3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/05(金) 00:10:02.91 ID:+7T+ByvmO
 
 ダイ12ワ セカイ ノ オモイ ト カケタ ヒト
 
 
川 ゚ -゚) 「それはつまり、あの兄弟に対して取った私の行動が、発生原因を1つ消す事に繋がったという事か?」
 
从 ー从 「それで正解」
 
突然告げられた成果に私は戸惑い、何とか頭を回し、言葉を繋げて答えを導いた。
彼女はそれを正解と言ったが、当然疑問は山の様に積み上がる。
 
川 ゚ -゚) 「出来れば順を追って話して欲しいんだが」
 
从 ー从 「うーん、順も何も、発生原因が彼らにあり、クーちゃんがそれを取り除いたという結果しかないんだけどね」
 
川 ゚ -゚) 「何故彼らが発生原因だったんだ?」
 
从 ー从 「それはその内わかるよ」
 
川 ゚ -゚) 「……」
 
ここに来て答えをぼかすという事は、ここはかなり重要な点かもしれない。
彼女から聞けなくても、本人達に聞くだけの価値はありそうだ。
 

4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/05(金) 00:12:40.85 ID:+7T+ByvmO
 
川 ゚ -゚) 「……では質問を変えよう」
 
川 ゚ -゚) 「彼らの何が発生原因だったんだ?」
 
从 ー从 「うーん……」
 
彼女は考え込むように唸り、そのまま沈黙に移行する。
大方、現時点で開示していい情報なのかどうか判断に迷っているのだろう。
それはイコール、答えを知っていたという事に繋がる。
 
从 ー从 「クーちゃんは何だと思う?」
  _,
川 ゚ -゚) 「それが見当もつかないから聞いているのだが」
 
そう言う私に、考えてみてと言う彼女。
渋々ながら考えてみるが、私が兄者達に接した時間はわずか数時間。
そこで取った行動も、話して爆散させて増やして追い掛けたぐらいだ。
 
強いて言うなら、兄弟の仲を取り持ったぐらいだが、普通に考えれば、発生原因は物理的な要因と考えるべきだが……。
 
普通に──
 

6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/05(金) 00:15:20.28 ID:+7T+ByvmO
 
川 ゚ -゚) 「物理的な要因ではない」
 
从 ー从 「としたら?」
 
川 ゚ -゚) 「心理的な要因……」
 
もう何度もぶち当たった問題だ。
普通という考え方に囚われるべきではないと。
 
これならば兄者達にも、そしてブーンにも当てはまるかもしれない。
 
川 ゚ -゚) 「つまりは心か」
 
从 ー从 「……やっぱり優秀だね、クーちゃんは」
 
川 ゚ -゚) 「茶化すな」
 
どうやら正解らしい。
それがどうしたらあの次元の裂け目に繋がるかは全く見当はつかないが、彼女がそう言う以上、それが原因なのだろう。
 
从 ー从 「まあ、この際メカニズムは置いといて……」
 


7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/05(金) 00:17:52.70 ID:+7T+ByvmO

原因が心で、対象が彼らとわかっていたら是が非でも接触を図っただろうが、今日の件はそうではない。
 
从 ー从 「……これはテストみたいなものだったからね」
  _,
川 ゚ -゚) 「テスト?」
 
从 ー从 「そう、テスト」
 
川 ゚ -゚) 「私がこの件を手掛けるのに足りるかどうか、といった所か」
 
彼女は笑いながら肯定する。
優秀だとの賛辞を添えて。
 
川 ゚ -゚) 「はっきり言えば不愉快だな」
 
从 ー从 「その点は謝罪するよ」
 
川 ゚ -゚) 「いや、別にいいさ。それも当然と言えば当然だ」
 
彼女は私を知らない。
知らない人間を信用する為に、それなりの過程を踏みたいのは理解出来る。
 
私達は別に仲間というわけではないのだ。
 
交渉相手で、別の国の人間。
私の外交交渉次第では、敵となってもおかしくはない間柄だ。
 

9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/05(金) 00:20:10.67 ID:+7T+ByvmO
 
从 ー从 「敵対するつもりはないよ。この世界はクーちゃんの世界とある意味一心同体、運命共同体だからね」
 
川 - -) 「私も友好的に行きたいさ。AA界の人間はなかなか良いやつばかりだ」
 
川 ゚ -゚) 「で、残りは誰で、後いくつだ?」
 
発生原因の1つ、彼女はそう言った。
つまりは同じような工程を後何度か繰り返す必要があるのだろう。
 
1つはブーンだとわかっている。
しかし、その他は何も告げられていない。
 
从 ー从 「そ・れ・は……」
 
川 ゚ -゚) 「……」
 
从 ー从 「ナイショ」
  _,
川 ゚ -゚) 「ふざけるなよ。お前は次元の裂け目の発生を止めたくないのか?」
 
問題の早期解決を図るなら、対象となる人物に対してすぐに当たるべきだろう。
ここで足踏みさせられる意味がわからない。


11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/05(金) 00:22:41.14 ID:+7T+ByvmO
 
しかし彼女は、それを告げる気はないという。
 
从 ー从 「それは自分で探して欲しいかな」
 
彼女が言うには、それも含めて問題解決の1つだという。
自分で気付いてあげられなければ、悩みもわからないだろうともっともらしい理由を付けて。
 
川 ゚ -゚) 「わからなくもないが、効率も良くないと思うぞ?」
 
从 ー从 「んじゃ、残り人数だけ」
 
川 ゚ -゚) 「……やはり後1人というわけではないのだな」
 
从 ー从 「残り4人。1人はわかってるだろうから、後3人見付けなきゃね」
 
川 ゚ -゚) 「4人……」
 
他人事の様に軽く言う彼女。
AA界にも影響のある話だというのに、随分と無責任と言うか楽しんでいる様にも感じられる。
彼女の考えは理解出来ないが、思ったよりも残り人数が少なかったのは幸いと言える。
 

12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/05(金) 00:25:02.52 ID:+7T+ByvmO
 
从 ー从 「ロマもがんばってくれたしね。それと、時間も……」
 
川 ゚ -゚) 「じいちゃんもその結論に達してはいたのか」
 
となると、じいちゃんは彼女の考え方に賛同していたのかもしれない。
そうでないなら日記やミルナにその事を伝える等、伝達手段はあったはずだ。
であれば私も。従うべきか。
 
川 ゚ -゚) 「まあ、いい。兎に角悩んでそうなやつを片っ端からカウンセリングしていけばいいんだな?」
 
从 ー从 「そんな感じだけど、既に解決してもらってる子達もいるからね」
 
川 ゚ -゚) 「……判別手段はないのか?」
 
从 ー从 「ないね。ついでに言うと、彼らはその事を知らないからね」
  _,
川 ゚ -゚) 「それは何となく予想出来ていた」
 
その事を知っていたなら、最初から協力的だった兄者達は私に教えてくれたはずだ。
当然ブーンも知らないだろう。
 

14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/05(金) 00:27:03.36 ID:+7T+ByvmO
 
外見に何らかの兆候ないし、変化が見られれば判別手段は容易いのだろうが、そもそも私は彼らと出会ったばかりで、
変化があったとしてもそうなる前の彼らを知らない。
 
川 ゚ -゚) 「彼らが発生原因となったのは何故だ? いつからだ?」
 
从 ー从 「ナイショ。後者はそうだね、人それぞれ、バラバラかな」
 
川 ゚ -゚) 「具体的にはいつだ? ……30年前か?」
 
相変わらず答えをぼかす彼女に、先に考えていた質問の1つをさりげなく混ぜてみた。
最初に次元の裂け目が出来た時、それがすなわち彼らが発生原因になった時ではなかろうか。 
 
从 ー从 「まあ、ほぼ正解。正確には、30年よりちょっとだけ前」
 
川 ゚ -゚) 「そうか……」
 
これで疑問の1つは消えた。
一応確認の為、再度質問をぶつける。
 
川 ゚ -゚) 「じいちゃんがこちらに来たあの巨大な次元の裂け目が発端か?」
 
从 ー从 「うーん……発端と言うか、最初に出来た巨大な次元の裂け目だね」


15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/05(金) 00:30:06.28 ID:+7T+ByvmO
 
川 ゚ -゚) 「細かいのはそれ以前からか……」
 
从 ー从 「そんなに差はないけどね」
 
川 ゚ -゚) 「では、その原因はAA界の所為なのか? それとも、地球の所為か?」
 
从 ー从 「……AA界の所為、かな? だから、こちら側で解決しなきゃダメだね」
 
確認レベルの軽い質問だとは判断していたが、割とすんなりと答えをくれた。
意外と言えば意外かもしれない。
 
もっとも、操作されている可能性も拭えないが、どうせしばらくはこちらに滞在する予定だ。
最初の判断通りAA界での問題解決に努めた方が良さそうだ。
 
川 ゚ -゚) 「次の質問だ」
 
从 ー从 「あれ? 話題はこちらに任せるんじゃなかったの?」
 
川 ゚ -゚) 「大本の話題はな。そこから関連した事で気になる物は聞いておく事にしたよ」
 
私は彼女の沈黙を肯定と受け取り、そのまま次の質問を選ぶ。
 

16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/05(金) 00:33:05.74 ID:+7T+ByvmO
 
川 ゚ -゚) 「タイムリミットはあるのか? ……それとペナルティ」
 
今の所、巨大な次元の裂け目が発生する原因がまだわからない。
発生元という意味での原因はわかったが、それが生じるタイミングという意味での原因がわからない。
10年に1度という間隔で発生しているのだから、そう頻繁には発生しない。
 
それがすなわちタイムリミットではないかと私は考えている。
そして巨大な次元の裂け目の発生こそが……
 
从 ー从 「……タイムリミットは不明。これはホント」
 
川 ゚ -゚) 「不明?」
 
彼女は珍しく、念を押すように言葉を重ねた。
 
从 ー从 「ひょっとしたら明日にもリミットが来るかもだし、あと10年来ないかも」
  _,
川 ゚ -゚) 「そんなに早い可能性もあるなら、尚の事対象を教えるべきじゃないか?」
 
彼女はまた笑って、それでも自分で探して欲しいと答える。
 

18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/05(金) 00:37:29.39 ID:+7T+ByvmO
 
楽しんでいる……とは思いたくはないが、どうにも緊張感に乏しい様にも思える。
それか、あまり考えたくはないが、彼女自身が決定権を握っているのかもしれない。
 
从 ー从 「ペナルティは……ナイショかな」
 
川 ゚ -゚) 「……そうか」
 
从 ー从 「ああ、でも、リミットが来るまでは彼らに何の変わりもないから安心していいよ」
 
川 ゚ -゚) 「裏を返せばリミットが来たら変わりがあるという事だろ?」
 
安心出来るか、と私は吐き捨てる様に言った。
 
苦々しい気持ちを隠すことなく彼女にぶつけ、ため息を1つ吐く。
要はリミットに間に合えば良いだけの事だが、やはり最悪の場合を想定せざるを得ない。
間違いであって欲しい推測だ。
 
从 ー从 「今日はそんなとこ?」
 
川 ゚ -゚) 「いや、もう数点」
 
時間は既に昨日よりも長引いている。
そろそろ打ち切られる覚悟はしていたが、すんなりと私の追加質問に応じてくれる様だ。
 

19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/05(金) 00:39:48.98 ID:+7T+ByvmO
 
川 ゚ -゚) 「あの地震は今回の件と関係あるんだな?」
 
从 ー从 「……アハハハハ」
  _,
川 ゚ -゚) 「……私は何かおかしなことを言ったか?」
 
私の質問にわずかな沈黙の後、これまで見せた事のない様な大きな笑い声で彼女は答えた。
その豹変に思わず身を起こしかけたが、彼女はすぐに謝り、その笑いの理由を説明した。
 
从 ー从 「クーちゃん鋭過ぎ。そうだよ、関係あるよ」
 
私の断定を含んだ質問は、どうやら正解だった様だ。
起こるべくして起こる地震があるからこそ、この家の耐震構造だと踏んだが、見立ては間違っていなかった。
 
从 ー从 「そこに気付いてるなら教えてもいいか」
 
川 ゚ -゚) 「……聞こうか」
 
从 ー从 「あれは解放の合図」
 
川 ゚ -゚) 「解放の……合図?」
 

21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/05(金) 00:42:12.66 ID:+7T+ByvmO
 
从 ー从 「そして……」
 
川 ゚ -゚) 「そして?」
 
从 ー从 「リミットの合図だよ」
 
・・・・
・・・
 
結局、その質問を最後にまた明日という運びになった。
ワタナベの事を聞きたかったが、それは叶わなかった。
話の流れから後に回したのか、それとも私が後に回したかったからなのかは自分でも何とも言えない。
 
川 ゚ -゚) 「……」
 
今日の会話はかなり有益なものだったはずだ。
行動の指針がより具体性を増した。
 
ただ、同時にわからない事もまた増えた。
その際たるものは彼女の立ち位置だ。
 
川 ゚ -゚) 「味方か……それとも……」
 

23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/05(金) 00:44:41.67 ID:+7T+ByvmO
 
敵だという考えはない。
これは実際に接しての感想のみならず、じいちゃんの日記を読んでの印象も含まれる。
 
ただ、手放しで信じられる相手かどうかは悩み所だ。
疑うとまでは行かずとも、気を付けて置くべき事は多々ありそうだ。
 
川 ゚ -゚) 「……疑い……か」
 
信じられるのは己が身だけ、などと割り切るつもりはないが、あまり他を当てにし過ぎるのも避けておくべきか。
今更こんな事を考えるのが遅過ぎるかもしれないが、結局の所、彼女の目的が私にはよくわからない。
これまで得た情報を総合すると、どうも彼女の目的は次元の裂け目の発生原因を消す事ではないのではと勘繰ってしまう。
 
川 ゚ -゚) 「……」
 
こちらの知らない、何かの時期を待っているだけとも考えられるが、一旦疑いだすとこれまで溜め込んでいた疑問、
不審と言ってもいい程の思いが溢れ出す。
 
川 - -) 「少し……疲れたな……」
 
今日はもう考えるのは止めておこう。
一晩眠れば少しはこの凝り固まった頭の中もすっきりするかもしれない。
 

25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/05(金) 00:47:18.74 ID:+7T+ByvmO
 
明日は明日の風が吹く。
そんなのん気な事を言っていていいのかわからないが、気を張り過ぎて視野が狭まるのはよろしくない。
なんせ私自身で残りの3人を見つけなければならないのだ。
 
川 - -) (明日はその手段を考えるか……)
 
私はそのまま、AA界3度目の夜に包まれて眠りに落ちた。
 
・・・・
・・・
 
川 ゚ -゚) 「ふむ……こんなものか」
 
私は包丁をさっと水で洗い、包丁立てに立て掛ける。
得体の知れない葉野菜だが、これまでの食事の中ではこれが一番キャベツに近い味だった。
 
川 ゚ -゚) 「おっと、沸いたか」
 
鍋から噴きこぼれんばかりの泡が立ち、お湯が沸く。
火を少し弱め、まずはキャベツもどきを鍋に放り込みむ。
 

27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/05(金) 00:50:03.12 ID:+7T+ByvmO
 
川;゚ -゚) 「袋開けてなかった」
 
元々料理は得意でない上に、久しぶりに作るという手際がいまいちだ。
急いで袋を開け。鍋に塊を2つ放り込む。
そこからはほぐしたり混ぜたりしながら、ものの数分でインスタントラーメンは完成した。
 
川 ゚ -゚) 「卵でも入れればよかったか……」
 
具財がキャベツもどきだけと至ってシンプルな作りだが、久しぶりに嗅ぐラーメンの匂いはとても食欲をそそる。
 
川 ゚ -゚) 「と言っても、卵もどきだしな……」
 
私はどんぶりにラーメンを移し、食卓のワタナベの元へ運ぶ。
 
川 ゚ -゚) 「待たせたな」
 
从'ー'从 「うわー、これがラーメン?」
 
川 ゚ -゚) 「そうだ。インスタントだが、私の一押しの銘柄だ」
 
私はどんぶりをワタナベの前に置き、ラーメンについて説明する。
しかし、あまり長く話してラーメンが伸びてしまうのも頂けないので、短めに切り上げて頂く事にした。
 

28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/05(金) 00:53:50.78 ID:+7T+ByvmO
 
从'ー'从 「いっただっきまーす」
 
川 ゚ -゚) 「いただきます」
 
ずるずると音を立ててラーメンをすする。
蕎麦やパスタもどきはこの世界にもあるので、ワタナベも麺類に対して抵抗はない。
 
从'ー'从 「美味しいねー」
 
川 ゚ -゚) 「そうか。気に入ってもらえて幸いだ」
 
从'ー'从 「食感はお蕎麦みたいだけど、味が全然違うよ」
 
川 ゚ -゚) 「とんこつだし、ちょっとこってりしてるからな」
 
やはりラーメンは美味い。
私には蕎麦やパスタよりはこちらの方があっている。
 
残念な事に、AA界、と言うよりワタナベのレパートリーには蕎麦やパスタもどきはあってもラーメンもどきはなかった。
元の世界に近しい食生活ではあったので、少し期待していたのだが、そうそう都合よくはいかなかった。
 
30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/05(金) 00:56:34.44 ID:+7T+ByvmO
 
仕方がないので、私が唯一持ち込んでいた私物、インスタントラーメンを今日の昼食に作ってみた。
AA界に来る直前、他に何か持っていく物と言われて真っ先に思い付いたものだ。
あの時は料理出来る環境があるのか疑問もあったが、お湯ぐらいなら沸かせるだろうという判断の元、持参してみた。
 
从'ー'从 「ご馳走様でした」
 
川 ゚ -゚) 「口に合った様で良かったよ」
 
从'ー'从 「うん、美味しかったよ。クーちゃんがお勧めするだけはあるね」
 
川 ゚ー゚) 「うむ、ラーメンは人類が生みだした至宝の食べ物だからな」
 
自分の好きなものを気に入ってもらえるのは嬉しいものだ。
久しぶりに好物も味わえて、少々塞ぎ気味だった気分も晴れやかになった気がする。
 
从'ー'从 「後片付けは私がやるから、クーちゃんは休んでていいよ」
 
川 ゚ -゚) 「そうか? 悪いな」
 
私はワタナベの言葉に従い、居間を抜け縁側まで向かう。
窓の外は雨模様。ここ数日ずっと降り続いている。
 
川 ゚ -゚) (ワタナベの話では明日にはあがるらしいが……)
 

31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/05(金) 00:59:27.00 ID:+7T+ByvmO
 
AA界に来てから2週間が過ぎた。
 
次元の裂け目の発生原因がわかってから昨日まで奔走してみたが、今の所目立った成果は上がっていない。
 
取り敢えずは特定出来ているブーンに付きっきりで色々と試したり観察してみた。
しかし何の兆候も発見できなかったし、何か変化する様な事も起きなかった。
 
わかったのはブーンがとても温厚でいいやつだという事と、かなり丈夫だが、意外と柔らかく、
布団代わりにもなるかもしれないという事ぐらいだ。
 
他にも瑣末な事や、他の面々とも話したりもしたが、やはり目ぼしい成果は得られていない。
 
唯一わかったのは、あの地震についてだ。
 
兄者が言っていた同じ週に起こった地震。
あれは恐らく、私がこちらに来た次元の裂け目が出来た日に起こっている。
 
彼女の話から推測するに、恐らくあれが実際に起きたリミットの合図ではないかと思う。
 
川 ゚ -゚) 「リミットの合図、そして巨大な次元の裂け目か……」
 
そこに関係性がないとは考え難い。
となると、どういう関係なのかと言えば、それは……
 

32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/05(金) 01:01:04.95 ID:+7T+ByvmO
 
川 - -) (いや、それはまだ確証がない……)
 
私は一旦その考えを置いておき、別の方向へ思索を広げる。
 
あの日、1つ目の発生原因を解放したといわれて以来、彼女とは話していない。
何でも、私が進み過ぎたからしばらくは教えられる事がないそうだ。
あの日の翌日にワタナベメモにそう書かれていた。
  _,
川 ゚ -゚) 「明らかにゲーム感覚だよな……」
 
何とも悠長な話だ。
呆れて物も言えないが、彼女に関しては半ば諦めている。
無論、このまま放っておくつもりもないが、まずは情報を揃えてからだと割り切る事にした。
 
そんな考えの下、まずはブーンにべったりだったのだが、結果は空振り。
これまでわかった事もどこまで話して良いかわからなかったが、確実に解放されている兄者達には話しておいた。
 
2人とも神妙な顔付きで考え込んでいたが、改めての礼を述べられ、今後の協力も約束してくれた。
 
川 ゚ -゚) 「偶然ではあったが、彼らの事を助けられたのだな……」
 
少なくとも、私がAA界に来た意味が1つはあった事に私自身も素直に喜べた。
彼女の言うペナルティ、それがあの2人に降りかかるのを防げたのだから。
 

34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/05(金) 01:03:34.15 ID:+7T+ByvmO
 
川 ゚ -゚) 「それ以降がさっぱりだがな」
 
それから10日ほど成果のない日が続き、少々滅入っていた所にワタナベから提案があった。
曰く、お休みを取ったら、と。
 
言われてみれば公務員にあるまじき勤勉さで働きづめだ。
危急の事態とはいえ、時には休まなければ肝心な時に動けない場合もある。
 
雨がひどいのも相俟って、私はワタナベの提案に従い、今日はどこにも出かけない事にした。
 
しかし、休んだはいいがこれといってやる事もない。
仕方なくごろごろしていたらあのラーメンの存在を思い出して、久しぶりに料理をする運びとなって現在に至る。
 
ラーメン自体は美味かったから文句はないが、どうにも無為な休日を過ごしてる気がする。
気が付けばいつも次元の裂け目について取り留めないことを考えてしまっている自分がいる事に気付いた。
 
下手な考え休むに似たりとは言うが、何も考えず休んだ方が気が休まる分まだマシだ。
いっそもう寝てしまった方が休みとしては有意義かもしれない。
 
 
35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/05(金) 01:06:02.12 ID:+7T+ByvmO
 
川 ゚ -゚) 「雨が上がったら、山の方へ行ってみるか……」
 
進展のないブーンはひとまず置いておき、他の当てを探すべきか。
 
川 ゚ -゚) (せめてリミットがわかればな……)
 
他を当たっている内にブーンのリミットが来たら目も当てられない。
まだ全然先の可能性もあるので、もう少し鷹揚に構えておいてもいいのかもしれないが、後悔はしたくない。
 
川 - -) (難しい話だな……)
 
一応、ブーンの事は兄者達にも頼んではある。
幸い、住んでる場所が近くいので、何か変化がないか見てくれる様に伝えてある。
 
川 - -) (もっとも、あまり過度の期待は出来ないが)
 
彼らはあまり相性が良くない。
性格とかそういった話ではなく、主に身体の造りという点において。
 
水分過多の兄者達がブーンに触れると、ブーンはその水分を吸ってしまうのだ。
 

37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/05(金) 01:09:34.50 ID:+7T+ByvmO
 
危うく兄者が逝き掛けたが、急いで引き剥がして水に放り込んでその時は事無きを得た。
あれ以来、兄者はあまりブーンに近付き過ぎない様にしている。
 
それでもちゃんと私の言葉に従い、ブーンを観察してくれているのだから感謝せねばなるまい。
 
川 ゚ -゚) 「ブーンはしばらくあの2人に任せてみるか……」
 
心の問題だというのなら、ブーンの悩みは恐らくあれだと想像は付く。
リミットが単純な時間でなく、その心の様態で変わるのであれば、ブーンの性格上、リミットはまだまだ大丈夫な気もする。
何と言うか、のん気で、悩みとは無縁の様にも見える。
 
それに、もしリミットが単純な時間なら、彼女はそう明言したのではないかと考えられる。
変化するからこそ答えをぼかしたのではないだろうか。
 
川 ゚ -゚) 「よし、ブーンはしばらく置いておくか」
 
从'ー'从 「ちゃんと休んでる?」
 
片付けを終えたワタナベがいつの間にか私のすぐ後ろに立っていた。
私が振り向くと、ワタナベは斜めに歩を進め、窓のそばに立つ。
 

38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/05(金) 01:13:13.66 ID:+7T+ByvmO
 
川 ゚ -゚) 「まあ、一応ね」
 
从'ー'从 「ホント?」
 
川 ゚ -゚) 「本当さ」
 
从'ー'从 「うーん……、でも、時々難しい顔してたよ?」
 
川 ゚ -゚) 「そうかな?」
  _,
从'ー'从 「うん、ほら、こんな感じで」
  _,
川 ゚ -゚) 「真似しなくていいから」
 
結構長く観察されていたらしい。
確かに悩んではいたが、身体はちゃんと休めている。
そろそろ頭の方も休め様かという結論に達しそうな頃合でもあった。
 
从'ー'从 「お仕事大変だね」
 
川 ゚ -゚) 「まあな。だが……」
 

40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/05(金) 01:16:08.73 ID:+7T+ByvmO
 
从'ー'从 「だが?」
 
川 ゚ -゚) 「やり甲斐はある」
 
理不尽な事も多く、と言うか理不尽な事ばかりだが、これは私も望んでいた外務省の仕事だ。
それと同時に、ここにいる人達の為にも、という思いもある。
私はこの仕事をやり遂げたいと強く思っている。
 
それが他ならぬ私の意志だ。
 
ここに来た理由が、偶然の積み重ねであったとしても、私は今ここにいる。
私はここで、次元の裂け目の発生を止める。
 
从'ー'从 「そっか、じゃあ、がんばんなきゃね」
 
川 ゚ー゚) 「ああ、がんばるよ」
 
从^ー^从 「フフフ」
 
・・・・
・・・


41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/05(金) 01:19:50.71 ID:+7T+ByvmO
 
翌日、ワタナベの予報通り雨は上がった。
こちらに来て2週間ほど経ったが、まだ気候に変化は感じられない。
 
そのことをワタナベに聞くと、ちゃんと季節は変化する様なので、これから少しずつ暑くなっていくのかもしれない。
持参した荷物に入っていた服も、合服から夏服ばかりだったので、ミルナもじいちゃん経由で知っていたのだろう。
 
川 ゚ -゚) 「さて……」
 
辺りにはまだ多量の雨露を含んだ草が広がるが、マシンで移動する分には問題ないだろう。
私は、すっかりなれた手順でマシンを起動させる。
 
掃除機にしか見えない外見を除けば、かなり快適な移動手段ではある。
 
从'ー'从 「今日はどっちの方向に行くの?」
 
川 ゚ -゚) 「向こうの方だな」
 
見送りに出て来てくれたワタナベに、左の方、山のある方角を指差す。
あの山から雨は発生していると言うのならば、雨上がりは多少危険が伴うのかもしれない。
ただ、ツンが言うには避難しているのは濡れるのが嫌なだけらしい。
 
何にせよ、変化は見つけ易いのかもしれない。
 

42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/05(金) 01:22:23.50 ID:+7T+ByvmO
 
川 ゚ -゚) (まあ、晴れた時に見ていないんだけどな)
 
前もって一度山へ行っておくべきだったかもしれないが、順番が変わっただけと思ってもいいだろう。
ツンの話だと、あの山にも何人かは人がいるらしい。
彼らは雨の時もずっと山にいるとの事だ。
 
从'ー'从 「雨の山の方だね」
 
川 ゚ -゚) 「雨の山と呼んでいるのか」
 
ツンからは山としか聞いてないので、恐らく星の傷と同じで、ワタナベがそう呼んでいるだけなのだろう。
意外にも、一度行った事があるらしい。
 
渡辺はここから離れない者だと勝手に想像していたが、どうやら違うらしい。
考えてみれば、私の迎えにも来ようとしたのだ。
ここに縛られているわけではないのか。
 
从'ー'从 「雨が降るとこも見たよ」
 
川 ゚ -゚) 「そばにいて危険はなかったのか?」
 

43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/05(金) 01:25:11.70 ID:+7T+ByvmO
 
ツンから聞いた話だと、雨の実が爆ぜた時に近場にいるとびしょ濡れになるぐらいしか言っていなかった。
しかし、グレープフルーツ大の大きさの実が空に舞い上がるほどの水を放出する爆発だ。
普通に考えて危険な気もするが。
 
从'ー'从 「上に飛んでくからね」
 
川 ゚ -゚) 「なるほど」
 
从'ー'从 「お空を飛んでたりしなきゃ大丈夫だよ」
 
川 ゚ -゚) 「それもそうだな」
 
そこでふと、ブーンの事を考えた。
落ちた原因がそれかと思いもしたが、よく考えたら時限の裂け目に当たって落ちた事は本人も気付いていた。
 
川 ゚ー゚) (飛んでいるブーンに雨が当たったらどうなるか、少々面白そうではあるな)
 
ブーンが元いた星はどうだったのだろう。
沢山のブーンの仲間達が飛んでいる空に雨が降ったら、空がブーン達で覆われるのだろうか。
 
等とそれかけた思考を戻し、ワタナベの方を見る。
微笑を湛えたワタナベが、私に向かって首を傾げた。
 

45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/05(金) 01:28:06.13 ID:+7T+ByvmO
 
川 ゚ -゚) 「それじゃ、行って来るよ」
 
从^ー^从 「いってらっしゃい」
 
満面の笑顔のワタナベに見送られ、私はマシンを走らせる。
山までの時間はマシンなら30分ほどで着くらしい。
そう遠いわけでもない。
 
山はどんなとこなのだろうか。
ツンはもう戻っているだろうか。
山にいるのはどんなやつなのか。
 
そして、山に発生原因を持った人物はいるのだろうか。
 
川 ゚ -゚) 「まあ、兎に角行ってみるさ」
 
浮かぶ疑問をそのままに、私はマシンの速度を上げた。
 
 
 第12話 了 〜 回答から解答を導き、私はそれをここに並べる 〜
 

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