38 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/11(土) 23:17:31 ID:cM2vo0ws0
 
 epilogue
 
 
川 - -)

闇に包まれた世界。
閉じた目が映すものはただそれだけ。

来た時にも感じた浮揚感に包まれ、私達はただ流される。
落ちて行く感じはあるが、実際の所はわからない。
ただ、考えてもわからない類の事象だという事はわかっている。

来る時も感じたはずの感覚ではあるが、それとは多少異なるようにも感じる。
元々違和感しかないような、これまで感じた事もない不思議なものなので、どこかに差異があったとしても
それを断言出来るわけでもない。

永遠に続くとも一瞬で終わるとも感じられるこの時の中で、私はゆっくりと閉じていた目を開く。
そこにある種の予感を感じたのは、私の錯覚であったとは思えない。

川 ゚ -゚)

39 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/11(土) 23:20:41 ID:cM2vo0ws0

川 ゚ -゚) 「ここは……?」

私の眼前には、世界が広がっていた。
空があり、海があり、そして大地がある。
来た時に見たような、覚束無い、心象風景の様なそれではない、はっきりとした世界があった。

川;゚ -゚) 「もう、次元の裂け目を抜けたのか?」

思わずそう呟いていたが、それは無いだろう。
もしそうなら、私は空に浮かんでいることになる。

川 ゚ -゚) 「どう思う、ブーン? ……ブーン?」

( -ω-)

声をかけたが返事の無いブーンの方を見ると、目を閉じ、微動だにしない。
ブーンのみならず、ツンやミセリも同じだ。

川 ゚ -゚) 「呼吸はしているな……気を失っている、それか眠っているだけか……」

皆の無事を確認し、落ち着いたところで再び視線を眼前の世界に向ける。
そこにはただ、緩やかな時が流れている。

40 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/11(土) 23:21:47 ID:cM2vo0ws0

川 ゚ -゚) 「これは何なんだ……?」

疑問を口に出してみても、当然答えは返って来る事はない。
それどころか自分の言葉が耳から聞こえているのかどうかもよくわからない。

川 ゚ -゚) 「夢か……?」

現実感のない世界、どこか暈された様な感覚。
普通に考えれば、これは夢だと思うのが正しいのかもしれない。

川 ゚ -゚) 「いや、これは……」

これ夢ではない。
何の根拠もないはずだが、私の頭はそう判断していた。

ここは……

「君がいる世界だよ」

川 ゚ -゚) 「私の……世界……?」

私はゆっくりと声の方をした方を向く。
そこにも声の主が言うところの私がいる世界が広がり、その只中に浮かぶ小さな人影がらしきもの1つ。

41 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/11(土) 23:24:01 ID:cM2vo0ws0

(-_-) 「そう、君がいる、君が生きている世界さ」

川 ゚ -゚) 「つまりこれは地球ということか?」

人影を小さいと感じたのは、そいつが膝を抱え座ったままの姿勢で宙に浮いていたからだった。
全く感情の読めない、血の気のない能面のような顔だが、どうやら見た感じは男性の様で、無言で私の言葉に頷く。

川 ゚ -゚) 「なるほど、確かに私は地球へ向かっていたのだから、その途中で地球の姿が見えても何の不思議はないが……」

だが違う。
この眼前の光景は、私が知る地球ではない。

川 ゚ -゚) 「……これはいつの地球だ?」

私は最悪の予想を頭に思い浮かべながらも、努めて平静を装った声で聞く。

(-_-) 「大丈夫、これは君が知る世界のずっと前の姿さ」

川 ゚ -゚) 「そうか……」

次元の裂け目を越える。言葉で言えばただの一言だが、その事について人類はほとんど何も理解も解明も出来ていない。
過去の経験から次元の裂け目を越える、イコール、地球とAA界という膨大に離れているはずの距離を越えるという認識で
用いられてはいたが、本来なら次元を越えるというのは他にも多くの可能性を秘めている。

42 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/11(土) 23:26:21 ID:cM2vo0ws0

(-_-) 「君がずっと未来の世界に辿り着くような事はない。もちろん、過去にもね。安心しなよ」

川 ゚ -゚) 「ふむ、私の危惧もお見通しか。その言葉、信じさせてもらおう」

私は肩をすくめ、男から視線をそらし、眼前の世界を見渡してみる。
海の青と大地の緑が広がる自然豊かな世界は、やはり私が知る地球とは大きくかけ離れている。
どちらかといえばこの世界は、今のAA界の方が近いと思う。

(-_-) 「昔はこんなにも自然溢れる豊かな世界だったのか?」

川 ゚ -゚) 「それは豊かの基準をどこに置くかにも因るだろう」

男は私の気持ちを代弁したつもりのようだが、私の思いは少し違っていた。
私が知る今の世界も豊かな世界ではあるのだ。
物的に精神的に、長い地球の歴史の中で比較しても、今は安定している部類だ。

男はそんな私の答えに少し笑った様な顔をしてみせた。
一応、表情は変わるらしい。

(-_-) 「その結果が、滅びに繋がるとしても?」

川 ゚ -゚) 「滅びは回避したさ……と言いたいとこだが、無理やり避けただけだからな」

まだ地球が人間を排除したいと思っているのなら、人類の未来はどうなるのかわからない。

43 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/11(土) 23:29:48 ID:cM2vo0ws0

川 ゚ -゚) 「それで、お前は私にこれを見せてどうしたいんだ?」

(-_-) 「どうもしないよ」

改めて男の方に向かい、根本的な疑問をぶつけてみるが、男は軽く首を振ってそれをいなした。
それに対して露骨に不機嫌な表情をして見せた私に、男は言葉を続ける。

(-_-) 「僕は何もしない。でも、何かするなら多分君の方だろうね」

川 ゚ -゚) 「私が……? 何を……」

男は無言で周囲を、緑が広がる大地を指差す。
私はその指の先を追い、私を囲む世界へと目を向けた。

川 ゚ -゚) 「この世界が、どうか──」

変わらぬ穏やかさを保つ世界の姿に、私は男の意図を理解出来ずにいたが、突如としてその世界は一変した。
すさまじい勢いで消えていく緑。変わりに雨後の筍のような速さで立ち並ぶビル群。
どうやら眼前の世界は時間が高速で流れている様だ。

川 ゚ -゚) 「人類の発展の歴史か」

一言で言えば恐らくそんなとこだろう。
狩猟から農耕、物々交換から貨幣経済へ移り、資本主義が発展し、人々の暮らしが変わって行く。
その過程がまるでビデオの早回しの様に流れていく。

44 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/11(土) 23:30:55 ID:cM2vo0ws0

(-_-) 「少し違うね」

眼前の映像に見入ってた私に、男の声が届いた刹那、それは起こった。
突如として起こる爆発。崩れ行くビル群。瞬く間に一面は焦土と化し、黒ずんだ大地が後には残された。

川 ゚ -゚) 「これは……」

世界のあまりの変わり様に、思わず疑問の言葉が口をついてはいたが、目の前の光景が何なのかは聞くまでもない。
その後、黒かった大地はゆっくりとまた緑に覆われていく。
その緑もまた、一瞬にして消え去り、再びビル群が立ち並び、そして消えて逝った。

それは時に戦争や大規模な事故など人為的なものに起因し、またある時は地震や津波など自然災害によって滅びた。

川 ゚ -゚) 「人類の発展と衰退の歴史と言い直すべきか」

(-_-) 「ただの経過さ。これがこの世界の歩んで来た道だよ」

私は男の言葉を背に、変わり行く世界を見続けた。
私の知る世界とは比べ物にならないくらい発展を遂げた世界が一瞬にして消え去ったこともあれば、緩やかに広がる緑の世界が、
瞬く間に無機質な金属に覆われた世界に変わったりもした。

無公害、無尽蔵に湧く白いエネルギーを開発した世界は、虚構の中でしかお目にかかれない様な巨大な化け物によって滅ぼされかけもした。
一面砂漠化した世界がまた緑に覆われ、そして再び荒廃した死の大地に変わりもした。

歴史は繰り返す。ふとそんなありきたりの言葉が浮かんだ。

45 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/11(土) 23:32:35 ID:cM2vo0ws0

川 ゚ -゚) 「それで……いや、お前の意図を聞いても仕方のない話だったな」

私がこの世界の姿を見せられた意味をこの男は教えるつもりはないらしい。
先の言い分を自分なりに解釈してみれば、これを見てどうするかは私が決める事とでも言いたいのだろうか。

川 ゚ -゚) 「世界がどんな道を歩んで来たか、この星の歴史がどんなものか、多少は知っているつもりだ」

その縮図を今更見せられた所で、私の考えが劇的に変化するはずもない。
この世界が危ういバランスの上に成り立っていた事は、今回の件が起きる前からわかっていたのだ。

(-_-) 「だとしても、人は歩みを止めないのだろうね」

川 ゚ -゚) 「止められない、が正しいのだろうな」

遠からず資源が枯渇するからと、今の便利な生活を捨て、自給自足の狩猟農耕を基盤とする暮らしに戻れと言った所で、
それを素直に受け入れる人間が果たしてどのくらいいるのか。
そういった生活に戻る事は、単に利便性の問題に止まらず、餓死者や病死者が増える事にも繋がりかねない。

それを自然の摂理だと、今の生活に慣れた人間が慎んで受け入れることが出来るはずもない。

川 ゚ -゚) 「だからといって、そのまままっすぐ歩き続ける道理もないがな」

私が今回の件で出来た事は微々たる物でしかない。何も出来なかったと言い切ってもいい位に。
しかしその過程で私は、自分が知らなかった事、そして知るべきであった事を数多く知った。
今すぐに人の歩みを止める事は出来なくても、その進む先は少しずつであろうが変える事も出来る。

(-_-) 「これまでの人間とは違う道を歩めると?」

46 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/11(土) 23:33:22 ID:cM2vo0ws0

川 - -) 「さあ、それはどうかな」

言葉で言うほど簡単に変えられるなら、何の苦労もないだろう。
違う世界の有り様を直に見てきた私が理解出来たとしても、平穏な変わらぬ日々を送っている人達が、この星が置かれている
状況を正しく理解出来なかったとしても仕方がない話だ。

川 ゚ -゚) 「変えられるかどうかはわからない。変えられたとしても、それがいい方向に向かうとも限らない」

川 ゚ -゚) 「結果を見るまでその良し悪しはわからない」

私は世界を知り、自分を知った。
自分に出来る事が何なのか、未だにきちんと見極めが付いていない。

(-_-) 「その結果が……」

川 ゚ -゚) 「たとえその結果が滅びに繋がったとしても、自分達の頭で考え、良いと思った道を進む」

私は、再び同じ言葉を紡ごうとする男を遮り、自分の言葉で結ぶ。
今見せられた光景や、AA界で知った他の星の滅びが望んでそうしたわけではない事はわかっているから。

川 ゚ -゚) 「それが正しいのか正しくないのか、わからないなんて無責任な事は言いたくないから」

やる前から全ての結果を見通せるわけじゃない。
間違いもすれば、良かれと思ってやった事が裏目に出ることだってある。

川 ゚ -゚) 「私は私が思う、最善の道を探していくよ」

47 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/11(土) 23:35:02 ID:cM2vo0ws0

だから私は、今自分に出来る事をやるだけなのだ。

(-_-) 「……それを聞いて僕はどうすればいいんだい?」

川 ゚ -゚) 「……何もしない、と言ったのはお前の方だったと思うが」

男は、そうだったねと呟くと、またうっすらと笑う。

川 ゚ -゚) 「とはいえ、今更何もするなと言うのも虫のいい話かな?」

(-_-) 「いや、そうでもないよ。それに今更でもない」

(-_-) 「人間とこうやって面と向かって話したのは初めての事だし、それに僕にはまだ時間があるからね」

(-_-) 「なかなか貴重な体験だったよ」

川 ゚ -゚) 「そりゃ良かった」

私は肩をすくめ男の言葉を受け流す。
それが本心かどうかはわからないが、少なくとも無駄な時間ではなかったと思わせられたのなら幸いだ。

(-_-) 「おっと、そろそろ時間かな」

川 ゚ -゚) 「時間?」

(-_-) 「もうすぐここを抜ける時間さ」

48 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/11(土) 23:38:19 ID:cM2vo0ws0

どうやら次元の裂け目の中で静止していたわけではなく、この状態で移動していたらしい。
その様な感覚は一切なかったが、その辺りはこの男が何か仕掛けていたと考えるのが妥当だろう。

川 ゚ -゚) 「そうか。では、名残惜しいがお別れだな」

先ほど、この男は貴重な体験だったと口にしたが、それはこちらも同じ事だ。
地球に戻ってから考えねばならないと思っていた事を、考える場を設けてくれたわけだから。

(-_-) 「惜しまなくても大丈夫だよ」

川 ゚ー゚) 「ふむ、それもそうか」

言わずもがな男の言葉の意味はそういう事なのだろう。
今後私が、私達人類がどう生きていくのかを、彼はずっと見守ってくれるのだろうから。
私達が進む道を探す事を諦めない限りは。

川 ゚ -゚) 「む……」

不意に、視界が霞みがかった。急速に意識が遠退いて行く。
しかしそれは何の恐怖も感じない、むしろどこか暖かで、懐かしい匂いがした。

(-_-) 「それじゃあ、さようなら。……それと、これはサービスだよ」

男の方から放たれた光が私をゆっくりと包む。
私の意識はその光景を最後に、ゆっくりと沈んでいった。

・・・・
・・・

50 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/11(土) 23:40:04 ID:cM2vo0ws0

ピピピピピ♪ ピピピピピ♪ ピピ──

1日の始まりを告げる音がワンルームの部屋に響き渡る。単調で残酷な機械音。
BGMとしては、もっと優雅で耳に障らない音色の方が好みだが、それだと彼が本来果たすべき役割を全う出来なくなる故に、
斯様な表現方法を取らざるを得ないのだろう。

川う、-)つ 「むぅ……」

眠い目を擦りながらもう片方の手を伸ばす。
程なくして音は止み、再びまどろみに落ちようとする間際、今度は騒々しい声が耳に届く。

ミセ*゚д゚)リ 「朝、時間、クー、起きる」

川う -`) 「はいはい、うるさいな……ちゃんと起きるよ、ちゃんと……」

そう言いつつも布団に突っ伏し、再度眠りの世界へ誘われつつある私の上に、ミセリは箪笥の上から飛び降りて来る。

ミセ*゚Д゚)リ 「クー、寝ぼすけ、遅刻、駄目」

川 ´ -`) 「あーうん、わかってるわかってる……起きるから頭の上で跳ねるな」

尚も私の頭上で踊りまわるミセリをやんわりと押しのけ、ベッドから起き上がる。
それと同時に、オンタイマーに設定されていたテレビが点くが、私はそれに目を向けることなく洗面所へ向かう。

51 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/11(土) 23:41:52 ID:cM2vo0ws0

冷たい水で顔を洗い、スーツに着替えてキッチンスペースに戻る。
冷蔵庫から野菜ジュースを取り出し、それと水道の水を別々のコップに注ぎ、リビングに向かう。

川 ゚ -゚) 「何か面白いニュースはやってるか?」

ミセ*゚ー゚)リ 「ニュース、パンダ、赤ちゃん」

私はリビングのテーブルの上にいるミセリの前に、大きく祝と書かれた趣味の悪いコップを置き、その背後のソファに座る。
テレビにはどこぞやの動物園で生まれたというパンダの赤ちゃんが映っている。
微笑ましいニュースではあるが、面白いか面白くないかで言えば難しい所だ。

川 ゚ -゚) 「まあ、平和である事はいい事なんだがな」

ミセ*゚ー゚)リ 「平和、一番、ゆっくり、のんびり」

「続いて天気予報です──さん──」

「はい──です──地方は今日一日晴天に恵まれ──」

ミセ*゚ー゚)リ 「晴れ、お天気」

川 ゚ -゚) 「ああ、今日も快晴みたいだな」

いつも通り天気を確認し、ミセリに留守番を頼み、部屋を出る準備をする。
ミセリはこちらに戻って来てしばらくは、私について職場に来たりもしていたが、今はとある理由から家に残ってもらっている。

52 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/11(土) 23:44:07 ID:cM2vo0ws0

川 ゚ -゚) 「それじゃ、仕事に行って来るから、ワタナベの事、頼んだぞ」

ミセ*゚ー゚)リ 「わかった、ミセリ、お母さん」

そう言ってミセリは窓際の方にある箪笥の上によじ登る。
そこにはワタナベが、あの日ミセリが産んだ種が植えられた植木鉢が置いてある。

          ,、 
 ミセ*゚ー゚)リ   ( x )
  (\ )/)  ヽ||/
    彡ミ     | ̄|
   ┛┗    ̄

種は順調に育ち、大きな蕾をつけて今にも花開きそうだ。

川 ゚ -゚)ノ 「じゃあ、いってきます」

ミセ*゚ー゚)リノシ 「いってらっしゃい、クー、お仕事」

私はミセリに軽く手を振り、部屋を出てバス停に向かう。
さほど待つ事もなく、いつも通りそこそこ混み合ったバスが来る。
バスに乗り、密かに自分の定位置としている柱に寄りかかり、目を閉じて思考の海に浸る。

53 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/11(土) 23:48:45 ID:cM2vo0ws0

央暦2010年。

滅びと発展を繰り返し、1つの国として生き続ける世界。

私は半年ほど前、その世界を抜け出し、別の世界へと足を踏み入れた。
わずか数ヶ月の期間ではあるが、私はそこで別の世界を見た。

そこにある物、生きる人々、そして世界が望むものを見て来た。

しかしそれは、多少の自意識の改革をもたらしこそすれど、この世界の在り様を変えられるほどの物ではない。
だから、世界は未だ緩やかに滅びの道を歩んでいるのかもしれない。

たとえ彼が我々を意図的に排除しようとする事を止めたとしても、我々自身がその道を歩んでいるのかもしれないのだ。

だとしても私は、あの時彼に告げた様に自分が正しいと思った道を進む。
それが間違いだったとしても、等という逃げの仮定を付けない為にも、私はもっとこの世界を知らねばならない。

そして私自身があの世界で学んだ事を、より多くの人に伝えていかなければならない。

人は1人で何でも出来るわけではないのだから。

自分がいて、他の誰かがいて、世界は成り立っているのだ。

54 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/11(土) 23:51:31 ID:cM2vo0ws0

庁舎の前にバスは止まり、私は外務課の庁舎へ向かう。
帰還当初は変わらぬ佇まいに、安堵と不満が入り混じった様な複雑な思いが浮かびもしたが、今はこれでいいのだ。

私は外務課と書かれたプレートを横目に室内に入る。

川 ゚ -゚) 「おはようございます」

(‘_L’) 「おはようございます」

当然の様に帰ってくる上司からの挨拶。相も変わらず早い出勤だ。
私は軽く机の前を掃除し、席に着く。
以前ならまずやる事を探す所から始めていた仕事だが、今はそんな工程は必要なくなった。
  _,
川 ゚ -゚) 「……今日もまた山積みですね」

(‘_L’) 「農水省からの書類も追加されたみたいだからね」

大量に置かれた書類の山に、ため息交じりで呟いた私に、課長が平淡な言葉で状況を説明してくれる。

この大量の書類の山が示す様に、私の、そして外務課の立場はあれから大きく変わっていた。
人間以外の知的生命体の存在を確認した事による対外折衝の必要性、連れ帰った外惑星の要人の世話、そして私自身の見聞の
整理等、いくつもの新たな仕事が発生した。

55 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/11(土) 23:53:03 ID:cM2vo0ws0
  _,
川 ゚ -゚) 「真っ当な話ならいいんですが、また利権絡みの話ならシュレッダーに放り込みますよ?」

(;‘_L’) 「一応、公文書なんだからシュレッダーは止めてね。……その手の書類は予め除いておいたつもりだよ」

川 ゚ -゚) 「お手数をおかけします」

どうやら課長は私より先に来て、ある程度の書類のチェックをしてくれていたようだった。
年寄りはいつも無駄に朝早いなとか思っててごめんなさい。

川 ゚ -゚) 「あ、お茶淹れてきますね」

私は課長の返事を待たずに席を立ち、給湯室に向かう。
返事を待つと自分で淹れてくると言われてしまうので、さっさとやってしまうに限る。

その辺りは仕事が増えた現状でも、以前と変わらない所だ。
人の本質がそう簡単に変わるわけでもないから、当たり前の話ではあるのだが。

川 ゚ -゚) 「まあ、課長の人の良さは、変わらないのが好ましい所だがな」

急須を片手に、湯飲み2つをもう片方の手に持ち、外務課に戻る。

川 ゚ -゚) 「どうぞ……って、珍しいですね、仕事中にテレビなんて」

課長の机に湯飲みを置きに向かうと、課長の姿がそこにはなく、テレビの前にいた。
テレビを点けるならリモコンを使えばいいものをと思うのだが、どうやら待機電源を切っていたらしい。
流石にテレビのリモコンを使えないほどの前時代的な人間ではない様だ。

56 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/11(土) 23:53:45 ID:cM2vo0ws0

(‘_L’) 「例の科学技術庁からの発表があるからね。職務として見ておくべきかなと」

川 ゚ -゚) 「ああ、そういえば今日でしたね、あいつらの」

私は自分の席に戻り、書類に目を落とす。
私の席からテレビも見れる位置にあるし、聞いていれば済む話だから画面を見るまでもない。
テレビから偉い人によるエネルギー問題の御高説が耳に届いてくる。

(‘_L’) 「何だか難しい話だね」

川 ゚ -゚) 「そりゃ、中身がない話なんだから理解するのは難しいですよ」

理想論、たらればの話を懸命に論じた所で、実が伴わなければ何の意味もない。
ただそれだけの話なのだが、人々が理想論を好んで持ち出すようになった背景に私も一枚噛んでしまっているのだから
複雑な気分だ。

(‘_L’) 「お、彼が出てきたよ。えっと、これはどっちなのかな?」

[( ´_ゝ`)]

川 ゚ -゚) 「これは兄者の方ですね。弟者に比べて若干抜けた雰囲気があります」

顔を上げると、画面には科学技術庁特別相談役という長いテロップと共に兄者の名前と顔が映し出されている。

画面の中の兄者は、私が知る範囲での最大級の真面目な表情で技術的な話をしている。
それを静かに聴き入る人々。
兄者もそして兄者を取り巻く環境も、互いに慣れて来たという所だろうか。

57 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/11(土) 23:54:30 ID:cM2vo0ws0

(‘_L’) 「しかし、なかなか厳しい事を言うねえ」

川 ゚ -゚) 「遠慮せずに好きにやってくれとは言ってますしね」

兄者は現状で作り得る代替エネルギーに関して、忌憚なき意見を述べている。
簡単にまとめると、環境との両立を図った上で代替エネルギーを開発するには、現状の地球の資源では厳しいという事らしい。

(‘_L’) 「まあ、無公害で無尽蔵のエネルギーなんて、そんな虫のいい話があるとも思わないけどね」

川 ゚ -゚) 「昔はあったみたいですけどね。余計なおまけも付いて来たみたいですけど」

テレビの中の兄者が1つ礼をして、壇上から下がる。
次に出て来た地球の科学者らしき人は、苦い表情を浮かべていた。
今の兄者の話の後に楽観論を述べるわけにもいかないのだろう。

私は仕事に戻るべく、再び書類に目を落とす。

川 ゚ -゚) (しかし、兄者もだいぶ様になって来たな)

兄者、それに弟者は地球に来てからは先のテロップにあった様な大層な肩書きと共に科学技術庁に勤めている。
もっとも、本来の所属は外務課で、現在は外務課からの出向扱いではあるのだが。

彼ら2人の知識、技術は地球にとって大変有用なもので、その配属先はかなりもめた結果、今の形に落ち着いている。
当然、任意協力という形ではあるが、今の所2人は現在の境遇に満足している様で一安心だ。

58 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/11(土) 23:54:48 ID:cM2vo0ws0

AA界の皆は形式上は亡命という形を取り、既にこの地球の一般市民である。
兄者達以外の面々も、一応は外務課所属という事になってはいるが、これといって仕事をしているわけではない。

モララーの馬鹿やトソン達による警護というか監視というかが付いてはいるが、今は好きにこの辺りを見て回っている。
この世界で生きる為に見聞を深めているという所か。

もっとも、ツンやワカッテマス等は兄者達が既に働いているという事もあり、自分達に出来る事はないか色々と探している様だ。

川 - -) (あまり肩肘は張らず、好きに生きて欲しいとは思うけどな……)

そうはいってもAA界の皆も、私と同等以上の体験をして来た。
自分の在り方やこの世界の行く末など、どうしても気になってしまうのだろう。
彼ら自身に責任はないとはいえ、自分のいた世界が滅ぶという事実を目の当たりにしたのだから。

そんな事もあってか、時々ここに来て書類整理を手伝ってくれたりもする。

ジリリリリン♪ ジリリリリン♪

そんな折、静寂を破る冗談の様な、しかしこの場に即している様な古めかしい黒い電話が鳴り響く。
相も変らぬ前世代の遺物ではあるが、未だちゃんとその役目は果たしてくれるのだから問題はない。

川 ゚ -゚) 「はい、外務課……ってペニサスばあちゃんか。今日はどうした?」

電話はペニサスさんからだった。
いつかのようにまた次元の裂け目絡みということではない様だ。

59 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/11(土) 23:56:04 ID:cM2vo0ws0

あれから次元の裂け目の発生はどんどん少なくなっている。
地球が滅びの星ではなくなり、AA界との繋がりも途切れるわけだからそれは当然の事だろう。
次元の裂け目が発生しなくなるには、もうしばらくの時間がかかるだろうというのが兄者達の見立てでわかっている。

完全に発生しなくなった時が、AA界との繋がりが完全に切れた時だという事を思えば感慨深いものはある。

川 ゚ -゚) 「またビロードが何かやらかしたか?」

こちらに戻って来てから知ったのだが、ペニサスさんは結構な資産家らしく、あの辺り一帯はペニサスさんの土地らしい。
そこの風景がAA界のそれに近いこともあり、ブーン達を住まわせてもらっている。
一面田んぼが広がる遮蔽物のない空を、ブーンはとても気に入っている様だ。

川 ゚ -゚) 「違う? じゃあ……ああ、そうなのか。わかった、わざわざありがとう」

ペニサスさんに礼を述べ、受話器を置く。
こちらに視線を向ける課長に気付いた私は、電話の内容を説明する。

川 ゚ -゚) 「あいつらがこっちに向かってるそうです。今日はこちらの手伝いをすると」

噂をすれば、というやつではないが、今日は皆がここに来るらしい。

(‘_L’) 「それは賑やかになりそうだね」

60 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/11(土) 23:57:00 ID:cM2vo0ws0
  _,
川 ゚ -゚) 「賑やか過ぎる気はしますけどね。手伝われても逆にはかどらなかったりするし」

少し顔をしかめて見せた私に、課長は苦笑いを浮かべている。
多分見透かされているのだろう。私が本当は嫌がっていないことを。

(‘_L’) 「何かお茶菓子はあったかな……」

そういって机の引き出しの中を漁る課長に、今度は私が苦笑いを浮かべる。
親戚の子が遊びに来ることを聞いたおじいちゃんの様な反応だと思ったが、口には出さずにおいた。
流石に課長もおじいちゃん扱いは傷付くだろうし。

川 ゚ -゚) 「……今の内にお湯を沸かし直しておきますかね」

そう課長に告げ、立ち上がろうとした私だが少し遅かったようだ。
外から騒がしい声がこちらに近付いて来るのがわかった。

(*><) 「こんにちはなんです!」

( <●><●>) 「まだおはようございますな時間ですよ、ビロード。おはようございます、クー、課長さん」

(*‘ω‘ *) 「おはようだっぽ」

ドアが勢いよく開かれ、3つの元気な声が立て続けに飛んで来る。

61 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/11(土) 23:57:33 ID:cM2vo0ws0

ξ゚听)ξ 「おはよう、クー」

( ^ω^) 「おはようだお!」

続いてツンとブーンが顔を見せる。
ブーンは飛んでこそいるが、基本的に風任せの飛行なので、今は身体に巻きつけられた紐をツンが引っ張って誘導している。

川 ゚ -゚) 「おはよう。ってか、早いな」

(*><) 「お仕事手伝いに来たんです!」

(*‘ω‘ *) 「お前は邪魔になるだけだっぽ」

やけに張り切った様子のビロードだが、すぐさまちんっぽっぽに揶揄される。
そんな事はない、そんな事はあるとお互いに言い合い、互いに同意を求める視線をこちらに向けて来た。

川 ゚ -゚) 「まあ、適材適所という言葉もあってだな」

( <●><●>) 「それは遠回しにビロードがこの仕事に向いていないと言っているのはわかってます」

(;><) 「ひどいんです!」

62 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/11(土) 23:58:08 ID:cM2vo0ws0

川 ゚ -゚) 「冗談だよ。確かに書類整理には向いていないが、他にやることもあるからな」

何かしら仕事を与えてやらないと収まりそうもないビロードに、取り敢えず全員分もお茶を淹れて欲しいと頼む。

(*><) 「了解したんです!」

そう言うや否や嬉しそうに駆け出すビロードの後を、あいつ1人だと絶対失敗するからと、ちんぽっぽが追う。
そんな2人の様子に肩をすくめながらも、ワカッテマスもその後に続く。

川 ゚ -゚) 「随分な張り切りようだな」

ξ゚听)ξ 「兄者の放送観たからでしょうね」

川 ゚ -゚) 「なるほど」

大方、自分達と同じ境遇の兄者達が、この星の為にがんばってるのを目にして触発されたのだろう。
自分達がこの星の為に出来る事を模索中の彼らが、その光景にいても立ってもいられなかったのは容易に想像出来る。

ξ--)ξ 「焦ってもしょうがないのにね」

そう呆れた様に言うツンではあるが、部屋の隅から椅子を持ち出し、私の席の隣に置いて、手伝う準備は万端のようだ。

川 ゚ー゚) 「時間はあるんだ。じっくり考えればいいさ。ツン、こっちの書類を発注部署ごとに分けてもらえるかな」

ξ゚听)ξ 「わかったわ。こっちに並べていいの?」

63 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/11(土) 23:59:26 ID:cM2vo0ws0

川 ゚ -゚) 「ああ、頼む」

( ^ω^) 「僕も手伝えることないかお?」

川 ゚ -゚) 「そうだな……取り敢えずツンが間違えないか見てて欲しいのと私の座布団かな」

( ^ω^) 「お!」

ブーンは私の椅子の上に着陸し、半身をツンの机の方に伸ばす。
座布団扱いはひどい様に見えるが、丈夫だし、私が乗ったぐらいではどうということもない。
本人も人を乗せるのが好きな上、座り心地も最高だからこれもまた適材適所なのかもしれない。

(゚、゚*トソン 「座布団なら私が」

( ・∀・) 「いえいェ、私が」

川 ゚ -゚) 「あ、ツン農水省のやつだけ先にこっちに回してくれ。どういう話かひとまず目を通しておきたいからな」

いつの間にかいた馬鹿2人に目を向けることなく、私はツンに細かい注文をする。
まあ、皆がここにいる以上、送り届けたやつがいるのだから、馬鹿共がここにいたのはわかっていたのだが。

ξ゚听)ξ 「農水省ね、了解」

64 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/12(日) 00:00:04 ID:.7.sWpeQ0

( ^ω^) 「お、ツン、これ1枚間違ってるお」

ξ゚听)ξ 「どれよ? あ……えっと、これはあんたが間違いに気付くか試したのよ」

( ^ω^) 「お、ちゃんと気付いたお!」

ξ゚ー゚)ξ 「偉い偉い」

川 ゚ー゚) 「じゃあ、その書類をもらおうか」

( ・∀・) 「アハハハァ、完全無視でェすね」

(゚、゚トソン 「お前なんかが先輩の眼中に入るわけないだろ」

(*><) 「お茶淹れてきたんです!」

( <●><●>) 「そんなに走ると転びますよ、ビロード」

(*‘ω‘ *) 「書類には絶対こぼすなっぽ」

川 ゚ -゚) 「こぼすならこっちの馬鹿2人にこぼしてくれよ」

( ・∀・) 「ウフフ、ようやくこちらにかま──どわっちゃァァァァ!?」

(;><) 「ご、ごめんなさいなんです!」

65 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/12(日) 00:01:07 ID:.7.sWpeQ0

川 ゚ -゚)b 「ナイスコントロール、ビロード」

(;><) 「わ、わざとじゃないんです!」

( <●><●>) 「だから言いましたのに……。お茶をどうぞ」

(‘_L’) 「ありがとう、ワカッテマス君」

(*‘ω‘ *) 「全く……、ほら、ビロード、さっさと雑巾持って来るっぽ」

(゚、゚トソン 「雑巾はここにあるから大丈夫ですよ」

(;・∀・) 「アハハァ、見覚えのあるハンカチーフですねェ」

( ^ω^) 「僕が拭いてあげるお」

川 ゚ -゚) 「お前が汚れるから駄目だ。それより仕事だ仕事」

( <●><●>) 「すみませんね、騒がしくて」

(‘_L’) 「いやいや、こういう賑やかなのもいいものじゃないかな」

賑やか過ぎて仕事どころじゃない状況に、私は頭を抱えつつも口の端に浮かぶ笑みを堪える事が出来ない。
しかしこれが私の今で、今の私と共に歩んでくれる人達のいる世界なのだ。
だから私は皆と共に答えを探して行こうと思う。彼が滅びの道を選ばずに済むように。

66 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/12(日) 00:01:54 ID:.7.sWpeQ0

・・・・
・・・

川 ゚ -゚) 「ただいま」

今日は普段よりは少し早い時間に帰宅した。
ブーン達を連れてきた車で送ってもらったから、バスで帰るよりは早く着いたのだ。
本当は私が運転しようとしたのだが、ブーン以外の全員に止められてしまった。

AA界で車の話をした時は、皆乗せて欲しいと目を輝かせてたのに、いざ乗せてやると口を揃えて私の運転する車には
乗りたくないと言い出した。
私の運転を気に入ってくれてるのはブーンとミセリの2人だけという寂しい状況である。

川 ゚ -゚) 「お? ミセリ?」

いつもなら脱兎のごとく走って来て迎えてくれるミセリの姿がない。
寝てしまっているのかと思いながら部屋に入ると、部屋の奥の方、箪笥の上にミセリの姿はあった。

川 ゚ -゚) 「なんだ、いたのか。ただいま」

ミセ*゚д゚)リ 「クー、来た、花、おかえり」

やけに興奮した様子ながらも、一応のおかえりの言葉はかけてくれるミセリ。
私は着替えは後回しにして、ミセリの方へ近付く。

67 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/12(日) 00:03:08 ID:.7.sWpeQ0

川 ゚ -゚) 「そんなに慌ててどうしたんだ?」

ミセ*゚д゚)リ 「花、クー、花」

川 ゚ -゚) 「花……?」

花という言葉を連呼するミセリが何を言いたいのか、私はすぐに理解し、手に持っていたバッグを放り投げて箪笥に駆け寄る。

川;゚ -゚) 「ワタナベ!?」


           ,、 
  ミセ*゚д゚)リ   ( )x( )
 "(\ )/)"  ヽ||/
    彡ミ      | ̄|
   ┛┗      ̄

               ,、 
  ミセ*゚ -゚)リ   从人从
   (/))    ヽ||/
    彡ミ      | ̄|
   ┛┗      ̄

 ミセ*゚〜゚)リ 从'、从ト
  (\ )/)   ヽ||/
    彡ミ      | ̄|
   ┛┗     ̄

68 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/12(日) 00:04:29 ID:.7.sWpeQ0

 ミセ*゚ー゚)リ  从'ー'从从
  (\ )/)   ヽ||/
    彡ミ      | ̄|
   ┛┗     ̄

从'ー'从 「ただいま、クーちゃん」

川 ゚ー゚) 「おかえり、ワタナベ。それと……」

私は、ようやく咲いた一輪の花に笑顔を向ける。そしてその背後のもう一輪の花にも、同じく微笑みかける。
しかしながら彼女は、いささか不機嫌そうな顔でそれに応じた。

从 -∀从 「……あの野郎、余計な事しやがって」

川 ゚ー゚) 「馬鹿を言うな。私にとっては最高のプレゼントだよ。……おかえり、ハイン」

ミセ*゚ー゚)リ 「おかえり、ワタナベ、おかえり、ハイン」

从 ゚∀从 「……ただいま、っつーのも変な話だな」

川 ゚ -゚) 「いいじゃないか、ただいまで。これからはここがお前達の世界なんだからさ」

从 ゚∀从 「……わかってるさ、生かされた意味ぐらいは。クー、お前の生きるこの世界、ちゃんと見届けてやるよ」

川 ゚ー゚) 「ああ、よろしく頼むよ」


 epilogue 了 〜 君と共に歩む、私の世界の始まり 〜


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