期待通り、電車もガラガラでした。と言っても、乗客が全くいないわけでもないので、ブーン達の行動には
気を付けておかないといけませんね。

(〃^ω^) 「でんしゃすげーお!!! ビューンって早いお!!!」

ノハ*゚听) 「すごいぞぉぉぉぉ!!!」

ξ*゚听)ξ「ちょっと、あんたらうるさい。窓に張り付くな! 見えないでしょうが!」


12 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:01:50.74 ID:PtawDFyA0

電車に乗ったら乗ったで、3人ははまた、大はしゃぎです。
ええ、3人ともですね。ツンちゃんも興味ないフリをしながらも、瞬く間に変わる窓の外の景色に興味津々です。

ミセ*゚ー゚)リ 「うぉー、すっげー、ほらほらブーンちゃん、あれすっごい高い!」

訂正。4人でしたね。
しかし、ミセリはわかってるんですかね? ブーン達は見える人が少ないということに。
端から見れば、独りで大はしゃぎしているちょっと危険な方にしか見えないということに。

ミセ*゚ー゚)リ 「ねー、トソン!」

(-、-;トソン 「……」

ミセ*゚ー゚)リ 「お? シカト? 寝てんのか?」

こちらに話しかけないでいただけると助かるんですがね。ミセリと同類とは思われたくありませんから。

( ^ω^) 「おー? トソン寝ちゃったのかおー? おきておー。いっしょにお外見るお!」

(-、-;トソン 「……」


13 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:02:29.23 ID:PtawDFyA0

( ^ω^) 「おー? トソン? いっしょに……」

(゚、゚トソン 「……全く。はいはい、いっしょに見ましょうね」

ブーンにはかないませんね。仕方ありません、多少は割り切って行くしかないですね。
ミセリとは関わらず、ブーンに聞こえるぐらいの小声で話してればそれほど不審でもないでしょう。

ζ(゚ー゚*ζ 「トソンちゃん、ちょっと気にしすぎじゃないかな?」

私がブーンと並んで座っていると、デレが話しかけてきました。先ほどの私の応対を見ていたのでしょうか。
ブーンは膝立ちで窓の外を眺めて、時折、おーとか感嘆の声をあげています。

(゚、゚トソン 「……ですかね?」

ζ(゚ー゚;ζ 「反論しないトソンちゃんはそれはそれで怖いなぁ……」

(゚、゚;トソン 「どういう意味ですか」

周りを見れば、ヒートちゃんを膝に乗せてお話している貞子、ツンちゃんと何やら熱心に窓の外について
語り合っているミセリがいます。


14 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:04:38.26 ID:PtawDFyA0

2人はごく当たり前に振舞っています。人の目とか、そういうものを全く気にしないのも問題ですが、
私は逆に、気にしすぎかもしれません。

そのせいでブーンとのお出かけが楽しめないのなら、全くの本末転倒だと言うのに。

ζ(^ー^*ζ 「まあ、でも、トソンちゃんぐらいは気にしてくれてる人がいないと、ここにいる愉快な仲間達は
       ブレーキ付いてなかったりする子ばっかりだからねー」

と、デレは私の心内を見透かしたような事を言い、わずかに微笑みます。
自分も釣られて微笑んでしまうような、自然な笑顔です。

(゚ー゚トソン 「……まあ、好きにさせてもらいますよ」

今大切なのは、ここにいる人達との時間です。それをわかっているなら、私は間違わないでしょう。
私は、ブーンといっしょに電線に泊まる鳥を数えたりして目的地までを過ごしました。


 〜 第一話 おしまい 〜

    − つづく −   


16 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:07:04.52 ID:PtawDFyA0

 〜 第二話 〜

( ^ω^)ノ 「とーうちゃーくだお!」

時間にして1時間と少々、さほど長くはない電車の旅は終了いたしました。
そこからさらに徒歩で10分ほど。私達は目指す目的地へと到着しました。

ノパ听) 「おお……、ここが!」

ミセ*゚ー゚)リ 「我々が目指したパラダイス」

ミセ*゚∀゚)リノハ*゚听)(〃^ω^)「「「動物園だ(お)!!!」」」

そうです、私達はかねてからのブーンが行きたがっていた動物園に来ています。
街中から少し離れた郊外にあるこの動物園は、それほど規模は大きくないですが、
一通りの動物はいるらしいとのことなので、ブーン達にも満足してもらえるのではないでしょうか。

ちなみに/ ゚、。 /先輩からの情報です。*(‘‘)*先輩は動物園などは守備範囲外だそうです。


17 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:08:18.83 ID:PtawDFyA0

(゚、゚トソン 「……」

ξ゚听)ξ 「な、何よ……」

(゚、゚トソン 「いえ、あそこにいるのがツンちゃんなら微笑ましいんですけど、ミセリでは……」

ミセリのテンションは留まるところを知らず、現地に着いて更にハイになっている模様です。

川д川 「まあ、ミセリちゃんもすごーく楽しみにしてたからね」

何でも、あんまりそういう場所行ったことないんだって、と、貞子談。
そういったことなら仕方ない面もありますが、もう少し、大人の自覚を持って欲しいところですね。

ζ(゚、゚*ζ 「うーん、動物くさ!」

ξ;゚听)ξ 「それが動物園に着いた感想の第一声なの?」

(゚、゚トソン 「さて、そろそろ行きましょうか」


18 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:09:04.76 ID:PtawDFyA0

先ほどからしきりにブーンがこちらを気にしています。
早く中に入りたくて仕方がないのでしょうね。ヒートちゃんも似たようなものです。
あれから、ヒートちゃんもブーンの影響で、動物図鑑を読んでいましたからね。

ヾ(〃^ω^)ノシ 「トソーン、早く行こうおー!」

(゚ー゚トソン 「はいはい」

・・・・
・・・

(〃^ω^)つ□ 「ういーん」ガチャ

私達は、電車と同じく全員分の入場券を買いました。幸いにも入場ゲートは自動だったので、ブーン達の入場券も
不都合なく通せました。
職員さんがいたらどうやって渡そうかと悩んでましたけど、杞憂だったようですね。

ツンちゃんは、タダで入れるのにわざわざ……、と呆れてましたが、なるべくなら、ブーン達にはより多くの事を
経験させてあげたいですからね。


19 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:11:42.69 ID:PtawDFyA0

(゚、゚トソン 「さて、どういった順番で回るかですが」

ヾ(〃^ω^)ノシ 「うさぎさーん!」

ノハ*゚听) 「何かでっかいやつがいいぞぉぉぉぉぉ!!!」

ミセ*゚ー゚)リ 「ライオン! ライオン!」

(゚、゚;トソン 「まあ、意見が揃うとは思ってませんでしたが

そう言う私をお構いなしに、3人はお互いが見たいものの良さを主張しあっています。
と言いますか、ミセリはブーン達と同レベルで争うのはどうかと思いますね。

川д川 「爬虫類とか……」

ζ(゚д゚;ζ 「うえ!? 貞ちゃんそういう趣味?」

川д川 「え? 結構、可愛くない? あの、ヌメヌメっとした感じとか、ウロコとか」

ノパ听)∩ 「……」


22 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:12:09.49 ID:PtawDFyA0

正直、爬虫類とかはご勘弁願いたいのですが……。
そんな貞子の言葉に、ヒートちゃんはじっと自分の手を見つめています。

ζ(゚ー゚;ζ 「ヒ、ヒートちゃんは今のままで十分可愛いから、ウロコとかいらないと思うよ?」

ノハ*゚听) 「そ、そうか? で、でも、ウロコあったらもっと可愛くなれるかな?」

ξ;゚听)ξ 「止めなさいよ、バカ。ちょっと想像しちゃったじゃない」

取り敢えず、全く決まる気配も決める気配も感じられないので、順路通り回る事を提案します。
幸いに、全てを回り切るぐらいの時間は余裕でありますから、のんびり参りましょう。

・・・・
・・・

ノハ*゚听) 「おお! でっかいぞぉぉぉぉ!」

(〃^ω^) 「おはな長いお! 大きいお!」

ξ*゚听)ξ 「わー……」


23 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:12:37.33 ID:PtawDFyA0
・・・・
・・・

ノハ*゚听) 「おお! これもでっかいぞぉぉぉぉ!」

(〃^ω^) 「くび長いお! お空にとどきそうだお!」

ξ*゚听)ξ 「わぁー……」

・・・・
・・・

ノハ*゚听) 「おお! かっこいいぞぉぉぉぉぉ!」

(〃^ω^) 「お毛けがふさふさだお! あくびしてるお!」

ξ*゚听)ξ 「うわぁー……」

3人とも、終始こんな感じで大はしゃぎです。
ついつい、動物よりも3人の方を見てしまいます。


24 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:13:45.84 ID:PtawDFyA0

ミセ*゚ぺ)リ 「私も3人に並んで反応してるんだけどねー?」

(゚、゚トソン 「そんなもの、視界から意図的に外してるに決まってるじゃないですか」

ミセ*゚ー゚)リ 「トソンもちょっとは、ライオンの前とか行って、キャッ! こわーい! みたいな反応してみ?」

ζ(゚ー゚*ζ 「ミセリちゃんがやると殺意すらわくね」

川д川" コクッ

ミセ;゚д゚)リ 「デレ!? 貞ちゃん!?」

そんなもの、私がやったら空気が凍りつくに決まってるじゃないですか。
私がそう言うと、皆は神妙な顔で、うんと頷きました。……ええ。

(〃^ω^) 「トソーン、こっちこっち! あそこにちっちゃいライオンさんがいるおー!」

(゚、゚トソン 「はいはい、どこですか?」


25 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:14:37.39 ID:PtawDFyA0

ノハ*゚听) 「貞子、あれ! あれ! なんかぐわーって!」

川д;川 「ヒートちゃん、あんまり乗り出すと落ちる!」

ζ(゚ー゚*ζ 「……」

ξ*゚听)ξ 「……? な、何よ?」

ζ(^ー^*ζ 「何でもないよ。ライオンさん、結構可愛いね」

ξ*゚听)ξ 「そ、そうね。なかなかいい面構えよね」


ミセ*゚ー゚)リ ポツーン


ミセ*゚−゚)リ 「ま、みんな楽しんでるからいいよね……」


27 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:16:35.06 ID:PtawDFyA0

ミセ*゚−゚)リ 「無い物ねだりしてもしょうがないんだけどね。……でも、やっぱり」

ミセ − )リ 「羨ましいな……」


(゚、゚トソン 「何してるんですか、ミセリ? 置いていきますよ?」

(〃^ω^)ノシ 「ミセリー、次のカバさんとこまで競走するおー!」

ミセ*゚ー゚)リ

ミセ*゚∀゚)リ 「競走だとぉ? このミセリ様にかなうとでも──って、待った、まだ早い! って、置いてくなー!」


 〜 第二話 おしまい 〜

    − つづく −   


28 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:17:04.82 ID:PtawDFyA0

 〜 第三話 〜


私達は、午前中に目一杯園内を回りました。そんなに急がなくても良かったのですが、
ブーンたちが張り切っていたので、結果的にそうなりました。
午後からは、各自が見たいところを別れて回ろうかという話になっています。

その前に取り敢えずはお昼ご飯です。
各人がお弁当を持ち寄るということになっていたのですが……。

川д川 「さあ、召し上がれ」

(〃^ω^) 「おおー! すげーいっぱいだおー!」

ノハ*゚听) 「おぉぉぉぉぉぉ!」

ξ;゚听)ξ 「どこにこれだけ持ってたって話よね」

貞子……、張り切り過ぎです。何重も重ねられた重箱に、彩り豊かなおかずが所狭しと並べられています。
朝から貞子の大荷物に気付いてはいましたが、まさかこれほどとは。


29 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:18:42.94 ID:PtawDFyA0

川ー川 「動物園の職員さんが預かってくれたの。これだけ持って回るのは大変だろうって。助かっちゃった」

ミセ*゚ー゚)リ 「それは下心ありだな、若い男性職員と見た」

川д川 「残念ながらおじいちゃんでした」

(゚、゚トソン 「これではこちらのお弁当を出すのも気が引けますね」

そう言いつつも、私はブーンといっしょに作ったお弁当を取り出しました。
和食は貞子に任せるつもりで、ちょっと路線を変えてサンドイッチです。これならブーンでも作れますから。

ノハ*゚听) 「サンドイッチだぁぁぁぁぁ!」

(〃^ω^) 「僕も作ったんだお!」

川д川 「すごいね、ブーンちゃん! 私にも1つ頂戴ね」

(〃^ω^) 「うんお! いっぱいあるから大丈夫だお!」


31 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:20:43.04 ID:PtawDFyA0

ζ(゚ー゚;ζ 「……ああ、ブーンちゃんまでちゃんとしたものを。いっそ出さないでおこうかな……」

ξ゚听)ξ 「デレのは出さない方がいいかもね。割と切実に」

ζ(;、;*ζ 「ひど! 一応がんばったんだよ?」

ξ゚听)ξ 「そんなの知ってるわよ。私も手伝ったでしょうが」

そう言いながら、ツンちゃんがデレの手さげ袋からお弁当を取り出します。
全体的に黒っぽいのは、おにぎりに巻かれた海苔が多めなだけだと思いたい所ですが。

ノハ*゚听)  「ちょっと焦げてるけどうまそうだぞ!」

ミセ*゚ー゚)リ 「まあまあ、上出来上出来。さ、出揃った所で食べよっか」

(゚、゚トソン 「……」

ミセ*゚ー゚)リ 「何かな? トソンちゃん?」


32 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:21:41.70 ID:PtawDFyA0

( ^ω^) 「おー? ミセリのお弁当はどんなんだお?」

ノハ*゚听)+ キラキラ

ミセ;゚ー゚)リ 「お、お弁当!? あーあー、あの! お弁当、お弁当ね……」

私がつっこむまでもなく、ブーン達の純粋な目に見つめられ、ミセリはしどろもどろです。
ミセリが目で何かを訴えかけてきますが、私はそ知らぬ顔でデレと話をしています。

ミセ;゚ー゚)リ 「お弁当お弁当……ええと、お弁当ね……」

(〃^ω^)+ノハ*゚听)+ キラキラwktk

ミセ;_ _)リ 「──ごめん! 忘れた!!!」

( ´ω`)ノハ´凵M)

やはりですか。大方、貞子が大量に持ってくる事を予測しての計画的犯行でしょうね。
私は予期していましたが、ブーン達が目に見えてがっかりしています。


33 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:24:33.21 ID:PtawDFyA0

(゚、゚トソン 「まあ、忘れたものは仕方がないでしょう。ブーン、ヒートちゃん、ミセリ以外のお弁当で
      十分ありますから、それで我慢してくださいね」

ζ(゚ー゚*ζ 「さあ、食べようか」

川ー川 「ほら、2人とも」

( ^ω^) 「お! 食べるお!」

ノパ听) 「よぉし、お昼ご飯だぁぁぁぁぁ!」

ξ゚听)ξ 「6人分にしても多過ぎるくらいよ」

気を取り直してお昼ご飯にしましょう。貞子の料理はだいぶ食べ慣れましたが、こういった晴れの日の料理は
初めてです。いつもにもまして豪華で、何から箸をつけようか目移りしてしまいますね。

(〃^ω^) 「このからあげ、おいしいお! いつものとちょっと味が違うお」

川д川 「そこに気付くとはなかなかブーンちゃんの舌も侮れないね。下味の調合をちょっと変えてあるんだよ」


34 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:25:00.93 ID:PtawDFyA0

ξ゚听)ξ 「あんたは何でもそつなくこなすわね」

ツンちゃんがサンドイッチをパクつきながら私に言います。

(゚、゚トソン 「そのサンドイッチは私じゃないですよ」

ξ;゚听)ξ 「う、うそ!? これをブーンが?」

ツンちゃんが食べているのはポテトサラダサンド。
驚かれるのも無理はないかもしれませんね。私も少し驚いてますし。
じゃがいもを茹でるのは私がやりましたが、味付けなどはブーンのオリジナルです。

ノハ;;) 「うまい! うまいぞぉぉぉぉぉ!!!」

ζ(゚ー゚*ζ 「ヒートちゃん、こぼしてるよ。ごめんね、ちょっと焦げちゃって」

デレのお弁当も、焦げてるのは一部の表面だけみたいですね。私も少し頂きましょうか。
デレの料理を食べるのは初めてかもしれません。
ツンちゃんの話しだと、2人の時はレトルトとか既製品がほとんどらしいです。
私か貞子がいると、料理はどちらかの役目になりますし。


37 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:27:28.91 ID:PtawDFyA0

ミセ;゚ー゚)リ 「あの……、私奴の分は……」

その声に何か言いかけたブーンの口を、私はおにぎりで塞ぎます。
ブーンはもごもご言っていますが、私は気にせず食事を続けます。

ミセ;゚ー゚)リ 「ええーっと……その……」

川д川「「パクパク、もぐもぐ」」ζ(゚д゚*ζ

ミセ;゚ー゚)リ 「お、お詫びと言ってはなんですが……」

しばらく無反応の私たちの前を右往左往した後、そう言ってミセリが取り出したのは、大量のお菓子と何故かバナナでした。

ξ*゚听)ξ+(〃^ω^)+ノハ*゚听)+ キラキラ

どうやら3人のお許しは出たようですね。私は無言でお箸を渡します。

ミセ*-人-)リ 「へへー、恐れ入りますだ、お代官さまー」

(゚、゚トソン 「次からはちゃんとよろしくお願いしますよ?」


38 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:28:10.10 ID:PtawDFyA0

わかってるわかってると、軽い調子で言うミセリですが、本当にわかっているのでしょうか?
ブーン達に、約束は破ってもいいものだと誤解されかねません。

などと考える私は、やはり固すぎるのでしょうかね。

(゚、゚トソン 「さあ、ブーン、お菓子は後ですよ? ご飯ご飯。まだまだありますからね」

(〃^ω^) 「はーいだお! ミセリ、僕が取ってあげるお!」

ミセ*;ー;)リ 「ブーンちゃんは優しいなぁー」

ζ(゚ー゚*ζ 「えい!」

(;^ω^) 「ちょ、デレ、骨とか乗せちゃダメだお」

川д川 スッ

(;^ω^) 「お? いつの間にかトマトのヘタが乗ってるお?」

ミセ;゚д゚)リ 「おーまーえーらーっ!!!」


39 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:29:10.62 ID:PtawDFyA0

やれやれ、ミセリ1人で相も変わらず騒がしいことですね。

(゚ー゚トソン

・・・・
・・・

食事も終わり、私達は食後のお茶を飲みながら、午後の予定を話し合っています。
私は、ブーンが行きたい場所に行くつもりなので、特に行き先は考えていませんが。

(;^ω^) 「それ僕のおかしだお! ツン、ひどいお!」

ξ゚听)ξ 「うるさいわね。男のくせにいちいち細かいのよ」

またあの2人は言い争ってますね。最初の頃は、ツンちゃんに言われるままのブーンでしたが、
最近はちゃんと自分の考えを伝えられるようになってきています。だから逆に揉めたりもするのですが。
仲がいいほど、とは言いますが、ホントに飽きないものです。

ζ(゚ー゚*ζ 「ねえ、ここってまだ行ってないんじゃない?」

そう言ってデレが、園内の案内パンフレットを差し出してきました。


44 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:31:17.58 ID:PtawDFyA0

(゚、゚トソン 「どこですか? ふれあい……動物広場?」

確かにここには行ってませんね。順路に入ってませんでした。

川д川 「あ、小動物に触れるみたいだね。トカゲとかヘビとかかな?」

ミセ;゚д゚)リ 「そういうのを小動物とは言わない」

(゚、゚;トソン 「その系統はせいぜい亀ぐらいでしょうね……」

貞子の発言は置いておいて、ここならブーンは大喜びしそうですね。
そう言えば、日頃の観察の結果、どうやらブーン達の姿は犬や猫など動物からは見えている節がありました。

ここならうさぎも触れるかもしれませんね。

(#^ω^) 「なにすんだお!」

ξ#゚听)ξ 「なによ!」


45 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:31:50.76 ID:PtawDFyA0

……あら? 今日は珍しく2人とも引きません。どうしたのでしょう?
いつもなら、ツンちゃんが引くなり説き伏せるなりしてくれるのですが、今日はどうにも様子が違います。
これは止めた方がいいかもしれませんね。

(゚、゚トソン 「2人ともその辺で──」

バシャッ!!!

( 、 トソン 「……」

何でしょう? 何かが顔にかかりました。
私が、それがツンちゃんが持っていたジュースだと気付いた頃には既にブーンが──

(#`ω´) 「トソンに何すんだお!!!」

バシン!!!

ツンちゃんを叩いた後でした。

ξ )ξ 「あ──」


47 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:32:19.18 ID:PtawDFyA0

その場がまさに水を打ったような静寂に包まれました。
デレも貞子もミセリも、立ちすくんで動けません。
最初にヒートちゃんと出会った時以来、ブーンが暴力を振るうようなことはありませんでした。

(゚、゚トソン 「ブーン! 女の子を叩いてはダメです!」

私は、濡れた顔はそのままで、ブーンを叱ります。
私のために怒ってくれたことはわかっています。でも、友達を、女の子を叩くのはよくありません。

(;^ω^) 「!」

ξ )ξ

(; ω ) 「……お」

(゚、゚トソン 「ブーン?」

( ;ω;) 「何でだお!? 何で僕がトソンに怒られるんだおー!」

ブーンは泣きながら走って行きました。突然の事に、私は全く身動きが取れませんでした。


48 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:32:49.96 ID:PtawDFyA0

ミセ;゚д゚)リ 「トソン!」

(゚、゚;トソン 「は!?」

ミセリの怒鳴り声で私は我に返りました。慌ててブーンを追いかけようとしましたが、その腕をデレに掴まれました。

ζ(゚д゚;ζ 「待って! ブーンちゃんは私が! トソンちゃんはツンちゃんを──」

気付けばツンちゃんもいません。しかし何故私が──

ζ(゚−゚;ζ 「お願い!!!」

(゚、゚;トソン 「──わかりました。ブーンをよろしくお願いします」

私は、デレの真剣な目を見て大人しく従い、ツンちゃんを探しに走り出しました。


 〜 第三話 おしまい 〜

    − つづく −   


49 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:33:55.28 ID:PtawDFyA0

 〜 第四話 〜


私は、ツンちゃんを探して園内を走り回りました。
ツンちゃんの居場所に当てはありません。ツンちゃんがどの動物を見たがってたか記憶にありませんでした。
ツンちゃんは何も言ってなかった気もします。

走りながら、今日は何故ツンちゃんがいつもみたいに引いてくれなかったのか考えていました。
しかし、その考え自体が間違っていることに気付くのは、さほどの時間を必要としませんでした。

( 、 ;トソン 「私は──馬鹿ですか──」

ツンちゃんは、ブーンやヒートちゃんに比べてしっかりしています。
何も言わなくても日常的に、2人の面倒を見てくれてたりしました。

でも、やっぱり、ブーンと同じ夢見で、私たちに比べれば子供のようなものなんです。

それは今朝の電車や、動物を見る様子を見ていればわかる事でした。
ブーンやヒートちゃんと同じ様に、ツンちゃんもはしゃいでいたんですから。


50 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:34:30.19 ID:PtawDFyA0

今日は、ブーンやヒートちゃんが待ち望んでいたお出かけの日です。
同じ様に、ツンちゃんも待ち望んでいたのではないでしょうか?
今日は、特別な日でした。いつも、ではありません。ツンちゃんが舞い上がっていたとしても、それは無理のないことです。

それ以前に、私達は、ツンちゃんに大人でいる事を期待しすぎていました。

( 、 ;トソン 「どこですか、ツンちゃん?」

私は、以前ブーンを探して走り回った時の事を思い出してました。
あの時ブーンはどうして公園にいたのでしょうか?

・・・・
・・・

ξ )ξ

( 、 ;トソン 「いた!」

ξつ;)ξ 「……トソン?」


52 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:37:38.52 ID:PtawDFyA0

私が、ツンちゃんを見つけられたのは、タダの偶然に過ぎません。
ツンちゃんは、あまり人気のあるとは思えない、シマウマの前にいました。

結局、私はツンちゃんが何を見たがっていたのかわからず、当てもなく走り回って辿り付きました。

ξつ听)ξ 「何であんたがここにいんのよ? ブーンのとこに行きなさいよ」

振り向いたその顔には、涙が浮かんでいたように見えましたが、次の言葉の前には、もう消えていました。

(゚、゚;トソン 「ブーンはデレに任せました」

ξ゚听)ξ 「そっか、デレか……」

その言葉には、なぜか納得した響きがありました。デレじゃなくて私が来たことに、失望されるかとも思ってはいたのですが。

(-、-;トソン 「ごめんなさい」

ξ゚听)ξ 「何であんたがアタシに謝んのよ。アタシがあんたか、あんたがブーンにってのならわかるのに」

私は、走りながら考えていた事を正直に話して、その事について謝ったと説明しました。
話しながら、正直に話す事は結局ツンちゃんに大人の対応を求めているのではないのかと思いましたが、最後まで話しました。


54 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:38:05.58 ID:PtawDFyA0

ξ゚听)ξ 「……馬鹿ね」

(゚、゚トソン 「そうですね」

ξ゚听)ξ 「アタシはアタシ。自分がしたいようにしてるだけ。それが大人に見えるなら、アタシが大人なだけよ」

やっぱりあんたが謝るような話じゃない。だから馬鹿だ、ツンちゃんはそう言いました。そして、ジュースをかけてごめん、とも。

ξ゚听)ξ 「……ねえ、トソン、あんたの夢って何?」

私が掛ける言葉が選べず、何も口に出せずにいると、ツンちゃんがそう問いかけてきました。

(-、-トソン 「……」

ξ;゚听)ξ 「な、何でそんないきなり露骨に落ち込むのよ?」

走り回って疲れてるだけ、そう誤魔化そうとも思いましたが、ツンちゃんは誤魔化しきれないでしょうね。

(-、-トソン 「最近気付いたんですよ。私はブーンの夢を探してあげたい、叶えてあげたいと言いながら、その実、
       自分の夢はわからないということに」


55 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:38:23.20 ID:PtawDFyA0

私の言葉に、ツンちゃんは黙って耳を傾けます。

(-、-トソン 「ひょっとすると私は、自分の夢をブーンの夢に置き換えて、ブーンの夢を叶えることで自分の夢からは、
       未来からは逃げようとしてるのではないかと」

ξ゚听)ξ 「夢なんて、ないなら探せばいいだけでしょ?」

(゚、゚;トソン 「簡単に言いますね?」

簡単に言おうが、難しく言おうが、結局やることは変わらないでしょうが、とツンちゃんは言います。
その通りです。その通りではありますが……。

(゚、゚トソン 「その、変わらないであろうやる事が、私にはわからないんですよね」

何故こんな話になってるのでしょう? 私はツンちゃんを探しに来たはずです。
子供であるツンちゃんの話を大人として聞きに来たはずです。

ですがこれでは──


57 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:40:10.83 ID:PtawDFyA0

ξ゚听)ξ 「しょうがないんじゃない? あんただってまだ子供なんだし」

(゚、゚トソン 「え?」

ξ--)ξ 「あんたさ、自分がいくつか言える?」

それはもちろん。大学に現役で合格し、現在、在学1年目です。
つまり──

(゚、゚トソン 「ああ、子供ですね」

ξ゚听)ξ 「わかんないことだってあるわよ。大学に行ってんのだって、それを探すためでもあるんでしょうが?」

ああ、そうですね……、私はツンちゃんを大人扱いしていたのと同様に、私自身を──

ξ*゚听)ξ 「あんたはさ、何か……似てんのよね……」

(゚、゚*トソン 「そうですね、似てるのかもしれませんね……」

私は、不意に笑い出したくなりました。いえ、実際に笑っていました。
何事かと目を丸くしていたツンちゃんも、途中からいっしょに笑っていました。


58 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:41:44.37 ID:PtawDFyA0

ひとしきり笑って、私達は並んでシマウマを見ていました。

(゚、゚トソン 「……お手数をおかけしました」

ξ゚听)ξ 「……アタシの夢はさ」

ツンちゃんは私の言葉には答えず、独り言のような調子でつぶやきました。
私は黙って言葉の続きを待ちます。あまり清々しいとは言えない風が私たちの間を吹き抜けます。

ξ゚听)ξ 「……さん」

(゚、゚トソン 「え?」

ξ*゚听)ξ 「だから、その、アタシの夢は……さん」

ツンちゃんが夢の話をしているのはわかっています。ですが、肝心の部分が良く聞き取れません。
私が、怪訝な顔をしていると、通じてないことがわかったのか、ツンちゃんは多少語意をを強めて言います。

ξ///)ξ 「アタシの夢はお嫁さん! いつか白馬に乗った王子様が迎えに来てくれることよ」


59 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:42:08.21 ID:PtawDFyA0

(゚、゚トソン 「……」

ξ///)ξ 「ナシ! 今のやっぱりナシで!!!」

私が、何も言えずにポカンとしていると、ツンちゃんは慌てたように語った夢を否定し始めました。

(゚ー゚トソン 「……素敵な夢ですね」

ξ///)ξ 「……え?」

(゚ー゚トソン 「女の子らしくて、素敵な夢です」

ξ///)ξ 「…………うん」

本当に、素敵な夢です。かわいらしくていいですね。
そんな素敵な夢を、否定しないで胸を張って語って欲しいです。

まあ、恥ずかしいのはわかりますが。私も一瞬、頭が真っ白になりましたし。
でも、素敵だと思いますよ、本当に。


62 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:44:04.48 ID:PtawDFyA0

ξ゚听)ξ 「……アタシたちの夢はさ、いつから見てるのかわからないのよね」

私は、柵の中を優雅に歩くシマウマを眺めながらツンちゃんの話に耳を傾けました。

ξ゚听)ξ 「この夢が、いつどこで見つけたのか、いつから持っているのか、アタシにはわからない」

夢見は、夢を忘れることはない。ドクオさんの言葉ですが、そう言えば、いつから夢を持っているのかは聞いていませんでしたね。

ξ゚ー゚)ξ 「でも、これがアタシの夢なのよね。それだけは本当。だからアタシはこの夢を叶えるの」

そう言って、ツンちゃんは微笑みました。私も微笑み返し、叶えましょう、と一言応じました。

ξ;゚ー゚)ξ 「でも、この話は他の奴らには内緒よ? 特にミセリ」

(゚ー゚トソン 「ええ、わかってますよ」

特にミセリ。私も、そう返事をしました。

ξ゚听)ξ 「さて、じゃあ戻って謝りましょうか」

(゚、゚トソン 「え?」


63 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:44:29.69 ID:PtawDFyA0

ξ--)ξ 「ブーンにアタシが謝んなきゃ、あんたがいつまで経ってもブーンと気まずいでしょうが」

ツンちゃんはやっぱりツンちゃんです。いつもの調子に戻ると、すぐに周りのこと、私達の事を第一に気にしてくれます。

(゚、゚トソン 「まあ、ブーンは何とかなりますよ。確かに、いきなり怒ってしまった私も悪いんですがね」

でもやっぱり、平気で女の子をぶつような子にはなって欲しくないですから。
子供のケンカだと思えば、そんなに目くじらを立てるような事でもないのかも知れませんが。

(゚、゚トソン 「ですが、私の予想だと、ブーン&デレコンビは……」

私は、自分の予想をツンちゃんに話します。ツンちゃんも、ああ、あり得るわ、と納得されたようです。

(゚、゚トソン 「ですから──」

ξ゚ー゚)ξ 「そうね──」

私達は、2人で手をつないで、相談しながら歩き出しました。


64 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:44:44.13 ID:PtawDFyA0

(゚、゚トソン 「そういえばなんでシマウマだったんですか?」

ξ゚听)ξ 「ここには馬ってこれだけしかいないからよ」

(゚ー゚トソン 「色数が多いですよ?」

ξ゚ー゚)ξ 「ゾウやキリン見てるより、可能性はあるかもでしょ?」

(゚ー゚トソン 「そうですね」

ξ゚ー゚)ξ 「そうよ」

私達は顔を見合わせて笑い合いました。


 〜 第四話 おしまい 〜

    − つづく −   


67 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:46:51.55 ID:PtawDFyA0

 〜 第五話 〜


ξ--)ξ 「「ごめんなさい、ブーン」」(-、-トソン

私達が皆の所へ戻ると、ブーンとデレも既に戻ってきていました。
ブーンは泣きやんではいましたが、パッと見でわかるくらいしょんぼりしていました。

私とツンちゃんの2人は、そんなブーンの顔を見るなり謝りました。

ξ゚听)ξ 「さっきのは私が悪かったは。あんたのお菓子取ってごめんね」

(゚、゚トソン 「あなたが私のためにツンちゃんに怒ってくれたのに、いきなり怒ったりしてごめんなさい」

(;^ω^) 「おー? おー?」

恐らく予期していなかった状況に、ブーンはどうしていいかわからずオロオロしています。
デレの方に助けを求めるように視線を向けますが、当のデレは、私の方に、そう来たか、といった表情を向けています。


69 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:47:08.42 ID:PtawDFyA0

ξ゚听)ξ 「というわけだから」

(゚、゚トソン 「ブーン、私達を許してくれますか?」

(;^ω^) 「おー? おー? おー? おー?」

多分、デレは自分がやった事を後悔しているであろうブーンに、まず謝ってしまえ、とアドバイスしたはずです。
ですから私達は、それよりも前に謝る事にしました。

その結果、ブーンは自分がやる事を取られて、どうしていいかわからずうろたえています。

ちょっと意地悪でしたかね? ツンちゃんがこっそりと微笑みながら私を突付きます。
そろそろ助け船を出してやれということでしょう。

(゚ー゚トソン 「ブーン? あなたが思っている事を言ってみてください」

(;^ω^) 「お……? おー……」

ブーンはそれでもしばらくうろたえていましたが、やがてゆっくりと口を開きました。


71 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:48:08.25 ID:PtawDFyA0

( ´ω`) 「ツンに僕のおかし取られて、トソンがひどいことされて、それで怒ったら僕が怒られて……」

ブーンはたどたどしく、言葉に詰まりながらも思いを口にします。

( ´ω`) 「僕は悪くないと思ったお。でも、あのおかしのは僕のじゃなくてミセリのだお。みんなでわけて食べるものだったお」

その思いは純粋で、

( ´ω`) 「ツンをたたいたのもダメだったお。いつもらんぼうはしちゃいけないってトソンに言われてたお。僕は約束を守らなかったお」

真摯な物でした。

( ;ω;) 「だから、僕が悪かったんだお。ごめんなさいだお」

(゚、゚トソン 「本当にごめんなさい、ブーン。悪いのはあなたじゃなくて──」

ξ゚听)ξ 「ま、それじゃ納得しないだろうからね。私も悪かったし、トソンも悪かった。そしてブーン、あんたも悪かった。
       みんながちょっとずつ、悪かった、ううん、間違っただけよ。それでいいでしょ? だから──」


72 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:48:30.88 ID:PtawDFyA0

( ;ω;) 「お?」

ξ゚ー゚)ξつ 「仲直り」

そういってツンちゃんはいつかのように手を差し出します。
ブーンはしばらくその手を見詰め、ようやくその意味を思い出したのか、

ξ゚ー゚)ξつ⊂(^ω^〃)

いつかと同じように2人で握手をしました。

ブーンの目からは涙は消え、いつもの晴れやかな笑顔が浮かんでいました。

・・・・
・・・

ヾ(〃^ω^)ノシ 「うさぎさんだおー!!!」

ノハ*゚听) 「ちっこい動物がいっぱいだぁぁぁぁぁ!!!」

ξ*゚听)ξ 「うわー」


75 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:50:12.71 ID:PtawDFyA0

すっかり元気になったブーンとツンちゃん、それと、事の成り行きをハラハラしながら見守っていたヒートちゃんは、
今は3人仲良くふれあい動物広場で小動物と戯れています。

ζ(゚ー゚;ζ 「うわ、ヤギいるよヤギ、意外とデカっ!!!」

川д川 「……亀さんすべすべ」

ミセ;゚д゚)リ 「ちょ、痛! 突付くな! 噛むな! ちょ、トソン、ヘルプ!!!」

そして大人3人、いえ、大きな子供3人もそれぞれに小動物と戯れています。
かく言う私も、大人しい猫を抱いていたりするのですが。

ξ゚听)ξ 「何で猫なのよ。もっと普通じゃ触れない動物もいるでしょうに」

(゚、゚*トソン 「猫もあんまり触れないですよ? 大概、野良猫は寄って来ないですし」

猫ぐらいなら今度触らしてあげるわよ、近所の野良とは仲いいし、と、ツンちゃん。
すっかりいつもの調子に戻ったツンちゃんですが、野良猫と仲がいいのは初耳です。

私は、猫をゆっくり降ろすと、ブーンの所へ歩いていきました。


78 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:51:05.61 ID:PtawDFyA0

(〃^ω^) 「トソーン! うさぎさん! うさぎさん!」

(゚、゚;トソン 「意外と大きいですね……」

(〃^ω^) 「お月さまから来たのかおー? うは、はねたお! 待っておー!」

ブーンはうさぎを追って走り出しました。釣られてヒートちゃんもいっしょに走って行きました。
私がツンちゃんの方を見ると、ツンちゃんは1つ肩をすくめて走り出しました。

3人はいっしょに、それは楽しそうにうさぎを追いかけています。

ξ*゚听)ξノハ*゚听)(〃^ω^)

私は、その姿をいつまでも見ていたいと心から願いました。

(゚ー゚トソン

・・・・
・・・


79 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:51:44.33 ID:PtawDFyA0

(〃-ω-)ミセ*-д-)リノハ--)ξ--)ξ

楽しかった動物園での1日は終わり、私達は帰りの電車の中にいます。
ブーン達は、遊び疲れたのか、座席に付くとすぐに眠ってしまいました。
何気にミセリも混じってるのが腹立たしいですが、置いていこうにも、ブーンたちを起こすと、
ミセリまで起きてしまう位置で寝ているのが余計に腹立たしいですね。

川ー川 「お疲れさま」

(゚、゚トソン 「お疲れさまはみんなも同じですよ。ミセリ以外」

ζ(゚ー゚*ζ 「トソンちゃん、走り回ったから疲れたでしょ?」

それはデレも同じでは、と聞くと、何でも、デレはブーンの行き先が大体わかったから走ってはいないらしいです。
確かに、ブーンの行き先は私でも予測は付きましたが、何だか不公平ですね。

(゚、゚トソン 「何故私にツンちゃんを?」

ζ(゚ー゚*ζ 「ん? 何でかなー? 何となく……かな? でも、それはトソンちゃんの方がわかったかもじゃない?」


80 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:52:51.02 ID:PtawDFyA0

そう言ってデレは笑いました。言っている事の意味はよくわかりませんが、なんとなくわかる気もするのは、
私が実際にツンちゃんと沢山の事を話せたからでしょうか?

ツンちゃんの夢、そして今はまだない私の夢。
デレや貞子、そして一応ミセリの夢も、その内聞いてみましょうか。

私は、ブーンのそばに寝顔を眺めに行きました。

ξ--)ξ 「……ありがとね、探しに来てくれて」

(゚、゚トソン 「……え?」

てっきり眠っているものだと思っていたツンちゃんが、私に話しかけてきます。

(゚ー゚トソン 「いえ、友達として、当たり前でしょ?」

ξ--)ξ 「……そうね」

目を閉じたまま、表情を変えないツンちゃんですが、きっと喜んでいるのだろうというのはわかりました。


82 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:56:25.67 ID:PtawDFyA0

ξ--)ξ 「アタシとしたことが、ちょっと浮かれてたのかもね」

浮かれてた、それはつまりツンちゃんも、今日の動物園行きが楽しみだったということでしょう。
私もですよ、そう短く答えて、軽く微笑みました。

ツンちゃんは、見えているのか、またほんの少し、表情が和らいだ気がします。

私は、丁度良い機会なので、ツンちゃんに気になっていた事を聞いてみました。

(゚、゚トソン 「そう言えば、何故ツンちゃんはデレとあんまり出かけないんですか?」

デレが言うには、ツンちゃんは出不精らしいですが……。

ξ;--)ξ 「……そりゃあねえ」

ツンちゃんは、相変わらず目を閉じたまま、わずかに表情を歪めて言います。
曰く、デレと2人で出かけると、デレの優柔不断のせいで、いらいらするわ、何をするにも遅くなるわ、
とにかく2人っきりはまずいらしいです。


83 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:57:39.33 ID:PtawDFyA0

(゚、゚;トソン 「なるほど……。そう言われれば思い当たる節はありますね」

私は、デレの方をちらりと見ましたが、当のデレは貞子に寄り掛かり、大口を開けて眠っています。

ξ;--)ξ 「トソン……悪いんだけど……」

私はツンちゃんの頼みを聞き、大口を開けているデレの口を閉めて戻ってきました。

(゚、゚トソン 「真面目な話、デレはツンちゃんと出会って本当に良かったと思います」

ツンちゃんは大変でしょうが、切実にそう思います。
ツンちゃんも、手のかかる妹だ、と肩をすくめました。

(゚、゚トソン 「しかし……白馬の王子様ですか……」

ξ;゚听)ξ 「ちょ、ちょっと!?」

口を吐いて、しまったと思いましたが、少々遅かったです。幸いに、誰も聞いてないようでしたが。


85 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:59:13.61 ID:PtawDFyA0

ξ゚听)ξ 「ま、気長に探すわよ」

周りにいい男いないしね、とツンちゃんは言います。
私は、ブーンはどうなのかな、と思い、それとなく聞いてみましたが、あれは白馬に乗ったと言うよりは
白馬そのものの方が似合うだろう、というツンちゃんの答えに、私はちょっと吹き出してしまいました。

ξ--)ξ 「ま、いいやつではあるけどね」

大事にしてあげなさいよ、とツンちゃんは続けます。

(〃-ω-)

幸せそうに眠るブーンを見て、私はツンちゃんに笑顔で頷きました。

ξ--)ξ 「何かあったら、アタシに相談しなさいよ」

(゚ー゚トソン 「ええ、よろしくお願いします」

そのままツンちゃんは、眠ってしまったようでした。


86 :◆iW2kGg44LU:2008/11/15(土) 23:59:35.18 ID:PtawDFyA0

しっかりもので、強気な夢見さん。
でも、本当は優しくて、素敵な夢を見るツンちゃん。

今日はツンちゃんのお陰で、私は色々な事に気付くことができました。
それがほんの小さな事だとしても、私にとっては、とても重要な事でした。

私は、その小さな頭を優しく撫で、いい夢が見れるよう願いました。

ξ*--)ξ(゚ー゚*トソン


 〜 第五話 おしまい 〜

    − つづく −   


89 :◆iW2kGg44LU:2008/11/16(日) 00:01:08.14 ID:f1ahiNhy0

 〜 ( ^ω^)の日記 〜

 5がつ×にち はれ

きょうはどうぶつえんにいったお!
ずっとずっとずっと、どうぶつえんいきたかったんだお。

どうぶつえんはすごいいっぱいどうぶつさんがいたお。
ゾウさんキリンさんライオンさんカバさん、いっぱいいっぱいいたお!

でも、ちょっとしっぱいしちゃったお。
トソン、ツン、ごめんなさいだお。
ぼくはもう、たたいたりしないお。ちゃんとはなしあってきめるんだお。

ふたりとなかなおりできてよかったお。
いっしょにうさぎさんとあそんだお。
すっごく、すっごくたのしかったお!

またいきたいお。また、みんなでいきたいお!


90 :◆iW2kGg44LU:2008/11/16(日) 00:02:06.33 ID:f1ahiNhy0

 〜 (゚、゚トソンの日記 〜

今日は初めてとも言える、私達みんなでの遠出でした。

色々な事がありましたが、総じて上手く行ったのかな、と思います。

ツンちゃんとブーンのケンカも、結果的には雨降って地が固まったようなものではないでしょうか?
私自身、ツンちゃんの事をより深く知れて、非常に有意義な話が出来ましたしね。

しかし、まあ、言われるまでもなく、私も子供なんですよね。

ブーンと暮らし始めたことで、自分の中に保護者意識みたいなものが生まれ、
その結果、背伸びをし過ぎていたのかもしれません

私だって、考えて、悩んで、失敗して、やり直して、そういうのを繰り返すべきなんですよね。

何を達観した気になっていたのでしょうね。恥ずかしい限りです。


93 :◆iW2kGg44LU:2008/11/16(日) 00:04:38.64 ID:f1ahiNhy0

私も、私自身の夢を探しましょう。
夢を持たない私が、ブーンに夢の良さを語れるはずもありませんから。

私は小さい頃、何になりたかったのでしょうかね?
今となっては、全く思い出せません。

両親に聞くのも、恥ずかしい所の騒ぎじゃありませんしね。

そもそも、ブーンに教えようとしている態度がまずおかしいのかも知れませんね。

ブーンといっしょに、ブーンに手伝ってもらいながら自分の夢も探していけばいいんですよね。

(゚、゚;トソン「……しかし、子供の頃の自分を思い返すと、我ながら可愛げと言うものが……」


 − 第八章 ツンと私と乙女の夢 おしまい −


   − 夢は次章へつづきます −   


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