- 3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/22(水) 20:57:05.01 ID:usBCXJdR0
ダイ3ワ ソノトキ ハ マエブレ モ ナク セカイ ヲ キリサク
( ФωФ)
ノll ゚ -゚)
「どうしたんだ、じいちゃん? 旅行から帰って来てからずっと辛気臭い顔してるぞ?」
( ФωФ) 「む……クーか……」
( ФωФ) 「……ワシは、そんな顔をしとったかの?」
ノll ゚ -゚)
「ああ、さながら私は悲劇のヒロインですって顔だな」
( ФωФ) 「悲劇か……いや、ワシの力が足りなかったに過ぎん……」
ノll ゚ -゚) 「ん? 何の話だ? 旅先で財布落としたこと、まだ気にしてるのか?」
ノll ゚ー゚)
「まあ、じいちゃんも年なんだし、若い頃みたいに何でも1人では出来ないさ」
( ФωФ) 「確かにワシも歳を取ったな……」
ノll ゚ー゚) 「そうだ、なんなら今度、デパートにでも一緒に財布見に行こうか?」
( ФωФ) 「それは有り難いのぉ」
- 4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/22(水) 20:58:10.76 ID:usBCXJdR0
( ФωФ) 「……じゃが、何が欲しいんじゃ? じいちゃん、年金生活者じゃから、あんまり高い物は買えんぞ?」
ノll;゚ -゚) 「う……、お見通しか。いや、私も丁度新しい財布が欲しかったとこで、その──」
( ФωФ) 「フフ、そのくらいなら大丈夫じゃ。良いぞ、買ってあげよう」
ノll*゚ー゚) 「ホント? じいちゃん、大好き!」
(*ФωФ) 「現金じゃのぉ。まあ、たまには良かろうて。お母さんには内緒じゃぞ?」
ノll*゚ー゚) 「うん! ありがとう、おじいちゃん!」
( ФωФ) 「……なあ、クーよ」
ノll*゚ー゚) 「何?」
( ФωФ) 「……子や孫に、夢を託す事は──いや、何でもない。何でもないんじゃ」
ノll ゚ー゚) 「?」
( ФωФ) 「それよりいつにするかの? 流石にワシも小銭入れだけでは不便じゃから、今度の日曜にでも──」
・・・・
・・・
- 5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/22(水) 20:59:28.70 ID:usBCXJdR0
今朝方に夢を見た。
所々朧げで、記憶から剥落してしまってはいるが、大切な、じいちゃんとの想い出の1つ。
何故そんな夢を今日この日に見たのかはわからないが、それはきっと世話焼きのじいちゃんが何かを伝えようとしてくれたのだろう。
川 ゚ -゚) 「やけに慌しいな……」
いつもとは違う朝の道行で、私は中央省庁密集区、内閣府まで来ていた。
幸いな事に、辿り着くまでに雨はあがったが、庁舎近辺は一目でそれとわかるほどには騒然とした空気に包まれている。
決して騒がしいわけではないが、多くの人間が浮き足立っている様が感じ取れる。
川 ゚ -゚) 「さて、課長はどこだ……?」
あの馬鹿を通してではあるが、一応は上司の命でここに来ているわけではある。
早急に合流して、状況を聞くべきであろう。
私は携帯電話を手に取り、課長の番号を呼び出す。
「おっはよォごっざァいまぁーッす!」
_,
川 ゚ -゚) 「……」
つ】
- 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/22(水) 21:01:12.15 ID:usBCXJdR0
( ・∀・) 「おや? どうされましたァー?」
私は携帯電話に伸ばした指をそのまま、かろうじて一言、別に、と言うに留まった。
庁舎の外とは言え、ひっきりなしに人の出入りが有り、私自身も壁の側の少し目立たぬ位置に立っていたのだが、
よくもまあ目敏く見つけたものだ。
先程周りを確認した際にはいなかったはずなのに、どこから湧いて出たのか……。
ひょっとすると、気付かぬ内に発信機でも付けられて無いかと勘繰ってしまう。
この馬鹿ならその位はやりかねない気がする。
( ・∀・) 「ああ、フィレンクトさんにお電話は結構でェすよ?」
川 ゚ -゚) 「課長はどこだ?」
( ・∀・) 「こちらにはァいらっしゃいません」
川 ゚ -゚) 「では、どこに?」
( ・∀・) 「外務課でェすよ」
_,
川 ゚ -゚) 「は……?」
- 10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/22(水) 21:02:20.66 ID:usBCXJdR0
私は上司の命令という事でここに来たはずなのだが、この馬鹿はまたわけのわからない事を言い出した。
私の上司は1人しかいないはずだが、私がそう言うと、目の前の馬鹿は相変わらずの芝居がかった仕草でにこやかに言い放つ。
( ・∀・) 「我々みィんなの上司ですよ」
_,
川 ゚ -゚) 「どういう事だ?」
( ・∀・) 「アレ? わかってて恍けェてます? つまり──」
(・∀・(-y⊂(゚、゚#トソン 「おい貴様……先輩から離れろ」
ゴリッと言う鈍い音と共に、目の前の馬鹿面が左へ流れる。
その頬には黒光りする銃身が押し付けられ、細い腕の根元に怒気を帯びた見慣れた顔がいた。
(・∀・( 「エート、ナンデス、コレハァ?」
さして焦った様子も見せず、両手の人差し指でトソンを指差しながら私に状況を聞いてくるモララー。
見たままだとしか答え様が無いが、説明が面倒なのでまずはトソンに話し掛ける。
_,
川 ゚ -゚) 「ああ、トソン? 流石にこんなとこで銃を抜くのは止せ」
(゚、゚#トソン 「ですが、先輩、この汚らわしい生き物が先輩に──」
- 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/22(水) 21:04:21.16 ID:usBCXJdR0
(・∀・( 「僕は一応、お仕事でクーちゃんとお話ィ──」
(゚、゚#トソン 「クーちゃん!? 先輩を馴れ馴れしく呼ぶな!」
(・∀( 「アハハハハァ、この子なんなんでェすかァ? てか、この銃、セーフティ外れてますねェ」
_,
川 ゚ -゚) 「いいからまず、銃を仕舞え。この馬鹿面は監査の人間で、仕事の話をしてるのは本当だ」
少々強めにトソンをたしなめ、まずは落ち着かせる。
状況の説明が終わる事には、何とか普段の調子に戻っていた。
(゚、゚トソン 「なるほど……失礼しました、先輩」
川 ゚ -゚) 「わかればいいんだ。兎に角、説明をコイツから聞かんことには話が進まないんでな」
( ・∀・) 「アレ? 謝罪なら僕にじゃァないンですか?」
川 ゚ -゚) 「話が終わったら撃っても構わんから、それまで待て」
( ・∀・) 「アハハハハァ、目が本気と書いてマジですねェ」
- 13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/22(水) 21:07:11.76 ID:usBCXJdR0
今回の召集は、例の次元の裂け目の件でだとモララーは言う。
このタイミングで呼ばれたのだから、ある程度は予想していたことだが、何故この場に自分が呼ばれたのかはよくわからない。
その事を尋ねるも、まあ、兎に角会議に出てからだとへらへらと笑ってかわされる。
_,
川 ゚ -゚) 「何故、課長を通さず──、と言うか課長は何故呼ばれなかったんだ?」
( ・∀・) 「必要ないからでェすよ。こう言ったら少々語弊がありますが、まあ、各省の代表は1人で良いと」
川 ゚ -゚) 「……」
私は、モララーの言い様に少々疑問を感じたが、一先ずおいておく事にした。
モララーは省という言い方をしたが、私の所属部署の法的な呼び名は課のはずだ。
川 ゚ -゚) 「で、その会議とやらはどこであるんだ?」
( ・∀・) 「大会議室でェす。もうそろそろ始まりそうですネ」
左手にはめたシンプルな腕時計を確認しながらモララーは答える。
口を開けば阿呆にしか見えないニヤケ面も、黙っていれば二枚目の部類に入るのだろう。
- 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/22(水) 21:10:46.97 ID:usBCXJdR0
川 ゚ -゚) 「では行くか……トソン、お前も会議に呼ばれてるのか?」
(゚、゚トソン 「いえ、私はたまたま先輩をお見かけしたので……」
一応、その関係で来たらしいのだが、会議自体はもっと上役が出るという事で、その間は待機らしい。
待機という事は、こんな所をうろついてないで、その場にいなければならない気もするが。
川 ゚ー゚) 「しかし、お前も目敏いな。まさか私に発信機とか付けたりはして無いよな?」
私は冗談めかした物言いで、トソンの肩をポンポンと軽く叩く。
(゚、゚トソン 「……」
川 ゚ー゚) 「……」
(゚、゚;トソン 「…………」
川 ゚ -゚) 「…………」
- 17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/22(水) 21:12:15.24 ID:usBCXJdR0
- _,
川 ゚ -゚) 「なあ、トソン?」
(゚、゚;トソン 「すみません! 待機命令が出てますのでこの辺で!」
川;゚ -゚) 「おい、ちょっと待──」
ビシッ
ノ(゚、゚;トソン 「お疲れ様でしたぁぁぁぁ!」
川;゚ -゚) 「ちょっと待てぇぇぇぇ!」
脱兎の如く凄まじい速さで走り去って行くトソン。
大学時代からそこそこ運動神経は良かったとは思うが、防衛省でさらに鍛えられたのだろうか。
( ・∀・) 「アハハァ、変なお人でェすねェー」
_,
川 ゚ -゚) 「……お前が言うな」
大きなため息を1つ、そして徐に諦めた様に首を振る。
私は、後で私物のチェックを必ず行うことに決め、モララーに率いられ大会議室へ向かった。
・・・・
・・・
- 18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/22(水) 21:14:47.71 ID:usBCXJdR0
(’e’) 「つまり、今回の件は2週間前に予め予期されてた──」
川 うo-) 「ふぁ……」
会議はひどく単調で、退屈な物だった。
そのほとんどが、起った事に対する反省と見せかけた責任の擦り合いだ。
どの省が責任を負うべきか、その点のみを強調して論じている者が多数。
時折入る、ニュースソースレベルの今回の件のあらましの方が、まだ有用だ。
それに、意図的なのかわからないが、不自然なくらい10年前の件との関連性が取り上げられない。
川 ゚ -゚) (……しかし)
大会議室呼ばれるほどの部屋だ。
大きさは推して知るべし。
多分、寝てても全く咎められない様な位置に座してる私からは、発言者の顔すらあまり判別出来ない。
川 ゚ -゚) (何故私が呼ばれた?)
眠気と闘いつつも、浮かぶ疑問はやはりその点。
各部署の人間が最低1名は代表として出席する、その程度の要件で呼ばれたのなら、
モララーもあんな勿体つけた言い方をしないだろう。
そもそも、アイツ自体が関わって来る事が既におかしい。
- 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/22(水) 21:16:09.14 ID:usBCXJdR0
残念ながらその件を問い質そうにも、その馬鹿はこの場にいない。
どうやらモララー自身は会議には出席しないようで、何やらお偉いさんの下へ行った様だ。
川 ゚ -゚) (まあ、いないのはいないでウザくなくて良いんだ)
これ以上の推察は材料がなさ過ぎて無理だ。
私はそう判断して、会議に集中する事にした。
つまらない会議ではあるが、ここに呼ばれた以上、何かしらの意味があると信じて話を聞く。
「続きまして──防衛大臣の──」
( ゚д゚ )
川 ゚ -゚) (あれは……)
壇上に上がったのは、現職の防衛大臣、高知ミルナだ。
鷹派と名高い、しかし中々のやり手な様で、昨今の防衛省の権利拡大は彼の功績に因る所もあるらしい。
( ゚д゚ ) 「単刀直入に言おう。このような会議をだらだらと続けていても何の役にも立たん」
川 ゚ -゚) (おやおや……噂以上の様だな)
- 22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/22(水) 21:18:12.53 ID:usBCXJdR0
室内が大きく響動めき出す。
ここまでの流れの全てを否定したのだから、それも当然の事だろう。
個人的には賛同するが、流石に公の会議の席で言っていい台詞とは思えない。
( ゚д゚ ) 「言いたい事は後で書面にででも出してくれ」
川 ゚ -゚) (多分、読まずにシュレッダー行きだろうな)
その後も、ミルナは一方的に捲し立て、と言っても文字通り独壇場なわけだから、言いたい放題だ。
要するに、自分達で何とかするから他部署は邪魔をするなということだろう。
そしてその意見はすんなりと受け入れられそうな空気だ。
調査による、技術のフィードバックという恩恵を受け入れられるメリットはあっても、
それ以上に抱え込むリスクの方が大きいのだろう。
既に10年前にも同等の事が起っているわけだし、そのメリットも多少怪しい物だと考えられもする。
川 ゚ -゚) (まあ、防衛省の管轄になるのなら悪くは無いな……)
防衛省ならトソンを通じて多少はその経過を知る事も出来るだろう。
トソンが担当になるわけでもないだろうから、大した情報は得られないかも知れないが、普段のたわいも無い世間話よりは
よっぽど興味のある話題だ。
- 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/22(水) 21:20:48.13 ID:usBCXJdR0
( ゚д゚ ) 「むろん、技術的な成果は全省共通の財産として公開する予定だ」
川 ゚ -゚) (トソンの世間話の幅は広過ぎるからな……)
大学時代だと全くミーハーというイメージがなかったのだが、最近のメールのやり取りからは、今時の女の子という感じを強く受ける。
食べ物の話などは、私も多少は興味があるので中々面白いが、テレビの話はその大半が付いていけない。
どのドラマのどの俳優が、という話などは全く持って理解不能だ。
川 ゚ -゚) (バラエティも全滅だな……)
( ゚д゚ ) 「という訳でこの件は、防衛省、それと──」
次からは私からも少しは話題を振るべきかと思う。
いつも素っ気無い返事ばかりは流石に気の毒だが、返事のしようが無い話題ばかりなので、それならいっそ、
自分の興味のある分野の話題を振ればいいのではという結論に達した。
川 ゚ -゚) (……となると何だ? ……あれ、私の興味がある物って食い物だけか?)
( ゚д゚ ) 「外務課が預かる」
川 ゚ -゚) 「……」
- 24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/22(水) 21:24:15.18 ID:usBCXJdR0
- _,
川 ゚ -゚) 「……は?」
突如として響いた外務課の名前に、私は思わず間抜けな呟きと共に立ち上がる。
当然、会議中のこの場に起立している物は壇上のミルナ以外は誰もおらず、視線が一斉に私に集まる。
( ゚д゚ ) 「聞こえなかったか、外務課の素直クール? お前が担当するんだ」
川;゚ -゚) 「え? あ、いや、ちょっと待て──いや、待ってください! それはどういう……」
( ゚д゚ ) 「話は以上だ」
そういうと壇上のミルナはさっさと退場してしまった。
残された私は、立ち上がって右手を力なく前に伸ばしたまま、しばらく何も出来ずに固まっていた。
・・・・
・・・
( ・∀・) 「あれェー? 話してませんでしたっけェー?」
_,
川 ゚ -゚)
- 27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/22(水) 21:27:56.58 ID:usBCXJdR0
会議を終え、廊下に出た私を待ち構えたモララーは、素っ恍けた態度で悪びれもなく言う。
もちろん、わざと伝えてなかったのはわかっているが、ここで食って掛かっても、自称ドMのこの馬鹿を喜ばせるだけだ。
( ・∀・) 「今回は我々共通の上司から招集を受けてまァす」
我々共通の上司、それはすなわち内閣総理大臣。
_,
川 ゚ -゚) 「何で総理が?」
確かに、省を越えての協力体勢を整えるには、それが一番効果的だろうが、今回の件に総理が絡んでくる理由がわからない。
あれはそれほど精力的に動くタイプではないし、先程の会議にもそういった影は見受けられなかった。
( ・∀・) 「ええ、実質はミルナさんの思惑がすべてですねェ」
_,
川 ゚ -゚) 「主犯は防衛省か。……で、お前ら総務省は何のつもりだ?」
( ・∀・) 「省庁間の調整の実務はァ、我々が負っているとご存じなかったですかねェ?」
川 ゚ -゚) 「ふむ、それはわかるが……」
( ・∀・) 「わかるがァ?」
- 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/22(水) 21:32:24.90 ID:usBCXJdR0
- _,
川 ゚ -゚) 「何故貴様だ? 貴様は監査だろう? 総務省の別の人間が当たるべき件じゃないのか?」
総務省の人間が関わって来る事には納得はいくが、こいつが関わって来ることには納得いかない。
恐らく、こいつ以外の人間から連絡を受けていたなら、もう少し色々と事前に情報を得られていたはずだ。
この馬鹿は意図的に情報を秘匿して楽しんでいる節がある。
そういった実務的な事を抜きにしても、コイツだけは生理的に嫌なのだが。
( ・∀・) 「Oh、そのお話でェすか。それなァら簡単な話ですよ」
(*・∀・) 「私がクーちゃんと一緒にお仕事したかったからでェーっス」
_,
川 ゚ -゚) 「よし、死ね」
私は、目の前でくるくる回る馬鹿の背中を思い切り蹴り飛ばした。
馬鹿は回転速度を上げながら、器用に進んで行く。
どこまでが本気かはわからないが、少なくともモララーの一存という事はないだろう。
これまでの話で、いくつも疑問点が浮かび上がっている。
最大の疑問点だった私が呼ばれたわけはわかった。
外務課としての仕事があったから。
- 29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/22(水) 21:34:01.62 ID:usBCXJdR0
ただ、それだけだと、何故課長ではなく私なのかという問題の答えにはなっていないのだが。
加えて、外務課自体が必要とされた理由もわからない。
川 ゚ -゚) (そして、何故防衛大臣が別部署のヒラを知っていたかだが……)
モララーが伝えただけという解答でも納得はいくのだが、それだけではない何かが、私自身の中で引っかかっている。
川 ゚ -゚) (……どこかで会った事があったか?)
現職の防衛大臣だ。
テレビなどでは見る顔だし、どこかの庁舎ですれ違っていても不思議ではない。
しかし、そう言うのとは別の、何と言うか既視感的な何かが思い浮かぶ。
( ・∀・) 「こちらでェすよ」
先を行っていたモララーが立ち止まり、1つのドアを指差している。
第27小会議室。何の変哲もない、内閣府内の小さな部屋だ。
モララーがドアを開け、私の方に恭しく礼を尽くし、入るように指し示した。
- 30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/22(水) 21:36:40.74 ID:usBCXJdR0
川 ゚ -゚) 「失礼しま……」
( ゚д゚ )
川 ゚ -゚) 「……す」
( ゚д゚ ) 「呼び立ててすまんな。まあ、座ってくれ。堅苦しい挨拶は抜きだ」
予想はしていたが、室内には防衛大臣、ミルナがいた。
予想に反していたのは、そこにはミルナしかいなかった事だ。
( ・∀・) 「でェは、ご説明しましょうかァ」
この馬鹿もこの話に加わるらしい。
いない方が早く進むんじゃないかと思いつつも、未だ状況の見えない私は大人しく先を促す。
色々と礼を失している気もするが、空気的に無礼講でいい様でもある。
( ゚д゚ ) 「どの辺まで説明しているんだ?」
( ・∀・) 「何も、全く、全然でェす!」
ミルナの問いに躊躇い無くそう宣言するモララー。
ミルナは呆れたように何も伝えてないのかと聞き返し、私の方を見る。
私は無言で頷き、知っている事のみを答える。
- 33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/22(水) 21:41:02.31 ID:usBCXJdR0
川 ゚ -゚) 「1つは私が今回起きた次元の裂け目の関係で、外務課の仕事として呼ばれた事」
ミルナは頷き、続きを促す。
私は、先程の会議の不自然さから、こちらの知り得ている情報を明かすべきか多少逡巡したが、
隠す意味もないと判断し、口を開く。
川 ゚ -゚) 「もう1つは、10年前にも似た様な事件があった事……です」
流石にタメ口はまずいとかと判断し、言葉を補う。
しかしミルナは、ほうと呟き、モララーの方へ視線を走らせる。
( ・∀・) 「おんやァー? 僕はその話、クーちゃんには一切してませんよねェ?」
知り得ない様に、外務課の資料も抜いておいたとモララーは言う。
川 ゚ -゚) 「なるほど。関係資料が一切無かったのはお前の仕業か」
( ・∀・) 「抜けが有りましたかァ? そこんとこ、少々気になりますねェ?」
川 ゚ー゚) 「情報元をお前に教えてやる義理は無いな。それに、それなりに政府内では知れ渡っていた問題だったんだろ?」
( ・∀・) 「ええェ、まァ。……ですが、クーちゃんに情報が漏れるとは思えなかったんですけどねェ」
珍しく歯切れの悪い物言いで、モララーは言い淀む。
自分の仕事のミスに消沈しているのなら良い気味だが、そうは見えない相も変わらずのニヤケ面に、
私は眉を潜めてその理由を問う。
- 34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/22(水) 21:42:25.04 ID:usBCXJdR0
- _,
川 ゚ -゚) 「何故だ?」
( ・∀・) 「何故ェって、そりゃ、クーちゃん友達いな──」
私は、全てを言い終える前にモララーを張り飛ばした。
絶対コイツの方が友達はいないはずだ。
( ゚д゚ ) 「仲が良いのはわかったから、そろそろ話を進めていいか?」
. _,
川#゚ -゚) 「あ? どこをどう見たら仲が良いとでも思うんだ──ですか?」
(*・∀・) 「ラァブラブですよねェー」
再度張り飛ばそうと手を挙げ掛けたが、話が進まないのと、一応はお偉いさんの前という事で、睨みつけるに止めておく。
そして私は、一番聞きたかったことを単刀直入に聞くことにした。
川 ゚ -゚) 「何故外務課が必要だったんです?」
( ゚д゚ ) 「必要だったから……としか答え様が無いな」
そう言ってミルナはゆっくりと立ち上がった。
- 37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/22(水) 21:45:09.94 ID:usBCXJdR0
( ゚д゚ ) 「現場に行く。途中で話そう」
川 ゚ -゚) 「現場?」
( ・∀・) 「例の次元の裂け目のある場所でェす」
ある程度の事情を私が既に知っていた事で、話す事がだいぶ減ったらしい。
途中の車の中で事足る位には。
私は居並ぶ2人を順に見詰め、軽くと頷いた。
本来なら、拒否権があるのか聞くべき場面だったとは思うが、何も聞かずに従うことにした。
動揺していたとか、舞い上がっていたとかいうわけではない。
これでも昔から冷静さには定評のある私だ。
従ったのは、単純に興味があったからだ。
私が呼ばれた理由に。
外務課が必要とされた理由に。
・・・・
・・・
- 39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/22(水) 21:48:56.30 ID:usBCXJdR0
よく有りがちな黒塗りの要人用の車。
その運転席にはモララー、助手席には私、そして後部座席にはミルナという、先程までと同じ面子が納まっている。
仮にも現職の大臣が後部座席に1人というのもどうかと思いもするが、今の時代、外敵という概念も、政敵という概念も、
あまり強くない。
外敵はもちろん、他に国も無いからだが、政敵は2大政党が、きれいな言葉で言えばバランスよく融和した安定状況だからだ。
争乱という言葉が消えて久しいこの国の治安は、偉大な先人達の功績であろう。
そんな平和な世で、もっとも多忙な省が防衛省というのは皮肉な話だ。
( ゚д゚ ) 「次元の裂け目は、未だその発生を止めることが出来ていないからな」
この世界の歪、次元の裂け目。
大して被害は出ていないと言っても、やはり目前に形を伴って現れる不可思議な現象、何らかの危険性を秘めている以上、
対策を取らないわけにはいかない。
その対策に追われる防衛省には、最新の技術や情報が集約されてくる。
しかし、技術の粋を集めても未解明の部分が多々あることから、その特異性が窺い知れる。
むしろ、補修という対策が取れている事の方が不思議なくらいに。
- 40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/22(水) 21:52:09.55 ID:usBCXJdR0
( ゚д゚ ) 「ふむ……どこまで話すべきかな」
川 ゚ -゚) 「個人的な見解としては……」
私は、助手席で前を向いて座ったまま、ミルナの呟きに答える。
川 ゚ -゚) 「私を公人として扱うのならば、今回の任務に必要な事だけで十分です。……しかし──」
言葉を一旦切り、バックミラーに映るミルナの顔を見ながら、続きを述べる。
川 ゚ -゚) 「私を私人として考えれておられるならば、知ってる事を全て話して欲しいです」
( ・∀・) 「アハハァ」
隣の馬鹿の笑い声が耳に響く。
恐らく、私の意図を察したのだろう。
馬鹿だが頭は悪くない男だ。
私は、まず見極める事にした。
この件に私が呼ばれたわけを。
都合の良いコマとして扱いたいなら、命令という形で任務だけを伝えればいい。
- 41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/22(水) 21:54:49.14 ID:usBCXJdR0
私は国家公務員だ。
上から、国からの命令には従う義務がある。
しかし、そうでなく、私個人の素養を何かしら必要としているのであれば、知り得る事は全て知っておきたい。
命令ではなく、協力という形で私を関わらせたいのであればだ。
もちろん、一介のヒラの公務員の私の思惑など無視して、任務に当たらせるのは容易な立場ではあるだろう。
だが、ここまでの流れを見ると、有無を言わさずという手段は取るつもりはないと見た。
( ゚д゚ ) 「……そうだな、まあ、今更隠しても仕方がない事ではある」
ミルナは表情を変えず、全く困った様子も見せずに言う。
その顔はやはり、以前どこかで見た顔だと私の記憶が結論付けた。
( ・∀・) 「でェは、まず私が、今回の経緯を説明しますネ」
そう言ってモララーは、左手首をハンドルに乗せたまま、人差し指を回してみせた。
ニュース番組とでも思って聞いてくださいと言う
- 43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/22(水) 21:58:04.26 ID:usBCXJdR0
巨大な次元の裂け目が現れたのは今日の午前4時頃。
前触れは、例の次元の裂け目が減った事以外は無く、その場所に忽然と現れた。
場所は中央区北、眉冨山中腹。
幸いと言うべきか、場所が道路から外れた山の中だったので、人的被害は今の所見付かっていない。
川 ゚ -゚) 「ニュースでは聞いていたが、随分と集落に近い場所だな」
一般的に次元の裂け目は大きさに比例して、その力場の強さも比例すると言われている。
10年前の事件が海上だった事に比べると、今回の件はかなり際どかったのかもしれない。
( ゚д゚ ) 「ああ、際どかった。……だが、信じてはいた」
川 ゚ -゚) 「信じていた?」
私の疑問にミルナは首を振り、モララーに話の続きを促した。
どうやらその話は後という事なのだろう。
( ・∀・) 「んで、まあァ、行ってみると10年前と同じく、でっかい裂け目があったわけなんですよねェ」
まだ調査の開始段階であるから、詳しい事がわかっているわけではないが、どうやらその組成やら特徴やら、
10年前と瓜2つらしい。
- 44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/22(水) 22:00:04.03 ID:usBCXJdR0
川 ゚ -゚) 「ならば調査云々と言うより、今回は補修がメインになるのではないのか?」
10年前と同質のものなら、情報や技術的に新しい何かを得る事はあまり期待出来ないだろう。
であるなら、早い内に補修してしまう方が得策だろう。
トソンの話では、発生から経過時間が短い方が補修はやり易いという事だった。
( ・∀・) 「まあァ、そうなんですが、何と言いますかもうワンクッションあるのでェすよ」
表情は変えないものの、また少し歯切れが悪くなったモララー。
言い辛いのか勿体つけているのかはわからないが、普段のコイツなら、前者の可能性は除外したい所だ。
車は、眉冨山の入り口に辿り着いた。
当然の如く、現在の所、山は封鎖されている。
多くの警官が配備されており、それを囲む様に多くのマスコミが来ている。
10年前の事件が公になってない事に比べて、今回の件はやけにあっさりと露見してしまっているのはどういう事だろうか。
( ・∀・) 「まあ、場所でェすね。こうも都市部だと、民間の探知機にも引っかかりますし、こちらの動きも隠し辛いでェす」
何とも冴えない理由ではあるが、遅かれ早かれ露見する事を考慮して、いち早く国営放送のニュースで流してしまったのだろう。
- 45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/22(水) 22:02:12.38 ID:usBCXJdR0
我々の乗った車は、数人の警官に誘導され、封鎖テープをくぐって山に入った。
よくよく考えてみれば、現職の防衛大臣が来ているのだから、騒ぎになってしかるべきなのだが、
マスコミも想定していなかったのか、執拗にカメラを向けられる事も無く無事に通り抜けられた。
川 ゚ -゚) (私もちょっとぐらいニュースに映るかもな……)
そんなどうでもいい事を考えながら、モララーの話に耳を傾けた。
なんだかんだで、運転、警官との折衝、私への説明と良く働くやつだ。
( ・∀・) 「でェ、本題なのですがァ……」
( ゚д゚ ) 「そこからは私が話そう」
甲高く騒々しいモララーを、静かな調子のミルナが遮る。
モララーはハンドルから両手を放し、お任せしますと両手を挙げ、首を振って見せた。
運転中にそれは止めて欲しい所だが、車は順調に山道を登坂して行く。
( ゚д゚ )
「先程の、コイツの言葉を借りるならワンクッションの話だな」
そう言ってミルナはモララーを指差す。
そう言えば、この2人はどんな関係なのだろうか?
- 48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/22(水)
22:05:51.35 ID:usBCXJdR0
部署も地位も年齢も違う、性格も全く似たところが無いような2人の接点はどこなのか。
見た所、仕事だけの関係とは思えない親しさを感じられる。
逸れ掛けた思考を、ミルナの物静かな声が現実に引き戻す。
( ゚д゚ ) 「あの裂け目には、まだ調査すべき重大な点が残されている」
川 ゚ -゚) 「……」
その言葉が指す所がわからない私は、曖昧に頷き、言葉の続きを待つ。
あまり舗装の宜しくない道路でも、揺れを感じない車内がこの車の上等さを暗に伝える。
そう高い山でもないので、中腹ぐらいならそろそろ到着するだろう。
しかし、道路からは外れた場所だったはずだから、多少は歩く羽目になるかもしれない。
そこまで考えて、私の格好がハイキング向きではない事に気付いた。
( ゚д゚ ) 「裂け目と言うと語弊があるな……実際は──」
川 ゚ -゚) 「……」
- 49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/22(水) 22:08:53.88 ID:usBCXJdR0
( ゚д゚ ) 「その中なのだから」
川 ゚ -゚)
( ・∀・)
( ゚д゚ )
川 ゚ -゚) 「……中?」
当然のようにこぼれ出た私の疑問に、ミルナは中だ、と重々しく頷く。
中、というのはもちろん、次元の裂け目の中の事だろう。
川 ゚ -゚) 「ちょっと待て──ください、次元の裂け目は力場だったのでは?」
( ・∀・) 「ええ、その通りでェすよ。ですから、アレも触るとバチバチでェすねェー」
事も無げに言うモララー。
それが指す意味をわかっているのだろうか。
川 ゚ -゚) 「ならば、どうやって入るんだ?」
( ゚д゚ ) 「それはまあ、追々……」
車が徐々に速度を落とし、完全に停止した。
外を見るとここにも、多くの警官が配備されていた。
- 50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/22(水) 22:11:45.54 ID:usBCXJdR0
( ゚д゚ ) 「さて、降りる前に聞いておきたい」
助手席のドアを開け、降りようとする私をミルナが制する。
川 ゚ -゚) 「何をですか?」
( ・∀・) 「察しの良いクーちゃんの事でェす、用件はワカッテマスねェ?」
期せずして返答は右隣から来た。
ミルナも、無言で頷いている。
川 ゚ -゚) 「何の事だか……」
わからない程私も愚かではない。
ここまでの話から、コイツらが私に何をさせたがっているかはわかった。
まだいくつも腑に落ちない点はあるが、最終的に私にやらせたい事は……
川 - -) 「私に、次元の裂け目に入れと……」
( ゚д゚ ) 「……一応断っておくが、これは命令ではない」
( ・∀・) 「カテゴリーとしては、お願いですね」
- 51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/22(水) 22:15:51.99 ID:usBCXJdR0
川 ゚ -゚) 「お願い? あなた方2人が、私に? それとも、国としてですか?」
何故命令ではないのか。
なぜお願いなのか。
私は、2人に再度問うた。
( ゚д゚ ) 「ああ、願いだ。私と──」
川 ゚ -゚)
( ・∀・)
( ゚д゚ ) 「元外務省特別顧問、杉浦ロマネスクからのな」
川 ゚ -゚)
川 ゚ -゚) 「じい…………ちゃん……から?」
私は、あからさまな今朝方の夢に心の中で悪態を吐いた。
第3話 了 〜 穴だらけの問題、突き付けられる選択式の解答用紙 〜
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