- 2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/25(日) 21:42:02.88 ID:5wQNAFB30
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ダイ18ワ ツドウ ワケ コタエ ハ ソノ セカイ ニ
今日も空には青が広がる。
あれから約2週間ほど、兄者達の情報を元にAA界を手広く探索してみた。
聞いてた通り、人の姿は見られない。
生物自体いるのかわからない、静寂が広がっていた。
細かな次元の裂け目は存在するが、大きなものは見当たらなかった。
あの巨大な次元の裂け目については、少しだけ見当をつけてある。
どちらかと言えば当たって欲しくない類の想像ではあるが、これまでの情報を総合するとそれしか思い付かない。
AA界に来た時に元の世界の最新版の地図をワタナベに渡した。
私は持ち込んだ覚えはないが、荷物の中にそれはあった。
多分、じいちゃんの言い付けかなんかをあのバカかミルナ辺りが入れておいたのだろう。
あいつらにも帰ったら聞きたい事は山ほどあるが、今はこちらの世界の事に集中しよう。
- 3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/25(日) 21:43:44.94 ID:5wQNAFB30
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で、その地図の話だが、彼女の話ではAA界と元の世界は二重のボールのような構造で、相対的に繋がっている
という様な話だった。
AA界の小さな次元の裂け目が、元の世界の次元の裂け目に繋がる。
となると、巨大な次元の裂け目、私が通って来たあの裂け目は元の世界の山中に出来たあの裂け目ということだ。
小さな次元の裂け目も繋がるし、巨大なものも繋がる。
過去に4回、元の世界に次元の裂け目が出来た。
1回目は空に出来て、偶然にも飛行機を巻き込み、大惨事を引き起こした。
2回目は人の疎らな島の山中に出来、それ自体で事故は起こらなかったが、大勢で通ろうとして結果的に多くの
生命が失われた。
3回目は海上。
これに関しては大きな船の航行コースからも外れていて、何も問題は起こっていないらしい。
そして今回。
地図はそういう事なのだろう。
それはつまり、発生場所を動かせるという事だ。
- 6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/25(日) 21:45:16.72 ID:5wQNAFB30
-
川 ゚ -゚) 「うーん……こんなとこかな」
意外と整った文字が並ぶ少しセピアに染まった日記帳を閉じる。
私も記録をつけておくかと思い立ち、日記というにはいささか味気ない文章を書く事にした。
幸い、じいちゃんの日記帳はまだ少しページが余っている。
それほどまめなわけでもなく、週に1度つけるかどうかの頻度だから、多分そのくらいでも足りるだろう。
既に前回の記録から2週間過ぎてはいるが。
川 ゚ -゚) 「こうやって書いてみると、ほぼ答えは出揃ってるように思えるな……」
あれから彼女が一度も姿を現さないのはそういう事なのかもしれない。
当然、ビロードや花が違う可能性もあるのだが、その場合はツンやワカッテマス達の内誰かになると踏んでいる。
未だ見ぬ誰かが潜んでいる可能性も考えられるので、兄者達にも探索は続けてもらっている。
川 - -) 「あとは解決策なんだが……」
私は日記帳を鞄の方に寄せ、布団に横になった。
- 7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/25(日) 21:46:30.73 ID:5wQNAFB30
-
ビロードはもうこの家には泊まっていない。
一応、行動は共にしている様だが、まだギクシャクした様子ではあった。
川 - -) 「……どうしたものやら」
私は、ほぼ毎日のように頭を悩ませている問題を浮かべたままいつしか眠りについていた。
・・・・
・・・
川 ゚ -゚) 「結局、考え過ぎなんだよな」
すっかり見慣れた地平線。
1月あまり過ぎた時間は風の温度を少し上げた。
それでもまだ、頬に当たる初夏の匂いを含んだ風は爽やかな心地にしてくれる。
川 ゚ -゚) 「こんな雄大な自然の中なんだ。もっと適当でいい気もするが」
我ながらあまり意味のわからない言葉をつぶやき、遮るもののない草原にマシンを走らせる。
スピードを上げ、流れゆく景色を眺めている時間はとても心が落ち着く。
やはり私はスピード狂らしい様だが、少し違う様な気もする。
- 8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/25(日) 21:48:04.21 ID:5wQNAFB30
-
川 ゚ -゚) 「高揚はしないしな」
昔から、車も無心で飛ばしていた気がする。
何かを考えるのに一番適した時間だったかもしれない。
高速走行中に考え事など危険極まりない発想だが、幸いにこれまで無事故で来ている。
川 ゚ -゚) 「じいちゃんはどうしてたのかな……」
悩みの原因がはっきりしている者もいる。
しかしながら、その解決策まではよくわからない。
例えば、ブーンが飛べない理由とか、未だ皆目見当が付かない。
同じく、花が咲けない理由も。
ビロードはわかっているが、上手い手段が思いつかない。
ギコに至っては理由さえわからない。
_,
川 ゚ -゚) 「……全然解決してなくね?」
兄者達の時はたまたま運が良かっただけだ。
偶然出くわして、偶然弟者が生まれ、その結果、偶然悩みが解消された。
少なくとも私が明確な意図を持って行動した結果ではない。
- 10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/25(日) 21:50:36.43 ID:5wQNAFB30
-
積極的に動いた結果ではあるのだから、自分の成果だと誇っても良い事かもしれないが、あまり釈然としない。
踊らされている感がどこかにある所為かもしれない。
川 ゚ -゚) 「そろそろ問い詰め時かな……」
彼女が出て来なくなってから結構な時間が経つ。
結局、AA界に来た当初の数日しか話をしていない。
ワタナベにはそれとなく聞いてみたが、例のメモに返事が書かれる事もなかった。
川 ゚ -゚) 「……もう2、3やるべき事はやっておくか」
私は、マシンのレバーを大きく倒し、マシンを急旋回させた。
遙か前方にはツンたちが住む山が見える。
ツンはもとより花もいるし、ビロード達も今はあの近辺で行動している事が多い。
今の私が行くべき場所は、ブーンがいる湖のほとりか、あの山の2箇所に絞られている。
川 ゚ -゚) 「そういえばブーンも山の方に向かうみたいな事を言ってたな……」
ツンやビロード達が余り湖の方に来なくなったので、ブーンは寂しがっていた。
ツン達が山の方にいる事を教えると、自分も行こうかみたいな事を言っていたのが数日前ほど。
- 11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/25(日) 21:52:18.96 ID:5wQNAFB30
-
川 ゚ -゚) 「噂をすれば……か」
左手前方、緑の絨毯の上に真っ白な円形の塊が見える。
まだ山まではだいぶ遠い。
ブーンの歩みではもうしばらくかかりそうだ。
川 ゚ -゚) 「やあ、ブーン」
( ^ω^) 「お! クー……お?」
私はマシンの速度をほんの少しだけ落とし、ブーンに背後から声をかける。
そしてそのまま振り向いたブーンを空いてる左手で掴んだ。
(;^ω^) 「お? 何だお!? お? お? お?」
川 ゚ -゚) 「山へ行くんだろ? 連れてってやるよ」
(;^ω^) 「おー! ありがとだお……でも、引きずられてるお?」
川 ゚ -゚) 「大丈夫。行くぞ」
- 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/25(日) 21:54:05.15 ID:5wQNAFB30
-
私はマシンの速度を上げ、最高速度まで加速させる。
地面を引きずられていたブーンがふわりと浮かび上がる。
( ^ω^) 「おー!」
川 ゚ー゚) 「どうだ? 飛んでるみたいだろ?」
(*^ω^) 「うんお! 速いお! すごいお!」
嬉しそうなブーンの表情に釣られ、私の顔にも笑みが浮かぶ。
風が私の髪を、そしてブーンをなびかせる。
川;゚ -゚) 「しかし、意外と重いな……」
しばらく走ると、利き手ではない腕で風に引っ張られるブーンを抱えているのは意外と大変だと気付いた。
川;゚ -゚) 「ちょっと握り直すか……手を替えるかな──」
(;゚ω゚) 「お! クー、前!」
川 ゚ -゚) 「ん?」
- 14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/25(日) 21:57:41.55 ID:5wQNAFB30
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後ろ向きで作業していたが、慌てた様子のブーンに促され、視線を前方に戻す。
そこに広がる青、空のそれではなく、水のそれ。
川;゚ -゚) 「川!? やばッ!」
マシンを急旋回させ、滑る様に曲がる。
川岸ギリギリのところで、マシンは川からの離脱に成功する。
跳ね上がる水飛沫と、空に舞う白い布が視界の端に映った。
川;゚ -゚) 「……白い……布?」
左手が軽い。
それが何を意味するか気付いた私は慌ててマシンを止め、川岸まで走った。
・・・・
・・・
- 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/25(日) 22:00:11.49 ID:5wQNAFB30
-
(;´_ゝ`) 「いやー、危うく消えるとこだったよ」
(´<_`;) 「狙ったとしか思えないタイミングだよな」
(;^ω^) 「おー……」
川;゚ -゚) 「うん、悪かった。別に狙ったわけじゃないからな」
大きく広がったブーン、若干小さくなった兄者と弟者の前で、私は不可抗力である事を力説する。
ブーンが飛んで行った先に水から上がろうとしていた兄者達がいたのは不運な偶然だったとしか言い様がない。
(´<_`;) 「それにしてはタイミングが良過ぎじゃね?」
川;゚ -゚) 「偶然だよ、偶然。お前達がいる事にすら気付いてなかったんだし」
偶然が兄者達の問題の解決を導いたが、時に偶然はマイナス方向に働くこともあるのだ。
そんな事は当たり前だが、実際目の当たりにすると偶然の妙には驚かされる。
川;゚ -゚) 「ブーンは大丈夫赤か?」
(;^ω^) 「お、ちょっとびっくりしたけど平気だお」
- 17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/25(日) 22:02:12.77 ID:5wQNAFB30
-
(;´_ゝ`) 「心配なら俺らの方をして欲しいとこだな……」
川 ゚ -゚) 「お前らはどうせ水に使ってりゃ元に戻るだろ」
(;´_ゝ`) 「わーい、すっごくぞんざい」
申し訳なく思ってはいるが、実際大した被害はなさそうだから兄者達は放っておく。
私は、ブーンに歩み寄り、全体を確認してみるがどこにも傷などはなさそうなので安心した。
(´<_` ) 「結果的に俺らが受け止めた形だったからな」
( ^ω^) 「お! ありがとだお」
嬉しそうに礼を言うブーンだが、弟者としては皮肉のつもりで言ったのだろう。
素直に礼を言われた弟者は苦笑を返していた。
川 ゚ -゚) 「ブーンは丈夫らしいしな、平気そうだな」
本人の話では身1つで大気圏突入を果たしたらしいぐらいの丈夫さだ。
この程度ではどうという事もないだろう。
- 18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/25(日) 22:04:31.41 ID:5wQNAFB30
-
( ´_ゝ`) 「で、クーちゃんは何やってたの? ブーン担いで」
何をと言われても、単にブーンを山まで運んでいただけだ。
傍から見れば遊んでいた様にでも見えていたのかもしれないが、それ以外の意図はない。
楽しそうな顔はしていたかもしれないが。
その経緯を説明し、再びブーンを掴もうとしたが、先ほどまでより明らかに重くなっている。
水分を含んでいるのだから、それも当然と言えば当然の話だ。
_,
川 ゚ -゚) 「ちょっと運べそうにないかな……」
(;^ω^) 「自分で歩いて行くからいいお」
(´<_` ) 「また吹っ飛ばされてもかなわんだろうからな」
_,
川 ゚ -゚) 「失礼な。同じ轍は踏まんよ」
とはいえ、私の腕力ではいささか無理があるので、同じ轍を踏まない為には断念するしかない様だ。
- 20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/25(日) 22:07:00.98 ID:5wQNAFB30
-
川 ゚ -゚) 「すまんな……」
( ^ω^) 「いいお、あとちょっとだし、歩いて行くお」
歩いてというよりは這っての方が正しい気もするが、自分はのんびり行くから先に行っていいと言うブーン。
一緒にのんびり行くかとも考えたが、却ってブーンに気を使わせそうな気もしたので大人しく従うことにする。
川 ゚ -゚) 「代わりにその2人を置いて行くから一緒に行くといい」
(*^ω^) 「お!」
(;´_ゝ`) 「いや、クーちゃん何言ってんの?」
(´<_`;) 「俺達は山に向かうとは一言も言ってねえ!?」
矢継ぎ早に異を唱える兄者達を黙殺し、ブーンにまたあとでと挨拶をして再びマシンに跨る。
丁度良い機会なので、兄者達はブーンと話して何かヒントでも掴んで欲しいものだ。
・・・・
・・・
- 22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/25(日) 22:09:16.49 ID:5wQNAFB30
-
(*゚ー゚) 「クー、おはよう、クー」
川 ゚ -゚) 「おはよう。……お前1人か?」
いつもの広場に向かうと、そこには嬉しそうに出迎える花一輪。
ツンやビロード達は見当たらない。
花に聞いてみてもよくわからないという答えだった。
川 ゚ -゚) 「まあ、その内来るだろう」
(*゚ー゚) 「クー、お話、お話」
川 ゚ー゚) 「何だ、また話が聞きたいのか? そうだな……」
これといって明確な目的は持たず、単純に人口密度の問題で人の集まる山に来ただけだ。
私は花の横に腰を下ろし、その頭というべき部分を撫でる。
当初は原因究明の手段として話し込んでいたのだが、私のたわいもない話の一言一言に、笑ったり驚いたり、
目まぐるしく表情を変える花に私自身も話すのが楽しくなっていた。
- 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/25(日) 22:12:06.71 ID:5wQNAFB30
-
川 ゚ -゚) (AA界に来てから随分話好きになったものだな……)
それほど愛想があったとは思わないし、どちらかと言えば寡黙な方だ。
聞き役に回る事が多く、それなりに親しくなった人間にしか気軽に話せてはいなかったと思う。
ブーンや花、それにワタナベやツン達、自分から話す事は増えたと思う。
仕事としての聞き込み調査として聞いてた部分もあったが、今はどうでもいいような話でも盛り上がれる。
川 ゚ -゚) 「こう、サングラスをかけてだな……」
(*゚ー゚) 「サングラス? どんなの?」
川 ゚ -゚) 「前に眼鏡は説明したよな? あれの黒いやつ。日の光が眩しくない様にかけるんだ」
(*゚ー゚) 「お日様見えない? お腹空く」
川 ゚ -゚) 「まあ、そうだな。……んでまあ、その眼鏡かけて、音楽鳴ると踊りだすんだ」
(*゚ー゚) 「踊る? こう?」
くねくねと葉を揺らす花。
こちらの言葉に反応している内に、最近は植物色より動物色、と言っては失礼かもしれないが、とにかくそちらが
強くなって来た様な気がしなくもない。
葉や茎を自分の意思で動かせているようだ。
- 24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/25(日) 22:15:12.78 ID:5wQNAFB30
-
川 ゚ー゚) 「そんな感じだな」
頭を振り、海草の様に揺らめく花の姿に私は噴出していた。
花は何故私が笑っているのかわからない様だったが、楽しんでいるのは理解したのかさらに全身をくねらせる。
川 ゚ー゚) 「あんまりやると折れそうだからその辺でな」
私は再び花の頭を撫で、優しく諭す。
花は大人しく動きを止め、私の顔を笑顔で見上げた。
川 ゚ -゚) 「しかし随分と器用に動かせるようになったな」
(*゚ー゚) 「動く、クー、一緒」
川 ゚ -゚) 「うーん、流石に一緒には動けんな。せめて歩けるようにならないと……」
どうやら花は私と一緒にいたい様で、以前から連れてって欲しいと言うことがあった。
好かれているのは素直に喜ばしい事だが、根っこからも養分を吸収しているであろう花を引っこ抜くわけにも
いかない。
植木鉢にでも入れて持ち歩くという事も考えはしたが、私は園芸に聡くないし、通常の植物と同じ扱いで
いいのかもわからない。
- 27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/25(日) 22:18:07.27 ID:5wQNAFB30
-
(*´へ`) 「クー、一緒、ダメ?」
川;゚ -゚) 「今はな、まだダメだよ。もうちょっとお前の事がわかるか、自分で歩けるようになったらな」
私がそう言うと、花は身体を揺すり、足、というか根っこを引っこ抜かんばかりに上体をそらす。
所々説明を人体に喩えてしまっているが、傍から見ているとそんな感じだ。
私は再びそれを止め、ワタナベの家に植物関係の本はあっただろうかと考えを巡らす。
あったとしても私には読めないのだが。
そんな話をしていると、山の奥の方から歩いて来るツンの姿が見えた。
急いでいない時は普通に歩く事の方が多いと以前に言っていた覚えがある。
ξ゚听)ξ 「おはよう、早いわね」
川 ゚ -゚) 「おはよう。ビロード達のとこ?」
私は挨拶と質問を立て続けにツンに浴びせる。
ツンは答える代わりに自分の後方を指差す。
(>< )( <●><●>)(*‘ω‘ *)
そこには横に並んでこちらに来るビロード達3人の姿があった。
- 29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/25(日) 22:20:50.63 ID:5wQNAFB30
- _,
川 ゚ -゚) 「まだあの調子なのか……」
一見すれば仲良く並んで歩いて来てる様だが、本来ならば縦に並ぶ3人だ。
未だ問題の解決には至ってないのだろう。
以前聞いたワカッテマスの話では、ビロードとちんぽっぽが全く会話をしないので、どうにも進展
し様がないという事であった。
そうみたいねと、さして興味なさ気に肩をすくめて言うツン。
ツンにしてみれば、理由がわかった時点で子供のケンカと割り切って問題視していない。
自分達の問題だろうし、時間が解決するものだと。
ツンの意見には賛成だが、時間の話で私には考えなければならない点がある以上、何かしら解決に至る
手助けはせねばならぬ所だ。
しかしながらどうにも上手くいかない。
どちらかと言えば、私も出来ないやつに、ダメだなお前はとストレートに言ってしまうタイプだ。
ビロードをフォローするのに向いているとは到底思えない。
だから、ツンに様子を見てくれるよう、さらに機会があれば助言してくれるように頼んではいる。
先の理由であまり乗り気ではない様だが。
- 30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/25(日) 22:23:01.81 ID:5wQNAFB30
-
ビロード達とも挨拶を交わし、当たり障りのない話を振る。
答えるのは専らワカッテマスで、他の2人はそれとなくお互いの様子を覗っているように見える。
意地の張り合いも既に2週間を越える。
ちんぽっぽはともかく、ビロードもこの空気に耐えられるほどの根性があったんだと逆に感心してしまう。
( <●><●>) 「最近は天気もいいですし、この山にいても大丈夫です。そうですよね、ビロード?」
( ><) 「……そうですね、雨だとこの山は水浸しですからね」
こうやってワカッテマスがフォローしているからもっている点もあるのだろうが。
ビロードもワカッテマスの振る話題にはだいぶ普通に答える様にはなって来た。
そう考えると、ビロードのワカッテマスに対するわだかまりはとけて来ているのかもしれない。
川 ゚ -゚) (あとはやはり……)
(*‘ω‘ *)
川 ゚ -゚) (こいつだろうな……)
- 32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/25(日) 22:25:45.86 ID:5wQNAFB30
-
つんと澄ました顔でそっぽを向いているちんぽっぽ。
ビロードが話しているときはあからさまに聞いていない素振りをする。
この距離だから聞こえないはずはないのだがら、聞きたくないというわかりやすい意思表示ではある。
( <●><●>) 「ここにはブーンもいませんし、雨だったらまた移動でしょうね。その時はお願いしますね」
(*‘ω‘ *) 「わかってるっぽ。お前1人ぐらい軽いっぽ」
(><;)
(;<●><●>) 「いや、2人ですよね?」
今度は逆にビロードが聞かないフリをするのだが、今の話題は流石にスルー出来ない様ではある。
緊急時はどうするつもりなのだろうか。
今の調子だとちんぽっぽはビロードを置いて行きそうだ。
川 ゚ -゚) (本当に緊急の場合は無理にでも連れて行くだろうが……)
雨で濡れるぐらいなら放置されるだろう。
しかしながら、例えば生命に関わるような危険な事が起こった場合はちゃんと連れて行くはずだ。
ちんぽっぽもビロードが本当は嫌いなワケではないだろうから。
- 35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/25(日) 22:28:42.41 ID:5wQNAFB30
-
そう考えると、何かしら急事に遭遇した方が問題解決の道が開けそうではあるが、出来れば穏便に済んで
欲しいとは思うのは人道上当然の事だろう。
川 ゚ -゚) 「そうそう、ブーンといえばこちらに来る途中で会ったぞ?」
ξ゚听)ξ 「ホント? あいつ、何やってんの?」
微妙に険悪になりかけた空気を拭う様に話題を変える。
反応したのはブーンと一番仲が良いツンだった。
川 ゚ -゚) 「いや、こっちに来ようとしてたよ」
最近皆が来なくてブーンが寂しがってた事を話す。
ツンは一瞬申し訳なさそうな顔を見せたが、すぐさま呆れたような顔を作り、高々2週間程度で情けないと
首を振って言う。
川 ゚ -゚) 「まあ、もうしばらくかかりそうだけどな」
ブーンの歩みではもう数日かかると思うと伝える。
私が多少引っ張ってきたから、距離は縮んではいるがと付け加えた。
川に落としかけた事は当然言わないが。
- 36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/25(日) 22:30:04.44 ID:5wQNAFB30
-
ξ゚听)ξ 「確かにあいつの足ならかなり時間かかりそうね……」
心配そうな顔を見せるツンだが、取り立てて危険はないだろうからさほど心配するような事はないはずだ。
一応、兄者達にも様子を見といてくれるよう頼んだ事だし。
川 ゚ -゚) 「まあ、気長に待っていればその内来るだろ」
心配なら迎えに行けばいいと私が言うと、ツンははっとした表情を見せた。
しかし、また一瞬でその表情は変わり、努めて平素の調子でツンは言う。
ξ゚听)ξ 「……別に心配ってわけじゃないけど、雨の時に居場所がはっきりしないのも考え物だからね」
だから迎えに行く、そう言いたいのだろう。
( <●><●>) 「それは確かにそうですね」
その意をわかっているのか、ワカッテマスがツンに同意する。
ビロードとちんぽっぽは、期せずして同時に頷いたが、本人達はそのことには気付かなかった様だ。
川 ゚ -゚) 「そうだな。まあ、一緒にいない理由はないだろうしな」
- 39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/25(日) 22:32:07.38 ID:5wQNAFB30
-
ξ゚听)ξ 「んじゃ、ちょっと言ってくるわね」
そう言うや否や逆立ちし、髪のバネを使って跳び出そうとするツンを私は引き止める。
川;゚ -゚) 「待った! 1人じゃない方がいいかもしれん」
ツンはいつかの様にブーンを頭に乗せて抱えてくるのかもしれないが、水を吸ってしまっているブーンは重い。
1人だと大変なんじゃないだろうか。
一緒にいる2人はどうせブーンには触れないだろうし。
ζ(。▽。ζ 「どうして? 別にブーン1人ぐらい……」
川に落としたとは言い辛いし、正確には川ではないのでその辺りはぼかし誤魔化し、何とかちんぽっぽとワカッテマスも
一緒に行く流れに持っていった。
ビロードにも一緒に行動して欲しかった所だが、折り合いは付けられなかった。
ζ(。▽。ζ 「それじゃ、行って来るわね」
(*‘ω‘ *) 「ぽ!」
- 41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/25(日) 22:34:04.73 ID:5wQNAFB30
-
ツンとちんっぽっぽは同時に飛び跳ねる。
大きく跳ねるツンと、小さいながらも高速でそれを追いかけるちんぽっぽ、プラスワカッテマス。
瞬く間に3人の姿は見えなくなってしまった。
川 ゚ -゚) 「んじゃ、私はギコのとこに行って来るから、お前らはここでお留守番な」
私は一緒に行きたいと言う花をなだめ、ビロードを頼むと告げて2人に手を振って歩き出す。
(*´へ`) 「クー、一緒、行きたい」
(;><) 「僕がお願いされる方じゃないんですか?」
承服しかねている顔の花と、扱いに憤慨しているビロードの声を背に山の奥に進む。
からかい過ぎるのも良くないが、残された2人でお互いに不平不満を話し合ってくれれば良いかなと思っての事だ。
解決するのは私でなくても良いのだ。
すっかり歩き慣れた山道を進み、ギコの元へ向かう。
こちらはこちらで、相変わらずのだんまりだ。
- 43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/25(日) 22:36:15.93 ID:5wQNAFB30
-
世間話には応じるが、肝心な事は黙秘を貫く。
今の所、一番厄介な相手かもしれない。
川 ゚ -゚) 「おはよう」
(,,゚Д゚) 「今日も来たのか。ご苦労なことだな」
_,
川 ゚ -゚) 「そう思うならさっさと話して楽になれ」
扱いには慣れた気もするが、一筋縄ではいかない相手だ。
人生経験豊富な上、頭も良い。
教訓めいた話をさせれば一角のものだ。
(,,゚Д゚) 「で、今日は何の……まあ、聞くまでもないか」
直接本人の事を聞いてもどうせ答えてはくれない事はわかっている。
だから、他の原因かもしれないやつらの話や進捗状況等の話を振り、相談に乗ってもらうことにしている。
そのついでに、うっかり口を滑らすような事にも期待しているのだが今の所ガードは固く、目論見通りには
いっていない。
- 46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/25(日) 22:38:33.11 ID:5wQNAFB30
-
川 ゚ -゚) 「そういえばブーンもこっちに向かってるんだ」
(,,゚Д゚) 「ブーンというと……あの?」
白い、とギコが聞くので白てふわふわの、と私は答える。
ついでに兄者達もこちらへ向かって来てるだろうから、期せずしてこの山にほとんどの人間が集まる事になる。
私の知っている限りではワタナベ達を除く全員だ。
川 ゚ -゚) 「全て私自身が解決する必要はないからな」
結果的に目的を果たせればそれでいい。
誰が悩みを解決してもよいのだ。
私は先ほど考えていた事をギコに話す。
ギコは話を最後まで黙って聞き終わると、感心した様に頷いた。
(,,゚Д゚) 「その通りだな。……お前さんは何というか、頭が良いな」
川 ゚ -゚) 「当たり前の事だろ」
- 47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/25(日) 22:40:04.05 ID:5wQNAFB30
-
さほどすごい発想というほどでもない。
誰でも思いつくようなごく当たり前の考えだ。
しかしギコはそういう意味ではないと言葉を足す。
(,,゚Д゚) 「考え方が柔軟というか、気負ってないって事さ」
川 ゚ -゚) 「そうか?」
強固な使命感がない、といってしまっては失礼かもしれないが、柔軟に最善の道を探す余裕がある様だとギコは言う。
何となく言わんとせん事はわかったが、多少心外な部分もあるし、褒め過ぎな部分もあると思う。
少なくとも、使命感というか、この仕事をきっちりとこなして、外務省の意地を見せ付けたいという私欲に近い思いはある。
同時に、仕事を越えてこいつらを何とかしてやりたいという気持ちもある。
川 ゚ -゚) 「どっちが大きいかはわからんが、私は自分の為にやっている。ただそれだけだ」
(,,゚Д゚) 「自分の為……か」
私の言葉に、変わったやつだと呆れた様にギコは笑った。
私にしてみればごく当たり前のことだから、変わったやつ扱いは心外なのだが。
他人の為と言った所で、結局その他人の為に何かをしたいのは自分なのだから。
- 48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/25(日) 22:42:13.92 ID:5wQNAFB30
-
私の少々不機嫌そうな顔に気づいたギコは、別に貶したわけじゃないと取り繕う。
川 ゚ -゚) 「気にしてないからいいさ。それよりも……」
(,,゚Д゚) 「俺の話はいいさ。俺のことは気にするな」
_,
川 ゚ -゚) 「別にお前を気にしてるわけじゃない」
ギコの話は聞きたいのは、単純に私の好奇心を満たしたいだけなのと、他の人間の悩みの解決のヒントになるかもしれないからだ。
私が自分の為に知りたいだけだ、そううそぶいてみた。
(,,゚Д゚) 「他の人間の事は俺も考えてやるよ」
川 ゚ -゚) 「自分のことを優先しろよ」
私の知る限りではギコの悩みが最も古く、この星に着く以前からあると見ている。
ということは、一番リミットに近い可能性があるのだ。
(,,゚Д゚) 「大丈夫だ。……まだその時じゃない」
- 50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/25(日) 22:45:17.89 ID:5wQNAFB30
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私の考えを見透かしたのか、ギコが明後日の方を見て呟く。
本当に大丈夫なら、こちらの目を見て言えと言いたいのだが、今はその根拠が気になった。
川 ゚ -゚) 「わかるのか?」
(,,゚Д゚) 「……」
この場合の無言は肯定と見るべきだろうか。
ギコはこちらを見ず、黙って遠くを見つめている。
もし何らかの兆候があるのなら、それは是非とも聞きたい点だ。
既に開放された兄者からは、そんな話は聞いていない。
川 ゚ -゚) 「おい、ギコ──」
<「クー!」
問い詰めようとした私の声は、私の知る誰かによく似た声により遮られた。
私の背の方から届いてきたそれは、この場には絶対来れないはずの声に聞こえた。
- 53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/25(日) 22:49:08.70 ID:5wQNAFB30
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川;゚ -゚) 「おま!? 何で……」
(*゚ー゚) 「クー!」
(;><) 「ちょ、待ってくださいなんです!」
振り向くとそこには、こちらに走ってくる花の姿と、それを追うビロードの姿が見えた。
走ってくる花という時点でかなりシュールな光景だ。
2本の根、というよりは足そのものに見えるそれで、花は走っている。
川;゚ -゚) 「どうして……」
聞くべきことは多くあったがあまりの驚きで私は言葉を出せずにいた。
そんな私の目の前に、何かが降り立つ。
┏(^o^ )┓ スタッ
┃┃
それが花火だと気づいた時には、花火は私が歩いて来た方、すなわち花達が走って来ている方へ走り出していた。
第話18 了 〜 偶然に導かれ、必然に紐を解く 〜
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