- 4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 22:52:13.81 ID:JF7hL9GlO
-
アタシには妹がいる。
本人は姉だと言い張るけど、頼りなさ過ぎてどうがんばっても姉とは言えない、と言うか言いたくない。
マイペースでのんびり屋。
いつもニコニコしてるけど、気付けば寝てたりのぐうたら娘。
きっとコイツの脳内は何か湧いてる。
湧いて溢れ出てる。
ξ゚听)ξ 「デレ、朝よ。起きなさい。もうすぐトソンが来るわよ」
ζ(´q`*ζ 「ムニャムニャ……あと30分……」
ナガイワーッ! バキッ! アフン!?
ξ#゚听)ξつ#)´д`*ζ
− ξ゚听)ξζ(゚ー゚*ζいっしょのようです −
- 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 22:54:49.52 ID:JF7hL9GlO
-
(゚、゚トソ 「おはようございます」
ξ゚听)ξ 「おはよう、トソン、いつも悪いわね」
(゚、゚トソ 「まあ、毎度の事ですし、ついでですからね」
(゚、゚トソ 「とは言うものの、もう大学2年ですから、そろそろ道ぐらい覚えて欲しい所ですが」
ξ゚听)ξ 「生粋の方向音痴よね」
ζ(゚ー゚*ζ 「おっはよー、トソンちゃん」
(゚、゚トソ 「おはようございます、デレ」
ξ゚听)ξ 「ちゃんと顔洗った? お財布持った? 教科書は?」
ζ(´ー`*ζ 「洗ってなーい、持ったー、持ったー」
ξ゚听)ξ 「洗いなさいよ、まだ肌寒いからって不精しないで」
ζ(゚ー゚*ζ 「アハハ、後で舐めとくよ」
ξ;゚听)ξ 「あんたは猫か! ってか、舌届かないでしょうが」
- 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 22:56:39.22 ID:JF7hL9GlO
-
ζ(´ー`*ζ 「その時はトソンちゃんと舐めっこするー」
(゚、゚トソ 「気持ち悪い」
ζ(´д`;ζ 「真顔でヒドい!?」
(゚、゚トソ 「さあ、バカ言ってないで行きますよ? 大学に遅れます」
ζ(゚ー゚*ζ 「はーい。じゃあ、ツンちゃん、いってきまーす」
ξ゚听)ξ 「いってらっしゃい。車には気を付けなさいよ?」
ζ(^ー^*ζ 「うん。また後でねー」
・・・・
・・・
デレを大学に送り出すという、騒がしい朝の儀式が終わると、部屋は途端に静かになる。
アタシしかいないこの部屋は少々広過ぎて、そして味気ない。
ξ゚听)ξ 「食器でも片付けるか……」
- 14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 22:59:25.36 ID:JF7hL9GlO
-
簡単なトーストやサラダの朝食なら、アタシでも作る事は出来る。
世話になってる恩返しとか、そんなんじゃない。
アタシが食べたいから作ってるだけだ。
ξ--)ξ 「デレに期待しても、食いっ逸れるだけだからね……」
ドレッシングの油もあるから、お湯でお皿を洗う。
春と初夏の間のこの季節、まだ水は冷たいけど、暑さ寒さには強い方だから、汚れが落ちるのなら水でも構わない。
ξ゚听)ξ 「昔は転々とした物よね……」
アタシは、詩的な言い方をすれば旅人だった。
各地を転々とし、さ迷い歩いた。
Wandering the Wonderland
旅はつまらないわけではなかった。
初めて見る世界は、とても綺麗で、色鮮やかに見えた。
ξ゚听)ξ 「見えた……のよね、初めは」
- 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 23:01:12.51 ID:JF7hL9GlO
-
アタシは、どこで生まれたか覚えていない。
昔も誰かと過ごしていたのかもしれない。
でも、それも覚えていない。
トソン達の話を聞く限りでは、アタシはあまり酷い扱いは受けていないのかもしれない。
酷い……と言っては失礼か。
少なくとも、ブーンやドクオがそうなったのは、相手を思っての事だったのだから。
アタシは、夢を覚えている。
ブーンの夢やヒートの夢と比べると、すごくちっぽけな物だけど、アタシにとっては大切な夢だ。
ξ゚听)ξ 「旅の間も、ずっと忘れずに済んだのは幸せな事だったんでしょうね」
食器洗いが終わった。
今日は先日の晩ご飯、珍しくデレが作った、の残りがあるからお昼ご飯の心配はいらない。
いや、見た目はアレなんで、多少心配はあるのだが、まあ、食べられはするし意外といける。
ξ--)ξ 「あんまりトソンに迷惑掛けるわけにもいかないしね」
今、トソンは1人分の食事しか作っていない。
予め2人分作ったりするのであれば、ついでという事でご相伴に預かるのも悪くないと思いはするが。
- 18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 23:04:30.64 ID:JF7hL9GlO
-
でも、ブーンはいない。
自分の夢を叶えに、1人、旅に出て行った。
ξ゚听)ξ 「何でかなぁ……」
旅慣れしたアタシから言わせてもらえば、旅はそんなに甘い物ではない。
特にアタシ達のような、人間から見れば不思議な生き物と呼ばれる範疇のものは。
この社会のルールが適用されないのだから。
アタシみたいに世慣れていれば、それを逆手にとって色々と潜り抜けられるとは思うけど、ブーンはどうだろう。
無邪気で純粋の塊が、世知辛い世間の波を1人で渡っていけるのだろうか?
アタシは、厳しいと思った。
そしてトソンも、同じ考えだと思ってた。
でも……
ξ゚听)ξ 「何でトソンは、アイツを旅に出したんだろうな……」
アタシにはそれがわからなかった。
・・・・
・・・
- 20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 23:07:30.04 ID:JF7hL9GlO
-
ξ゚听)ξ 「ごちそうさまでした」
甘かった。
何故だろう、昨夜食べた時はそうでもなかったはずなのに。
まさか日を跨ぐと甘さが増す仕掛けでもしてあったんだろうか。
ξ゚听)ξ 「まあ、食べられるぐらいではあったけどね」
ざっと食器を洗い、お茶を淹れる。
午後からの予定は特にない。
少し前までなら、お昼をトソンの家でブーンと食べて、ブーンに勉強を教えたり、テレビを見たりしていた。
その内ブーンが外に遊びに行く事を強烈に主張しだして、アタシが渋々従うというのが日課だったのに。
でも、今はブーンがいない。
トソンは、ご飯作っておくから、お昼をトソンの家で食べないかと誘ってくれたりもする。
アタシはそれを断っている。
先に上げた理由が1つ。
デレが作れば済む事なので、デレを甘やかさない為というのが1つ。
アタシだけの為にお昼を作ると、トソンがブーンの事を思い出して辛いんじゃないかというのが1つ。
- 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 23:09:10.74 ID:JF7hL9GlO
-
そしてアタシが、1人あの部屋でお昼を食べるのが……
ξ--)ξ 「……なんてね。それはナイナイ」
・・・・
・・・
∧ ∧
( ・∀・) モニャラー
∧∧
( ∵) ……
.∧∧
(=゚ω゚)ノ ニャーョウ
.∧∧
(,,゚Д゚) ナーゴルァ
ξ゚ー゚)ξ 「今日は全員揃ってるのね」
相変わらず1匹だけ少し離れた所にいるが、いい加減慣れたのか、ケンカもせず仲良く暮らしているようだ。
- 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 23:12:03.36 ID:JF7hL9GlO
-
ξ゚听)ξ 「ほら、ご飯よ、食べなさい」
(*・∀・) モニャラー
(*∵) ……
(*゚ω゚)ノ ニャーョウ
(,,゚Д゚) ナーゴルァ
昨日の晩ご飯の時に出た魚の骨を、猫達の前におく。
皆喜んで一斉に食べている。
猫に餌付けをすると嫌がる住民もいるらしいが、ここの管理人の許可は取っている。
トソンが猫好きで、ペニサスもまた猫好きのようだ。
ξ゚听)ξ 「……何で猫好きがドクオなんかと」
大きな謎だ。
まあ、猫云々以前に、アレと同居出来る人間がいたこと自体が奇跡だと思う。
(*・∀・) モニャラー
ξ゚ー゚)ξ 「もう食べ終えたの? 残念ながら今日はそれでおしまいよ」
- 25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 23:14:03.80 ID:JF7hL9GlO
-
午後からあの公園に向かう事は格段に減った。
こうやって、猫の相手をする事が多くなった。
公園に行ってもブーンはいない。
ヒートはよく公園に行っているみたいだ。
1人修行という名目で力いっぱい遊んでいる。
あれはあれなりに割り切った結果らしい。
ブーンが帰ってきたら、まずかけっこの勝負をするらしいから、それに負けない為に修行しているのだとか。
ξ--)ξ 「世界最強はどこいったのよ……」
アタシもたまには公園に行く。
あの馬鹿に、修行を付けてやる為に。
最近は中々強くなってきた。
まだアタシの足元には及ばないけれど、打たれ強さは中々の物だ。
(,,゚Д゚) ナーゴルァ
ξ゚ー゚)ξ 「あんたはいつも礼儀正しいわね……」
- 26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 23:16:26.38 ID:JF7hL9GlO
-
公園にはアタシやヒート以外も遊びに来る。
ワカッテマスやビロード、それにミセリ。
小さいガキ2人は体力ないから、ヒートの相手は正直辛いけれど、それでも本人達が楽しそうだから良いのだろう。
そして大きななガキ、ミセリはまあ、相変わらずだ。
なんだかんだであれは大人だ。
ブーンがいなくなった事の意味を、一番よくわかっているのかもしれない。
自分がするべき事、取るべき顔を、よく理解している。
少なくともトソンは、ミセリがいて助かっているのだろう。
トソン自身がそれを気付いているのかわからないけれど。
ξ--)ξ 「もっとも、気付いていても絶対知らないフリをしてるでしょうけどね」
不器用な人間だ。
多分、アタシに一番似ている。
同じ人間に苦労させられているからかもしれないが。
チッチッチ
壁|ω・`)つ(新・ω・`)
( ・∀・) モニャラ?
- 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 23:19:21.91 ID:JF7hL9GlO
-
ξ゚听)ξ 「……」
チッチッチ
壁|ω・`)つ(新・ω・`)
(・∀・ ) モニャラー
ξ;゚听)ξ 「何をしてるんですか、ショボンさん?」
サッ!
壁|・`)彡 「!」
ξ;゚听)ξ 「いや、バレバレですから」
(;´・ω・`) 「あ、あははは……。い、いやね、ちょっと新製品をね……」
ξ;゚听)ξ 「猫に試食させて意味あるんですか?」
(新・ω・`)(・∀・ ) モニャラー
(新・ω・`)(・∀・ )
- 29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 23:21:28.33 ID:JF7hL9GlO
-
(新・ω・`)( ・∀・)プイッ!
(;´・ω・`)そ ガーンッ!
ξ;゚听)ξ 「まあ、猫ですからねえ……お饅頭は」
時々やってきては妙な行動を取るショボンさん。
妙なのが普通の様な気もするけども。
(´・ω・`) 「うん、まあ、喜んで試食してくれる人が減っちゃったからね……」
ブーンはショボン饅頭が大好きだった。
味は確かにアタシも認めるけど、見かけがアレなんで、他に喜んで試食するのはヒートとミセリぐらいだ。
ただ、ヒートもミセリも、あんまり味覚が豊かではなく、好き嫌い無しの悪食だ。
あまり当てにならない。
ヒートに至っては一瞬で食べてしまうし。
まあ、ブーンもあんまり味覚が鋭かったわけでもないんだけど、ブーンのそばにはトソンがいて、何かしら解説を入れてくれた。
ξ゚听)ξ 「だからと言って猫はないでしょう?」
(;´・ω・`) 「アハハ……やっぱりそうだよね」
- 31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 23:24:06.85 ID:JF7hL9GlO
- スッ
ξ--)ξつ 「全く……」
(´・ω・`) 「え?」
ξ゚听)ξ 「出来れば2つもらえます? 後で感想は伝えますから」
(*´・ω・`) 「ホントかい!? 助かるよ! 2つといわず3つでも、4つでも!」
ξ;゚听)ξ 「トソンの分まで入れて3つで十分です」
ショボンさんは満面の笑顔で、新製品のショボン饅頭をアタシに手渡した。
心なしか、饅頭も微笑んで見えたけど、それはきっと錯覚だ。
ショボンさんはちょっと休憩してから店に戻ると言う。
そっちが本命だったのでは、などと言うのは野暮だろう。
ξ;゚听)ξ 「……何味か聞くの忘れた。……緑ね」
抹茶とかであって欲しいが、それは多分無いだろう。
・・・・
・・・
- 33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 23:27:18.51 ID:JF7hL9GlO
-
ξ゚听)ξ 「ただいま」
返事は無い。
当然だ。
アタシは無人の部屋に帰ってきた。
結局公園には行かなかった。
いい天気だったけど、何か今一つ、気が乗らなかった。
綺麗に澄んだ青い空も、アタシの心の靄までは晴らしてくれない。
お空を見てるだけで楽しい、そんな風に言っていた、アイツはいないのだから。
ξ--)ξ 「はあ……」
アタシはクッションの上にどさりと横になった。
何もする事がない。
何もする気が起きない。
何故だろう……
ξ--)ξ 「何故だろう……」
- 36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 23:31:02.00 ID:JF7hL9GlO
心の中で問うた言葉を、口に出してみた。
間の抜けた問い掛けだ。
答えは言うまでもない。
ξ--)ξ 「ブーンがいないから……」
それはきっとアタシだけの答えではない。
ブーンに関わった皆が一様に思い抱いている答えだ。
トソンなんか時に見てられない。
アタシは、あんまりベタベタ触られるのは嫌いだけど、時々トソンの膝に乗ったりする。
代わりになるとは思っていないけど、それでもそうしてあげたい。
友達だから。
そんな時、トソンはすごく嬉しそうに、でもほんの少し寂しそうな目で優しく撫でてくれる。
すごく穏やかな手付きで、すごく暖かい気持ちになる。
ξ--)ξ 「ブーンはなんで、そんな手のひらをおいて行けたんだろう」
アタシにはわからない。
アタシに同じ事が出来るだろうか。
- 37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 23:34:06.91 ID:JF7hL9GlO
アタシ達にとって、夢は掛け替えの無い、大切なものだ。
そう考えれば、ブーンが旅に出て行った理由もわかる。
でも、ブーンは新しい夢も見付けていた。
トソンといっしょにいるという夢を。
わからない。
そんな危険を冒してまで、もう1つの夢を置いてまで叶えたいほどの夢だったのだろうか?
アタシには、ブーンにとっても新しい夢の方が大切に見えた。
ξ--)ξ 「トソンはなんで、背中を押せたのだろう」
アタシにはわからない。
・・・・
・・・
- 38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 23:36:07.92 ID:JF7hL9GlO
暗い。
真っ暗な世界。
ここはどこなのだろう。
どこか見覚えのある感覚。
依るべき所のない、頼りない思い。
ああ、そうだ。
これは1人旅していた時のアタシだ。
当てもなくさ迷っていたあの頃だ。
夢は有れど、それを伝える人がいなかったあの頃。
アタシは、自分がどこへ向かうのか、どこへ向かえばいいのか、何も──
「──It's been too long since we took the time♪」
……声が?
「No-one's to blame I know time flies so quickly♪」
いや……歌が……?
- 41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 23:39:25.52 ID:JF7hL9GlO
ζ(-、-*ζ 「It'll be just like starting over〜♪」
つξ゚听)ξ !?
ξ゚听)ξ 「あ……デレ?」
ζ(゚ー゚*ζ 「うん、デレだよー。ただいま、ツンちゃん」
ξ゚听)ξ 「おかえり……。アタシ……?」
ζ(゚ー゚*ζ 「帰ってきたら、何かお部屋真っ暗で、ツンちゃん寝てたから」
ξ゚听)ξ 「あ……。あれ、あんたの歌?」
ζ(゚ー゚*ζ 「そだよー」
ξ゚听)ξ 「ああ……そう……」
ζ(´ー`*ζ 「中々上手かったでしょ?」
ξ゚听)ξ 「……寝てたんで聞いてないわよ」
ζ(´д`;ζ 「そっか! それもそうだねー」
- 43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 23:41:03.94 ID:JF7hL9GlO
ξ--)ξ 「まあ、下手ではないわね。つーか、子守唄にしてはうるさい歌だわ」
ζ(゚ー゚;ζ 「そうかな? トソンちゃんとこで聴いて、気に入ったから覚えたんだけどなー」
ξ゚听)ξ 「何で電気点けてないのよ?」
ζ(゚ー゚*ζ 「点けるとツンちゃん起こしちゃうかと思って」
ξ--)ξ 「別に起こしても構わないでしょ……。と言うかそう思うんだったら、膝枕して歌ったりしなきゃいいのに」
dζ(゚ー゚*ζ 「それはツンちゃんが普段そういう事させてくれないからね、チャンスとばかりに……」
ξ゚听)ξ 「何それ? 別に嫌とか言ったり断ったりしてないでしょうが」
ζ(´ー`*ζ 「そういうオーラが出てるよー。てか、抱っことかあんまり好きじゃないよね」
ぼうっとした顔の割には時々鋭い。
いや、この場合は鋭くはないのか。私のウソに騙されてくれているのだから。
デレは私の頭をゆっくりと撫でながら話を続ける。
ζ(^ー^*ζ 「私はそういうの好きなんだけどねー」
ξ--)ξ 「だから別に……」
嫌いな人に触られるのは嫌だけど、好きな人なら別に構わない。
そんな言葉はいつも飲み込んでしまう。
- 44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 23:44:05.33 ID:JF7hL9GlO
ξ--)ξ 「ねえ、デレ……」
ζ(゚ー゚*ζ 「何?」
身体を起こし、デレの膝に座る。
この方がデレの顔は見ずに済む。
アタシの顔を見られずに済む。
ξ゚听)ξ 「何でブーンは行っちゃったの? 何でトソンは止めなかったの?」
アタシは、いつもならば飲み込んでしまう類の言葉を呟いてみた。
何故、今日に限ってそうしたのかわからない。
ただそうしたかったからとしか言えない。
ζ(゚ー゚*ζ 「え? 何でって、夢のためじゃないの?」
ξ゚听)ξ 「それはわかってるわよ。でも……」
ζ(゚ー゚*ζ 「でも?」
アタシはそこで言い淀む。
大した事のない疑問の様で、でも、言ってはいけない言葉の様なそれを。
アタシは──
- 46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 23:47:17.08 ID:JF7hL9GlO
ξ゚听)ξ 「大切な人と離れてまで、追う価値があった夢なの? アイツはもう1つ、夢を見つけたのに」
それを失くしてしまう危険性を、帰って来れないかもしれない──
……帰って……来れないの?
……もう……会えないの?
それは──
ξ;;)ξ 「イヤ……」
不意に溢れ出した涙を、アタシはこらえる事が出来なかった。
本当は気付いていた。ずっと前から。
私は──
ξ;;)ξ 「寂しい……」
ζ(゚ー゚*ζ 「帰ってくるよ」
アタシの頭に、そっと手が当てられた。
柔らかな手付きで、髪を梳く。
優しい手付きで、アタシを撫でる。
- 47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 23:50:24.45 ID:JF7hL9GlO
ζ(゚ー゚*ζ 「トソンちゃんが、ブーンちゃんを送り出したのは、きっと帰って来るって信じているから」
ξ;;)ξ 「……」
ζ(゚ー゚*ζ 「ブーンちゃんがお空を飛んでったのは、トソンちゃんが飛べるって言ってくれたから」
ξ;;)ξ 「……」
ζ(^ー^*ζ 「そしてそれを信じているから、だよ」
ξ;;)ξ 「……信じて……いるから?」
ζ(゚ー゚*ζ 「夢はきっと叶うって、2人とも信じているから。お空を飛んで世界を見る事も、2人でずっといっしょにいる事も」
ξ;;)ξ 「……」
ζ(^ー^*ζ 「絶対に叶う、叶えるって信じてるんだよ」
デレの手が、ゆっくりと私の耳を撫でる。
何度となく撫でられた、心地良い感触。
私が一番好きな人の手。
- 51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 23:53:52.29 ID:JF7hL9GlO
ξ--)ξ 「信じて……か。そんな単純な事なの?」
ζ(゚ー゚*ζ 「言葉にするのは簡単だよ。でも──」
ζ(-、-*ζ 「その気持ちを実際に持ち続けるのは、すごく大変な事だと思う」
大変な事、デレはそう言った。
そしてあの2人は、その大変な事を事も無げに持ち続けている。
だから、トソンは笑って送り出せた。
だから、ブーンは笑って旅に出た。
きっとまた会えると信じて。
必ず帰って来て、いっしょに暮らすという約束を果たす事を信じて。
あの2人の強い絆。
それはきっと、2人の自然な形。
デレの言葉と、アタシの考えが重なる。
アタシの想いをなぞる様に、デレの言葉が響く。
アタシはどうなのだろう?
- 52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 23:55:41.05 ID:JF7hL9GlO
アタシとデレは、どうなのだろう?
アタシはデレを信じられてる?
デレはアタシを信じてくれてる?
ζ(゚ー゚*ζ 「そしてそれは私もいっしょだよ」
ξ゚听)ξ 「え?」
ζ(^ー^*ζ 「ツンちゃんの夢は叶う、私の夢も叶うって信じてるんだ」
ξ゚听)ξ 「デレ……」
私の心を見透かした様に、デレは私の欲しい答えをくれた。
ううん、違う、見透かしたわけじゃない。
デレはきっと、いつもそう思ってくれているだけ。
心から、そう信じてくれているだけ。
アタシは……
ξ--)ξ 「あんたに夢ってあったっけ?」
ζ(´д`;ζ 「ありゃ、そう言えばまだ見付かってないね」
- 54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 23:58:01.81 ID:JF7hL9GlO
ξ゚听)ξ 「全く……あんたは相変わらず……」
ζ(゚ー゚*ζ 「でもね、1つはもう見付かってるんだよ」
ξ゚听)ξ 「そうなの? それは初耳ね」
ζ(^ー^*ζ 「トソンちゃんとブーンちゃん、そして、ツンちゃんといっしょの夢」
ξ゚听)ξ
ζ(^ー^*ζ 「ずっといつまでも、いっしょだよ」
そう言ってデレは満面の笑みを見せた。
暗い部屋だけど、私はデレの方を向いていないけど、きっとそこには、満面の笑みがあったはずだ。
ξ* )ξ 「……ちゃんと自分の夢も見つけなさいよ?」
ζ(゚、゚;ζ 「あれー? 今私、結構良い事言ったよね? そんな反応なの?」
- 56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 00:00:42.47 ID:y5eYTVWpO
わかってるわよ、バーカ。
恥かしげもなく言い切っちゃって。
こっちが恥かしいわよ、アンタ見てると。
アタシ?
聞くんじゃないわよ、バーカ。
聞かなきゃわかんないの? バーカ。
アタシはアンタが──
アタシもアンタと──
ξ* )ξ 「いっしょよ……ずっとね」
アタシの夢は、1つしかないんだから。
ζ(゚ー゚*ζ 「え? 何か言った?」
- 58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 00:02:35.09 ID:y5eYTVWpO
ξ゚听)ξ 「何でもないわよ。それより……」
ζ(゚ー゚*ζ 「それより?」
ξ゚听)ξ 「すっかり遅くなっちゃったわね。晩ご飯、どうする?」
ζ(´д`;ζ 「うーん、何にも準備してないなー」
アタシには妹がいる。
本人は姉だと言い張るけど、頼りなさ過ぎてどうがんばっても姉とは言えない、と言うか言いたくない。
マイペースでのんびり屋。
いつもニコニコしてるけど、気付けば寝てたりのぐうたら娘。
きっとコイツの脳内は何か湧いてる。
湧いて溢れ出てる。
きっと幸せが、脳内から溢れんばかりに沸いている。
溢れ出て、周りの皆を幸せにしてくれる。
そばにいるアタシを、幸せにしてくれる。
- 59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 00:05:38.65 ID:y5eYTVWpO
dζ(゚ー゚*ζ 「だから、トソンちゃん家に食べにいこう」
ξ゚听)ξ 「あんたは……ちょっとは気を……まあ、いいか。精々賑やかしに行ってあげますか」
ζ(´ー`*ζ 「よーし、そうと決まればレッツ、ごはーん!」
ξ--)ξ 「はいはい、ちゃんと戸締りしなさいよ」
ξ*゚听)ξつ⊂ζ(゚ー゚*ζ 「わかってーまーす、はい、ツンちゃんいっしょに行こうね」
アタシには妹がいる。
アタシには自分では姉だと言う妹がいる。
でも、それはどっちでもいい。
どっちにしても、アタシの家族なのだから。
大切な家族なのだから。
ミセ;゚ー゚)リ「「もう、食事は終わりましたが……」」(゚、゚;トソ
ζ(´д`;ζ 「ええー!?」
ξ--)ξ 「やれやれ……」
− ξ゚听)ξζ(゚ー゚*ζいっしょのようです おしまい −
- 69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 01:03:54.98 ID:y5eYTVWpO
− おまけ −
ξ゚听)ξ 「はい、どうぞ」
ミセ;゚ー゚)リ (新・ω・`)(新・ω・`)(新・ω・`) ζ(´ー`;ζ(゚、゚;トソ
(゚、゚;トソ 「えっと、ツンちゃん?」
ξ゚听)ξ 「試食よ、試食。毎度のことでしょ?」
ミセ;゚ー゚)リ 「まあ、そうだけどさ、今日のは何と言うか、また一段と……」
(゚、゚;トソ 「奇抜な色合いで」
ζ(´ー`;ζ 「緑だねー」
ミセ;゚ー゚)リ 「ツンちゃん、これ、何味?」
ξ^ー^)ξ 「聞いてないわ。食べてのお楽しみね」
(゚、゚;トソ 「まあ、確かに食べればわかる事ですが……」
- 70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 01:06:02.99 ID:y5eYTVWpO
(゚、゚トソ 「というわけで、ミセリ?」
ミセ;゚ー゚)リ 「いや、何でそんな当然の如く私が先陣切る流れになってんのさ?」
ζ(゚ー゚*ζ 「好き嫌いないし、毒見役には適任だからね」
(゚、゚;トソ 「製品化されたものはどれもちゃんとしてますが、試作段階では時に地雷がありますからね……」
ミセ;゚д゚)リ 「流石にそれは私も踏みたくないんだけど?」
(゚、゚トソ 「明日の晩ご飯はあなたのリクエストに答えましょう」
ミセ;゚ー゚)リ 「!」
ミセ;゚ー゚)リ 「……不肖ミセリ、いただきます」
ボソボソ
ζ(´ー`*ζ 「何味だと思う?」
ボソボソ
(゚、゚トソ 「メロン辺りでしょうか?」
ボソボソ
ξ゚听)ξ 「マリモとか?」
ボソボソ
ζ(´ー`*ζ 「私はきゅうりだと思うなー」
ミセ;゚д゚)リ 「黙れよ。食べづれーよ」
- 72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 01:09:38.00 ID:y5eYTVWpO
ミセ;゚ー゚)リ 「んじゃ、改めて」
パクッ!
ミセ*゚ー゚)リ}・ω・`)
ξ゚听)ξζ(゚ー゚*ζ(゚、゚トソ
ミセ*゚ー゚)リ}・ω・`)
ミセ;´ω`)リ}・ω・`)
ξ;゚听)ξ「「「何味−!?」」」ζ(´д`;ζ(゚д゚;トソ
ミセ;´ー`)リ 「酸っぱい……たぶん……」
ξ;゚听)ξ「「「たぶん?」」」ζ(゚ー゚;ζ(゚、゚;トソ
ミセ;´ー`)リ 「……キウィ?」
ξ;゚听)ξ「「「うわー……」」」ζ(゚ー゚;ζ(゚、゚;トソ
ζ(´ー`*ζ 「ちょっと惜しかったね、きゅうり」
ξ;゚听)ξ「そういう問題じゃないでしょうが……」
ミセ;´ー`)リ 「……うん、地雷」
− おまけ おしまい −
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