- 2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/12(土) 22:10:59.57 ID:n/T0QA9fO
-
ダイ19ワ セカイ ノ ナカ デ ボク ガ デキル コト
川;゚ -゚) 「ちょ、待て!」
慌てて伸ばした手は空しく空を切り、花火はいつかの様に一直線に走り出す。
┗(^o^ )┓
┏┗
毎回同じコースを走る習性を持つらしい花火。
どこか間の抜けた表情を変えることもなく、ただ一直線に走る。
私が通って来た道と同じ道を。
今花達が走って来るその道を。
川;゚ -゚) 「おい、止まれ!」
こちらの言葉を理解出来ないのか理解しても相手にしないのか、花火は私の言葉に何の反応も示さず走っていく。
ギコの話では生存本能のみで生きている様ではあったから、それは当然の事なのだろう。
- 5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/12(土) 22:13:40.38 ID:n/T0QA9fO
-
私は声をかける対象が間違っていたことにすぐさま気づき、花とビロードに向かって叫ぶ。
川;゚ -゚) 「お前らそこから離れろ!」
(;><)
(*゚ー゚)
その言葉に反応し、足を止めたビロード。
しかし、何のことかわからず、その場で首を傾げている様に見える。
花はそのまま足を止めずにこちらへ向かっている。
川;゚ -゚) 「バカ──!」
私も走り出してはいたが、この距離から追い付くのは厳しい。
追いついたところで、あれを私に止められるかもわからない。
あれがどういう仕組みで爆発しているのかもわからないので、捕まえること自体危険かもしれない。
私の世界でいう所の、花火の爆発を間近で見たことはないが花にぶつかって、もしくは花の近くで爆発されたら、あの小さな花では
どうなるか簡単に想像が付く。
- 7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/12(土) 22:15:13.59 ID:n/T0QA9fO
-
川;゚ -゚) 「間に合え──」
追いすがる私の視界から花の姿が消えた。
(*゚д゚)(;><)
実際には消えたわけではなく、花の前に立つビロードの姿で見えなくなっただけだった。
川;゚ -゚) 「何を──?」
ビロードは私が何を言っているのか気づいた様だ。
しかし、取った行動は私が指示したそれではない。
花の前に立ちはだかり、花火から守ろうとでもいうのだろうか。
しかし、状況は何も変わっていない。
花がビロードに変わったところで、危険なことには変わりはない。
いくらビロードが花よりも丈夫だとしても、あの距離での花火の爆発を受けて無事とは到底思えない。
川;゚ -゚) 「バカ! 花を抱えて逃げろ!」
- 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/12(土) 22:18:43.43 ID:n/T0QA9fO
-
(;><) 「!」
私の怒鳴り声に、ビロードは一瞬身体を震わせると、振り向いて花を拾い上げた。
(><;) ┗(^o^ )┓
┏┗
しかしあまりにもそれは遅かった。
既に花火はビロードの背に迫っている。
川;゚ -゚) 「ビロード!」
その時、何かが私の上を凄まじい速さで通り抜けた。
その何かは一足飛びに飛び跳ね、ビロードの前に着地する。
そして──
- 11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/12(土) 22:20:33.63 ID:n/T0QA9fO
-
ドガッ!)^o^ )┓
(,,゚Д゚)∩┃┃
ティウン ティウン
◎
◎ ◎
◎ ◎ ◎
◎ ◎
◎
花火を空へと殴り飛ばした。
川;゚ -゚) 「ギコ!?」
全身が岩の様な甲殻にも見える灰色に包まれたギコは、私より一回り大きく、猫という様なかわいげのある
見た目ではない。
本人の言では元々は研究職に従事していた様な話ではあったが、どちらかと言えば格闘家や軍人の方が
しっくり来るがっしりした体格だ。
- 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/12(土) 22:22:14.31 ID:n/T0QA9fO
-
(,,゚Д゚) 「……」
(;><) 「そ……その……」
ギコはゆっくりと振り向き、ビロードと向かい合う。
ビロードは何が起きたのかは正しく理解出来ていない様だが、自分が助けられた事だけはわかったのか、震えながらも口を開く。
(;><) 「た、助けてくれてありが──」
しかし、ギコはそんなビロードの胸倉を掴み、自分の目の高さまで掴み上げる。
(;><) 「ヒッ!?」
(,,゚Д゚) 「馬鹿かお前は?」
ギコに恫喝され、すくみ上がるビロード。
ギコが何に対して怒っているのかわからないが、とにかく止めるべきかと私も走り寄る。
しかし、ギコはビロードに見えない様に反対側の手を後ろに伸ばし、私に止まれという合図を送った。
川;゚ -゚) 「ギコ?」
- 14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/12(土) 22:24:39.34 ID:n/T0QA9fO
-
ギコの意図はわからないが、ちらりとこちらを覗き見た目が自分に任せるよう言っていたので訝しみながらも立ち止まる。
その冷静な所作から見る限りは、単に激昂しているわけではない様だし、ここは様子を見ることにした。
(;><) 「え? その……」
(,,゚Д゚) 「何故大人しく逃げなかった?」
(;><) 「え?」
ギコが同じ質問を、今度は幾分ゆっくりと告げる。
ビロードにその意味は伝わった様だが、ビロードは答えきれず、ただおろおろしている。
(,,゚Д゚) 「お前は自分の──」
(#‘ω‘ *) 「お前、何してるっぽ!」
尚も詰め寄るギコの声を遮り、上空から何かが飛来して来た。
あまりの速さに姿は捉え切れなかったが、その声からしてちんぽっぽであることには間違いない。
ちんっぽっぽは上空からギコめがけて急降下し、その身体を思い切り踏みつけた。
- 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/12(土) 22:26:42.26 ID:n/T0QA9fO
-
(,,゚Д゚) 「チッ──」
(;‘ω‘ *) 「ぽ!?」
しかし、岩猫と呼ばれるギコの身体は相応に強度を誇っていたのか、わずかに姿勢を崩すだけに止まった。
それでも、ビロードを掴んだ手を離させるには十分であったようだ。
川;゚ -゚) 「お前ら、ちょっと待て!」
地面に転がるビロード。
睨み合うちんぽっぽとギコ。
一触即発の空気の中、落ち着いた声が響く。
(;<●><●>)「振り落とされたのはわかってます」
振り落とされた場所から走って来たのか、額に汗を浮かべたワカッテマスがビロードのもとに歩み寄る。
ちんぽっぽとギコの視線がワカッテマス達の方に向いている隙に、私はギコ達の間に入り込んだ。
川 ゚ -゚) 「待てと言ってるだろうが。少し落ち着け。恐らく誤解がある」
(#‘ω‘ *) 「邪魔すんなっぽ! こいつがビロードに……」
- 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/12(土) 22:28:47.64 ID:n/T0QA9fO
-
川 ゚ -゚) 「だからそれが誤解だと……っておい、ギコどこへ行く?」
気付けばいつの間にかギコが元の岩場に戻ろうとしているのが見えた。
私が睨み付けると、やれやれといった具合に肩をすくめ、その場に立ち止まった。
一応事態の収拾には付き合ってくれるらしい。
川 ゚ -゚) 「まずはビロードの話……の前に、ちょっと待ってくれな」
なし崩し的に私が全て説明せねばならぬ流れになってきた所で、私は先ほどから姿が見えないもう1人の当事者を探す。
ぐるりと周りを見回すと、道の端の方、木の陰に身を隠し、こちらを伺っている姿が目に入った。
川 ゚ -゚) 「そこにいたか……」
(;゚ー゚) 「!」
私が近付くと、花は慌てて木の陰に隠れたが、そこから逃げ出そうとはしなかった。
しゅんとうなだれ、申し訳なさそうな顔をしている所を見ると、どうやら自分が悪い事をしたという事は理解しているらしい。
川 ゚ -゚) 「どこも怪我はしてないか?」
(*´へ`) 「平気、どこも平気」
- 18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/12(土) 22:30:18.27 ID:n/T0QA9fO
-
川 ゚ -゚) 「そうか、良かった」
私は花をそっと掴み手の平に乗せる。
恐らく根っこと思われる部分が二股に分かれ、足の様なパーツを形成している。
今までも時折、歩きたいと言い出しては自分で自分を引っこ抜こうとしていた事はあったが、まさか地面の中はこういう風に
なっていたとは知らなかった。
元からなのか、それともこの短期間で変化したのかわからないが、この足でここまで走って来た様だ。
川 ゚ -゚) (これも進化というのかな?)
だとしたら恐ろしく早い進化速度だが、それだけ必要性に迫られたのか、真偽の程は私にはわからない。
ただその動機は、私に付いて行きたいという思いなので、私としては怒るに怒り辛い所である。
川 ゚ -゚) 「前に話したよな? もし歩けるようになっても、周りに気を付けなきゃダメだと」
(*´へ`) 「うん、クー、話した。私、聞いた」
ゆっくりと諭すように話す私に、いっそう悲しげな顔をする花。
少しかわいそうになってきたが、ちゃんと怒ってあげるのもやさしさかもしれない。
- 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/12(土) 22:32:32.99 ID:n/T0QA9fO
-
川 ゚ -゚) 「歩けるようになって浮かれていたのはわかるが、ちゃんと周りは見ないとダメだぞ?」
(*´へ`) 「うん……」
川 ゚ -゚) 「さあ、後は皆に謝らないとな」
無言で頷く花を抱えたまま、ギコ達の所へ戻る。
いつの間にかツンとブーン、それに兄者と弟者の姿が見える。
状況が今一つ掴めないのか、ツンは不思議そうな顔をして、説明しろとばかりに目で訴えかけるが、私はそれを片手で制し、
まずはビロードの前に向かう。
川 ゚ -゚) 「ほら、助けてもらったビロードにちゃんとお礼を言うんだ」
(*´へ`) 「うん。ビロード、ごめん、ありがとう」
( ><) 「どこも怪我してないんですか? 無事なら良かったんです!」
同じ様に落ち込んでいたビロードだが、花が無事なのを見ると顔をほころばせる。
よくやったと褒めてあげたい所ではあるが、ビロードにも注意は必要だ。
しかし、その注意をするのは多分私の役目ではない。
- 20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/12(土) 22:35:19.23 ID:n/T0QA9fO
-
川 ゚ -゚) 「よし、お前も来い」
(;><) 「わわ!?」
ビロードの首根っこを掴み、猫のようにぶら下げて今度はギコの方に向かう。
じたばた暴れていたビロードだが、ギコの前に着くと、ぴたりとその動きを止めた。
川 ゚ -゚) 「ほれ。言う事はわかってるな?」
(;><) 「えっと……その……」
(,,゚Д゚) 「……」
(*´へ`)( ><) 「ごめんなさい。助けてくれてありがとう」
2人そろって謝る姿に、ギコはため息を1つ吐いた。
ビロードに先程の話の続きをするつもりなのかもしれないが、少し待てと目で合図を送っておいた。
川 ゚ -゚) 「というわけなんだが……わかったかな?」
- 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/12(土) 22:38:05.32 ID:n/T0QA9fO
-
(;‘ω‘ *) 「ぽ……」
全てを説明せずとも大体の話の流れはわかってくれたらしい。
気まずそうな顔でちんぽっぽがギコの前に跳ねて来た。
(;‘ω‘ *) 「勘違いして悪かったっぽ」
(,,゚Д゚) 「……気にするな」
( <●><●>) 「これにて一件落着なのはわかってます」
_,
川 ゚ -゚) 「お前、全く役に立ってないのに急に出てくるなよ」
私はワカッテマスを押しのけ、ビロードをギコの前に下ろす。
まだ全てが解決したわけでなく、話さなければならない事はいくつもあるが、まずはギコの話を聞く事にする。
(,,゚Д゚) 「……いや、もういいだろ」
_,
川 ゚ -゚) 「途中まで話したんだ。最後までちゃんと話せよ」
今まで全くあの岩場から出て来ようととしなかったギコが動いたのだ。
ビロードに対して見せたあの怒りも、何か思うところがあっての事だろう。
私は、話し辛いなら2人で話せと後方を指差す。
- 22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/12(土) 22:41:57.57 ID:n/T0QA9fO
-
(,,-Д-) 「……ハァ。いや、ここでいい。こいつだけに聞かせる話じゃないしな」
深々とため息を吐いたギコは、その視線をビロードからちんっぽっぽ、そしてワカッテマスの方へ移す。
つまりはこの3人に聞けと言う事なのだろう。
私は花を肩に乗せたまま数歩さがった。
(,,゚Д゚) 「何であんな無茶をした?」
無茶、それは花をかばおうとあの場に止まった事を指すのだろう。
あれに関しては、明らかに判断ミスだが、行動の動機は言われずとも推測が出来る。
(;><) 「えっと……花さんを守らなきゃと思ったんです」
(,,゚Д゚) 「だろうな。しかし、あれは無茶だった」
(;><) 「はいなんです……」
(,,゚Д゚) 「何故、自分に出来ない事をしようとした?」
(;><) 「花さんを見捨てるわけには……」
(,,゚Д゚) 「なら何故そいつを抱えて逃げなかった?」
(;><) 「それは……」
- 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/12(土) 22:44:19.49 ID:n/T0QA9fO
-
焦りからの判断ミス、そう片付けてしまう事も出来るだろうが、そうでないとギコは踏んだ様だ。
理由は恐らく、ここ最近ビロードたちの間で起こっている問題。
どうやら私が相談した内容をただ漠然と聞いていただけではないらしい。
(,,゚Д゚) 「自分が何でも出来ると思ったか?」
(;><) 「そんなこと……」
(*‘ω‘ *) 「その辺にして欲しいっぽ」
尚もビロードを責めるギコを止めたのは意外にもちんぽっぽだった。
ちんっぽっぽは俯くビロードを一瞥し、ギコに歩み寄る。
(*‘ω‘ *) 「こいつはまだガキで、間違う事もあるっぽ」
(,,゚Д゚) 「だろうな」
(;><) 「ぼ、僕は子供じゃ──」
川 ゚ -゚) 「そういう所が子供だと言われてるんだよ」
そろそろちゃんと言い聞かせるべきだろう。
駄々をこね、意地を張って他人の話を聞こうとしないその態度が子供なのだと。
- 24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/12(土) 22:47:04.79 ID:n/T0QA9fO
-
(;><) 「で、でも、僕だってちゃんと出来るんです!」
必死に言い張るビロードに誰も返事をしない。
そうまで子供である事を認めない理由は恐らく……。
(,,゚Д゚) 「出来る事もあれば出来ない事もある。それがわからないお前は子供だよ」
それでもギコは強く言い放つ。
それが大人の役目だと言わんばかりに。
何も言い返せないビロードに、ギコは言葉を続ける。
(,,゚Д゚) 「……自分が守られている事に気付いてたんだろ?」
(;><) コクッ
(,,゚Д゚) 「だから、それが嫌で自分で何でも出来る様になろうとした」
(;><) コクッ
(*‘ω‘ *) 「……」
( <●><●>) 「……」
- 25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/12(土) 22:50:10.56 ID:n/T0QA9fO
-
ギコとビロードのやり取りを、この件の当事者であるちんぽっぽとワカッテマスは何も言わずに聞いている。
その顔には少なからず動揺の色が見られる事から、ビロードが守られている事に気付いていた事を知らなかった
のかもしれない。
(,,゚Д゚) 「……」
考え事に耽っていると、いつの間にかギコの目がこちらに向けられている事に気付く。
あとはお前がやれと言わんばかりの視線に、私は1つ肩をすくめた。
川 ゚ -゚) (そこまで話したなら最後まで話せばいいのに……)
とはいえ、これは私がやるべき仕事だ。
ギコもそう言いたいのだろう。
仕事を抜きにしても何とかしてあげたいのは山々なので、望む所ではあるが。
川 ゚ -゚) 「なあ、ビロード」
( ><) 「はいなんです」
川 ゚ -゚) 「お前は何の為に……いや、誰の為にそうしようとしたんだ?」
(;><) 「それは……」
- 26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/12(土) 22:53:28.64 ID:n/T0QA9fO
-
数歩ビロードの方へ歩み寄り、声をかける。
答えを聞くまでもなく、ビロードが何の為、誰の為にそうしたかったのかはわかっている。
( ><) 「……ちんっぽっぽちゃんと、ワカッテマス君に迷惑をかけない為なんです」
(*‘ω‘ *)
( <●><●>)
予測は十分に出来たはずのビロードの答えに、ちんぽっぽとワカッテマスは何も言わずただ私達の方へ視線を
向けたまま立ち尽くす。
川 ゚ -゚) 「なら何で、お前はその2人とケンカしてたんだ?」
2人の為にがんばろうとしたのに、その2人とケンカしていては本末転倒だ。
私の言葉にビロードは力なくうな垂れ、何も言えずにいる。
川 ゚ -゚) 「お前がどうしたかったのかはわかってる。でも、その為に本当に大切な事を忘れてしまったら、意味がないだろ?」
(;><) 「僕は……」
(*‘ω‘ *) 「もういいっぽ」
- 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/12(土) 22:56:24.67 ID:n/T0QA9fO
-
私とビロードの間に、ゆっくりとちんぽっぽが歩み寄る。
ちんぽっぽは足を止め、こちらに向き直り深く頷いて見せた。
(*‘ω‘ *) 「色々手間かけさせたっぽ。すまなかったっぽ」
川 ゚ -゚) 「いや、手間とかそういうのはいいんだ」
ただ私は、3人に仲直りして欲しかっただけなのだから。
そう言って軽く笑って見せると、ちんぽっぽは再び頷いた。
(*‘ω‘ *) 「随分と間の抜けた話しっぽね」
川 ゚ -゚) 「当事者は意外と気付かぬもんさ」
( <●><●>) 「全くですね」
ワカッテマスのその言葉がどちらに向けたものかはわからないが、私もちんっぽっぽもワカッテマスを軽く睨み付ける。
(*‘ω‘ *) 「頭脳労働担当ならさっさと気付けっぽ」
川 ゚ -゚) 「全くだ」
( <●><●>) 「ひどく理不尽なのはわかってます」
- 29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/12(土) 22:58:53.05 ID:n/T0QA9fO
-
ビロードが何故自分でやる事に拘っていたかの理由は既に知っていた。
偶然と言うか愚痴を聞かされた花からの話によって。
でも、その根底にあった気持ち、自分を認めてもらいたい、迷惑を掛けたくないという気持ちの発端が自分達の為である事に
気付けなかった。
気付けなかった理由はそれぞれ違うのだろう。
しかし、どちらもビロードを子供扱いし過ぎていた。
実際見た目も考え方も子供ではあるのだが、それでも子供なりに自分で考えどうするべきか悩んだのだ。
その気持ちをないがしろにせず、間違った時に正してやる事が2人の本来やるべき事だった。
ワカッテマスは肩をすくめ、ビロードの方へ向き直る。
同じ様にちんっぽっぽもビロードの方へ向きを変えた。
(;><) 「えっと……その……」
(*‘ω‘ *) 「ビロード」
(;><) 「は、はいなんです」
- 30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/12(土) 23:00:08.05 ID:n/T0QA9fO
-
(*‘ω‘ *) 「すまなかったっぽ」
( <●><●>) 「すみませんでした」
(;><) 「え?」
(*‘ω‘ *) 「私達はお前を子ども扱いし過ぎてたっぽ」
( <●><●>) 「実際子供ではあるのですが、それでももう少し、扱い様はあったと思います」
(;><) 「え……あの……その……」
突然の事に慌てふためくビロード。
きょろきょろと辺りを見回し、その視線が私の方で止まった。
_,
川 ゚ -゚) 「子供じゃないなら自分で考えて話せ」
私は冷たく言い放ち、そっぽを向いてみせた。
さらに慌てるビロードだが、何も言わずに待っているちんっぽっぽとワカッテマスの方へ目を向け、おずおずと口を開く。
- 32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/12(土) 23:02:19.45 ID:n/T0QA9fO
-
(;><) 「ぼ、僕の方こそごめんなさいなんです……」
川 ゚ -゚) 「何故謝る?」
(;><) 「そ、それは……」
なおも冷たく問う私に、再びビロードは口ごもる。
見かねたちんっぽっぽが割って入ろうとしたが、それをワカッテマスがやんわりと制す。
どうやら私の意図に気付いてくれているらしい。
私も好きで冷たく当たってるわけではないのだ。
このまま周りの雰囲気に流されたビロードも謝って、なし崩し的に一件落着としてしまうのはどうかと考える。
何故自分がそうしたのか、何故自分が謝る必要があったのかしっかりとわかって欲しいと思う。
(;><) 「ワカッテマス君もちんっぽっちゃんも、僕が何かしようとするとすぐ失敗するとかバカにして……」
(*‘ω‘ *)
(;><) 「それで、僕がそれを無理にでもやろうとするとやっぱり失敗して……」
( <●><●>)
- 33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/12(土) 23:04:11.16 ID:n/T0QA9fO
-
(;><) 「それでまたバカにされて、でも、いつもちゃんと失敗した事を助けてもらってたんです」
(;><) 「それなのに僕は……」
言葉を切り、目を伏せるビロード。
ちんぽっぽとワカッテマスは何も言わずビロードの言葉を待っている。
私もそれに倣い、黙って待っているが、結局の所、ちんっぽっぽやワカッテマスの口の悪さが原因なのではと言ってしまっては
身も蓋もないだろうか。
川 ゚ -゚) (口が悪いと言うよりは素直じゃないと言うべきかな)
ワカッテマスのは単に理屈っぽく回りくどいだけかもしれないが、ちんっぽっぽのそれは多少なりと照れ隠しの部分もあると
見ている。
先ほど真っ先にギコの前に飛び出した事からも、誰よりもビロードの事を心配しているのは明らかだ。
素直じゃないちんっぽっぽの照れ隠しの物言いを、素直過ぎるビロードが真に受け過ぎた事が問題を膨らませたのだろう。
( ><) 「僕は意地になってたんです」
顔を上げ、再び話し始めるビロード。
自分の否を認め、反省する事は子供から脱却するためには必要な事だ。
- 34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/12(土) 23:06:16.98 ID:n/T0QA9fO
-
( ><) 「出来ない自分が嫌で、2人に迷惑かける自分が嫌で」
( ><) 「それで無理して、失敗して、けなされて、それでまた意地になって、でも出来なくて……」
( ;;) 「それで、僕は……、僕は……」
(*‘ω‘ *) 「クー」
川 ゚ -゚) 「うん、わかってる。すまなかったな」
話す内に浮かんでいた涙がビロードの目からこぼれた所で再びちんっぽっぽが間に入る。
やはり過保護だとは思うが、頃合だろう。
私は頷いて数歩後ろに下がった。
( <●><●>) 「いえ、謝る必要はありません。お手数をおかけしました」
ちんっぽっぽと同じ様にワカッテマスもビロードの方に歩み寄り、私に頭を下げた。
こいつももうちょっと柔らかい応対が出来れば、ちんっぽっぽとビロードの間がこうもこじれる事はなかったと思うが、
ワカッテマスもまた、色々と学ばなければならないという事なのだろう。
誰も彼もいつもいつも最善の行動が取れるわけでもないのだ。
- 35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/12(土) 23:08:07.74 ID:n/T0QA9fO
-
あとはちゃんと3人で話せば分かり合えるだろう。
もともとそれぞれがそれぞれを思い、行動していた上でのすれ違いだ。
それがわかっていれば、きっと溝は埋まる。
川 ゚ -゚) 「ひとまずこれでよし、かな?」
(*゚ー゚) 「ビロード、仲直り」
誰に言うでもなくつぶやいた言葉だが、返事は間近から聞こえて来た。
そういえば先ほどからずっと私の肩に乗りっ放しだった。
花はほとんど重さを感じさせない軽さだ。
川 ゚ -゚) 「そういえばまだ、お前の問題があったな……」
(*゚ぺ) 「問題? 私、問題?」
首を傾げる花に、お前が悪いわけじゃないと言い含め頭(?)を撫でる。
よくよく考えたら、花を撫でても良いものかわからなかったが本人は嫌そうな顔はしなかったので問題ないのだろう。
川 ゚ -゚) 「植物学は専門外だしな……」
植物ではなく、宇宙生物と言った方が相応しいのかもしれないが、どちらにせよ、私に花の事を調べる事は難しい。
別に歩けたなら歩けたので構わないのだが、このままで大丈夫なのかという不安もある。
- 37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/12(土) 23:10:04.62 ID:n/T0QA9fO
-
花が歩いているその足は、本来足ではなく根のはずだ。
植物ならそこから水分を吸収したりと役割がある。
今の様に私の肩の上に乗っていて大丈夫なのかはわからない。
花本人に聞いても首をさらに傾げるだけで答えは返って来ない。
時々水に浸してやる程度でいいのだろうか。
川 ゚ -゚) 「水……そういえば」
水という言葉で1つ思い当たった。
あいつは確かそれなりに知識を有していたはずだ。
川 ゚ -゚) 「兄者、ちょっと頼む」
( ´_ゝ`) 「ん? どうしたの、クーちゃん」
空気を読んだのか、先ほどからずっと黙って様子を伺っていた兄者に声をかける。
全員集合に近いこの状況で全く互いを紹介してないのだが、普段から兄者達にはこちらの状況を相談していたので
この場にいる面々については理解出来ているだろう。
兄者はふよふよと身体を揺らしながらこちらに近付いて来る。
- 38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/12(土) 23:12:13.88 ID:n/T0QA9fO
-
川 ゚ -゚) 「いや、こいつの事なんだが」
(*゚ー゚) 「こいつ? どいつ?」
( ´_ゝ`) 「ああ、この子が例の花ちゃんね」
私は花に兄者を紹介し、兄者には花が歩けるようになった経緯を話す。
経緯といっても推測だが、普段から歩こうとしていた事も踏まえて兄者に説明した。
( ´_ゝ`) 「なるほどねえ……」
(*゚ー゚) 「よろしく、兄者、よろしく」
( ´_ゝ`) 「ああ、よろしくね、花ちゃん」
川 ゚ -゚) 「で、どう思う?」
私の問いに眉をひそめ、考え込む兄者。
宇宙は広いと前置きをし、そういった事例は聞いた事がないと言う。
( ´_ゝ`) 「前にも少し話したかもしれんが、話したりと意思を持った植物は他に例がないわけじゃない」
ある程度身体(便宜上そう呼んでおく)を動かせる植物もいると兄者は言う。
- 40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/12(土) 23:14:29.57 ID:n/T0QA9fO
-
( ´_ゝ`) 「ただ、意思を持ち自走する植物は例がないな……」
川 ゚ -゚) 「そうなのか?」
( ´_ゝ`) 「その場合は恐らく発見時に動物に分類されるだろうからね」
川 ゚ -゚) 「なるほど……」
兄者の言い分は至極最もだった。
意思を持ち、話す段階で植物とは違う分け方をされる場合もあるからと兄者は言う。
( ´_ゝ`) 「何にせよ、前例から調べる事は無理だな、すまない」
川 ゚ -゚) 「やはり1つずつ確かめていくしかないか。ちょっと失礼」
(*゚ー゚) 「?」
( ´_ゝ`) 「?」
私は花を掴み、肩から離す。
そしてそのまま、足の部分を兄者に付けてみた。
(;´_ゝ`) 「ちょ? 何してんの? 吸われてる!? 何か吸われてる!?」
川 ゚ -゚) 「おお、やはりそういう機能は残ってるのか」
- 41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/12(土) 23:18:02.31 ID:n/T0QA9fO
-
私は花を兄者から離し、自分の肩に戻した。
ブーンに触れた時も兄者はブーンに吸われていたのでひょっとしたらと思ったが、やはりその身体の構成の大半が水である
兄者からは吸収可能のようだ。
しかし、肩に戻した花はあまりいい顔をしていなかった。
(*゚ぺ) 「まずい、お水、まずい」
川 ゚ -゚) 「そりゃすまなかったな」
(;´_ゝ`) 「え? 何それ?」
純粋な水とは少し異なるのか、雨の発生源であるこの山の水の方が綺麗なのか、兄者は花のお口に召さなかったらしい。
私は花に謝罪し、兄者に今の行動の意図を説明する。
(;´_ゝ`) 「確かに、植物の生命活動の維持には水は必須だろうな」
恐らく人でいう所の皮膚呼吸の様に自動的に吸収しているのかもしれないと兄者は言う。
川 ゚ -゚) 「じゃあ、時々水に浸けてやれば大丈夫かな?」
(*゚ー゚) 「大丈夫、お水、気持ちいい」
( ´_ゝ`) 「それでいいと思うよ。たまに地面に置いてやれば自分で何とか出来──」
- 42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/12(土) 23:21:19.14 ID:n/T0QA9fO
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(,,゚Д゚)
川 ゚ -゚) 「ギコ?」
気付けばいつの間にかギコが私の傍に来ていた。
その目はまっすぐに私の方、いや、私の肩の方に向けられている。
川 ゚ -゚) 「こいつがどうかしたか?」
自分の左肩、花を指差しギコに問う。
しかしギコはこちらを一瞥もせず、黙って花を見続けている。
_,
川 ゚ -゚) 「ギコ?」
(,,゚Д゚) 「……似ている」
(*゚ー゚) 「?」
つぶやく様に漏れたギコの言葉に、私と花はただ首を傾げるしか出来なかった。
第19話 了 〜 僕は僕のままで、ただ素直に思うままに 〜
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