2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/18(木) 22:29:51.46 ID:eMmTGm8FO
 
 ダイ21ワ セカイ ト コタエ セカイ ノ コタエ
 
 
(*゚ー゚) 「ギコ……しぃ……」

花は同じ言葉、同じ名前を繰り返す。
私やギコが口にした名前をただ反復する事は不思議ではない。

(*゚ー゚) 「ギコ……しぃ……」

そう、この言葉は誰かが言った言葉である可能性が高い。
人の名前だ。
自分で思い付いたと考えるより、誰かに聞かされたものである可能性の方が高いのだ。

(*゚ー゚) 「ギコ……しぃ……」

ただ問題は、それがいつ聞かされたものかということだ。

(,,゚Д゚)


3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/18(木) 22:31:04.98 ID:eMmTGm8FO
  
それが今。我々の話を聞いていて覚えたのなら何も驚く事はない。
よくある事だ。
退屈していた花が知らない言葉を聞いていて覚え、その意味をわからずに話し掛けてくることはこれまでも多々あったのだから。

川 ゚ -゚) 「それをどこで……」

(*゚ー゚) 「ギコ……しぃ……」

私の言葉に答えることなく、同じ言葉を繰り返す花。

(*゚ー゚) 「ギコ、しぃ」

最初はたどたどしく、曖昧な記憶を探るような言い方だったが、次第にその言葉ははっきりと意思を持つ様になっていた。

(*゚ー゚) 「ギコ、しぃ……」

(,,゚Д゚) 「しぃ……なのか?」

呟いたと同時に私に、正確には花に詰め寄るギコ。
触れるか触れないかギリギリの所で両手で包むように手を花にかざし、その顔をまじまじと見詰めている。


4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/18(木) 22:32:12.03 ID:eMmTGm8FO
 
(,,゚Д゚)

間近にあるギコの顔は驚愕からどこかしら慈しみを帯びた目に変わっていく。
私はその顔にやはりじいちゃんを思い起こさずに入られなかった。

(*゚ー゚) 「ギコ、しぃ……」

(,,゚Д゚)

(*゚ー゚) 「ギコ、しぃ……える」

(,,゚Д゚)

川 ゚ -゚) 「え……?」

(*゚ー゚) 「ギコ、しぃ……える」

(,,゚Д゚) 「な……」

一定のペースで繰り返されていた花の言葉の間隔が広がる。
何かを思い出すかの様に時折首を振り、花は言葉を加える。

5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/18(木) 22:33:26.56 ID:eMmTGm8FO
  
忘我の境地にあり、プログラムされた言葉を再生しているのかとも考えていたが、花は自分の意思で言葉を紡いでいる様だった。

(*゚ぺ) 「……える? ギコ……える? しぃ……つた?」

(,,゚Д゚) 「……」

その変化に、口を挟みかけたギコだが思い止まったのか、今はただ、花の様子を見守っている。
私もそれに倣い、花の行動を黙って見ている事にした。

(*゚ぺ) 「える……える? ギコ……つた? しぃ……しぃ?」

川 ゚ -゚) 「……」

(,,゚Д゚) 「……」

(*゚ぺ) 「ギコ? しぃ? つた? える?」

段々と花の言葉は、それとなく意味を察せられるような形になって来る。
しかし私もギコも、花がその言葉を完成させるまでただ見守り続けた。

6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/18(木) 22:36:17.16 ID:eMmTGm8FO
 
(*゚ー゚) 「しぃ、ギコ、つたえる」

(,,゚Д゚) 「……何を」

ようやく思い出したのか、満足げに言葉を発した花にすぐさまギコは問い返す。

(*゚ー゚) 「しぃ、ギコ、つたえる」

(,,゚Д゚) 「何をだ?」

(*゚ー゚) 「しぃ、ギコ、つたえる」

(;,,゚Д゚) 「何をだなんだ? 教えてくれ!?」

川;゚ -゚) 「落ち着け、ギコ!」

今にも掴みかからんばかりのギコを制し、私は数歩下がる。
興奮したギコの岩状の手で掴めば花をへし折ってしまいかねない。

川 ゚ -゚) 「それで、お前は何を伝えるのだ?」

私はギコの方に広げた右の手の平を向けたまま、ゆっくりと花に問う。

7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/18(木) 22:39:34.21 ID:eMmTGm8FO
   
(*゚ー゚) 「つたえる? 私……つたえる?」

再び何かを思い出そうとしているのか、身体を傾けながら花は何事かを呟く。

あの日……星……爆発……最後……伝える……

私の耳に届く単語は不穏な響きを帯びながらも、どこか先ほどのギコの話を髣髴させるものだった。

(*゚ー゚) 「伝える……ギコに……最後……しぃ……言葉……」

川 ゚ -゚) 「やはりお前は……」

花はしぃを知っている。
そう考えざるを得ない言葉が並ぶ。

私はギコの方へ視線を向け、その事を伝えようとしたが、それよりも先にギコが口を開く。

(,,゚Д゚) 「しぃはお前を作ったのか?」

作った、私が友達として扱っている花に対して、言葉としては乱暴な類だが、先のギコの話を考慮すると、そう考えるのが
自然な流れだ。

8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/18(木) 22:41:46.41 ID:eMmTGm8FO
 
(*゚ー゚) 「しぃ……言葉……しぃ……伝える……」

しかし花はギコに答える事はなく、先ほどまでと同じ様に言葉を捜していた。

しぃの言葉。

ギコに伝える言葉。

それが何を指し示すのか、深く考えるまでもなく、想像するのは容易い。

川 ゚ -゚) 「……しぃはやはり別部署に配属されていたのだろうな」

(,,゚Д゚) 「おそらくは……」

私は結論を急がぬ様、現状で推測出来る事の顛末をギコに語りかける。

川 ゚ -゚) 「それで意思を持つ植物の研究……」

(,,゚Д゚) 「用途は軍事用……」

(*゚ー゚) 「しぃ……しぃ……伝える……言葉……2人……心……」

10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/18(木) 22:44:49.02 ID:eMmTGm8FO
  
川 ゚ -゚) 「しかし、兵器ではなく通信用……」

(,,゚Д゚) 「その可能性が高い……」

私とギコはほぼ同じ道筋で結論に向かっている。
しかし同じ道筋、そして同じ結論に達したとしたら、ギコはどうするのだろうか。

川 ゚ -゚) 「未完成だった?」

(,,゚Д゚) 「かもしれない。まだ実験段階だったのか、記録や再生に欠落が……」

川 ゚ -゚) 「……記憶と音声だよ」

(,,゚Д゚) 「……すまん」

若干扱いに差があるのは、私とギコの立っている位置の違いからなのかもしれない。
しかしながら今回は、きっと私の方が正しいと思う。
何故ならそれは……

川 ゚ -゚) 「機能だけじゃない。花には感情がある」

11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/18(木) 22:46:52.82 ID:eMmTGm8FO
   
(,,゚Д゚) 「……それは……何故だと思う」

川 ゚ -゚) 「それはお前の方がわかってるんじゃないか?」

(,,゚Д゚) 「……」

(*゚ー゚) 「しぃ……言った……教えた……心……人……私……」

花はおそらくしぃから教わったであろう言葉を並べる。
一部私が教えた言葉が混ざってるかもしれないが、それもまあ似た様なものだろう。

しぃはきっと、花が花として生きる為に必要な言葉を教えたはずだ。
言葉のみならず考え方も。

そして感情を与えた。

それはきっと我が子に接するかの様に。
しぃは花を育てたのだろう。

(,,゚Д゚) 「……しぃならそうするかもしれない。しかし……」

川 ゚ -゚) 「そうしたさ。それはこれまで花と一緒にいた私がよくわかっている」

12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/18(木) 22:48:36.29 ID:eMmTGm8FO
 
(*゚ぺ) 「しぃ……クー? ツン? ギコ……?」

首を傾げ、一生懸命思い出そうとしている花を見れば、それは考えるまでもなくわかることだ。
私がいなくても、ビロードの悩みを聞いたりと、自分の意思で、自分の思う様に花は生きている。

それが出来る様にしたのはきっとしぃであろう。

しぃが花にどんな気持ちを託したのか、花の言葉を聞くまでもなく理解出来る。

(,,゚Д゚) 「……しぃは」

川 ゚ -゚) 「……」

(,,゚Д゚) 「しぃはこいつに何を託したのだろうな……」

(*゚ー゚)

ギコは慈しむ様な目で花を見る。
かつてはしぃに向けられていたのであろう目で。

川 ゚ -゚) 「生きる事……じゃないかな……」

13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/18(木) 22:51:20.64 ID:eMmTGm8FO
  
植物の軍事転用など、しぃはきっとやりたくはなかったはずだ。
だから兵器としては不要な、感情を花に持たせたのだと思う。

生きる為に。
生きる喜びを味わえる様に。

(,,゚Д゚) 「……」

ギコは私の言葉を無言で受け止める。

生きる事。

それは花にだけでなく、目の前の不器用な男にも向けられた言葉。

しぃが伝えたかった言葉。

ギコがしぃをそうしてあげたかった様に、しぃもまた、ギコに生きて欲しいと願ったのだろう。

(*゚ー゚) 「ギコ!」

(,,゚Д゚)


14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/18(木) 22:54:32.18 ID:eMmTGm8FO
   

(*゚ー゚) 「しぃ、ギコ、会えた、幸せ」


(,,゚Д゚)


(*゚ー゚) 「しぃ、ギコ、ありがとう」


川 ゚ -゚)


(*゚ー゚) 「ギコ、さよなら、生きて」


(,,゚Д゚)


16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/18(木) 22:56:14.61 ID:eMmTGm8FO
 
(*゚ー゚) 「私、伝えた、しぃ、ギコ、伝えた」

川 ゚ -゚) 「うん……伝えたな。よくやった、偉いぞ」

私は花を優しく撫でた。
ようやく伝えるべき事を探し出して、満足げな笑顔を浮かべている。

(,, Д ) 「……か」

川 ゚ -゚) 「……」

花の言葉を聞いたギコはうつむき、小さな声で何かを言った様だ。
私には上手く聞き取れなかったが、おそらく花の言葉を反芻しているのであろう。

(,, Д ) 「……ありがとう、か」

川 ゚ -゚) 「しぃはお前にあえて幸せだったのだろうな」

(,, Д ) 「……そして、さよなら、か」

川 - -) 「生きろと、しぃはお前に……」

18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/18(木) 22:57:57.91 ID:eMmTGm8FO
  
私が何を言ったところで、慰めにならないのはわかっている。
それでも私は、ギコに言わねばならない。
悲しみで消えてしまわない様に。

(,, Д ) 「……」

川 ゚ -゚) 「……」

(,,゚Д゚) 「……ありがとう」

(*゚ー゚) 「ギコ、伝えた、私、伝えた」

しばらくの沈黙の後、ギコは花に向かって頭を下げる。
その顔からは一切の感情が読み取れないが、それも仕方のない事かもしれない。

そしてギコは私にも頭を下げた。

川 ゚ -゚) 「いや……私は……」

(,,゚Д゚) 「お前のお陰で知る事が出来たんだ……ありがとう」

21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/18(木) 22:59:11.90 ID:eMmTGm8FO
   
これまでのギコの態度から考えると、こうも素直に礼を言われるのは少々こそばゆいものがある。
しかしながら、ここは素直に頷いておく事にした。
ギコの為、そしてじぃちゃんの為、私は私に出来る事をしたのだから。

川 ゚ -゚) 「まあ、それも全部お前のお陰だけどな」

(*゚ー゚) 「私? おかげ? クー? 助かる?」

川 ゚ -゚) 「ん? ああ、助かったよ、お前がいてくれてな」

(*゚ー゚) 「ホント? クー、助かった? 私、クーといていい?」

私の礼の言葉に満面の笑顔を浮かべる花。
そういえばこいつは私と一緒に行きたがってたな。
歩ける様になった以上、断る理由もなくなったんだがどうするべきか。

それほど危険な行動を取るつもりもないが、まだどう扱っていいかわからぬ点もあるのでその辺りは考え物だ。

川 ゚ -゚) 「うーん……そうだな……、ちょっとだけ調べてから……」

その瞬間、世界が大きく揺れた。
眼前の景色がぶれ、木々が大きくざわめく。

22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/18(木) 23:01:59.10 ID:eMmTGm8FO
 
これはあの時と同じ──

川;゚ -゚) 「地震!?」

(;*゚д゚) 「うっきょぉ!?」

よくわからないうめき声と共に私の肩からずり落ちる花。
私の体制も崩れていた事もあり、そう高くない位置から落ちた程度なのでその身にケガなどはしていない様だが、
私は慌てて身をかがめ、花の上に伏せる様にして地震をやりすごそうとした。

(*;д;) 「あわわわわわ……」

川;゚ -゚) 「大丈夫、すぐ鎮まるから落ち着け」

不意に、視界に影が刺した。
それが私が花にしたのと同じ事を、私に対して誰かがしたのだと気付く。

川;゚ -゚) 「ギコ?」

(,,゚Д゚) 「大丈夫、お前らは俺が守る」

岩で出来たギコの身体は、その言葉に強い安心感を持たせた。
花はまだ震えていたが、少なくとも私はギコの言葉で落ち着く事が出来た。

23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/18(木) 23:03:20.26 ID:eMmTGm8FO
  
それからしばらくして地震は収まった。
山中とはいえ、多少は開けた場所で、崖からも遠い。
特に被害と呼べるようなものは見当たらなかった。

川 ゚ -゚) 「大丈夫か?」

(*;д;) 「大丈夫? 私、大丈夫?」

見たところやはり花はどこもケガ等はしていない様だった。
私が頭を撫でていると、すぐに落ち着きを取り戻した様だった。

(,,゚Д゚) 「今のは……」

川 ゚ -゚) 「解放の合図……だろうな」

あの時兄者を解放した時と同じ様な現象だ。
おそらく間違いないだろう。

私はギコに問い掛けるような目を向けた。
しかしギコは首を振る。

26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/18(木) 23:05:49.84 ID:eMmTGm8FO
   
(,,゚Д゚) 「俺じゃない……」

川;゚ -゚) 「何……? じゃあ、誰が……」

(,,゚Д゚) 「恐らく、あのガキじゃないか?」

川;゚ -゚) 「ガキ? ビロードか?」

ギコが言うには、ビロードも原因の1人で、その問題が解消されたからだろうという話だった。
確かにありえない話ではないが、タイミングが今というのは……

(,,゚Д゚) 「話し合いが上手くいったんじゃないか?」

川 ゚ -゚) 「……まあ、そうも考えられるな」

ビロードが悩み、そしてそれを乗り越えたのはほんの先ほどの事だ。
ビロードが発生原因かどうかはわかっていなかったが、仮にそうであっても不思議ではない。
このタイミングになったのも、3人で話して納得がいって、やっと安心出来たからかもしれない。

28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/18(木) 23:07:37.58 ID:eMmTGm8FO
 
何にせよ、次元の裂け目の発生原因を1つ取り除く事が出来た事には間違いない。
出来ればその場にいて、成果を実感したかったがそう贅沢を言っても仕方がないだろう。
これは私の仕事ではあるが、誰かの悩みは別に必ず私が解決しなければならないという話でもない。

自分達で解決出来るのならそれでいい事だ。
私はその手助けが出来ただけでも満足だ。

結果論で言えば、原因を探す手間が1人分が省けた事でもあるし。

川 ゚ -゚) 「ちょっと様子を見てくるかな」

私は立ち上がり、膝に付いた泥を払う。
そのまま歩き出そうとしたが、視線の端で花が飛び跳ねて自己主張しているのに気付いた。

(*゚д゚) 「クー! 私! 一緒!」

川 ゚ -゚) 「おっと、そうだったな……」

私は腰をかがめ、右手を伸ばす。
また肩に乗せるつもりだが、今後それはちょっと考える必要があるかもしれない。
先のような突発的事態に陥ったら落っこちたりと危険な場合もある。

かといって肩に根を伸ばさせるのも少々怖いものがあるので、何かしら捕まれる場所を作ってやらねばならないだろう。

29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/18(木) 23:09:24.78 ID:eMmTGm8FO
  
川 ゚ -゚) 「ん? どうした?」

(*゚−゚) 「……」

そんな事を考えていたら、いつまでたっても花が手の上に乗って来ない事に気付くのが遅れた。
花は私の問いかけに、申し訳なさそうな表情で聞き返して来る。

(*´へ`) 「クー、私、クーと一緒でいいの?」

どうやら私が考え事をしていたのを、花を連れて行く事を渋っていると勘違いされたのかもしれない。
私は花に向け、自然な笑顔を向けて答える。

川 ゚ー゚) 「どうしたんだ、急に? 一緒に行きたかったんじゃないのか?」

(*´へ`) 「私、クー、一緒、行きたい」

川 ゚ー゚) 「ならば行こうか。折角歩ける様になったんだしな。広い世界を一緒に見よう」

私は右手を花の方により深く伸ばす。
しぃが与えた心、生きる為の心。
私はそれを受け止めようと思う。

私に何が出来るのかわからないが、今は花と共に行き、花が伝えてくれた様に、今度は私が花に伝えてあげよう。

生きる事を。

31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/18(木) 23:12:05.79 ID:eMmTGm8FO
   
(*゚ー゚) 「行く、私、クーと一緒、行く!」

花は私の右手の上に跳ねる様に飛び乗った。
私は右手をゆっくりと上げ、目の高さに止めた。

(*゚ー゚)

花と目が合った私は、1つ頷く。
花もそれに答える様に、笑顔でこくりと頷いた。

川 ゚ -゚) 「さてと……ん?」

右手を左肩に寄せようとした瞬間、手の上の花がわずかに熱を帯びた様に温かくなった。

(*-ー-)

花は目を閉じ、ほんのわずか頭を垂れている。

川 ゚ -゚) 「どうした? 具合──」

o(*-ー-)o

川;゚ -゚) 「!?」

33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/18(木) 23:14:47.15 ID:eMmTGm8FO
 
不意に、花の周りに小さな膨らみが現れた。
生えたと言った方がいいのか、花の顔、要は花で言うところの花の部分と若干混乱しつつも私はそれが何の前触れか
直感的に察する事が出来た。

川 ゚ -゚) 「お前……」

O(*-ー-)O

花の横に現れたそれは、急速に成長し、花を囲むように広がる。

=(*-ー-)=

そしてそれは文字通り花開くかのごとくゆっくりと開いていった。

ミ(*-ー-)リ


川 ゚ -゚)


ミセ*-ー-)リ

34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/18(木) 23:17:37.05 ID:eMmTGm8FO
  
ミセ*゚ー゚)リ

花はゆっくりと目を開く。
私の右手の上、そこには鮮やかに咲いた先ほどまでと変わらぬにこやかな顔がある。

川 ゚ -゚) 「そうか、咲けたのか……」

これまで咲けないと悩んでいた花は、私の手の上で花開いた。
それがどうしてなのか、理由は推測こそ出来るが、正しいという証明は出来ない。

多分きっと、しぃからの伝言を伝える事が出来、花にあった悩みがなくなった事が咲く事に繋がったのかもしれない。

川 ゚ -゚) 「まあ、理由はどうあれ……」

理由はもう、どうでもいいだろう。
花はちゃんと役目を果たし、伝えてくれたのだから。
あとは自分の好きに生きろという、これもしぃから花へのメッセージなのだろう。

川 ゚ー゚) 「良かったな」

ミセ*゚ー゚)リ 「クー!」

より一層の笑顔で微笑む花を私は左肩に乗せる。
そして、ビロード達の方へ歩き出そうとした瞬間、再度それは起こった。

35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/18(木) 23:21:32.07 ID:eMmTGm8FO
   
川;゚ -゚) 「またか!?」

ミセ;゚д゚)リ 「うっきょぉ!?」

再び大きく揺れる世界。
本日二度目の地震に、花はまたも私の肩から落下する。

しかし今度は落ちる花を私は右手でとっさに掴み、身をかがめて地震をやり過ごす。

川;゚ -゚) 「何度もすまんな」

(,,゚Д゚) 「気にするな。また直に収まるだろう」

先と同じ様にギコが私達をかばってくれる。
その言葉通り、地震はしばらくして何事もなかったかのように収まった。

川;゚ -゚) 「やれやれ……大丈夫か?」

ミセ;>д<)リ 「もきゅぅ……」

半ば気絶したような状態の花だったが、頭を撫でているとすぐに目を覚ました。

36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/18(木) 23:24:19.20 ID:eMmTGm8FO
 
ミセ*゚ー゚)リ 「大丈夫、私、大丈夫」

川 ゚ -゚) 「ならば良し。さて……」

私はギコに視線を向ける。
聞くまでもないが一応の確認の為、今の地震についての所見を尋ねてみた。

(,,゚Д゚) 「恐らくそいつだろうな」

ギコは腕組みしたまま、顎で花の方を指す。
やはり今のタイミングならそう考えるのが妥当か。
私は右手から花を左手の上に移し、目の高さに運ぶ。

色々と言いたい事もあるが、またも結果論からすればこれはとてもラッキーとも言える。

川 ゚ -゚) 「なんせ残り2つの原因は探す必要がないからな」

残る次元の裂け目の発生原因は2つ。
そしてその原因となる人物はギコとブーンの2人だとわかっている。

川 ゚ -゚) 「しかし……」

ミセ*゚ー゚)リ 「?」

38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/18(木) 23:27:30.36 ID:eMmTGm8FO
  _,
川;゚ -゚) 「お前も発生原因だったとはな……」

ミセ;゚д゚>リ 「いひゃひゃひゃ!?」

私は驚きとも呆れともつかない感情で、左手に乗せた花の右頬(?)を引っ張る。
灯台下暗しと言うか、何と言うか……。
まさかこいつがという思いもあるが、同時にそれはこの世界が花をこの世界の住人だと認めてくれた様だとも思えた。

川 ゚ -゚) 「というか、いい加減花じゃかわいそうだよな」

ミセ*゚ー゚)リ 「花? 私、花?」

川 ゚ -゚) 「ん、ああ、名前だよ、名前。私はクーという名前がある。お前は名前はあるのか?」

私は名前という言葉の意味を花にわかりやすく説明する。
以前も話したような気がするが、覚えていないならここで決めてあげてしまおうかと考える。

ミセ*゚д゚)リ 「名前、私、欲しい」

川 ゚ -゚) 「わかった、わかった。ちょっと待ってろ」

私は、左手の上で飛び跳ねて精一杯主張する花が落ちないように気を付けながら頭を巡らせる。

40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/18(木) 23:31:17.87 ID:eMmTGm8FO
   
川 ゚ -゚) (流石にしぃはまずいだろうしな……)

(,,゚Д゚)

私はギコの方をちらりと盗み見る。
先ほどと同じ腕を組んだ姿勢のまま、ギコはどこか遠くを見る目で突っ立っている。

思うところは有り余るほどあるのだろうが、ギコはギコでまだ問題が残っている。
しぃから伝えられた言葉を聞いても、ギコはまだ解放された様子はない。
それだけでは済まない何かが、ギコにはあるのだろう。

"oミセ*゚〜゚)リo" 「名前! 名前!」

川;゚ -゚) 「わかってるからちょっと待て」

考え事をしようにも、眼前の花がちらちら目に付いて集中できない。
まず先にこちらを考えてやるべきかと視線を花に合わせる。

川 ゚ -゚) 「しかし何だ、咲いたら前よりウザ……じゃない、賑やかになったな」

ミセ;゚д゚)リ 「ウザ!? ウザって?」

41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/18(木) 23:33:52.57 ID:eMmTGm8FO
 
多分見慣れていない違和感の所為だと納得させ、花をまじまじと見る。
そんな言葉は教えた覚えはなかったが、花は私が言いかけたウザ発言を気にしている様だ。
言葉の意味は恐らくちんぽっぽ辺りがビロードに言ってたのを聞いてて何となく理解してたのかもしれない。

ミセ*´へ`)リ 「ウザ? ビロードとおんなじ?」

川 ゚ -゚) 「……ミセリ」

ミセ*゚ー゚)リ 「?」

川 ゚ -゚) 「だから名前だよ、お前のな、ミセリ」

ミセ*゚ー゚)リ 「ミセリ? 私、ミセリ?」

私は花を見ていて直感的に思いついた名前を口にしていた。
こう見えてもネーミングセンスにそこはかとなく定評があるような気がしなくもない私だ。
見たままな気もするが、名は体を表すともいうではないか。

ミセ*゚ー゚)リ 「ミセリ、私、ミセリ!」

川 ゚ー゚) 「気に入ったか。よし、今日からお前はミセリだ」

何度か名前を繰り返し、弾かれた様に大きくミセリは頷いた。
どうやら気に入ってもらえたらしい。

43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/18(木) 23:36:56.69 ID:eMmTGm8FO
  
川 ゚ー゚) 「改めてよろしくな、ミセリ」

ミセ*゚ー゚)リ 「よろしく、クー、よろしく」

私はまたミセリを肩に移し、ギコの方を向く。
こちらも何とかする必要はあるが、まずは先の予定通り、ビロードたちの様子を見に行く事にする。

まあ、ビロード1人でもないし、皆いるからさして心配はしていないが、兄者辺りが転んでブーンに倒れ込んだりしてたら
面白い事になっているかもしれない。

川 ゚ -゚) 「というわけでギコ、私は一旦向こうの様子を身に戻るが……」

(,,゚Д゚)

お前はどうする、と続けようとしたところ、先ほどまでとはギコの様子が変わっている事に気付く。
どこか心ここにあらずだったギコの視線は、今はっきりと私の方、正確には私の後方に向けられていた。

川 ゚ -゚) 「ん? 向こうが先にこっちに来たか?」

ミセ*゚ー゚)リ 「?」

ビロードたちがこちらへ来たのかと振り向くが、そこには誰の姿もない。
ただ鬱蒼たる木々が見えるだけだ。

44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/18(木) 23:40:54.64 ID:eMmTGm8FO
   
川 ゚ -゚) 「何だ? 何も──」

(,,゚Д゚) 「……来たか」

向き直り、ギコに問い掛けようとした言葉はギコ自身によって遮られた。
変わらぬ視線の先に何があるのかわからなかった私は、ギコに問おうとしたが、それよりも早くミセリに頬を突付かれた。

ミセ*゚ー゚)リ 「クー、あれ、誰?」

川 ゚ -゚) 「あれ? あれって?」

再度振り向き、ギコの視線の先、花が指し示す先に目を凝らす。
先ほどは気付かなかったその場所に、1つの人影が見えた。

あれは──

川 ゚ -゚) 「え──」

そこにある予期せぬ姿に、私は思わず息を呑んだ。
 
 
 第21話 了 〜 震える世界が示すものは 〜


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