16 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/27(土) 00:10:04 ID:ZI0GH5jQ0

【TV】<「円相場の動向が……戦後最大の……」

( ^ω^)つ[] ピッ

【TV】<「原発が……ベクレルの……」

( ^ω^)つ[] ピッ

【TV】<「ただ、こんなもんで辞めないといけないのが……」

( ^ω^)つ[] ピッ

【TV】フツ

( ^ω^)「何だかどこもかしこも景気の悪いニュースばっかだお」

( ^ω^)「街逝く人々が、皆諦めた様な気力のない顔で歩いていく」

( ^ω^)「世も末だお」

僕の名は内藤ホライゾン。
親しい人たちからはブーンと呼ばれてるお。

17 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/27(土) 00:12:19 ID:ZI0GH5jQ0
  _
( ゚∀゚)「何が街逝く人々だ。お前、外に全然出てねえだろ」

( ^ω^)「んお? ジョルジュ、いつの間に来たんだお? おいすー」

今日も日課であるお昼のニュース巡りに勤しむ僕の部屋に、数少ない友人の一人であるジョルジュがやって来た。
  _
( ゚∀゚)「さっきな」

( ^ω^)「てか、どうやって入ったお?」
  _
( ゚∀゚)「どうやってって、呼んでも誰も出ねえし、鍵は開いてるしで勝手に上がらせてもらった」

( ^ω^)「開いてたって……、無用心だおね」
  _
( ゚∀゚)「お前の家だろうが。何を他人事みたいに」

( ^ω^)「カーチャン、鍵閉め忘れて出てったのかお」

( ^ω^)「近頃物騒なニュースが多いのに、危機意識が足りないお」
  _
( ゚∀゚)「何でそんな上から目線なんだよ」

18 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/27(土) 00:13:21 ID:ZI0GH5jQ0
  _
( ゚∀゚)「つーか、その物騒な事件を期待してたりな」

(;^ω^)「嫌な事言うなお」
  _
( ゚∀゚)「学校にも行かず、働きもしない穀潰しの息子なんざいっそ……」

(;^ω^)「僕は今モラトリアム期間中なんだお」

(;^ω^)「来るべき時が来たらちゃんと働くお」
  _
( ゚∀゚)「ホントかよ」

( ^ω^)「ホントだお、きっと……」
  _
( ゚∀゚)「……」

( ^ω^)「いつか……多分……その内……」
  _
( -∀-) ハァ……

( ^ω^)「無言で深いため息吐くなお。罵倒されるより堪えるお」

19 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/27(土) 00:28:36 ID:ZI0GH5jQ0

( ^ω^)「で、ジョルジュ、今日は何の用だお?」
  _
( ゚∀゚)「いんや、用ってほどのもんはねえんだが」

僕とジョルジュは子供の頃からの友達だ。
おそらく今日は大学が午前中で終わったのだろう。
先ほどから口調は多少厳しいが、これでも僕の事を心配してくれているのだろう。

そんな気の置けない親友ジョルジュに、僕は温かな言葉をかける事にする。

( ^ω^)「用が無いなら帰れお」
 _
(;゚∀゚)「おま、それがわざわざ遊びに来てやった客に言うセリフかよ」

( ^ω^)「手土産一つも持たずに手ぶらで家の敷居を跨ぐような奴は客として認めないお」

もちろん冗談ではあったのだが、ジョルジュはそんな僕の言葉に何やらカバンの中を漁り始めた。
  _
( ゚∀゚)「よろこべ、いつのかわからないガムならあったぞ」

( ^ω^)「いらねえお。つーか相変わらずお前のカバンはラビリンスだな」

20 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/27(土) 00:44:23 ID:ZI0GH5jQ0

ふと僕は、カビパン職人というジョルジュの小学生時代のあだ名を思い出した。
昔から整理整頓の苦手なやつである。
  _
( ゚∀゚)「お前の部屋だって似たようなもんじゃねえか」

( ^ω^)「失敬な。この一見乱雑に放置されたようで、その実機能的に配備された僕の部屋を」

( ^ω^)「お前のゴミボックス的なカバンと一緒にすんなお」
  _
( ゚∀゚)「ゴミじゃねえし。何ならここでこのカバンひっくり返してやろうか?」

( ^ω^)「すぐ飲み物お持ちしますんで、それだけはご勘弁くださいお」
  _
( ゚∀゚)「俺、炭酸な」

( ^ω^)「ありもんで我慢しろお」

とまあ、くだらない話を言い合うのが僕らの常で、そこには何の打算もない、きわめて普通の友人関係があった。
僕はそんな日々を、浪費してるような若干の後悔と、多少の充足感を合わせた様な生ぬるい空気の中、ただ生きていた。

21 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/27(土) 01:10:38 ID:ZI0GH5jQ0

そんな緩やかな日が、いつまで続くのかわからない。
けれど僕は、そんな日々がいつまでも続く事を願い、同時に心のどこかで、それがいつか終わるものである事を理解していた。




 ( ^ω^)ブーンは魔王を倒すつもりはなかったようです




.

23 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/27(土) 23:52:24 ID:Q.xxFkO.0

( ^ω^)「同窓会?」
  _
( ゚∀゚)「そうそう、小学生の時のって話だ」

その日は今一つ空模様の優れない、曇りの日だった。
いつもの様に僕の部屋に来ていたジョルジュが、思い出したようにその話を口にした。

( ^ω^)「何でまたこんな時期に?」
  _
( ゚∀゚)「知らね。つーか、こんな時期って言っても、同窓会に相応しい時期自体が俺にはわかんねえし」

( ^ω^)「僕もだお」
  _
( ゚∀゚)「何だそりゃ」

( ^ω^)「何となく反射的に答えちゃっただけだお」

( ^ω^)「行きたくねえって気持ちが前面に出た結果と思われる」

24 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/27(土) 23:57:32 ID:Q.xxFkO.0
  _
( ゚∀゚)「あれ、行かねえの、お前?」

( ^ω^)「高卒現ニートがどの面提げて行けと」
  _
( ゚∀゚)「そのぽっちゃり面しかねえだろ」

( ^ω^)「ぽっちゃりじゃねえし」
  _
( ゚∀゚)「別にいいんじゃね? 今のご時世、ニートもフリーターもそんな珍しくもねえし」
  _
( ゚∀゚)「これが三十台とかだったら笑えねえけど」

( ^ω^)「正直、同窓会というものに全く魅力を感じないお」

( ^ω^)「そもそも小学生の頃の思い出ってあんま覚えてなくね?」
  _
( ゚∀゚)「ある程度は覚えてるぞ。高学年になってからは特に」

25 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/28(日) 00:04:25 ID:xVFjSn6E0

( ^ω^)「その辺はキャラ差だお」

( ^ω^)「社交性に欠けた僕は、友だちもほぼいなかったし」
  _
( ゚∀゚)「ああ……」

( ^ω^)「大体、ジョルジュと遊んだ記憶しかねえお」
  _
( ゚∀゚)「そういやそうだったな」

そう言うなり、ジョルジュは少し申し訳なさそうな顔でテレビの方に目を向ける。
大方、嫌な事を思い出させたて申し訳なかったとでも思っているのだろうか、別に気にしてない。

元来、人付き合いが得意ではない方の僕は、一人でいる事に苦はなかったのだから。

ジョルジュとはこうやって気兼ねなく話せているが、同窓会の場に出たらきっと、
話しかけられてもろくに返事も出来ずに陰鬱な顔をしているだけになるだろうと思う。
  _
( ゚∀゚)「ま、行きたくないなら無理に行く事はないさ」

26 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/28(日) 00:07:34 ID:xVFjSn6E0

( ^ω^)「ジョルジュは行くのかお?」
  _
( ゚∀゚)「そうだな……、お前が行かないなら俺も行かねえよ」

( ^ω^)「僕の事は気にするなお」
  _
( ゚∀゚)「別に気にしてるわけじゃねえし」

ジョルジュは僕と違って、その生来の明るい性格からクラスの中心にいるような子だった。
たまたま家が近かったから僕と仲良くもしてくれていたたが、僕以外に友だちがいないわけではない。
今だって友だちの数は多いだろう。

気を使ってくれるのはありがたいが、僕が重石になるような付き合いは本意ではない。

( ^ω^)「かわいい女の子もいっぱい来るかもしれないお?」
  _
( ゚∀゚)「どうだろな……って、女の子で思い出したけど、お前、小学生の頃仲の良い女の子いたよな?」

( ^ω^)「は……?」

27 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/28(日) 00:11:36 ID:xVFjSn6E0

( ^ω^)「……」

( ^ω^)「……いたっけ?」
  _
( ゚∀゚)「いたって、ほら……確か……」
  _
( ゚∀゚)「……あれ、何て名前だっけ?」

( ^ω^)「僕に聞くなお」

( ^ω^)「つーか、名前出て来ないくらいだから、きっとそんな子はいなかったんだお」

なおも首を捻りつつああでもないこうでもないと考えるジョルジュを余所に、僕は視線をテレビに向ける。
画面には相変わらず景気の悪い話題が映し出されている。

正直な所、僕はジョルジュの話に心当たりはない。
面倒臭くて誤魔化しているわけではなく、本当に覚えがないのだ。

かと言って、ジョルジュが適当な事を言っているとも思い難いので、卒業アルバムでも見れば何か思い出すのかもしれないが、
どこに仕舞い込んだかわからない物を探すのも面倒なので、自分からはその案を口にはしない。

28 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/28(日) 00:15:35 ID:xVFjSn6E0
  _
( ゚∀゚)「明日が雨か。面倒だな」

どうやら思い出すのを諦めたのか、ジョルジュは天気予報を観てぽつりと呟いた。

( ^ω^)「面倒なら休めばいいお」
  _
( ゚∀゚)「昔、ハワイの学校は雨が降ったらお休みだと信じてた時代がありました」

( ^ω^)「あれって、暗にハワイの文明レベルが低いって馬鹿にしてんのかおね」
  _
( ゚∀゚)「暑いから青空教室って発想じゃねえの?」

( ^ω^)「全員同じ名前とか」
  _
( ゚∀゚)「童謡は何を伝えたいのかよくわからないものが多いよな」

それっきり、ジョルジュから同窓会の話はされる事はなかった。
僕はジョルジュの帰り際、ジョルジュを玄関まで見送るという普段はしない行動をとった。
どういう風の吹き回しだとジョルジュは訝しんでいたが、何の事はない、ただ郵便を確認したかっただけだ。

29 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/28(日) 00:20:14 ID:xVFjSn6E0
  _
( ゚∀゚)「んじゃ、またな」

( ^ω^)「もっと有意義な時間の過ごし方を覚えろお」

そんな僕の言葉にジョルジュはただ笑って手を振った。
僕は苦笑いを浮かべながら、また、と呟くように言葉を続ける。

( ^ω^)「さてと……」

僕は郵便物を確認する。
さして探すまでもなく目的の物は見付かった。
きっと渡しても仕方ないだろうと、そのままにしておかれたのだと思う。

( ^ω^)「どうしようかお」

僕は同窓会の出欠確認の葉書を手に考え込む。
僕の気持ちは先にジョルジュに伝えた通りだが、ジョルジュはきっと同窓会に行きたがっている。

それも僕を連れて。
理由は色々あるだろうが、一言に要約すれば、世話焼きのジョルジュのお節介である。

30 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/28(日) 00:26:47 ID:xVFjSn6E0

恐らくニートな上、ほぼ引き篭もりの僕を心配しての行動だ。

( ^ω^)「全く……」

迷惑な事だ。
けれど、ありがたい事でもある。

一体どちらが僕の本音なのだろうか。

( ^ω^)「どっちにせよ、どうするか決めるお」


僕は……

 1 ジョルジュの気持ちに答え、出席する事にした
 2 申し訳ないけどやはり行けない
 3 僕は行かないが、ジョルジュだけは出席させよう

安価
>>31


31 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/28(日) 00:31:56 ID:2U/n3drs0
1


32 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/28(日) 23:09:37 ID:boq04tHs0

( ^ω^)「行くか……」

行きたいとは思わないが、行った所で不都合があるわけでもない。
小学生の頃の思い出は希薄だとは言ったが、ただそれだけの話で、別にいじめられたりしていたわけではないのだし。

ほんの数時間、ただ座っていれば済む話なのだ。

( ^ω^)「ま、何とかなるお」

見ようによってはポジティブにも取れる僕の態度。
しかし、いい加減とも曖昧とも取れるそれが、今の僕を作り出しているともいえる。

( ^ω^)「それで、開催はと……」

僕は同窓会の日時と場所を確認し、出席の欄に丸を付けた葉書を手に外に出た。
ほぼ引き篭もりとはいえ、たまに深夜のコンビニに出るくらいの身だ。

外に出る事にこれといった感慨も湧く事はない。

( ^ω^)「明日は雨みたいだおね」

さっき見た天気予報はきっと当たるのだろう。
そんな事を考えながら、僕は門扉を開け、通りに出た。

48 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/29(月) 00:16:46 ID:Am0fGD4M0

───────────
─────



( ^ω^)「意外と集まるもんだおね」
  _
( ゚∀゚)「だな。まだ珍しがるほど時間も経ってないってのにな」

同窓会当日、僕はジョルジュと共に指定された場所を訪れた。
そこはごく普通のチェーン店の居酒屋だった。
  _
( ゚∀゚)「参加者が少なかったら、一学年まとめてやるみたいたったらしいな」
  _
( ゚∀゚)「それなりに参加者がいたからクラス単位だってさ」

ジョルジュはいつの間にかあの葉書には記載されていなかった情報も仕入れている。
多分、参加する事が決まってから誰かに聞いたのだろう。

小学生以来の友だちは僕以外にもいるはずだから、その辺から聞いたのだろう。
幹事の内の誰かも知っているのかもしれない。

49 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/29(月) 00:21:14 ID:Am0fGD4M0

(^ω^ )「それじゃあ、僕はここで」
  _
( ゚∀゚)「おう、車に気をつけて帰れよ……って馬鹿!」

踵を返し、そそくさと立ち去ろうとする僕の襟首をジョルジュが掴む。
  _
( ゚∀゚)「何でここまで来て帰んだよ」

( ^ω^)「居酒屋って、リア充のすくつっぽいイメージしないかお?」
  _
( ゚∀゚)「お前も今日はリア充すればいいだろ? ほら、行くぞ」

ジョルジュは掴んだ手をそのままに、僕を引きずりながら居酒屋に向かう。

( ^ω^)「帰るってのは冗談だお。だから離してくれお」
  _
( ゚∀゚)「店ん中に入ったら離してやるよ」

実際の所、帰ると言ったのはほんの冗談だったのだが、ジョルジュは本気にしてるらしい。
それはきっと、ジョルジュがヒキニートという僕の現状を僕以上に重く受け止めている所為なんだろうと思う。

僕自身はそれほど重く考えていないというのに。
何だか申し訳ない話だ。

50 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/29(月) 00:27:54 ID:Am0fGD4M0

ジョルジュは言葉通り、居酒屋に入ると僕から手を離した。
その後すぐに店員に何かを尋ね、今度は僕の手を取り奥に進む。
  _
( ゚∀゚)「こっちの座敷の部屋だってよ」

( ^ω^)「わかったから手は離せお」
  _
( ゚∀゚)「離したら逃げるだろ?」

( ^ω^)「ここまで来て逃げないお」

( ^ω^)「そんなアクティブなキャラでもないし」
  _
( ゚∀゚)「いいから行くぞ」

( ^ω^)「いや、行くからマジで手は離せって」

( ^ω^)「変な誤解されるだろうが」

僕の言葉を聞くつもりは毛頭ないのか、ジョルジュは僕の手を引いたまま、正面のふすまを開ける。
既に中にいた十数人の目が、一斉に僕らの方へ向けられる。
  _
( ゚∀゚)「よう、久しぶり」

( ^ω^)「……久しぶりだお」

僕はジョルジュに促され、全く懐かしさを感じられない面々に向かい軽く頭を下げた。

51 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/29(月) 00:36:25 ID:Am0fGD4M0

  「乾杯」

( ^ω^)つU「乾杯」

予定時間通りに同窓会は始まった。
僕はジョルジュとは違うテーブルの席に着いている。

挨拶の直後から、いろんな人に話しかけられるジョルジュから離れ、外れの方に座った。
それに気付いたジョルジュがこちらの方に来ようとしたようだが、
昔ジョルジュと仲が良かったのであろう面々が、自分達のそばに座らせたようだ。

恐らくそうなるであろう事はわかって、僕は離れた席に座った。
こんなとこにまで来て、僕だけにかまうこともない。

大体、来る時も別々に行くつもりだったのだが、それはジョルジュに阻まれた。
多分、そうすると僕が来ないと思ったのだろう。

僕の現況を鑑みれば、そう思うのも仕方のない話ではあるが。

52 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/29(月) 01:06:01 ID:Am0fGD4M0

( ^ω^)「ふぅ……」

思わず漏れるため息。
期待もしていなければ予想もしていた話ではあるが、やはり暇を持て余す事態になりそうだ。

誰かが話しかけてくる事もなければ、誰かに話しかける事もしない。
全体的にはそれなりに盛り上がっているようだが、よくよく見ると一部僕とそう変わらぬ状況の人もいる。

( ^ω^)(まあ、同じ状況にあったとしても、よく知らないし、話したりはしないんだけどね)

退屈だが、飲み食いだけしてればいいというのも悪い話ではない。
今の僕の暮らしとさほど変わる事はないし。

僕はそう結論付けると、割り切って飲み食いに専念する事にした。

( ^ω^)「ビールはいまいち美味しくないお……」

( ^ω^)「てか、よく考えたら僕未成年だおね」

リラックスした途端、自然と独り言が口を吐く。
一人の時間が長いと独り言は増える傾向にあると思う。

ぼそぼそとした小さな声だから、周りには聞こえていないのだろうけど。

53 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/29(月) 01:26:49 ID:Am0fGD4M0

lw´‐ _‐ノv「むむ、ここに犯罪者を発見したぞ。者ども、ひっとらえよ」

( ^ω^)

いつの間にか僕の隣にいた見知らぬ女性が僕に手羽先を突き付けている。
芝居がかった割に、あまり抑揚の感じられなかったその言葉から察するに、
聞こえないと思っていた僕の独り言はしっかりと拾われていたようだ。

( ^ω^)「えーっと……」

色々と言いたい事はあるのだが、まずこれだけは言わなければならない事がある。

( ^ω^)「1 どちら様ですかお?
      2 未成年って言っても、もうすぐ誕生日だからセーフだお
      3 何で手羽先?
      4 すみません、ちょっと花を摘みに行って来ますお      」

安価
>>54


54 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/29(月) 01:35:04 ID:8C3vGmpoO
>>53 
短編も続きものもさくさくよめて面白い 
ここは王道で


58 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/29(月) 23:16:04 ID:il.RX6eQ0

( ^ω^)「どちら様ですかお?」

僕は当然真っ先に浮かぶ疑問をそのまま口にした。

lw´‐ _‐ノv「人に名前を訊ねる時は、まず自分から名乗れと学校で習わなかったのかね?」

(;^ω^)「えっと……学校では習った覚えはありませんお」

lw´‐ _‐ノv「奇遇だな。私もだよ」

(;^ω^)「はあ……」

何だかちょっと関わってはいけない類の人だったのかもしれない。
それっきり、彼女は黙々と手に持っていた手羽先を食べ始めた。

(;^ω^)(何だったんだお?)

僕は視線を彼女から手元のグラスに戻し、ビールを一気にあおった。
美味しくないという感想は変わる事はない。

59 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/29(月) 23:23:03 ID:il.RX6eQ0

lw´‐ _‐ノv「退屈……モグモグ……なのかね……ムシャムシャ……」

(;^ω^)「すみません、食べるか話すかどっちかにしてもらえませんかお」

再び話しかけられた事に若干驚きながらも、僕は即座に突っ込んでいた。
初対面の人に突っ込むなどという芸当が、人見知りの僕に出来てしまうくらい突っ込み所の多い人だ。

lw´‐ _‐ノv モグモグ

(;^ω^)(ああ、そこで食う方を選ぶんだ……)

lw´‐ _‐ノv モグモグ

lw´‐ _‐ノv ゴクン

lw´‐ _‐ノvつ スッ

lw´‐ _‐ノv モグモグ

(;^ω^)「って、また食うのかよ……」

60 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/29(月) 23:28:07 ID:il.RX6eQ0

lw´‐ _‐ノv「……で、君はどうしてそんなに退屈そうなのかね?」

( ^ω^)「いや、まあ、見ての通りの状況なんで」

それから更に、皿に盛られていた手羽先を食べ尽くした後で、ようやく彼女は話す方を選んでくれた。

見ての通りの状況、誰にも話しかけられず、誰にも話しかけずに黙々と食事をするだけの僕の状況は、
近くにいた彼女も気付いていただろう。

lw´‐ _‐ノv「なるほど。では昔も退屈だったのかね?」

( ^ω^)「昔?」

昔と、突然言われても何の事かさっぱりわからない。
ただ、そう言われれば確かに今の状況は昔と似た所はあるかもしれない。

皆が和気藹々と話している円を、一人外から見ているこの状況は。

( ^ω^)「何で昔の話なんか……」

何で初対面で昔の事を知っている様な口ぶりで話すのか。
そんな疑問が浮かんだが、すぐに自分が色々と失念していた事を思い出す。

61 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/29(月) 23:33:45 ID:il.RX6eQ0

lw´‐ _‐ノv「同窓会に来て昔の話をするのが不自然かね?」

(;^ω^)「いや、極めて自然ですお」

そうなのだ。
すっかり忘れていたがここは同窓会の場。
昔の思い出を語ったり、近況を話したりするのが至って普通の場なのだ。

そもそも彼女を初対面と思い込んでしまっていたが、この場にいるという事は恐らく同級生なのだ。
初対面であろうはずがない。

以上を踏まえて僕は改めて聞き直す必要がある。

( ^ω^)「えっと、僕は内藤ホライゾンですお。ブーンと呼ばれたりもしてましたお」

lw´‐ _‐ノv「いや、知ってるけど」

( ^ω^)「お?」

62 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/29(月) 23:38:45 ID:il.RX6eQ0

lw´‐ _‐ノv「普通、同級生の名前ぐらい覚えてるもんだだろ」

それほど昔の事じゃないし、外見もそう極端には変わってないしと彼女は言う。

まあ、確かに正論ではあるがここまでの捕え処のない彼女との会話を振り返ると、
正論を振りかざされるのがものすごく理不尽に感じてしまう。

大体、先に名乗れと言われたあれはなんだったのかと。

lw´‐ _‐ノv「故に、わざわざ改めて名乗る必要はないだろ」

首を軽く傾げ、確認するような目で僕のを見る彼女。
その様に朧げな記憶が僕の中にちらつく。

( ^ω^)「すみません、覚えてないんで名乗ってください」

朧げな記憶を頼りに、ほんのわずかの時間、彼女の事を思い出そうとしてみたが、思い出さなかったので諦めた。
忘れたのか、最初から覚えていなかったのか、彼女の名前は僕の中から浮かんでくる気配は微塵もない。

諦めはいい方の僕は、その旨を素直に伝える事にした。

lw´‐ _‐ノv「正直でよろしい」

63 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/29(月) 23:44:14 ID:il.RX6eQ0

そんな言葉に、これといって不機嫌な様子も見せることなく、彼女は居住まいを正し、僕に正対する。

lw´‐ _‐ノv「では、名乗って進ぜよう」

lw´‐ _‐ノv「我が名はシュール」

lw´‐ _‐ノv「素直シュールと申す。以後お見知りおきを」

( ^ω^)(素直……シュール……)

その名を頭の中で繰り返すも、やはり記憶が呼び起こされる事はない。
甚だ失礼な事だとは思うが、思い出さないものは仕方がないとも思う。

( ^ω^)「……何で所々時代がかってんですかお?」

lw´‐ _‐ノv「歴史は繰り返すものなのだよ」

( ^ω^)「はあ……」

どうにも扱い辛いという印象は拭えはしなかったものの、ようやく僕の中で彼女が何なのか判明した。
素直シュールという名のかつての僕の同級生らしいということだ。

64 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/29(月) 23:50:10 ID:il.RX6eQ0

( ^ω^)「それで、昔の話なんですけども」

lw´‐ _‐ノv「うむ」

( ^ω^)「どこかでお会いしましたっけ?」

lw´‐ _‐ノv「それがギャグなら五点、ナンパなら二点というところだな」

( ^ω^)「いや、そのどっちでもないですお」

( ^ω^)「ぶっちゃけ、名前聞いても全く思い出せなかったですお」

lw´‐ _‐ノv「ふむ、記憶喪失というやつか」

(;^ω^)「いや、そういうのじゃなくて」

彼女が何なのか判明はしたとは言ったが、それを僕自身が思い出したわけではない。
彼女、シュールさんの言葉を鵜呑みにすればという話なだけだ。

普通に考えれば、どこで会ったかなんて教室に決まっている。
けれど僕は教室で自分の席に座っているシュールさんの姿が思い出せずにいた。

65 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/29(月) 23:55:52 ID:il.RX6eQ0

( ^ω^)「つかぬ事をお伺いしますけど、小学生時代は病弱で学校を休みがちだったとかは?」

lw´‐ _‐ノv「うむ、病弱か病強かと問われれば、病中ぐらいだったかな」

lw´‐ _‐ノv「可もなく不可もなくといったところだな」

( ^ω^)「いや、病中だとずっと病気だったみたいですお」

話を逸らすつもりはないのだが、シュールさんと話しているとどうも口を挟まずにはいられない。
繋がらない文脈を流せるほど対人スキルは優れていないのだ。

lw´‐ _‐ノv「弱中強、小中大と何故中だけは同じなのだろうな」

( ^ω^)「近距離、中距離、遠距離とか、短距離、中距離、長距離とか、中だけ働かされすぎですおね」

lw´‐ _‐ノv「半がもっとがんばれば中の負担は減ると思うんだが」

( ^ω^)「半は元がない場合多いんですお。小ライス、半ライスはあっても全ライスはないとか」

lw´‐ _‐ノv「全裸、半裸はあっても小裸はないな」

どんどん逸れて行く話を戻すのは最早不可能な域に来ているかもしれない。
大体、何故自分にも率先的に話を逸らしているのだろうか。

66 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/30(火) 00:01:12 ID:QSKSAtyE0

lw´‐ _‐ノv「ハーフとかクォーターとか、英語だと細かすぎる」

( ^ω^)「日本語は大雑把過ぎるんですお」

僕が話を逸らす理由。
そんな物はない、と思いたい。

ただ単に慣れぬ酒で、酔っ払っているだけなのだろうと。

lw´‐ _‐ノv「ロングパンツってただのズボンだよな」

( ^ω^)「英語だとパンツの下にパンツを履くんですかおね」

等と言葉の応酬を交わしては来たが、僕は流石にこの中身のない会話を止めたいと思い出していた。
何というか不毛だし、どう考えても得る物はなさそうだ。
とはいっても、自分から下りるのも何だか負けた気がして面白くない。


僕は……

 1 諦めのいい僕はさっさと話を下りて仕切り直すことにした。
 2 逸らした視線の先にあったジョルジュに頷きかけた。
 3 日課のテレビ鑑賞で得た知識を総動員し、圧倒しようとした。
 4 パンツの話題にかこつけてシュールさんのパンツを覗こうとした。
 5 ※自由記述

安価
>>67


67 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/30(火) 01:03:58 ID:H2A3ozMM0
2


68 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/31(水) 01:06:04 ID:EFW5roIA0

逸らした視線の先にあったジョルジュに頷きかけた。

( ^ω^)" コクッ
  _
(  ゚∀)" コクッ

同じく頷いてみせたジョルジュに、僕はブロックサインを送る。


 /⊃
( ^ω^)⊃ ボ

⊂( ^ω^)⊃ ス

( ^ω^) ケ
∪   ∪

∩( ^ω^)∩ テ

  _
(  ゚∀)「……」
  _
( ゚∀゚) !!!

69 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/31(水) 01:08:13 ID:EFW5roIA0

  _  ∩
( ゚∀゚)彡 オ
  _  
( ゚∀゚)⊃ ツ
  _  
( ゚∀゚) パ
   ∪
  _  
( ゚∀゚) イ
  ⊂彡


( ^ω^)「……」
  _
( ゚∀゚)b

にこやかな笑みと共に、満足げにサムズアップするジョルジュ。
肝心な時に空気を読んでくれないジョルジュを諦め、僕は視線をシュールさんの方に戻す。

70 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/31(水) 01:11:39 ID:EFW5roIA0

lw´‐ _‐ノv「持病の発作かね?」

( ^ω^)「ずっと座りっ放しで肩が凝っただけですお」

僕は到底誤魔化し切れるとは思えない、いい加減な説明でシュールさんに応じる。
ジョルジュに僕の窮状は伝わらなかったが、不毛な会話が途切れただけでもよしとしよう。

lw´‐ _‐ノv「ジョルジュ君か」

シュールさんはそんな僕の説明ではなく、向いていた視線の先で理解したようだ。

lw´‐ _‐ノv「彼は息災のようだね」

( ^ω^)「彼は順調な人生を歩んでますお」

lw´‐ _‐ノv「その言い方だと、君はそうでもないのかな?」

( ^ω^)「まあ、ぼちぼちですお」

lw´‐ _‐ノv「墓地墓地か……南無」

(;^ω^)「何か違った響きに聞こえたんですが、多分想像してるものと違いますお」

71 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/31(水) 01:18:21 ID:EFW5roIA0

結局過去の話は深く語られる事がないまま、現在の話に移行しつつある。
自分が一番触れて欲しくない類の方向へ。

しかし、よくよく考えれば過去の話も似たような物だった事に気付く。

特に話したい事もなく、話せる事自体もない過去。

目の前いる同級生の顔すら覚えていない過去の話より、何もしていない現在の方がまだ話せる事に。

( ^ω^)「まあ、可もなく不可しかなくですお」

lw´‐ _‐ノv「つまり、まるで駄目ということだな」

( ^ω^)「平たく言えばそうなりますお」

感情の起伏を感じさせない、抑揚のない口調でシュールさんはばっさりと切り捨てる。
その身も蓋もなさが、僕には却ってありがたかったのかもしれない。

話せば確実に向けられる哀れみか蔑みの何とも言い難い微妙な視線がそこになかったからだろうか。

72 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/31(水) 01:29:52 ID:EFW5roIA0

( ^ω^)「シュールさんはどうなんですかお?」

lw´‐ _‐ノvV「チョベリグ」

( ^ω^)「さいですか」

lw´‐ _‐ノv「君は意外と動じないな」

( ^ω^)「多分、少し慣れて来てますお」

いい加減、脈絡なく進む会話のビーンボールにも慣れて来たらしい。
シュールさん自体に慣れて来たと言うべきか、突っ込むのに疲れて来たのは定かではない。

それにしても、ジョルジュ以外とこうも長い時間しゃべったのは久しぶりだ。
もう少しキョどるかと思っていたのだが、存外落ち着いている気がする。

相手が自分以上に挙動不審、言動の話だが、に見える所為かもしれない。
多分それがシュールさんの自然体なのだろうけども。

lw´‐ _‐ノv「ならば次は当てに行こう」

( ^ω^)「僕が退場しても、代わりは沢山いますからおkですお」

73 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/31(水) 02:01:59 ID:EFW5roIA0

僕はコップを口につけ、残っていたビールを飲み干す。
話しすぎて喉が渇いたからといって、少し飲み過ぎたかもしれない。

自分がどのくらいお酒が飲めるのか把握していないというのに、迂闊だったと思う。

lw´‐ _‐ノv「……何だかなぁ。君は以前にもまして覇気がなくなったな」

( ^ω^)「事勿れ主義に事が来ちゃったので」

慣れる所か段々とシュールさんに影響されて来ている様な気もする。
気付けば言った本人がよくわからない言葉を発している。

それとも僕は不慣れな酒に酔っているのだろうか。

lw´‐ _‐ノv「まあ、何だ。君はもっと率直に自分を示すべきだと思う」

( ^ω^)「僕は僕ですお」

その答えが全ての前提で、僕は今ここにいる。

( ^ω^)「それ以上、示し方がわかりませんお」

75 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/31(水) 23:57:59 ID:IDTHEVsw0

ああ、やはりそうだ。
僕は酔っている。

若干、自分にも酔っている様な気持ちの悪い発言をしている事も自覚しつつ止められない。
明らかに悪酔いだ。

( ^ω^)「すみません、ちょっと酔っ払ったみたいですお」

まだそれをちゃんと自覚出来ている内に謝っておく事にした。
これ以上馬鹿な事を口走らぬよう、アルコールを取るのも止める事にする。

lw´‐ _‐ノv「何、宴の席だ。気にするでない」

lw´‐ _‐ノv「それに、そういう状態の時の方が本音が出やすいものだよ」

( ^ω^)「本音……ですかお」

lw´‐ _‐ノv「君が今をどう思っているのか、そして君がそれをどうしたいのか」

( ^ω^)「別に僕は……」

lw´‐ _‐ノv「口にしてみて、少しはすっきりしたんじゃないかな?」

76 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/09/01(木) 00:03:48 ID:.CD4PALY0

( ^ω^)「僕は口に出せてましたかお?」

lw´‐ _‐ノv「それとなくは」

lw´‐ _‐ノv「少なくとも、現状に満足していないという事はね」

( ^ω^)「そうなんでしょうかね?」

現状に満足しているか否かを問われれば、満足していないと答えざるを得ないだろう。
自堕落なニートである現状に満足していると答えられる自分であるなら、生きている価値はないと言い切ってもよい。

( ^ω^)「まあ、ニートで満足してたら親は泣きますおね」

lw´‐ _‐ノv「泣いてくれる親がいる内はまだいいさ」

だが同時に、自分がどうしたいかよくわからない現状、この緩やかな時間が続けばいいと願ってもいた。
いつかは破綻するはずの、誰かの犠牲の上に成り立っている今だから。

( ^ω^)「ごもっともですお」

わかっていながら動かない。
動けないから現状の様な体たらくなのだろう。

77 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/09/01(木) 00:11:21 ID:.CD4PALY0

( ^ω^)「まあ、僕の事はこの辺で」

女性と話す時は聞き役に回る方がいい。
その位の常識、主にモテるための、ぐらいは知っている。

モテたい訳ではないが、流石に自分の話ばかりしているのもどうかと思う。

( ^ω^)「シュールさんは今どうしているんですかお?」

lw´‐ _‐ノv「同窓会に参加」

( ^ω^)「もっと大局的に」

lw´‐ _‐ノv「生命活動」

( ^ω^)「もう少しピンポイントに」

lw´‐ _‐ノv「house work」

( ^ω^)「ああ……」

なるほど、シュールさんも僕と同類だったという訳か。

78 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/09/01(木) 00:17:49 ID:.CD4PALY0

lw´‐ _‐ノv「私にはやるべき事があるのだよ」

( ^ω^)「自宅警備ですかお?」

lw´‐ _‐ノv「うむ、守るという点ではそれに近いな」

反対側の座席から、ひときわ大きな声が聞こえた。
向こうは随分と盛り上がっているらしい。

lw´‐ _‐ノv「私は──」

そんな中でもジョルジュはまたこちらを気にしているのだろうか。
毎回毎回僕の事を気にかけさせて、申し訳ない事だ。
こんな時ぐらい、僕の事はいいから、大いに楽しんで欲しいと思う。

でも、僕がシュールさんと話している事で、ジョルジュは少し安心出来ているかもしれない。
そう考えると、この妙な時間もそれほど悪い物ではなかったと思う。

lw´‐ _‐ノv「──のだよ」

( ^ω^)「え?」

79 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/09/01(木) 00:23:53 ID:.CD4PALY0

向こうからの声にかき消され、シュールさんの言葉が上手く聞き取れなかった。
僕は耳に手を当て、聞こえなかったというジェスチャーを返す。

賑やかな声は途絶える事無く邪魔をする。
しかし喧騒の中、シュールさんの静かな落ち着いた声は、今度ははっきりと僕の耳に届いた。

lw´‐ _‐ノv「私は世界を守っているのだよ」

( ^ω^)「えっと……」

あちこちに飛躍するシュールさんとの会話の中で、何度となく疑った僕の耳は、
極め付けに理解不能の言葉を僕に届けてくれた。

僕は何度か水面に浮かび上がった金魚のように、口をパクパクさせた後、ようやく言葉を搾り出せた。

( ^ω^)「1 何からですかお?
      2 いわゆる、ヒーロー的な?
      3 そろそろ終電が……
      4 ……なるほど、貴公も選ばれた者というわけか   」

安価
>>81


81 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/09/01(木) 00:32:00 ID:N0T2O4dw0
4


83 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/09/01(木) 00:37:02 ID:.CD4PALY0

( ^ω^)「……なるほど、貴──」

lw´‐ _‐ノv「それも──」

僕が口を開きかけたその時、シュールさんが僕に詰め寄る様にその顔を寄せる。
表情一つ変える事無く、まるで吸い寄せられるかの様に僕の目の前に。

突然の事に僕は身じろぎ一つ出来ず、眼前に浮かぶシュールさんの黒い眼をまっすぐに見詰めた。

lw´‐ _‐ノv「──君の様な魔王からね」

( ^ω^)「ま……おう……」

僕は反射的にシュールさんが口にした言葉を、そのまま呟いていた。


僕の口から出たその異質であるはずの言葉は、やけに耳に馴染み、僕の中にしっくりと溶け込んでいった。



      第一章  了



                              つづく・・・


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