13 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 21:12:53.62 ID:bHDKfH9m0

 − 第二十六章 −

 〜 第零話 〜


(-、-トソン 「Hey Jude, don't make it bad Take a sad song and make it better♪」

コーヒーを淹れ、文庫本を開き、時折CDに合わせて歌を口ずさむ。
昔からそんな一時が、自分の中でもっとも幸せな時間でした。

(〃´ω`)zzz

(-、-トソン 「And any time you feel the pain Hey Jude, refrain♪」

けれども今は、もっと別な幸せな時間の過ごし方を、傍らに眠るブーンが授けてくれました。
ごく普通の生活を、ただブーンといっしょに過ごすだけで、それらが全て幸せな事に思えました。

(-、-トソン 「Don't carry the world upon your shoulders♪」

私は、ブーンのお陰で色々な事を学びました。
私は、ブーンのお陰で沢山の出会いに恵まれました。
私は、ブーンのお陰で幸せに満ちています。

私は、ブーンのお陰で自分の夢を見付けました。


19 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 21:14:23.19 ID:bHDKfH9m0

(〃´ω`)⊂(゚、゚*トソン 「……」

柔らかな感触が、ここにブーンがいる事をはっきりと示してくれます。

まだおぼろげながらですが、私は夢を見付けました。
夢を見せる存在が、私に夢を見せてくれました。

後は、夢を見る存在が、自分の夢を見る番です。


(゚、゚トソン 「ブーン……」

(〃´ω`)


「あなたは──自分の夢を────」



 〜 第零話 おしまい 〜

    − つづく −   


25 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 21:16:03.95 ID:bHDKfH9m0

 〜 第一話 〜


Good morning, my name is Toson Tumura.

(〃^ω^) 「ぐっどもーにんぐ、まいねーむいずブーンだお!」

ハハ*ロ -ロ)ハ 「そうそう、中々上手いじゃないか。それが英語での自己紹介だよ」

時刻は午前、場所はペニサスさんのお店、私とブーンの2人はハローさんと朝食を共にしていました。
ブーンがハローさんの時折話す英語に興味を持ったみたいだったので、教えてあげていたら、ついつい自分も心の中で英語を話していましたね。

('、`*川 「うーん……」

(゚、゚トソン 「どうしました?」

('、`*川 「いや、やっぱ見えるのは羨ましいなーってね」

ハハ ロ -ロ)ハ 「すまない、無神経だったか?」

いやいや、とペニサスさんは軽い調子で笑いながらひらひらと手を振って返されます。ただの僻みだから気にするなと。
ハローさんも笑って、じゃあ、見せ付けてやろう、とブーンを抱き上げます。


27 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 21:17:26.76 ID:bHDKfH9m0

('、`*川 「だから見えねーっての」

(゚ー゚トソン 「……」

('、`*川 「ん、何?」

(゚、゚トソン 「あ、いえ、お2人は出会ってそう時間も経ってないのに、随分と仲がよろしくなられたなと」

荒巻さんの家を訪問した一件の後、意外に早くハローさんの方から連絡がありました。
こちらから、お頼みしていた件と、それと純粋に会って話がしたいだけということで。
その際、食事をしながらでもとの事でしたが、ほぼ自炊一辺倒の私は、適当なお店が思い浮かばす、ペニサスさんのお店で会う事にしました。

そこでハローさんとペニサスさんは初対面から妙に意気投合されたわけですが。

('、`*川 「うん、まあ、何かね……」

ハハ ロ -ロ)ハ 「妙な親近感を感じなくもない」
つ〃^ω^)


30 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 21:19:06.05 ID:bHDKfH9m0

(゚、゚トソン 「親近感ですか……」
つ〃^ω^)オッ

私は、ハローさんからブーンを奪い返し、その言葉の意味を思い返します。
お2人とも、お互いの事情は私を通してですが把握されています。
そう境遇が似ているというわけでもないのでしょうが、夢見に付いて考えていた事は同じかもしれません。

ただ、そういうのを抜きにしても性格的には似通ってると思われます。
どちらもさっぱり気質なようです。

カランカラーン
ミセ*゚ー゚)リノ 「ちーっす」

('、`*川 「ああ、いらっしゃい」

ドアのベルが乾いた音を立て、新たな客の訪れを知らせます。
客といってもミセリですが、今日は私が呼びましたので一応は待っていた客です。
ミセリは私の隣に腰掛け、ペニサスさんにモーニングセットを頼みます。

ミセ*゚ー゚)リ 「何か盛り上がってたみたいっスね?」


35 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 21:20:42.44 ID:bHDKfH9m0

ハハ ロ -ロ)ハ 「盛り上がってたと言う程でもないが、話は弾んでいたな」

私はミセリに、ハローさんとペニサスさんの類似点に付いて考えていた事を話しました。

ミセ*゚ー゚)リ 「そう言われると似てるかもしんないですね。気風がいいとことか、はっきり言うとことか」

('、`*川 「暗にがさつとか男らしいとか言ってない?」

危うくペニサスさんの言葉に頷きそうになった私は、誤魔化すためにブーンの頭にあごを乗せました。
ミセリはそのまま頷いて、ハローさんから冷ややかな笑みを浴びています。

('、`*川 「量減らすわよ?」

ミセ;゚ー゚)リ 「冗談ですよ、冗談!」

ペニサスさんはミセリの前にモーニングのプレートを出しながらそう脅されました。
トーストとサラダに目玉焼き、それとコーヒーというごく当たり前の喫茶店メニューですが、ドレッシングが自家製だとか、
ペニサスさんのオリジナル要素も入っていて美味しいです。

ミセ*゚ー゚)リ 「いつもながら美味いなー」

('、`*川 「そう? あ、デザートいる? ちょっと試作──」


38 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 21:22:45.03 ID:bHDKfH9m0

ミセ;゚д゚)リ 「いえ、結構です!」

ペニサスさんが残念そうに小脇に抱えていた箱を冷蔵庫に戻されます。
相変わらずの甘さを誇るペニサスさんの試作品ですが、ショボンさんが根気よく付き合っているお陰で、少しずつその甘さは
軽減されてきているように思えなくもありません。

(゚、゚トソン 「じゃあ、ミセリ……」

ミセ*゚ー゚)リ 「ん、わかってるよ」

私は、食事を終え、コーヒーを飲み終えて一息ついたミセリに合図を送りました。
そしてブーンを膝から降ろし、しゃがみこんでブーンと目の高さを合わせます。

(゚、゚トソン 「ブーン、私はこれからハローさんと大切なお話がありますので、ミセリといっしょに遊んでてもらえますか?」

( ^ω^) 「おー?」

ブーンは私の言葉に首をかしげ、ミセリの方を見ました。
ミセリも私と同じ様にしゃがみこんで、ブーンの頭をわしゃわしゃと撫でながら話しかけます。

ミセ*゚∀゚)リ 「お母さんは忙しいみたいだから、私といっしょに遊びに行こうぜ?」


40 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 21:24:13.49 ID:bHDKfH9m0

(〃^ω^) 「お! わかったお!」

ブーンは元気よく返事をすると、勢いよく走り出しました。

ミセ;゚ー゚)リ 「ちょ、ブーンちゃん早い! まだどこ行くかも決めてないよ?」

(;^ω^) 「お! そうだったお!」

既に入り口付近にいたブーンは立ち止まり、再びこちらへ走って戻ってきました。
他にお客さんがいないからいいものを、お店の中は走っちゃダメだと教えておいたのですが。

( ^ω^)ノシ 「お! じゃあトソン、いってきますお! ハロー、ペニサスまただお!」

ハハ*ロ -ロ)ハノシ 「ああ、名残惜しいがいってらっしゃいだ」

ヾ('、`*川 「えっと、この辺? いってらっしゃい」

ヾ(゚、゚トソン 「車には気を付けるんですよ。いってらっしゃい、ブーン」

ブーンはミセリといっしょにお店を出て行きました。
私は、それを確認すると椅子に浅く座り直し、身体を傾けカウンターに両手を突いて、ハローさんと額を付き合わせるようにして話を始めました。


48 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 21:26:02.68 ID:bHDKfH9m0

(゚、゚トソン 「例の伝承の件ですが、どうですか?」

ハハ ロ -ロ)ハ 「ああ、恐らく本物だと思う。おじいちゃんの日記にあった古文書も見付かった」

(゚、゚トソン 「そうですか、では……」

ハハ ロ -ロ)ハ 「各地の洗い出しも順調に進んでる。海外に赴任した事がこんな形で役立つとは思ってもみなかったがね」

('、`*川 「んー? 研究者同士のつながりってやつ? 便利なもんね」

ハハ ロ -ロ)ハ 「まあね。散々揶揄されたがな。どうも生粋のリアリストだと思われてたようだったんでね」

(゚、゚トソン 「すみません、私の無理なお願いを──」

ハハ ロ -ロ)ハb 「Stop! これは私が進んでやってることだよ。むしろ、私を当てにしてくれて嬉しい限りさ」

私がハローさんにお願いした事は、荒巻さんの日記にあった御伽話、夢を運ぶ雲のお話の事です。
このお話に関しては、荒巻さんの日記にいくつか気になる事が書かれていました。

ハハ ロ -ロ)ハ 「私もあの話は好きだったしね」


51 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 21:28:07.60 ID:bHDKfH9m0

ハローさんは初見の際、ブーン達のような不思議な存在の生き物については懐疑的に見ておられるように思えました。
ですがそれは間違いだったようで、信じているからこそ、そういった伝承を調べていたのであり、その結果、逆に怪異の存在を否定する証拠を
見つけて来たに過ぎなかったとの事です。

ハハ*ロ -ロ)ハ 「それに、戻ってきたら私にもブーンを貸してくれるんだろ?」

(-、-トソン 「その件なら、善処するとしかお答えしてませんが……」

早い話が、ハローさんはオカルトや不思議な話は大好きなようで、ブーン達をものすごーく気に入っておられるということです。

ハハ*ロ -ロ)ハ 「いいじゃないか、別に検査したり解剖したりするわけじゃない。ただ、いっしょに話したり遊んだりしたいだけだよ」

(゚、゚;トソン 「近いです、ハローさん。顔、寄せ過ぎです。わかりました、わかりましたから」

結局ハローさんに押し切られ、ブーンとお出かけをする許可を与える事になってしまいました。
ハローさんは残りの調査も任せてくれと満面の笑顔で宣言され、意気揚々と去って行かれました。

(゚、゚;トソン 「……はぁ」

('、`*川 「良かったの? そんな許可出しちゃって?」

(゚、゚トソン 「ええ、まあ……」


55 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 21:29:41.07 ID:bHDKfH9m0

別に2人きりとは言ってませんしね。
場合によっては保護者同伴になるだけですよ、と私が肩をすくめて言うと、ペニサスさんは呆れたように笑われました。

('、`*川 「過保護ねー」

(゚、゚トソン 「そうですか?」

('、`*川 「私はもうちょっと放任だったけどね」

(゚、゚トソン 「……こういう言い方は何ですが、アレとは比べようが」

('、`*川 「…………まあ、そうね」

私は、ペニサスさんが淹れてくれたコーヒーのおかわりを頂き、これからの事に付いて思いを巡らせます。
残された時間の中で、一体どれだけの事が出来るでしょうか。
ブーンのために、そして自分自身のために。

私は次の予定の確認と連絡のため、携帯電話を取り出しました。


 〜 第一話 おしまい 〜

    − つづく −   


60 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 21:32:04.81 ID:bHDKfH9m0

 〜 第二話 〜


*(‘‘)* 「お、時間通りに来やがりましたか。感心ですよ」

(゚、゚;トソン 「すみません、お待たせして。自分で頼んでおきながら時間ギリギリになってしまいました」

ヘリカル先輩はいつもの調子で、気にするなと私の背中をバシバシと叩かれます。
私は、ペニサスさんのお店から急ぎ自転車を飛ばし、商店街にある電気店前でヘリカル先輩と落ち合いました。

*(‘‘)* 「話は聞いていますから、取り敢えず行くですよ。まあ、私に全て任せやがれですよ」

(゚、゚トソン 「よろしくお願いします」

・・・・
・・・

(’e’) 「いらっしゃいませー……って、ヘリカルちゃんかい? という事はこっちが例の彼女だね?」

*(‘‘)* 「そうですよ、商工会長、準備は出来てやがりますか?」

(゚、゚トソン 「こんにちは、商工会長さんなのですね。はじめまして、都村トソンと申します。本日は無理なお願いをして申し訳ありません」


63 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 21:33:56.28 ID:bHDKfH9m0

(;’e’) 「……ホントにヘリカルちゃんの後輩かい? スゴいマトモなんだけど?」

*(;‘‘)* 「どういう意味ですか、それは?」

ヘリカル先輩に連れられ、店長らしき方を紹介されましたが、どうやらこの方はこの商店街の商工会長さんらしいです。
随分親しいご様子ですが、まあ、ヘリカル先輩は夏祭りの時も随分と中枢にいたらしいですから、それほど驚く事でもないかもしれません。
私は、早速商品を紹介して頂く事にしました。

(’e’) 「これなんだけどね、多少型落ちはするけど、取り敢えずネットをやる程度なら特に問題ないよ。
     3D描画の多いゲームやらグラフィックデザインをするにはちょっとマシンパワーが──」

*(‘‘)* 「ああ、そんな細かい事はいいですよ。どうせチンプンカンプンでしょうから」

(゚、゚;トソン 「ええ、3Dという言葉ぐらいは聞いた事ありますが、それ以上はその……」

丁寧にご説明くださる商工会長さんをヘリカル先輩が遮られましたが、正直助かりました。
生憎、パソコンには詳しくないので、ここで口頭で説明されてもイマイチ理解できる自信がありません。

(’e’) 「そう、じゃあ、取り敢えずの値段と、設置と設定のスケジュールでいいかな?」

*(‘‘)* 「それもどうせ私がやりますからね。金銭だけでオッケーですよ」


65 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 21:35:28.04 ID:bHDKfH9m0

(゚、゚;トソン 「よろしいのですか? そこまでご迷惑をお掛けして?」

*(‘‘)* 「かまいませんよ。つーか迷惑ではないですよ。後輩の面倒を見るのは先輩の務めですよ」

それに、交換条件は出してあります、と、ヘリカル先輩はニヤリと口の端を上げられました。
ヘリカル先輩に頼み事をした時点で、何らかの要求はあるものと覚悟していましたから、今更身構える話ではありません。
しかし、意外に、と言っては失礼かもしれませんが、軽い要求で、今年の夏祭りを手伝えというものでした。

(’e’) 「じゃあ、お値段はこんな感じで、プロバイダなんかは──」

*(‘‘)* 「ああん? もうちょい勉強しやがれですよ。プロバイダもこっちです。トソンに言ってもわかりませんよ」

(゚、゚トソン 「一応は調べましたので、どんなものかはわかりますが、先輩にお任せした方が良さそうですね」

*(‘‘)* 「おう、任せろですよ。ですから、これ、この辺をですね」

(;’e’) 「いやー、それはさすがに──」

*(‘‘)* 「あのですね、商工会長? こいつは今年の夏祭りを手伝わせます。私の片腕としてです。こいつはこう見えて結構やり手で
      えげつねーですよ? 今の内に恩を売っておきやがれです」


72 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 21:37:46.20 ID:bHDKfH9m0

(゚、゚;トソン 「えげつないって何ですか? と言いますか、そちらもご商売なのですから、あまりご無理を申し上げても……」

このまま先輩に交渉して頂くと、私がどんどん強烈なキャラになっていきそうだったのでやんわりと止めに入ろうとしました。
しかし、あっさりと商工会長さんが折れて、値引き交渉が進んだ模様です。
買うのは私ですので、値段が下がる事に文句はないのですが、これでは少々安過ぎるのではないかと心配になるような
お値段が提示されました。

(゚、゚トソン 「本当にこのお値段でよろしいのですか?」

(’e’) 「ああ、かまわないよ。元々、型落ち品だしね。それよりも今年の夏は頼むよ?
     君ら若い世代がこの街を盛り上げてくれる事に心から期待してるからね」

*(‘‘)*b 「安心しやがれですよ。今年の夏は大いに盛り上げてやりますよ。なんだったら、ゴールデンウィークも
       考えてやっても良いですよ?」

何だか色々とやらされる事が増えそうですが、商工会長さんの喜びようを見ると、どうも断れそうもありませんね。
これも良い経験だと思って、がんばらさせて頂く事にします。バイト代も出るんでしょうし。
私は、使用するのに必要な最低限を説明を一通り聞いた後、支払いを済ませ、電気店を辞する事にしました。


75 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 21:39:43.23 ID:bHDKfH9m0
ペコッ
"(-、-トソン 「本日は本当にありがとうございました」

(’e’) 「いやいや、こちらもちゃんと商売になってるから気にしないで。お買い上げありがとうございます」

*(‘‘)* 「んじゃ、トソン、私がセッティングするって事でいいんですよね? と言いますか、この後マッハで設置するつもりで
      ダイオード呼んでありますがね」

(゚、゚;トソン 「そうなのですか?」

*(‘‘)* 「ちゃんとすべて手配済みですよ。今日の夕方には使えるようにするですよ」

何から何まで有り難い事です。
確かに急いではいましたが、別にここ2週間ぐらいで使えるようになればと考えていましたので、これは嬉しい誤算ですね。
パソコンは初心者の私ですから、練習する時間は欲しい所でしたし。

私達が店内でそんな話をしていると、ダイオード先輩が正面の入り口から入って来られるのが見えました。

/ ゚、。 /  「どれ? ……積む」

(゚、゚トソン 「あ、自分が……」

*(‘‘)* 「お前は触らなくていいですよ。ダイオードに任せておきやがれです」


79 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 21:42:25.09 ID:bHDKfH9m0

ダイオード先輩はパソコンとモニターのダンボール箱、その他一式の詰まった紙袋を軽々と運んで行かれます。
私とヘリカル先輩はダイオード先輩の後に続き、店の前に止めてあるダイオード先輩の車に向かいました。

(゚、゚トソン 「すみません、ご足労頂いた上に荷物運びまで」

ヽ/ ゚、。 /  「ドント……マインド……」

既に運転席に乗り込んでいたダイオード先輩は、いつもの調子で気にするなと仰ってくれました。
私としては今日設置する予定ではなかったので、この後どうするかを3人で簡単に打ち合わせをしました。

(゚、゚;トソン 「──と言いますか、この車、私は乗れませんよね?」

ダイオード先輩の車は、後部座席に何やら大量の荷物が載っています。
トランクにも色々と詰めているらしく、先程のパソコンを載せたら後部座席に人は座れなさそうです。

/ ゚、。 /  「お前が膝の上に……ヘリカル乗せれば……」

*(#‘‘)* 「ふざけんなですよ。どこのガキ扱いですか?」

既に積まれていた荷物の中には、今日のセッテイングに必要なものもあるらしいので、この状況は仕方のない事のようです。
私は、家の鍵をヘリカル先輩に渡し、自分は歩いて戻る事にしました。


83 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 21:44:40.03 ID:bHDKfH9m0

*(‘‘)* 「いいんですか? 私ら2人だけを家に上げて?」

(゚、゚トソン 「ええ、信用してますから。それに、特に見られて困るものはありませんし」

元々、ミセリ達が好き勝手に出入りしていますし、今更どうという事はありません。
それに、私が付いていった所で、パソコンのセッティングに関してお手伝い出来ることがあるとは思えませんしね。
それよりはむしろ──

(゚、゚トソン 「折角ですから、晩ご飯食べて行かれませんか?」

/ ゚、。 /  「行かれます……」

*(;‘‘)* 「即答ですかよ。少しは遠慮しやがれですよ」

(゚、゚トソン 「いえ、遠慮とかなさらずに。こちらがお頼みしている立場ですし、それに関してはお手伝いも出来ませんしね」

私は、買い物をして戻る旨をお2人に告げ、重ねてパソコンの事のお願いとお礼を述べました。

d/ ゚、。 /  「これは……妖精さんのためでもある……妖精さんは……私の……友達だ」

*(‘‘)*b 「頼れるもんはいくらでも頼りやがれです。頼れる当てがあるのは自分のこれまでの行動の結果ですよ」


86 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 21:46:07.88 ID:bHDKfH9m0
 ペコッ
"(-、-トソン 「ありがとうございます。よろしくお願いしますね」

私は、お2人に別れを告げ、商店街の中央へ向かって歩き出しました。

・・・・
・・・

少し早い時間のスーパーは、それほど混み合ってなく、スムーズに買い物を終える事が出来ました。
とはいえ、あまり急いで戻っても、まだセッティングは終わってないでしょうし、いても邪魔になりそうですからのんびり歩いて帰る事にしました。

(゚、゚トソン 「あら?」

( ^Д^)9m)><;)

スーパーを出て、商店街を抜ける辺りまで来たところで、何やら見覚えのある人影と見覚えのない人影がありました。
やけに密接してますが、あれはひょっとして──

(゚、゚;トソン 「──いじめですか?」

見覚えのある人影、ビロード君が、明らかに自分より体格の良い、少々品行方正とは言い難い外見の男の子に突付かれています。
ビロード君は人付き合いが苦手で、友達がいないはずでしたから、これはどうもよろしくない状況のようですね。


88 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 21:47:55.73 ID:bHDKfH9m0

しかし、中学生とはいえ男の子、私のような非力な女性でどうにかできるものでしょうか?
それに、保護者──ではないですが、それに準じるような立場の私が口出しして、余計にこじれたりはしないでしょうか?

(゚、゚トソン 「ちょっと、そこのあなた──」

私は考えがまとまらない内に、その男の子に声をかけていました。
色々と懸念を抱きはしたものの、私はビロード君の先生ですから、問題があるならいっしょに解決したいと思います。

( ^Д^) 「あ? どちらさん?」

(;><) 「ト、トソン先生!?」

( ^Д^) 「ん? それって、ビロードが言ってた家庭教師の──」

(゚、゚トソン 「ビロード君に何をしているんですか?」

(:^Д^) 「え? 何って、ただプギャって──」

(-、-トソン 「確かにビロード君は人付き合いが苦手で、友達もいないかわいそうな子です」

( ><) 
ビシッ!
⊂(゚、゚トソン 「だからと言っていじめていいわけではありません。ビロード君から離れてください!」


92 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 21:49:41.61 ID:bHDKfH9m0

(:^Д^) 「えーっと……はい」

その男の子は、私の畳み掛けるような物言いに意外と素直にビロード君から離れてくれました。
私は、ビロード君に向き直り、やさしく諭すように話しかけます。

(^ー^トソン 「さあ、ビロード君、もう大丈夫ですよ。……でも、嫌な時はちゃんと嫌だと意思を示さなければ、
       こういった手合いは付け上がるだけですからね?」

(;><) 「……あの、トソン先生?」

(^ー^トソン 「何ですか、ビロード君?」

(;><) 「プギャー君は、そういうんじゃなくて、その……」

(^ー^トソン 「その?」

(;><) 「……お友達……なんです」

(^ー^トソン 「…………」

(゚、゚;トソン 「なん……ですと……?」

・・・・
・・・


96 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 21:51:17.82 ID:bHDKfH9m0

(-、-トソン 「知らぬ事とはいえ、大変失礼を致しました」

私は、その男の子、プギャー君に頭を下げ、先程の言動の謝罪をしました。
プギャー君は、軽い調子で気にしてませんと笑ってくれましたが、何と言いますか、少々恥ずかしい事をしでかしましたね。

( ^Д^) 「いやいや、ホント気にしてませんって。むしろ感動したっスよ」

(゚、゚;トソン 「か、感動ですか?」

プギャー君が言うには、学校でもいじめとか見て見ぬフリをする先生は少なからずいるこのご時世に、教え子をかばおうとした
私に素直に感動したとの事です。

( ^Д^) 「俺、こんな見た目じゃないっスか? あんま注意してくる先生いないっスよ」

プギャー君は自分の格好があまりよろしくない事は自覚している模様で、むしろ進んでそうしてるという事です。
曰く、頭が良くないから、せめて外見だけでも悪ぶってないとなめられるとか何とか。
私は、男の子の世界はよくわかりませんから、そうなんですか、と曖昧に頷くしか出来ませんでした。

( ^Д^) 「さすがっスね。ビロードがベタ褒めしてただけはあります」

(゚、゚*トソン 「そ、そうなんですか?」


101 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 21:53:26.22 ID:bHDKfH9m0

私は、そのビロード君の方に目を向けますが、ビロード君は何やら難しい表情でうつむいています。

(゚、゚トソン 「どうしました、ビロード君」

( ><) 「……トソン先生は僕の事、そんなかわいそうな子だと思ってたんですか?」

(゚、゚;トソン 「あ……」

ビロード君はつぶやくようにそう言いました。
これはちょっと失敗したかもしれません。
思わず本音が漏れてしまいましたが、さすがにこれはバカにされてると思われても仕方がありませんね。

オウフ! プギャー!
(><(m9(^Д^ ) 「何、すねてやがんだよ、事実じゃねーかwww」

(゚、゚;トソン 「すみません、ビロード君、その……」

( ^Д^) 「いいんスよ、先生、その通りなんスから」

気にしないでください、とプギャー君がビロード君とじゃれあいながら取り成してくれます。
ビロード君も、多少渋々ながらもその点が事実であった事を受け入れたようです。
と言うよりは、自分でも理解していても、それを他人から指摘されるのが恥ずかしかっただけなのでしょう。


105 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 21:55:09.21 ID:bHDKfH9m0

(゚、゚*トソン 「ビロード君にお友達が出来て良かったです」

(*><) 「はいなんです!」

しかし、ビロード君とプギャー君、見た目からしてどこに接点があったのかわからないタイプの違う者同士、
どうやってお友達になったのでしょうね?
私は、気になったので直接聞いてみる事にしました。

( ^Д^) 「クラスメートです。元々、勉強ではライバルだったんスけどね」

プギャー君の話によると、勉強のライバル、つまりはクラスで毎回最下位争いをしていたはずのビロード君が、自分だけどんどん成績を
上げていったので、気になって話しかけてみたら何となく意気投合して今に至るという事らしいです。

( ^Д^) 「こいつはクラスでも目立ちませんでしたからね。それまでほとんど話したことなかったっス」

どういった部分で意気投合したかはわかりませんが、何となく感じるのは、ビロード君は放っておけないタイプで、
プギャー君は面倒見の良いタイプといった所でしょうか。

(゚、゚トソン 「なるほど……」

( ^Д^) 「しかし、すごいっスね。どうやってこいつに物教えたんスか? こいつの飲み込みの悪さはマジパネェっスよ?」

(;><) 「そ、そんなことないんです!」


107 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 21:56:45.83 ID:bHDKfH9m0

そんなことない、あるとじゃれあう2人を見ていると、私は自然に笑みが浮かんできました。
ごく当たり前の、ただの学校の友達。そんな普通の事ですが、ビロード君にとってのそれは、とても大きな意味を持つのでしょうね。

(;><) 「あ、そうなんです。トソン先生、これ……」

プギャー君のヘッドロックを振り払って、ビロード君が鞄から1枚のプリントを取り出し、私に手渡します。

(゚、゚トソン 「これは……」

(゚ー゚トソン 「がんばりましたね」

(*><) 

先週に行われたビロード君の模試の結果は、私の思った以上に良い成績でした。
志望校の判定を見ても、これなら今のペースで楽に合格できるでしょうね。

しかし、そんな話をビロード君にすると、予想外の反応が返ってきました。

( ><) 「これじゃまだダメなんです!」

(゚、゚トソン 「え?」


111 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 21:58:41.10 ID:bHDKfH9m0

( ><) 「もっと成績上げて、もう1つ上のランクの高校を目指すんです!」

( ^Д^) 「ちょwwwお前wwwwww無理だろwww」

( ><) 「無理じゃないんです!」

(;^Д^) 「いや、お前のがんばりは知ってるけどさ……、あと1年しかないんだぜ?」

( ><) 「まだ1年あるんです!」

(゚、゚トソン 「ビロード君……」

私は、かけるべき言葉を見つけ出せず、ただビロード君を見つめていました。
ビロード君の成長に感激すると共に、現状で満足してしまおうとした自分を恥じ入る気持ちが浮かびました。

ビロード君とプギャー君はまだ言い合っていますが、ビロード君の口から飛び出す言葉がどれも前向きで、
出会った当初のビロード君を思い出すと信じられないくらいに変わったと思えます。

(゚ー゚トソン 「そうですね、まだ1年ありますね」

(;^Д^) 「ちょ、先生までwww」


114 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 22:00:54.31 ID:bHDKfH9m0

(゚、゚トソン 「確かにプギャー君の言う様に、1年では難しい部分もありますが、がんばってみても損はないでしょう」

(゚ー゚トソン 「がんばってみて、それでもキツいなら、その時にまた考えてもいいですしね」

受験まであと1年、まだ1年あるのか、もう1年しかないのか、考え方次第です。
高校受験ですし、受験科目はどこの学校も同じです。最終的にどこに行くにしろ勉強をがんばる事に不都合はありません。
ビロード君がそうしたいなら、私はそれを応援して、全力で手助けするだけです。

(^ー^トソン 「私は、ビロード君の先生ですからね。いっしょにがんばりましょう」

(*><) 「はいなんです!」

(;^Д^) 「……すげえな」

(;><) 「な、何がですか?」

プギャー君は、つぶやく様に自分の思いを私達に伝えます。
ビロード君の前向きな考え方に素直に感心した事。そして、高校で離れ離れになるのは寂しいという事も。

(;^Д^) 「俺の学力じゃ、今の志望校もギリギリっスからね」


117 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 22:03:03.65 ID:bHDKfH9m0

(*><) 「それなら、いっしょにお勉強するんです! いっしょにお勉強して、同じ高校目指すんです!」

(;^Д^) 「おまwww簡単に言うなよwwwwww」

プギャー君の言う様に、簡単な事ではないのは確かです。
ビロード君の様に家庭教師を雇うにしても、家計との相談もあるでしょうし、塾などもまた然り。

(*><) 「大丈夫なんです、僕がトソン先生から教わった事をプギャー君にも教えるんです!」

(;^Д^) 「ビロード……」

(゚、゚トソン 「私が教えてあげられればいいのでしょうが、来年から少し忙しくなりそうですので少々厳しいんですよね」

(;^Д^) 「いやいや、先生にそこまでご迷惑はかけらんねえっスよ。それも今日あったばかりの俺なんかに……」

(*><) 「大丈夫なんですって! 僕がちゃんと教えるんです!」

(;^Д^) 「無理だっつーの。お前のその自信はどっから出てくんだよwwwああ、もう……」

プギャー君は大きく頭を振り、後頭部を掻き毟ると大きくため息をつきました。
ビロード君はその間も大丈夫を連呼しています。


123 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 22:04:55.58 ID:bHDKfH9m0

(;^Д^) 「わかった、わかったつーの。……ここまで言われてやんなきゃ、俺はただのチキンじゃんか、クソッ……」

(*><) 「そうなんです! 逃げんななんです! 悔しかったら僕より上の成績取ってみろなんです!」

( ^Д^) 「んだと、コラ? 別に悔しいとか言ってねーよwwwつーかお前の実力じゃねーよ。先生が良いんだよ、先生が」

(゚、゚トソン 「私はちょっと手助けをしただけですよ。成績が上がったのはビロード君ががんばったからです」

( ^Д^) 「その、ちょっとの手助けがスゴいんスよ。このバカビロードをがんばる気にさせた“ちょっと”がね」

( ><) 「誰がバカなんですか? 今はプギャー君の方がおバカなんです!」

ビロード君の成績が上がった事で、皆が私を褒めてくれますが、私自身は本当に大した事はしてないんですけどね。
ビロード君と出会い、ワカッテマス君と出会い、2人の誤解を解いて、仲良くなって、家庭教師のお仕事をしただけです。
誤解を解くのも、私が何かをしたというわけではなく、ブーンやドクオさん、それにビロード君やワカッテマス君自身が
お互いを思った結果に過ぎません。

( ><)9m)^Д^)


126 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 22:06:31.58 ID:bHDKfH9m0

私はビロード君にとって、ただのきっかけに過ぎなかったはずです。
そこから先の事は、ビロード自身君が作り出した未来です。

でも、私はそのきっかけになれた事を本当に嬉しく思います。

そしてそれは、私自身が向かいたい夢への道を気付かせてくれるきっかけの1つにもなったと思います。


私は、じゃれあう2人を見ながら、今後の勉強のプランの見直しを考えていました。
まだまだ教える事は多々ありますし、問題も山積みです。

でも、この2人ならがんばっていけるのではないかと思え、自然と浮かぶ笑みをこらえる事が出来ませんでした。


( ><)9m m9(^Д^ )    (゚ー゚トソン


 〜 第二話 おしまい 〜

    − つづく −   


132 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 22:08:40.66 ID:bHDKfH9m0

 〜 第三話 〜


( ゚д゚ ) 「なるほど……」

明けて翌日、私は3コマ目の授業が終わるとすぐに、ミルナ先生の教官室にお邪魔していました。
来期の以降の授業についての相談のために。

( ゚д゚ ) 「確かにこのカリキュラムだとダメだな……」

(゚、゚トソン 「随分と無茶を申し上げているのは承知していますが……」

大学の授業は、履修すれば資格が取得できるものがあります。
逆に言えば、資格を取るためには必ずその授業を受けなければならないという事になります。
また、資格を取るためにはそれプラスで試験だったり実習だったりを受けなければならないものもあります。

( ゚д゚ ) 「うん、お前の指摘通り、ここがもったいないな。時間帯を重ねる意味がない」

元々、その資格を取る事が前提の学科であれば、必然的にその授業は卒業のために必須となりますので、無理なく履修できますが、
学科をまたいで資格を取ろうとすると、それなりにタイトな授業スケジュールになるか、カリキュラム次第では取得自体が不可能になります。
留年するならば別ですが。


136 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 22:10:05.37 ID:bHDKfH9m0

( ゚д゚ ) 「ここの2コマと3コマを入れ替えれば、うちの学科でも取得できるな……」

本当に必要な資格ならば、留年しても取るべきでしょうが、就職の際などに留年という響きはあまりよろしくありません。
理由はあれど避けたい所ではあります。
自分で働いて稼いだお金で大学に通っているわけでもありませんし。

( ゚д゚ ) 「……うーん」

(゚、゚トソン 「国公立の大学のカリキュラムを動かすのは難しいと聞いてます」

( ゚д゚ ) 「ああ、難しいな。……しかし──」

(゚、゚トソン 「しかし?」

( ゚д゚ ) 「わかった。何とかしよう」

(゚、゚;トソン 「は?」

( ゚д゚ ) 「聞こえなかったか? 何とかすると言ったんだ」

(゚、゚;トソン 「いえ、そのお答えは聞こえはしたんですが、そんな簡単に了承されると思わなかったので……」


142 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 22:12:48.35 ID:bHDKfH9m0

先程、ご自分でもカリキュラムを難しいとお答えなされたのに、何故そんな簡単に何とかすると仰る事が出来たのか疑問に思い、
私は再度質問を重ねます。

(゚、゚トソン 「ミルナ先生お1人で決められる事ではないのですよね?」

( ゚д゚ ) 「そりゃそうだ。教養の授業だからな。学部の1、2年全体に関わってくる」

それでも何とかすると言ったのは理由がある、とミルナ先生は続けられます。
システムに無駄がある事がわかったのだから、改善するのは悪い事ではないと。

(゚、゚トソン 「しかしその、何と申し上げて良いのかわかりませんが、こういう所はかなり保守的ですよね?」

( ゚д゚ ) 「ああ、頭の固い連中ばかりだな。無駄があっても問題がなければそのままにしておくだろう」

(゚、゚トソン 「では、やはり……」

( ゚д゚ ) 「この変更で起きる問題は、教官のスケジュール調整ぐらいだ。基本的に教養の授業を受け持つ教官は、
      その日は一日大学詰めになっているから、コマ割が変わった所でさしたる問題はない」

ミルナ先生は強い口調で私に説明をしてくださいます。
元々、若干強面のミルナ先生ですから、端から見れば私がお叱りを受けているように見えたかもしれません。


145 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 22:15:09.41 ID:bHDKfH9m0

( ゚д゚ ) 「結局、面倒だからやらない。それだけなんだ」

(゚、゚トソン 「……面倒だからですか」

( ゚д゚ ) 「怠慢だ。……都村、お前は自分の将来を真剣に考えて、その資格を取りたいんだろ?」

ミルナ先生の眼がさらに力を帯びます。
気圧されそうな圧迫感を受けますが、私は眼をそらさず、私の中で出した答えをまっすぐに伝えます。

(゚、゚トソン 「はい」

( ゚д゚ ) 「……うん、良い返事だ。じゃあ、後は任せろ。カリキュラムに関しては俺が何とかする。だからお前は──」

(゚ー゚トソン 「ええ、必ず資格を取って見せます」

( ゚д゚ ) 「それで良い」

ミルナ先生のそれとはわからない笑みと共に、張り詰めた空気は弛緩し、そこからは普通の世間話に移行しました。
と言っても、大学の有り方とか、ミルナ先生が常々疑問に思っている事のお話だったので、先程の延長と言えなくもありません。


148 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 22:16:42.84 ID:bHDKfH9m0

( ゚д゚ ) 「俺達は先生なんだよな。生徒を教え、導かなきゃならん。大学、特に文系はそういう点が薄い」

( ゚д゚ ) 「面倒臭いなんて理由、本来ならあってはならない」

( ゚д゚ ) 「生徒のための制度が、生徒のためになってないなら現場レベルででも改善すべきなんだ」

(゚、゚トソン 「……はい」

これまで、ミルナ先生とは事務的な事から世間話まで何度もお話をさせて頂きましたが、こういった教育論的なお話は初めてでした。
私の相談内容のせいかも知れませんが、先生と呼ばれる方でも常に悩み、より良くしていくために努力されてる姿を知る事が
出来たのは嬉しかったと思います。

先生も人なのですから、それは当たり前の事なのですが、そういった事を気付かせてくれたミルナ先生には感謝の言葉しかありません。

 ペコッ
"(-、-トソン 「本日は本当にありがとうございました」

( ゚д゚ ) 「気にするな。お前の様にがんばってるやつは好きだからな」

(゚、゚*トソン 「それはプロポーズですか」


151 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 22:18:24.84 ID:bHDKfH9m0

(; ゚д゚ ) 「バカ、俺は妻帯者だ」

(゚、゚トソン 「冗談ですよ。存じ上げてます。今度お酒でも差し入れしますね」

( ゚д゚ ) 「それは賄賂だ、賄賂。……まあ、俺は酒よりは甘いものの方がいいかな。実は甘党なんだ」

(゚ー゚トソン 「それは初耳でした。行き付けの良いお饅頭屋さんがあるので、今度お届けしますね」

期待している、そんなミルナ先生の声を背に受け私はミルナ先生の部屋を辞しました。
期待がどちらに向けての言葉だったのかはわかりませんが、私は自分の夢を果たすべく、がんばろうと決意を新たにしました。

・・・・
・・・

ヾ(〃^ω^)ノシ 「おかえりーだお」

(゚ー゚トソン 「ただいま、ブーン」

川д川 「お疲れさま。どうだっ──あ、いや、ごめん、何でもない」

( ^ω^) 「お?」


154 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 22:20:05.65 ID:bHDKfH9m0

いつもの帰宅よりは少し遅くなりましたが、今日は貞子の家で晩ご飯でしたので、そのまま直行しました。
先に来ていたブーンに出迎えられ、暖を取るべくコタツに潜り込みます。

(゚、゚トソン 「取り敢えずは何とかしてくれるそうです」

一応はブーンにも先生の所に寄って帰るから遅くなるとは伝えていましたが、詳しい理由はまだ話していません。
いずれちゃんと話すつもりですが、今は伏せています。
貞子達には理由も話していますので、詳細は誤魔化して曖昧に結果だけを告げました。

(゚、゚トソン 「先生に授業の事でちょっとお願いに行ってたのですよ」

( ^ω^) 「お? たんいくださいってお願いかお?」

(゚、゚;トソン 「違いますよ。と言いますか、何故そんな言葉を知っているのですか?」

( ^ω^) 「ミセリがよく言ってたお? お勉強しながら、せんせー、たんいくださいおーって」

ミセ;゚ー゚)リ 「そんな事言ってたっけ……?」

ξ゚听)ξ 「言ってたわね。隣の部屋まで聞こえてきた覚えがあるわ」


157 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 22:21:37.19 ID:bHDKfH9m0

ζ(゚ー゚*ζ 「言ってたね」

ノパ听) 「デレも言ってたぞぉぉぉぉ!」

(゚、゚;トソン 「2人共、ブーン達にあんまり変な事を教えないでくださいね?」
    スッ…
川д川つU 「まあ、大学生にとって単位は切実な問題だからねー」

自然と本題からそれて行くような、いつものたわいもない会話に興じていると、貞子が私の前に白い液体の入ったコップを差し出します。
すると、皆の視線がそのコップに集まるのを感じ、私は訝しげにそれを手に取りました。

U(゚、゚トソン 「何ですか、これは?」

ミセ*゚ー゚)リ 「何ですか? って、見ての通りだよ」

川д川 「スーパーでね、北海道物産展やってたの。で、試飲した牛乳がすっごく美味しかったから買って来たの」

ζ(゚ー゚*ζ 「ホント、美味しかったよー。皆で飲んだから後はそれしかないの」

(゚、゚トソン 「牛乳…………ブーンも飲んだのですか?」

(〃^ω^) 「うんお! おいしかったお!」

私は、他の面々も見渡しますが、全員既に飲んだ後のようで皆一様に頷きます。


162 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 22:23:33.54 ID:bHDKfH9m0

(゚ー゚トソン 「その目はまだ飲みたそうな目ですね? ブーン、私の分も飲んでいいですよ?」

(〃^ω^) 「お!」

ミセ*゚д゚)リb 「ちょい待ち! トソン、お前は牛乳飲むべきじゃないかなー?」

(゚、゚トソン 「何故です?」

ミセ*゚ー゚)リ 「そりゃあ……」

そういうミセリの視線が私の胸元に下がるのを感じました。
……ええ。

川;д川 「ミセリちゃん!」

ζ(゚д゚;ζ 「それは言っちゃ──」

(゚、゚トソン 「ブーン、アレは気にしないで飲んでいいですよ?」

(;^ω^) 「お……、でも……」


164 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 22:25:04.68 ID:bHDKfH9m0

私は躊躇するブーンの手にそっとコップを押し付けます。
ブーンは私の顔と周りの皆を交互に見比べながら、恐る恐る口に運ぼうとしますが、またもミセリがそれを遮ります。
     サッ!
ミセ*゚д゚)リつU 「ブーンちゃん、ストーップ!」

(;^ω^) 「お! コップ……」

(゚、゚トソン 「何をするんですか、ミセリ? ブーンの牛乳を」

ミセ*゚ー゚)リ 「なーんか怪しいんだよなー」

(゚、゚トソン 「何がですか?」

ミセ*-へ-)リ 「いやね、何か不自然ってーか、違和感がね」

ζ(゚ー゚*ζ 「違和感?」

ミセ*゚ー゚)リb 「普段ならさっきの私の発言で、何らかのアクションがあってしかるべきだと思うんだけどね」

ξ゚听)ξ 「具体的に言えばミセリへの制裁ね」


168 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 22:26:44.30 ID:bHDKfH9m0
 サッ!
U⊂(゚、゚トソン 「私は心の広い人間ですから、そんな事はしませんよ」

私はミセリからコップを取り返し、再びブーンに渡します。
しかし、ブーンはコップを持ったままおろおろと困惑していました。

(^ー^トソン 「ブーン? ミセリは気にしないで飲んでしまっていいですよ?」

(;^ω^)つU 「おー……」

ミセ*゚−゚)リ 「……トソン?」

(゚、゚トソン 「何ですか?」

ミセ*゚−゚)リ 「ひょっとして…………牛乳飲めない?」

(゚、゚トソン 「………………」

川−川ξ゚−゚)ξミセ*゚−゚)リζ(゚−゚*ζ

(゚、゚;;トソン 「な、ななななな何を仰いますやら……ええ、そんな事はないですよ、ええ……」

川;д川 「……そうだったの?」


172 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 22:28:06.16 ID:bHDKfH9m0

ξ;゚听)ξ 「意外だった……いえ、ある意味順当なのかしら?」

ζ(゚ー゚*ζ 「あれ? でも、トソンちゃん、乳製品は普通に好きだよね?」

ノパ听) 「クリームとかチーズとか、グラタンとかもいっぱい食べてたぞー?」

(-、-;トソン 「違いますー。別に、牛乳ぐらい飲めますー」

ミセ*゚∀゚)リ 「ほほう、じゃ、これ、飲んでみよっか? ほれ、ぐぐいっと行ってみ?」

(-、-;;トソン 「……今日は牛乳の気分じゃないんですよ。ブーン、それ早く飲んでしまって──」
     スッ…
( ^ω^)つU 「トソン?」

U⊂(゚、゚;トソン 「ブ、ブーン?」

( ^ω^) 「ウソはメッだお?」

(゚、゚;トソン 「……」

( ^ω^) 「……」


178 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 22:29:37.72 ID:bHDKfH9m0

(゚、゚;トソン 「…………」

( ^ω^) 「…………」

(゚、゚;;トソン 「……………………」

( ^ω^) 「……………………」

( 、 ;;トソン 「……ごめんなさい、牛乳苦手なんで、それ、ブーンが飲んでください」

(〃^ω^) 「お!」

  ? ニヤニヤ  ニタニタ  ニコニコ  ニヤニヤ
ノパ听)ξ゚ー゚)ξミセ*゚∀゚)リζ(^ー^*ζ川ー川

・・・・
・・・

ミセ*゚∀゚)リ 「いやー、しかし盲点だったなー。そっかー、牛乳かー」

(〃^ω^) 「おっおっお」


180 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 22:31:26.32 ID:bHDKfH9m0

ミセリがニタニタと下品な笑みを浮かべながら鬼の首を取ったかの如く言います。
ブーンがいつも以上ににこにこして見えるのは私の被害妄想でしょうか?

(゚、゚;トソン 「嫌いな人は少なくはないはずですよ?」

ζ(゚ー゚*ζ 「まあ、いるね。幼稚園とか小学校の時とかいた」

(〃^ω^) 「おっおっお」

(゚、゚;トソン 「そうでしょ? 珍しくはありませんよ」

ミセ*゚∀゚)リ 「珍しいどうこうじゃなくて、トソンの苦手なものがわかった事が重要なんだよ」

(〃^ω^) 「おっおっお」

(-、-;トソン 「誰にだって苦手なものはありますよ」

ミセ*゚ー゚)リ 「だってさ、ブーンちゃん?」

(〃^ω^) 「おっおっお」


184 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 22:33:32.16 ID:bHDKfH9m0

この事が発覚すれば色々言われるのはわかってましたから今まで隠してたというのに。
その予想通り、ミセリはここぞとばかりにねちねちと突付いてきます。

川д川 「でも、変わってるよねー。乳製品はほとんど大丈夫と言うか、むしろ好きだよね?」

(゚、゚;トソン 「牛乳の匂いはほとんど消えますからね」

ξ゚听)ξ 「ああ、匂いかー。それはちょっとわかるわ」

(〃^ω^) 「おっおっお」

ノパ听) 「牛乳、美味いぞー?」

(゚、゚;トソン 「好みは人それぞれなんですよ」

(〃^ω^) 「おっおっお」

(゚ー゚;トソン 「……」


187 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 22:35:34.58 ID:bHDKfH9m0

 (-、-;トソン 「ブーン? ちょっと笑い過ぎですよ?」
つ)^ω^(⊂ 「おっおっお」

頬っぺをぐりぐりしてもなお、笑い続けるブーンを見て、私は明日の朝ご飯をセロリとピーマンと春菊だけで作ろうと決意しました。

川д川b 「まあ、でも……」

dζ(゚ー゚*ζ 「これからは……」

ミセ*゚ー゚)リb 「ちゃんと牛乳飲めよ?」

(゚、゚;トソン 「別に、苦手なものを無理に──ハッ!」

(〃^ω^) 「お?」

そうでした。私がここでその事を認めてしまえば、ブーンに対しても野菜を食べなくていいという免罪符を与えてしまう事になります。
恐らく3人はそれをわかってて言っているのでしょう。

(-、-;トソン 「だ、出された分は飲みますよ……」

ノハ*゚听) 「好き嫌いはダメだぞぉぉぉぉ!」

(-、-;トソン 「……はい」


191 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 22:37:22.72 ID:bHDKfH9m0

ミセ*゚∀゚)リ 「ニヒヒ」

(゚、゚;トソン 「何ですか?」

ミセ*゚3゚)リ 「べぇーつにー?」

ミセリが完全に調子に乗っていて、腹立たしい事この上ないです。
私は、ミセリは無視する事に決めて、改めてブーンの方に向き直ります。

(〃^ω^) 「お! 大丈夫だお。いっしょに牛乳飲む練習するお!」

(゚ー゚トソン 「……ええ、ありがとう、ブーン」

私は、にこやかに微笑むブーンを抱き寄せ、頬擦りしようとしましたが牛乳臭いのでそのまま反対側に下ろしました。
ブーンは、何故自分が移動させられたのかわからず、きょとんとしていましたが、理由に気付いたらしいツンちゃんの
吹き出す姿が視界の端に見えました。

(;^ω^) 「お……?」

(゚∩゚トソン 「そうですね、いっしょに苦手な物も克服していきましょうね」

戸惑うブーンを気にせず話を続けましたが、鼻を押さえながらだと、どうにも言葉がくぐもって聞き取り辛かったかもしれません。
私は、貞子が淹れてくれたコーヒーで牛乳の匂いを誤魔化し、ブーンの頭を撫でました。

(〃^ω^) 「うんお! いっしょにお野菜と牛乳だお!」


197 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 22:39:07.13 ID:bHDKfH9m0

ミセ*゚ー゚)リ 「……まあ、でも、1つわかった事があるね」

川д川 「何がわかったの?」

ミセ*゚ー゚)リ 「デレは牛乳好き?」

ζ(´ー`*ζ 「好きだよー」

ミセ*゚ー゚)リ 「つまりはそういう事だね」

そう言うミセリの視線の先は、またも私の胸元に向けられています。
……ですが、ミセリは1つ重大な事を失念しています。
先程は、あの牛乳を処分したかった故にその行動がスルーされていただけという事に。

そして現在、牛乳は処分済みという事に。

(^ー^#トソン

ξ--)ξ 「バカねぇ……」


 〜 第三話 おしまい 〜

    − つづく −   


202 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 22:41:46.09 ID:bHDKfH9m0

 〜 第四話 〜


夢を見ていました。

広い草原にベンチが1つ。
少し小さめで、それなりの年季を経たのか、くすんだ白色の木製のベンチ。

私はそこに座って、空を眺めていました。

青い空に流れる白い雲。

私の傍らには、読みかけの文庫本と一対のスミレのコーヒーカップ。

そして白い、私の大切な家族。


私が空を指差しても、その笑顔はずっと私に向けられていました。


・・・・
・・・


206 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 22:43:43.70 ID:bHDKfH9m0

まどろみの中、何かがガサゴソと動く気配を感じました。
私は、ゆっくりと目蓋を上げ、音の出所の方へ目を向けます。

( ^ω^) 「お?」

(゚ー゚トソン 「……おはよう、ブーン」

(〃^ω^) 「おはようだお、トソン!」

(゚、゚トソン 「早いですね。出かけるのはもう少し後ですよ?」

私は、立ち上がり、洗面所の方へ歩いていきます。
今日は日曜日で、昼前からブーンといっしょに散歩に行く予定です。

(〃^ω^) 「お! 観たいテレビがあったんだお!」

(゚、゚トソン 「そうでしたね……。また観そびれてしまいました」

日曜日の朝はテレビで子供向けの番組が多数放映されています。
加えて、私も出かけないせいか、日曜の朝は妙に目覚めの良いブーンです。

(゚、゚トソン 「ブーン、コーヒーをお願いしても?」


211 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 22:45:46.36 ID:bHDKfH9m0

(〃^ω^) 「お! わかったお。10分後だおね?」

私は、ブーンの返事に笑顔で頷いて、目を覚ますべくシャワーを浴びに浴室に入りました。

・・・・
・・・

~U(゚、゚トソン 「中途半端な時間帯ですし、出先でブランチと行きますか」

( ^ω^)U~ 「お! ブランチだお! 遅い朝ご飯だお!」

私は、ブーンが淹れてくれたコーヒーを飲みながら、今日の行き先を改めて確認し合いました。
と言っても、ブーンが行きたがっている場所を適当に回るだけですから、大して考える事もないんですけどね。

(゚、゚トソン 「じゃあ、まず、ご飯を食べに行きますか」

ヾ(〃^ω^)ノシ 「うんお!」

・・・・
・・・


214 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 22:47:53.54 ID:bHDKfH9m0

(゚、゚トソン 「何にしますか?」

(〃^ω^)ヾ 「おー……? いっぱいあるおー。うーんと……」

日曜日の大学は基本的に授業がありません。
ですから、必然的にキャンパス内は閑散とし、学食もまた同様です。
普段ならそれなりに並ばないと食べられない学食ですが、今日はのんびりメニューを眺めて考える余裕があります。

(〃^ω^) 「お! これにするお!」

(゚ー゚トソン 「それですか? もっと豪華なものでもいいんですよ?」

メニューを前にしばらく悩んでいたブーンが指差したのはカレーでした。
学食では1、2を争うくらい安価で、同時に人気メニューですから、ブーンの選択は中々手堅いところとも言えます。
ハンバーグという選択肢もあったのですが、今日の晩ご飯はあらかじめハンバーグだと宣言していましたので避ける事にしました。

(〃^ω^) 「カレーがいいお! 前にミセリが学食のカレーがおいしいって教えてくれたお!」

ブーンが言うには、ミセリから、カレーは作る人によってかなり味が変わるので、学食のカレーは私のカレーや貞子のカレーとも別の
美味しさがあるから一度は食べるべき、という持論を教わったとの事です。
まあ確かに、学食のカレーは私も好きです。
ちゃんと手作りのものを寝かせてあるから味に深みがあるらしい、というのが貞子の調べでわかりました。


218 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 22:49:41.62 ID:bHDKfH9m0

(゚、゚トソン 「じゃあ、私もカレーにしますか」

私は、ブーンに荷物番を頼み、食券売り場へ向かいます。
ブーンは席取りには向きませんが、荷物を置いておけば大丈夫でしょう。
もっとも、席はガラガラですから取っておく必要もないのですが、折角ですから外が見える眺めの良い席を確保する事にしました。

・・・・
・・・

○⊂/ ゚、。 /  「ただのカレーは……寂しい……」

ヾ(〃^ω^)ノシ 「おー! コロッケだおー!」

(゚、゚トソン 「……」

*(‘‘)* 「どうしやがりましたか?」

私が、カレーを2つ乗せたトレーを抱えて座席に戻ると、こちらに手を振るブーンの向かいに小さな背中と大きな背中が見えました。
私はブーンの隣に座り、2人の先輩方に挨拶をし、ここにいる理由を尋ねましたが、単に食事に来ただけみたいでしたので、いっしょに
食事をする事にしました。


221 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 22:51:41.59 ID:bHDKfH9m0

(゚、゚トソン 「どうもしてませんが、今日はバイトはなかったんですか?」

*(‘‘)* 「今日は休みですよ。この時期は人手も余ってますからね」

/*゚、。 /  「学食のおばちゃんに……直接頼んできた……揚げたてコロッケだ……」

(〃^ω^) 「じゃがいものコロッケ大好きだお! ありがとうだお、ダイオード」

(゚、゚トソン 「ダイオード先輩?」

/ ゚、。 /  「む……何だ? ご飯……あげちゃダメ?」

(゚、゚トソン 「いえ、私の分はないんですか?」

○⊂/ ゚、。 /  「む……特別だぞ……?」

ダイオード先輩は事あるごとにブーン達に食べ物をあげたがるので、時折やんわりと制しています。
あまり間食の癖がつくと、ちゃんとしたご飯の時に残してしまったりしますからね。
今日はご飯時ですので、別に止めるつもりは無く、冗談のつもりで要求してみたのですが、私にもコロッケを分けてくれました。

相変わらず、私の冗談はわかりにくいのかもしれませんね。


224 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 22:54:11.69 ID:bHDKfH9m0

*(‘‘)* 「んじゃ、私にもくれですよ」

/ ゚、。 /  「なくなるから……ダメ」

*(‘‘)* 「むー、友達甲斐のないやつですね」

私は、ブーンを連れて散歩をしている事をお2人に話し、ヘリカル先輩から今の商店街のお勧め品とダイオード先輩から
花の見頃な散歩コースを教えて頂きました。

(゚、゚トソン 「参考になりました。ありがとうございます」

d/ ゚、。 /  「気にするな……。気にするなら……またご飯……」

*(‘‘)* 「露骨に催促すんじゃねーですよ。ああ、気にすんなですよ。金にならん情報ならいくらでも分けてやるですよ」

(゚、゚トソン 「いえ、ここの所、色々とお世話になりっ放しですので、お好きなときに食べに来てください。大体、ミセリの分まで
      作ってますから、それを回せますので」

*(;‘‘)* 「お邪魔する時は事前に連絡入れるですよ」

/ ゚、。 /  「お前の……味付けは……私好み」


227 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 22:55:58.10 ID:bHDKfH9m0

(〃^ω^) 「ごちそうさまでしたお! カレー、おいしかったお!」

/*゚、。 /  「それは……良かった。……おかわりは?」

(゚、゚;トソン 「ダイオード先輩、それはさすがに……」

私達は散歩を再開すべく、先輩方に別れを告げ、学食を後にしました。

・・・・
・・・

(〃^ω^) 「おー! まっ白なお花だおー!」

ダイオード先輩から教わった大きな白木蓮が咲いている通りを歩き、

(〃^ω^) 「これも白いお! ちっちゃくていっぱいだお!」

雪柳が大量に植えてある庭を眺め、

(〃^ω^) 「これは知ってるお! 梅さんだおね? お……? 桃? 梅さんじゃないのかお? 似てるおー」

桃の花が咲くお堂に立ち寄り、私達は手を繋いで河川敷まで歩いて行きました。


233 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 22:57:53.94 ID:bHDKfH9m0

( ^ω^) 「おー、川の側はちょっと風が冷たいおね」

(゚、゚トソン 「そうですね。しかし、ここまで歩いて来て少し汗ばんでましたし、心地よくもありますね」

暦の上ではもう、春です。
日中、日が差している時間帯は暖かい日もあります。

(;^ω^) 「お! やっぱりお水はまだ冷たいお」

(゚ー゚トソン 「それはそうですよ。転ばないように気をつけてくださいね?」

ブーンは川の側にしゃがみこみ、水の中を覗いています。
小さな魚がいるとはしゃいでますが、上から見ても魚の種類までは特定できませんでした。

(〃^ω^) 「多分、フナさんだお」

(゚、゚トソン 「そんな感じもしますね。……あ、ブーン、あそこ」

私は、川辺から少し離れ、道路に面した傾斜になった土手の所にブーンを引っ張って行きます。
冬の間に1度刈られたのか、背の低い草しか生えていない斜面に、いくつかの黄色い花が見えます。


236 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 22:59:36.17 ID:bHDKfH9m0

(〃^ω^) 「おー、タンポポさんだおー!」

(゚ー゚トソン 「ほら、こっちにも」

( ^ω^) 「お? この紫のお花は……」

ヾ(〃^ω^)ノシ 「スミレさんだお! 本物、初めて見たお!」

(゚ー゚トソン 「ええ、スミレですね。さすがに毎日コーヒーカップで見てますからわかりましたか」

私達は斜面に腰掛け、空や雲、花を見てお話しました。
何でもない風景が、ブーンといっしょならどれも素敵な、楽しい風景に様変りします。

チリン、チリーン
ζ(゚ー゚*ζ 「おーい、トソンちゃーん、ブーンちゃーん」

ξ゚听)ξ 「バカ、邪魔すんじゃないわよ」

( ^ω^) 「お?」

(゚、゚トソン 「デレとツンちゃんですか?」


239 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 23:01:31.84 ID:bHDKfH9m0

斜面の上の道路から、誰かに名前を呼ばれたので見上げてみると、そこには自転車に乗ったデレとツンちゃんの姿がありました。
しかし、いつの間に自転車を手に入れたのでしょうか。

ζ(゚ー゚*ζ 「うんとねー、トソンちゃん達が自転車に乗ってるの見てー、ツンちゃんが羨ましそうだったからー──」

ξ;゚听)ξ 「べ、別に羨ましそうにしてないわよ!」

私が自転車を指差すと、デレが大声で理由を伝えようとしてくれましたが、如何せん距離があるため、今一つ聞こえ辛いです。
私は耳に手を当て、デレ達に聞こえないという仕草をして見せました。

ζ(゚ー゚*ζ 「ああ、ちょっと声遠いのかな?」

ξ゚听)ξ 「ここからじゃね」

dζ(´ー`*ζ 「んじゃ、降りますか」

ξ゚听)ξ 「そうね……って、ここから!? 向こうに降りる道が──」

ζ(´ー`*ζ 「ごー」

ξ;゚д゚)ξ 「ちょ! うひゃおぇ!?」


245 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 23:03:25.18 ID:bHDKfH9m0

(〃^ω^) 「おー! デレすごいお!」

(゚、゚;トソン 「中々無茶をしますね……」

デレは直接舗装のされていない土手の斜面を自転車で降りてきました。
田舎で自転車には乗り慣れていると言っていた言葉にウソはなかったようです。
かごから放り出されないように、必死にしがみついているツンちゃんはちょっと大変だったでしょうが。

ζ(´ー`*ζ 「とーちゃーく」

ξ;゚听)ξ 「何、無茶してんのよ!」

ζ(゚ー゚*ζ 「ん? このくらいは普通じゃないかな?」

ヾ(〃^ω^)ノシ 「トソンも今度やってお!」

(゚、゚;トソン 「パンクしますよ?」

そのまましばらくたわいもない世間話に興じ、サイクリングの途中だったデレたちと別れ、私とブーンは商店街の方へ向かいました。
日曜日の商店街はそれなりに人も多かったので、ブーンは道行く人にぶつからないように、私にぴったりくっついて歩いています。


248 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 23:05:16.40 ID:bHDKfH9m0

(゚、゚トソン 「先にちょっとだけ買い物しますか」

( ^ω^) 「お? 晩ご飯の買い物は昨日終わってなかったかお?」

(゚、゚トソン 「ちょっと買い忘れたものがあったんですよ」

( ^ω^) 「おー。トソンも結構おっちょこちょいだおー」

(゚、゚;トソン 「私だってたまには忘れたりしますよ」

(〃^ω^) 「おっおっお」

(-、-;トソン 「……セロリサラダを晩ご飯のメニューに追加しますか」

(;^ω^) 「お! トソン、ドンマイだお! 誰だって忘れちゃう事あるおね!」

必死に取り成すブーンをからかいながら、スーパーに立ち寄ります。
昨日買い忘れたじゃがいもを買うため、青果コーナーを覗くと見覚えのある後姿が目に入りました。

ノパ听)川ー川 (-_-)


250 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 23:07:06.54 ID:bHDKfH9m0

(〃^ω^)ノ 「お! 貞子、ヒート、おいすー」

ノハ*゚听)ノ 「おぉー、ブーン! おいぃぃぃぃっす!」

川д川 「あ、トソンちゃん、ブーンちゃん、こんにちは」    ...(-_-) ソソクサ…

(゚、゚トソン 「こんにちは、貞子、ヒートちゃん、お買い物ですか?」

私は、適当なじゃがいもを選びながら貞子と話します。
どうにもスーパーでばったりあった近所の主婦同士という感じに見えなくもないですが、気にしない事にします。

川д川 「たまには変わったものが作りたくて、ちょっと早めにスーパーに来たんだけどね」

(゚、゚トソン 「貞子は本とかよりも実際に材料を見て考える方でしたね」

ノハ*゚听) 「肉いっぱいの料理がいいぞー!」

(〃^ω^) 「甘いお菓子がいいお!」

貞子の買い物の邪魔をするわけにも行かないので、私は行くところがあるからと貞子達に別れを告げ、スーパーを出ました。
そのまま適当に商店街を、ヘリカル先輩のお勧め品を眺めたりしながら歩き回りました。


254 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 23:09:08.15 ID:bHDKfH9m0

(´・ω・`) 「やあ、お2人さん。買い物かな?」

(〃^ω^)ノ 「ショボン、おいすー」

(゚、゚トソン 「こんにちは、ショボンさん。どちらかと言えば散歩ですね」

庶凡屋の前を通りかかると、丁度ショボンさんがお客さんを送り出して店の中に戻ろうとしている所でした。
店の前で立ち話もご迷惑でしょうから、店内に入り、ついでに何か買って行く事にします。

(´・ω・`) 「そうそう、ちょっと新製品を考案したんだが見てもらえないかな?」

ヾ(〃^ω^)ノシ 「おー! ショボンまんじゅーの新しいやつかお?」

(゚、゚;トソン 「またですか? ペース速いですね……」

(´・ω・`) 「いやいや、今回は饅頭に非ずだよ。ほら、これなんだけど……」

( ^ω^)つ☆ 「おー? これ何だお? ちっちゃいお星さまみたいだお?」

☆(゚、゚トソン 「金平糖ですか? 少し大きめですが随分マトモな──」


259 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 23:10:35.45 ID:bHDKfH9m0
  _, ,_
☆(゚、゚トソン 「……」

  ∧∧∧
<´・ω・`>
  V V V    ※拡大図

(´・ω・`)b 「名付けて、ション平糖だ。どうかな、これ?」

ヾ(〃^ω^)ノシ 「甘くておいしいお! 飴玉みたいだお!」
 _, ,_
(-、-トソン 「何故ここまで造形にこだわる必要が……」

私は、サービスと仰られながら大量に提供されるション平糖を丁重にお断りして、桜餅を買い、お店を出ます。
まあ、全部は断れなかったんで、ブーンの手の中に小さな袋に詰まったション平糖が握られていますが。

(´・ω・`)ノシ 「毎度ー。また来てねー」

(〃^ω^)ノ□ 「絶対また来るおー! ありがとだお、ショボーン」

(゚、゚トソン 「では、また」


264 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 23:12:33.83 ID:bHDKfH9m0

商店街を抜け、再び散歩に戻ります。
歩き慣れた道、変わらない様で絶えず変わり行く道。
私達は、いつもの様に手を繋いで、いつもの様な話をしながらいつもの公園に向かいました。

( ^ω^) 「お?」

(゚、゚トソン 「あれは……」

('、`*川 「……ん?」

公園に入ると、紙袋を持ったペニサスさんが見えました。
ベンチの側に立っておられますが、そうすると反対側にはあの人もいらっしゃるのでしょうか?

(゚、゚トソン 「こんにちは。今日はお店はいいのですか?」

('、`*川 「や、こんちは。うん、ちょっと親戚のとこ行く用事があったんでね」

今日は喫茶店はお休みにして、ご親戚の家からの帰りにここに寄った所だとペニサスさんは説明されます。
私は、ベンチに座るもう1つの人影にも話しかけます。


267 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 23:14:05.97 ID:bHDKfH9m0

(゚、゚トソン 「こんにちは、ドクオさん。どうしたんですか、苦い顔がいっそう苦々しくなっておられますが?」

('A`) 「……うん、挨拶で削られるのにはだいぶ慣れた」

('、`*川 「あ、やっぱいるの? 何となくそんな気はしてたんだよね」

そう言いながらペニサスさんは紙袋からホットコーヒーを取り出されます。
親戚の家からの帰りにこれがある不自然さを気にしないフリをしながら、私はそれをドクオさんに手渡します。

('、`*川 「ついでにこれも。あ、出来れば感想も聞いてもらえないかな?」

(゚、゚;トソン 「相変わらず見た目は良いですね」

('、`*川 「見た目は、って何よ? 味も良いはずよ?」

私は、ペニサスさんから恐らく試作品であろうロールケーキを受け取り、ドクオさんに手渡そうとしました。
しかし、ドクオさんは無言で首を振り、受け取りを拒否されます。

(゚、゚トソン 「どうされましたか?」


272 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 23:15:47.12 ID:bHDKfH9m0

('A`) 「トソンちゃんは知ってるんだろ、それが如何に甘いかを?」

(゚、゚トソン 「ええ、一応は」

('A`) 「確かブーンは甘いの好きだったよな? それ、こっそりブーンにあげてくんね?」

(゚、゚トソン 「それは出来ません。これはペニサスさんがドクオさんのために作ったものですからね」

私は、ペニサスさんに聞こえないように、小声でドクオさんに言いました。
ドクオさんは、渋面ををつくり、頭を抱えて煩悶されているようでしたが最終的にはそっと左手を私の方へ伸ばされました。

(ノA`)つ 「お前さんはホント意地が悪いよな……」

(゚、゚トソン 「よく言われます。……感想はどうお伝えしますか?」

('A`) 「そうだな──いや、いつか自分で伝えるから今はいいよ」

(゚ー゚トソン 「わかりました、そうお伝えします」

私はドクオさんの言葉をそのままペニサスさんに伝え、軽く微笑みました。
ペニサスさんも苦笑い気味に笑い、早く伝えてくれないと試食係の意味がないとつぶやかれます。


277 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 23:17:54.13 ID:bHDKfH9m0

('、`*川 「ああ、そうだ。今回、何か調子良かったからもう1本作ってるんだけど、トソンちゃん、食べない?」

(゚、゚:トソン 「……ええっと」

(゚ー゚トソン 「ドクオさんがお腹空いてらっしゃるみたいでしたので、それもここにいおいておけば喜ばれるかと思いますよ」

(;゚A゚) 「ちょっとおー!? 何、勝手な事言ってんの!?」

私はドクオさんの悲痛な叫びはシャットアウトして、ペニサスさんにドクオさんの窮状を伝え、何とかロールケーキをもう1本、
ベンチに置く事に成功しました。
ブーンに食べさせても良かったのですが、先ほど買った桜餅もありますし、今日の晩ご飯はハンバーグですので
いっぱい食べたいでしょうから、さすがにロールケーキ1本は多過ぎます。

□( A )□ 「……」

(゚ー゚トソン 「ドクオさん、すごく嬉しそうです」

('、`*川 「そう? じゃあ、次からは少し多めに作ってみるかなー」

(;^ω^) 「おー……」


286 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 23:20:35.77 ID:bHDKfH9m0

私達は、ペニサスさん達と別れ、公園の奥の方のベンチへ向かいました。
残念ながらペニサスさんはコーヒーは余分に持って来ておられなかったので、自販機でパックジュースを2つ買いました。

( ^ω^) 「お? コーヒー牛乳だお? トソン、牛乳嫌いじゃなかったのかお?」

(゚、゚トソン 「ただの牛乳じゃなければ大丈夫です。コーヒー牛乳もいちご牛乳もフルーツ牛乳も好きですよ」

( ^ω^) 「おー? 変だお。トソン、変だおー。おっおっお」

(゚、゚;トソン 「変じゃないですよ。主に匂いが苦手なんですから、これとかほとんど牛乳の匂いしないでしょう?」

私達はベンチに腰掛け、桜餅をぱくつきながら空を見ていました。
私が空を見上げるのは、隣にいるブーンがいつの間にか空を見ている時があるからです。
無言で、一心に、目を輝かせて空を見ているブーンがいるからです。

(゚、゚トソン 「もうすぐ夕焼け色に染まりますね」

(〃^ω^) 「おー」

(゚、゚トソン 「あの雲、乗れそうな形ですよね」

(〃^ω^) 「おー、乗ってみたいおー」


289 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 23:24:25.78 ID:bHDKfH9m0

(゚、゚トソン 「……ねえ、ブーン」

(〃^ω^) 「お?」

(-、-トソン 「私は、ブーンの夢を知りました」

( ^ω^) 「お……」

(-、-トソン 「ブーン……あなたは……」

( ^ω^) 「……」

(゚、゚トソン 「自分の夢を……思い出していますね?」

( ^ω^) 「お……」

(゚、゚トソン 「……」

( ^ω^) 「……」

(゚、゚トソン 「……」


292 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 23:26:06.64 ID:bHDKfH9m0






「……うんお」












 〜 第四話 おしまい 〜

    − つづく −   


312 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 23:34:23.38 ID:bHDKfH9m0

 〜 第五話 〜


( ^ω^)(゚、゚トソン

いつぐらいからブーンは自分の夢を思い出していたのでしょうか?
荒巻さんの家に行った時かもしれません。
それとも、もっと前なのかはわかりませんが、それを聞いてどうこうという話は今すべき事ではありません。

ブーンが夢を思い出した今、私がすべき事は、ブーンの夢を叶えてあげる事です。

(゚、゚トソン 「荒巻さんの事も思い出したのですか?」

( ´ω`) 「ちょっとだけ思い出したお。お話してくれたお。雲のお話してくれたお」

(゚、゚トソン 「……」

( ´ω`) 「でも、気付いたらあらまきいなかったお……」

眠って、記憶を失くしてしまった事が、ブーンにとって良かったのかどうかはわかりませんが、荒巻さんの事で覚えている事は
そう多くはない様でした。
それでも、荒巻さんが話してくれた夢を運ぶ雲のお話はちゃんと覚えていたみたいです。

それがきっと、荒巻さんが教えてくれたブーンの夢を叶える手段だからなんだと思います。


316 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 23:36:07.07 ID:bHDKfH9m0

(゚、゚トソン 「私は、ブーンに自分の夢を叶えて欲しいと思っています」

( ´ω`) 「おー? ても、それは……」

(-、-トソン 「私は、ブーンにお空を飛んで、いろんな世界を見て来て欲しいと思っています」

荒巻さんの日記に記されていたブーンの夢。
夢を語るブーンの生き生きとした姿は、私には容易に想像する事が出来ます。
何事にもまっすぐに向かうブーンの、心からの願い、夢。

私は、ブーンの夢を叶えてあげたい……

叶えてあげたい……ですが──

( ´ω`) 「でも、それは……お空を飛んでいったら……」

(-、-トソン 「……」

( ´ω`) 「……トソンといっしょにいられなくなるお」

(-、-トソン 「……そうですね」


321 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 23:37:55.59 ID:bHDKfH9m0

( ´ω`) 「僕は夢をかなえたいと願ったお。そしたら、あらまきといっしょじゃなくなったお」

(゚、゚トソン 「……それは」

( ´ω`) 「僕はトソンといっしょじゃなくなるのは嫌だお」

(゚、゚トソン 「……ブーン」

( ´ω`) 「トソンといっしょがいいお」

( ;ω;) 「トソンといっしょじゃなくなるなら、こんな夢はいらないお」

ブーンは涙をぽろぽろと流し、泣き出しました。
私はそっとブーンを抱き寄せ、やさしく頭を撫でました。

( ;ω;((-、-トソン 「ねえ、ブーン、覚えてますか?」

( ;ω;) 「お?」

(゚、゚トソン 「私達が始めてこの公園に来た時も、ブーンはこのベンチで泣き出してしまいましたね」

( ;ω;) 「覚えてるお……。コーヒーカップさんにごめんなさいして、ありがとうって言ったお」


325 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 23:39:40.36 ID:bHDKfH9m0

(゚、゚トソン 「あれから1年も経ったのに、また同じ場所で泣いちゃって、ブーンはちっとも成長してませんね」

( ;ω;) 「おー……」

(゚ー゚トソン 「……なーんてね。冗談ですよ」

( ;ω;) 「お? 冗談かお? 何が冗談なんだお?」

(゚、゚トソン 「はいはい、どうせ私の冗談はわかりづらいですよ。ちっとも成長してなくてすみませんね」

( ;ω;) 「そんなことないお。冗談はわかりづらいけど、ちゃんとお勉強してお家のお仕事して、毎日ちゃんとしてるトソンは
       いっぱい成長してるお」

(゚、゚トソン 「ありがとう、ブーン。……冗談は努力します。まあ、とにかく、それはブーンも同じですよ?」

( ;ω;) 「お? 同じかお?」

(゚、゚トソン 「ええ、ブーンもちゃんと毎日お勉強して、お手伝いもして、いっぱい遊んで、ちゃんと成長してますよ」

(゚ー゚トソン 「立派なお兄ちゃんになってきています」

( ;ω;) 「ホントかお?」


331 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 23:41:20.34 ID:bHDKfH9m0

(゚、゚トソン 「ええ、ホントです。ホントですから、泣き止んだらもっとお兄ちゃんに近付けますね」

( うω;) 「お……」

( ^ω^) 「……お! 僕はお兄ちゃんだから、泣かないお」

(゚ー゚トソン 「はい、よく出来ました」

私は、ブーンの涙をハンカチで拭き、仕上げにおでこを人差し指でつんと押しました。
空は既に茜が差し、もうしばらくで日は沈むでしょう。

(゚、゚トソン 「ブーン、夢は捨てないでください」

( ^ω^) 「お……でも、いっしょに……」

(゚、゚トソン 「あなたの夢はお空を飛んで、いろんな世界を見る事でしょう?」

( ^ω^) 「お、そうだお。……でも、僕わかったんだお」

(〃^ω^) 「トソンといっしょにいる事も僕の夢なんだお!」


336 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 23:43:05.87 ID:bHDKfH9m0

(〃^ω^) 「トソンといっしょに暮らしてて、トソンといっしょに探そうって言って、トソンいっしょに見付けた僕の夢なんだお!」

(゚、゚トソン 「ブーン……」

(〃^ω^) 「だから、こっちの夢を僕はかなえるお! 僕の夢はかなうんだお!」

私の心は幸せで満たされました。
私と同じ思いを、同じ夢をブーンが持っていてくれた事に。

私は、ここで満足してしまっても良いのかもしれません。
このままずっと、変わることなくいっしょに。

私は無言で首を振り、そんな考えを振り払います。

後悔はしたくないから。

ブーンに夢を、諦めて欲しくないから。

ブーン、あなたの気持ちは本当に嬉しいです。
でもね、ブーン、あなたはちょっとだけ、間違っているのですよ?


341 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 23:44:41.93 ID:bHDKfH9m0

私は、傍らの紙袋の中から桜餅とショボン饅頭を取り出します。
と言うか、相変わらず買ってもいないのに入ってますよね、このお饅頭は。

(゚、゚トソン 「ブーン、桜餅とショボン饅頭、どっちが好きですか?」

( ^ω^) 「お? おー……どっちも好きだおー。どっちって決められないおー」

(゚、゚トソン 「じゃあ今はどちらが食べたいですか?」

( ^ω^) 「おー? 今かお? 今は……うーんと、桜餅だお!」

(゚ー゚トソン 「ショボン饅頭ですね」

(;^ω^) 「お? 桜──」

(^ー^トソン 「ショボン饅頭」

(;^ω^) 「お……、うんお。ショボン饅頭が食べたいお」

私は、ブーンが食べたがっていたショボン饅頭を渡し、自分は最後の1つだった桜餅を食べました。


346 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 23:46:30.86 ID:bHDKfH9m0

(゚、゚トソン 「これで、ブーンがショボン饅頭を食べたいという夢が叶いましたね」

( ^ω^) 「お? 夢かお?」

(゚、゚トソン 「ええ、これも夢です。小さいですが、これも1つの夢、願いですよね?」

( ^ω^) 「お……」

(゚、゚トソン 「でも、ブーン、あなたは桜餅も食べたかったですよね?」

( ^ω^) 「うんお。と言うか、桜餅の方が……お、桜餅も食べたかったお」

(゚ー゚トソン 「ええ、ブーンは桜餅を食べたいという夢があった。でも、それは叶いませんでしたね」

( ^ω^) 「うんお」

(゚、゚トソン 「けれど、桜餅を食べたいという夢は、また今度、買って来た時に食べれば叶いますよね?」

(〃^ω^) 「お! かなうお! また今度食べたいお!」

(-、-トソン 「それと同じですよ、ブーンの夢も、私の夢もね」

( ^ω^) 「お……? 同じかお? お! トソン、夢が見付かったのかお!」


351 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 23:48:05.80 ID:bHDKfH9m0

(゚、゚トソン 「ええ、見付かりました。ブーン、あなたや、皆のお陰でね」

(〃^ω^) 「お! どんな夢かお? 教えてお!」

(-、-トソン 「私の夢は──」

(゚ー゚トソン 「学校の先生になる事です」

(〃^ω^) 「お! 先生かお! スゴいお! トソンにぴったりだお! トソン、教え方上手だお!」

(゚ー゚トソン 「ありがとう。ブーンやビロード君がそうやって褒めてくれるから、ちょっと自信も付きました」

(〃^ω^) 「なれるお! トソンなら絶対、先生になれるお!」

(゚、゚トソン 「まあ、色々と難しいんですけどね。ミルナ先生には無理言いましたし、来期から授業は大変ですし」

(゚ー゚トソン 「でも、私は先生になりたいと思ったんです。誰かのために、誰かの助けになれる先生に」

(〃^ω^) 「トソンならなれるお! きっと立派な先生になれるお!」

(゚ー゚トソン 「ええ、なって見せます。夢を叶えて見せますよ」

私は小さく握りこぶしを固め、決意のガッツポーズをして見せました。
ブーンはまるで自分の事のように大喜びしてくれています。


357 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 23:50:03.51 ID:bHDKfH9m0

(゚、゚トソン 「でもね、ブーン」

( ^ω^) 「お?」

(゚、゚トソン 「私の夢はもう1つあるのです」

( ^ω^) 「もう1つかお?」

(-、-トソン 「ええ、それは、ブーン、あなたとずっといっしょにいることです」

ヾ(〃^ω^)ノシ 「お! 僕といっしょの夢だお!」

(゚、゚トソン 「ええ、いっしょですね。……でも、この夢を叶えてしまうと、私は先生になれませんか?」

(;^ω^) 「お……」

(゚、゚トソン 「先生になったら、ブーンといっしょにいてはいけませんか?」

(;^ω^) 「そんなことないお! ずっといっしょだお! いっしょにいて、トソンは先生になるお!」

(゚ー゚トソン 「ええ、私はそのつもりです。ブーンといっしょにいて、先生にもなるつもりです」

(〃^ω^) 「お! そうだお! いっしょだお! トソンは先生だお!」


361 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 23:51:42.44 ID:bHDKfH9m0

(゚、゚トソン 「ねえ、ブーン。これはあなたの夢にも同じ事が言えませんか?」

(;^ω^) 「お……」

(゚、゚トソン 「お空を飛んで、いろんな世界を見て来る事と、私といっしょにいる事はどちらも叶える事は出来ませんか?」

( ´ω`) 「お……」

(-、-トソン 「そりゃあ、確かに、ブーンが世界を回ってる内は、私といっしょにはいられません。でも、その夢を叶えた後なら?」

(゚、゚トソン 「ブーンはが飛んで世界を見て回る夢を叶えた後は、私とずっといっしょにいればいいじゃありませんか」

( ´ω`) 「おー……」

(゚、゚トソン 「ブーン、あなたの夢はどちらも叶います。私が叶えてあげます」

( ´ω`) 「……僕は」

(゚、゚トソン 「……」

( ´ω`) 「…………僕は、飛べるのかお?」

(゚、゚トソン 「ええ、あなたは飛べます。荒巻さんが教えてくれました。ハローさんが調べてくれました。皆が手伝ってくれました」


365 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 23:53:28.24 ID:bHDKfH9m0

(゚ー゚トソン 「だからブーンは飛べます。後は、あなたの気持ち次第です」

( ´ω`) 「僕は……」

私はそっとブーンの手を握ります。
泣きそうな顔をするブーンに首を振って見せ、笑顔を向けます。

笑ってください、ブーン。

あなたは笑顔が一番です。

いつもの晴れやかな笑顔で、あなたの答えを聞かせてください。

( ´ω`) 「僕は……」

(゚ー゚トソン 

(〃^ω^) 「僕は、お空を飛んで、いろんな世界を見てきたいお!」

(^ー^トソン 「ええ、夢を叶えましょう。皆と、私といっしょに叶えましょう」

やはりブーンには笑顔がよく似合います。
私は、ブーンをぎゅっと強く抱きしめ、ほんの少しだけ流れた涙を隠しました。


368 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 23:55:14.36 ID:bHDKfH9m0

・・・・
・・・

(゚、゚トソン 「すっかり暗くなってしまいましたね」

(〃^ω^) 「僕、お腹空いたお!」

(゚ー゚トソン 「さっきお饅頭食べたじゃないですか? もう少し我慢してくださいね。帰ったらハンバーグですからね」

ヾ(〃^ω^)ノシ 「おー!」

公園を出る頃には、すっかり日は落ちてしまっていて、辺りは真っ暗でした。
夜風は冷たいですが、繋いだ手の暖かさが寒さを感じさせません。
私達は、お互いの夢の話に花を咲かせ、マンションに帰ってきました。

ミセ*゚д゚)リ 「おっそ!」

カチッ、ガチャ、バタン、カチッ
(゚、゚トソン 「……」

ミセ;゚д゚)リ 「うぉぉぉい!? シカトな上に鍵まで閉めんなよ!!!」


374 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 23:56:52.26 ID:bHDKfH9m0

(;^ω^) 「お……トソン?」

何故か私の部屋の前に仁王立ちしていたミセリを無視して、ブーンと部屋に入ったのですが、外からミセリがドアを
ものすごい勢いで叩き出しました。

ブーンの気の毒そうな視線と、放っておくと近所迷惑になりそうな勢いでしたので、渋々ミセリを部屋に入れます。

(゚、゚トソン 「何の御用ですか?」

ミセ*゚ー゚)リ 「何のって、決まってんじゃん? 今日はハンバーグなんでしょ?」

私がチラリとブーンの方を見ると、ブーンはそっと視線をそらしました。
恐らく晩ご飯がハンバーグというのが嬉しくて、昨日の内にでもミセリにうっかり口を滑らしてしまったんでしょうね。
別に緘口令を敷いていたわけでもないんですから、それは構わないんですが……

(゚、゚トソン 「2人分しかないですよ?」

ミセ;゚д゚)リ 「えぇぇぇぇ!?」

(゚、゚トソン 「2人暮らしなんですから、2人分しかないのは当たり前でしょう?」

ミセ;゚ー゚)リ 「えー? だってハンバーグの時はブーンちゃんが好きだから翌日の分まで多めにって……」


379 : ◆xJGXGruetE :2009/02/07(土) 23:58:57.00 ID:bHDKfH9m0

再度ブーンの方を見ると、いつの間にかお茶の準備をしてくれています。
と言いますか、逃げましたね、ブーン?
そんなに嬉しかったのですかね、ハンバーグの日は。そんな事までミセリに話していたとは。

まあ、ミセリも大概家に来てますから、その辺を把握していても不思議ではないんですけどね。

今日はさすがに来ないと思っていたのでブーンには聞こえないように小声で話しかけます。

(゚、゚トソン 「今日は空気を読んで来ないと思ってましたが?」

ミセ*゚ー゚)リ 「ああ、まあ、顔見たら帰ろうかと思ってたけど、もう2人とも大丈夫みたいだったから居座る事に決めた」

(-、-トソン 「……コイツは」

ミセ*゚ー゚)リ 「ん?」

(゚、゚トソン 「……私もブーンも、大丈夫に見えましたか?」

ミセ*゚∀゚)リb 「ばっちり、すっきり! 上手くいったんでしょ?」

(゚、゚トソン 「……」


384 : ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 00:00:48.43 ID:BZ6nTDMP0

(゚ー゚トソン 「ええ」

ミセ*゚ー゚)リ 「よし、じゃあ、ハンバーグね、私の分も」

(゚、゚トソン 「……仕方ないですね」

ミセ*゚∀゚)リ 「いやっほー!」

途端に子供の様に騒ぐミセリに若干の頭痛を覚えながら、私はキッチンに向かいます。
ブーンがこちらにお茶を持って来てくれましたので、それを受け取り、ミセリの相手をしていて欲しいと頼みます。

ミセ*゚ー゚)リ 「ブーンちゃん、遊ぼうぜー。パソコンでお絵かきしよう!」

(;^ω^) 「お……、それ、トソンのお勉強の道具だお?」

(゚、゚トソン 「ああ、使ってないと言っていたタブレットを持ってきてくれたんですね。ブーン、一応ミセリはパソコン触れるみたいですから
      大丈夫ですよ。使い方を覚えたらブーンも触ってもいいですよ」

(〃^ω^) 「お! ホントかお!」

ミセ*゚ー゚)リ 「ほらほら、ブーンちゃん、トソン描いてみたよー」


388 : ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 00:02:51.07 ID:BZ6nTDMP0

(;^ω^) 「おー? 何か棒みたいな身体だおー」

(゚、゚トソン 「……ああ、ミセリ? ハンバーグは肉抜きで良いですかね?」

ミセ;゚д゚)リ 「良くねぇぇぇぇ!!!」

(〃^ω^) 「おっおっお」


私とブーンは、お互い、夢を見付けました。
持っていなかった夢を、失くしてしまった夢を。

そして2人とも、同じ夢をいっしょに見付ける事が出来ました。
2人がいっしょでなければ叶わない夢を。

私は、今日のこの選択を、一生誇る事が出来ると思います。
ブーンの背中を押した事。ブーンの夢を支えてあげられた事。

それはきっと、私自身の両方の夢にとって、とても大切な意味を持つものだと思います。


ねえ、ブーン、私は、そしてあなたは──


 〜 第五話 おしまい 〜

    − つづく −   


395 : ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 00:04:16.84 ID:BZ6nTDMP0
 〜 ( ^ω^)の日記 (゚、゚トソンの日記 〜

今日はトソンといっしょにさんぽに行ったお
楽しみで昨日はすぐにはねむれなかったお。でも、早くおきたお。

大学では、先輩方と鉢合わせしてしまいましたが、あの2人も随分ブーンを気に入ってますよね。
ヘリカル先輩は、自分のご飯がブーンに分けられるようなメニューじゃなかったのをちょっと悔やんでいたのがわかりました。
かわいらしい先輩方です。

道にいっぱいいろんなお花がさいていたお。桃さんと梅さんはそっくりだったお。わかんなかったお。
川はお水がつめかたっかお。お魚さんもいたお。あとで図かんで見たけど、あれはやっぱりフナさんだったと思うお。
デレが自てん車にのってたお。すごいはやさでさか道おりてきたお。トソンにもやってほしいお。

スーパーで貞子と会いましたが、店員さんと親しそうに話していましたね。
あれが以前話していた親切な店員さんですかね? 確かに、人の良さそうな感じですが、少しひ弱な印象も受けます。
まあ、貞子は意外とモテますからね。私と違って、ええ。

ショボンのところでめずらしいおかしを食べたお。
コンペイトウっていうらしいお。おさとうみたいで甘かったお。
ショボンが言うには、あれはコンペイトウじゃなくて、ションペイトウらしいお。へんな名前だお。


400 : ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 00:05:45.15 ID:BZ6nTDMP0

公園ではペニサスさんとドクオさんが相変わらずの様でした。
あの2人の事も、何とかしてあげたいですが、後はお2人自身にお任せしてもいいのかなとも思っています。
お互いどこか意地を張ってるようなとこがまだあるのかもしれません。もっと素直になれればいいんですけどね。

僕はトソンにウソをついてたお。ごめんなさいだお。
あらまきのおうちに行った時、ゆめを思い出したお。
ホントはもっと前から、時どきにゆめに見たお。きっと僕はわかってたんだお。

ブーンの夢がいつからわかっていたかは問題ではありません。
その事を隠していた理由も、もうわかっていますから。
相手を思うが故に、言えなくなってしまう事もありますからね。

僕はトソンといっしょにいたいお。

私はブーンといっしょにいたいです。

でも、僕は自分のゆめのため、お空をとぶお。

でも、私は、ブーンの夢のため、ブーンを笑顔で送り出します。

きっとゆめをかなえて、トソンのところへ帰ってくるお。

私はずっと、ブーンが帰ってくるのを待っています。


406 : ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 00:07:34.93 ID:BZ6nTDMP0

ぼくはぜったい、トソンのとこへ帰ってくるお。

私は絶対、ブーンが、帰ってくるのを信じています。

だから……

だから……

いってきますお、トソン。

いってらっしゃい、ブーン。



でも……

(〃^ω^) 「おー……今日はトソンはどんな日記書いたんだお? 気になるおー」

(゚、゚*トソン 「ブーンは今日、どんな日記を書いたんでしょうね? あとでこっそり読んでみますか……」


410 : ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 00:09:09.00 ID:BZ6nTDMP0

 〜 第六話 〜


晴れ渡る春の空。出会いと別れの季節の空。
絶好の旅立ち日和に、私達は9人で車の中にすし詰めという風情も何もない状況で雲井ヶ浜へ向かっていました。

(゚、゚トソン 「毎度の事ながらお手数をかけます」
つ^ω^) 「かけますお」

d/ ゚、。 /  「気にするな……志願したのは……私……」

川;д川 「出来れば、運転中は前を向いていて欲しいのですが……」
つパ听) 「危ないぞー」

ζ(゚ー゚*ζ 「ダイオード先輩の運転って結構安定してますねー」
つξ゚听)ξ 「意外と上手いものね」

/ ゚、。 / 「フッフッフ……10年選手だ……」

*(‘‘)* 「適当なこと言うなですよ。てめーはいくつですか?」

ミセ;゚ー゚)リ 「ちょ、ヘリカル先輩、あんまり暴れないでくださいよ」


414 : ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 00:10:35.78 ID:BZ6nTDMP0

*(#‘‘)* 「うっせーですよ。大体、何ですか、この席割りは?」

ミセ;゚ー゚)リ 「どーどー」
つ#‘‘)* 「ああん?」

普通車に9人はさすがに無理がありますが、ブーン達3人は膝の上でも大丈夫な大きさです。
それでも、大体の普通車は5人掛けなので1人あぶれるわけで……。
後部座席はこれ以上はキツいですので、一番軽い人が助手席の膝の上という運びとなったのですが。

/ ゚、。 / 「お前が……一番こまい……仕方ない……」

*(#‘‘)* 「んなこたわかってますから、こうやって大人しく座ってんじゃねーですか!」

ミセ;゚ー゚)リ 「全く大人しくない件……」

*(#‘‘)* 「何か言いやがりましたか?」

私は、助手席の喧騒は聞こえないフリをする事にして、ブーンに話しかけます。
今日からしばらく、ブーンとはお話できなくなってしまいますから、時間は1秒でも無駄にしたくはありません。


419 : ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 00:12:12.43 ID:BZ6nTDMP0

(〃^ω^) 「今日はすっごくいい天気で良かったおー」

(゚ー゚トソン 「ええ、快晴ですね。お空もブーンの旅立ちを祝してくれていますね」

とは言うものの、ブーンが夢を叶えに行くと決めた日から、ずっとブーンにべったりでしたから、
話したい事は話し尽くしたつもりです。
その割には、まだまだ話したい事はいっぱい浮かんできますし、普段からべったりだからいつもと変わってなかったと
皆からは言われるしで、何だかちょっと複雑な気分にもなりました。

ξ゚听)ξ 「……」

(〃^ω^) 「お? 何だお?」

ξ;゚听)ξ 「べ、別に何でもないわよ」

ζ(´ー`*ζ 「ウヘヘヘ……」

ξ#゚听)ξ 「気持ち悪い笑い方すんな」

当然の事ながら、その影響は私だけには留まらず、ツンちゃんやヒートちゃん達にも多大な衝撃をもたらしました。
興味なさそうな素振りを見せるツンちゃんですが、内心はブーンの事が心配で、そして寂しくも思っているのでしょう。

ヒートちゃんに至っては大泣きして、その次の日にはけろっとして、いなくなるまではずっと遊ぶと
張り切ってブーンと毎日走り回っていました。


428 : ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 00:13:56.50 ID:BZ6nTDMP0

デレや貞子、それにミセリは、私が事前に話していましたし、何度も相談に乗ってもらっていましたので覚悟はしていたようです。
もっとも、私次第とずっと言われてましたので、私達がそう決めた以上、全力で応援するしかないと考えてくれていたようでした。

(〃^ω^) 「おー、もうすぐ着くおね」

(゚、゚トソン 「そうですね。荒巻さんのお家からそう遠くない場所ですからね」

ブーンの夢を果たす手段は、荒巻さんの昔話そのものでした。
夢を運ぶ雲の話、そんな御伽話だけでは、さすがにこれを実行する気にはなれませんでしたが、そこは荒巻さんの日記にあった
古文書をハローさんやそのお友達の専門家に分析して頂いて、それが信用するに足ると太鼓判を押してもらいました。

そのあとで私がやった事は、世界各地に伝わる同じ様な伝承の洗い出しです。
これもハローさん達に手伝ってもらいましたが、要は夢を運ぶ雲の通り道を探し当てる事です。

結果、やはり世界各地に同じ様な伝承があり、そこが通り道なのだと特定しました。

(〃^ω^) 「あらまきのお陰だおね」

(゚、゚トソン 「ええ、あの方は、ブーンの夢のための、道を教えてくださいました」

伝承が真実だという事はわかりましたが、それだけではまだまだ問題はあります。


434 : ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 00:15:46.43 ID:BZ6nTDMP0

まずは夢を雲が運べる重量です。
これもハローさんのつてで、さらに少しミルナ先生も巻き込んで地質や気象の専門家による分析を行ってもらいました。

そもそも、雲に人が乗れる事自体が不思議なのですが、その辺りは密度がどうのとか特有の気候がどうのとか、
正直チンプンカンプンだったので、結果だけを受け入れる事にしました。

計算上は人1人ぐらいは運べるみたいです。
逆に言えば、1人しか運べませんので、行くならブーン1人か、ブーンと他の夢見の誰かということになります。
ブーンは1人で行くと言いました。私も、出来れば付いて行きたいのですが、ブーンがそう言う以上、その意思は尊重したいです。
物理的にも私では無理でしたしね。

(〃^ω^) 「お! お菓子食べていいかお?」

ミセ*゚ー゚)リつ*(‘‘)*つ「「「「「はい」」」」」⊂/ ゚、。 /⊂ζ(゚ー゚*ζ⊂川д川

(゚、゚;トソン 「皆いっぺんに渡さないでください。と言いますか、ダイオード先輩はハンドルを!」

次の問題はブーン自身の問題です。
ブーンの食事はどうするのか、という問題がありました。
ツンちゃんの話では、食べなくても平気だという夢見ですが、それだと眠っている時間が長くなり、最悪、私の事も忘れてしまいかねません。

ブーンは、私の事だけは絶対忘れないと言い切ってくれましたが、こればっかりは、
ブーン自身がどうこう出来る問題ではない部分ではあります。


440 : ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 00:18:19.55 ID:BZ6nTDMP0

(〃^ω^) 「おいしいお。ありがとだお」

(゚、゚トソン 「もう……。着いたら貞子のお弁当も食べるんですからね? ほどほどにですよ」

これに関しては、一種の賭けのような物でした。
私は、パソコンのウェブサイトを立ち上げました。サイト名は、夢を運ぶ白い雲。

まあ、私が立ち上げたと言うよりは、ヘリカル先輩達に作って頂いたという方が正しいのですが。
企画立案、文章なんかは私が考えましたからね。

(〃^ω^) 「大丈夫だお。貞子のご飯はおいしいからいっぱい食べられるお!」

(゚ー゚トソン 「食べ過ぎてお腹壊さないように」

サイトの内容は、夢を運ぶ雲の伝承に付いての解説、それと、ブーンの夢についてです。

伝承を証明し、世界を旅する不思議な生き物、夢見のブーン。
色々と誇張したり、気を惹くための表現は使ってありますがそこはご愛嬌。

大体の旅のスケジュールを記し、現地の人達に協力を仰ぎました。
この辺りの、文章の英訳やら通訳はほとんどハローさんに頼るという体たらくでしたが、この際形振りはかまってられません。

ブーンの夢のため、私の夢のため、手伝ってくれるという人は誰であろうと頼る事にしました。


445 : ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 00:20:01.47 ID:BZ6nTDMP0

(〃^ω^) 「世界中でどんなおいしい食べ物が食べられるか楽しみだおー」

(゚、゚トソン 「お気楽ですねえ。野菜しか食べない地域もあるみたいですよ?」

(;^ω^) 「おー……それは勘弁だお……」

協力の内容は、食べ物をあげたりしてくれというようなものです。
会えれば幸運が訪れるとか、そういう触れ込みですが、実際にブーン達と会えた私達は幸せになれましたから、
あながちウソではないと信じています。

当然ながら、悪意を持って近付く人間もいるとは思いますが、悪意を持った人間にブーンが見えるはずもないですから、
その辺りの心配は無用でしょう。

事故やら天災やらは怖いですが、それら全てを恐れていては何も出来ません。
そこはブーンが自分で何とかしてくれるという、割と希望的観測です。
信じているから、と言えば若干卑怯に聞こえますかね?

幸いな事に、今の所、興味を持ってサイトに書き込んでくれる方も多数現れています。
実際にメールのやり取りが出来るほど親しくなった方もいます。

色々な場所に宣伝をしたり、その道の権威の方のサイトで紹介してもらったりした甲斐はあったようです。
ハローさんら、民俗学に携わる方々の真面目な調査結果や論文、古文書の写真などを添えた事も、信憑性を高める結果になりました。


451 : ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 00:21:35.76 ID:BZ6nTDMP0

その他に、ハローさんの知り合いの海外の大学関係者も、ブーンが近くに来た時に見てくれたりしてくれる手はずになっています。
それでも、ブーン1人でがんばらなければならない場所もありますが、私達はブーンを信じて任せました。

ブーンの出発までに私が出来る事は全てやったつもりです。

/ ゚、。 /  「着いたー……」

私達は長いようで短いドライブを経て、ようやくブーンの夢の出発点、雲井ヶ浜の夢降り岬へ辿り着きました。

・・・・
・・・

ハハ ロ -ロ)ハ 「やあ、こっちの準備は万端だよ。と言っても、まあ、主に現象の調査というある種役得のだけどね」

荒巻さんの家から少し海沿いに移動した場所に、その岬はあります。
観光地等ではないので、途中から車を降りて歩きでしたが、これまでに数回来ていましたので、もうお馴染みの場所です。
少し坂を上る必要があり、岬と言うよりは崖と言うか断崖絶壁ですね。

(゚、゚トソン 「ご苦労様です。時間は計測通りですか?」

ハハ ロ -ロ)ハ 「ああ、ズレはないと思う。ちょうど日没頃だね」


455 : ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 00:23:19.46 ID:BZ6nTDMP0

岬にはハローさんとその知り合いの大学関係者の方々が集まっていました。
ハローさん以外の方々とはそれほど親しいわけではありませんが、全員事情を把握していて、どちらかと言えば純粋に伝承への
興味から手伝ってくれている様な人達です。

ハハ ロ -ロ)ハ 「放り雲は確認出来たから、運び雲が出る場所も特定出来た」

(゚、゚トソン 「そうですか。それはどの辺でしたか?」

ハローさんは、あの辺だと、ちょうど岬の先端辺りを指差されます。

夢を運ぶ雲は2種類あり、単純に言えばこの場所に辿り着く物と、この場所から発生する物があります。
一ヶ所で発生した雲がずっと世界を回るわけではなく、次の伝承地点で1回消滅して、また日を置いて到着した場所に
新たに発生するようです。

ハローさん達は便宜上、到達する物を放り雲、発生する物を運び雲と呼んでいるとの事です。

(゚、゚トソン 「行ってみますか?」

(〃^ω^) 「お!」


461 : ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 00:24:49.72 ID:BZ6nTDMP0

私はブーンの手を引いて、雲が発生すると特定された場所まで歩いて行きました。
その場所から少し身を乗り出すと、崖の下が見え、海が広がっています。
入り江状の地形で、左右に切り立った高い崖があり、アルファベットのWを想像してもらうとわかりやすいかもしれません。
丁度その、Wの中央にこの場所は位置するような感じです。

(〃^ω^) 「おー! 高いおー。波すごいお!」

(゚、゚;トソン 「下を覗くとちょっと怖いですね……」

私達は皆の元に戻り、特にやる事もないのでお昼ご飯にする事にしました。
いつの間にかレジャーシートが広げられており、研究者の方々にお茶を出したりと既に休憩所のような様相を呈していましたが。

川д川 「はい、お茶どうぞ」

ζ(゚ー゚*ζ 「紙コップはこちらにお願いしますね」

(゚、゚トソン 「何故か働いてますね」

川д川 「うん、まあ、このくらいしかお手伝いできないしね。あ、お昼にする?」

ミセ*゚ー゚)リb 「お昼にしよう! そうしよう!」


467 : ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 00:26:24.90 ID:BZ6nTDMP0

レジャーシートの上にお弁当を広げ、皆で車座になります。
こうやって皆でご飯を食べるのもしばらくは出来なくなりますね。
少々寂しい心持になりながらも、ブーンの笑顔を曇らせないように、私も笑顔でいる事にします。

(`・ω・´) 「ご飯ならこの、るん雲特製海鮮手巻きも如何かな?」

(〃^ω^) 「おー! おいしそうだおー!」

ζ(゚ー゚*ζ 「シャキンさん?」

(゚、゚トソン 「何故ここにいるんですか?」

(`・ω・´) 「何故って、そりゃあ、お昼を届けに」

(#゚;;-゚) 「それと、ブーンちゃんのお見送りだね」

(*゚ー゚)(*゚∀゚) 「「やっほー、見送りに来たよー」」

( ФωФ) 「うむ、旅立つ男にふさわしい、晴れやかな笑顔であるな」

ヾ(〃^ω^)ノシ 「おー! みんなー、おいすー!」


475 : ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 00:28:11.52 ID:BZ6nTDMP0

でぃさんの話では、ここから一番近い宿泊施設はるん雲のようで、ここにいる研究者の方々の宿は全員そこらしいです。
この時期はそう客も多くないので、ブーン景気だとちょっとほくほく顔でした。

(#゚;;-゚) 「お客さんの大半はここにいるからね。旅館の方は従業員に任せて、私らはここで営業かな」

(゚ー゚トソン 「しっかりしてますね」

しっかりしていると言えば、ヘリカル先輩もいつの間にか研究者方々の輪の仲に溶け込んでいました。
コネを作るとか何とか仰ってましたが、もちろん、それがメインの目的ではなく、ブーンのお見送りに来てくれた事はわかってますけどね。
ダイオード先輩も民俗学、というよりは伝承や不思議な生物の話には詳しいようですので、同じく色々話し込んでおられるようです。

(〃^ω^) 「このお寿司、すごいいろいろ入ってるおー!」

(`・ω・´)b 「そりゃあ僕が腕によりをかけて作ったからね、スペシャルな出来さ」

川ー川 「ブーンちゃん、こっちのおにぎりも美味しいよ」

ミセ*゚ー゚)リ 「おお、貞ちゃんが対抗意識を」

(〃^ω^) 「貞子のご飯はいつもおいしいお!」

ξ゚听)ξ 「あんたは作らなかったの?」

(゚、゚トソン 「私は朝担当です」


483 : ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 00:30:30.32 ID:BZ6nTDMP0

本音を言えば、お昼ご飯も私が作りたくもあったのですが、ブーンは私の家族であり、同時に皆の家族でもありますからね。
私だけが独り占めするわけにもいきませんから。
今、この場を見ても、これだけの人がブーンのために集まってくれています。

ブーンは皆に愛され、皆を幸せにしてくれましたから。

(〃^ω^)つ▽ 「お!」

(゚、゚トソン 「ブーン?」

(〃^ω^) 「トソンもお寿司とおにぎり食べるお! 全部おいしいお!」

(゚ー゚トソン 「ありがとう。……あ、手巻きがカニカマではなく本物の蟹……」

ノハ*゚听) 「美味いぞぉぉぉぉ!」

ζ(´д`;ζ 「ヒートちゃん、ご飯粒飛んでるー」

ξ゚听)ξ 「全く……」

私達は、いつも通りの賑やかなご飯を終え、残された時間をブーンと楽しく過ごしました。

・・・・
・・・


489 : ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 00:32:33.98 ID:BZ6nTDMP0

(#゚;;-゚) 「もうすぐ日没やね……」

( ^ω^)(寿・ω・`) 「お……」

(゚、゚トソン 「はい……」

青い空が茜色に染まり行き、もう程なくして雲が発生する時間のようです。
その兆候なのか、両脇の崖に不自然なほど低い位置に雲が集まってきています。

ハハ ロ -ロ)ハ 「さて、そろそろブーンには位置に付いて欲しいんだが……」

(゚、゚トソン 「ええ……ブーン?」

( ^ω^) 「お!」

ζ(゚ー゚*ζ 「気を付けてね、ブーンちゃん」

川ー川 「帰ってきたらいっぱいご飯作ってあげるからね」

ミセ*゚ー゚)リb 「土産話、いっぱい聞かせろよ」


500 : ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 00:34:00.78 ID:BZ6nTDMP0

ξ゚听)ξ 「飲み水には気を付けなさいよ」

ノハ*゚听) 「またいっしょに修行するぞぉぉぉぉ!」

*(‘‘)* 「帰って来たら祭りの太鼓叩かせてやるですからね」

/ ゚、。 /  「今度……いっしょに……探検……行こう……」

(`・ω・´) 「旅先で可愛い女の子と仲良くなったら紹介してね」

(#^;;-^) 「またバーベキューしような。……シャキンはちょっとこっちいらっしゃい」

(*゚ー゚) 「無理しちゃダメだよ、がんばってね」

(*゚∀゚) 「またいっしょに遊ぶんだから、ちゃんと帰って来いよ」

( ФωФ) 「お前の旅路に幸あらん事を」

ハハ*ロ -ロ)ハ 「私はもう1回ぐらい現地で会う予定だけど、帰って来たらいっしょにおじいちゃんのお墓参りして欲しい」

(〃^ω^)ノ 「お! わかったお! みんな、ありがとうだお!」


509 : ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 00:35:56.47 ID:BZ6nTDMP0

私はブーンに旅行用の小さなリュックを背負わせ、いつものようにブーンと手を繋いで岬の先端へ歩いていきました。
雲に囲まれたその場所から見た沈む夕日はとっても幻想的で、生涯忘れられない光景でした。

(〃^ω^) 「おー……きれいだおねー」

(゚ー゚*トソン 「ええ、私も今、同じ事を思ってました」

私は、ブーンの手を繋いだまま、空を眺めていました。
この手を放したら、私はここでブーンとしばらくお別れです。
しばらくが、どのくらいの間かは予想できません。全て順調に行っても、1年は会えません。

ひょっとしたら2年かもしれません。3年かもしれません。そして、最悪の場合は……

(〃^ω^) 「こうやってトソンといっしょに見るお空は大好きだお」

(゚ー゚*トソン 「またいっしょに、お空を見ましょうね」

それでも、私はこの手を放します。
きっと再び、この手に温もりが帰ってくる事を信じて。

(〃^ω^) 「またいっしょに、おさんぽするお」

(゚ー゚*トソン 「またいっしょに、コーヒーを飲みましょう」


516 : ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 00:37:34.92 ID:BZ6nTDMP0

私は、ブーンを抱きしめます。
私は、ブーンの頭を撫でます。

私は、ブーンから離れます。

私達は離れます。

いっしょではいられなくなります。

でも──


(〃^ω^)「「またいっしょに、暮らすお(しましょう)」」(^ー^*トソン


でも、いっしょです。


離れていても、私達の心は繋がっています。

私達は、いっしょなのです。



524 : ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 00:39:04.78 ID:BZ6nTDMP0

ハハ;ロ -ロ)ハ 「来る!」

一際強い風が吹き付け、辺りを漂っていた雲が一ヶ所に集まってきます。
ブーンを包むように、周りを取り囲み、一面が雲の絨毯に覆われたように見えました。

そして再び、強い風が吹き、視界が真っ白に染まりました。


(〃^ω^) 「いってきますお!!!」

(゚、゚*トソン 「いってらっしゃい!!!」


次の瞬間、視界は綺麗に澄み渡り、目の前には海と空しかありませんでした。


ブーンは空へ……、夢の空へ旅立って行きました。


(゚、゚トソン 「ブーン……」



534 : ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 00:41:05.34 ID:BZ6nTDMP0

ミセ*゚−゚)リ 「……」

(゚、゚トソン 「……」
    スッ…
ミセ*゚ー゚)リつ 「……よく我慢したね」

(゚、゚トソン 

(; 、;トソン 「──」

ミセ*゚ー゚)リ(; 、;トソンζ(;ー;*ζ川つ-;川

いってらっしゃい、ブーン。
私はずっとあなたを待っています。
あの部屋でずっと、今度は私があなたを待っていますからね。

だから、あなたは夢を叶えてください。

──そして笑顔で、また会いましょう。


 − 第二十六章 ブーンと私とでも、いっしょ おしまい −


   − 夢は明日へ──きっと…… −   


558 : ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 00:48:05.76 ID:BZ6nTDMP0

 − 終章 −





あなたの夢が叶いますように───



────私の願いが届きますように







569 : ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 00:49:27.94 ID:BZ6nTDMP0

私がブーンを旅立たせた事は、意外とも受け取られ、有り得るとも受け取られ、人によって様々でした。


私自身は最初からブーンの夢がどんなものであれ、思い出したら全力で叶えてあげるつもりでしたから意外でも何でもないんですけどね。
まあ、私がブーンにべったりだったのは認めますが。
でも、決してお互い過度に依存していたわけで無く、そうするのが自然だったからそうしていただけでした。

('、`*川 「でも、偉いと思うよ」

('、`*川 「私は、それが出来なかったからね……」

('、`*川 「トソンちゃんは強い子だと思う」

('、`*川 「だけど、多分強さだけなら私の方が強かった」

('、`*川 「トソンちゃんはさ、自分が弱いって事も知ってたんだと思うよ」

('、`*川 「だから、色んな人に頼り、頼られ、大切な仲間を手に入れた」

('、`*川 「それは一生物の財産だよ。その中に私も入れてもらえて光栄だけどね」

('、`*川 「……まあ、今度は私ががんばる番かな」


578 : ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 00:51:29.05 ID:BZ6nTDMP0

はぁーっと1つ、大きく息を吐きました。暦の上では春ですが、まだまだ冬の空気です。


晴れの日、曇りの日、雨の日、雪の日、暑い日、寒い日、色々な日。
高校までの私は、そんな日々の変化を全くと言っていいほど気にかけていませんでした。
せいぜいその日に合わせた服を着る程度でした。

(´・ω・`) 「その日の湿度によって、饅頭の生地の捏ね具合等変える必要はあるからね」

(´・ω・`) 「全く同じ1日なんてないのさ」

(´・ω・`) 「その日その日で全力を尽くす」

(´・ω・`) 「毎日が違う1日だよ」

(´・ω・`) 「それに気付いたら、きっと世界は楽しさに溢れる」

(´・ω・`) 「あの子は毎日楽しそうだったよね」

(*´・ω・`) 「さて、出迎え用のスーパーでスペシャルなショボン饅頭の試作に取り掛かるかな」

(´・ω・`)b 「試食、頼まれてくれるかい?」


584 : ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 00:53:18.79 ID:BZ6nTDMP0

あれから1年が過ぎました。


桜の花と共に現れた真っ白な夢見のブーン。
風の様には現れてはいませんが、風の様に去っていきました。
いえ、去っていったわけではないんですけどね。ちょっとお出かけに行っただけです。

('A`) 「いいよなー。俺も夢を思い出してえ」

('A`) 「俺の夢も旅だったはずなんだよ」

('A`) 「憧れるよな、漢の浪漫だ」

(:'A`) 「いや、いい年して夢ばっかり追ってとかそういうんじゃ……」

(;'A`) 「うん、現実は見てるよ、ホントに」

('A`) 「まあ、思い出したらまずは文句言いに行かなきゃならんけどな」

('A`) 「ああ、きっと思い出すさ。絶対思い出してやる」

(;'A`) 「うん、でも、ショック療法とかいらないからね……」


589 : ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 00:54:52.21 ID:BZ6nTDMP0

なんだか全てが夢の様で、朝、目を覚ますと、高校生の自分がそこにいたりしないかと不安に思う事もありました。


夢を見せる存在、夢を見る存在。
言葉自体はドクオさんとペニサスさんが考えたらしいのですが、正確には、何かの御伽話からの引用らしいです。
今度その御伽話を探してみようかと思っています。ハローさんに話したらすぐに食いつきそうですが。

ハハ ロ -ロ)ハ 「ほらほら、目撃情報来てるよ」

ハハ*ロ -ロ)ハ 「概ね順調のようだね。人間もまだまだ捨てたもんじゃない」

ハハ ロ -ロ)ハ 「ん、何かしょんぼりしてた情報があるな。ああ……、ベジタリアンな文化圏か」

ハハ ロ -ロ)ハ 「なあ、トソンも先生目指すの止めて、民俗学の方に来ないか?」

ハハ ロ -ロ)ハ 「君は中々着眼点がいい。教鞭なら大学でも取れるぞ?」

ハハ ロ -ロ)ハ 「ん? 夢見の起源? ……それは興味深いな」

ハハ ロ -ロ)ハ 「よし、ドクオだな? アイツを絞れば何か出てくるかもな……」

ハハ*ロ -ロ)ハ 「OK、OK、ペニサスからお供え物を提供してもらえばいいんだな?」


595 : ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 00:56:25.05 ID:BZ6nTDMP0

たった1つの小さな出会いが、私の今を大きく変えました。


それはほんの偶然で、その時には何の意味も持たなかったはずの出会い。
重ねた日々がいつの間にかそれを自然なものとして、そこにいるのが当たり前になりました。
それを安っぽく、運命的な出会いとでも称してみましょうか。

dζ(゚ー゚*ζ 「私とツンちゃんの出会いは運命的なものだったんだよ」

ζ(゚ー゚*ζ 「私とトソンちゃんの出会いもね」

ζ(´ー`*ζ 「どっちも道に迷ってたのを助けてくれたからさー」

ζ(゚ー゚*ζ 「私は、皆に出会えて良かったよ」

ζ(^ー^*ζ 「運命に感謝だね」

ζ(゚ー゚*ζ 「トソンちゃんと、ブーンちゃんの出会いも運命でいいんじゃない?」

dζ(´ー`*ζ 「その方が何かカッコいいし」

ζ(^ー^*ζ 「あはははは」


599 : ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 00:57:56.19 ID:BZ6nTDMP0

Wonderland for which I looked has been in the side


ツンちゃんが言う様に、側にある今が一番不思議な世界だという事です。
不思議な偶然、不思議な出会い、でもそれは、楽しい毎日に繋がりました。
今はブーンがいないという不思議な時間を過ごしています。私にとっては不自然とも言いますが、ただ、それだけです。

ξ゚听)ξ 「デレの生態の方がよっぽど不思議だわ」

ξ--)ξ 「ほっときゃ何時間寝るつもりなのよ」

ξ--)ξ 「何でご飯が黒くなるんだか……」

ξ゚听)ξ 「まあ、それも慣れりゃ何とかなるもんね」

ξ゚听)ξ 「ん、ブーン?」

ξ゚听)ξ 「別に心配はしてないわよ」

ξ゚ー゚)ξ 「アイツは打たれ強いからね」

ξ;゚听)ξ 「毎日は殴ってなかったわよ…………たぶん」


603 : ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 00:59:24.90 ID:BZ6nTDMP0

信頼関係とか、そういう固い話じゃなくて、何でしょうね?


やっぱり自然とか、当たり前とか、そんな言葉でしか言い表せません。
私がいて、隣にブーンがいる。これが私にとって自然で、皆にとっても当たり前の見慣れた光景のようです。
ブーンがいないと私の毒が緩和されないとか何とか、そんな言葉が聞こえてこなくもなかったですが……。

川д川 「今頃どの辺りかなー?」

ノパ听) 「貞子、それさっきも聞いたぞー? パソコン見ればわかるぞー」

川д川 「ブーンちゃんは何が一番喜ぶかなー?」

ノパ听) 「私は好き嫌いないし、ブーンはハンバーグが一番好きなのは知ってるだろー?」

川;д川 「ああ、でも、やっぱりトソンちゃんのご飯の方が嬉しいよねー」

ノハ*゚听) 「私は貞子のご飯が一番だぞぉぉぉぉ! ブーンも大好きだと言ってたぞぉぉぉぉ!」

川*ー川 「ありがとう、ヒートちゃん。よし、今日はジャンボハンバーグ作ってみようか」

ノハ*゚听) 「いっぱい食べるぞぉぉぉぉ!」


612 : ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 01:01:12.08 ID:BZ6nTDMP0

じっと待っているだけというのも、ちょっとつらいものもありますけどね。


私は私で、自分の夢を叶えなければなりません。
方々に無茶を言いましたし、助けてくれる人も、応援してくれる人もいます。
そして何より、ブーンが帰ってきた時に、私は自分の夢に向かっていると胸を張って伝えたいですからね。

( ><) 「出番ないんです」

( <●><●>) 「ビロードに必要なのは空気を読む術だというのはわかってます」

( ><) 「ちゃんと読めるんです。先生やワカッテマス君に頼ってばかりじゃなく、自分で勉強してるんです!」

┐( <●><●>)┌ 「そのセリフは、忘れ物を私に届けさせるのを止めてから言って欲しい物ですね」

(;><) 「た、たまには忘れ物ぐらいするんです。プギャー君よりはマシなんです」

( <>><<>) 「何故私が彼の家まで経由する必要があるのかワカンナインデス!」

(*><) 「プギャー君もワカッテマス君とお友達になったからなんです。お友達は助け合うものなんです! あと、キモイんです!」

( <●><●>) 「やれやれ……。こんなビロードですが、これからも見捨てられず、何卒よろしくお願いしますね」


617 : ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 01:02:58.43 ID:BZ6nTDMP0

てっきり、私が途中で追いかけて行くんじゃないかと予想していた方々もいらしたようで……。


そうしたい衝動に駆られた事は、幾度となくありました。
でも、私は、ここで自分の夢に向かうと決めたのです。
ここで待っていると、約束をしたのです。

*(‘‘)* 「戻って来たら色々連れ回してやるですよ」

/ ゚、。 /  「キャンプ……登山……海水浴……」

*(‘‘)* 「まあ、ついでにお前らも連れて行ってやらん事もないですよ」

/ ゚、。 /  「動物園……植物園……水族館……」

*(‘‘)* 「だがしかし、ミセリは置いて行くですよ。助手席は私が座ります」

/ ゚、。 /  「大丈夫……車……大きくした……」

*(;‘‘)* 「いつの間にそんな事したですか? そういや最近、バイトの付き合い良かったですよね……」

/*゚、。 /  「やれば……出来る子……」


624 : ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 01:05:20.94 ID:BZ6nTDMP0

まあ、実際に計画まで立てていたバカもいましたけどね。


もちろん未然に潰しましたが、その行動力は少し羨ましいかもしれません。
後先考えてないバカですが、自分のやりたい事をやりたいようにやれる人間はそういないでしょうしね。
バカですが。でも、親友です。バカですけど。

ミセ*゚д゚)リ 「こういう時ぐらい、親が金持ちって設定活かすべきじゃね?」

ミセ*゚ー゚)リ 「わかってるって、ブーンちゃんは私らが思ってる以上に強い子だもんね」

ミセ*-ー-)リ 「そしてやさしい子。自分の事を疎かにしてまで会いに行っても、困らせちゃうだけだね」

ミセ*゚ー゚)リ 「そりゃわかるさ。だって、私の家族でもあるんでしょ? ね、お母さん?」

ミセメ゚д゚)リ 「お前の、殴りますよ、は未然形であったためしがねーな……」

ミセ*゚∀゚)リ 「つーか冬でもその頭なのな。寒くない? 失恋したわけでもあるまいし。まあ、それ以前に恋愛自体が──」

ミセメメдメ)リ 「うん、悪かった。悪かったから獲物は仕舞って欲しい。割と切実に」

ミセ*゚ー゚)リb 「ま、お互いにね。のんびり行きましょうや」


627 : ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 01:07:08.98 ID:BZ6nTDMP0

すっかり馴染んだ短髪をかき上げ、肌寒い風で頭を冷やします。


いつもの帰り道、1人であったり2人であったり大勢であったり、色んな人と歩いた道。
1年が経っても、自然に視線を下に向けるくせは治りませんでした。
自由な両手を大きく振り上げてみても、空に手は届きません。

(゚、゚トソ 「この1年、色々な事がありました」

(-、-トソ 「あなたがいなくても、時間は流れ、色々な事が起こるものですね」

(゚ー゚トソ 「当たり前の事なんですが、やっぱり私にはどこか不自然に感じられているのかもしれません」

(゚、゚トソ 「1人の部屋にもまだ慣れませんが、いつも誰かしらが部屋にいるのは、やっぱり気を使ってもらってるのでしょうかね」

(゚、゚トソ 「ねえ、ブーン、私はちゃんと自分の夢に向かっています」

(゚ー゚トソ 「私は胸を張って、あなたに会えると思います」

(゚、゚トソ 「だから、ブーン──あなたも夢を叶えて──」

(-、-トソ 「早く私の所へ帰って来てください……」


632 : ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 01:08:39.04 ID:BZ6nTDMP0

(゚、゚トソ 「ただいま……」

扉を開け、部屋に入っても、ただ自分の声が響くだけです。
この瞬間が一番寂しさが膨れ上がる気がします。

ブーンがいた時でも、遊びに行って返事が来ない日は多々ありました。
でも、必ず1日1回、ただいまとおかえりの言葉は聞けていましたから。

(-、-トソ 「いけない、いけない……。今回は私が待つんですからね……」

私が聞きたいのは、おかえりの言葉ではありません。
私が聞きたいのは、ただいまの言葉です。

私は、お湯を沸かし、コーヒーを淹れ、お気に入りのCDをかけ、文庫本を開きます。
1つだけ、でも、最も大切な物が欠けた私の大好きな時間の過ごし方。

私はここでブーンを待っています。
私達はいっぱい約束をしました。
私は、ここでブーンを待つと約束をしましたから。

欠けた物を埋めるべく、あの扉が開かれるのを信じて──


──カチッ



639 : ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 01:11:15.85 ID:BZ6nTDMP0

(゚、゚トソ 「え……」


ガチャッ バタン トテトテトテ


( ^ω^) 「お……」



( ^ω^)                     (゚、゚トソ




(〃^ω^)「ただいまだお」「おかえりなさい」(^ー^トソ







 − (〃^ω^)(゚ー゚トソでも、いっしょのようです おしまい −


   − 2人の夢は明日へとつづきます −   


757 :??? ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 13:33:24.93 ID:vkOPaGhYO
 
<庶凡屋>
 
(´・ω・`) 「旅はいい」
 
(´・ω・`) 「旅先で普段と違う何かと接する事によって、視野が広がり、考え方にも幅が出来る」
 
(´・ω・`) 「自分探しの旅は、若者の永遠のテーマだよね」
 
(´・ω・`) 「自分を見つめ直し、ありのままの自分を受け入れることが出来れば、もっともっと、成長できるはずだよ」
 
(´・ω・`) 「かく言う僕もね、若い頃に旅をしてね……。そこで得た経験から等身大の自分を表すヒントを得た」
 
( ^ω^) 「おー」
 
(゚、゚;トソ 「……」
 
(´・ω・`) 「おかえり、ブーン君。君は今回の旅でどんなことを学んだのかな?」
 
(〃^ω^)ノ 「ただいまだお、ショボン」
 
(´・ω・`) 「フフ……、少したくましくなったように見えるよ。良い旅だったみたいだね」
 

759 :??? ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 13:35:08.59 ID:vkOPaGhYO
 
(´・ω・`) 「さて、積る話はあるだろうけど、今はただ、君の帰還を祝して、僕からの祝いの品を贈ろう」
 
(〃^ω^) 「お!」
 
 
    (´・ω・`)
   ⊂  祝 )つ
    | | |
    (__)_)
 
 
(´・ω・`) 「実物大ショボン饅頭祝賀バージョンだ。受け取って欲しい」
 
ヾ(〃^ω^)ノシ 「おー! でっかいお!」
 
(゚、゚;トソ 「……等身大」
 
(´・ω・`) 「うん、これが僕の若き日の旅の答えだよ」
 
(゚、゚トソ 「……色々と間違っている気もしますが」
 

761 :実物大ショボン饅頭 ◆xJGXGruetE :2009/02/08(日) 13:37:07.59 ID:vkOPaGhYO
 
(´-ω-`) 「ハハ、答えは人それぞれさ。これは僕の答えであって、模範解答ではない」
 
(´・ω・`)b 「ブーン君はブーン君で、自分の答えをきっと見つけているはずさ」
 
(〃^ω^) 「お! お空を飛んでいろんな物見て楽しかったお」
 
(´・ω・`) 「それは良かった。それが今後の君の糧にならんことを願って、これを収めて欲しい」
 
(〃^ω^) 「いただきますお!」
 
(´・ω・`) 「うん、ショボン饅頭も君の血肉となれれば本望だよ」
 
(´-ω-`) 「君の未来に幸あらんことを」
 
(゚、゚;トソ イイハナシカナー?
 
 
 − 実物大ショボン饅頭 おしまい −
 

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