- 347 :名も無きAAのようです:2011/09/17(土) 00:17:08 ID:AZC19Rss0
予感はあった。
lw´‐ _‐ノv「ぐっど いぶにん」
誘われる様に眠りの淵に吸い込まれた僕が目を開いた瞬間、捜し求めていた彼女の顔がそこにあった。
( ^ω^)「……これは夢だお」
lw´‐ _‐ノv「ざっつ らいと」
( ^ω^)ブーンは魔王を倒すつもりはなかったようです 第五章
.
- 348 :名も無きAAのようです:2011/09/17(土) 00:21:22 ID:AZC19Rss0
( ^ω^)「やっぱそうかお」
これが夢である事をあっさりと認めた彼女に、僕は満足して再び眠りに着こうとする。
夢の中でまた寝ようとするのもおかしな話だ。
この場合は起きようとした方が夢から覚めるのかもしれないが、僕はもう少し眠りたい。
lw´‐ _‐ノv「おやおや、冷たいお人だね」
( ^ω^)「基礎体温は低いお」
夢の中でまで彼女のよくわからない話に付き合う必要はない。
僕は目を閉じ、眠る体勢を維持する。
lw´‐ _‐ノv「君は私に聞きたい事が山ほどあるのではないのかね?」
( -ω-)「あるけど、今の君にじゃないお」
今の君、夢の中の彼女は、所詮僕が作り出した虚像だ。
僕の記憶とイメージで作り出されている。
- 349 :名も無きAAのようです:2011/09/17(土) 00:27:24 ID:AZC19Rss0
だから目の前の彼女は、僕の知り得る範囲内でしか物を知らないし、
僕のイメージする彼女ならこう話すという態度で話して来るだけなのだ。
lw´‐ _‐ノv「ふむ、君はそう考える、と」
lw´‐ _‐ノv「しかし、そうでない可能性も無きにしも非ず、ではないかね?」
彼女が言う、そうでない可能性。
それは彼女が何らかの方法で僕の夢に介入、またはこの夢自身が彼女が作りだした物だという事だろう。
これまでの事を考えれば、ないとは言い切れない事ではあるがどうだろうか。
( -ω-)「なら君の名前を教えてくれお」
lw´‐ _‐ノv「ふむ、それは秘密としておこうか」
( -ω-)「はい、解散。やっぱ僕の夢だお」
僕が知らないのだ。
僕の夢が答えてくれるはずもない。
- 350 :名も無きAAのようです:2011/09/17(土) 00:36:41 ID:AZC19Rss0
lw´‐ _‐ノv「あくまで夢と言い張るのかね」
( -ω-)「さっき自分で正解だって言ったお?」
lw´‐ _‐ノv「うむ、言ったな」
途切れる会話。
話はここで終わりだ。
これ以上話す事はない。
彼女の事は明日、目が覚めてからまた考えよう。
lw´‐ _‐ノv「どこまでが夢でどこからが現実なのだろうね」
( -ω-)「胡蝶の夢かお」
lw´‐ _‐ノv「君は意外と博識だな」
( -ω-)「ヒキニートの癖に、かお?」
無視すればいいものを、なかなか眠れない僕は律儀に答えてしまう。
- 351 :名も無きAAのようです:2011/09/17(土) 00:43:43 ID:AZC19Rss0
lw´‐ _‐ノv「いや、意外でもないな。昔の君は読書家だった」
( -ω-)「そういう時代もあったおね」
僕自身の事なら、僕が作り出した彼女が知っていても不思議はない。
ある意味これは自分との対話なのだと、ふとそんな事を思った。
lw´‐ _‐ノv「これが夢なら、ここでの会話は無意味な事だと思うかね?」
( -ω-)「起きた時に忘れてしまうなら無意味だお」
僕自身との対話、自分を見つめ直すという意味では全くの無駄という事はない。
考える行為は何かしらを生み出す。
だが、それを全て忘れてしまうのなら、自分にとって何の意味も持たない。
夢を覚えている事はないわけでもないが、この夢はきっと忘れるだろうと僕は考えていた。
僕自身が忘れるのか、彼女が忘れさせるのかはわからないが。
lw´‐ _‐ノv「現実では思い出せないだけで、君自身の中には残るとしても?」
( -ω-)「意味がわからんお」
- 352 :名も無きAAのようです:2011/09/17(土) 00:51:14 ID:AZC19Rss0
現実で思い出さない事に何の意味があるのか。
毎回この夢を見せられて、前回の夢の続きから話を続けてくれるというのか。
lw´‐ _‐ノv「夢の中ぐらい、現実を忘れて楽しい時間を過ごせば良いじゃないか」
( -ω-)「だったらもっと楽しい夢を見せてくれお」
いつまで経っても眠る事も出来なければ、目が覚める事もない。
律儀に彼女に答え続ける僕の所為かもしれないが、いささか不自然でもある。
( ^ω^)「ひょっとしてこれも呪いとかいうのかお?」
lw´‐ _‐ノv「答えは君の中に」
眠るのを諦め、目を開いた僕の前には依然として彼女の姿がある。
声がしているのだから当然だが、僕は眼前の彼女の姿にどこか違和感を覚えた。
( ^ω^)「今までの呪いも君がやったのかお?」
lw´‐ _‐ノv「質問しても無駄じゃなかったのかね?」
( ^ω^)「まあ、そうだおね……」
- 353 :名も無きAAのようです:2011/09/17(土) 01:00:53 ID:AZC19Rss0
色々と話をしてくるが、肝心な事に答えてくれる気はないらしい。
どうせ起きたら忘れるのなら教えてくれてもいいような気もするが、どうせ忘れるのなら聞いても意味はない気もする。
lw´‐ _‐ノv「すまないな」
( ^ω^)「何で君が謝るんだお?」
lw´‐ _‐ノv「君がずっと不機嫌そうだからね。そしてそれは私の所為だから」
( ^ω^)「明晰夢はあまり好きじゃないんだお」
ただそれだけだと僕は言う。
先に彼女が言ったように、夢の中ぐらい夢だと気付かずに楽しみたいと思うから。
分析してみる夢も時に面白い事もあるが、知らずに楽しめる方が楽だ。
lw´‐ _‐ノv「騙すなら最後まで騙し続けろと」
( ^ω^)「ちょっと違う気もするけど、遠からずだお」
いつの間にかまた彼女のペースで話に付き合わされている自分がいる。
しかしそれは僕に、どこか懐かしい何かを感じさせていた。
- 354 :名も無きAAのようです:2011/09/17(土) 01:09:29 ID:AZC19Rss0
( ^ω^)「ひょっとして僕自身は覚えているのかお?」
lw´‐ _‐ノv「それを私に聞くのかね?」
( ^ω^)「僕の夢だから、自問自答の様なものだお」
夢であるはずなのだが、目の前の彼女ははっきりとした意思を持っているようにも感じられた。
それが何によるものか、僕には本当の所はわからない。
しかし、先ほどから何度となく感じている違和が彼女のどこかにある。
それは……
1 この夢自体だ
2 彼女の持ち出す話題だ。
3 彼女の服装だ。
4 彼女にある懐かしさだ。
安価
>>355
- 355 :名も無きAAのようです:2011/09/17(土) 01:11:14 ID:givpg5FoO
- 来てたか!
安価なら4
- 356 :名も無きAAのようです:2011/09/17(土) 23:43:32 ID:BbXYr1i60
それは彼女にある懐かしさだ。
( ^ω^)「多分、僕は君の事を知っているんだおね」
lw´‐ _‐ノv「そう思う根拠は?」
( ^ω^)「でも、思い出せない」
僕は彼女の質問には答えず、自分の考えを述べる。
根拠は特にない。
でも、感覚的にはある。
( ^ω^)「名前も顔も、昔あったはずの思い出の一つも」
それは悲しい事なのか、それとも喜ばしい、僕が望んだ事なのだろうか。
( ^ω^)「人間は忘れていく生き物なんだお」
lw´‐ _‐ノv「それ自体は悪い事ではなかろう」
( ^ω^)「そうだおね」
- 357 :名も無きAAのようです:2011/09/17(土) 23:56:27 ID:BbXYr1i60
いつまでも記憶が鮮明に残るとしたら、人間はきっと生きていけない。
悲しみの記憶がずっと残ればそれに押し潰され、喜びの記憶が残ればそれにずっと溺れて、そこで止まってしまう。
( ^ω^)「僕はきっと過去の事をいつまでも引きずるタイプなんだお」
lw´‐ _‐ノv「前日のちょっとした事で、次の日にも恨み言を言ったりな」
僕は彼女の言葉に頷き、その内容には触れずに言いたい事だけを述べる。
( ^ω^)「つまり僕は記憶力はいい方なんだお」
( ^ω^)「だのに忘れてる、と」
色々と考えてみても、結局行き着くのはこの不自然な状況だ。
僕はじっと彼女の方を見詰める。
この状況を作り出した本人を。
lw´‐ _‐ノv「君の答えは出たという事か」
- 358 :名も無きAAのようです:2011/09/18(日) 00:03:06 ID:RCIL7/sU0
( ^ω^)「まあ、推測だけど僕自身の答えはもう決まってるお」
彼女が何なのか、はっきりとした所はわかっていない。
それどころか本当に実在するのかどうかも定かではない。
何故なら、それを示す証拠が何もないのだ。
あの同窓会での目撃証言は僕以外からもありはするのだが、あれが彼女本人だったという証拠ではないのだ。
理由はわからないが、誰か別人が彼女のふりをして来ていたのかもしれない。
その誰かがそうする理由はともかく、実際そうであった時それを見破る術はないのだ。
結局僕にある証拠らしきものは、彼女自身の証言と僕のおぼろげな記憶だけ。
その記憶も、懐かしさを感じるといったような、甚だ頼りないものだ。
( ^ω^)「僕はあんまりいい想い出は持ってないお」
( ^ω^)「持ってないけど、それでも全部思い出せないというのは何だか嫌な感じだお」
- 359 :名も無きAAのようです:2011/09/18(日) 00:11:05 ID:RCIL7/sU0
僕は知りたいと思う。
この懐かしさの正体を。
忘れてしまった僕の想い出を。
( ^ω^)「それとは別に、僕が何らかの不思議な事象に遭遇したのも事実なんだおね」
彼女が実在するか否か、そういう事に関係なく、僕は現在何か不思議な事に巻き込まれている。
( ^ω^)「色々と引っかかる事はあるんだけど、僕はそろそろ自分の答えに基づいて動くつもりだお」
そうでなければ、助けてくれる事を約束してくれたジョルジュにも申し訳が立たない。
今更そんな思いが自分に湧いたのは少し以外だったかもしれないが、僕はやはりこの生温い今が気に入っていたのだろう。
lw´‐ _‐ノv「それが君の答えかね?」
( ^ω^)「いや、これはまだ答えじゃないお」
つらつらと並び立てては見たが、これは今思っている事をそのまま述べただけで、答えに繋がる前置きのようなものだ。
本当に告げたい答えは単純で、そしてこれからの方向を決定付けるものだ。
口にだしたらそれはきっと、もう、変え様のない事実となる。
- 360 :名も無きAAのようです:2011/09/18(日) 00:20:45 ID:RCIL7/sU0
( ^ω^)「君は僕の事を知っているお」
lw´‐ _‐ノv「うむ」
( ^ω^)「僕は君の事を知らない」
lw´‐ _‐ノv「うむ」
( ^ω^)「いや、忘れてるんだおね」
lw´‐ _‐ノv「ほう」
( ^ω^)「本当は知っているはずなんだお」
lw´‐ _‐ノv「それはつまりどういう事かね?」
( ^ω^)「君は……
1 実在する
2 実在しない
安価
>>361
- 361 :名も無きAAのようです:2011/09/18(日) 00:23:43 ID:C/VZ7NGUO
- 1で
何か重要そうだな……
- 362 :名も無きAAのようです:2011/09/18(日) 00:26:18 ID:RCIL7/sU0
( ^ω^)「君は実在する、そういう事だお」
.
- 364 :名も無きAAのようです:2011/09/18(日) 00:32:05 ID:RCIL7/sU0
lw´‐ _‐ノv「……君は今、その言葉をわかった上で口にしたのかね?」
( ^ω^)「多分、質問の意味も答えもわかった上でだと思うお」
( ^ω^)「僕は魔王だから。そういう事だお?」
lw´‐ _‐ノv「君はこの夢で、自分の中で終らせる気はないという事か」
( ^ω^)「そうなるおね」
lw´‐ _‐ノv「ふむ、では君の訪問を私は待つ事にするのが筋というものか」
( ^ω^)「魔王が勇者を探して乗り込むのは逆な気がするお」
lw´‐ _‐ノv「なに、話の発端としてはまずは魔王が軍勢を率いて各地に侵攻を始めるのがテンプレートではないか」
( ^ω^)「軍勢、いても一人ぐらいだお」
( ^ω^)「一応、全く役に立たなかったオカルトマニアも入れたとしても二人だお」
lw´‐ _‐ノv「あれも役に立たなかったわけでもあるまい」
- 365 :名も無きAAのようです:2011/09/18(日) 00:40:33 ID:RCIL7/sU0
( ^ω^)「まあ、そうだおね」
( ^ω^)「あれは正解に近かったお」
lw´‐ _‐ノv「うむ、言霊だな」
( ^ω^)「君が言った魔王という言葉」
( ^ω^)「それを言わせた魔王の言葉、いや、力と言うべきかお」
( ^ω^)「結局、僕自身が作り出したものなんだおね」
( ^ω^)「全て」
( ^ω^)「ひょっとしたら、こっちが本当の世界だったのかお?」
( ^ω^)「このだだっ広い、空と大地以外何もない空間が」
( ^ω^)「だから胡蝶の話だったのかお?」
lw´‐ _‐ノv「今更それを知っても詮無き事だ」
- 366 :名も無きAAのようです:2011/09/18(日) 01:09:43 ID:RCIL7/sU0
( ^ω^)「だおね。もう僕が決めた方が本当の世界になってるお」
僕は言いたい事を一通り言い終えると、再び目を閉じた。
lw´‐ _‐ノv「発端を知らず答えを決めるか」
( -ω-)「最後にはわかるお」
どうせ目が覚めれば忘れてしまう事だ。
ここで至った結論も、彼女のいう僕の中には存在するのかもしれないが、それを思い出せはしないのだろう。
lw´‐ _‐ノv「ふむ、君がそれでいいなら最早私は何も言うまい」
( -ω-)「どうせ必要な事はいわないし、どうでもいい事は言うんだお」
lw´‐ _‐ノv「よくわかってるじゃないか」
( -ω-)「いい加減慣れたお」
段々と意識が薄れていく。
ようやく開放してくれるらしい。
- 367 :名も無きAAのようです:2011/09/18(日) 01:25:35 ID:RCIL7/sU0
lw´‐ _‐ノv「最後に何か聞いておくことはないかね?」
( -ω-)「な──」
lw´‐ _‐ノv「今なら一つ、覚えておく事が出来るぞ?」
ない。
そう答えようとした僕は彼女の言葉に口をつぐむ。
これまでの事を考えれば、随分とサービスのいい事だ。
何か裏でもあるのか、それとも言葉通りなのか。
僕は深く沈んでいく意識の中で、咄嗟に思い浮かんだ言葉を投げつける。
( -ω-)「1 君の名前は?
2 君はどこにいる?
3 聞くだけ無駄だお
4 君から僕に言う事はないのかお? 」
安価
>>368
- 368 :名も無きAAのようです:2011/09/18(日) 03:16:26 ID:lMtZfBa.0
- 4
- 369 :名も無きAAのようです:2011/09/18(日) 23:19:06 ID:Cqhms9CY0
lw´‐ _‐ノv「それはどちらかと言えば外れの部類の選択肢だな」
( -ω-)「何を……」
朦朧とする意識の中で、彼女の声が僕の頭の中に響く。
言葉の意味を考える事は叶わず、ただそのままを受け止める。
lw´‐ _‐ノv「取り敢えず君の言う、懐かしさを求めたまえ」
( -ω-)「……」
lw´‐ _‐ノv「では、再会を祈ろう」
その言葉を最後に僕の意識は完全に失われた。
第五章 了
つづく・・・
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