3 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 21:18:24.76 ID:rIPlEs3w0

 − 第九章 歌と私と素直な気持ち −

 〜 第一話 〜


こんにちは、都村トソンです。

じめじめとした天気が続き、洗濯物が乾きにくい季節になりました。
相変わらずの私達ですが、ブーンは、ヒートちゃんと修行という名目で遊びに行くのに1人で外出したりもするようになりました。
部屋の鍵は落とさないようにブーンに括り付けてあります。

ここの所は生憎の長雨で、なかなかお外へ行けなくてしょんぼりしていますけどね。

ガチャッ カランカラーン
(゚、゚トソン 「こんにちは」

('、`*川 「あら、いらっしゃい。2名様、お好きな席へどうぞ」


4 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 21:18:47.26 ID:rIPlEs3w0

ミセ*゚ー゚)リ 「実は3人なんですけどね」

('、`*川 「あら、そう?」

( ^ω^)ノシ

事も無げに言うミセリですが、ペニサスさんからブーンは見えていないはずです。
その辺の経緯を理解されてはいるでしょうが、以前の反応からすると、その胸の内は複雑な思いで満ちているのかもしれません。

ブーンをここに連れてくるのは、以前にツンちゃんを紹介しようとしてかなわなかった時以来です。
今日も雨で外に出られず、残念そうにしていたので連れてきました。

ミセリは何度か来ているので、ペニサスさんともすっかり顔なじみです。

('、`*川 「はい、どうぞ」

(゚、゚トソン 「ペニサスさん?」

出されたコーヒーは3人分。つまりはブーンの分もあるということですが……。


5 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 21:20:58.90 ID:rIPlEs3w0

('、`*川 「3人なんでしょ?」

そう言ってペニサスさんはウィンク1つ。お代は2人分でいいそうです。
最近はやっと、ちゃんとお代を受け取ってもらえるようになりました。

ブーンは早速受け取ったコーヒーに砂糖をなみなみと注ぎます。見ていて胸焼けしそうなほどに。

私はいつものように砂糖をほんの少し加え、カップに口をつけます。

('、`*川 「アルバイト?」

(゚、゚トソン 「はい」

そうです、本日、ペニサスさんの所へお伺いしたのはこの辺りのアルバイト事情をお聞きするためです。
ペニサスさんなら、この地域で商売なさってるわけですし、何かしら有益な情報をお持ちかもしれません。

('、`*川 「うーん……そうだねー……」

ペニサスさんはあごに手を当て、何やら考えておられます。
私は、ブーンにコーヒーの感想を聞くと、味はいつものと変わらないけど匂いはいい、という答えが返ってきました。


6 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 21:22:15.93 ID:rIPlEs3w0

('、`*川 「いくつか思い当たるとこはあるけど、あんまり女の子向けじゃないとこばっかだねー」

コンビニの深夜とかもどうかと思うし、とペニサスさんは言います。

(゚、゚トソン 「出来れば、あまり長時間は避けたいとこですね。高収入とは言いませんし」

ペニサスさんは再び何かを考え出されましたが、しばらくしてこう結論付けられました。

('、`*川 「やっぱり大学を上手く利用する方がいいと思うけどね」

(゚、゚トソン 「そういう結論になりますか……」

大学では学生部がアルバイトを斡旋しているという話ですし、先輩方から聞いてみるのも手です。
ペニサスさんの所で当てが見付からなかったら、次はそちらの予定でしたから、まあ、順当な線でしょう。

ミセ*゚ー゚)リ 「私もバイトしよっかなー。……そうだ、ペニサスさん、ここってバイト募集したりしてません?」

ンソト;゚、゚) 「それは諸般の事情で止めて頂けると助かると言いますか絶対止めてください」

ええ、色々と絵面的にもまずいんです。店長さんも含めて。


7 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 21:25:05.98 ID:rIPlEs3w0

私達は、コーヒーを飲み干し、ペニサスさんにお礼を言い、お代を払おうとしましたが、
大して役に立てなかったから、と受け取りを拒否されてしまいました。

('、`*川 「また来てね」

(゚、゚トソン 「次はちゃんと払わせてくださいね。ごちそうさまでした」

ミセ*゚ー゚)リノ 「ゴチでした」

(〃^ω^)ノ 「でしたお」

ガチャ カランカラーン

・・・・
・・・

喫茶店から外に出ると、未だに雨が降り続く空が私達を出迎えます。

( ´ω`) 「おー……」


8 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 21:26:08.02 ID:rIPlEs3w0

ブーンは止んでいない雨にがっかりしていました。
お外で元気いっぱい走り回りたいのでしょうね。

ミセ*゚ー゚)リ 「収穫なしかー……」

(゚、゚トソン 「まあ、それも仕方がないでしょう」

ペニサスさんは地域の顔役というわけでも斡旋業者というわけでもないのですから。
御本人は大して役に立てなかったと仰られましたが、この辺りのアルバイト事情など、相応に役に立つお話は聞けました。

ミセ*゚ー゚)リ 「んー? どした、ブーンちゃん? しょんぼりして」

ミセリはそう言いながら、ブーンの視線の先、つまりは空を見てすぐに気付いたようでした。

ミセ*゚ー゚)リ 「ああ、そっかそっか。こんなんじゃお外で遊べないもんね」

( ´ω`)" コクッ

ミセ*゚ー゚)リ 「いよっし、お姉ちゃんがご本を読んであげよう!」

ミセリは、ブーンの頭を多少乱暴に撫でながら言います。
ブーンは少しよろけながらも、嬉しそうな顔で頷きました。


9 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 21:26:35.41 ID:rIPlEs3w0

ミセ*゚ー゚)リ 「というわけで、晩ご飯はよろしくね、お母さん?」

(゚、゚;トソン 「お母さんは止めてくださいと……」

ミセ*゚ー゚)リ 「じゃあ、ママ?」

(゚ー゚トソン 「張り倒しますよ?」

私が、ミセリの首筋をひねり上げていると、ブーンがピョンピョン飛び跳ねながら言います。

(〃^ω^) 「僕はハンバーグがいいお!」

(゚、゚トソン 「一昨日もハンバーグでしたよ?」

(;^ω^) 「お? じゃ、じゃあ──」

ミセ*゚ー゚)リb 「コロッケがいいな。トソンのじゃがいもコロッケすっげー美味いわ」

(゚、゚*トソン 「そ、そうですか?」

(〃^ω^)ノ 「僕もそれがいいお! 僕もいっしょに作るお。じゃがいもコネコネするお」


10 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 21:27:45.55 ID:rIPlEs3w0

全く、2人ともしょうがないですね……。少々乗せられた気もしなくもないですが。まあいいでしょう。
やはり、自分が作ったものを気に入ってくれることは嬉しいものですから。

(゚、゚トソン 「ではちょっと買い物に行って来ましょうかね」

2人とも留守番を頼みますと伝え、私は白色の傘を開き、歩き出しました。
6月の長雨が傘に当たり、軽快な音を響かせます。

(〃^ω^)ノシ 「いってらっしゃーいだお」

(゚ー゚トソン 「いってきます」


 〜 第一話 おしまい 〜

    − つづく −   


13 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 21:30:12.43 ID:rIPlEs3w0

 〜 第二話 〜


Picuture yourself in a boat on a river♪

With tangerine trees and marmalade skies♪

~U(-、-トソン

夕食の後、私は好きな音楽をかけ、コーヒーを飲みながらくつろぐという優雅な一時を堪能しています。
コロッケは自分でも納得のいく良い出来でした。

コロッケといえば、ミセリは何故か、手間はそれなりにかかるけど質素な料理、といった物を好む傾向にあるようです。
舌はお子様だと言うのに。あれに白身魚の味の違いとかはわかりそうにもありません。

(-、-トソン 「まあ、私もあまりわかりませんが……」

ブーンは見たいテレビがなかったらしく、今は絵本を読んでいます。
ミセリが1回読んであげたものを、今度は自分1人で読もうとがんばっているようです。


14 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 21:30:32.11 ID:rIPlEs3w0

そのミセリは明日の授業の課題が終わっていないことに気付いて、夕食後すぐに帰宅しました。
私が手伝うのを謹んでお断りした結果ではありますが。
今からやれば十分に間に合う程度の課題でしたからね。

(〃^ω^) 「〜♪」

ふと耳を澄ませば、ブーンが鼻歌らしきものを歌っているのが聞き取れます。
時々、実際に歌っている個所もあります。以前それに気付いた時は驚きました。何せ、英語の曲です。

もちろん、歌詞の意味も、単語もわかっていないでしょう。
ブーンはただ音を拾って、そのまま口にしているだけです。

歌や英語といった言葉の概念は教えましたが、そういったこととは関係なしに歌えるようになるようですね。
人間の言葉のメカニズムは不思議なものです。

そこまで考えて、最近の私はブーンの事を自然に人間の一般論に当てはめて考えたりしていることに気付き、
何だか少し嬉しくなりました。

(゚、゚トソン 「コーヒーのお代わりにしますか、それとも……」


16 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 21:31:21.92 ID:rIPlEs3w0

ブーンに聞くと、ココアがいいそうなので、ブーンの分と私の分のココアを淹れました。
ブーンは自分が淹れると言いましたが、たまには私に淹れさせてくれと断り、自分で淹れました。

( ^ω^) 「ありがとうだお」

(゚、゚トソン 「ココアも存外、悪くないですね」

私は自分で淹れたココアを口に運び、何事も経験してみるものだと、1人感心していました。

♪〜♪〜♪〜♪〜

CDが次の曲に移り、軽快なイントロが流れてきます。
この曲は──

( ^ω^) 「お!」

ブーンがいち早くそれに気付き、立ち上がって身体でリズムを取っています。
この曲は私がかけている音楽の中で、ブーンが一番好きな曲です。


17 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 21:31:43.07 ID:rIPlEs3w0

Desmond has a barrow in the market place♪

Molly is the singer in a band♪

(〃^ω^) 「おっおおっおおおおおおおっお♪」

(゚ー゚トソン

私は、とても合っているとは思えないブーンの歌を聞きながら、自分も指でリズムを取っていました。

Ob-La-Di, Ob-La-Da♪

ヾ(〃^ω^)ノシ 「オブラディ♪ オブラーダー♪」

ブーンは本当に楽しそうに歌っています。
子供は歌が好きとよく聞きますが、本当のようですね。

私も、もう少し子供が歌いやすい歌でも聞きましょうかね?
私はそんな事を考えながら、また一口、ココアを口に運びました。


18 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 21:32:45.65 ID:rIPlEs3w0

・・・・
・・・

ミセ*゚д゚)リ 「うひへー……、しんどかったー」

明けて翌日、本日は今の3コマで授業は終了です。
課題を出すだけでなく、それについて指名されて問われたりするというなかなか気の抜けない授業でした。

ζ(゚ー゚*ζ 「終わった、終わった。帰ろ、帰ろ」

川д川 「今日はどうする?」

(゚、゚トソン 「すみません、私は約束があるので」

流れ的に、誰かの家で晩ご飯となりそうでしたが、私は今日は用事があります。昨日の続きです。

ζ(゚ー゚*ζ 「あそっか、ヘリカル先輩のとこだっけ?」

(゚、゚トソン 「ええ。これから学食で待ち合わせです」


20 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 21:33:30.82 ID:rIPlEs3w0

昨日の内に、メールでヘリカル先輩とダイオード先輩に相談したところ、ヘリカル先輩がいくつか当てがあるらしく、
これからお話を聞きに行く事になっています。

ミセ;゚ー゚)リ 「私はパスね」

(゚、゚トソン 「パスも何も、最初から1人で行く予定ですよ?」

ミセリは先輩方を苦手としています。大体において、会うなり蹴り等が飛んでくるのですから、それも仕方のない事かも知れません。
ですが恐らく、先輩方はミセリを一応は気に入ってると思うんですけどね。

興味のない人間にちょっかいは出さないでしょうし。

ζ(゚ー゚*ζ 「ブーンちゃんは私の部屋に呼んどく?」

(゚、゚トソン 「いえ、それほど遅くはならないでしょうから。それに……」

授業が終わって廊下に出て気付きましたが、降り続いていた雨が今は止んでいました。
とは言え、一時的に止んだだけ、といった感じで、またすぐ降り出しそうではあります。


21 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 21:34:09.64 ID:rIPlEs3w0

ミセ*゚ー゚)リ 「あー、ブーンちゃん外かな?」

(゚、゚トソン 「その可能性はありますね」

ミセ*゚ー゚)リ 「そんじゃ、帰りに公園覗いてみるよ」

(゚、゚トソン 「え?」

ミセ*゚ー゚)リ 「また降ってきたら、ブーンちゃん濡れて帰んなきゃじゃない?」

川д川 「じゃあ、私も行ってみようかな?」

(゚、゚トソン 「……では、お願いできますか?」

ミセ*゚ー゚)リ 「オッケー」

私はそう言って歩き出そうとしたミセリに声をかけます。

(゚、゚トソン 「鍵はブーンが持ってますので、部屋にいるならメールしてください。買い物の量を変えますから」

ミセ*゚∀゚)リb


23 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 21:35:14.91 ID:rIPlEs3w0

ζ(゚ー゚*ζ 「それじゃ、またねー」

川ー川 「お先に」

私は、この空の色とは正反対の、何となく浮かれた気分で学食へ歩いて行きました。

・・・・
・・・

*(‘‘)* 「大体の条件は昨日聞いたですよ。その条件に合いそうなのをいくつか学生部から持ってきたです」

(゚、゚トソン 「お手数をおかけします」

ヘリカル先輩は会うなり用件を切り出しました。どちらかと言えば短気な先輩なので、何事も話が早いです。
私が学生部の資料に目を通している間に、ヘリカル先輩は相談料の前払い、午後のたっぷりプリンセットを注文に行かれました。

(゚、゚;トソン 「……」

*(‘‘)* 「ん? どうしやがりましたですか?」


24 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 21:35:34.18 ID:rIPlEs3w0

(゚、゚;トソン 「いえ、何となく響きが不穏なものが多くないでしょうか?」

取り立て業(様々)、受付業(慇懃にしかし断固相手を追い返す)、電話応対(クレーム処理)等々。
何と言いますか、どれも危険な香りがプンプンします。
こんなのが何故、大学の学生部に来てるのでしょう?

*(‘‘)* 「危険はねーですよ。どれもやったことありますから」

(゚、゚;トソン 「やったんですか!?」

*(‘‘)* 「てめーが短時間で稼ぎたいと言うからそれを満たし、かつ、てめーに合いそうなのを選んだんですよ?」

ヘリカル先輩はプリンを頬張りながらそう言われます。
これが私に合うものとして認識されているのが少々気にかかりますが、それ以前に、

(゚、゚トソン 「短時間とはお伝えしましたが、稼ぎたいとは一言も」

*(;‘‘)* 「ヘ?」

ヘリカル先輩はごそごそと自分の携帯を取り出します。多分、昨日の私のメールを確認しているのでしょう。


25 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 21:36:49.70 ID:rIPlEs3w0

*(;‘‘)* 「ま、まあ、稼げて悪いこともないですよ?」

(゚、゚;トソン 「仕事自体から悪い雰囲気がしてきますが……」

気まずい沈黙が漂います。
どうしましょうかね。これらを試しにやってみるのも手ですが……。
何とも踏ん切りは付きませんが、改めて手元の資料を見直そうかとした所、目の前に一枚の紙が差し出されました。

/ ゚、。 / 「ん……」

(゚、゚トソン 「ダイオード先輩?」

突然現れたダイオード先輩は、目の前に出された紙を見るように指し示しました。

*(‘‘)* 「何でてめーがいるんですか?」

/ ゚、。 / 「ヘリカルだと……不安……」

*(#‘‘)* 「てめーに言われたかねーですよ?」

2人が言い争っている間、私はダイオード先輩から渡された紙に目を通しました。
これは……家庭教師ですか? 恐らく生徒であろう子供の説明と写真が一枚挟まれています。


27 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 21:37:56.83 ID:rIPlEs3w0

(゚、゚トソン 「ダイオード先輩、私は家庭教師のバイトの相場はわかりませんが……」

これは高すぎでは? 条件の欄を見て、私はまずそう感じました。
家庭教師は割と時給が高いみたいな話は聞いたことはありましたが、それにしてもこれは……。

/ ゚、。 / 「いや……それで……あってる」

*(‘‘)* 「どれどれ? ……確かに、相場の1.5倍ってとこですね」

(゚、゚トソン 「やはりですか……」

ダイオード先輩の説明では、普通よりは水準の高い御家庭で真っ当な職業、生徒の方も普通の中学に通う、
素行も普通の子供らしいですが……

/ ゚、。 / 「ただ……問題が……1つ」

*(‘‘)* 「やっぱり何かあるですね? てめーも訳あり持ってきてんじゃねーですか」

“も”って何ですか、“も”って、ヘリカル先輩?
やはり先程のヘリカル先輩のお話は受けなくて正解だったようです。


29 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 21:38:45.33 ID:rIPlEs3w0

(゚、゚トソン 「問題とは?」

/ ゚、。 / 「その子……すごい…………お馬鹿」

(゚、゚;トソン

私は、ダイオード先輩の言葉で、資料に添付された写真を改めて見直しました。
そこには無邪気そうな、ごく普通の子供の顔が映っていました。

[( ><)]


 〜 第二話 おしまい 〜

    − つづく −   


31 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 21:39:03.34 ID:rIPlEs3w0

 〜 第三話 〜


ミセ*゚ー゚)リξ゚听)ξ「「「「「ごちそうさまでした(お)」」」」」ζ(゚ー゚*ζ(^ω^ )(゚、゚トソン

あれからやはり、雨は降り出してきたようで、ブーンはミセリといっしょに私の部屋にいました。
その事はデレからメールで告げられ、ついでにデレ達もいっしょに晩ご飯という流れになりました。

ミセ*゚ー゚)リ 「いやー、美味かったよ、さすがトソンだね」

( ^ω^) 「お!」

ブーンが全員にお茶を出しながら、ミセリに同意を示します。
素直に嬉しいですが、後片付けはお願いしますよ?

ξ゚听)ξ 「で、その件受けるわけ?」

その件とは家庭教師の件でしょうね。
私は、受ける方向で決めてはいましたが、ブーンと少し話さなければいけないでしょうね。


32 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 21:40:09.75 ID:rIPlEs3w0

(゚、゚トソン 「まあ、そのつもりではありますが」

条件の方が、と言いますか問題の方ですか、気になるところではありますが。
ダイオード先輩の話だと、身体的な問題ではないようなのですが、どうにも中学生にしては落ち着きがなさ過ぎるし、
突然、何もない空間に話しかけたりと奇行が目立ったり、単純にもの覚えが悪かったりと、とにかく大変らしいです。

ξ゚听)ξ 「あんたはまあ、アホの相手は慣れてるでしょうけど……」

そう言ってツンちゃんはミセリをちらりと見ます。
珍しく、率先して片付けに行っているミセリは、ブーンといっしょに食器を洗っています。

ζ(゚ー゚*ζ 「程度にもよるよねー」

(゚、゚トソン 「取り敢えずは会ってみない事には何とも。ただ、真面目にやる気があるのなら何とかしてあげたいですね」

私が真面目な顔でそう言うと、デレはにっこり微笑みましたが、ツンちゃんは逆に顔をしかめ、額に手を当てて言います。

ξ゚听)ξ 「あんま気負いなさんなよ?」


33 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 21:40:38.36 ID:rIPlEs3w0

(゚ー゚トソン 「わかってますよ。子供が子供の面倒を見るんですからね」

そう言ってツンちゃんに笑顔を向けると、ツンちゃんは苦笑しながらも、わかったからがんばんなさい、と言ってくれました。

( ^ω^) 「お? 何の話かお?」

片付けが終わったブーンがそう聞いてきました。私が説明するよりも早く、デレが家庭教師の話をブーンに説明しましたが、
途中からブーンの表情がみるみる沈んでいきました。

ζ(゚ー゚;ζ 「という訳でその子にトソンちゃんが……ってどうしたの、ブーンちゃん?」

( ´ω`) 「おー……、トソンは僕じゃなくてよその子にお勉強教えるのかお……?」

そう考えてしまいましたか……。これは順を追って話さねばなりませんね。
そろそろブーンにも経済……は行き過ぎですが、働くことの意味も教えて大丈夫でしょうか。

そこまで行くと少々長い話になりそうですが、仕方ありませんね。

ミセ*゚ー゚)リ 「トソン、私ら帰るから、ごちそーさんでした」


37 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 21:42:25.75 ID:rIPlEs3w0

こういう事には気がきくらしいミセリが、真っ先に空気を読んでくれました。
長い話をする以上、2人っきりの方がいいかと考えていた矢先にです。

ツンちゃんもすぐその事に気付き、デレを引っ張って帰りました。
そのデレはごめんと小声で謝っていましたが、私が話しても同じ結果だったでしょうから気にしないで欲しいです。

あとに残された私は、残されたもう1人、ブーンの隣に行き、横に座りました。

(゚、゚トソン 「ねえ、ブーンお仕事ってわかりますか?」

( ´ω`) 「わかるお。大人はみんなお仕事するんだお」

(゚、゚トソン 「そうですね。では、何故お仕事をするかわかりますか?」

( ´ω`) 「おー?」

私は、働くことの意味、お金を稼ぐこと、生活すること、生きて行くために必要なことの意味を、
ブーンにわかるように1つ1つ、ゆっくり説明していきました。

(゚、゚トソン 「ねえ、ブーン? ブーンは夢を忘れてしまったんですよね?」

( ´ω`) 「うんお……」


38 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 21:42:44.08 ID:rIPlEs3w0

(゚、゚トソン 「実を言いますと、私もなんですよ」

( ´ω`) 「おー? トソンもかお?」

(゚、゚トソン 「正しくは、忘れたのとちょっとだけ違ってて、まだ見付かってないんですよ」

だから、夢に関しては私はブーンより遅れています。私はそう続けました。

( ´ω`) 「トソンも僕といっしょなのかお?」

(゚、゚トソン 「ええ、いっしょですよ」

だから、私は自分の夢を見つけるために、色々な事を経験したいのだと、ブーンに話しました。
家庭教師もその1つだと。
ついでに、うちにはご飯を食べに来る人がいっぱいいるから、お金を稼ぐのもいいでしょうと、ブーンに微笑みました。

( ^ω^) 「だったら僕も働くお!」

(゚ー゚トソン 「ブーンにはまだ早いですよ」


40 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 21:43:53.71 ID:rIPlEs3w0

私がそう言うと、ブーンはまたしょんぼりした顔になりましたが、私はそんなブーンの鼻先をちょんと突付き、

(゚、゚トソン 「ブーンはまだまだお勉強です。家庭教師で覚えた勉強の教え方をブーンにも試してあげますからね?」

(;^ω^) 「おー……」

(゚ー゚トソン 「覚悟していてください?」

(〃^ω^) 「お!」

全部を理解してくれたとは言い難いブーンですが、最後にはいつもの笑顔を見せてくれました。
これで大丈夫でしょう。

私は家庭教師のアルバイトを引き受けることにしました。

・・・・
・・・

それから私達は、ブーンが寝るまで、世の中にあるお仕事のことについて話しました。
やっぱり、テレビなどで見るわかりやすい職業、例えば警察官や消防士等は想像が付きやすいのか、ブーンの反応は良かったです。
逆に、公務員とかは漠然としすぎててピンとこなかったようですね。


43 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 21:45:44.90 ID:rIPlEs3w0

(〃´ω`) zzz

私は、穏やかな寝顔を見せるブーンを眺めながら、相反する2つの事を考えていました。

ブーンに知識を与えることについて。

知識を得ることで起こり得る功罪。

ブーンは根が素直なせいか、物事の吸収速度が早いです。読み書きはひらがなカタカナ、それと数字は覚えました。
簡単な足し算引き算も出来るようになってきています。

このまま教え続ければ、普通に小学校に行ける位の知識は身に付くでしょう。
しかし、ブーンは学校には行けません。人間ではありませんから。

ブーン自身はその事をわかっています。

わかってはいるでしょうが、このまま知識を付けていったとして、それを納得できるのでしょうか?

考えられる頭を持つことで、様々な矛盾や理不尽にも気付いてしまう。どうしようもない絶望も知り得てしまうかもしれない。
それならばいっそ、何も知らず無邪気に生きる方がいいのではないでしょうか?


45 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 21:46:20.06 ID:rIPlEs3w0

(゚、゚トソン 「……」

駄目ですね……。また1人で色々勝手に考えてしまっています。
これからはブーンといっしょに考えようと決めたではないですか。

決めるのは私じゃないんです。私1人じゃない。ブーン1人でもない。

どんなことでも、いっしょに悩んで、考えて、答えを探して行くんでしたよね。

私は、そこで考える事を止めて眠りに着くことにしました。

おやすみなさい、ブーン。また明日、お話しましょうね。

(〃´ω`)(-、-トソン

 〜 第三話 おしまい 〜

    − つづく −   


49 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 21:47:55.65 ID:rIPlEs3w0

 〜 第四話 〜


(゚、゚トソン 「はじめまして。本日から、家庭教師を務めさせていただく事になりました、都村トソンと申します。
      よろしくお願いします」

あれから数日後、私は家庭教師を引き受ける事をダイオード先輩に告げ、早速御依頼の御家庭に伺う運びとなりました。
紹介していただいたダイオード先輩にもプリンセットを献上しようとしたのですが、ヘリカル先輩に奢らせるからいいと
お断りされてしまいました。持つべきものは良い先輩ですね。

母親らしき女性の方と話をし、特に問題もなさそうと判断されたのか、早速子供の部屋に案内され、紹介されました。

( ><) 「はじめましてなんです」

男の子の名前はビロード君。中学2年生です。
写真で受けた印象通り無邪気そうな感じで、少々背は低めですが、ごく普通の中学生のといった感想を持ちました。

部屋も、一般的な中学生の男の子の部屋……実物を見るのは初めてなので、ドラマ等で持っているイメージですが、そんな
ごく普通の感じの部屋だと感じました。


51 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 21:49:16.89 ID:rIPlEs3w0

ただ、一点を除いて。

( <●><●>)

部屋の隅に体育座りで座っているぬいぐるみのような何か。
黒目がちの大きな目が、じっとこちらを見つめています。
見様によってはちょっと怖いですが、やはりこれはあれですかね……。

私の視線がある一点で固定されているのに気付いたビロード君が、慌てたように話しかけてきます。

(;><) 「み、見え──? ぬ、ぬいぐるみなんです!」

(゚、゚トソン 「ああ、ぬいぐるみなのですか。なかなかかわいらしい御趣味ですね」

(;><) 「え!? あ、あ、あの、その、あうあうあう……」

さて、どうしたものやら。
私としては、このまま気付かないフリで授業に専念するという手もありますが、なるべくなら話しておきたいところです。
多分、ダイオード先輩に頂いた資料にあった、何もない空間に話しかけるというのはこのことでしょうから。


52 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 21:49:58.09 ID:rIPlEs3w0

(゚、゚トソン 「では、授業を始めましょうか」

( ><) 「はいなんです!」

(゚、゚トソン 「──ですが、その前に」

( ><) 「はい?」

(゚、゚トソン 「ビロード君は、何と言いますか、こう、不思議なものとか信じられる方ですか?」

口にしてから気付きましたが、これは貞子の時に失敗したパターンですね。
ビロード君は既にそういった状況を体験しているようですから大丈夫でしょうけど。

(*><) 「信じてるんです! 不思議な生き物はいるんです!」

ほぼ即答と言える速さで肯定の答えが返ってきました。
そして、ちらりと例のぬいぐるみ?の方を見ます。

(゚、゚トソン 「そうですか、では……」


53 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 21:50:24.57 ID:rIPlEs3w0

私は、それからいくつか質問をしました。質問というよりはむしろ、不思議な生き物がいることの説明と言いますか、
擁護と言いますか、それとなくそういうこともあるものとして話をしました。

(*><) 「じゃあ、そういうことがあっても不思議じゃないんですね!」

(゚、゚トソン 「ええ、ですから──」

「わかりました。もうその辺でいいですよ、先生」

簡単なたとえ話を終えた頃、私とビロード君の間に落ち着いた声が割り込んできました。

(;><) 「わ、ワカッテマス君! 人がいるときに話しかけちゃ──」

( <●><●>) 「大丈夫ですよ、ビロード。このお方が私のような生き物の事を知っておられるのはわかってます」

(゚、゚トソン 「はじめまして。都村トソンです」

( <●><●>) 「ワカッテマスと申します」


55 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 21:51:18.34 ID:rIPlEs3w0

やはり私の予想通り、この子も夢見のようでした。
落ち着いた物腰で、どことなく高い知性を感じさせます。
先程のビロード君とのやり取りで、それが恐らく正しいであろうこともわかります。

( <●><●>) 「失礼ですが、色々と私達の事を御存知のようですね」

彼、ワカッテマス君も夢見という言葉は知らず、自分達の定義については曖昧なようでした。
私は、この話を続けたいとは思いましたが、今は駄目だという事も理解していました。

(゚、゚トソン 「その話は後ほど」

( <●><●>) 「え?」

ワカッテマス君はここで話を切られるのが意外だったのか、二の句が継げず、きょとんとしていました。
そういった表情は、落ち着いているように見えて、まだまだ子供らしいですね。

(゚、゚トソン 「ビロード君」

(;><) 「は、はいなんです」


57 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 21:52:37.18 ID:rIPlEs3w0

(゚、゚トソン 「今はあなたのお勉強の時間です」

(;><) 「は、はい」

(゚ー゚トソン 「まずは、あなたの実力を見せていただきましょうか」

そう言って私は、五教科分の簡単な小テストをビロード君に渡しました。
ワカッテマス君も私の行動に納得がいったのか、再び部屋の隅に座り込みます。
今度は、本棚から取り出した本を読みながら。

・・・・
・・・

(゚ぺ;トソン 「……」

(;><) 「あの……」

(゚、゚;トソン 「あ、はい、なんでしょう?」

私は、小テストの結果が聞いていた以上に芳しくないことに頭を悩ませていました。


59 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 21:54:51.49 ID:rIPlEs3w0

(;><) 「やっぱり、ひどいんですか……?」

(゚、゚;トソン 「えぇ……、まあ、そこはかとなく予想以上に」

(;><)そ 「ストレートに!?」

(゚、゚トソン 「現状を正しく把握することも大事ですからね」

ひとまず私は、小テストで間違った個所をビロード君に1つ1つ質問し、どの程度の理解度なのかを確認していきました。
それらが全て終わる頃には、本日の授業時間は終了しました。

私は、ビロード君のお母さんに頼んで、今後のことについて少し話をしたいからと言って時間をもらいました。
この部分は授業じゃないので時給はなしで、ということにして。

( <●><●>) 「大体のことはわかりました」

(;><) 「え? もうわかっちゃったんですか?」

ワカッテマス君はその言葉通り、私の説明をちゃんと把握しているようでした。
取り敢えずビロード君には、私の部屋にも夢見、ワカッテマス君と似たような子がいることを教え、
今度連れてくることを約束しました。


60 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 21:55:46.10 ID:rIPlEs3w0

( ><) 「わかったんです」

(゚、゚トソン 「では、今日はこの辺で」

( ><) 「……あの」

(゚、゚トソン 「どうしました?」

( ><) 「……その、都村先生はまた来てくれるんですか?」

ビロード君は、何故か言い辛そうに聞いて来ました。
私は、その振る舞いに少し疑問を感じたものの、ごく普通の調子で、はいと返事をしました。

(*><) 「そうですか! じゃあ、待ってるんです!」

( <●><●>) 「また会えるのを楽しみにしています」

(゚、゚トソン 「それでは、さようなら」

私の家庭教師1日目は、大きな波乱もなく……この状況を普通に受け入れている自分に苦笑しながらも、恙無く終了いたしました。


61 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 21:57:33.02 ID:rIPlEs3w0
・・・・
・・・

ミセ*゚ー゚)リ 「それはあれだな、恋というやつ──」

ミセリが全てを言い終える前に、私の右手が滑り、クッションがミセリの頭に炸裂しました。

ミセ;゚д゚)リ 「いきなり何すんのさ!?」

(゚、゚トソン 「手が滑りました」

ミセ;゚д゚)リ 「真顔でウソつくなよ!?」

(゚、゚トソン 「ええ、故意ですね」

ミセ;゚ぺ)リ 「この野郎」

ζ(゚ー゚*ζ 「はいはい、その辺で。食卓のそばで暴れないでね」

家庭教師を終えた後、携帯電話を確認すると、デレからのメールが入っていました。
ブーンも含めて全員デレの部屋にいるから来て、といった内容でした。


64 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 21:58:05.54 ID:rIPlEs3w0

初仕事で疲れているだろう私をねぎらうという名目でしたが、半分以上は家庭教師の話が聞きたかっただけでしょうね。
しかし、食事は貞子が作ってくれるというので有難くお受けしておきました。助かるのは事実です。

案の定、私が席に着くなり質問攻めにあう事になりました。

ξ--)ξ 「そのガキんちょの話はともかくとして、また……なの?」

(゚、゚トソン 「ええ……また、ですね」

ツンちゃんは、また、という言葉を強調し、含みのある視線をこちらに向けました。
ツンちゃんが言わんとせん事はわかります。正直私も、偶然が過ぎると思っています。

ξ゚听)ξ 「あんたのせい……なのかしらね?」

そこはわかりませんが、そう考えるのが自然なような気もしています。
さすがに4人、ドクオさんもあわせれば5人は多過ぎます。

ζ(゚ー゚*ζ 「ねーツンちゃん、どゆこと?」


66 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 21:58:51.05 ID:rIPlEs3w0

川д川 「何故トソンちゃんの周りばかりに? ですね。はい、できましたよー」

(〃^ω^) 「お!」

ノハ*゚听) 「ごはんだぁぁぁぁぁ!」

1人調理のため、席を外していた貞子ですが、ちゃっかりこちらの話には耳を傾けていたようです。
その通りです、と言ったはずの私の言葉は、ヒートちゃんのご飯を迎える歓声に掻き消されました。

ξ゚听)ξ 「うるさい、バカヒート」

ノハ;゚听) 「ごめんなさい」

先程まで、ヒートちゃんと2人で絵本を読んでいたブーンは、いそいそと走ってきて、私の横にちょこんと座ります。

( ^ω^) 「お? これなんだお。すっごいきれいなご飯だお!」

川ー川 「これはね、ちらし寿司っていうの。お祝い事の時とかに食べたりするんだよ」

(゚、゚;トソン 「作ってもらっておいてなんですが、何の祝いですか?」


68 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 21:59:13.25 ID:rIPlEs3w0

そりゃもちろん、と、皆は口を揃え、私を見ます。それはさすがに大事過ぎませんかね?

ミセ*゚ー゚)リ 「まあ、ちらし寿司ぐらいなら普通にお昼に食べたりもするし、そんなに気にしなくても、てか、とにかく食べよう!」

ξ゚听)ξミセ*゚ー゚)リ川д川ノハ*゚听)「「「「「「「いっただきまーす(お)」」」」」」」(^ω^〃)(゚、゚トソンζ(゚ー゚*ζ

私達は、大きな寿司桶に詰められたちらし寿司をそれぞれ取り分け、頂くことにしました。
しかし、この寿司桶、貞子のものでしょうか? デレが持ってるとは思えませんし、多分そうなのでしょうが、
大学生の1人暮らしに、今は2人ですが、必要なものとも思えませんが。

ノハ*゚听) 「うまぁぁぁぁぁい!」

ミセ*゚ー゚)リ 「さすが貞ちゃんって味だよ」

誰もそんなことは気にもせず、一心にちらし寿司を頬張っています。
確かに美味しいですね。酢飯の塩梅が私の好みです。

ξ゚听)ξ 「で、さっきの話なんだけど、あんたじゃないとしたら、そいつってことになるんだけど?」

話の続きをする機会を伺っていたのか、会話の合間を縫ってツンちゃんは話しかけてきました。
そいつとはもちろんブーンのことでしょう。


70 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 22:01:05.54 ID:rIPlEs3w0

(゚、゚トソン 「何らかの影響を受けている可能性もないとは言えませんが……」

実際には、今日は私1人だったわけで、そばにブーンがいたわけでもありませんし。
私は、ブーンののどを撫でながらツンちゃんに答えます。残念ながら、ブーンののどはごろごろ鳴りません。
そういえばツンちゃんに猫を紹介してもらう約束はまだ果たしてもらってませんね。

(;^ω^) 「ちょ、トソン、のど触られたら食べにくいお」

(゚、゚*トソン 「ああ、ごめんなさい、つい……」

川д川 「その生徒のとこにいた夢見さん、どんな子だったんですか?」

私は、ワカッテマス君の事を簡単に説明しました。
今思い返しても、随分と落ち着いた子だったと思います。

ミセ*゚д゚)リ 「欲ーしーいー」

川;д川 「ミセリちゃんはそればっかだね」

ミセリは相変わらず夢見を探しているみたいですが、未だにドクオさんにすら出会えてないみたいです。


71 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 22:01:50.08 ID:rIPlEs3w0

ζ(゚ー゚*ζ 「ちょっと気になったんだけどさ……」

ξ゚听)ξ 「何、デレ?」

ζ(゚ー゚*ζ 「その夢見の子さ、生徒さんより頭いいんじゃない?」

(゚、゚トソン 「そのようでしたね。話した感じでは明らかに」

ζ(゚ー゚*ζ 「その2人は仲良かった?」

いっしょにいて受けた感じでは、2人の間に険悪な空気は感じませんでしたし、普通に仲は良さそうではありました。
私はそこで、デレの言おうとしていることがわかりました。

ノパ听) 「何で頭のいいそいつが勉強教えてやんないんだ?」

ζ(;ー;*ζ 「うえ!? ヒートちゃんにセリフ盗られた!」

ξ;゚听)ξ 「あんた、話聞いてたのね……」

(゚、゚トソン 「確かにそうですね……」

ひたすらちらし寿司を口に運んでいたヒートちゃんが口を挟んだことに少し驚きはしたものの、確かにそこは疑問ですね。


73 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 22:02:18.05 ID:rIPlEs3w0

(゚、゚トソン 「そこはワカッテマス君に聞いてみます」

現段階ではこれ以上の話の進展は見込めないので、話題は次第に家庭教師自体やアルバイトの話にシフトしていきました。
貞子がバイトしようかな、と言い出したら、ミセリがここの裏手にある定食屋が募集してた、と話を持ち出してきましたが、
それも却下しておきました。向いてるとは思いますが裏の飯屋──失礼、定食屋は止めておきましょうね。

・・・・
・・・

私とブーンは、食事を終えると早めに部屋に戻りました。

(゚、゚トソン 「という訳でブーン、あなたにも次の家庭教師のバイトに付いて来て欲しいのですが」

( ^ω^) 「うんお。お話はきいてたお。ワカマテスに会うんだおね?」

(゚、゚トソン 「ワカッテマス君です。そうですね。会ってお話してみてください」

ワカッテマス君もブーン達同様、記憶に曖昧なところがある様子です。
お互いが接触することで、何かしら得られる物があるかもしれません。

そういえば、ワカッテマス君に夢の事を聞いてませんでした。


74 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 22:03:35.53 ID:rIPlEs3w0

(゚、゚;トソン 「大事な事を聞き忘れてましたね……」

それも次回聞けばいいことですね。人に言いたくないのであれば、無理に聞く必要はありませんし。
夢があるかどうかだけわかればいいことですしね。

(〃^ω^) 「楽しみだお!」

(゚ー゚トソン 「ブーンにお友達が増えますね」

(〃^ω^) 「うんお!」

ちょっと精神年齢的には差がありそうですが、ワカッテマス君は他の夢見に会ったことはないそうですから
興味は持ってもらえると思います。できれば、仲良くして欲しいですね。

私は、今日一日の日記を書き、ブーンといっしょに眠りに付きました。


 〜 第四話 おしまい 〜

    − つづく −   


76 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 22:05:29.63 ID:rIPlEs3w0

 〜 第五話 〜


( ^ω^) (<●><●> )

数日後、私はブーンといっしょに再びビロード君の家にお伺いしました。
久しぶりに雨が止み、少し蒸し暑い6月の日です。

(゚、゚トソン 「こんにちは、ビロード君、ワカッテマス君」

( ^ω^) 「こんにちはですお」

(*><) 「こんにちはなんです!」

( <●><●>) 「こんにちは、都村先生」

2回目の訪問は、ビロード君の満面の笑顔とワカッテマス君の落ち着いた挨拶で出迎えられました。
この様子だと気に入られてはいるみたいなので安心しました。そうでなければ授業にも影響が出そうですしね。

(*><) 「すごいんです! ホントにワカッテマス君とおんなじような子がいたんです!」

( <●><●>) 「私も実際に目の当たりにすると驚きを禁じえませんね」


77 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 22:05:53.39 ID:rIPlEs3w0

言葉通りすごく驚いた反応を見せるビロード君と、言葉とは裏腹に落ち着いた様子のワカッテマス君。

( ^ω^)ノ 「僕はブーンだお! ビロード、ワカッテマス、はじめましてだお!」

(*><) 「はじめましてなんです!」

( <●><●>) 「はじめまして、ブーンさん。よろしくお願いします」

( ^ω^) 「さんはいらないお! ブーンでいいお」

私は、その3人の様子を見て安心しました。どうやらすぐに友達になれそうですね。
しかし、ブーンとワカッテマス君のやり取りは、随分と懐かしいものを思い出させてくれました。

一応、ブーンには敬語や敬称といった概念も教えていますが、それは無理には使わせていません。
ブーンは今のままでいいような気もしますしね。純粋なままで。変に壁を作らない方が。

(゚、゚トソン 「さて、私とビロード君はお勉強です」

(;><) 「は、はいなんです……」


81 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 22:07:05.12 ID:rIPlEs3w0

早速、ブーンとビロード君が仲良く遊び出しそうな雰囲気でしたが、
今は家庭教師として来ています。やる事はきっちりとやりましょう。

(゚、゚トソン 「2人は勉強の邪魔にならないぐらいの声でお話していてくださいね」

( ^ω^) 「うんお!」

( <●><●>) 「心得ました」

2人は部屋の隅の方、本棚の前辺りで話し始めました。専らブーンの方が話しかけているようです。
私は、ビロード君に前回の小テストの結果から、今後重点的に学習すべき点を説明し、まずは基礎のやり直しを提案しました。

(;><) 「これって小学生の問題ですか?」

(゚、゚トソン 「最初はこの辺りから入りましょう。意外と忘れてるものですよ」

実際、私もいくつか忘れてましたし、と続けて、問題集のやるべき個所を開きました。

ビロード君が問題を解いている間、手持ち無沙汰な私は、ほんの少し距離を空けて3人を観察していました。


82 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 22:07:47.95 ID:rIPlEs3w0

オッオッオ   ワカッテマス          カリカリ
( ^ω^)(<●><●> )       (;><)

オ!      ワカッテマス          カリカリカリカリ
( ^ω^)(<●><●> )       (;><)

オッオッオ   ワカッテマス           チラッ
( ^ω^)(<●><●> )       (>< )

オッオッオ   ワカッテマスワカッテマス     カリカリ
( ^ω^)(<●><●> )       (;><)

オ!      ワカッテマス           チラッ
( ^ω^)(<●><●> )       (>< )

オッオッオ   ワカッテマス           ジー
( ^ω^)(<●><●> )       (>< )

(゚、゚トソン 「……」


83 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 22:08:30.38 ID:rIPlEs3w0

集中できてませんね。仕方ないと言えなくもないですが、ブーン達の話し声はそれほど高くないので、
ビロード君に内容までは伝わっていないはずですが。

私は、そっとビロード君に近付き、肩をポンと叩きました。

(゚、゚トソン 「今はお勉強に集中しましょう」

(;><) 「わっひゃあ! は、はいなんです!」

そんな私達2人のやり取りに気付いたワカッテマス君がビロード君に声をかけます。

( <●><●>) 「ビロード、都村先生にご迷惑をおかけしてはいけませんよ」

(;><) 「わ、わかってるんです! ワカッテマス君には関係ないんです!」

ビロード君がちょっと癇癪を起こしたかのように反論しました。意外と怒りっぽいんでしょうか?
それとも、どこか情緒不安定なのでしょうかね?

( ^ω^) 「ビロード、勉強のじゃましちゃってごめんお。僕たち、もっとしずかにしてるお」


87 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 22:10:08.88 ID:rIPlEs3w0
(゚、゚トソン 「そうですね、なんだったら、外に遊びに行ってきてもいいですけど」

(〃^ω^) 「ホントかお!? ワカッテマス、公園行こうお!」

(;<●><●>) 「わ、私は少々運動は苦手で……」

(〃^ω^) 「行こうお! 行こうお!」

(;<●><●>) 「わ、わ、わ、わ、わかりましたから引っ張らないで下さい、ブーン」

そう言って、2人は外に遊びに行きました。ワカッテマス君は少々難色を示していましたが、まあ、大丈夫でしょう。
根拠はありませんが。

(;><) 「……」

(゚、゚トソン 「さあ、勉強を続けましょうか」

(;><) 「……はいなんです」

・・・・
・・・


89 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 22:11:17.87 ID:rIPlEs3w0

2人がいなくなって寂しそうなビロード君でしたが、やはり1人の方が集中は出来たようです。
予定していた内容は一通り終えられました。

(〃^ω^) 「ただいまーだお」

(゚、゚トソン 「はい、おかえりなさ──」

( <○><○>) 「タダイマモドリマシタ」

(;><) 「ワカッテマス君!? 大丈夫なんですか?」

元気はつらつなブーンとは対照的に、明らかにヘロヘロなワカッテマス君。
ひょっとしてブーンといっしょのペースで走ったりしたのでしょうか。なんともまあ、お疲れ様でしたとしか。

私は、ビロード君に頼んで水を汲んできてもらい、それをワカッテマス君に飲ませました。

( <○><○>)b 「ダイジョブ、ダイジョブデス」

(;><) 「明らかにヤバイんです!」


92 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 22:12:35.02 ID:rIPlEs3w0

私は、どこでどうやって遊んできたのかブーンに聞いてみましたが、いつもどおり公園まで走って、公園で走って、
公園から走ってきただけだということらしいです。

(゚、゚;トソン 「ここからだと、いつもより公園は遠いんですけどね」

( ^ω^) 「お? ……おー! そうだお! いつもよりいっぱいブーンってしたお!」

気付かずに走ってきたわけですね。とは言え、いつもの距離でもきついんですけどね、あれだけ走るのは。
付き合わされたワカッテマス君も大変でしたでしょうね。

(゚、゚;トソン 「落ち着かれましたか?」

(;<●><●>) 「ま、まあ、何とか……」

( ^ω^) 「楽しかったお! また遊ぶお、ワカッテマス」

(;<●><●>) 「お手柔らかにお願いします」

そうは言うものの、ワカッテマス君は笑顔を見せています。疲れてはいるものの、楽しんできたみたいですね。


96 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 22:16:42.10 ID:fa4n+iTZO

(゚、゚トソン 「そうそう、ワカッテマス君、あなたに1つ聞きたいことがあったのですが」

私は、ワカッテマス君に夢の話をしました。夢見は皆、夢を持っていること、ブーンは何故か夢を忘れているということを。

( <●><●>) 「ええ、確かに私にも夢がありますね」

( ^ω^) 「お! どんな夢だお? 聞きたいお!」

(゚、゚トソン 「差し支えなければ教えて頂きたいのですが?」

( <●><●>) 「もちろん構いませんよ」

ワカッテマス君は渋る素振りも見せず、あっさりと快諾してくれました。
ビロード君は既にその夢を知ってるのか、特に変った様子もなく窓の外を見ています。

( <●><●>) 「私の夢はノーベル賞を取る事です」

(゚、゚;トソン 「それはまた……」

随分と壮大な夢ですね。しかし、立派な夢だとも思います。


99 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 22:20:02.85 ID:fa4n+iTZO

( ´ω`) 「のーべるしょう? どんなしょうだお?」

( <●><●>) 「簡単に説明しますと、人類のためになった人に贈られる、世界的に名誉ある賞です」

ブーンに簡単に説明をするという私の役目が取られたかと思いましたが、まだまだ甘いですね。
そのくらいの簡単さではブーンには理解できません。
などと、自分でも妙だと思う謎の対抗心を抱きながら、ブーンにさらに簡単に説明しました。すごい賞です、と。

(〃^ω^) 「おー! ワカッテマスすごいお!」

(*<●><●>) 「ただ目指しているだけの身ですよ。本当に取れるかはわかりません」

( ><) 「……そんなの、無理に決まってるんです」

それまで、全く口を挟まなかったビロード君が小さくつぶやきました。
丁度話が途切れた時でしたので、その声は小さくても全員の耳に届いたはずです。

(゚、゚トソン 「ビロード君?」

( ><) 「なんでもないんです……」


101 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 22:21:28.09 ID:fa4n+iTZO

( <●><●>) 「……ビロード。確かに私では無理かもしれません」

( ^ω^) 「そんなことないお! ワカッテマス頭いいお! ぜったいのーべるしょう取れるお!」

( <●><●>) 「ありがとう、ブーン。ですが、難しい夢なのはわかってます。……だからといって簡単には諦めませんがね」

ワカッテマス君はビロード君を見つめ、言葉を続けます。

( <●><●>) 「難しかろうが私は学習し、更なる知識を身に付け、いつかきっとノーベル賞を取りますよ」

ワカッテマス君は力強く、そう言い切りました。
ヒートちゃんにしろ、一応ツンちゃんにしろ、夢を語る時の夢見達の姿は、とても力強く、嬉しそうに見えます。

ビロード君は何も言いません。うつむいて……? 怒っているのだか泣いてるのだかわかりませんが、
その身体は震えてるように見えます。

ヽ(〃^ω^)ノ 「がんばれお! ブーンもいっしょにお勉強するお」

無邪気に応援するブーンですが、ワカッテマス君も満更ではなさそうです。
しかし、ビロード君の複雑な表情に気付くと、ワカッテマス君は表情を引き締めてビロード君に話しかけます。


109 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 22:28:57.40 ID:rIPlEs3w0

( <●><●>) 「ビロード、あなたも諦めずに自分の夢を見つけ、勉強を──」

(#><) 「うるさいんです! ワカッテマス君には関係ないんです!」

(゚、゚;トソン 「ビロード君?」

( <●><●>) 「ビロード……」

私には、ビロード君の怒りの原因が理解できず、寂しそうな表情のワカッテマス君の方を見つめていました。
ブーンも状況がよくわからないのか、私達3人の顔を代わる代わる見ています。

( ><) 「……都村先生、今日はもうおしまいなんです」

(゚、゚;トソン 「え、ああ、そうですね。時間は過ぎてますね」

私はどうすべきでしょうか。このまま2人だけにして帰るべきなのでしょうか。それとも……。

( <●><●>) 「都村先生、お疲れ様でした。後は……」

後は2人で話します、そういうことなのでしょうね。ワカッテマス君は私の方を見てゆっくりと頷きました。


111 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 22:31:05.80 ID:rIPlEs3w0

(゚、゚トソン 「わかりました。次回は──」

私は、次回の予定を確認し、ブーンといっしょにビロード君の家を出ました。

・・・・
・・・

(:^ω^) 「おー? ビロード、何で怒ってたんだお?」

(゚、゚トソン 「何故でしょうねー?」

あの2人、仲が悪いわけではなさそうなんですけどね。疲れてヘロヘロのワカッテマス君を心配していた
ビロード君の姿は演技などではなく、本当のものでしょう。
何かしら、わだかまりがあるようなのですが……。

しかし、私はただの家庭教師です。これ以上立ち入っても良いのでしょうか?
私の役目はビロード君に勉強を教えること、成績を上げることです。

( ^ω^) 「ねー、トソンー」

(゚、゚トソン 「何ですか、ブーン?」


113 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 22:33:38.30 ID:rIPlEs3w0

( ^ω^) 「僕、ビロードとワカッテマスと3人で遊びたいお」

私は、上の空気味でブーンの話を聞いていました。自分がどうするべきか決めきれずに。

( ^ω^) 「僕はビロードとワカッテマスに仲良くして欲しいお」

それは私もです。今のままでは、勉強の方にも悪い影響が出そうな気もしますし。

( ^ω^) 「いっしょに住んでるのにケンカはダメだお」

(゚、゚トソン 「……」

私は思わず足を止めました。

( ^ω^) 「お?」

(゚、゚トソン 「……そうですね。ダメですね、そういうのは」

時々、ブーンが羨ましくなります。私はそんなに物事を簡単には考えられません。
ビロード君とワカッテマス君2人のため、ただそれだけを考えたシンプルな答えです。


114 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 22:34:23.38 ID:rIPlEs3w0

(゚、゚トソン 「私に何が出来るかわかりませんが、やれるだけはやってみましょう」

(〃^ω^) 「うんお! 僕もいっしょにやるお!」

(゚ー゚トソン 「ええ、2人で仲直りさせてあげましょう」

それから私達は、仲直りさせるためにはどうしたらいいかを話しながら歩き出しました。

いつしか、私達2人が何をいっしょにやった時が1番楽しかったかの話になり、あれでもない、
これでもないと思い出話に花を咲かせながら部屋に帰りました。

(〃^ω^)(゚ー゚トソン


 〜 第五話 おしまい 〜

    − つづく −   


117 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 22:36:34.17 ID:rIPlEs3w0

 〜 第六話 〜


(゚、゚トソン 「……この部分はこちらを先に計算します。それで──」

( ><) 「!」

( ><) 「わかったんです!」

・・・・
・・・

(゚、゚トソン 「ここは──で、こちらは──ですね」

(;><) 「ええと…………。ごめんなさいなんです。もう1回お願いするんです」

・・・・
・・・

(゚、゚トソン 「……正解ですね。ではそろそろ中学1年生の問題に移りましょう」

(;><) 「やっとなんです……。てか、まだ2年生じゃないんですか?」


118 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 22:38:09.16 ID:rIPlEs3w0

(゚、゚トソン 「何事も段階を踏むべきですから。……ですが、確実に身には付いてきてると思いますよ?」

(*><) 「はいなんです!」

・・・・
・・・

あれから何度か授業を重ね、ビロード君は少しずつ勉強が身に付いてきました。
私が慣れてきたというのもありますが、それを差し引いても、授業がスムーズに進むようになりました。

授業の間、ワカッテマス君はブーンといっしょに外に行ったりしてもらって、
なるべくビロード君が集中できるようにしてもらったりもしました。
しかし、今の季節は雨の日が多いので、部屋にいることもありましたが、それでも以前よりは集中できているようです。

私が少しぐらいブーンやワカッテマス君と話していても気にしなくなってきました。

( <●><●>) 「なるほど、ここはそういう意味だったのですね……」

(゚、゚トソン 「そうです。ただ、文学などの解釈は、正確なところは作者本人にしかわかりませんからね」

さすがに、ノーベル章レベルとはいきませんが、ワカッテマス君は中学生レベルよりは高い水準の知識を
持っているようです。ビロード君の本では多少の物足りなさを感じるぐらいには。


120 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 22:40:10.11 ID:rIPlEs3w0

そういうわけで、いくつか私の部屋から持ってきた本をワカッテマス君に貸してあげています。
代わりにと言っては何ですが、ブーンはビロード君の本を貸してもらっています。

自分の本を貸すということは、必然的に自分の趣味を勧めているようなもので、それについてワカッテマス君と話すことが
少し楽しみになってきています。

ブーンも、3人で遊ぶという念願はかなっていませんが、私達と似たような理由でビロード君と仲良くなっているようです。

( <●><●>) (゚、゚トソン アーダ、コーダ

( ><) (^ω^ ) デスデス、オッオ

( <●><●>) (゚、゚トソン アーデス、コーデズ

( ><) (^ω^ ) ……

( <●><●>) (゚、゚トソン アーダ、コーダ

( >< ) ( ^ω^ )


121 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 22:40:46.40 ID:rIPlEs3w0

(゚、゚トソン 「どうしました、2人とも?」

(〃^ω^) 「トソンとワカッテマス、すっごいなかよしさんだお」

( ><) 「……」

(゚、゚トソン 「話が合うと楽しいものですよ」

私は先日の帰り道での思い出話や、ビロード君の本の話を例にあげ、ブーンに説明しました。
こういうものは、口で説明するよりは自分で体験した事の方がわかるでしょうからね。

(〃^ω^) 「おー。そうだおね。いっしょに好きなことのお話しするとすっごく楽しいお!」

( <●><●>) 「そうですね。私も大変有意義な時間を過ごさせてもらっています」

( ><) 「……です」

(゚、゚トソン 「ビロード君?」

( ><) 「そんなに都村先生がいいなら、最初っから都村先生の部屋に行けばよかったんです!」


123 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 22:42:22.87 ID:rIPlEs3w0

突然、ビロード君が叫びました。私は、何故ビロード君が急に怒り出したかわからず、何の反応も出来ませんでした。

( <●><●>) 「……そうですか。そうですね、その方が良かったのかもしれませんね」

(;^ω^) 「お……」

ワカッテマス君は、搾り出すような声で寂しそうに言いました。
この場面で、どちらにどういう言葉をかけるべきなのかわかりませんでした。

それでも、何か言わねばと思ったのは、年長者として、あるいは先生としての責任でしょうか。

(゚、゚トソン 「ビロード君。私はお2人がどういう経緯でいっしょに暮らしているのか詳しく聞いてはいません」

( ><) 「……」

(゚、゚トソン 「ですが、納得して2人で暮らしていたのなら、今の言葉は言ってはいけない言葉だとわかりますね?」

ビロード君は何も言いません。ワカッテマス君もです。ブーンだけが私の方をじっと見つめています。


124 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 22:43:32.81 ID:rIPlEs3w0

(゚、゚トソン 「もし納得していないのであれば、ワカッテマス君は私の家に来てもらいます。それでいいですか?」

(;><) 「だ──……」

( <●><●>) 「都村先生。申し訳ありませんが、本日はこの辺で……」

ワカッテマス君の目には懇願が色濃く現れていました。少しきつく言い過ぎたでしょうか。
それ以前に、私の言った事は正しかったのでしょうか?

私は、少々早いですが本日はこの辺で、と短く挨拶をし、ビロード君のお母さんにはビロード君の体調が
少し優れないようなので、と説明して家路に付きました。

・・・・
・・・

(゚、゚;トソン 「はぁ……」

( ´ω`) 「おー……」

何が悪かったのでしょうか? 何がビロード君を怒らせたのでしょうか?
私は雨の中、傘を差してブーンと並んで歩きながら今日の事を考えていました。


128 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 22:48:15.68 ID:fa4n+iTZO

(゚、゚;トソン 「ブーンはわかりますか?」

( ´ω`) 「おー? わからんおー。何でビロード怒っちゃったんだお?」

そうですよね、わかりませんよね。
どうしたらいいのでしょうね? 多分、ビロード君とワカッテマス君の間に時折見られるギクシャクした部分、
それがわかればもう少し考えようもあるのですが……。

(゚、゚トソン 「一度、ワカッテマス君から詳しく聞く必要がありますかね」

以前、ブーンを介してそれとなく聞いてもらってはいるのですけどね。返答は、見当も付かないということだったらしいですが。

取り敢えずの指針は決めたので、気持ちを切り替えて晩ご飯の献立を考えることにしました。

(゚、゚トソン 「ブーンは何が食べたいですか? ……ブーン?」

ブーンはまだしょんぼりしています。友達同士に目の前でケンカされたことがそんなにショックだったのでしょうか。
しばらく無言だったブーンは、おずおずと口を開きます。

( ´ω`) 「……トソンは、やっぱり話が合うワカッテマスといっしょの方がいいの──」


131 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 22:52:44.30 ID:fa4n+iTZO

イタタタタダオ ツネリ
( ゚ω゚>⊂(゚、゚トソン

(゚、゚トソン 「私はブーンといっしょに暮らしたくて暮らしているのですよ?」

( ´ω`) 「おー……」

(゚、゚トソン 「確かに、ワカッテマス君とは本の話題等、話が合って面白いです。それに今後のビロード君次第では、うちで一旦
      預かることになるかもしれません」

( ´ω`) 「お」

(゚、゚トソン 「ですが、預かったところでブーンがいる場所がなくなるわけじゃありませんし、ビロード君とワカッテマス君はいっしょに
      暮らすべきです。あの子達は、本当はお互いを大切に思っているようですしね」

ワカッテマス君はビロード君の勉強の事を気にかけています。日常の細かいことも、どうした方がいいような事をこっそり私に伝えて
くれたりもします。自分が伝えるよりは先生が伝えた方がビロードは聞くでしょうから、と。

ビロード君はビロード君で、授業の合間、たわいもない雑談になったときなどはよくワカッテマス君の話しをします。
自分の食事を分けているけど意外と好き嫌いが多いとか、寝相が悪いとかそんな些細なことです。


133 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 22:55:21.54 ID:fa4n+iTZO

(゚、゚トソン 「ブーンはもう少し、私を信じてくださいね?」

私も信じますから、ね?

( ´ω`) 「ごめんおー……」

(゚、゚トソン 「ダメです、今日はご飯抜きです。……いつまでもしょんぼりした顔をしている子はですけど」

( ゚ω゚) 「お! もう、しょんぼりしてないお! 僕は元気だお!!!」

(゚ー゚トソン 「冗談ですよ。さ、買い物をして帰りましょう。今日はショボンさんのお店にも寄りましょうか」

(〃^ω^) 「うんお! ショボンまんじゅう食べたいお!」

今泣いた烏がもう笑うではありませんが、ブーンはいつもの笑顔に戻り、私の周りを傘から出ないようにぐるぐる回ります。
私もちょっと意地悪して、ブーンから傘を遠ざけたりしてふざけ合いながら雨の商店街を歩いていきました。


 〜 第六話 おしまい 〜

    − つづく −   


137 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 22:58:45.79 ID:fa4n+iTZO

 〜 第七話 〜


その日も、6月らしい雨の日でした。

ピンポーン

(-、-トソン 

ピンポーン

(゚、゚トソン ?

ピンポーン

(゚、゚トソン 「はいはい」

ガチャ
(;<●><●>) 「こ、こ、こんにちは」

チャイムに呼ばれ、扉を開けた先にいたのは、幾分挙動不審のワカッテマス君でした。


140 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 23:01:57.60 ID:fa4n+iTZO

(゚、゚;トソン 「ど、どうされました?」

(;<●><●>) 「ビ、ビ、ビロ、ビロ、ビロー──」

(゚、゚;トソン 「ビロード君ですか? あれから1度も会っていませんが」

あの、ビロード君とワカッテマス君がケンカになったアルバイトの日からまだ数日しか経っていません。
次のバイトは確か明後日のはずです。

(;<●><●>) 「ビロ、ビロ、ビロー、ビロード──」

(゚、゚;トソン 「とにかく、落ち着いてください」

何とも要領の得ないワカッテマス君にお水を飲ませ、あまり関係ない話などをして落ち着かせることにしました。
何故このマンションがわかったかは、ブーンといっしょに走っていて教えてもらったそうです。

そうこうしている内に、ワカッテマス君は落ち着きを取り戻したようで、早速本題を切り出しました。

(;<●><●>) 「ビロードが家出をしてしまいました。こちらにお伺いしていないか来てみたのですが」


145 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 23:04:09.99 ID:fa4n+iTZO

(゚、゚;トソン 「家出ですか!? い、いえこちらには来ていませんが」

先程も申し上げましたように、あれから会っていませんし、そもそもビロード君はここを知らないでしょう。
ワカッテマス君の話では、家出するから探すなというような書き置きがあったので、慌てて家を飛び出したのが30分ほど前。
ビロード君にはその……友達が少ないと言うか、皆無なので、心当たりといえば私の所しかなかったらしいのでここに来たらしいです。

(;<●><●>) 「都村先生と言いますか、1番仲の良かったのが──」

(゚、゚;トソン 「ブーンですね」

確かに、あの2人は仲がいいですね。よくいっしょに本の話しをしたりしてました。
……そう言えば、今日はまだブーンが帰って来ていませんね。いつもならもう帰って来ていてもいい時間ですが。

(゚、゚トソン 「いつから雨が?」

ブーンが出かけているのは雨が降っていなかったからですが、今は結構な勢いで降っています。

(;<●><●>) 「1時間ほど前ぐらいからなのはわかってます」

気付きませんでしたね。確か本を読んでいたはずなのですが、チャイムの音に気付くまで意識をなくしていましたから。
つまりは眠っていたわけですが。


148 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 23:06:11.61 ID:fa4n+iTZO

(゚、゚トソン 「──これは?」

ふと気付くと、扉の郵便入れに白い紙が1枚挟まっています。
帰ってきたときには気付きませんでしたから、部屋にいる間に入れられたものでしょう。

私は、その紙を開き、中を確認しました。

『ブーンはいえでするお。トソンはさがしちゃダメだお。

 いつものところにいるかもだけど、ぜったいぜったいさがしちゃダメだお。

 さがしちゃダメだけど、ばんごはんはのこしておいてほしいお。

                                     ブーンより。』

(゚、゚;トソン 「これは……」

何でしょうね、これは? いえ、文面通りに捉えれば、家出の書き置きなのでしょうが、
どう見ても探してくださいと言われてるとしか取れない書き置きです。

しかし、このタイミングでここにあるこれが指し示すものと言えば……。


150 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 23:08:30.09 ID:fa4n+iTZO

私は、ブーンの書き置きをワカッテマス君に見せ、把握した状況を説明しようとしましたが、
書き置きを見るなりワカッテマス君は、

(;<○><○>) 「な、な、な、ななんということでしょう!? 恐らくこれはビロードが誘ってブーンもいっしょに
        家出をしたとしか考えられません」

再び混乱の海に沈みました。
2人がいっしょにいるという見解には同意しますが。

(゚、゚;トソン 「あの……」

(;<○><○>) 「この度はうちのビロードがこんなことをしでかして、誠に申し訳ありません」

(゚、゚;トソン 「あの、ワカッテマス君? ちょっと落ち着いてください」

(;<○><○>) 「お宅のブーン君に何か大事がありましたらこちらの責任において──」

     ズビシ!
(;<○><○(#⊂(゚、゚トソン オチツイテクダサイ


152 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 23:09:54.66 ID:fa4n+iTZO
・・・・
・・・

( <●><●>) 「取り乱しまして失礼致しました」

(゚、゚トソン 「という訳で恐らくブーンは私には居場所を知らせてくれたんだと思います」

理由はわかりません。家出をした理由もそうですが、これが本当に家出なのかもです。
私の予想では、家出ではないと思っています。若干希望的観測も含まれていますが。

(゚、゚トソン 「そもそも、ブーンには家出をする理由がありませんから」

昨日までのブーンにそういった様子はありませんでした。
私達は仲良くしてましたし。

……そう言えば昨日、誤ってブーンを踏ん付けた覚えが。
見たい番組がありましたから、テレビのチャンネル権は渡しませんでしたね。
野菜も食べなきゃダメですと言って、晩ご飯に大量の野菜サラダを付けましたね。
今日はコーヒーの気分だからと言って、ココアではなく強引にコーヒーにした気が。


157 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 23:12:26.25 ID:rIPlEs3w0

(゚、゚;;トソン

(;<●><●>) 「先生? 都村先生!?」

d(゚、゚;トソン 「だ、だ、だ、だ大丈夫ですよ、ブーンは家出なんかしませんからNE☆」

(;<●><●>) 「そ、そうですか?」

(゚、゚;トソン 「ですが、まあ、もう遅い時間ですし、雨も降っていることですから早めに迎えに行きましょうか」

私はそう言うなり出かける支度を一瞬で済ませ、外へ出ました。

(゚、゚;トソン 「では、行きましょう」

(;<●><●>) 「あの、都村先生? 歩幅の違いというものもありますので、もう少し歩調を──」

私達は、雨の中をブーンが大好きなあの公園へと向かいました。

・・・・
・・・


159 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 23:14:41.81 ID:rIPlEs3w0

私達が公園に着くと、そこには先客がいました。

('A`)ノ 「よう」

(゚、゚トソン 「キ──」

('A`) 「ドクオです、ドクオ。Dから始まるDO・KU・Oです。Kは付かないからねー?」

偶然会ったドクオさんは早口で私の言葉を制し、何やら自己主張を始めました。

(;<●><●>) 「何ですか、このキモいお方は?」

(;'A`) 「うわ、お前空気嫁よ。せっかく人が──」

(゚、゚トソン 「このキモいお方も、あなたと同じ夢見さんですよ、ワカッテマス君」

(;'A`) 「うん、何かもういいよ……」

ドクオさんは、何故か諦め切った口調でそういい、本題ね、と切り出されました。


163 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 23:16:17.71 ID:rIPlEs3w0

('A`) 「お前さんちの坊主はあそこいるぜ?」

そう言って、ドクオさんは以前、私がブーンと滑ったすべりだいを指差されました。
ドーム状になったあの中なら、確かに雨はしのげそうですね。

私達はこっそり行くと言う、ドクオさんの言葉に従い、すべりだいのそばまで大回りで歩いていきました。
すべりだいのそばまで近付き、中を伺うと、果たしてそこにはブーンとビロード君の2人が肩を寄せ合って座っています。

ドクオさんが耳に手を当て、話を聞けとジェスチャーで示されたので、ワカッテマス君と2人、
気付かれないように話を聞くことにしました。

( ><)

( ^ω^)

( ><) 「……はぁ」

( ^ω^) 「お? 家出あきたかお? おうち帰るかお?」


165 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 23:17:31.41 ID:rIPlEs3w0

(;><) 「か、帰らないんです! ワカッテマス君のいる家なんて帰りたくないんです」

耳に届いたビロード君の言葉に、隣にいるワカッテマス君が気落ちしたのが空気でわかりました。
私はそっとワカッテマス君の肩に手を当て、小声で、大丈夫です、と声をかけました。

( ^ω^) 「何でワカッテマスとケンカしてるんだお?」

(;><) 「ケ、ケンカしてるわけじゃないんです……」

( ^ω^) 「お? 違うのかお?」

(;><) 「……」

( ^ω^) 「ワカッテマスにひどいことされたのかお?」

(;><) 「……されてないんです」

( ^ω^) 「お?」

(;><) 「……ワカッテマス君は悪くないんです」


168 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 23:19:49.15 ID:rIPlEs3w0

──え? 私は思わず漏れそうになった声を慌てて押しとどめました。
同様に、ワカッテマス君もうろたえているようです。これは、どういう意味なのでしょう?

(;><) 「僕は……」

( ^ω^)

(;><) 「僕は……、弟が欲しかったんです」

ビロード君は訥々とその胸の内を語りだしました。
自分が人より背が低くてて、いつも小さな子ども扱いされること。
中学生になったけど、上手く話せなくて、友達がなかなか出来ないこと。

兄弟がいれば、そんな事にはならずに済むんじゃないか。できれば弟が欲しい。ずっとそう思っていた。
ビロード君は言います。

( ><) 「そんなある日、ワカッテマス君が部屋にいたんです」

( ^ω^) 「おー……」


172 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 23:20:59.66 ID:rIPlEs3w0

自分より小さいワカッテマス君。聞けば、自分が何故ここにいるのかわからない、他に行く当てもない。
自分にしか見えないワカッテマス君は、神様が自分にくれた弟だと思ったとのことです。

ビロード君はすごく喜びました、でも……。

( ><) 「ワカッテマス君は、僕より全然大人だったんです……」

そういうことでしたか……。
お兄ちゃんぶりたかったビロード君の元に現れたワカッテマス君は、私とも対等に話せるほど、精神的には成熟していました。

自分のやることに的確な助言や訂正をしてくるワカッテマス君。
一歩引いた態度で、ビロード君のわがままも優しく見守っているワカッテマス君。
自分の理解できないレベルの話を自分の先生としているワカッテマス君。

どれもこれも、ビロード君の欲しかった弟像からは遠くかけ離れたものだったのでしょう。

( <●><●>)

ワカッテマス君はビロード君の話をどんな気持ちで聞いてるのでしょうか?
私は、そろそろ2人の前に出て行くべきかと思い、立ち上がろうとしました。


173 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 23:22:09.10 ID:rIPlEs3w0

( ><) 「悪いのは僕なんです。ワカッテマス君にひどいこと言っちゃったんです。だから、探しに来るはずないんです」

( ^ω^) 「そんなことないお! ワカッテマスはぜったい来るお!」

私は、再びしゃがみこみました。出て行くのはワカッテマス君にお任せしましょう。

( ><) 「何でブーン君はそんなに落ち着いてるんですか? 都村先生は来てくれるんですか?」

(〃^ω^) 「トソンはぜったい来るお!」

('A`) 「……随分信頼されてるじゃねーか」

不意に横から小声で話しかけられました。そう言えばこの人まだいたんでしたね。
私は無言で頷き、再びブーン達の話に耳をそばだてました。

( ><) 「どうしてそんなこと言い切れるんですか?」

(;^ω^) 「おー? どうして? うーん……」

私は、少々不謹慎ながらも、ブーンがどんな風に答えてくれるのか期待しながら聞いていました。


176 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 23:24:43.42 ID:rIPlEs3w0

(;><) 「都村先生、結構厳しいんです。こんな馬鹿なことしちゃったら、後で絶対叱られるんです」

(;^ω^) 「おー、確かにトソンはきびしいおね……」

(゚、゚トソン

(;><) 「あんまり愛想がないんです。冗談とか言わなさそうなんです」

(;^ω^) 「そうだおね、でも、冗談は言うお。よくわかんないことばっかだけど」

(゚、゚トソン

(;><) 「そうなんですか?」

(;^ω^) 「うんお。よく、冗談です、って言われるけど、どれが冗談だったのかよくわかんないお」

(゚、゚トソン

(;><) 「そ、それはつらいんです……」


177 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 23:25:30.75 ID:rIPlEs3w0

(;^ω^) 「あいそがなさすぎるからもてないんだ、ってミセリが言ってたお。お? あいそがないと何が持てないのかお?」

(*><) 「え、都村先生モテないんですか? きれいな人だと思うんです。ってかミセリって誰ですか?」

ブツブツ
( 、 トソン 「ミセリは後で──ブーンは──ビロード君は見る目がありますね……」

(;'A`) 「ちょ、いたっ! 痛いから頭から手を離せ! 潰れる! 潰れる!」

( ^ω^) 「でも、僕は知ってるお。トソンはぶきよーってやつだお」

( ><) 「不器用ですか?」

( ^ω^) 「ホントはすっごくやさしいんだお。いつも僕のことを見ててくれるお」

( ><) 「……」

(〃^ω^) 「いつもいっしょにいてくれるんだお」

( ><) 「……」

(〃^ω^) 「だから、トソンはぜったい来るお!」


179 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 23:27:12.64 ID:rIPlEs3w0

ブーン……。そうですか、そうなんですね。
私がブーンの事を見ているように、ブーンも私の事を見ていてくれているんですね。

(〃^ω^) 「お! そうだお、元気がないときは歌うんだお! そうすれば元気になるお!」

(;><) 「う、歌うんですか!? でも、何歌っていいんだかわかんないんです!」

(〃^ω^) 「おっおおっおおおおおおおっお♪」

(;><) 「も、もう歌っちゃうんですか!?」

ブーンは元気よく歌いだしました。この歌は……いつものあれですか?

ヾ(〃^ω^)ノシ 「オブラディ♪ オブラーダー♪」

(;><) 「おぶら? おぶらだ? 何て意味なんですか?」

(〃^ω^) 「わからんお!」

(;><) 「えぇー!?」


183 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 23:28:43.39 ID:rIPlEs3w0

(〃^ω^) 「わからんけど歌うお! 歌えば元気になるお!」

(;><) 「……は、はいなんです」

ヾ(〃^ω^)ノシ「「オブラディ♪ オブラーダー♪」」ヾ(>< )

本当にブーンは成長しましたね。自分のことだけでなく、相手のことも気遣って元気付けようとしています。

(゚ー゚トソン 「Lala how the life goes on♪」

私が、ブーン達には聞こえない様にいっしょに歌っていると、いつの間にかワカッテマス君はそこにいませんでした。

ザツ
)

(;><) 「!」

(〃^ω^) 「お!」


184 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 23:29:13.15 ID:rIPlEs3w0

( <●><●>) 「ビロード……」

(;><) 「わ、ワカッテマス君!?」

(;^ω^) 「おー……?」

( <●><●>) 「ビロードの気持ちはわかりました。……すみません」

(;><) 「……」

( <●><●>) 「私は、自分がビロードを傷付けている事に全く気付けませんでした」

(;><) 「……」

( <●><●>) 「良かれと思った行いの1つ1つが、ビロードにとっては苦痛だったんですね」

(;><) 「……」

( <●><●>) 「本当に私は……、謝っても謝りきれません。ビロード、私は……」

あなたの部屋を出て行くことにします。ワカッテマス君は、そう宣言しました。
それはいつもの落ち着いた口調ではありましたが、とても寂しそうで、悲しい声音でした。


186 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 23:30:23.91 ID:rIPlEs3w0

( <●><●>) 「ですから、ビロードは自分の家にお帰りください。こんな所にいたら、夏とはいえ風邪をひきますよ?」

またお節介でしたね、そう言ってワカッテマス君は寂しそうに笑い、くるりと背を向けました。

(;^ω^) 「お──」

(;><) 「待ってくださいなんです!」

( <●><●>) 「……」

(;><) 「ワカッテマス君は悪くないんです!」

( <●><●>) 「いえ、私に配慮がなさ過ぎました」

(;><) 「違うんです! それは僕の……」

( <●><●>) 「自分の振る舞いが、人を気付ける可能性がある事を全く考えず──」

(;><) 「違うんです! 違うんです! 僕の、僕の──

( <●><●>) 「ビロード、私が──」


189 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 23:32:35.66 ID:rIPlEs3w0

(;><) 「僕のわがままだったんです!!!」

( <●><●>)

( ^ω^)

(゚、゚トソン

(;><) 「ワカッテマス君はワカッテマス君なんです」

( <●><●>)

(;><) 「僕より頭がいいんです。僕より大人なんです。僕より優しいんです」

( <●><●>)

(;><) 「ワカッテマス君は僕の弟じゃないんです。僕の、僕の──」

( <●><●>)

( ><) 「大切なお友達なんです!!!」


192 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 23:33:15.64 ID:rIPlEs3w0

( <●><●>) 「ビロード……」

( ; ;) 「ごめんなさいなんです。僕が変な意地張って、お兄ちゃんになりたくって……」

( <●><●>) 「いえ、ビロード、私が……あなたの気持ちを……」

ゲボァ!      オッ!    グハァナンデス!
(<●><●(#⊂(^ω^)⊃#);;)

(゚д゚;トソン !!!

(:><) 「ブーン君!? 何するんですか!?」

(;<●><●>) 「いきなり何を……!?」

( ^ω^) 「これがケンカりょーせーばいってやつだお。どっちも悪かったんだお」

(;<●><●>)(:><)!!!



195 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 23:33:39.66 ID:rIPlEs3w0

( ^ω^) 「どっちもごめんなさいするんだお!」

( <●><●>) (>< )

( ^ω^)" コクッ

( <●><●>)「「ごめんなさい(なんです)」」(>< )

ビロード君とワカッテマス君は、ブーンに言われるまま、素直にお互い頭を下げました。

ブーン、あなたはちゃんと学んでいるんですね。
自分がしてきたこと、良かったこと、悪かったこと、それらを通じて少しずつ、確実に。

(〃^ω^) 「お! それでいいお!」

( <●><●>) (>< )

(〃^ω^) 「あとはアレだお!」

( <●><●>) 「アレとは?」

( ><) 「何なんですか?」


197 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 23:34:21.26 ID:rIPlEs3w0

(〃^ω^) 「仲なおりのあくしゅだお!」

( <●><●>) (>< )

(*<●><●>)つ⊂(><*)

(〃^ω^) 「お!」

ビロード君とワカッテマス君は、再びブーンに言われるまま、どちらからともなく手を伸ばしました。

これで2人は上手くいきそうですね。
2人は、今まで見た中で最高の笑顔で固く手を握り合っています。

・・・・
・・・

( <●><●>) 「では、帰りましょうか」

(*><) 「僕達のお家に帰るんです!」

(;^ω^) 「おー…」


201 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 23:35:48.27 ID:rIPlEs3w0

( <●><●>) 「どうしました、ブーン?」

( ><) 「帰らないんですか?」

(;^ω^) 「おー…、帰るお、帰るけど……」

( ><)( <●><●>) !!!   (^ω^;)       d(>、<トソン シーッ!

( <●><●>) 「そう言えば、都村先生はいらっしゃらないですね」

( ><) 「そうですねー」

(;^ω^) 「お! トソンは来るお! ちょっと忙しくておくれてるだけなんだお!」

( <●><●>) 「そうですか。では、私達はこれで」

( ><) 「先に帰るんです」

(;^ω^) 「おー……。うんお……。トソンが来るからいいお」


202 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 23:37:07.51 ID:rIPlEs3w0

( <●><●>) 「大学の方が忙しいかもしれませんね」

(;^ω^) 「お! でも、トソンは来るお!」

( ><) 「お友達に誘われてるかも知れないんです」

(;^ω^) 「お! で、でも、でも、トソンは、トソンは──」

( ;ω;) 「ぜったい来るんだおー!!!」

(;ω;((-、-トソン ギュッ

( ;ω;) 「お?」

(-、-トソン 「はい、来ましたよ、ブーン」

( ;ω;) 「トソーン! おそいお! おそいおー!」

(゚、゚トソン 「ごめんなさい。ちょっとだけ意地悪したくなりました」


204 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 23:38:25.94 ID:rIPlEs3w0

( ;ω;) 「おー。僕、僕、来てくれると信じてたお。でも、でも──」

(-、-トソン 「ええ、わかってますよ。あなたはよくがんばりましたね、ブーン」

( つω;) 「うんお。僕、ビロードとワカッテマスに仲よくしてほしかったんだお」

( <●><●>) 「私達が仲良くなれたのはブーン君のお陰ですよ」

( ><) 「ありがとなんです!」

( つω;) 「お?」

(゚、゚トソン 「あなたは立派でした、ブーン。私はあなたを誇りに思いますよ」

( つω;) 「おー……、ほこりってなんだお? ゴミかお?」

(゚ー゚トソン 「違いますよ。あなたがすごいかっこよかったってことですよ」

( つω;) 「お! ホントかお……?」

(゚、゚トソン 「ええ、わかり難い言い方で申し訳なかったですね。……冗談同様」


210 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 23:39:49.91 ID:rIPlEs3w0

(;^ω^) 「──お!? き、聞いてたのかお?」

(゚ー゚トソン 「ええ、一部始終」

(;><) 「……ヤバいんです」

だからちょっとだけ意地悪しました。そう言って私は、ブーンの頭を優しく撫でました。
ちょっとおろおろしていたブーンですが、私の手付きから怒っていないことがわかったのか、
次第に穏やかな顔付きになっていきました。

(゚、゚トソン 「さあ、帰りましょうか。私達の家に」

(〃^ω^) 「うんお!」

( <●><●>) 「ビロード、私達も……」

(*><) 「はいなんです! 僕達のお家に帰るんです!」

だいぶ遅くなってしまいましたね。ビロード君達は家まで送っていきましょうか。
今日の晩ご飯は何にしましょう。やっぱりブーンの大好きなハンバーグですかね。


211 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 23:40:30.96 ID:rIPlEs3w0

(〃^ω^) 「お! そうだお! ビロード、ワカッテマス!」

( ><) 「なんですか?」

( <●><●>) 「なんでしょう?」

(〃^ω^) 「今度、3人でお外で遊ぶお!」

(*><)(*<●><●>) 「「はい(なんです)!」」

薄暗い、雨の公園に3人の声が響きます。
この雨があがったらきっとまた、3人の元気な声がこの公園に響くんでしょうね。

その時は私も、そばで見ていたいものですね。

(*<●><●>)(〃^ω^)(*><)   (゚ー゚トソン


 〜 第七話 おしまい 〜

    − つづく −   


212 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 23:41:17.08 ID:rIPlEs3w0

 〜 ( ^ω^)の日記 〜

 6がつ×にち あめ

きょうはビロードといえでしたんだお。
でも、ホントのいえでじゃないお。うそいえでだお。

トソンにはおてがみかいたんだけど、ちょっとわかりづらかったかもしれないお。
そのせいでトソンくるのおそくなったのかもしれないお。

ぼくはビロードとワカッテマスになかよくしてほしかったんだお。
ぼくはどうすればいいのかわからなかったけど、ビロードといっしょにいてあげればわかるかっておもったお。

うまくできたかわかんないけど、トソンはほこり?におもうってほめてくれたお。
うれしかったお。

でも、ほめられたことより、ビロードとワカッテマスがあくしゅしたことがうれしかったお。

こんど3にんでこうえんであそぶんだお。3にんでブーンってするお。


214 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 23:42:06.12 ID:rIPlEs3w0

 〜 (゚、゚トソンの日記 〜

雨が続く憂鬱な6月の日々ですが、今日はそんな気持ちも吹き飛ばしてくれるほど嬉しい事がありました。

ブーンの成長は本当に著しいですね。
自分で考え、自分の意見をちゃんと言える子になってきています。

それが正しいかどうかはまた別の問題ですが、間違っている場合はそばにいる私達が教えてあげればいいだけですからね。
教えて、教わって、私もブーンも、お互いに学び、そうやって成長して行くんですよね。

ビロード君とワカッテマス君、この2人との出会いは、私とブーンにとっても、大きな意味を持つものでした。

ビロード君の気持ちに気付けなかった私達ですが、そんな気持ちを吐き出す場を作ったのはブーンです。
ブーンのお陰で2人の間の溝は埋まりました。

本人はただただ、2人に仲良くなって欲しい一心で、自分なりの精一杯を尽くしたんだと思います。
結果的にはそれが実を結びましたが、もっと早くに私が気付いて、ブーンの事を助けてあげられれば良かったんですよね。

そこは反省すべき点ではありますすね。


215 :◆iW2kGg44LU:2008/11/20(木) 23:42:41.54 ID:rIPlEs3w0

しかし、コンプレックスですか。

他人事ではありませんね。
ブーンに指摘されたように、私は愛想という物に欠けてますし。
モテませんしね。

でも、こうやって他人の悩みを聞き、そのために奔走するのも悪くないですね。
家庭教師もなかなか楽しいです。
モテませんけどね。

そういう毎日の繰り返しで、自分のやれること、やりたいことが段々わかっていくのかもしれませんね。
良いことも、悪いことも、成功しても、失敗しても。
Lala how the life goes on 何があろうと人生は続いて行くのですから。
モテはしないですけど。

(゚ー゚トソン「まあ、ミセリは後日制裁を加えますけどね(笑)」


 − 第九章 歌と私と素直な気持ち おしまい −


   − 夢は次章へつづきます −   


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