10 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 21:49:31.71 ID:c5Te+aeG0

 − 第二十四章 過去と私と誰かの日記 −

 〜 第零話 〜


青いお空が見えるお。

曇ったお空が見えるお。

雨のお空は泣いてるみたいだお。

夕方の空は真っ赤できれいだお。

夜のお空はちょっと寂しいお。

お月さまがいると夜のお空も明るくなるお。

青いお空に白い雲がいっぱいあるお。

青いお空にお日さまがいるのが1番好きだお。


13 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 21:51:15.61 ID:c5Te+aeG0

( ^ω^) 「……」

お空を見てるお。

よくわかんないけど、僕はいつの間にかお空を見てるお。


( ^ω^) 「……」

あの雲に乗ってみたいお。

白くてふわふわで、乗れたらすっごく面白そうだお。


( ^ω^) 「……」

あのお空を飛んでみたいお。

青いお空をブーンって出来たら、きっとすっごく楽しいお。


でも──



14 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 21:52:39.30 ID:c5Te+aeG0

( ^ω^) 「……」

トソンといっしょにいたいお。

ずっといっしょで、ずっと大好きな家族だお。



「ブーン、お散歩行きますよ?」

(〃^ω^) 「お!」


僕は──

トあソのンおと空いをっ飛しんょでにみいたたいいおお。



 〜 第零話 おしまい 〜

    − つづく −   


18 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 21:54:38.28 ID:c5Te+aeG0

 〜 第一話 〜


おはようございます、都村トソンです。

(゚、゚トソン
つ〃^ω^)

3連休の初日、私達は朝から電車に揺られ、隣県、雲井ヶ浜まで向かっています。
世間的には月曜が祝日の2連休ですが、私達の学科は土曜日の授業が無く、普段から完全週休2日制です。

座れる程度の混み具合の電車なので、ブーンは私の膝の上です。
荷物は2日分の着替えぐらいで、大した物はありません。

ζ(゚ー゚*ζ 「この時間帯は割と混んでるんだねー」
つξ゚听)ξ

隣で同じ様にツンちゃんを膝に乗せて座るデレが話しかけてきます。
本当は、私とブーンの2人だけで行くつもりでしたが、訪問の目的を知ると皆、付いて行くと言い出しました。

川д川 「普段は電車に乗ること自体があまり無いからわからないよねー」
つパ听)

さらにその隣でヒートちゃんを膝に乗せた貞子が答えます。


22 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 21:57:17.59 ID:c5Te+aeG0

お世辞にも行楽に適したとは言い難い、灰色の空が広がる冬の日。
外の景色も見れず、ただ揺れるだけの退屈な電車の中、ブーン達3人は一見、大人しく座っています。

とは言うものの、ツンちゃんはともかく、ヒートちゃんはやはり退屈なのか、先程からきょろきょろと落ち着きのない様子です。
そして同じく退屈しているはずのブーンは、私の膝の上に妙に大人しく座っています。

(゚、゚トソン 「……」
つ〃^ω^) 「……」

ブーンも、この旅の目的はわかっています。
ちゃんと話して、2人でここに来る事を決めました。

静かなのは目的を理解しているせいかもしれません。
この、ブーンの記憶の紐を解く旅は、ブーンにとって、そして私にとって大きな変化をもたらす事になるかもしれないのですから。

( ^ω^) 「おー……」

(゚、゚トソン 「どうしました、ブーン?」

( ^ω^) 「お外見たかったお」


23 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 21:58:47.91 ID:c5Te+aeG0

(゚、゚トソン 「電車が混んでいて残念でしたね。空も曇ってますから、景色も冴えませんし」

( ^ω^) 「お空、曇ってたおね。晴れたお空の方がいいお」

私の危惧とは裏腹に、話していると普段のブーンと変わらないように思えます。
私は、ブーンの頭を撫で、退屈なら寝ててもいいと言いましたが、ブーンは首を振り、私に背中を預けます。

( ^ω^) 「起きてるお。トソンとお話しするお」

(゚ー゚トソン 「そうですか。じゃあ、何のお話をしましょうかね」

( ^ω^) 「そうだおねー、うーんと──」

私達7人を乗せた電車は、一路目的地へと走り続けました。

・・・・
・・・

ミセ*゚ー゚)リ 「とーうちゃーく!」

駅の正面口に接する数段の階段を、一飛びで降りたミセリが両手を体操選手の着地のように広げて宣言します。
相変わらずの子供っぽい所を見せるミセリですが、今回は皆、努めて普段通りに振舞おうとしている部分もあるのかもしれません。


27 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 22:00:35.94 ID:c5Te+aeG0

ζ(゚ー゚*ζ 「とうっ!」

ミセ;゚д゚)リ 「ちょ、ぶつかる!」

単におバカなだけかもしれませんが。

ξ゚听)ξ 「冬の海は寒いんでしょうね」

川д川 「確かに海風が冷たいね。まあ、今回は泳ぎに来たわけじゃないけど」

(゚、゚トソン 「さて……」

私は、3度目となる雲井ヶ浜駅前のロータリーを見渡します。
今回はここからバスで移動です。

ノパ听) 「どのバスだー?」

(゚、゚トソン 「えっと……あれですね、向こうの、2番目の……」

これと言って特徴のない、群青とにシルバーの混ざった車体のバスが数台見えます。
お目当てのバスはまだ来ていないようです。


30 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 22:02:17.90 ID:c5Te+aeG0

( ^ω^) 「お……。くもいがはま……えん? 何て読むんだお?」

(゚、゚トソン 「それは“れい”と読むのですよ。雲井ヶ浜霊園行きです」

そう本数の多いバスではないらしく、1時間に2、3本しかありません。
あと10分ほど、ここで待たなければならないようです。

ミセ;゚ー゚)リ 「しっかし、何でわざわざ墓前で待ち合わせかねぇ?」

ミセリがぼやく様に不満を口にします。それに対する解答は何度も伝えたはずですが。
相手側の希望だと。

ζ(゚ー゚*ζ 「どんな人なのか、そのお孫さんって人」

それに対する情報も、知ってる限り伝えはしたのですがね。
大学の準教授で、民俗学を研究しておられる方だと。
さすがに、人柄などはわかりませんが、少なくとも、全く面識のない私の突飛な申し出を聞いて頂けるのですから、
話のわからない方ではないのでしょう。

その研究分野も関わってくるのかもしれませんが。


31 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 22:03:59.59 ID:c5Te+aeG0

川д川 「荒巻さんのお孫さんか……」

件の、恐らく昔ブーンといっしょにいたはずの荒巻という名の人物。
ドクオさんの情報で住所がわかりましたので、それを元にしてさらに情報を集めた所、確かにその場所にはかつて、
荒巻スカルチノフという老人が住んでおられました。

ξ--)ξ 「ま、行けばわかるわよ」

今回の情報収集にはシャキンさんやでぃさん、そしてロマネスクさんにもだいぶお世話になりました。
シャキンさんの旅館は、日帰りの温泉利用でそれなりに人が集うので、そういった情報集めには適していたようでした。

それらの情報を繋ぎ合わせ、何とかその親族の方に辿り着いたのが今から約1週間前。

ノハ*゚听) 「バス来たぞー」

最初は、今日会う方とは別の親族の方で、当然といえば当然のごとく、全く縁もゆかりもない私の、さらには全く意味不明とも言える
面会の申し出に難色を示されました。
あれでもこの辺りでは一応の名士で通ってるシャキンさんのお陰で、こちらの身元は保証され、それで何とか会ってくれる方が見つかりました。


34 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 22:05:43.99 ID:c5Te+aeG0

( ^ω^) 「トソーン、バス乗るお。行っちゃうお?」

(゚、゚トソン 「大丈夫ですよ。ここが出発点みたいですから、かなり早めに来てるみたいです」

( ^ω^)σ 「お、でも──」

ミセ*゚∀゚)リノシ

なるほど、真っ先に乗り込んだミセリが最後尾の座席で手を振っているのが外からでもわかります。
まあ、他に乗る人も少ないみたいなので迷惑にはならないでしょう。
私は、ブーンを連れてバスに乗り込み、前列の方に座ろうとしたら、後方から走ってきたミセリに腕をつかまれ、引っ張られました。

(゚、゚;トソン 「別にどこに座ろうがかまわないでしょう?」

ミセ*゚д゚)リ 「集団行動乱すなよ」

同じバスに乗っていますし、目的地は終点なのですから、席はどこでもいいのですけどね。
そんな事で言い争っても仕方ないので、私は肩をすくめて最後尾の席の右側に座りました。

ζ(゚ー゚*ζ 「よいしょっ、と」


36 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 22:08:55.23 ID:c5Te+aeG0

(゚、゚トソンζ(´ー`*ζ川д川
(〃^ω^)ξ゚听)ξノパ听)

ミセ;゚ー゚)リ 「……あれ?」

ζ(´ー`*ζ 「どうしたの、ミセリちゃん? 座らないの?」

ミセ;゚ー゚)リ 「え、いや……座るけど、その、私の座る場所は?」

ξ゚听)ξ 「1つ前がどちらも空いてるじゃない?」

ミセ;゚ー゚)リ 「……うん、空いてるね」

ミセリはちらちらとこちらを眺め、何か言いた気な様子でしたが、諦めて前の席に座りました。
まあ、最後尾は4人でも座れたのですが、ブーンたちも合わせれば既に6人で座ってますからね。
席は空いてますし、ずっと膝の上はそれなりに疲れますから、余裕を持って座っています。

(〃^ω^) 「ねートソン、お菓子食べてもいいかお?」

(゚、゚トソン 「ええ、いいですよ。電車の中では我慢しましたしね。でも、折角だからバスが走り出してからにしましょうか。
      景色を眺めながらの方が美味しそうです」


38 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 22:10:27.21 ID:c5Te+aeG0

ノハ*゚听) 「貞子! 貞子!」

川ー川 「うん、いいよ。私達も走り出してからにしよっか」

ζ(´〜`*ζ 「……モグモグ」

ξ゚听)ξ 「……いつ取り出したのよ?」

ζ(´ー`;ζ 「な、何の事かなー?」

ミセ*;ー;)リ 「お前ら楽しそうだなー」

やがてバスのエンジン音が響きだし、出発を告げるアナウンスが聞こえます。
今朝起きた時は、相応に強い気構えで臨んでいたのですが、いつの間にか普段通り、皆で遊びに行くノリになっている気がしなくもありません。
まあ、それがいつもの私達なのですから、仕方なくもあり、頼もしくもありますよね。

バスは緩やかに走り出し、ブーン達はお菓子をバッグから取り出しました。


 〜 第一話 おしまい 〜

    − つづく −   


40 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 22:12:51.34 ID:c5Te+aeG0

 〜 第二話 〜


雲井ヶ浜霊園は、ここら辺りではそれなりの規模の霊園のようです。
その性質上、とても静かな雰囲気で井然と墓標が立ち並んでいます。

さすがに手ぶらで行くわけにも行かないので、入り口の所で献花を買いました。
お供え物はあらかじめお饅頭を買ってあります。

川д川 「荒巻さんのお墓の前で待ち合わせだったよね」

(゚、゚トソン 「ええ。約束の時間よりは早いので、先にお参りさせてもらいましょう」

全く面識のない方のお墓なのですが、ブーンといっしょにいらした方です。
ブーンの様子を見る限りでは、きっといい接し方をしていてくれていたのでしょう。
その事について、感謝の意は込めたいと思います。

もちろん夢の件はありますが、ドクオさんとペニサスさんの話を聞いた後では、理由も知らずに責める事は出来ません。

・・・・
・・・


43 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 22:15:04.71 ID:c5Te+aeG0

ζ(´ー`;ζ 「うひー」

川;д川 「階段多いねー」

(゚、゚;トソン 「まあ、霊園ですからね……」

郊外型とは言え、全て平地にというわけにもいかないでしょう。
荒巻さんのお墓は霊園の中ほどで高さも中ほどにありました。

ブーン達は急な階段が珍しいのか、無駄に上り下りして遊んでいました。
その元気を少し分けて欲しいと思います。

ヾミセ*゚ー゚)リσ 「これみたいだねー」

同じく元気の余っている、ミセリが先の方で1つのお墓を指差し、こちらに手を振っています。
私達は全員、そのお墓の前に立ちました。

ノパ听) 「この中に、荒巻ってやつが寝てるのかー?」

川д川 「うん、まあ、そういう考え方でいいかな」


46 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 22:17:03.82 ID:c5Te+aeG0

( ^ω^) 「……」

(゚、゚トソン 「……」

私達は、簡単にお墓の周りを掃除して、お花とお饅頭を供えました。
袋から饅頭を取り出した時、自分の失態に気づき握り潰しそうになりましたが、他に代わりの物もないのでそのまま供えました。
さほど長い期間放置されている様子でもないので、それほど掃除には手間はかかりませんでした。

(゚、゚トソン 「さあ、ブーン」

( ^ω^) 「お……」

( -ω-)(-、-トソン

私達は目をつぶり、無言で手を合わせます。
私は、心の中で荒巻さんへブーンといっしょにいてくれた事への感謝の言葉を述べましたが、ブーンは何を思って手を合わせているのでしょうね。

ζ(゚ー゚*ζ 「さて、これからどうしようか?」

ξ゚听)ξ 「どうしようも何も、ここで待ってるしかないでしょ?」

川д川 「そろそろ時間だし、その人も来るんじゃないかな?」


49 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 22:19:01.97 ID:c5Te+aeG0

ミセ*゚ー゚)リσ 「あれかな?」

ミセリが指を差した方向を見ると、1人の女性が階段を上がってきます。
少々場違いと思える白衣を着た、金髪の眼鏡をかけたその女性の視線がこちらを向いているようです。

ミセ;゚ー゚)リ 「外人さん? あー、ハロウ? ナイスツーミーチュー?」

ハハ ロ -ロ)ハ 「日本語でかまわんよ。こんにちは、君が都村君かい?」

(゚、゚トソン 「私が都村です。始めまして、荒巻さん。わざわざお越し頂いてありがとうございます」

荒巻ハローさん。私達とは別の大学の準教授で民俗学を研究されておられるのは前述の通り。
年の頃は30前、事前の調べによるとアメリカ人とのハーフとの事。
大学繋がりでミルナ先生、と言いますかヘリカル先輩を通じてその辺りは調べが付きました。

どうやら多少、警戒心を抱かれているようです。
あまり友好的とは思えない空気をまとわれています。

ハハ ロ -ロ)ハ 「ハローでかまわない。それで、電話での件だったね、祖父の」

(゚、゚トソン 「ええ、ハローさんのお爺さま、荒巻スカルチノフさんのお話です」


52 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 22:20:48.69 ID:c5Te+aeG0

ハハ ロ -ロ)ハ 「単刀直入に聞くよ。何故、祖父の日記の内容を知っている?」

(゚、゚トソン 「電話でお話した通りです」

荒巻さんがブーンについて何か記した物があるかどうかわかりませんでした。
ですから、親族の方に、何か白い生き物について記した物がないかどうか問い合わせました。
その結果、その事に心当たりがあったらしいハローさんに繋がったわけです。

ハハ ロ -ロ)ハ 「OK、その証拠は?」

(゚、゚トソン 「あるにはあったのですが……今、私達が何人に見えますか?」

ハハ ロ -ロ)ハ 「……眼鏡はかけているが、見えないわけではないぞ?」

(゚、゚トソン 「ええ、そうでしょうね。では、何人ですか?」

ハハ ロ -ロ)ハ 「……4人だ。随分と大人数なのは何か意味があるのか?」

(-、-トソン 「……なるほど。では、証拠をお見せするのが難しくなりましたね」

私は、夢見という存在について、現在わかっている事を簡潔に説明しました。
話中、ハローさんは終始厳しい表情で黙って聞いておられました。


55 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 22:22:58.43 ID:c5Te+aeG0

(゚、゚トソン 「……というわけなのですが、正直な所、見えない方には何とも証明のしようがないのですよね」

ハハ ロ -ロ)ハ 「……率直な感想を述べてもいいかな?」

(゚、゚トソン 「どうぞ」

ハハ ロ -ロ)ハ 「お前達の頭は大丈夫か? それか、集団催眠にかかったような覚えは?」

ζ(゚ー゚;ζ 「うわ……、取り付く島もないね」

川;д川 「本来はこれが正しい反応なのかもしれないけどね」

ミセ;゚ー゚)リ 「てか、民俗学者なんでしょ? 不思議学問じゃないの? そういうの、信じないとか──」

ハハ ロ -ロ)ハ 「民俗学は民間伝承を資料とするが、人間の営みの中で伝承されてきた現象の歴史的変遷を考察し、
        現在の生活文化を相対的に説明しようとする学問だ。君が言うような物が全てではない」

無論、柳田国男の遠野物語のような例もあるがね、とハローさんは続けられます。
ガチガチのリアリストというわけでないのでしょうが、どうもこちらの、夢見の件には懐疑的なようですね。

私は、民俗学に関しては聞きかじった程度の知識しかありませんから、今のハローさんの態度が民俗学者として自然なのか
不自然なのかの判断はつけられませんが、どことなく、そういった主義以外の点で何かあるような感じを受けなくもありません。


56 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 22:24:34.49 ID:c5Te+aeG0

ミセ*゚ー゚)リ 「何かいい手はないかな? こう、ブーンちゃん達の存在が明確にわかるような……」

ハハ'ロ -ロ)ハ 「……」

(゚、゚トソン 「?」

ノパ听)ノ 「いい手があるぞー」

川д川 「何、ヒートちゃん?」

ノパ听) 「私があいつぶっ飛ばせば、わかる──」

ゴチン!

ξ--)ξ∩" 「却下。確かに、何かしら怪異の存在は感じさせられるかもしれないけど、それは私達の存在を示す手段にはならないわ」

そうですね、何かしらの不思議の存在はアピールできても、それが超能力だとかトリックだとか、色々と話がややこしくなりそうです。
何かしら、ブーン達にしか出来ない事、ないし、ブーンと荒巻さんの間のつながりを示さないことにはダメかと思います。

と言いますか、暴力はダメですよヒートちゃん。それとツンちゃんも。


59 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 22:26:29.40 ID:c5Te+aeG0

ハハ ロ -ロ)ハ 「なるほど。なかなか念の入った事だ。それか、本当に信じ込んでいるのかだが……」

ハローさんから見て何もない空間に話しかける私達を見ての感想なのでしょう。
恐らく、息がぴったりあった寸劇に見えるのでしょうね。

(゚、゚トソン 「信じてもらえなくても、その荒巻さんの日記を見せていただければそれでいいのですが」

できれば、荒巻さんの家の中も見せて欲しいと重ねて頼みますが、やはり、得体の知れない上に、どうにも怪しい集団である私達に
見せるのは出来ないとの事です。

ミセ*゚д゚)リ 「んだよ、ケチ臭いなー。わざわざ隣の県から電車乗って来たんだし、そのくらい──」

ドカッ!

ξ--)ξ∩" 「それは人に物を頼む態度じゃないでしょう」

ハハ ロ -ロ)ハ 「……発作か?」

(-、-トソン 「態度が悪いと注意されたのですよ」

ツンちゃんに殴られ、よろけるミセリを見てハローさんがそう言われましたので、一応説明はしておきました。
それを聞いて肩をすくめるハローさんは、やはり信じておられないようですね。

ただ、先程までお話の流れで少しだけ気になった事があります。


62 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 22:29:07.22 ID:c5Te+aeG0

(゚、゚トソン 「ブーン、ちょっとこっちに来てください」

ハハ'ロ -ロ)ハ 

( ^ω^) 「お?」

私の呼びかけに、少し離れた場所で立っていたブーンがトテトテと走ってきます。
どうもハローさんの雰囲気がちょっと怖いようで、少し不安げな顔つきで私の足にしがみつきます。

(゚、゚トソン 「ここにいるのがブーンです。荒巻さんの日記にあった白い生き物、そして恐らく、ブーンという名前も日記にあったのでは?」

私は、ブーンを自分の足からやんわりと離し、隣にちゃんと立たせました。
ハローさんは私が左手で指し示す方向にじっと目を向けています。

ハハ ロ -ロ)ハ 「……どこで日記の中身を知った?」

(゚、゚トソン 「だから、それは電話で、今ここで話した通りです。推測にしか過ぎません。ですが……」

ハハ ロ -ロ)ハ 「ですが?」

(-、-トソン 「ブーンの名前に関してはあなたの反応を見て確信しました」


64 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 22:31:01.17 ID:c5Te+aeG0

ブーンの名前を聞いて眉をひそめるハローさんを見て、その名前をご存知なのは想像が付きました。
何かと混同しようもない、明らかに固有名詞ですからね。それを持ち出した私達に疑問を感じざるを得ないでしょう。

( ^ω^) 「ねー、トソン」

(゚、゚トソン 「どうしました、ブーン」

( ^ω^) 「この人、何で怒ってるのかお?」

(゚、゚トソン 「さあ、何故でしょうね」

( ´ω`) 「ひょっとして、僕の事、怒ってるのかお?」

(-、-トソン 「それは違うと思いますよ」

信じていないと言い張るならブーンに対して怒る理由はありませんからね。怒るなら私にでしょう。
私は、ブーンの頭をやさしく撫で、ブーンが怖がってる事をハローさんに伝えます。

ハハ ロ -ロ)ハ 「怒ってはいない」

ミセ*゚ー゚)リ 「その割には表情固いっスよね?」

ζ(゚ー゚;ζ 「ミセリちゃん、失礼だよ」


69 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 22:33:25.61 ID:c5Te+aeG0

ハハ ロ -ロ)ハ 「これが普通でね、すまないな」

ミセ*゚ー゚)リ 「あらま。何て言うか、昔のトソンみたいだね」

(゚、゚トソン 「私はあんなに引きつってましたか?」

ハハ ロ -ロ)ハ 「What?」

川;д川 「ちょ、トソンちゃん!」

(゚、゚トソン 「失礼。失言でした。その、肌年齢の違いというものを考慮してませんでしたね」

ハハ#ロ -ロ)ハ 「……」

ξ;゚听)ξ 「あんたが怒らせてどうすんのよ?」

(゚、゚トソン 「ブーン、これがこの人の怒った状態です。ほら、先程までは怒ってなかったでしょ? ブーンは何も悪くありませんよ」

(〃^ω^) 「お!」

(;^ω^) 「でも、今は怒っちゃってるお? いいのかお?」


74 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 22:35:04.07 ID:c5Te+aeG0

そう言われればそうですね。交渉相手の状態としては少しまずいかもしれません。
ブーンの誤解を解くのが先決だったので、他の事は後回しにしてしまいました。

(゚、゚トソン 「すみません。つい本──」
モガッ
(゚-⊂川;д川 「すみません、すみません、この人ちょっと口が悪いとこがありましてですね、冗談もわかり辛くて……」

私が謝ろうとすると、貞子がものすごい勢いで遮り、言葉を補います。
どういうつもりでしょうね? 私はただ謝罪をしようとしただけですのに。

ξ゚听)ξ 「落ち着きなさいよ。あんたは怒る理由もわかるけどさ」

(゚、゚トソン 「私が……怒ってる?」

ツンちゃんがやんわりと私を諫めます。ブーンがそっと私の手を握ります。
しかし、私が怒ってるなどと不思議な事を──

(゚、゚トソン 「……ああ、そうですね。私は──」

怒っていたのですね。


77 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 22:36:39.35 ID:c5Te+aeG0

ハハ ロ -ロ)ハ

目の前のこの人、ブーン達の事を認めないこの人に。
私と、ブーンとの今までを全て否定するこの人に。

怒りの矛先をこの人に向けるのは間違っているのはわかります。
でも、私は怒っているのですね。

(-、-トソン 「すみません。少し取り乱しました。非礼をお詫びします」

ハハ ロ -ロ)ハ 「……気にしてないよ。で、話は終わりかな?」

(゚、゚トソン 「いえ、終わってません。終わってませんが、もう、日記とか荒巻さんの事はいいです」

ζ(゚д゚;ζ 「ちょ、トソンちゃん!? 何を言い出すのかな?」

ハハ ロ -ロ)ハ 「そうか。では、認めるのだな。君らの言う事が全て──」

(゚、゚トソン 「いえ、その逆です。ここからは荒巻さんとの事は関係なく、これは私とあなたの問題です」


82 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 22:38:56.36 ID:c5Te+aeG0

私の言葉にハローさんは訝しげに首をひねられます。
きっと私が何を言いたいのか理解できないのでしょう。
何せ私は、ここに来た目的を放棄すると言っているのですから。

ハハ ロ -ロ)ハ 「どういうことかな?」

(゚、゚トソン 「あなたは、ここにいるブーン達を認めないと仰られます。ですが、私は、私達はブーン達と共に
      この1年余りをいっしょに過ごしてきました」

ハハ ロ -ロ)ハ 「……」

(゚、゚トソン 「それは私にとって、掛け替えのない大切な時間です」

ハハ ロ -ロ)ハ 「……」

(゚、゚トソン 「そんなブーン達との時間を否定されるのは許せません。理不尽かもしれませんが、私はあなたに怒りを覚えます」

ハハ ロ -ロ)ハ 「……」

(゚、゚トソン 「日記とか、そういうのはどうでもいいです。ですが、ここにいるブーン達をウソだと仰るのは止めてください。
      ブーン達を認めてください。彼らはここにいて、私たちといっしょに生きています!」


87 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 22:41:27.13 ID:c5Te+aeG0

私が言いたいのはそれだけです。
私はしゃがみ込み、側でずっと手を握っていてくれたブーンをそっと抱き寄せます。
ごめんなさい、とブーンに謝りましたが、ブーンは謝る意味がわかんないと微笑んで、私の頭を撫でてくれます。

(〃^ω^((-、-トソン

ハハ ロ -ロ)ハ 「……」

ミセ*゚ー゚)リ 「まあ、うちのリーダーがそう言うので……」

川д川 「わざわざご足労頂いてなんですが」

ζ(゚ー゚*ζ 「私達の言いたい事はそれだけですので、この辺でお開きですね」

そう言って、ミセリ達3人は深々とハローさんにお辞儀をしました。
その後ろで元気良くお辞儀をするヒートちゃんと、肩をすくめてため息をつくツンちゃんの姿も見えます。

ペコッ
"(-、-トソン

私は立ち上がり、無言で一礼し、立ち去るべくブーンの手を引こうとしましたが、ブーンは私の手を振り解き、
ハローさんの前に走り出ます。


89 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 22:43:58.63 ID:c5Te+aeG0
     ペコッ
(〃^ω^)" 「ごめんなさいでしたお」

(゚、゚トソン 「ブーン……」

ハハ ロ -ロ)ハ 「?」

ブーンも一応の状況は理解しているはずです。
自分と昔いっしょにいたはずの荒巻さんが亡くなった事、その家族の方に会うこと。
今の謝罪は、どういう意味合いがあったのか私は素直にブーンに聞いてみることにします。

( ^ω^) 「お? 僕たちのせいで怒ったんだお? それなら謝らなきゃダメだお?」

(゚、゚トソン 「怖かったのでは?」

( ^ω^) 「怖かったけど、悪いことしたら謝らなきゃだお。それに、よくわかんないけど、
       あの人からちょっとだけ懐かしい感じがしたお」

(゚、゚トソン 「……懐かしい……ですか?」

単純にこちら、というよりは私が怒らせたのですが、それに対する謝罪だったようですね。
そういう所は偉いと褒めたあげたいですが、今はそういう場面でもないですし、その後が気になります。


95 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 22:45:46.33 ID:c5Te+aeG0

ハハ ロ -ロ)ハ 「何の話だ?」

(゚、゚トソン 「ブーンがあなたから少しだけ懐かしい感じを受けたそうです」

ハハ ロ -ロ)ハ 「……懐かしい? ……私は、ずっと祖父の家にはいってなかった」

(-、-トソン 「あなたと荒巻さん、どこか似た所でもあるのではないのですか? ご家族ですしね」

それと、ブーンが怒らせたことの謝罪をしたことも告げました。
それだけ言うと、私はもう、言うこともなくなったので再び軽く一礼して去る事にしました。

ハハ ロ -ロ)ハ 「──Hey」

(゚、゚トソン 「何でしょう?」

ハハ ロ -ロ)ハ 「君達の今後の予定は?」

(゚、゚トソン 「今日は旅館に泊まって、明日また調査と言うか、出来れば荒巻さんのお宅にお邪魔したかったのですが……」

ζ(゚ー゚*ζ 「予定なくなっちゃいましたね」

ミセ*゚ー゚)リ 「まあ、でも知り合いの旅館なんでこのまま帰るのもなんですから泊まっていきます」


98 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 22:47:21.62 ID:c5Te+aeG0

ハハ ロ -ロ)ハ 「その旅館の名前は?」

川д川 「るんるん雲井ヶ浜です。海沿いの」

ハハ ロ -ロ)ハ 「hum……あそこか。老舗の中々いい旅館だな」

(゚、゚トソン 「ご存知ですか?」

ハハ ロ -ロ)ハ 「この辺りでは有名だしな。立地条件のせいで多少損はしてるが料理も美味い」

そう言えば今回の情報収集にもシャキンさんの名士的立場のお陰な部分もありましたから、有名なのは有名なのでしょうね。
どうもあの顔を思い浮かべるとそんな気が失せますが、一応は事実なのでしょう。
しかし、ハローさんが何故そんな話を振られるのかが理解できず、私達はハローさんに話の先を促します。

ハハ ロ -ロ)ハ 「……君は鋭いようで意外と鈍いのか? 明日は予定が無いのだね?」

(゚、゚トソン 「ええ、特にはありませんが──」

ハハ ロ -ロ)ハ 「明日の朝、るん雲まで迎えに行く」

(゚、゚トソン 「それは──」


101 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 22:49:06.27 ID:c5Te+aeG0

ハハ ロ -ロ)ハ 「気が変わった。連れて行ってやる」

(゚、゚トソン 「……え?」

ハローさんの突然の心変わりに驚いた私は二の句が告げず、ただ一言、何故と搾り出せただけでした。

ハハ ロ -ロ)ハ 「気が変わった。それだけだ」

行かないのか、と続けて聞かれたので慌てて行きますと答え、ただハローさんを見つめます。
眼鏡のせい、というわけでもないのですが、ずっと変わらぬ仏頂面も相まってその真意が読み取りづらいです。

ハハ ロ -ロ)ハ 「それなら今日はもう話すことは無い。私は墓参りをしていくので出来れば1人にしてくれるか?」

ミセ*゚ー゚)リ 「あ、はい。私らはもう、行きますね」

ζ(゚ー゚*ζ 「ありがとうございました」

川д川 「それでは、お先に……」

ハローさんは私達に背を向け軽く片手を振られました。
そしてお墓の前に歩いて行かれたようですが、途中で立ち止まり、何故か再び私達を呼び止められます。


104 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 22:50:31.94 ID:c5Te+aeG0

ミセ;゚ー゚)リ 「何ですか? 行けって言ったり待てって言ったり……」

ハハ;ロ -ロ)ハ 「いや、その、1つ聞きたいことが出来たんでね……」

そう仰られ、ハローさんは荒巻さんのお墓を指差されます。
正確には、お墓の前、私達が供えたお花の横、同じく私達が供えた例の供物……お饅頭。

(哀;ω;`)

川;д川 「ああ……」

ハハ;ロ -ロ)ハ 「君達の住んでいる地方ではあれが墓前に供える一般的な物なのかね?」

(゚、゚;トソン 「いえ、それはその、何と言いますか手違いがありまして……」

ある意味至極当然の反応をされたハローさんに、私達はただただ、謝罪の意を表すしかできませんでした。
墓参りなど率先して行く事の無かった私達は、ショボンさんに相談し、お供え物に適したお饅頭を用意してもらう事にしましたが、
その中身までは確認していませんでした。


111 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 22:53:01.02 ID:c5Te+aeG0

さすがに墓前にあれは無いだろうと油断していた部分もあります。

ハハ;ロ -ロ)ハ 「い、いや、君達がこの辺りを掃除してくれたのも花を供えてくれたのもわかってるし、ちゃんと故人に敬意を
        払ってくれているのもわかってるんだが……」

(゚、゚;トソン 「これは引き取った方がいいですよね、やっぱり……」

ハローさんはすまなさそうに、しかし、はっきりと頷かれました。
幸いにも、ハローさんもお供え物を用意されていたようですので、そちらをお供えしてもらうことにします。

ハハ;ロ -ロ)ハ 「すまない。さすがにそれはちょっとその……」
 _, ,_
(-、-;トソン 「キモいですよね、ぶっちゃけると……」

私達は無言で見つめあい、同時に1つ頷きました。
何やら妙なところでちょっとわかり合えた気がします。
こういうのもケガの巧妙というのでしょうか?

(゚、゚トソン 「ブーン、これは食べちゃってもいいですよ」

(;^ω^)つ(哀;ω;`) 「お……、ちょっといつものより食べづらい感じがするお……」


114 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 22:54:21.11 ID:c5Te+aeG0

珍しくブーンがショボン饅頭を前に躊躇っています。
しかしながら、味は相変わらず上々のようで、食べだすとペロりと平らげてしまいました。
ちなみに、3個セットだったので、残りはヒートちゃんとミセリのお腹に収まりました。

ハハ ロ -ロ)ハ 「Magic……」

(゚ー゚トソン 「違いますよ。ブーンが食べました」

ハローさんは私の手から件の物体が消えたことをマジックと称されましたが、私はそれを否定します。
ハローさんはただ、そうか、とだけ答え、再びお墓の方へ向かわれました。

ξ゚听)ξ 「んじゃ、行きますか」

(゚、゚トソン 「ええ、行きましょう」

私は最後に荒巻さんのお墓を一瞥し、心の中で感謝の言葉を述べ、その場を後にしました。


 〜 第二話 おしまい 〜

    − つづく −   


117 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 22:55:52.57 ID:c5Te+aeG0

 〜 第三話 〜


ヽ(*`・ω・´)ノ 「いらっしゃーい! 久しぶり──」Σζ(゚д゚;ζ

ウォォォォ!      プァッ!
ヽノパ听)┌┛#)`゚ω゚´).・。 ’

るん雲に着くと、シャキンさんが抱き付かんばかりの勢いで走ってこられましたので、取り敢えずヒートちゃんに沈めてもらいました。
と言いますか、どう見てもデレに抱きつく気満々でしたね。

(゚、゚トソン 「どうもお久しぶりです。再びお会い出来て幸いです。数日ですがご厄介になります」

(;`・ω・´) 「ひ、久しぶりだね。出来ればその足をどけて頂いてから再会を祝したいかなーと……」

先程からどうも足元がでこぼこしていると思ったら、どうやらシャキンさんを踏んでいたようです。
私はゆっくりと踏みにじるようにその場をどけ、数歩下がりました。

(#゚;;-゚) 「おや、いらっしゃい。久しぶりやね」

ミセ*゚ー゚)リξ゚听)ξ川д川ノパ听)「「「「「「「こんにちはー」」」」」」」ζ(゚ー゚*ζ(^ω^ )(゚、゚トソン

(;`・ω・´) 「あー、でぃさん? 踏んでるから。僕を踏んでるからね?」


120 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 22:57:42.96 ID:c5Te+aeG0

久しぶりに再会したお2人は、相変わらずのご様子で何だか安心しました。
私達は、でぃさんの勧めもあり、冬の風で冷えた身体を暖めるべく少し早めのお風呂を頂く事にしました。

・・・・
・・・

ミセ*-д-)リ 「ふいー……」

ζ(-д-*ζ 「はぁー……」

川ー川 「冬場の温泉はいいよねー」

(-、-トソン 「生き返りますね」

中途半端な時間が幸いしたのか、大浴場は私達の貸し切り状態です。
ブーンとヒートちゃんは久しぶりの広いお風呂ではしゃいで泳いでいます。

ξ--)ξ 「しかしまあ……」

ζ(゚ー゚*ζ 「一時はどうなることかと思ったけど、何とか上手くいったね」


124 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 22:59:07.10 ID:c5Te+aeG0

取り敢えず交渉の第一段階は成功といった所でしょうか。
結果論で言えば良かったと言えますが、私の一時の感情で全て台無しにしてしまう所でしたから、
その点は皆に謝罪をしなければならないでしょう。

いや、一時の感情ではありませんね。そこは私にとって、絶対に譲れない点でした。

(-、-トソン 「すみませんでしたね。わざわざここまで来たのに台無しにするような──」

Σ(゚д゚トソン 「ぷぁ!?」

謝罪を述べようとした私の顔に、多方向からお湯が飛んできます。
側にいた皆の手のひらが、一様に私の方に向けられています。

ミセ*゚∀゚)リ 「何を謝るつもりなのさ?」

川ー川 「トソンちゃんは間違ってないよ?」

ξ゚听)ξ 「まあ、バカだとは思うけどね。……嬉しいとも思うけど」

ζ(´д`;ζ 「ツンちゃーん? ツンちゃんのお湯、ほとんど私にかかったんだけど?」


125 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 23:00:32.38 ID:c5Te+aeG0

皆笑顔で、それぞれの思いを口にします。
これまでいっしょに過ごしてきたこの笑顔に偽りはありません。

(゚、゚トソン 「……ありがとう」

レイハイラーン ムギュ オンナジ、オンナジ
 ミセ*゚∀゚)リ)゚、゚(ζ(^ー^*ζ

ヽノハ*゚听)ノ 「勝ったぞぉぉぉぉ!」

(〃^ω^) 「おー、負けちゃったお」

川ー川 「2人とも、泳ぐのはその辺で。ちゃんと肩まで浸かって暖まろうね」

(〃^ω^)ノハ*゚听) 「「はーい(だお)」」

私達はのんびりとお湯に浸かり、旅の疲れを癒しました。

・・・・
・・・


129 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 23:02:05.21 ID:c5Te+aeG0

(`・ω・´) 「冬の料理といえばやっぱり──」

ミセ*゚ー゚)リξ゚听)ξ川д川ノハ*゚听)「「「「「「「お鍋ー」」」」」」」ζ(゚ー゚*ζ(^ω^ )(゚、゚トソン

(`・ω・´) 「と言うわけで、ドン! るん雲特製豪華海鮮鍋2種セットだよ」

お風呂から上がってしばらくくつろいでいると、鍋を抱えたシャキンさん達がいらっしゃって、夕食の準備に取りかかられました。
今日の献立は冬のるん雲の一番の人気メニュー、海鮮鍋と海鮮チゲ鍋の2種類との事です。

ζ(´ー`*ζ 「美味しそー」

(`・ω・´) 「こっちの鍋はお好きなタレで食べてね。チゲ鍋の方は、子供達もいるから辛さは控えめにしてるから、
        辛味が足りないと感じたら、こっちの特製スープを小皿に足してみてね」

( ^ω^) 「おー、辛くないのかお? じゃあ、こっちも食べてみるお」

ξ゚听)ξ 「まだ煮えてないから待ちなさいよ」

ノパ听) 「ぶぎょーだぞー」

川д川 「あ、この特製スープって結構辛いね。でも、味に深みがあって美味しいな」

ミセ;゚ー゚)リ 「それってある種調味料代わりだよね? そのまま舐めて辛くない?」


131 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 23:04:08.90 ID:c5Te+aeG0

(#゚;;-゚) 「お櫃のおかわりもあるから、遠慮せんでどんどん食べてね」

ミセ*゚∀゚)リξ゚听)ξ川д川ノハ*゚听)「「「「「「「いただきまーす(お)」」」」」」」ζ(^ー^*ζ(^ω^〃)(゚、゚トソン

でぃさんの言葉をそのまま受けたわけではありませんが、皆遠慮など微塵も感じさせない勢いで鍋を囲みます。
お魚は冬場の方が身が締まって美味しいとはよく聞きますが、その言葉に偽りはないと深く感じ入ります。

ミセ*゚∀゚)リ 「海老うま! プリプリしてて美味いわ!」

ξ*゚听)ξ 「チゲ鍋美味しいわね。もうちょっと辛くてもよかったけど、まあ、子供もいるしね」

川д川 「このスープちょっと足してみるといいよ。中身が気になるなー。何使ったらここまで深みが出るんだろ?」

ノハ*゚听) 「ご飯おかわりー。自分でよそうぞー」

(〃^ω^) 「この白いお魚さん何だお? 美味しいお」

ζ(゚ー゚*ζ 「それは鱈かな? この辺でも捕れるのかな? あ、お野菜も美味しいなー」

(゚、゚*トソン 「……蟹」


135 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 23:06:18.89 ID:c5Te+aeG0

ミセ;゚ー゚)リ 「ちぃ、トソンは好きなものから行く派だっけ? 私の分も蟹残しとけよ?」

川д川 「あれかな? 韓国だけじゃなくメキシコの唐辛子系も……」

ξ;゚听)ξ 「貞子、この勢いだと食べないとすぐなくなるわよ?」

ノハ*゚听) 「貞子、私が取ってやるぞー。食べろ食べろー」

( ^ω^) 「カニ、食べ辛いお。でも、美味しいお」

(゚、゚*トソン 「……蟹、美味しいですね」

ζ(´ー`*ζ 「ご飯ご飯。お汁かけてウマー」

ミセ*゚一゚)リ 「シメに雑炊といきたいね。卵落として」

ξ゚听)ξ 「うどんも捨てがたいわね」

川ー川 「ありがとう、ヒートちゃん。あ、このつみれ美味しい。これも何か別のものが練りこんであるね。何だろ?」

ノハ;゚听) 「貞子ー、考えてばっかじゃなくて食べろー」


140 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 23:08:35.02 ID:c5Te+aeG0

( ^ω^) 「……お」

(゚、゚トソン 「ブーン、1度箸をつけたものはちゃんと食べましょうね。それが春菊でもです」

ζ(゚ー゚;ζ 「蟹しか見てないと思ったらちゃんと見てるんだねー」

(゚ー゚トソン 「私はいつもブーンを見てますよ。という事で、はい、ブーン」

( ゚ω゚) 「おー!? 春菊ばっかりだお!」

ミセ;゚ー゚)リ 「容赦ないな、お母さん」

(゚、゚トソン 「お母さんは止めてくださいと何度言えばわかるのですか?」

ノパ听) 「ママー、私にも取ってくれー」
 _, ,_
(-、-;トソン 「……ヒートちゃん、誰にそう言えと言われましたか?」
コソコソ
д川 「……」


141 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 23:10:04.95 ID:c5Te+aeG0

ζ(´ー`*ζ 「お櫃空っぽー。ねー、お母さん、どうしよ?」

(`・ω・´) 「はいはーい、お櫃おかわりだね? オッケーデレちゃん、君のためにマッハで用意し──」

(#^;;-^) 「姿が見えんと思ったらやっぱりここか」

ハーイ、コッチネー ズリズリ
(#^;;-^)つ<`゚ω゚´) 「あ、いや、ちょっと様子見に来ただけで別にサボってたわけじゃ──」

(#゚;;-゚) 「おかわりは持ってくるからちょっと待ってて」

ζ(´ー`*ζ 「ごゆっくりー」

(〃^ω^) 「お! むいたカニも入ってたお。食べやすいお」

ξ゚ー゚)ξ 「やっぱりいいお母さんね」

(゚、゚;トソン 「ツンちゃんまで……」

ミセ*゚∀゚)リ 「葱、白菜、豆腐、白滝、お魚以外も美味いなー」


145 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 23:11:53.94 ID:c5Te+aeG0

川ー川 「野菜も地の物なのかな? 味が濃いよねー」

ノハ*゚听) 「辛い方も美味いぞー」

(#゚;;-゚) 「はい、おかわり持ってきたよ。あ、そうそう、今更だけど、お酒もつける?」

ζ(´ー`*ζ 「あーお酒──」

ミセ;゚д゚)リ「「いりません!!!」」川;д川

(゚、゚トソン 「何ですか、2人して大声で?」

(〃^ω^) 「イカも美味しいお。ちょっと辛くても美味しいお」

(#゚;;-゚) 「ここは料理やる人間もいるから、雑炊かうどんかは任せるわ。卵とうどん、おいとくね。ほんじゃ、ごゆっくりー」

(゚、゚トソン 「ありがとうございました。あと、シャキンさんはほどほどに……」

ミセ*゚∀゚)リ 「辛い方は雑炊がいいな」

川ー川 「普通のも雑炊でちょっとお醤油足らしたのが好きなんだけどな」

ζ(´ー`*ζ 「両方ー」


147 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 23:13:55.27 ID:c5Te+aeG0

(゚、゚トソン 「まずうどんを作り、あまり汁を減らさないようにして雑炊と行きましょうか」

ミセ*゚∀゚)リξ゚听)ξノハ*゚听)「「「「「「「さんせーい」」」」」」」川д川ζ(^ー^*ζ(^ω^〃)

私達は久しぶりにるん雲の、海の幸豊かな晩ご飯を十分に堪能しました。

・・・・
・・・

ミセ*-ー-)リ 「さすがに食べ過ぎたなー」

川;д川 「ミセリちゃん、お腹閉まってよ。風邪引くよ?」

(〃^ω^)つ 「おー、ミセリのお腹、ポンポンだお」

ミセ*゚∀゚)リつ 「ブーンちゃんのお腹もポンポンじゃないか。ほーらー」

ノハ*--) 「幸せだー」

ξ゚听)ξ 「こんな時でもちゃんと持ってきてるのね」

~旦(゚、゚トソン 「コーヒーですか? ええ、ないとどうにも……」


148 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 23:15:56.56 ID:c5Te+aeG0

ζ(´д`*ζ 「やばい、寝そう……」

本格的に眠りに落ちそうなデレを転がし、私達は早めに就寝をすべく布団を敷きます。
明日、ハローさんは朝に迎えに来ると言われただけで、正確な時間は聞いておりません。
移動の疲れもありますし、今日は早めに眠った方がよいでしょう。

ミセ*゚∀゚)リb 「枕投げやろうぜ」

          ///
     チョ!?  □
 三□ ミセ;゚д゚)リ □三
     □  □三
    ///

ドカッ! バキッ! ドスッ! オマエラー!!!

・・・・
・・・


153 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 23:18:06.22 ID:c5Te+aeG0

電気を消し、私達はそれぞれ床に付きます。
肉体的にも精神的にも疲れはありますので、この分ならすぐ眠れそうです。

(〃^ω^) 「ねー、トソン」

(-、-トソン 「何ですか、ブーン? 早く寝ないと明日寝坊しますよ?」

(〃^ω^) 「ありがとうだお」

(゚、゚トソン 「え?」

突然のブーンのお礼の言葉に、私は何の言葉も返せませんでした。
最初、おやすみと聞き間違えたかと思いましたが、一字もあってませんし、それはないでしょう。
私が、何に対してのお礼なのか戸惑っていると、ブーンとは反対側の布団に誰かが潜り込んで来ました。

ξ*--)ξ 「ありがとうって言ってんのよ」

(゚、゚トソン 「ツンちゃん?」

ノハ*゚听) 「私達は、ここにいるぞぉぉぉぉ! ありがとぉぉぉぉ!」

(゚、゚トソン 「ヒートちゃんも……」


154 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 23:20:03.07 ID:c5Te+aeG0

ツンちゃんからも、そしてヒートちゃんからもブーンと同様にありがとうという言葉を告げられました。
私は未だそれが何に対してかわからず、ブーンの方を見つめていました。

ξ#゚听)ξ 「何で間に入ってくんのよ!」

ノハ*゚听) 「今日は私もここで寝るんだー」

(゚、゚トソン 「どうしたのですか、2人とも、それにブーンも」

(〃^ω^) 「嬉しかったお。だから、ありがとうだお」

ξ*゚听)ξ 「あんたって時々、いや、対人関係かしらね、そういうの鈍いわよね」

ノハ*゚听) 「私達はここにいるんだぁぁぁぁ!」

私は、先程からのヒートちゃんの言葉で、ようやく3人が言いたい事に気が付きました。
そうですね、3人はここにいます。それは、ウソじゃありません。

(-、-*トソン 「そういう事ですか……。でも、それは礼を言われる事ではありませんよ?」

ブーンがここにいて、ツンちゃんがここにいて、ヒートちゃんがここにいる事。
皆がいっしょにいる事、それは私達にとって当たり前の事なのですから。


159 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 23:21:31.28 ID:c5Te+aeG0

(〃^ω^) 「お! そうだお。僕達はいっしょだお。いっしょにいるんだお」

(-、-*トソン 「ええ、いますよ。私達は皆いっしょにここにいるんです」

私は横向きから仰向けに体勢を変え、両手を3人に伸ばします。
暖かく、柔らかい3人の身体は、しっかりとした存在をここに示しています。

ノハ*゚听) 「くすぐったいぞー」

ξ*゚听)ξ 「こら、あんまり暴れんな」

(〃^ω^) 「トソンの手、あったかいおー」

(-、-*トソン 「でも、ツンちゃんもヒートちゃんもここにいたら、デレと貞子が寂しがりませんか?」

ζ(゚ー゚*ζ 「ご心配なくー」

川д川 「私達もここで寝るからね」

いつの間にかツンちゃんの横にデレが、そしてヒートちゃんを抱き上げ、ブーンの横に貞子がヒートちゃんといっしょに寝転びます。

ζ(゚ー゚*ζξ*゚听)ξ(゚、゚*トソン(^ω^〃)ノハ*゚听)川*д川


163 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 23:23:22.27 ID:c5Te+aeG0

(゚、゚*トソン 「さすがにこれは窮屈では?」

ζ(゚ー゚*ζ 「布団繋げてるから大丈夫だよ」

川*д川 「ヒートちゃんがいるから暖かいよ」

そう言って2人は布団を寄せ、身体を寄せてきます。
これでは私が少し窮屈なのですが、嬉しそうに私に抱きつくブーンを見ると、そんな事は言えなくなってしまいます。

 ポツーン
ミセ*゚−゚)リ 「えーと……」

 ワイワイ キャッ、キャッ ヤレヤレ オッオ    ワー  ウフフ
ζ(゚ー゚*ζξ*゚听)ξ(゚、゚*トソン(^ω^〃)ノハ*゚听)川*д川

ミセ*゚д゚)リ 「お前ら、私も混ぜろー」

ミセリダーイブッ! ミギャー! チョットォ!? ウルサイデスヨ オッオッオ ワーワー アハハ

冬の一夜は賑やかに、そして和やかに深けていきました。


 〜 第三話 おしまい 〜

    − つづく −   


165 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 23:25:16.17 ID:c5Te+aeG0

 〜 第四話 〜


吐く息が白い、冬の早朝。
騒ぎはしたものの、床に就いた時間が早かったこともあり、十分な睡眠を取れた私は早めに目を覚まし、近隣を散歩したりして時間を潰し、
全員が起き出す頃に戻って朝食を取りました。

ミセ*゚ー゚)リ 「いつぐらい来んのかな、ハローさん?」

川д川 「午前中には来るだろうから気長に──」

(#゚;;-゚) 「お待ちのお客さん来たよ。駐車場で待ってるからって」

食事を終え、そのまま食堂でくつろいでいると、でぃさんがハローさんの来訪を告げてくれました。
こういった流れになりましたから、もう1日るん雲に泊まる事にして、荷物はそのまま置いていきます。

・・・・
・・・

(゚、゚トソン 「おはようございます」

ハハ ロ -ロ)ハ 「おはよう。乗ってくれ」


167 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 23:27:18.15 ID:c5Te+aeG0

昨日と変わらず仏頂面のハローさんですが、約束通り来て頂けましたし、少なからず態度は軟化していると考えもいいのでしょうかね。
私は、ブーンをミセリに預けて助手席に座りました。
残りは全員後部座席ですが、普通車ですので3人並ぶ分には窮屈でもないでしょう。ブーン達は当然膝の上です。

(゚、゚トソン 「ここからどのくらいかかるのですか」

ハハ ロ -ロ)ハ 「山の中だからな、2時間はかかると見てくれていい」

朝も早いし、寝てくれていてもかまわないとハローさんは仰いますが、助手席に座る以上、運転者の眠気を覚ます必要もあるでしょうから
起きて当たり障りのない世間話を振る事にしました。

本当は本題の話をすべきかもしれませんが、何も言わず連れて行く事がハローさんの意思表示ならそれに従い、着いた先でそのものを見てから
話してもいいかと判断しました。

お互いほとんど知らない同士なので、話題は必然的にお互いの共通項、大学の話になります。
さすがと言うべきか、ハローさんは大学で教鞭を取られている方です。
主に民俗学に関してですが、話し方は上手く、話自体も興味を惹くもので、長いはずの車での移動も思った以上に短く感じました。

(゚、゚トソン 「そう言えば、この辺りにも伝承があるのでしたよね。雲が居るとか何とか……」

私は、いつだったかビロード君の家で見た本の内容を思い出し、それについて尋ねてみました。
ハローさんはわずかに眉を上げ、少し驚いた素振りを見せられました。


172 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 23:29:08.55 ID:c5Te+aeG0

ハハ ロ -ロ)ハ 「中々博識だね。そんなminorな伝承を知ってるとは」

(゚、゚トソン 「いえ、しばらく前にたまたま目にしただけですので」

私は、あの伝承自体が意味がわからなかった事をハローさんに話し、専門家の分析を伺う事にしました。
ハローさんも、伝承の発祥原因、何故そんな伝承が伝えられるようになったかの調査はしていたらしいのですが、実際に起こる現象に関しては
あまり調べてはいないとの事です。

ハハ ロ -ロ)ハ 「恐らく見たまんまなんだと思う」

(゚、゚トソン 「と言いますと? 雲が集まってくるということですか?

ハハ ロ -ロ)ハ 「Yes この辺りは専門じゃないから綺麗な説明は出来ないが、気象や地形、空気の対流などいくつかの条件が重なった時に、
        その場に雲が降りて来て集まるんだろうね」

(゚、゚トソン 「なるほど……。それなら見た目の神秘性はありそうですね」

伝承自体、その見た目のインパクトで語り継がれてるだけかもしれない、というのが今のところの見解だよ、とハローさんは肩をすくめて
わずかに微笑まれます。


176 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 23:31:22.74 ID:c5Te+aeG0

ハハ ロ -ロ)ハ 「それに関しては、この辺では子供に聞かせるお伽話しとして根付いてるな」

(゚、゚トソン 「どんなものです?」

ハハ ロ -ロ)ハ 「雲に乗って、世界中を旅して金銀財宝を手に入れて幸せに暮らしました、ってな話さ」

(゚ー゚トソン 「ありがちですね」

そんな話をしていると、車は速度を落とし、だだっ広い空き地に停車しました。
どうやら目的地に到着したようです。

ハハ ロ -ロ)ハ 「ここからは歩きだ。前述の通り山の中に入るが、大丈夫か?」

私達は荒巻さんの住居が山中なのは前もって聞いていましたので、皆動きやすい服装で来ています。
山道を行く事には特に問題ないと思われます。

ヽζ(´ー`*ζ 「ありませーん。トソンちゃんの体力以外はー」

(゚、゚;トソン 「な、デレ!? いくら私でもただの山歩きぐらいは平気ですよ? ね、ブーン?」

( ^ω^) 「お……」


180 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 23:33:40.71 ID:c5Te+aeG0

(^ω^ ) 

( ^ω^) 「うんお」

(゚、゚;トソン 「ブーンまで……」

ミセ*゚ー゚)リ 「まあまあ、いいからいいから、とにかく行こうぜ? ダメな時はおぶってやるから」

(-、-;トソン 「遠慮します!」

私達はハローさんに続き、鬱蒼と生い茂る木々をくぐり、比較的なだらかな山道を歩きます。
確か荒巻さんは1人暮らしだったはずですが、こんな電灯もないような道では1人暮らしも大変だったのではないでしょうか。

川д川 「他にも住んでる人はいらっしゃるんですね」

ハハ ロ -ロ)ハ 「大半は空き家だがね。昔はこの辺りは林業も盛んだったらしいからね」

ξ゚听)ξ 「確かに、生活感がないわね」

ミセ*゚ー゚)リ 「まだ住めそうな家なのにね」


181 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 23:35:50.91 ID:c5Te+aeG0

ノハ*゚听) 「ダーッシュッ!」

ζ(゚ー゚;ζ 「ヒートちゃん、私達、道知らないんだからあんまり先に行っちゃダメだよ?」

ハハ ロ -ロ)ハ 「……」

(゚、゚トソン 「どうしました」

ハハ ロ -ロ)ハ 「……いや、自然だな、と思ってね」

(゚、゚トソン 「ええ、それが私達のいつもですからね」

ハローさんは私の答えにまた肩をすくめ、無言で歩き続けられます。
山中を歩き続ける事20分あまり、そろそろ疲れてきた頃に目的の家が見えてきました。

・・・・
・・・

(゚、゚トソン 「……簡素なお部屋ですね」

荒巻さんの家は、閉め切られて少しだけカビのような臭いがする以外は、清潔で整った印象でした。
この部屋が故人の人格を思い起こさせるのなら、きっと荒巻さんは昔気質の真面目な方だったのかも知れません。
そんな推測をハローさんに話すと、その通りだが、ユーモアはわかる方だったと優しく微笑まれました。


184 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 23:38:03.47 ID:c5Te+aeG0

ハハ ロ -ロ)ハ 「で、どうする? 見たいんなら勝手に見てもかまわんが、散らかさないでくれると有り難い」

ハローさんはそう仰ってくれますが、この部屋を私達が見た所でわかる事はほぼないと思われます。
わかるのはただ1人、ブーンだけでしょう。

(゚、゚トソン 「ブーン──ブーン?」

ブーンに色々見て回って貰おうかと頼もうとしましたが、ブーンの姿が見当たりません。
慌てて部屋の奥に進むと、どこか夢見心地な表情で、部屋をきょろきょろと見回すブーンの姿がありました。

ブーンは以前、時々昔の事を不意に思い出したり、夢に見たりすると言っていました。
今まさに、夢の中の景色に迷い込んだ感覚に囚われているのかもしれません。

私は、ひとまずブーンの好きにさせる事にして、ハローさんに荒巻さんの日記を見せてもらえるように頼みました。

ハハ ロ -ロ)ハ 「君達はこの日記の中身を容易に信じる事が出来るのかな?」

ζ(゚ー゚*ζ 「それは中を見てみないと何とも言えませんが……」

川д川 「ブーンちゃんの事は信じる事が出来ると思います」


188 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 23:40:35.87 ID:c5Te+aeG0

(゚、゚トソン 「お借りできますか?」

ハハ ロ -ロ)ハ 「……」

ハローさんは無言で日記を手渡されました。
その手が、込められた力でわずかに震えていたようにも感じられました。

─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─

○月×日

何やら朝っぱらから物音がうるさく、それで目を覚ましたら、何やら得体の知れない白い生き物がおった。
その白い生き物はブーンブーンと言いながら部屋を走り回っておる。
最初は幻か、妖怪変化の類かと思い、ほとんど寝たきりの身じゃし、無視して寝ようとしたが、あまりにうるさくてかなわんから、
話しかけてみる事にした。

/ ,' 3 「これ、そこの白いの。お前さんは何もんじゃ?」

( ^ω^) 「おー? 僕かお? おー……わからんお!」

/ ,' 3 「わからんとは何じゃ? お前さん自身の事じゃろ?」

( ^ω^) 「おー。でも、わからんもんはわからんお」


190 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 23:42:01.69 ID:c5Te+aeG0

/ ,' 3 「ふむ……記憶喪失か何かかのぉ……」

⊂ニニ( ^ω^)ニ⊃ 「ブーン」

/ ,' 3 「こりゃ、まだ話しはおわっとらん。走り回るでない、そこの、ほら、ブーン」

( ^ω^) 「お? ブーン? 僕かお?」

/ ,' 3 「そうじゃ、お前さんじゃ、ブーン。ブーンブーンうるさいからブーンじゃ」

( ^ω^) 「おっおっお。ブーン……。僕はブーン……」

ヾ(〃^ω^)ノシ 「僕はブーンだお!」

/ ,' 3 「やれやれ……わしは荒巻じゃ」

( ^ω^)ノ 「お! あらまき! おいすー!」

/ ,' 3 「お、おいすー? それは今時の若いもんの間に流行っとる挨拶かの?」

(〃^ω^) 「おっおっお」

・・・・
・・・


194 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 23:44:04.00 ID:c5Te+aeG0

○月×日

いつの間にか家に迷い込んでいた白い生き物をブーンと呼ぶ事にした。
どこから来たのか自分が何者なのか、そういうことは一切覚えておらんらしい。
ただ1つ、己が夢を除いては。

( ^ω^) 「あらまき、これ、食べられるのかお?」

/ ,' 3 「それは靴じゃ。足に履くもんで食べられん」

( ´ω`) 「おー……そうかお」

/ ,' 3 「ご飯はまだ先じゃ。と言うか、お前さんが食うもんはないぞ?」

( ´ω`) 「お……」

/ ,' 3 「……縁側に干し柿が下がっとる。あれなら食べられるぞ」

(〃^ω^) 「お! 食べていいのかお?」

/ ,' 3 「そんなしょんぼり面をされてたら食べさせんわけにもいかんじゃろ……」


199 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 23:46:57.86 ID:c5Te+aeG0

(〃^ω^) 「お! これ甘いお! 美味しいお!」

/;,' 3 「早いのお……」

・・・・
・・・

○月×日

どうやらブーンはワシ以外のもんには見えておらんらしい。
といっても、ホームヘルパーのもんじゃが、他のもんにも見えんのじゃろうか?
幸いにもわしはそれなりに蓄えもあり、ブーンの分まで余分に食事の用意を頼むのは簡単じゃった。

ただ、ブーンが見えないホームヘルパーにその話をしたのは失敗だったかもしれん。
ボケたと思われとりゃせんかの……。

( ^ω^) 「あらまき、お水だお」

/ ,' 3 「おお、すまん──」

  コケッ! バシャーン
( >ω<)ノ 「お!?」


203 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 23:49:02.18 ID:c5Te+aeG0

( ´ω`) 「ごめんお、お水こぼしちゃったお」

/ ,' 3 「よいよい。お前さんの手は小さいのじゃから無理はいかん。割れないプラスチックのコップじゃ。また汲んできておくれ」

( ^ω^) 「お! わかったお!」

・・・・
・・・

○月×日

ブーンが来てそれなりの月日が経った。
じゃがしかし、ブーンは相変わらず何も思い出さん。
それでもワシは、今の暮らしを、ブーンがいる暮らしを中々気に入っておる。

ワシにも子や孫がおる。じゃが、その子らも成長し、皆立派に働いているという。
親として、祖父として嬉しい事じゃが、同時に一抹の寂しさを覚えんでもない。

ワシはブーンを、自分の孫のように思い始めておるのじゃろうな。
昔は孫が今のブーンの様に、ワシの語る昔話に耳を傾けてくれたもんじゃ。

(〃^ω^) 「それで、それで! そのタヌキさんはどうなったんだお?」


206 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 23:51:11.19 ID:c5Te+aeG0

/ ,' 3 「そうじゃのう、泥で出来た船にのってな、うさぎがの……」

(〃^ω^) 「おー! スゴいおー。ウサギさんってどんな格好なのかお? あらまきのお話じゃちっともわからんお」

/ ,' 3 「うさぎはうさぎじゃ。そのうちお前さんが世界を回る時が来たら目にすることもあるじゃろうて」

(〃^ω^) 「お! そうだおね! 楽しみだおー」

・・・・
・・・

○月×日

ブーンはワシの話を聞き、世界の広さを知るにつれて、夢を語る時間が増えた。
このまま、夢への思いが膨らめば、やがてブーンは出て行ってしまうのじゃろうか?

この辺りにはある御伽話が伝わっておる。
雲が居る場所として伝えられるその話は、単なる御伽話では無いとも言われておる。
ブーンはこの話をとても好んだ。


210 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 23:52:31.90 ID:c5Te+aeG0

(〃^ω^) 「お! あらまき! 雲のお話してお!」

/ ,' 3 「またか、ブーンよ。お前さんは本当に雲の話が好きじゃの」

(〃^ω^) 「雲だけじゃないお! お空が全部好きだお!」

/ ,' 3 「そうじゃったな、何せお前さんの夢は──」

・・・・
・・・

○月×日

ブーンがまたいつの間にか天井の梁の上に登っておる。
いったいどうやって登ったのか気になったので聞いたら、タンスや物干し竿などを器用に使って登りおった。

ブーンはあの場所が気に入ってると言う。
天窓から見える空が、好きだと言う。
空に近いあの場所が、好きだと言う。


213 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 23:54:08.77 ID:c5Te+aeG0

/ ,' 3 「ブーン、落ちるでないぞ」

( ^ω^) 「お! 大丈夫だお。僕はそんなにドジじゃないお!」

/ ,' 3 「こないだそこで居眠りして落っこちて泣いておったのは誰じゃったかのお?」

(;^ω^) 「お……、あれはちょっと失敗しただけだお」

ヽ( ^ω^)ノ 「おー! お日さまが見えてきたおー。もうすぐお昼だお」

/ ,' 3 「そんなところで仰け反ると落ち──」

(;゚ω゚) 「おおー!? お、落ちるお!」

/;,' 3 「バカもん、だから気を付けいと!」

::┌(;゚ω゚)┘:: 「お、お、お、お、おー!?」

・・・・
・・・


219 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 23:56:50.17 ID:c5Te+aeG0

○月×日

とうとうブーンがあの話を実行すると言い出しおった。
夢の為、あの御伽話を、夢を運ぶ雲の話を。

( ^ω^) 「お! だから、きっとお空を飛べると思うんだお!」

/;,' 3 「じゃがのお、ブーンよ、あれはお話の中でのことじゃてな……」

( ´ω`) 「おー? あのお話はウソなのかお? 雲には乗れないのかお?」

/;,' 3 「いや、ウソと言うわけじゃないぞ。我が家に代々伝わっとる古文書にもじゃな、ちゃんと書いてある」

(〃^ω^) 「お! じゃあ、大丈夫だお! あらまきは物知りだお! ウソつかないお!」


ヾ(〃^ω^)ノシ 「僕は、お空を飛んでいろんな世界を見るんだお。それが僕の夢なんだお!」


・・・・
・・・

─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─


221 :◆xJGXGruetE:2009/01/27(火) 23:58:23.04 ID:c5Te+aeG0

(゚、゚トソン 「空を飛んで……世界を……」

それがブーンの忘れてしまった夢だったのですね。

私は日記から目を離し、ブーンの姿を探します。
ブーンは部屋の隅で何やらタンスをカチャカチャといじっているようです。
その様子は、私の部屋で始めて見たブーンの姿を思い起こさせます。

いえ、ひょっとしたら、私の部屋で見たあの姿は、ここでの事を覚えていてそれを再現していたのかもしれません。

(゚、゚トソン 「……」

私は何だか無性にブーンにこちらを振り向いて欲しいと思いましたが、それは叶いませんでした。
諦めたとか、そういう思いではなく、私は私の、ブーンはブーンのやるべき事をするべきだと考えただけです。

私は、この日記の続きを読まなければなりません。
ブーンのことを知るために、ブーンが夢を思い出すために。

─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─


224 :◆xJGXGruetE:2009/01/28(水) 00:00:17.64 ID:hHgh3WkW0

○月×日

ブーンは本気で旅に出る気でおる。
ワシはそれを、どうするべきなのじゃろうな……。

( ´ω`) 「おー……。あらまきとお別れするのは寂しいお」

/ ,' 3 「そうじゃな。ワシもブーンとお別れするのは寂しいわい」

/ ,' 3 「どうじゃ、雲に乗って空を飛ぶなどと危険な夢は諦めて、ここでこのまま暮らさんか?」

( ´ω`) 「それはダメだお。僕にとって、夢はとっても大切なんだお。うまく言えないけど、
       僕はこの夢だけはかなえたいんだお」

( ^ω^) 「でも、広い世界を全部見たら、きっとここに帰ってくるお! あらまきといっしょだお」

/ ,' 3 「ブーン……」

・・・・
・・・


227 :◆xJGXGruetE:2009/01/28(水) 00:02:02.97 ID:hHgh3WkW0

○月×日

もうすぐその日がやってくる。
1年に1度だけ、岬に雲が集うその日が。

嬉しそうに夢を語るブーンを見ていると、是が非でも叶えてやりたいという思いが湧いてくる。
じゃがしかし、ブーンを行かせてしまって良いのか?

ブーンが行ってしまったら、ワシはまた独りじゃ。
ブーンのいない暮らしに、ワシは耐えられるのじゃろうか。

それに、もう1つ心配もある。
ブーンは雲に乗れると信じておる。
じゃが、本当に乗れるのか?
あれは御伽話じゃぞ?

乗れない可能性の方が高いんじゃなかろうか。
乗れたとしても、途中で落ちるやもしれん。

そんな危険な事をブーンにさせて良いもんか。

ブーンはこのままここにおる方が幸せじゃなかろうか。

ブーンがあんな夢を持たなければ……。


ブーンの夢がもっと違う、別のものだったならば……。


233 :◆xJGXGruetE:2009/01/28(水) 00:04:01.66 ID:hHgh3WkW0

/ ,' 3 「すまん、ブーン。ワシは1つウソをついておった」

( ^ω^) 「おー? ウソ? なんだお?」

/ ,' 3 「本当は雲には乗れん。空は飛べんのじゃ」

( ´ω`) 「おー……そうなのかお? しょんぼりだお……」

/ ,' 3 「じゃがのお、空を飛ぶ別の手段はある」

(〃^ω^) 「ホントかお! どうすればいいんだお!」

/ ,' 3 「それはじゃな、ブーンがこれから良い事をいっぱいして、人間になればよいんじゃ」

( ^ω^) 「お? 人間になればお空を飛べるのかお?」

/ ,' 3 「ああ、飛べるとも。絶対にな」

(〃^ω^) 「お! わかったお! 僕、人間になるお! 人間になってお空を飛ぶお!」

( ´ω`) 「お……でも、どうすればいいのかお? 良い事ってどんな事だお?」

/ ,' 3 「そうじゃのお。他の人のためになる事をしたり、自分の事をちゃんと出来たりする事かのお」


236 :◆xJGXGruetE:2009/01/28(水) 00:05:47.95 ID:hHgh3WkW0

ヾ(〃^ω^)ノシ 「お! わかったお! 良い事するお! あらまき、何かして欲しい事ないかお?」

/ ,' 3 「うんうん。じゃあ、ちょっと水を汲んできてくれんかのお」

(〃^ω^) 「お!」


そしてそのまま、ブーンは帰ってこんかった。


突然消えてしまった。
何の前触れも無く、突然に。
ワシは必死に探した。
動かぬ身体を必死に動かし、ワシは必死にブーンを呼び、ブーンを探した。

じゃが、ワシは……ブーンを見つける事は出来なかった……

ブーンはワシの前から消えてしまった。

永久に


─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─


239 :◆xJGXGruetE:2009/01/28(水) 00:07:50.08 ID:hHgh3WkW0

(; 、;トソン 「……」

そこから先は、何故かページが霞んでちゃんと読み取る事が出来ませんでした。
その理由が、自分の目から流れる涙のせいだと気付くのにさほどの時間はかかりませんでした。

 ハッ
(つ、゚トソン 「失礼。」

ハハ ロ -ロ)ハ 「何故、君が泣く?」

(゚、゚*トソン 「な、泣いてませんよ!」

ミセ;゚ー゚)リ 「いや、そこで強がんなくてもいいじゃん……」

私は、少々ばつが悪いのを隠すようにミセリを沈め、ハローさんにとある2人のお話をしました。
ペニサスさんとドクオさん。同じ様に、お互いを大切に思い、離れたくない強い思いから夢を歪め、離れ離れになってしまった2人の事を。

ハハ ロ -ロ)ハ 「そう……か……」

(-、-トソン 「私は、ペニサスさんも、荒巻さんも責める事は出来ません。私が同じ立場なら、きっと同じ事をしました」


243 :◆xJGXGruetE:2009/01/28(水) 00:09:22.00 ID:hHgh3WkW0

本当は、同じ立場なら、ではなく、私は今同じ立場にあるわけです。
ですが私は、2つの歪んだ夢の話を知りました。純粋な思いの切ない過ちとその結果を知りました。
だから、私は──

ハハ ロ -ロ)ハ 「それで、その子の夢を知った君はどうするのかな?」

(゚ー゚トソン 「ブーンの事を認めてくれるのですか?」

ハハ ロ -ロ)ハ 「君は……祖父の事を認めてくれるのだろう?」

ハローさんは私から視線をそらし、天井を見上げてつぶやかれました。
仏頂面に見えるハローさんの瞳の奥、そこにあるものに私は気付いてしまったかもしれません。

この日記を見た他の親族方の反応は、きっと私が電話で話した最初の方々と同じ反応だったのでしょうね。

(゚、゚トソン 「……で、ブーンはどこです?」

ヽζ(゚ー゚*ζ 「ん、あそこ」

川д川 「どこから登ったのかわからないんだけどね、気付いたらいつの間にか」

( ^ω^) 「……」


245 :◆xJGXGruetE:2009/01/28(水) 00:12:04.98 ID:hHgh3WkW0

ブーンは部屋の梁の上に腰掛け、天窓から外を眺めています。
荒巻さんの日記にあった、ブーンのお気に入りの場所なのでしょう。
ひょっとしてブーンは……

(゚、゚トソン 「ブーン、そんなとこにいたら危ないですよ?」

私は数歩、ブーンの方へ向かい、その姿を見上げ呼びかけました。
私の声が届くのか少し自信がありませんでしたが、ブーンはすぐに私の声に答えてくれました。

( ^ω^) 「お! 大丈夫だお。僕はそんなにドジじゃないお!」

(゚、゚トソン 「お日さまは見えますか?」

( ^ω^) 「おー? 今日は曇りだお? お日さま見え──」

(;゚ω゚) 「おおー!? お、落ちるお!」

私の声に反射的に大きく仰け反り、空を見上げたブーンは、バランスを崩し、落っこちそうになります。
非力さには定評のある私の両腕で、落ちるブーンを受け止められますかね?


252 :◆xJGXGruetE:2009/01/28(水) 00:14:38.05 ID:hHgh3WkW0

川;д川ミセ;゚д゚)リ「「「ちょ、ブーンちゃん、落ちる!」」」ζ(゚д゚;ζ


ああ、そうですね。
今の私は、1人ではないんですよね。
それならきっと──

(゚、゚トソン 「ブーン!」


           ガシッ! オ!
川;ー川ミセ;゚ー゚)リつ( ^ω^)⊂(゚、゚トソンζ(゚ー゚;ζ


受け止められますよね。


 〜 第四話 おしまい 〜

    − つづく −   


253 :◆xJGXGruetE:2009/01/28(水) 00:16:03.17 ID:hHgh3WkW0

 〜 第五話 〜


結局ブーンは、何も思い出さないと言いました。

(゚、゚トソン 「……ん?」

今は皆、思い思いに部屋の中を物色しています。
意外と言っては失礼かもしれませんが、ハローさんは好きにしていいと仰られました。
古い造りのこの家が珍しいのでしょうか、皆はあまりブーンの記憶とかそういうのは関係なしに色々見て回っているようです。

まあ、ブーンもその中に加わっていっしょに楽しんでますから、それはそれでかまわないかと思っています。

(゚、゚トソン 「ハローさん?」

私は1人、家を出ました。
少し頭を覚ましたくて、冬の風に吹かれるつもりでしたが、同じく外に出ていたらしいハローさんが目に入りました。

ハローさんは屋根の上にぽつんと座っていました。


256 :◆xJGXGruetE:2009/01/28(水) 00:18:01.52 ID:hHgh3WkW0

(゚、゚トソン 「どこから登られたのでしょうかね?」

近くに梯子らしき物はありませんし、家の中から窓を開けて出てたら誰かしら見つけて、付いて行きそうですからそれもなさそうです。
私は、家の横手に回り、調べてみました。

(゚、゚トソン 「あ、ひょっとしてこの木ですかね?」

それなりに丈夫そうで、早い段階で幹が枝分かれしていて足を掛ける所がある登り易そうな木がありました。
木登りなどは得意分野ではありませんが、私より年配のハローさんも登れているのですから大丈夫だろうと軽い気持ちで木を掴みました。

(゚、゚;トソン 「あ、これはちょっとまず──」

ハハ;ロ -ロ)ハつ 「何をやってるのかな、君は?」

軽い気持ちで登ってはみたものの、思ったより体力と腕力を使う事に気付きました。
それでも何とか屋根に飛び移ろうとしましたが、飛距離が足りず、ギリギリの所で屋根に掴まりはしたものの、後は落ちるのを待つのみ
という状況にハローさんが文字通り救いの手を差し伸べてくれました。

(゚、゚;トソン 「すみません、助かりました」

ハハ ロ -ロ)ハ 「君は無茶をするね」


261 :◆xJGXGruetE:2009/01/28(水) 00:19:33.52 ID:hHgh3WkW0

改めて自分の体力の無さを感じ入りましたが、木登りは意外と大変なのだとハローさんは仰られます。
ハローさん自身は普段からフィールドワークもこなすので、それなりには鍛えておられるとこのとです。

(゚、゚トソン 「こちらで何をなされてたのですか?」

ハハ ロ -ロ)ハ 「考えていた……いや、思い出していた、かな?」

冬の風が髪を撫で、頭を覚ますには十分過ぎる寒さが染み渡ります。
ハローさんは過ぎ去った日々を思い出すかの様に、故人の姿を思い起こすかの様に、ぽつりとつぶやかれました。

(゚、゚トソン 「この場所は昔からよく来られたのですか?」

ハハ ロ -ロ)ハ 「この家の事かい? それとも、ここの事かい?」

ハローさんは“ここ”と、屋根を指差してそう言われました。
私は、両方です、と答え、自分の考えを口にしました。

(-、-トソン 「ハローさんも、昔、荒巻さんから色んな昔話を聞かれていたんじゃないですか?」

ハハ ロ -ロ)ハ 「……ああ」


263 :◆xJGXGruetE:2009/01/28(水) 00:22:36.27 ID:hHgh3WkW0

ハローさんは、自分と荒巻さんの思い出を語られました。

大好きだったおじいちゃん。大好きだった昔話。家庭の都合で引っ越して滅多に会えなくなった事。
最後に会えたのは成人して間もない頃で、荒巻さんが目を細めて本当に立派になったと褒めてくれた事。
それからずっと会えずに、荒巻さんは逝ってしまわれた事。

ハハ ロ -ロ)ハ 「こっちの大学に赴任できたのはここ数年の事さ。それまでは海外やら色々ね」

(゚、゚トソン 「そうなのですか」

このまま打ち捨てられてしまうしかなかったこの家を、ハローさんは親族に一同に頼み込んで自分が管理していると言われます。
確かに、定期的に掃除をしたり空気を入れ替えたりしていなければ、無人の家がこれほど綺麗な状態で維持できるとは思えませんからね。
人が住まない家は朽ちて逝くものです。

(゚、゚トソン 「すみません。それと、ありがとうございました」

ハハ ロ -ロ)ハ 「礼はまだわかるが、何の謝罪だい?」

私は、荒巻さんとの思い出に、他人である私がずかずかと踏み入った事を詫びました。
そしてまだ、踏み入るつもりだということを告げ、先に謝罪を述べたということも。

ハハ ロ -ロ)ハ 「君は面白いな。……で、何を聞きたい?」

(゚、゚トソン 「荒巻さんが亡くなられた原因は──」


266 :◆xJGXGruetE:2009/01/28(水) 00:24:52.65 ID:hHgh3WkW0

ハハ ロ -ロ)ハ 「Stop! ……最初に言っておくよ。元々おじいちゃんはあの段階でそう長い命ではなかったらしい。亡くなったのは天寿だよ」

(-、-トソン 「……私は、あの日記を読んでハローさんがブーンの事を恨んでいるんだと思っていました」

ハハ ロ -ロ)ハ 「恨んでないと言えばウソになるかもしれない。だが、おじいちゃんがウソをついたことも事実なのだろう」

(-、-トソン 「……あれは、でも──」

ハハ ロ -ロ)ハ 「さっき君が話してくれたあの2人の話を聞いてわかったよ。彼──ブーンは消えたわけじゃなくて、その場にいたんだね?
        おじいちゃんが見えなくなっただけなんだね」

私は、きっとブーンがそこにいたはずだとハローさんに言いました。
ずっと荒巻さんに呼びかけていたはずだと。
その声が届かずとも、ずっと、ずっと、意識が途切れ、眠りに落ちる瞬間までずっと。

(゚、゚トソン 「以前ブーンは私に言ってくれました。私がブーンを見えなくなってしまっても、ずっと側にいる。側で見守っていると」

記憶は失われても、本質は変わりません。
ブーンはブーンです。だからきっと、荒巻さんの側にいたはずです。
苦しむ荒巻さんの側に、自分が何も出来ない絶望感と共に。


270 :◆xJGXGruetE:2009/01/28(水) 00:26:51.64 ID:hHgh3WkW0

ハハ ロ -ロ)ハ 「私は……ブーンに謝りたい。おじいちゃんの代わりに……私が……」

でも、見えないから謝れないとハローさんは嘆かれます。
ハローさんは何故ブーン達が見えなかったのでしょうか。
荒巻さんの日記を、荒巻さんがウソをついた事を、信じたく無かったからかもしれません。
大好きだったおじいちゃんの過ちを──

(゚、゚トソン 「ブーンは荒巻さんを恨んでないと思います。忘れたとか、そういうのではなく、純粋に、ただ思っていただけです」

ブーンはきっと、大好きな荒巻さんのために、ずっと側にいて──

一際強い風が吹き、木々が大きくざわめきます。
風に舞う木の葉と共に、舞い降りる見慣れた白い姿。

(-、-トソン 「ブーンは初めて会った時、夢のために人間になるんだと言いました」

たとえ、それがウソだったとしても、大好きな荒巻さんから教えてもらった大切な事。
だから、忘れずに覚えていた。
その代わりに、夢を忘れてしまっていたのは、おっちょこちょいのブーンらしいです。


273 :◆xJGXGruetE:2009/01/28(水) 00:28:55.76 ID:hHgh3WkW0

私は、そう言ってハローさんに微笑みました。
私の側で、私の手を握ってくれている暖かい存在を感じながら。

ハハ ; - ;)ハ 「私は……ブーンに……ブーンに会いたい」

(-、-トソン 「私を……、信じてくれますか?」

ハハ ; - ;)ハ 「Yes」

(゚、゚トソン 「ブーンを、信じますか?」

ハハ ; - ;)ハ 「Yes」

(゚、゚トソン 「荒巻さん……、大好きだったおじいちゃんを、信じますか?」

ハハ ; - ;)ハ 「Yes」

(゚、゚トソン 「ハローさん、この子がブーンです」

(〃^ω^)ノ 「ハロー、おいすー」

ハハ ロ -ロ)ハ 「!」


277 :◆xJGXGruetE:2009/01/28(水) 00:31:10.61 ID:hHgh3WkW0

(〃^ω^) 「おー?」

(゚、゚トソン 「ブーン、初めてご挨拶するんですから、おいすーじゃなくて……」

(〃^ω^) 「お! ハロー、はじめましてだお!」

ハハ ロ -ロ)ハ 「……ハハ、本当に白いな」

(゚ー゚トソン

ハハ ロ -ロ)ハ 「はじめまして、ブーン。私はハローだ。今までの非礼をお詫びする。そして、おじいちゃんの過ちも……すまない」

( ^ω^) 「おー? よくわからんお? はじめましてだからはじめましてだお? ハローは悪くないお?」

ハハ*ロ -ロ)ハ 「……そうだな、すまない。いや、ありがとう、かな。お陰で色々とすっきりしたよ」

( ^ω^) 「お? よくわからんけどよかったお!」

ハハ ロ -ロ)ハ 「それと君にも……、いや、都村君──」

(゚ー゚トソン 「トソンで結構ですよ、ハローさん」

ハハ*ロ -ロ)ハ 「ああ、トソン、感謝する。ブーンをここに連れてきてくれて。もう1度ブーンを……おじいちゃんに会わせてくれて」


280 :◆xJGXGruetE:2009/01/28(水) 00:32:46.94 ID:hHgh3WkW0

(゚、゚トソン 「お互い様ですよ。今回の件で私も色々とわかりましたから」

ハハ ロ -ロ)ハ 「しかし、ブーンの夢を思い出させる手助けはできなかったしな……」

(-、-トソン 「いえ、それは……今はいいのです。でも、また後日、ちょっとお願いする事があるかもしれません」

私は、それだけ言うとブーンの頭を撫でハローさんに降りましょうかと提案しました。
少し寒くなってきましたし、それにそろそろ──

( ^ω^) 「ねートソン、お腹空いたお」

(゚、゚トソン 「はいはい、そう言い出すんじゃないかと思ってましたよ」

とは言え、この辺りに食事を出来る場所などなさそうですね。
コンビニとかも期待できません。

ハハ ロ -ロ)ハ 「では、食事に行くか。無論、私のおごりで」

(゚、゚トソン 「それは悪いですよ。こちらが色々とお世話になっているのに……」

ハハ ロ -ロ)ハ 「学生が社会人に遠慮するもんじゃないさ」

(゚、゚トソン 「ですが──」


281 :◆xJGXGruetE:2009/01/28(水) 00:32:53.84 ID:oO3SjDJzO
 
ミセ*゚∀゚)リ 「え、おごり? ヒャッホー」
 
ζ(´ー`*ζ 「ご飯だー」
 
川;д川 「ちょっと、2人とも、迷惑掛けちゃダメだよ」
 
ノハ*゚听) 「お腹空いたぞぉぉぉぉ!」
 
ξ゚听)ξ 「うるさいわね、あんた1人置いてくわよ?」
 
ハハ*ロ -ロ)ハb 「ほら、トソンのお友達の賑やかな面々も賛同してくれている」
 
ハローさんは、ツンちゃんやヒートちゃんも含めた皆に親指を立てて合図を送ります。
全員が賛同しているわけでもない気もしましたが、これ以上断ってもそちらの方が失礼になりそうですから仕方なく首を縦に振りました。
しかし、いつの間に皆は外出てきていたのでしょうかね、揃って下からこちらを見上げています。
 
ハハ ロ -ロ)ハ 「それじゃあ、降りようか。……降りられるか?」
 
(゚、゚;トソン 「お、降りられますよ…………多分」
 
ミセ*゚∀゚)リ 「え、何? トソン、降りられないの?」
 
(゚、゚;トソン 「降りられますってば」
 

285 :◆xJGXGruetE:2009/01/28(水) 00:34:04.53 ID:hHgh3WkW0

(;^ω^) 「お、トソン絶対落ちちゃうお? ステーンって転ぶお?」

ミセ*゚ー゚)リ 「おいおい、大丈夫? 落っこちたりしたらクッションの少ない身体なんだし、ケガしたりで大変だよ?」

( 、 トソン 

ヽミセ*-∀-)リノ 「よーし、お姉ちゃんが受け止めてやろう。カモン」

 オ?  ガシッ
(;^ω^)⊂( 、#トソン

チョ!? ドカッ!  オオー!?       ブンッ!
ミセ;゚д゚(#(゚ω゚ )三         彡( 、#トソン    
                     ∪

ハハ;ロ -ロ)ハ 「Jesus……」

(^ー^トソン 「大丈夫ですよ。私がブーンを落としても、皆が受け止めてくれますからね」

ミセメ゚д゚)リ 「落としてねーっつーか、投げつけてんじゃねーか!」

・・・・
・・・


286 :◆xJGXGruetE:2009/01/28(水) 00:34:09.79 ID:oO3SjDJzO
 
今回の件で色々な事がわかりました。
昔、ブーンといっしょにいた人、荒巻さんの事。
ブーンが夢を忘れてしまった原因。
 
そして、ブーンの夢。
 
(゚、゚トソン 「……」
 
ずっと知りたくて、でも、心のどこかでは知りたくなかったブーンの夢。
その心配は、少なからず現実のものとなり、私はきっと、ある決断を迫られる事になるのでしょう。
その時は多分、そう遠くない明日に。
 
(゚、゚トソン 「……」
 
でも、私は1人じゃない。
1人では取り落としてしまいそうな事も、皆といっしょならすくい上げる事が出来るはずです。
だから私は、自分が思うように、思うままにブーンを信じて答えを告げるつもりです。
 
(゚、゚トソン 「……」
 
ミセ;゚ー゚)リ 「……で、いつまで木に掴まってるつもりなのかな?」
 

288 :◆xJGXGruetE:2009/01/28(水) 00:36:19.53 ID:hHgh3WkW0

(゚、゚;トソン 「……い、今から飛び降りますから、そこをどいてください。危ないじゃないですか」

ζ(゚ー゚;ζ 「5分前にもそのセリフは聞いたね」

(゚、゚;トソン 「今度はホントです。いいですか、飛び降りますよ?」

川;д川 「うん、気を付けてね」

(゚、゚;トソン 「……」

ミセ*゚ー゚)リ 「……」

(゚、゚;トソン 「……」

ζ(゚ー゚*ζ 「……」

(゚、゚;トソン 「……」

川д川 「……」

(゚、゚;トソン 「……」

ミセ;゚д゚)リ 「早く降りろよ!」


294 :◆xJGXGruetE:2009/01/28(水) 00:39:04.27 ID:hHgh3WkW0

(゚、゚;トソン 「こ、心の準備というものがですね……」

ハハ;ロ -ロ)ハ 「その高さなら大した勢いも付かないし、私が受け止めようか?」

(゚、゚;トソン 「だ、大丈夫です。ええ、大丈夫ですとも」

ξ゚听)ξ 「……ダメね」

ノパ听) 「ダメだぞー」

(〃^ω^)つ 「お!」

(゚、゚;トソン 「ブーン? また登ってきたのですか?」

(〃^ω^)つ 「いち、にの、さんでいっしょに飛び降りるお。いっしょだと怖くないお!」

(゚、゚;トソン 「べ、別に怖いわけではないですよ? でも、そうですね、いっしょに降りましょうか」

(;^ω^)つ 「ちょ、トソン、手、痛いお! もうちょっと弱く握ってお」


(〃^ω^)つ⊂(゚、゚トソン


296 :◆xJGXGruetE:2009/01/28(水) 00:39:47.86 ID:oO3SjDJzO
 
(〃^ω^) 「それじゃ、行くお! いーち──」
 
(゚、゚トソン 「にの──」
 
    「「さん!」」
(〃^ω^)つ⊂(゚ー゚トソン
 
私達は2人でいっしょに飛び降りました。
ほんのわずかな時間ですが、2人でいっしょに空を飛び、地面に降り立ちました。
ブーンの言葉通り、2人いっしょなら何も怖くありません。
 
地面に着いた途端、2人いっしょに転んでしまいましたが、私達は自然に顔を見合わせ、笑っていました。
 
 
ハハ*ロ -ロ)ハ ξ--)ξミセ*゚∀゚)リノハ*゚听)ノ (〃^ω^)(゚ー゚トソン ζ(^ー^*ζ川*ー川
 
 
 
 − 第二十四章 過去と私と誰かの日記 おしまい −
 
 
   − 夢は次章へつづきます −   


323 :花粉症 ◆xJGXGruetE:2009/01/28(水) 01:31:22.29 ID:oO3SjDJzO
 
< 貞子宅 >
 
ミセ*゚ー゚)リ 「花粉症ってあるじゃん?」
 
ζ(゚ー゚*ζ 「あるね」
 
ミセ*゚ー゚)リ 「あれって、どんな感じなのかな?」
 
川д川 「どんなって言うと?」
 
ミセ*-へ-)リ 「すげーキツいとか、花粉氏ねとかよく聞くけどさ、なったことないからよくわからんのよね」
 
ζ(゚ー゚;ζ 「まあ、ならない方が幸せなんだとは思うよ?」
 
ミセ*゚ー゚)リb 「今日は薀蓄マシーンがいないからさ、それぞれ花粉症について知ってる事語ってみない?」
 
川д川 「花粉症ね。スギ花粉が原因とかよく聞くよね」
 
ζ(゚ー゚*ζ 「私の地元の方では、ブタクサって黄色い花も原因だって言ってたような」
 
ミセ*゚ー゚)リ 「花粉警報だか注意報だか天気予報で出るよね」
 

325 :花粉症 ◆xJGXGruetE:2009/01/28(水) 01:33:58.63 ID:oO3SjDJzO
 
川д川 「病名としてはアレルギー性鼻炎とかそんな感じなんだよね」
 
ζ(゚ー゚*ζ 「エヘン虫とか?」
 
ミセ*゚ー゚)リ 「それ何か違う気もするけど、ぶっちゃけ、もうネタ切れた」
 
川д川 「皆は花粉症じゃないんだよね?」
 
ミセ*゚ー゚)リ「「うん」」ζ(゚ー゚*ζ
 
川д川 「まあ、なってみないとその辛さはわからないよね。私もなったことないし」
 
 
ミセ*゚ー゚)リ 「花粉症持ちの皆様の」
 
ζ(゚ー゚*ζ 「その症状が緩和されることを願いまして」
 
川ー川 「特にオチも無くおしまいです」
 
ミセ*゚ー゚)リb「「花粉が落ちませんように、と」」dζ(゚ー゚*ζ
 
 
 − 花粉症 おしまい −
 

328 :哀愁漂うドクオ ◆xJGXGruetE:2009/01/28(水) 01:36:41.62 ID:oO3SjDJzO
 
< 公園 >
 
('A`) 「平和だな……」
 
('A`) 「あいつら、またあんなに走り回って……」
 
('A`) 「元気だよな……」
 
('A`) 「こないだあいつらに付き合ってみたら3日間ほど筋肉痛でした」
 
('A`) 「……うん、また誘って来たら断ろう」
 
('A`) 「はぁ……」
 
コトッ
▽U ('A`) 「ん?」
 
('、`*川 「あのバカは今日もいるのかな?」
 
('A`) 「いるよ、バカは余計だが」
 

330 :哀愁漂うドクオ ◆xJGXGruetE:2009/01/28(水) 01:39:05.66 ID:oO3SjDJzO
 
('、`*川 「まあ、いなかった場合、トソンちゃん経由で回収頼んでるからいいけどね」
 
('A`) 「そりゃまた用意のいいことで……」
 
('、`*川 「コーヒー、それと試作品。いつかちゃんと礼は言えよ」
 
('A`) 「……わかってるよ」
 
('、`*川 「んじゃ、いくわ。……この声が、届いてる事を信じてるよ」
 
('A`) 「……ちゃんと届いてるさ、心配すんな」
 
・・・・
・・・
 
('A`) 「はぁ……」
 
('A`)U 「コーヒー……こちらはいい。ありがたい」
 
(;'A`)▽ 「試作品…………あれか。……どうするよ」
 
('A`) 「……食わないわけにもいかんだろうしな」
 

334 :哀愁漂うドクオ ◆xJGXGruetE:2009/01/28(水) 01:42:12.21 ID:oO3SjDJzO
 
('A`) 「幸いにもコーヒーはブラックだ」
 
('A`) 「試作品を一口、コーヒー一口、こんな感じで交互に繰り替えせば……」
 
(;'A`)▽ 「いや、無理だな。こいつの破壊力はパネェしな……」
 
('A`) 「……よし」
 
('A`)▽ 「まずはこれを一気に食う」
 
('A`)U 「そしてその後コーヒー。これで恐らく生き延びられるはずだ」
 
('A`) 「……うん、やってみるか」
 
(;'A`)▽ 「まずは……パクッ」
 
::(;゚A゚)::「アバババババ……つ、次、コ、コーヒーを──」
 
ヒュー バシャーン!
 三○)_)  Σ(゚A゚;)
 

335 :哀愁漂うドクオ ◆xJGXGruetE:2009/01/28(水) 01:44:20.69 ID:oO3SjDJzO
 
::(;゚A゚)::「コ、コーヒーが! ボ、ボール!?」
 
ノハ;゚听) 「ごめぇぇぇぇん! 当たらなかったかぁぁぁぁ?」
 
ξ;゚听)ξ 「ちょ、あんたどうしたのよ?」
 
::(;゚A゚)::「み、みみみみ、水──」
 
ノパ听) 「ミミズかぁぁぁぁ? ちょっと待ってろぉぉぉぉ!」
 
ξ;゚听)ξ 「バカ、違うでしょ! 水よ、水! ブーン!」
 
(^ω^ )三 「お!」
 
三( ^ω^)つ廿 「バケツに汲んできたお!」
 
::(;゚A゚)::「水──みずぅ──」
 
ノパ听) 「よし、かけろぉぉぉぉ!」
 
( ^ω^)つ廿彡 「お!」
 
ξ;゚听)ξ 「違ーう!」
 

339 :哀愁漂うドクオ ◆xJGXGruetE:2009/01/28(水) 01:47:05.30 ID:oO3SjDJzO
 
ザバーン!
( A )
 
(;^ω^) 「お? 違ったのかお?」
 
ノパ听) 「間違えたぞぉぉぉぉ!」
 
ξ--)ξ 「あんたらは……」
 
ξ゚听)ξ 「……で、大丈夫、ドクオ?」
 
( A ) 「うん、大丈夫……。お陰で何か色々吹っ飛んだ……」
 
ξ;゚听)ξ 「そう……」
 
ノパ听) 「よかったぞぉぉぉぉ!」
 
( A ) 「はぁ……ガクッ」
 
(;^ω^) 「あ、倒れちゃったお」
 
ξ--)ξ 「意識も吹っ飛んだってわけね……」
 
 
 − 哀愁漂うドクオ おしまい −
 

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