- 189 :名も無きAAのようです:2011/09/06(火) 23:12:10 ID:m2x/mdHQ0
数日後、僕はまだ日の高い中、コンビニのビニール袋を片手に提げて外を歩いていた。
まだ夏が色濃く残る秋の初めの空は、久しくインドア派であった僕には厳しいものがある。
( ^ω^)「だりぃ……やっぱ帰るかお」
そう幾度となく思い、口に出す事もしばしばではあったが、先方との約束があり、それもこちらから取り付けたものだ。
流石に行かねばならないと思うくらいの良識はまだ持ち合わせている。
電車を乗り継ぎ、あまり馴染みのない街に降り立ち、また歩く。
二十分ほどの時を経て、ようやく友人の家が見えて来た。
( ^ω^)ブーンは魔王を倒すつもりはなかったようです 第三章
.
- 190 :名も無きAAのようです:2011/09/06(火) 23:18:58 ID:m2x/mdHQ0
(´<_` )「よく来たな。上がれよ」
( ^ω^)「お邪魔しますお」
門扉をくぐり、玄関のチャイムを鳴らすと、僕の数少ない友人の一人、流石弟者が迎え入れてくれた。
大体の訪問時間は告げていたから、恐らくすぐ出迎えられるように待っていてくれたのだろう。
几帳面、言い過ぎれば少し神経質な彼らしい事だ。
( ^ω^)「急にすまんかったお」
(´<_` )「全くだ……と、言いたい所だが気にするな」
(´<_` )「急にといっても、ちゃんとアポイントを取ったんだしな」
(´<_` )「しかし、そういうちゃんとした手順を踏んだ事もそうだが」
(´<_` )「お前がわざわざ外に出て俺に会いに来るというのも珍しい話だな」
( ^ω^)「うん、電話でも言ったけど、ちょっと相談があるんだお」
(´<_` )「俺にか? それも珍しい話だな」
- 191 :名も無きAAのようです:2011/09/06(火) 23:26:41 ID:m2x/mdHQ0
弟者に電話で話した時には、相談がある事しか告げていない。
言葉で説明するとややこしい事になりそうだったので、実物を見せた方が早いと考えたのだ。
無論、心霊現象自体は起こすつもりはないが、僕にその気がなくても弟者が起こそうとするかもしれない。
(´<_` )「まあいい。ともかく、部屋に行こうか」
( ^ω^)「おk」
(´<_` )「そういえばお前一人か? てっきりジョルジュも一緒なのかと」
( ^ω^)「あいつは足手まといになるから置いてきたお」
(´<_` )「人生の足手まといが何を言う」
弟者はジョルジュに比べると、若干以上口は悪いが、根は悪いやつではない。
きつい言い方も当人には悪気はないのだが、あまり豊かとは言い難い表情が高圧的な雰囲気を醸し出した事もあり、
何かと誤解されやすくもあった。
- 192 :名も無きAAのようです:2011/09/06(火) 23:35:47 ID:m2x/mdHQ0
そういった事もあり、友人があまり出来ず、本人もそれを気にしないというある種の孤立した立場にいたのだ。
僕も高校時代の同級生であった事を除けば大した接点はなかったのだが、ふとした切っ掛けで話が合う事がわかり、
友人としての付き合いが今も続いている。
( ^ω^)「いや、実際今回の相談に関してはジョルジュは完全に足手まといなんだお」
ジョルジュの苦手分野の話だからと弟者に説明する。
(´<_` )「ほう、ジョルジュの苦手分野という事は……」
( ^ω^)「うん、弟者の得意分野だお」
今回、僕が弟者に相談したのは、弟者がこの手のオカルト話のマニアだからだ。
普段の言動からは合理的なリアリストみたいな印象を受ける弟者なので、それを知った時は僕も驚いた。
そもそも僕と仲が良くなった話の切っ掛けがオカルトの話だ。
僕自身はそれほど好きでもなかったのだが、ネットで知られているような噂話は一通り知ってたりする。
怖がりのジョルジュをからかう為に、率先して調べた事が幸いしたのかもしれない。
(´<_,` )「俄然やる気出て来たわ。飲み物用意するから部屋で待ってろ」
珍しくはっきりと笑みを浮かべた弟者は、僕を二階の弟者の部屋に案内し、再び階下に戻って行った。
僕は数えるほどしか来た事のない、弟者の部屋のドアを開く。
- 193 :名も無きAAのようです:2011/09/06(火) 23:43:50 ID:m2x/mdHQ0
( ^ω^)「失礼するお」
部屋の中は几帳面な弟者らしくきちんと整理されていて、以前来た時と大きく変わった様子はない。
全体的に黒を基調とした、どこか堅苦しい印象を受ける。
一面の壁に備え付けられた本棚に並ぶ、漫画以外の本が近寄り難い空気を放っている。
そしてベッドの側に備え付けられたコンポから聞こえてくる、
○○森森という無駄に陽気な子供の声が逆に狂気を感じさせ、この部屋の異質さを際立たせていた。
……等と初めてこの部屋に来る人は思うのかもしれないが、弟者の事を知っている僕は、
最後の一点だけは間違っている事がわかる。
あの音楽は狂気の演出などではなく、単に弟者の趣味だ。
( ^ω^)「まあ、ロリコンですからね」
色々と台無しだと思うが、本人がいいのならそれでいいのではないだろうか。
(´<_` )「適当に座ってくれよ」
立ったまま部屋を眺めていたら、いつの間にか弟者が戻って来ていた。
弟者は部屋の中央に置かれた折りたたみ式のテーブルの上に、炭酸であろう飲み物が入ったコップを並べる。
- 194 :名も無きAAのようです:2011/09/06(火) 23:52:21 ID:m2x/mdHQ0
( ^ω^)「おっと、そうだ。これは手土産だお」
座ろうとしてその手にあったものに気付いた僕は、コンビニの袋からお菓子を取り出し、弟者に手渡した。
(´<_` )「重ね重ね珍しいな。お前が手土産とか……おい、これは?」
( ^ω^)「他意はないお」
受け取ったお菓子、ホワイトロリータを手に僕を睨む弟者。
別に嫌がらせをするつもりはなく、弟者への手土産をと考えた時、真っ先にこれが目に付いただけだ。
(´<_` )「まあいい。美味いしな、ホワイトロリータ」
( ^ω^)「美味いお、ホワイトロリータ」
僕らは向かい合うようにテーブルを挟んで座る。
まずは飲み物を一口頂き、回りくどい話は抜きで本題を語り始める。
< マルマル モリモリ 〜♪
( ^ω^)「事の始めはジョルジュが僕の部屋で不審なものを見つけた所から始まるお」
- 195 :名も無きAAのようです:2011/09/06(火) 23:57:18 ID:m2x/mdHQ0
< ツルツル テカテカ アシタモ〜♪
( ^ω^)「見た事のない、真っ黒なゲームカートリッジが……あの、CD止めていいかお?」
いささか所か粉微塵に雰囲気をぶち壊すBGMに乗せてオカルト体験を語るのは、僕には高いハードルだ。
僕は、いい歌なのになと不服そうな顔をした弟者を無視し、自分でCDを止めた。
いい悪いの問題ではなく、雰囲気に合う合わないの問題なのだ。
( ^ω^)「……続けるお」
僕は数日前に僕の部屋で起こった事をありのまま弟者に話した。
こうやって改めて話してみると、やはり異常な体験だったと思う。
(´<_` )「……なるほどな」
( ^ω^)「信じられないかもしれないけど、ホントの事だお」
(´<_` )「いや、信じているさ。お前はウソを……よく吐くけど」
( ^ω^)「失礼な」
(´<_` )「わざわざ俺の家に来るという面倒な事をしてまでウソを吐くとは思えないしな」
- 196 :名も無きAAのようです:2011/09/07(水) 00:08:25 ID:JW5snOAo0
僕の性格よりはニートとしての資質が信じさせる要因になった事には少々納得いかないが、
弟者は僕の話を信じてくれるらしい。
まあ、弟者なら信じてくれると思ったから相談相手に選んだのだが。
それに、一応の証拠もあることだし。
(´<_`*)「つーか羨ましいわ。マジで」
顔を紅潮させ、自分も体験したかったと言う弟者。
どうやら僕の話は弟者の好みにジャストフィットしたらしい。
(;^ω^)「ああいう話は聞くだけにしとく方が懸命だと切実に思ったお」
数々のオカルト話を聞いてきてはいたが、聞くのと体験するのとでは大違いだ。
起きている最中はそうでもなかったが、時間が経ち、冷静な目で振り返ると恐怖は膨れ上がった。
ちなみに、ジョルジュには停電があった事を説明し、後は見間違いだろうと強引に言い包めた。
簡単に抜けるあのゲームカートリッジを見せた時は、割と本気で殴られそうになったけども。
(´<_` )「しかし、呪いのゲームか……話としてはありがちだな」
( ^ω^)「あの場で簡単にでっち上げられるぐらいは、よくあるような形式の話だったと思うお」
- 197 :名も無きAAのようです:2011/09/07(水) 00:15:51 ID:JW5snOAo0
(´<_` )「ふむ……、色々と考えるべき点はあるが」
ゲームの進入経路、起きた事象の分析、出て来ようとした何か、現象が止まった理由。
弟者はつらつらと気になった点を上げていく。
(´<_` )「個人的に一番気になる点はやはり、お前の話だな」
( ^ω^)「僕の話?」
(´<_` )「お前のでっち上げた話がその場で再現された事さ」
( ^ω^)「ありがちな話だし、たまたま符合しただけかもしれないお」
(´<_` )「そうだな。しかし、止めたのもお前なんだろ?」
( ^ω^)「え?」
弟者が何を言っているのか、僕はすぐには理解出来なかった。
しかし確かに、あの話を止めたのは僕であった事に気付く。
( ^ω^)「……出て来るな、そう言ったお」
- 198 :名も無きAAのようです:2011/09/07(水) 00:24:09 ID:JW5snOAo0
僕の言葉に、弟者は正解だとでも言う様に大きく頷く。
自分では気付かなかったが、確かにあの現象は僕の話を最後までなぞっていた。
抜けないと面白いと思ったのは僕で、電気が消えたのは偶然、ゲーム機の電源、テレビの揺れと起こると思ったのも僕だ。
そして何かが出てくると思い、しかしそれが恐ろしい事に繋がると恐怖した僕がそれを止めた。
(´<_` )「根拠のない推論だがな」
( ^ω^)「いや、そう言われると確かに頷ける話だお」
冷静で頭もいい弟者はやはり相談相手として相応しかったようだ。
僕が気付かなかった点をあっさりと指摘してみせた。
頼りになる男だ。
ロリコンだけど。
(´<_` )「……何か言ったか?」
- 199 :名も無きAAのようです:2011/09/07(水) 00:31:00 ID:JW5snOAo0
( ^ω^)「何も言ってないお。 それよりホワイトロリータ食うお」
わずかに口から漏れた呟きを、耳聡く拾う弟者。
僕は空惚け、手土産に渡したお貸しを自分で開ける。
(´<_` )「言霊だな」
( ^ω^)「言霊って、あの?」
お菓子には手を伸ばさず、弟者はこの件に関しての自分の考えを披露する。
(´<_` )「ああ、言葉の力ってやつさ」
( ^ω^)「プラシーボ的な」
(´<_` )「まあ、間違いではないが……」
言霊という言葉は事は知ってはいる。
あの時ジョルジュに話した、心霊スポットでの例がそれに当たるだろう。
言葉が現実の事象に対し、何らかの影響を与えるという考えだ。
良い言葉を発すると良い事が起こり、不吉な言葉を発すると凶事が起こると言われる。
- 200 :名も無きAAのようです:2011/09/07(水) 00:57:32 ID:JW5snOAo0
(´<_` )「厳密には言霊と言えるのかわからないが、要はお前がそう思ったからそうなったって事だな」
いつの間にか特殊能力者にでもなったかと冗談交じりに言う弟者だが、僕には笑えない話であった。
(´<_` )「……何か心当たりでもあるのか?」
そんな僕の表情に気付いたのか、弟者が真面目な顔で聞いてくる。
( ^ω^)「……」
弟者が言うところの特殊能力者、本人は冗談で言ったのだろうが、それに近い話は二週間ほど前に聞いた。
能力がどうのこうのという話ではなかったが、彼女が言った言葉を額面通り受け取るなら、
僕に何かしらの能力があっても不思議ではないかもしれない。
それとは別に、僕の手元にはあのゲームがある。
このゲーム自体が何らかの能力を有している事も考えられる。
しかし、どちらにしろ、これ以上話すと確実に弟者を巻き込んでしまう事になるだろう。
あの時の恐怖を思い出すと、誰かを巻き込む事には抵抗がある。
だから、最初からあのゲームを見せて、弟者に説明するという事をしなかったのだ。
ジョルジュを言い包めたのも同じ理由である。
- 201 :名も無きAAのようです:2011/09/07(水) 01:21:05 ID:JW5snOAo0
どちらの話にせよ、話せば弟者は確実に食いついて来そうではある。
ジョルジュにしても同じだ。
弟者はオカルト話への興味、ジョルジュは僕が放って置けなくて。
それぞれ理由は違えど、協力してくれるのだろう。
だからといって安易に頼るのは考えものなのだが。
特に、原因が僕自身にあった場合は。
しばらく考えた後、僕は……。
( ^ω^)「1 実は二週間ほど前、小学校の同窓会に行ったんだお
2 実はあの時の謎のゲームが今ここにあるんだお
3 そういえば兄者は今日はいないのかお?
4 取り敢えずホワイトロリータ食えお 」
安価
>>202
- 202 :名も無きAAのようです:2011/09/07(水) 01:40:32 ID:GdiBihocO
- 2
- 203 :名も無きAAのようです:2011/09/07(水) 23:02:40 ID:qAqkwYyA0
( ^ω^)「実はあの時の謎のゲームが今ここにあるんだお」
悩んだが、今考えるべきはあのゲームの方であろう。
僕自身に原因があるなら、あのゲーム関係なく、いつだっておかしな現象が起きる可能性があるという事だ。
しかしながらあれ以来、特別な事は起こっていない。
僕自身が起こそうとしていないという事もあるが、やはり原因はあのゲームにあると見る方が自然である。
(´<_`*)彡「マジか!」
(;^ω^)「ちょ、ちけえお。食い付き過ぎだろ、常考」
謎のゲームがまだ僕の手にある事を告げた瞬間、まさに食い付くかの様に弟者は僕に詰め寄った。
曰く付きの品が見られる事が相当嬉しいらしい。
(´<_`*)「で、どれだ? どんなのだ? 早く出せよ」
(;^ω^)「ちょっと落ち着けお」
あるとは言っても、あの後は何も起こらなかった品だ。
既にただのゲーム壊れたゲームになっているかもしれない。
- 204 :名も無きAAのようです:2011/09/07(水) 23:11:32 ID:qAqkwYyA0
逆にまだ曰く付きのままで、危険がある可能性も残っている。
(´<_`*)「だろうな」
(´<_`*)「しかし、そんな貴重な一品を前にしたら危険だろうが何だろうが見ないわけにはいかないだろ?」
(;^ω^)「まあ、この話をすればそんな反応をするのはわかってたけどさ……」
正直な所、またこれを使って心霊現象を起こすとか勘弁願いたい話だ。
手っ取り早く調べるならその方が早かったとしても、小心者の僕としては危険はなるべく避けたい。
(´<_` )「待て待て、確かに危険な可能性もある」
(´<_` )「しかしだな、俺の仮説を元に推察するとだな、危険は避けられるかもしれない」
弟者の仮説、僕がそう考えたからそうなったという話を正しいとすると、そう考えなければ起こらないという事だ。
危険のない想像をすれば、何も問題はないという事になる。
それ所か、かなり夢のアイテム化するかもしれない。
(´<_` )「呪いではなく想像の具現化と考えると、夢が広がりまくるぞ?」
- 205 :名も無きAAのようです:2011/09/07(水) 23:20:08 ID:qAqkwYyA0
(;^ω^)「そんな虫のいい話はがあるとは思えないお」
弟者の言う事もわかるが、それはちょっと話が飛躍し過ぎだと思う。
僕にはこの黒いゲームがそんないいものだとは思えない。
根拠のない勘の様なものだが。
恐怖体験に遭遇してしまった経験がそう言わせているだけなのかもしれない。
(´<_` )「それも動かしてみればわかる話さ」
( ^ω^)「やっぱ動かす気満々なんだおね」
動かす事には賛成したくないのだが、ここまで話をして見せないわけにもいかないので、
僕はポケットに入れていた例のゲームを取り出す。
(´<_`;)「ポケットに直入れかよ」
弟者は僕の扱いが雑なのが気に入らない様だ。
そう言われてもどう扱えば最適かわからなかったし、仰々しく梱包するのは面倒だったから仕方がない。
- 207 :名も無きAAのようです:2011/09/07(水) 23:32:18 ID:qAqkwYyA0
(´<_`*)「これが呪いの、いや、夢のゲームか」
( ^ω^)「だから、夢のゲームかどうかはまだわかんないお」
弟者は僕からゲームを恭しい態度で受け取ると、学習机のから虫眼鏡を取り出し、早速調べ始めた。
(´<_` )「ふーん、外見上は普通のゲームと変わらないように見えるな」
( ^ω^)「市販のプラスチック製のケースと変わらないように見るお」
(´<_` )「ネジはと……特殊ドライバーが必要か」
( ^ω^)「普通のゲームも大体そうだお」
(´<_` )「シールの残骸、端子、やはり外見上はシールを剥がしただけの市販のゲームと変わらない様だな」
弟者も外見からは僕と同じ結論に達した様だ。
多分、外見からではこれ以上詳しい事はわからないのではないだろうか。
(;^ω^)「結局、動かすかバラすしか調べようがないのかおね」
- 208 :名も無きAAのようです:2011/09/07(水) 23:41:11 ID:qAqkwYyA0
(´<_` )「バラすのはなぁ……」
僕の呟きに弟者は難色を示した。
技術的にも呪術的にも難しいと弟者は言う。
( ^ω^)「技術的はともかく、呪術的ってどういうことだお?」
(´<_` )「この手のアイテムは、何かしらを封じて効果を発揮するものがほとんどだからな」
バラしてしまえば、効果がなくなる場合が多々あり、また逆に、
バラす事で余計なものを解き放つ可能性があったりするかもしれないとの事だ。
(´<_` )「どちらにしろ、お勧めは出来ないな」
(;^ω^)「無効化されるならそれはそれでいいんだけど、ヤバい事態を引き起こすのは勘弁だお」
(´<_,`*)「じゃあやはり、遺憾ながら動かすしか調べようはなさそうだな」
(;^ω^)「満面の笑みを浮かべて言うなお。全然遺憾に思ってねえだろ」
やはりそういう流れになってしまうのか。
- 209 :名も無きAAのようです:2011/09/08(木) 00:00:48 ID:00D3nO6s0
ここは覚悟を決めて起動させてみるか。
それとも、他の線から調べてみるべきか。
外見からはわからなかったが、ネットの情報や噂などまだ調べられる余地はある。
他に思いつくのは、バラさなくても内部を調べる方法だが、これはちょっと現実的には難しいか。
何らかの研究機関に、大学でもいいが、コネでもあれば可能性はあるかもしれない。
(´<_`*)「よし、早速……」
どうやら悠長に考えている時間はなさそうだ。
弟者は今にもゲームを起動させかねない。
僕は……
( ^ω^)「1 ちょっと待ってくれお。もう少しネットで調べてみないかお?
2 てか弟者、そのゲーム起動させるゲーム機持ってたかお?
3 その前に、弟者の知り合いにも意見を聞いてみないかお?
4 おk、やってみるしかなさそうだおね 」
安価
>>210
- 210 :名も無きAAのようです:2011/09/08(木) 00:04:20 ID:7aDnEFpgO
- 3
- 211 :名も無きAAのようです:2011/09/08(木) 00:21:49 ID:00D3nO6s0
- 知り合いのAA
>>212
- 212 :名も無きAAのようです:2011/09/08(木) 00:33:06 ID:IpLTmcTg0
- (゚、゚トソン
- 213 :名も無きAAのようです:2011/09/08(木) 23:31:19 ID:3EG.ceOM0
( ^ω^)「その前に、弟者の知り合いにも意見を聞いてみないかお?」
咄嗟にそんな提案を口に出していた。
(´<_` )「知り合い? 誰の事だ?」
( ^ω^)「ほら、前に弟者が話してた事あったお?」
あれはもう、半年ほど前の事であろうか。
弟者が僕の家に来た時に、弟者が通う大学の話を聞いた。
確かその時、同じクラスの友だちにすごいやつがいるみたいな事を言っていた覚えがある。
(´<_` )「……あいつか」
( ^ω^)「お?」
僕の言葉に弟者は眉をひそめる。
(´<_` )「そういえばお前にあいつの話はしたっけな……よく覚えてたな」
- 214 :名も無きAAのようです:2011/09/08(木) 23:34:20 ID:3EG.ceOM0
( ^ω^)「そのくらいは覚えてるお」
あの時の話は特に深い意味はない、世間話の様な物だったが、珍しく僕はその事を覚えていた。
( ^ω^)「確か、調査や分析が得意な人って聞いた覚えがあるお」
(´<_` )「うん、そうだな。あいつは頭が切れるやつだ。その点は俺も一目置いている」
(´<_` )「だがあいつは、オカルト否定派だ。この件には向かない」
( ^ω^)「趣味が合わないってやつかお」
(´<_` )「まあな。人間的には嫌いじゃないんだが、趣味だけはとことん合わないな」
なるほど、弟者が少し機嫌を損ねたように見えたのは多分、その話でその友人と口論でもしたのだろう。
こういったオカルト話を信じない人間は少ないわけではないし、
弟者も万人に理解される趣味ではないとわかっているはずだが、その友人とはかなり激しくやりあったのかもしれない。
(´<_` )「この件にわざわざあいつの手を借りる必要はないさ」
- 215 :名も無きAAのようです:2011/09/08(木) 23:43:11 ID:3EG.ceOM0
( ^ω^)「でも、逆にチャンスかもしれないお」
(´<_` )「チャンス? どういうことだ?」
( ^ω^)「このゲーム、そんじょそこらのインチキアイテムじゃないお」
( ^ω^)「これを見せれば、その人も考えを改めるかもしれないお」
(´<_` )「それはまあ、そうかもしれないが……」
その程度の理由で、わざわざ関係ない人間を呼ぶ必要はないんじゃないかと弟者は言う。
確かに弟者の言う様に、僕の主張はこの件に関係ない他人を呼ぶには弱い物だと思う。
しかし僕は、その弟者の友だちに期待している点がある。
ずばり言うと、心霊現象を起こさない為だ。
弟者の友人がオカルト嫌いだったのは計算外だったが、それならそれで科学的な側面、
そこまで行かずとも常識的な面から見た意見を出してもらうのも有用じゃないかと考えている。
やはり十分な調査もしない内にこのゲームを再び動かすのは怖いものがある。
- 216 :名も無きAAのようです:2011/09/08(木) 23:51:15 ID:3EG.ceOM0
関係ない人間を巻き込むのは本意ではないが、心霊現象を起こさない前提ならば危険もないだろう。
一つ問題があるとすれば、これが本当に心霊現象を引き起こせる怪しいゲームであるという点ではあるが、
そこは何とか誤魔化そう。
僕はどちらかと言えばこのゲーム自体の謎より、
僕の家にあった理由とかそういう物を知るべきなんじゃないかと考え始めていた。
( ^ω^)「オカルトが本当にあるものだと証明できるかもしれないお」
(´<_` )「……そうだな、……うん、悪くない」
( ^ω^)(計算通り!)
弟者はいわく付きのゲームを前にして、浮き足立っていたのだろう。
案外簡単に僕の口車に乗り、友人に電話をする所まで漕ぎ付けられた。
ここまでは僕の計算通りの展開だったのだが、それから約一時間後、
訪れた弟者の友人が女性だったのは全く予期していない事だった。
- 217 :名も無きAAのようです:2011/09/08(木) 23:58:42 ID:3EG.ceOM0
(゚、゚トソン「突然呼び出されて来てみれば……一体何事です?」
(´<_` )「何、この間の話の続きさ」
( ^ω^)「その前に自己紹介ぐらいさせてくれお」
( ^ω^)「僕は内藤ホライゾンですお。弟者の高校時代のクラスメイトですお」
(゚、゚トソン「ご丁寧にどうも。都村トソンと申します。彼、流石君の大学のクラスメイトです」
堅苦しい挨拶の後、弟者から呼び出された理由の説明を聞く都村さんを僕はそっと盗み見る。
その愛想を感じない様からは、一見して小柄な男性のようにも見えた。
しかしそれは流石に失礼なので、中性的な印象とでも言うべき所か。
物静かな感じの雰囲気は、どこか弟者に似ているかもしれない。
どこかムッとしている様にも見える都村さんだが、実際はそう機嫌が悪いというわけでもないのだろう。
いきなり呼び出されて弟者の家に来る所や、道案内なしに来れる所からも、弟者との関係は悪い物ではないはずだ。
それ以上邪推するつもりはないが。
(゚、゚トソン「それで、内藤さんでしたね」
- 218 :名も無きAAのようです:2011/09/09(金) 00:07:38 ID:XJIucLGE0
( ^ω^)「はいですお」
弟者から説明を聞き終わった都村さんは僕の方へ向き直り、どことなくかわいそうな物を見る目を向ける。
(゚、゚トソン「何か幻覚作用を引き起こす物を摂取されたりはなされませんでしたか?」
( ^ω^)「……ああ」
その眼差しの意味がわかった僕は、弟者の方へ顔を向ける。
僕の視線に気付いた弟者は、大きく首を振って答えた。
( ^ω^)「あの時は昼にインスタントラーメンを食べたぐらいで、あとは何も食べてませんお」
( ^ω^)「それから友人と馬鹿話をしてたぐらいで、おかしな行動は何もしてないですお」
(゚、゚トソン「確かお話では、その時間帯に近くで工事があってたとか」
( ^ω^)「やってたのは電気工事で、ガス漏れしたとかそういった事件はありませんでしたお」
それからも都村さんは僕に質問を次々とぶつけて来た。
初対面なのに遠慮がないなと思いはしたが、どれも的確に僕の話の怪しい所を突いて来るのは流石だ。
質問の意図がわかりやすく、論理的に突き崩すならこういう質問が最適だろうと思わせてくれる。
- 219 :名も無きAAのようです:2011/09/09(金) 00:15:22 ID:XJIucLGE0
ただ残念ながらあの日起こった事は事実で、僕の記憶もはっきりしているから明確に答えられてしまうが。
(゚、゚トソン「なるほど、話に矛盾はないようですね……」
( ^ω^)「残念ながら……」
(´<_`*)「だから電話でも言っただろ、この話はマジなんだって」
ようやく質問が一区切り着いた所で、弟者が勝ち誇ったような顔で割って入る。
ドヤ顔うぜえと思ったが、同じような感想を都村さんも抱いていたのかもしれない。
すぐさま弟者に真っ向から反論する。
(゚、゚トソン「いえ、まだ話に矛盾がないと言うことがわかっただけで、実際に現象が起きたという証明にはなっておりません」
(´<_` )「お前は相変わらず頭が固いな……」
(゚、゚トソン「これが良識ある一般人の普通の反応だと思いますが?」
(´<_` )「お前がどう言おうと心霊現象が起きたのは事実だ」
(゚、゚トソン「それを目撃したのは彼だけで、その正当性も証明されたわけではありません」
- 220 :名も無きAAのようです:2011/09/09(金) 00:22:46 ID:XJIucLGE0
一応、ジョルジュも目撃しているから正しくは二人なのだが、途中で気絶したジョルジュの話を持ち出しても、
見間違いと一蹴されるだけだと思う。
そもそも、僕は心霊現象の有無を論じたいわけではなく、このゲームをもう少し別の視点から調べて欲しいだけだから、
この話を引き伸ばす理由はない。
( ^ω^)「そういう訳で、ここに実物が──」
(´<_`#)「だから都市伝説という概念が存在する以上、心霊現象もまた然りなんだよ!」
(゚、゚#トソン「所詮は噂の類です。語り手が真実と信じるからこそ成り立っているだけで、その実は定かではないのです!」
( ^ω^)
(´<_`#)「ちゃんとした学問として研究もされているんだぞ? そもそもだな、ブルンヴァンの──」
(゚、゚#トソン「それを真実をと錯覚させる土壌があってこそ成り立つ物であり、ある意味風評的な効果を目的とした──」
( ^ω^)「えっと……」
- 221 :名も無きAAのようです:2011/09/09(金) 00:31:45 ID:XJIucLGE0
(´<_`#)「口裂け女も人面犬も紫の鏡も存在する──」
(゚、゚#トソン「カシマさんもテケテケもさとるくんも噂が一人歩きした結果──」
ちょっと考え事をしている間に、二人の間で口論が加速度的にヒートアップしていた。
僕の提案は彼らの言葉にむなしくかき消される。
拳を固め、相手を睨みつけながら言い合うその姿は、ちょっとした口喧嘩と言うよりは完全に論争レベルのそれだ。
僕が知る普段の弟者からは想像もつかない姿である。
( ^ω^)「どうしてこうなった……。つーか、都村さん、意外と都市伝説に詳しいおね」
ポツリと呟く僕の言葉は、やはり全く彼らに届く気配はない。
取り敢えず、論争が収まるまでのんびりしようと決め、ホワイトロリータに手を伸ばす。
( ^ω^)「美味いお。個人的にはルーベラ一押しだけど、たまにはホワイトロリータもいいお」
(´<_`#)「#$%&♂♀℃¥$¢£%#&*@§!」
(゚、゚#トソン「──ッ! ────ッ! ──────ッ!!!」
( ^ω^)「相変わらず文字ばっかの本だらけだお。たまにある漫画は心霊漫画というトラップ」
僕は彼らの論争をBGMに、弟者の部屋を漁り始める。
彼らが何を言っているのか僕にはほとんど理解出来ないので、止めようとか口出ししようとか言う発想はない。
そもそも作者は都市伝説とか詳しくないし、怖いのは苦手なのでこれ以上書くとボロが出そうなのでぼかす事に決めた。
- 222 :名も無きAAのようです:2011/09/09(金) 00:40:23 ID:XJIucLGE0
(´<_`#)「!!!」
(゚、゚#トソン「!!」
( ^ω^)「お、この漫画、新しい巻出てたのかお。つーかまだ続いてたんだおね」
結局、彼らの口論は収まる気配を全く見せる事はなかった。
どうやら僕の考えは思いっきり裏目に出たようだ。
僕はホワイトロリータを食べ尽くし、漫画の新刊を読み尽くして帰路に着いた。
一応、挨拶はして部屋を出たけど未だ論争中の彼らからの反応はなかった。
何と言うか徒労感満載だ。
( ^ω^)「……そういうケースもある」
僕は人生の虚しさを噛み締めつつ、家へと帰り着いた。
第三章 了
つづく・・・
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