573 :名も無きAAのようです:2011/10/02(日) 23:43:56 ID:kBTkB.qg0

  ピチピチ
E(・3・)ヨ

 _
(:゚∀゚)「え? 何これ?」

( ^ω^)「魚?」

(´<_` )「魚だな」

激闘の末、ジョルジュが釣り上げたのは、少し下唇が出た以外はごく普通の魚だった。




 ( ^ω^)ブーンは魔王を倒すつもりはなかったようです 第七章



.

574 :名も無きAAのようです:2011/10/02(日) 23:44:42 ID:kBTkB.qg0
 _                      ピチピチ
(:゚∀゚)σ「いや、こんな魚いるか?」E(・3・)ヨ

( ^ω^)「新種かお?」

(´<_` )「いや、ぼるじょあブナだ。この辺では少し珍しいかな」

釣り上げた魚を囲み、僕とジョルジュは眉根を寄せるが、弟者がこの魚が何か知っているらしい。
一見すると奇妙な面構えに見えるが、魚と呼べる範囲内だ。
  _
( ゚∀゚)「聞いた事ねえ名前だな」

(´<_` )「本来はもっと北の方の魚だからな」

(´<_` )「天然記念物とまではいかずとも、そうどこにでもいる魚じゃない」

                 ピチピチ
( ^ω^)「変な顔だおね」E(・3・)ヨ

(´<_` )「食べ物の少ない環境に適応し、下唇が発達したらしいからな」

(´<_` )「水中の石に付着した苔を削り取るのに適するように」

575 :名も無きAAのようです:2011/10/02(日) 23:52:28 ID:kBTkB.qg0
  _
( ゚∀゚)「お前、魚にも詳しいんだな」

(´<_` )「全般に詳しいわけじゃないがな」

                                 ピチピチ
(´<_` )「こういった珍魚なら、そこそこは知ってる」E(・3・)ヨ
 _
(;゚∀゚)「ああ、趣味の守備範囲内ってとこか」

(´<_` )「そんな感じだ」

普通、とは言い切れないが、思ったよりはまともな釣果に少し気が抜けてしまった。
何が起こるかと身構えていたのに、肩透かしを食らった気分だ。

( ^ω^)「で、これどうすんだお?」
  _
( ゚∀゚)「どうするって……こんなの逃がす以外にどうしようもねえんじゃね?」

(´<_` )「一応、食用魚だぞ?」

 _             ピチピチ
(;゚∀゚)「この面で?」E(・3・)ヨ

576 :名も無きAAのようです:2011/10/03(月) 00:09:29 ID:v6.wJl820

( ^ω^)「食べるのかお?」
 _
(;゚∀゚)「うーん、ちょっとなあ……」
 _
(;゚∀゚)「でも、こいつ以外食うもんねえしな……」

葛藤するジョルジュに、僕と弟者は顔を見合わせる。
僕らが弁当を広げてる様に気付かぬほど、ジョルジュは釣りに没頭していたらしい。

( ^ω^)「それ食べなくても、バナナあげるお」
  _
(*゚∀゚)「マジで!?」

(´<_`;)「いや、普通に弁当やるから食えよ」

弟者が指差した方向に顔を向けたジョルジュは、ようやくその存在に気付いたようだ。
僕はジョルジュから拳が突き出される前に、その場から避難した。
  _
(#゚∀゚)「あんなにあるなら言えよ!」

577 :名も無きAAのようです:2011/10/03(月) 00:17:44 ID:v6.wJl820

( ^ω^)「いや、流石に気付くだろうと思って……」

猛るジョルジュをなだめ、僕は再び魚に目を向ける。

                             ピチピチ
( ^ω^)「じゃあ、こいつは逃がすのかお?」E(・3・)ヨ
  _
( ゚∀゚)「いや、持って帰るよ。食えるんだろ?」

( ^ω^)「マジかお……」

さっきは食べるのに抵抗があるみたいな言い方だったが、昼食の問題が解決して、
冷静に考える余裕が出てきたのだろうか。
だったら逃がせばいいのにと思わなくもないが、食べられる魚なら持って帰っても問題はなさそうだ。

ジョルジュは弟者から魚篭受け取り、魚を入れて池に沈めた。

( ^ω^)「つーかホント、何でも持って来てるおね」

(´<_` )「釣竿があるんだから、魚篭ぐらいは持って来てるさ」

578 :名も無きAAのようです:2011/10/03(月) 00:31:20 ID:v6.wJl820

ここまで来ると用意がいいを通り越していると思うが、便利ではあるので気にしない事にした。
  _
( ゚∀゚)「さあ、飯だ飯だ。ちゃんと俺の分、残してるだろうな?」

(´<_` )「心配しなくても十分にある」

( ^ω^)「その前に手を洗って来いお」

僕達は和やかに昼食を済ませ、午後からも午前中と同じくそれぞれが思い思いに活動した。
僕と弟者は絵を描き、ジョルジュは釣りをするといった具合だ。

最初は適当な気持ちで書き始めた絵だが、妙に真面目に取り組んでいる自分がいる事に気付く。
時間を忘れるほど描き続け、弟者の絵が視界に入っては現実に戻されるという流れを繰り返した。

( ^ω^)「ふぅ……」
  _
( ゚∀゚)「描き上がったのか?」

( ^ω^)「うん、まあ……鉛筆描きだけど」

僕の絵を覗き込むジョルジュ。
何度か頷いた後、また褒めてくれた。

579 :名も無きAAのようです:2011/10/03(月) 00:43:50 ID:v6.wJl820
  _
( ゚∀゚)「そういやお前、昔絵で何か賞もらってたよな」

( ^ω^)「よくそんなこと覚えてたおね」

賞といっても佳作だ。
取った本人ですら忘れかけてたそれを、よく覚えていたものだと驚いた。
  _
( ゚∀゚)「ぶっちゃけ、ついさっきまで忘れてたけど、その絵見てたら思い出したわ」

勿論、昔見た絵より今の絵の方が上手いんだろうけどと、律儀にフォローを入れるジョルジュ。
ここに来る前は小学生時代よりは上手くなっているはずと考えていたが、実際の所はどうなのか自分ではわからない。

( ^ω^)「これには昔の面影が残ってるのかおね?」
  _
( ゚∀゚)「ああ、多分な。何だか懐かしい気がするし」

懐かしいという気持ちに連れられる様に来た、今回の遠出、というには近い場所だが、
存外楽しいものになった。

何というか、自分自身が素直にそう思えたのが一番不思議な感じだ。

581 :名も無きAAのようです:2011/10/03(月) 22:51:34 ID:6Od8sovI0

(´<_` )「ふむ、なかなか上手いじゃないか」

いつの間にか僕の背後に立ち、絵を覗き込んでいた弟者が感想を述べる。

( ^ω^)「サンクスだお。弟者はもう……やっぱなんでもないお」

描けたのか、そう聞こうとしたのだが、聞くとそのまま弟者の絵を見なければならない流れになりそうなので、
そこで言葉を濁した。

(´<_`*)「ああ、描けているぞ。ちゃんと色まで塗ってな」

(^ω^ )「ふーん、そうなんだー、すごいおー」

言いかけの言葉で察したのか、最初から見せる気満々だったのか、どちらかと言えば後者のような気がするが、
そそくさとジョルジュの方へ逃げようとした僕を弟者はがっちりと捕まえる。

(^ω^ )「ジョルジュはどれだけ釣れたのかおね」

(´<_`*)「ほら、どうだ、この絵? なかなかのもんだろ?」

なおも逃げようと試みる僕の目の前に、一枚の衝撃映像が突きつけられる。
僕の頭は瞬時にそれを理解する事を拒み、これまで受けてきた情操教育が無にならぬよう心を閉ざす事に成功した。

582 :名も無きAAのようです:2011/10/03(月) 22:56:38 ID:6Od8sovI0

( ^ω^)「いい絵の具だお」

(´<_`*)「だろ、いい色が出てるだろ?」

わずかに視線を掠めたショッキングピンクを褒めた所、画伯は都合のいい様に誤解してくれた。
画伯は僕を解放し、今度はジョルジュに絵を見せに走る。

(´<_`*)「どうだ、ジョルジュ、この出来栄え?」
  _
( ゚∀゚)「……夢の島?」

(´<_`*)「ああ、確かに夢に溢れる景色がここに切り取られて存在しているな」

多分、ジョルジュの言葉は廃棄処理的な意味での夢の島だったと思うのだが、
画伯はまたも自分の都合のいい様に解釈する。

あの絵を直視して平然と答えたジョルジュといい、どちらもすごいと言わざるを得ない。
かなり駄目な意味でだけども。

( ^ω^)「ジョルジュの方の釣果はどうだお?」

さっさと画伯の話題は流し、ジョルジュの方に話を向ける。
あれから、意外にも何匹か釣れている様だったが、何匹ぐらい釣ったのだろうか。

583 :名も無きAAのようです:2011/10/03(月) 23:05:18 ID:6Od8sovI0
  _
( ゚∀゚)「おう、上々だぞ」

( ^ω^)「ほう、こんなとこでも意外と釣れるもんなんだおね」
  _
( ゚∀゚)「釣れたな。餌が良かったのか?」

( ^ω^)「パンの耳すげえ」

そんなわけはないと思うのだが、実際に釣った本人がそう言うのならそうかもしれない。
練り餌の時は全く釣れなかったのだし。

てっきり腕のお陰と自慢でもするのかと思ったが、妙に謙虚だ。

一見平気そうに見えたが、画伯の絵でそれなりにダメージを負っているのかもしれない。
  _
( ゚∀゚)「ほれ、こんだけ釣れた」

そんな事を考えていたら、ジョルジュは既に池の中から魚篭を引き上げていた。

584 :名も無きAAのようです:2011/10/03(月) 23:07:24 ID:6Od8sovI0

   ピチピチ  ピチピチ ピチピチ ピチピチ
E(・3・)ヨE(・3・)ヨE(・3・)ヨE(・3・)ヨE(・3・)ヨ
   ピチピチ  ピチピチ ピチピチ ピチピチ
E(・3・)ヨE(・3・)ヨE(・3・)ヨE(・3・)ヨE(・3・)ヨ
   ピチピチ  ピチピチ ピチピチ ピチピチ
E(・3・)ヨE(・3・)ヨE(・3・)ヨE(・3・)ヨE(・3・)ヨ
   ピチピチ  ピチピチ ピチピチ ピチピチ
E(・3・)ヨE(・3・)ヨE(・3・)ヨE(・3・)ヨE(・3・)ヨ
   ピチピチ  ピチピチ ピチピチ ピチピチ
E(・3・)ヨE(・3・)ヨE(・3・)ヨE(・3・)ヨE(・3・)ヨ


( ^ω^)
  _
( ゚∀゚)「どうだ、すげーだろ?」

( ^ω^)「気持ち悪!」
  _
( ゚∀゚)「お前……人が折角釣った魚を……」

585 :名も無きAAのようです:2011/10/03(月) 23:12:51 ID:6Od8sovI0

魚篭の中にはびっしりとあのぼるじょあブナが詰まっていた。
思わず固まってしまったが、改めて冷静に見ても気持ち悪い以外の感想が浮かんでこない。

( ^ω^)「いや、実際気持ち悪いお?」
  _
( ゚∀゚)「うん、まあな」

( ^ω^)「てか、何でこればっか釣れたんだお?」
  _
( ゚∀゚)「知らねえよ。これしかいないんじゃないの、この池?」

普通に考えれば、そんな事はないはずだ。
弟者の話だと、ぼるじょあブナがここにいる事が珍しいという事だった。

(´<_` )「ほう、これはこれは……」

その弟者は、どこか嬉しそうな顔でぼるじょあブナを眺めている。

( ^ω^)「これも何かしらの怪異って事かお?」

(´<_`*)「じゃないのかな? いいねえ、このわけのわからなさ」

586 :名も無きAAのようです:2011/10/03(月) 23:19:13 ID:6Od8sovI0

やはりそう考えるのが妥当な所か。
弟者ほどには前向きに喜べないが、一応僕も何かしらを起こしにここに来ているのだ。
この展開は望む所と考えるべきだ。

( ^ω^)「で、具体的には何が起きるのかおね」

(´<_` )「それは予測出来ないな。だがその方が面白い」
  _
( ゚∀゚)「で、こいつらどうする?」

僕と弟者の会話を聞いていないのか、それとも聞いていないふりをしているのか、ジョルジュは気にする事無く、
ぼるじょあブナの処遇を考えているようだ。

( ^ω^)「どうするも何も、食べるから逃がさなかったんじゃないのかお?」
  _
( ゚∀゚)「そのつもりだったけど、ちょっと多すぎるよな。お前もいるか?」

( ^ω^)「いらないお。つーかそもそも、ジョルジュはこれ、調理出来るのかお?」
  _
( ゚∀゚)「これ、どう調理すんの?」

(´<_` )「小ぶりの魚だから、一般的には素揚げとか、から揚げとかかな」

587 :名も無きAAのようです:2011/10/03(月) 23:26:27 ID:6Od8sovI0
  _
( ゚∀゚)「そのくらいなら出来るかな」

(´<_` )「しばらく洗面器とかに泳がせておいて、泥吐かせた方がいいかもな」

< …テ……

( ^ω^)「ジョルジュ、料理出来たのかお」
  _
( ゚∀゚)「一人暮らししてれば少しはな。揚げ物はやった事ないけど」

( ^ω^)「思いっきり調理法、揚げ物なんですけど?」

< …イ……
  _
( ゚∀゚)「油に放り込むだけだろ? 楽勝楽勝」

( ^ω^)「火事は起こすなお」

< オ……ケ…

588 :名も無きAAのようです:2011/10/03(月) 23:32:32 ID:6Od8sovI0
  _
( ゚∀゚)「……ねえ、内藤さん?」

( ^ω^)「何ですかお、長岡さん?」

< …イ…ケ…
  _
( ゚∀゚)「さっきから、何かお聞こえになってたりなさりませんでしょうか?」

( ^ω^)「お気の所為ではないのでしょうかおね」

< オイ…ケ…
 _
(;゚∀゚)「いや、めっちゃ聞こえてるよ! 何かどこかでぼそぼそ言ってるし!」

( ^ω^)「みたいだおね」

僕の空耳かと思い、スルーしていたのだが、どうやらそうではなかったらしい。
はっきりとジョルジュにも聞こえているようだ。

589 :名も無きAAのようです:2011/10/03(月) 23:39:03 ID:6Od8sovI0

多分池の方からだと思うが、かすれた低い声が聞こえて来る。

(´<_` )「……そうか、これがあったか」

そんな中、弟者は一人納得したような顔でしきりに頷いている。

( ^ω^)「心当たりがあるのかお?」

(´<_` )「ああ、有名なやつだよ」
 _
(;゚∀゚)「やっぱそっち方面か」

(´<_` )「置いてけ堀って聞いた事ないか?」
 _
(;゚∀゚)「置いてけ堀?」

( ^ω^)「置いてけ堀……ああ」

弟者が言う置いてけ堀に、僕は心当たりがあった。

590 :名も無きAAのようです:2011/10/03(月) 23:47:12 ID:6Od8sovI0

( ^ω^)「お堀で魚釣った帰りに、どこからともなく置いてけ〜って言葉が聞こえてくるっていう」

(´<_` )「そう、その置いてけ堀だ」

確かにこれは有名な話だ。
僕の記憶では、国語の教科書にも載っていた覚えがある。

( ^ω^)(教科書……)

僕の記憶が正しければ、載っていたのは多分、小学生の教科書だったはず。
ここに来て、妙に懐かしさと繋がる怪異が出て来たものだと思う。

< オイテケー…
 _
(;゚∀゚)「で、どうすんだよ?」

(´<_`*)「さて、どうしようか?」
 _
(;゚∀゚)「何でお前、そんなに楽しそうなんだよ!」

591 :名も無きAAのようです:2011/10/03(月) 23:54:46 ID:6Od8sovI0

( ^ω^)「まあ、彼にとっては楽しい事なのでしょうね」
 _
(;゚∀゚)「お前もお前で他人事みたいに言うなよ!」

他人事には思っていないというか、僕が中心にいる事は忘れてはいない。
しかし、ジョルジュは自分が魚を釣ったという直接的な原因があるからか、
自分が一番危険なのではと考えでもしているのだろう。

< オイテケー…オイテケー…

( ^ω^)「でも、置いてけ堀ってそんな怖いオチないおね?」

僕が覚えている範囲だと、無視して帰ったら魚がなくなったとか、魚篭置いて逃げて、
戻って来たら魚篭の中の魚がいなくなっていたとか、精々その程度のオチしかなかったはずだ。
 _
(;゚∀゚)「その程度なら確かに……」

(´<_`*)「水の中に引きずり込まれるってパターンも存在するぞ」
 _
(;゚∀゚)「だから嬉しそうに言うなよ! つーか怖いオチあるじゃん!」

592 :名も無きAAのようです:2011/10/04(火) 00:02:56 ID:sXD2ImiA0

そのオチは知らなかったが、マニアが言うのなら間違いはないのだろう。
意外とデンジャラスな話なのに教科書に載っていたとか、文科省もなかなかやってくれる。

< オイテケー…オイテケー…
 _
(;゚∀゚)「おい、どうすんだよ? 段々近付いてるっぽいぞ?」
                          _
(´<_`*)「勿論、一部始終を観察するに(;゚∀゚)「お前は黙ってろ!」

そろそろ余裕がなくなって来たジョルジュに、僕はどうするべきか、今の自分の考えを伝える。


( ^ω^)「1 ここで待ち構えるからその魚篭貸せお
      2 逆転の発想で、持ち帰らずにここで食べてみるのはどうだろうかお?
      3 逆転の発想で、もってけーと歌いつつ魚をぶつけてみるのはどうだろうかお?
      4 ジョルジュ、あとは任せたお! 置いてけ堀だけに置いてけぼり         」

安価
>>598


598 :名も無きAAのようです:2011/10/04(火) 12:42:58 ID:kMWTLDfk0



602 :名も無きAAのようです:2011/10/04(火) 23:27:41 ID:vanoO.Ys0

( ^ω^)「逆転の発想で、もってけーと歌いつつ魚をぶつけてみるのはどうだろうかお?」
 _
(;゚∀゚)「それだ! ってどれだ!? 何だっけ、それ?」

どの変が逆転なのかよくわからない、ふと思い浮かんだ言葉が口を吐いていた。
僕以上に混乱しているジョルジュは、一旦は同意しながらも、どうしていいのかよくわからないでいるようだ。

まあ、言った僕自身もよくわかっていないというか、その場で思い付いて書き加えたものが、
安価と書いて無意識に選ばれたのだから仕方がない。

( ^ω^)「あれだお、某銀河の妖精の歌」
 _
(;゚∀゚)「ああ、なるほどね……って、それ、何か効果あんのか?」

( ^ω^)「そんな事僕に聞かれても……」
 _
(;゚∀゚)「前が言ったんじゃねえか!」

< オイテケー…オイテケー…オイテケー…

置いてけと言われたから、持って行けと返すのはあながち間違いではない気がする。
歌う必要があるかどうかはさておき。

603 :名も無きAAのようです:2011/10/04(火) 23:34:54 ID:vanoO.Ys0

( ^ω^)「向こうは妖怪みたいなもんだし、妖精なら魔を払ってくれそうじゃないかお?」
 _
(;゚∀゚)「何かすげー適当に言ってる気がしてならないんだが」

首を捻りながら言う僕の言葉を、ジョルジュは信用がならないらしい。
まあ、こんないい加減な発言を無条件に信用する方がかなり駄目だと思うが。

< オイテケー…オイテケー…オイテケー…
 _
(;゚∀゚)「弟者はどう思う?」

(´<_` )「そうだな……一つだけ言わせてもらうなら」
 _
(;゚∀゚)「なら?」

   キラッ☆彡
(´<_` )ゞ「俺は緑の方がいいな」
 _
(;゚∀゚)「ロリコンは黙ってろ!」

( ^ω^)「緑うぜえ」

(´<_` )「ババアよりマシだろ」

604 :名も無きAAのようです:2011/10/04(火) 23:42:47 ID:vanoO.Ys0
 _
(;゚∀゚)「お前ら……」

僕と弟者が不毛な、しかし譲れない争いを繰り広げているのをジョルジュが恨みがましい目で見て来る。
そろそろ本気でキレられそうだから、冗談はこのくらいにしようかと思う。

( ^ω^)「魚逃がせばいいと思うお」

(´<_` )「おいおい、折角面白くなって来たってのに、それはないんじゃないか?」
  _
( ゚∀゚)「面白い面白くないは置いといて、お前はそれでいいのか?」

真面目に僕が安全策を提案すると、意外にもジョルジュがそれを止めようとする。
確かに、何かを起こしには来ているのだが、友達を危険に晒してまでやるべき事ではないと思っている。

( ^ω^)「このままだとジョルジュが危なそうだから、ここは逃げとくお」
  _
( ゚∀゚)「……」

(´<_` )「……うむ、仕方ないか」

僕の提案に、弟者もすんなりと同意する。
その辺りは流石、腐っても常識人という所か。

605 :名も無きAAのようです:2011/10/04(火) 23:48:37 ID:vanoO.Ys0

オカルトマニアでもロリコンでも画伯でも緑好きでも、
友達を危険に晒してまで自分の楽しみを追求したりしないのだろう。

(´<_` )「何か言ったか?」

( ^ω^)「何にも言ってないお」
  _
( ゚∀゚)「……よし」

( ^ω^)「お?」
  _
( ゚∀゚)「わかった、最後まで見定めてやろうじゃねえか」

( ^ω^)「ジョルジュ……」
  _
( ゚∀゚)「友達にそこまで言ってもらってんのに、ここで逃げたら男が廃るってもんだ」

< オイテケー…オイテケー…オイテケー…オイテケー…

( ^ω^)「危険かもしれないお?」
  _
( ゚∀゚)b「荒事は俺の方が向いてるし、お前にやらせるよりはマシだろ?」

606 :名も無きAAのようです:2011/10/04(火) 23:55:09 ID:vanoO.Ys0

親指を立て、力強く頷くジョルジュを、僕は何も言えずにただ見詰めていた。
どうしてジョルジュがここまでしてくれるのか、僕にはわからない。

友達なら当然だとジョルジュは言うのだが、僕がジョルジュの立場なら果たして同じ言葉が言えるだろうか。

( ^ω^)(言えないおね……)

それは多分、ジョルジュがいいやつで、僕がそうでもないという単純な話。
僕が言えるとしたら、どうでもいいという投げやりの気持ちの延長から。
  _
( ゚∀゚)「んじゃ、行くぜ!」

( ^ω^)「わかった……お?」

神妙な面持ちで頷きかけた僕は、ジョルジュの言葉にある違和感に気付き視線を上げる。

     ピチピチ
  _ E(・3・)ヨ
( ゚∀゚)∩

そこには何故か、一匹のぼるじょあブナを取り出したジョルジュの姿があった。

607 :名も無きAAのようです:2011/10/05(水) 00:01:38 ID:o99w4Pb.0

( ^ω^)「……長岡さん?」

< オイテケー…オイテケー…オイテケー…オイテケー…

     ピチピチ
  _ E(・3・)ヨ
(#゚∀゚)∩「置いてけ置いてけ、うるせえんだよ!」

     ピチピチ
  _ E(・3・)ヨ
(#゚∀゚)∩「そんなに欲しいなら、持って行きやがれぇぇぇぇ!」


モッテッケー! ブンッ!
(#゚∀゚)つ  三E(・3・)ヨ


( ^ω^)「結局投げるのかお」

608 :名も無きAAのようです:2011/10/05(水) 00:10:07 ID:o99w4Pb.0

勢いよく池に向かってぼるじょあブナを投げつけるジョルジュ。
ちゃんと歌も忘れない辺り、律儀な男である。

投げ付けられたぼるじょあブナは水飛沫を上げ、着水というには些か派手に水面に激突する。
動物愛護団体に怒られそうな光景だが、元がキモい魚なのであまり罪悪感は沸かない。
  _
(#゚∀゚)「どうだ、この野郎!」

( ^ω^)「いや、そんな物理攻撃が聞くわけないお?」

提案しておいてこの言い草はひどいかもしれないが、置いてけ堀のような正体不明の現象に、
魚をぶつけるという力技が通じるとは到底思えない。

なら提案するなよと言われそうだが、それを僕に言われても困る。

< オイテケ〜…オイテケー…オイテケー…オイテケー…

( ^ω^)「ほら……」

案の定、先ほど変わらない声を響かせる置いてけ堀。
これ以上は無駄だろうし、待つと決めたなら大人しく待つ方が懸命だと思える。

609 :名も無きAAのようです:2011/10/05(水) 00:19:43 ID:o99w4Pb.0
  _
(#゚∀゚)「ちぃ、次は連打を食らえ!」

( ^ω^)「いや、そこは諦めてけお」


< オイテケー…オイテケー…オイテケー…オイテケー…

モッテッケー! リューセー クダイテー デート!
(#゚∀゚)つ  三E(・3・)ヨ 三E(・3・)ヨ 三E(・3・)ヨ


自棄を起こしたかのように、次々とぼるじょあフナを池に投げ込むジョルジュ。

熱唱しながら魚を池に投げ込む姿は、最早こっちの方が怪奇現象だ。
若干歌詞を間違ってるのもまた趣き深い。

( ^ω^)「どうしたもんかおね?」

困ったというよりは呆れたような気分で弟者の方に目を向ける。
しかし視線の先には、先ほどまでそこにいたはずの弟者の姿はなかった。

( ^ω^)「弟者?」

610 :名も無きAAのようです:2011/10/05(水) 00:27:28 ID:o99w4Pb.0
  _
(#゚∀゚)「ならばダブルスで行くぞ!」

+(´<_` )「心得た!」

( ^ω^)


< オイテケ〜…オイテケー…オイテケ〜v…オイテケー…

  _トンデッケー!
(#゚∀゚)つ  三E(・3・)ヨ 三E(・3・)ヨ 三E(・3・)ヨ

  アーオイデンリュー!
( ´_>`)つ  三E(・3・)ヨ 三E(・3・)ヨ 三E(・3・)ヨ


( ^ω^)「……何してんの?」

弟者はいつの間にかジョルジュと並んでぼるじょあブナを池に投げ込んでいる。

何をしてるのかと問い詰めたい所ではあるが、弟者としては、
こっちの方が面白そうな事になりそうだとかで悪乗りしてるのだろう。
取り敢えず緑うぜえ。

611 :名も無きAAのようです:2011/10/05(水) 00:38:15 ID:o99w4Pb.0

( ^ω^)「はあ……」

何だか妙に疲れた僕は、座り込んでその異様な様を大人しく見ている事にした。

  _  ドリャァァァ!
(#゚∀゚)つ  三E(・3・)ヨ

< オ…テケ〜…オイテケー…オイテケ〜…オイテケーvv…


     キラッ!
( ´_>`)つ  三E(・3・)ヨ

< オイテケー…オイ〜ケー…オvvテケー…オイテケー…


( ^ω^)「お?」

全く無駄と思っていた行為であるが、よくよく聞いていると、わずかに置いてけ堀の声が掠れている気がする。
ぼるじょあブナの着水音で聞き取り辛いので、気の所為かも知れないが。

612 :名も無きAAのようです:2011/10/05(水) 00:50:00 ID:o99w4Pb.0
  _  ダラッシャァァァ!
(#゚∀゚)つ  三E(・3・)ヨ

< オイテケー…オイ…アブネ!?…オイテケー…オイテケー…


( ^ω^)「おい、今はっきり『危ね!?』って聞こえたぞ?」

気の所為かと思っていたが、今確かに人の声らしきものが聞こえた。
置いてけ堀自体が人の声のようなものではあるが、それとは違うどこかしら感情のこもった声だ。

(´<_` )「幽霊の正体見たり、枯れ尾花というやつかな」

( ^ω^)「弟者……」
  _
( ゚∀゚)「ブーン」

( ^ω^)「ジョルジュ……」

二人もそれに気付いたのか、魚を投げるのを止め、僕の方に歩み寄る。
僕のそばまで来たジョルジュが、その手にあった銀色の輝く物体を僕に差し出した。

613 :名も無きAAのようです:2011/10/05(水) 00:57:21 ID:o99w4Pb.0
  _  スッ
( ゚∀゚)つE(・3・)ヨ

     コクッ
( ^ω^)"

僕はそれを受け取り、大きく振りかぶる。

      ピチピチ
    E(・3・)ヨ
( ^ω^)∩

そして、それを力の限り池に叩き込んだ。

   モッテッケー! ブォン!
(#^ω^)つ 三E(・3・)ヨ


適当なAA(※既出未出問わず)
>>614


614 :名も無きAAのようです:2011/10/05(水) 08:00:09 ID:QS5NxMrwO
川 ゚ -゚)


616 :名も無きAAのようです:2011/10/05(水) 23:05:37 ID:6aCzYaDs0

渾身の力を込めてぼるじょあブナを投げ付けた瞬間、一際大きな水飛沫が池から立ち上る。
その中心に立つ一つの影が、思い切り腕を振り下ろした体勢の僕から真正面に見て取れた。

川# - )「貴様らいい加減に──」

( ^ω^)「あ……」


  ゲホアッ!? ボグシャァッ!
‘。・. ノ( д(#E(・3・)ヨ三


運動神経が良いとは言い難い、僕が放ったぼるじょあブナは、僕の真正面に出て来た人影に不運にも直撃した。
人影は背中から倒れ、再び水中に沈む。

魚だし、大したダメージはないだろうが、自分がやられたら精神的に嫌な一撃だと思う。

 _
(;゚∀゚)(*´_>`)(;^ω^)「えっと……」

617 :名も無きAAのようです:2011/10/05(水) 23:18:36 ID:6aCzYaDs0

どう反応していいのかわからず、僕らは思わず顔を見合わせる。
約一名、楽しそうな顔をしているのもいたが、僕はこの状況に戸惑っていた。
 _
(;゚∀゚)「おい、今の……」

(;^ω^)「置いてけ堀の声も止まっちゃったし、多分……」

僕は頷き、続くであろうはずであったジョルジュの疑問の言葉をを省く。
状況から考えるに、今の人影が置いてけ堀なのだろう。
 _
(;゚∀゚)「やっぱそうだよな……」

(´<_` )「置いてけ堀の正体が人……とは限らないが人型だったな」

弟者の説明では、置いてけ堀は古くからある話ではあるが、その正体ははっきりとわかっていないという。
妖怪に分類される事が多いのだが、明確にその姿が書かれているものはまずないらしい。

(;^ω^)「お?」

池は相変わらず静かなままだが、水中に何かが蠢いている。
具体的には影がゆっくりとこちらに近付いて来ているのだ。

618 :名も無きAAのようです:2011/10/05(水) 23:26:27 ID:6aCzYaDs0

これは本格的にヤバそうだなと思いはしたが、対策を考えるような暇もなく、再び水中から人影が姿を現す。


川#   )


俯き気味な上、長い黒髪に隠れて顔はよく見えないが、どうやら女性の様だ。
色白の肌が寒色の着物姿と相俟って、それっぽい雰囲気を存分に醸し出している。
 _
(;゚∀゚) ゴクリ…

(;^ω^)

(*´_>`)

その挙動を見守るが、女性は僕らからわずか一、ニメートルの距離に浮上したまま、微動だにしない。
いや、よく見るとわずかながらその肩が震えている様だ。


川#   )


水浴びには少々遅い季節だったんじゃないかと余計な心配をしていると、唐突に女性が顔を上げた。

619 :名も無きAAのようです:2011/10/05(水) 23:32:20 ID:6aCzYaDs0

    クワッ
川#`゚益゚)


そこには般若がいた。

(;^ω^)「怖っ!」

    ギロッ
川#゚益゚')「あ?」

思わず漏れてしまった僕の呟きに、般若は耳聡く反応する。
その眼光は鋭く、思わず目を背けてしまう。
 _
(;゚∀゚)「おい、何かめっちゃ怒ってらっしゃいませんかね?」

(;^ω^)「どう見ても怒ってるお」

ひそひそと話す僕らをじっと睨み付けて来る般若。
ぶち切れた市松人形みたいな顔とはこういう顔を指すのだなと、僕は若干現実から逃避していた。

そんな中、後方からパシャパシャと場違いな機械音が響いて来るのは、マニアが写メでも撮っているのだろう。

620 :名も無きAAのようです:2011/10/05(水) 23:40:33 ID:6aCzYaDs0

川#`゚益゚)「おい、そこの眉毛」
 _
(;゚∀゚)「えっと……?」

(;^ω^)「お?」

川#`゚益゚)「お前だお前、今なんつった?」

戸惑う僕らに、ぶち切れ市松は苛立たしげにジョルジュを指差す。
 _
(;゚∀゚)「あ、はい、その……何かお怒りでらっしゃるのではと……」

川#`゚益゚)「『お怒りでらっしゃる』だ?」

ジョルジュの言葉を遮り、溢れ出る怒気を隠そうともせずにジョルジュを睨み付けるお市さん。
その剣幕にジョルジュは言葉を飲み込み、半歩下がる。

どうでもいいが、お市さんという呼び方が一番妖怪と言うか幽霊っぽいので、仮にお市さんと呼ぶ事にする。

川#`゚益゚)「怒ってらっしゃるからっしゃらないかで言えば、怒ってらっしゃるに決まっとろうがァッ!」

激昂し、雄叫びを上げるお市さん。
僕はその隙に数歩下がり、その結果必然的にジョルジュが最前面に立つ事になる。

622 :名も無きAAのようです:2011/10/05(水) 23:47:12 ID:6aCzYaDs0
 _
(;゚∀゚)「ですよねー」

川#`゚益゚)「で、お前ら何やってんの?」
 _
(;゚∀゚)「な、何って……投擲?」

川#`゚益゚)「何で置いてけ堀に魚投げつけてくるとか、アグレッシブな事してんの?」
 _
(;゚∀゚)「それはえっと……何かノリで?」

川#`゚益゚)「ノリで魚投げ付けんじゃねえよォォォォォッ!」

更に激昂するお市さん。
最早般若どころの迫力ではない。

川#`゚益゚)「お前らさあ、人が折角それっぽい雰囲気出してさ、呼びかけてんのによォ?」

川#`゚益゚)「しばらく気付かねえは、気付いたら気付いたで魚投げてくるわ」

川#`゚益゚)「お前達一体何なの?」

623 :名も無きAAのようです:2011/10/05(水) 23:57:17 ID:6aCzYaDs0
 _
(;゚∀゚)「何なのと言われましても……ねぇ?」

同意を求めるように顔を横に向けるジョルジュ。
しかし残念ながら既に僕はその位地にはいない。
 _
(;゚∀゚) イネエ!?

川#`゚益゚)「もっとさあ、あるだろ、何かさ?」
 _
(;゚∀゚)「えっと、はい……何かとはその、何でしょう?」

川#`゚益゚)「風情っていうの? 怖がり方とかさ、反応とか」

川#`゚益゚)「こう、ヒュードローって音が鳴ったってうらめしやって感じのさ」
 _
(;゚∀゚)「はぁ……、いや僕は結構怖かったんですけどね……その、怖すぎて逆に行っちゃったみたいな……」

川#`゚益゚)「別に立ち向かって来るのはいいんだよ」

川#`゚益゚)「昔も怖がらないで向かって来たやつも何人かはいたんだし」

川#`゚益゚)「姿の見えない得体の知れない声が聞こえてきたら、攻撃するやつもいるだろうさ」

624 :名も無きAAのようです:2011/10/06(木) 00:07:37 ID:ST/hzYpo0
 _
(;゚∀゚)「ええ、まあ……」

川#`゚益゚)「でもさ……」

川#`゚益゚)「何で魚なん?」
 _
(;゚∀゚)「何でと仰られても……そこに魚があったからとしか……」

川#`゚益゚)「投げるなら他にも石とかあるやん?」

川#`゚益゚)「どう考えても石の方が強そうやろ?」

川#`゚益゚)「硬いし投げやすいし」

川#`゚益゚)「何で魚なん?」
 _
(;゚∀゚)「だからその……ノリ?」

川#`゚益゚)「ふざけんじゃねェェェェェッ!」
 _
(;゚∀゚) ヒィィッ!?

625 :名も無きAAのようです:2011/10/06(木) 00:30:59 ID:ST/hzYpo0

響く怒号に後退るジョルジュ。
怖いのは怖いのだが、どちらかと言えば怪異の怖さというよりは、
カミナリおじさんの家にボールを打ち込んでしまった野球少年の怖さに近いかもしれない。

( ^ω^)「どうしようかおね?」

ジョルジュから少し距離を空けた僕は、視線はジョルジュの方に向けたまま弟者に相談を持ちかける。

何とも馬鹿馬鹿しい事で怒られているので信憑性が薄れるが、
お市さんの言動を拾う限りでは彼女は確実に怪異な存在であろう。
水の中で寒くないのかとか考えたが、服や髪は濡れた様子もないし。

( ´_>`) ジーッ
   つ【】

( ^ω^)「……お前、何やってんの?」

返事がないと思って弟者の方を見てみると、弟者は携帯電話をお市さんへ向けていた。
写メの後はムービーを撮るつもりらしい。
間違いなくこの状況を一番楽しんでいるのはこの男だ。

626 :名も無きAAのようです:2011/10/07(金) 00:16:07 ID:rnEPzf7U0

( ^ω^)「てか、写真撮れたのかお?」

お市さんが怪異な存在なら、普通のカメラで写真が撮れるのか疑わしい所だ。
逆に言えば写真に写らないなら怪異である事が確定のようなものだが。

(´<_`;)「駄目だった。だから動画に切り替えたんだが……」

川#`゚益゚)「面白いやつが来るからと言われて来てみれば、頭がおかしいって意味で面白い事この上ないと来た」
 _
(;゚∀゚)「アハハ……何かすんません」

( ^ω^)(……ん?)

未だ背後ではぐちぐちと恨み言が綴られているが、その中に気になる言葉があった。

川#`゚益゚)「大体、お前ら……」

( ´_>`) ジーッ
   つ【】

627 :名も無きAAのようです:2011/10/07(金) 00:23:11 ID:rnEPzf7U0
    クルッ
川#゚益゚')「ん?」

( ´_>`) ジーッ
   つ【】

    パッ
川 ゚ -゚)

( ^ω^)「お?」

川 ゚ -゚)「おい、そこ、撮るなら撮るとちゃんと断れよ」

(´<_`;)「あ、はい、すみません」

<川 ゚ -゚)「撮るならもっとあの辺、そうそう、その角度からで頼む」
    ノ

弟者がムービーを撮っている事に気付くと、お市さんは撮影方法に注文を付け出した。
カメラ映りを気にする怪異ってどうなんだろう。

そもそも、ちゃんと撮れてない可能性が大きいというのに。

628 :名も無きAAのようです:2011/10/07(金) 00:30:32 ID:rnEPzf7U0

( ^ω^)「撮れてるかお?」

(´<_`;)「駄目だ……」

小声で弟者に聞いてみたが、やはり撮れてないらしい。
目に見えて落胆する弟者だが、弟者のお陰でお市さんがクールダウンしてくれたようなので助かった。
その顔も般若から普通の、というよりかなり美人と言ってもよい顔に変わっている。

( ^ω^)「あの、今お時間よろしいですか?」

川 ゚ -゚)「何だその、怪しげな路上キャッチセールスみたいな誘い文句は」

何と言うか、カメラの件といい、妙に世慣れた怪異である。
ただまあ、その方が色々と話が早そうなので、その点は気にしないでおこうと思う。

( ^ω^)「いや、ちょっと質問が」

川 ゚ -゚)「ふむ、いいだろう、こちらもいくつか聞きたい事はあるしな」

僕達はまず簡単な自己紹介をした。
ここに来た理由から話すと長くなりそうなので、
ひとまず彼女がどの程度関わっているのかを知るまでは当面の目的は黙っておく事にする。

629 :名も無きAAのようです:2011/10/07(金) 00:43:52 ID:rnEPzf7U0

( ^ω^)「あなたは置いてけ堀さん、という事でよろしいんですかおね?」

川 ゚ -゚)「いや、私の本名は沙緒クールという」

川 ゚ -゚)「置いてけ堀は人間が付けた名前だし、そもそも……まあ、これはいいか」

( ^ω^)「では、クールさんとお呼びしていいですかおね」

川 ゚ -゚)「うむ、クーでかまわんぞ。あと敬語もいらん」

先ほどまでの怒りはどこへやら、極めて理性的に応対してくれるクー。
僕はこれ幸いと早速先ほど気になった事を聞いてみる。

( ^ω^)「さっき、僕らの事を誰かから聞いたみたいな言い方してましたが、それって誰から聞いたんですかお?」

川 ゚ -゚)「なかなか耳がいいな。だがしかし、それは言えない」

( ^ω^)「どうしてですかお?」

川 ゚ -゚)「そういう約束だからさ」

630 :名も無きAAのようです:2011/10/07(金) 00:50:53 ID:rnEPzf7U0

簡単に聞き出せるとは思っていなかったが、やはり、いきなり答えをくれるような事はないらしい。

これから初対面の人から色々と聞きださねばならないという、
人生のイージーモードを常々願う僕にとっては高いハードルがそびえ立つ。

( ^ω^)「ええっと……」

(´<_`*)「置いてけ堀って、どんな目的があるんですか?」

案の定、言葉に詰まる僕に変わり、弟者が質問をしてくれる。
ただ、恐らく僕への助け舟というよりは、自分の興味全開の質問をする辺りは流石だ。

まあ、僕も少し興味がなくもない質問ではある。

川 ゚ -゚)「あれか……、あれはな……」

(´<_`*)「やっぱりあれですかね、守護的な意味合いとかのものだったり、九十九神の亜種で、自分の……」

川 ゚ -゚)「特に意味はない」

(´<_`;)「無いの!?」

631 :名も無きAAのようです:2011/10/07(金) 00:58:35 ID:rnEPzf7U0

川 ゚ -゚)「正しくは、よく知らないだけなんだがな」

( ^ω^)「知らない?」

川 ゚ -゚)「うむ、何故なら私は置いてけ堀ではないからな」

( ^ω^)「へ?」

ここに来て、これまでの話を全て引っくり返す発言をするクー。
ならば何故置いてけ堀を名乗ったのだろうか。

川 ゚ -゚)「いや、別に私は置いてけ堀だと名乗った覚えはないぞ?」

置いてけ堀は人間が名づけたものとは言ったが、自分が置いてけ堀ではないという事らしい。
となれば彼女は何者なのかという話が出てくるのだが、もう一つ気になる事もある。

( ^ω^)「じゃあ、何で『置いてけ〜置いてけ〜』って言ってたんだお?」

川 ゚ -゚)「……」

( ^ω^)「……」

632 :名も無きAAのようです:2011/10/07(金) 01:05:33 ID:rnEPzf7U0

川 ゚ -゚)「……何かノリで?」
 _
(;゚∀゚)「うぉぉぉい!」

ひとしきり首を傾げ、ぼつりと呟くように答えたクー。
この発言には、先ほど同じ答えをして散々責められたジョルジュは納得がいかないようだ。

当然と言えば当然だろうけども。

川 ゚ -゚)「いや、何か期待されてる感じだったしさ、その演出的に?」

川 ゚ -゚)「あれが一番雰囲気に合ってるかなって」

( ^ω^)「確かにそれっぽくはありましたお」

川*゚ -゚)「だろ?」

僕の言葉に嬉しそうな顔を見せるクー。

何だかひどく無駄な時間を費やした気もするが、結果的にはこうやって怪異であるクーと遭遇出来たのだから、
良しとしておくべきか。

663 :名も無きAAのようです:2011/10/08(土) 01:34:00 ID:6OTGGhLU0

( ^ω^)「で、僕らを脅かしてどうするつもりだったんだお?」

川 ゚ -゚)「いや、特に何も」

そこに人がいるから脅かす、ただそれだけだとクーは言う。
それが怪異としての矜持なのか、単にクーの性格の問題かはわからないが、
何かしらの明確な意図があったわけではないらしい。
 _
(;゚∀゚)「なあ、こいつ馬鹿だろ?」

( ^ω^)「沈められたくなかったら黙っとけお」

胡散臭さはあるものの、その異質さからクーは確実に人ではないのであろう。
あまり怒らせたい相手ではないと思う。

川 ゚ -゚)「質問はそれだけか?」

( ^ω^)「いや、まだ色々あるお」

僕がクーに聞きたい事。
本命は彼女の事なのだが、クー自身の事も聞いておくべきかもしれない。

664 :名も無きAAのようです:2011/10/08(土) 01:43:24 ID:6OTGGhLU0

彼女の名前こそ覚えていないが、姿形は覚えているので、クーが彼女でない事はわかるが、
何かしらの関係があるのはその言動から推測出来る。

それに、姿形を変えられるのであれば、クーが彼女である可能性もないとは言えない。

何よりまず、彼女が本当は何なのか聞く必要があるかもしれない。
簡単に答えてくれるとは限らないが、今の空気は比較的友好的に感じるので聞く分には構わないだろう。


僕は取り敢えずこの事を聞く事にした。

( ^ω^)「1 置いてけ堀じゃないとしたら、クーは本当は何なんだお?
      2 クーはその約束した人とどういう関係なんだお?
  _    3 結局クーは何をしに来たんだお?              」
( ゚∀゚) 「4 何カップ?」

安価
>>665


665 :名も無きAAのようです:2011/10/08(土) 01:50:48 ID:5He1WoJ60
4


668 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 00:44:46 ID:ZM1uw6dE0
        _
( ^ω^)「( ゚∀゚)「何カップ?」

しかし、僕の質問を遮るように違う質問をかぶせてくるジョルジュ。
しかもどうでもいいというか、またクーを怒らせるような質問だ。

川 ゚ -゚)「ワールドカップ」

だが、クーはさほど怒った様子は見せず、冗談で切り返してくる。
そのセンスはナウなヤングにバカ受けしない、古臭いものではあるが。

  _  ∩
(*゚∀゚)彡「ワールドクラスおっぱい! おっぱい!」

何故かその答えがツボにはまったらしいジョルジュ。
そういえばこいつは巨乳フェチだった事を思い出す。
その執着ぶりは、一部で乳魔人と呼ばれてるとか何とか。

<川 ゚ -゚)
    ノ

クーはまんざらでもない様子でポーズを決めるが、それもやはりどこか古臭い。
万が一聞こえたら怖そうので、口には出さずに思うに留める。

669 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 00:46:28 ID:ZM1uw6dE0

ただ、クーの胸はあまり胸が目立たない着物の上からでも、その存在感を十分に誇示している。
これならジョルジュの好みにストライクであろう。
  _  
(*゚∀゚)
  ⊂彡

対照的に全く胸の話題には興味は示さず、怪異という一点の部分だけに食いついている弟者は流石、
ロリコンの面目躍如といった所か。

( ´_>`) ジーッ
   つ【】

きっと内心は、ババァ乙とでも思っているのだろう。

(´<_` )「……何か言ったか?」

( ^ω^)「何にも言ってないお」

670 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 00:54:06 ID:ZM1uw6dE0
  _  ∩
(*゚∀゚)彡「おっぱい! おっぱい! おっぱいぱい!」
  ⊂彡

先ほどまでのいびられて憔悴していた時とは打って変わって、生き生きとした表情で腕を振るジョルジュ。
元気になって良かったと思うと同時に、これ以上話を脱線させられると困るのもまた事実。
そろそろ終わる方向に話を導きたいのに、一向に本命を選ばない神の声という安価が少し憎らしかったりなんだり。

そういった事情もあり、僕は話を円滑に進める為の行動を取る必要があるのだ。

( ^ω^)「おっと、足が滑った」
 _
(;゚∀゚)「ちょ、おまッ!?」

不運にも滑らせて仕舞った僕の前蹴り、もとい前足を背中に食らい、池の方によろけるジョルジュ。

( ^ω^)「待ってろ、今助けるおー(棒」
 _
(;゚∀゚)「何か嘘くせー!」

そう言いながらも身体を半回転させ、僕の方へ手を伸ばすジョルジュ。

671 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 01:02:17 ID:ZM1uw6dE0

僕はその手を掴むふりをしてジョルジュの首にラリアートをかます。
 _
(;゚∀゚) ゲホァッ!?

体勢の崩れていたジョルジュは宙を舞い、そのまま池にダイビング。
盛大な水飛沫を上げ、水中に消えて行った。

    アチャー
( ^ω^)ヾ「手が滑っちゃったお!」

川 ゚ -゚)「お前、意外と容赦ないな……」

僕の完全犯罪、もとい、不運な事故に呆れた顔を向けるクー。
ジョルジュは犠牲になったのだ、等と一人万感の思いに耽るふりをしていると、クーは僕に背を向けた。

川 ゚ -゚)「まあ、丁度いいか」

( ^ω^)「お?」

672 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 01:08:05 ID:ZM1uw6dE0

( ^ω^)「……つか、ジョルジュが浮かんで来ない件」

池に落ちた最初の水飛沫以降、水面に何の動きもない。
岸近くだし、深さはないはずなのに、ジョルジュはどこかへ消えてしまった。

川 ゚ -゚)「そりゃまあ、そういう池だからな」

( ^ω^)「……ひょっとして僕、やらかしちゃったかお?」

ギャグパートでは死なないだろうと軽い気持ちでとんでもない事をしてしまったかもしれないと、
僕が後悔するより早く、極めて何でもない様な口調でクーは言う。

川 ゚ -゚)「案ずるな、しばし待て」

クーはゆっくりと水面を歩き、ジョルジュが沈んだ場所に自分も沈んで行く。
立ったまま、エレベーターに乗っているかの如く、ほとんど水飛沫を上げずに沈む姿は異様だ。

( ^ω^)「何なんだおね?」

(´<_`ii|) ドヨーン

( ^ω^)「……何でそんな落ち込んでんだお?」

673 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 01:23:27 ID:ZM1uw6dE0

(|ii´_>`)つ【】

僕の問いに無言で携帯を指す弟者。
どうやらムービーも駄目だったらしい。

( ^ω^)「目の前にクーという怪異がいるんだし、記録に残さなくても記憶に残ればいいんじゃないかお?」

正直、そこまで露骨に落ち込む必要はないと思うのだが、マニアの思考は僕にはきっと理解できない。

(´<_`ii|)「……なあ、心霊写真って、こう、何か憧れないか?」

( ^ω^)「憧れないお」

やはり僕に理解出来ぬ範疇で悩んでいる弟者。
そう言えばこいつの家には、心霊写真の本とかいっぱいあった事を思い出す。

(´<_`*)「一度でいいから、あんな雑誌に載る写真を撮ってみたいんだよ」

( ^ω^)「ふーん」

弟者の話に全く興味のあるようには聞こえない返事をし、僕は視線を池に戻す。
水面は穏やかで、波一つ立っていない。

674 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 21:57:21 ID:pNz0hb860

(´<_` )「仕方ない、別のカメラを試すか」

後方から聞こえてくる声に、ツッコミたい衝動を抑え、視線を池に固定する。

よく考えなくてもあれほど荷物を持って来ていた弟者が、
怪異の起こるかもしれない現場に携帯しか撮影器具を持って来ていないわけはないだろうと思う。

( ^ω^)「お?」

それからさほどの間をおかず、水面がにわかに泡立ち始めた。
入浴剤でも放り込んだのかの如く、いささか過剰な泡沫の中心に一つの影が浮かび上がる。

川 ゚ -゚)

言うまでもなくその影はクーで、腰辺りまでしか見えないぐらい浮かんだ位置で池の中からこちらを見ている。

( ^ω^)「クー、ジョルジュは……」

川 ゚ -゚)∩ スッ

クーは片手を挙げ、僕の言葉を制し、咳払いを一つする。
僕は大人しく口をつぐみ、クーの行動を見守る事にした。

675 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 23:01:38 ID:pNz0hb860

川 ゚ -゚)「……っと、そういえばお前の職業は何だ?」

( ^ω^)「ありませんお」

川 ゚ -゚)「学生ということか」

( ^ω^)「学生でもありませんお」

川 ゚ -゚)「じゃあ……、いいか、適当で」

川 ゚ -゚)ヽ コホン

川 ゚ -゚)「旅人よ」


川 ゚ -゚)「お前が落としたのは、この金のジョルジュか?」
⊃(金゚∀゚)


( ^ω^)

676 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 23:10:52 ID:pNz0hb860

川 ゚ -゚)「それとも、この銀のジョルジュか?」
⊃(銀゚∀゚)


( ^ω^)

そう来たか。
クーの正体は、いわゆる金の斧、銀の斧の寓話の女神か何かと言うことだろう。

あの話は確か、ヘルメスとかの神様が湖から出てくるのが元々のお話だったはずだが、
時代を経てもっと抽象的な存在になってはいたから、正確なところはわからない。

川 ゚ -゚)「さあ、どっちだ」
  _    _
(金゚∀゚)(銀゚∀゚)

僕は突き出される二つの輝かしいジョルジュを前に頭をひねる。

この話の正しい答えは知っているのだが、物が物だけに正解していいものかわからない。

677 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 23:22:06 ID:pNz0hb860

( ^ω^)「あの、質問いいかお?」

川 ゚ -゚)「かまわんぞ」

( ^ω^)「これはまだ答えとカウントしないでくださいお」

川 ゚ -゚)「うむ」

( ^ω^)「ぶっちゃけ、金と銀のジョルジュはいらないんですが……」

川 ゚ -゚)「まだ誰もこれをやるとは言ってないぞ?」

( ^ω^)「そうなんですけど、その……万が一、一番いいジョルジュをくれるとしても、普通のやつが……」

川 ゚ -゚)「ん? 金と銀は気に入らんか?」

( ^ω^)「そういう問題じゃなくてですお」

川 ゚ -゚)「こんなに活きが良いのに」

678 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 23:40:42 ID:pNz0hb860

     _  ∩ ゴールデン             _  ∩ いぶし銀
   (金゚∀゚)彡  おっぱい!おっぱい!   (銀゚∀゚)彡  おっぱい!おっぱい!
   (  ⊂彡                  (  ⊂彡
    |   |                     |   |
    し ⌒J                      し ⌒J


( ^ω^)「いらNEEEEEEEEE!!!」

神々しく輝きながら腕を振るジョルジュ金とジョルジュ銀。
中身は変わらずジョルジュで安心はしたが、やはり光り輝く友人は何か嫌だ。

川 ゚ -゚)「では、こういうのならどうだ?」
つ( ゚∀゚)

( ^ω^)「お、普通のジョル──」
  _
( ゚∀゚)+「やあ、僕は綺麗なジョルジュだよ!」

( ^ω^)

679 :名も無きAAのようです:2011/10/10(月) 00:04:47 ID:mj70okm.0
  _
( ゚∀゚)+「全く、昼間っからおっぱいなんて下品だね」
  _
( ゚∀゚)+「紳士はそんな事は口にしないんだ」
  _
( ゚∀゚)+「女性の胸は慈愛の象徴だからね」
  _
( ゚∀゚)+「こう、慈しむ様に、感謝を込めて」


     _  ∩ Love & peace
  + ( ゚∀゚)彡  おっぱい!おっぱい!
   (  ⊂彡
    |   |
    し ⌒J


( ^ω^)「うっZEEEEEEEE!!!」

( ^ω^)「つーか、結局おっぱい言うとるがな」

680 :名も無きAAのようです:2011/10/10(月) 00:14:35 ID:mj70okm.0

川 ゚ -゚)「これも気に入らんか」

( ^ω^)" コクコク

思わず似非関西弁になるくらいうざいジョルジュを戻してもらい、僕は再び考える。
何かしら答えないと話が先に進まないとは思うが、
ここは強引にでも普通のジョルジュを返してもらった方が個人的には面倒臭くなくてよい。

川 ゚ -゚)「さて、そろそろ答えを聞こうか?」

僕はクーに向かい、自分の答えを口にする。


( ^ω^)「1 普通のジョルジュだけ返してくださいお
      2 普通のジョルジュですお
      3 ジョルジュ、そろそろ出て来いお
      4 これって、ただのくちばしを落とすと、金や銀のエンゼルマークがつくんですかおね?  」

安価
>>681


681 :名も無きAAのようです:2011/10/10(月) 01:12:20 ID:k1i1URrAO
初遭遇!
安価なら


682 :名も無きAAのようです:2011/10/10(月) 22:26:59 ID:4t4IXmqc0

( ^ω^)「普通のジョルジュだけ返してくださいお」

川 ゚ -゚)「返せとは随分な言い草だな?」

自分はただ落とされたものを拾っただけで、盗んだわけではないと言うクー。

確かにその通りである。
話の結末を知ってるだけに、少し性急な物言いをしてしまったのは僕のミスであろう。

( ^ω^)「すみません、失言は謝りますお」

川 ゚ -゚)「まあ、いいさ。お前が言わんとせん事もわかっちゃいるしな」

クーはそれだけ話の認知度が高いという事だと、満足げな口調で続ける。
クーの様に、自分が怪異な存在である事を認知しているというのも、何だか不思議なものだ。

川 ゚ -゚)「ほれ、無印ジョルジュだ」
つ( ゚∀゚)

( ^ω^)「助かりますお」

意外、といっては失礼だが、特にごねられる事もなく、すんなりと普通のジョルジュを差し出してくれる。
僕は手を伸ばし、ジョルジュを引き取ろうとする。

683 :名も無きAAのようです:2011/10/10(月) 22:48:44 ID:4t4IXmqc0

( ^ω^)つ「ジョルジュ」


川 ゚ -゚)
つ( ゚∀゚) !    ⊂(^ω^ )

川 ゚ -゚)
つ ..( ゚∀゚)    ⊂(^ω^ )

川 ゚ -゚)  ピタッ
つ .( ゚∀゚)     ⊂(^ω^ )

川#゚ -゚)  ムニュッ
つ ((゚∀゚*)    ⊂(^ω^ )


派手な水音と、高い水飛沫が舞い上がる。

再び沈んで行くジョルジュを、僕は頭を抱えながら見送った。

684 :名も無きAAのようです:2011/10/10(月) 22:59:00 ID:4t4IXmqc0

川#゚ -゚)「で、お前が落としたのはどいつだ?」
つ(##∀#)(銀゚∀゚)(金゚∀゚)( ゚∀゚)+

( ^ω^)「いや、まあ、僕が落としたわけじゃないんですけども……」

川#゚ -゚)「ど・い・つ・だ?」

( ^ω^)「すいません、その端の汚いジョルジュで」

川#゚ -゚)「ほらよ、正直者が!」
  ⊂彡  三(##∀#)

ものすごい勢いで岸に投げつけられるジョルジュを避け、僕は先ほど聞けなかった質問を口にする。
背後で激突音がした気がするのは気の所為という事にしておく。

( ^ω^)「クーは結局ここに何しに来たんだお?」

川 ゚ -゚)「暇つぶし」

( ^ω^)「暇……」

686 :名も無きAAのようです:2011/10/10(月) 23:08:32 ID:4t4IXmqc0

何とも適当過ぎる理由に、僕は何とも言い難い視線を向ける。
泉の女神的な人に暇つぶしで絡まれるのは、正直な所勘弁願いたい。

そんな僕の視線を、不満か何かと勘違いしたのか、クーは人差し指を立てて言う。

川 ゚ -゚)b「冒険に役立つアイテムを与えるイベントとしては、私のような存在はよく有るだろ?」

( ^ω^)「冒険って……」

確かに、勇者と魔王のお話で、現在、冒険といえば冒険の最中ではあるが、
どちらかといえばアイテムをもらうのは勇者、彼女の側である。

川 ゚ -゚)「もらえるものはもらっておいた方が得だと思うがな」

( ^ω^)「そうかもしれませんけど」

川 ゚ -゚)「じゃあ、この金の……」
つ(金゚∀゚)

( ^ω^)「いりませんお」

708 :名も無きAAのようです:2011/10/11(火) 23:30:56 ID:P1eIDwUs0

川 ゚ -゚)「冗談だ」

色々と脱線し過ぎたが、まだクーに聞くべき事は残されている。
というより、一番の目的をまだ聞いていない。

( ^ω^)「まだ聞いてもいいかお?」

川 ゚ -゚)「構わないが、そろそろこちらにも質問権をくれると有り難いな」

そういえばクーも聞きたい事があると言っていた。
こちらばかり質問するのもよろしくない。

ただ、怪異であるクーが僕なんかに聞きたい事があるのか疑問ではあるが。

川 ゚ -゚)「なに、お前と似たような質問さ」

( ^ω^)「お?」

川 ゚ -゚)「お前はここに何をしに来たんだ?」

( ^ω^)「それは……」

709 :名も無きAAのようです:2011/10/11(火) 23:39:56 ID:P1eIDwUs0

写生に来た。
具体的にやった事を挙げればそうなるが、クーが聞きたいのはそういう事ではないのだろう。

クーが言う、似たような質問、事情をわかっててここに来た理由。
どういう目的でここに来たのか。

( ^ω^)「彼女の事を知る為にだお」

川 ゚ -゚)「それが模範解答だろうな」

( ^ω^)「模範も何も、それ以外ないお」

川 ゚ -゚)「そうか?」

首を傾げ、僕の心内を探るような目で見詰めるクー。

クーがどう思おうと僕がここに来た理由はそれ以外ない。
それは揺るぎない点だ。

その理由がなければ、わざわざこんな所に写生に来るほど僕は外向的ではない。

710 :名も無きAAのようです:2011/10/11(火) 23:47:49 ID:P1eIDwUs0

川 ゚ -゚)「何故この場所を選んだ?」

( ^ω^)「たまたま?」

覚えていない夢から感じた、懐かしさに引かれるようにこの場所を思い出した。
ただそれだけの事だ。

ジョルジュや弟者も同行する事になったりと、想定外の事も多々あったが、それなりに楽しかった。

川 ゚ -゚)「楽しかった、か」

( ^ω^)「ジョルジュがウザかったり、弟者が画伯だったり、頭を抱える事も色々あったけど」

川 ゚ -゚)

( ^ω^)「何だかんだで楽しかったですお」

川 ゚ ー゚)「……そうか」

僕の答えに、口の端をわずかに上げ、どこか満足そうな顔をするクー。
クーがそういう顔をする意味は僕にはわからないのだが、何となく僕も嬉しかった。

711 :名も無きAAのようです:2011/10/11(火) 23:57:48 ID:P1eIDwUs0

( ^ω^)「こう、純粋に楽しいと思ったのは随分久しぶりな気がするお」

川 ゚ -゚)「そりゃ、楽しもうとしていなかったからだろ」

ずっと部屋に篭り、狭い世界に閉じ篭っていれば楽しいものも何も見えないだろうとクーは言う。
同時に、悲しいものや辛いものも見なくていいのだが、それを正論ぶってかざす気はない。

そんな事は当たり前なのだから。

( ^ω^)「やっぱり、僕の生き方は否定されるべきものだおね」

川 ゚ -゚)「それは他人がとやかく言うものではないさ」

川 ゚ -゚)「ただ、自分がそう思うならそうなのだろう」

クーは僕の言葉をばさばさと斬り捨てて行く。
普段ならきっと萎縮してしまうはずの僕だが、今日はそれが少し心地良かった。

( ^ω^)「少しだけ、軽くなれた気がするお」

712 :名も無きAAのようです:2011/10/12(水) 00:05:22 ID:ADyK0WF60

川 ゚ -゚)「何も考えないのはただの馬鹿だが、考えすぎるのも良くはないな」

( ^ω^)「そうだおね」

川 ゚ -゚)「一人で抱え込んでしまうのもな」

( -ω-)「……」

僕は、クーの言葉から顔を背けるように目を閉じる。

僕は今日、いや、それ以前もだがこの件は自分一人で何とかしようと考えていた。
それがいつの間にかジョルジュや弟者を頼り、この場にも共に来てもらっている。

友達を頼る事なんて、ごく普通の事だと誰もが思うことだろう。
けれど僕にとって、それは普通ではなかったはずのもの。

それが普通だったら、僕はもっと、違う道を歩んでいたのかもしれない。

川 ゚ -゚)「何でも一人で出来るのはいい事だがな。しかし……」

( ^ω^)「何でもは一人じゃ無理だおね」

713 :名も無きAAのようです:2011/10/12(水) 00:13:00 ID:ADyK0WF60

僕は閉じていた目を開け、振り返る。

一人ではきっと、今日が楽しいとは思えなかったと思う。

僕はそこにいる、友達の姿を真っ直ぐに見詰めた。

( ^ω^)


    チーン∩         ┌┐ ._
  (##∀#)彡    (*´_>[_|_((_)
    ⊂彡     (   ∩ 


( ^ω^)「……」

ぐったりしながらも機械仕掛けの様に腕を振り続けるジョルジュ。
どこから取り出したのが突っ込むのも面倒臭い、巨大なカメラを抱える弟者。

彼らがいなければ、今日の僕のこの気持ちはなかったはずだ……が……

714 :名も無きAAのようです:2011/10/12(水) 00:19:57 ID:ADyK0WF60

川 ゚ -゚)「まあ、もう少し友達は選べよと思わなくもないがな」

( ^ω^)" コクッ

僕はクーの言葉に、深く頷いて答える。
何だか色々台無しな友達ではあるが、それでも僕は、彼らのお陰でここにいるのだと思う。

( ^ω^)「クーから聞きたい事は、それだけでいいのかお?」

川 ゚ -゚)「そうだな。先の流れに一通り集約されたな」

( ^ω^)「結局、クーはお助けキャラみたいなもんかお?」

こんなゲーム的な表現でわかるのかは定かではないが、クーの行動、というより今日の行動、
イベントはそう考えるとしっくり来る。

川 ゚ -゚)「そう言わなかったか? 冒険の手助けをする、と」

( ^ω^)「そんな感じの事言ってたおね」

結局、僕は彼女の掌で踊らされている。
そんな言葉が思い浮かんだが、それはきっと最初からそうなのだろう。

715 :名も無きAAのようです:2011/10/12(水) 00:29:17 ID:ADyK0WF60

だとしても僕は、その手に乗り、彼女と再び会わなければならない。
会ってどうするのかはわからないが、それがこの話を終らせる術だという事はわかっている。

穏やかで楽しい日々は、いつまでも続いて欲しいけれど、それが   ならば、僕は……

( ^ω^)(それが……何だお?)

思考の最中、思い浮かんだ言葉の一部が不自然に掻き消えた。
それが何なのか、再び同じ思考辿ってみてもやはりその部分だけ綺麗さっぱり抜け落ちてしまう。

( ^ω^)「……」

川 ゚ -゚)「どうかしたか?」

( ^ω^)「お、あ、いや、ちょっと……何でもないお」

いつの間にか僕の顔を覗き込む様に近くまで来ていたクーに、少し後退る。
考えていた事を誤魔化すつもりはないのだが、僕の思考の中の話な上、消えてしまう言葉の事なので、
聞こうにも聞き様がない。

川 ゚ -゚)「そうか……では……」

716 :名も無きAAのようです:2011/10/12(水) 00:38:35 ID:ADyK0WF60

川 ゚ -゚)「これが最後の質問だ」

( ^ω^)「お……」

川 ゚ -゚)「お前が最後に私に聞いておくべき事、それは何だ?」

クーは僕をじっと見据え、答える様促してくる。
もう少し聞きたい事もあったのだが、最後といわれては仕方がない。

これがクーとの話の終わりなのだろう。
多分、そう決められたものだ。

( ^ω^)「そうだおね、僕が最後にクーに聞くべき事は……」


( ^ω^)「1 やっぱり彼女の名前だおね
      2 彼女の居場所だお
      3 クーと僕も、昔会った事があったのかお?
      4 クーは楽しかったかお?              」

安価
>>717


717 :名も無きAAのようです:2011/10/12(水) 01:10:14 ID:eHLKEI5gO



719 :名も無きAAのようです:2011/10/12(水) 23:07:44 ID:HQjueml60

( ^ω^)「彼女の居場所だお」

クーは彼女、約束した人が誰かは教えられないと言った。
しかし、居場所ならどうだろうか。

川 ゚ -゚)「聞いてどうする?」

( ^ω^)「どうするって、そりゃ……」

彼女に会う。ただそれだけの事だ。
ただ、クーが聞きたいのはそういう事じゃないのかもしれない。

( ^ω^)「会って、どうするかはまだわかんないけど」

川 ゚ -゚)「わからない、か……」

どこか含みのある顔で、曖昧に頷くクー。
その顔の意味があまりいい物ではなさそうなのは、何となくわかる。

( ^ω^)「クーはどこまで知ってるんだお?」

720 :名も無きAAのようです:2011/10/12(水) 23:15:20 ID:HQjueml60

川 ゚ -゚)「多くは知らんさ。そういう風に位置付けられている」

( ^ω^)「位置付け……?」

川 ゚ -゚)「私の事は気にするな。いずれわかる……という言い方も少し変なのだが」

意味深な物言いをするクーだが、その事に付いて詳しく答えてくれる気はないようだ。
答えるだけ無駄な事だからとクーは続ける。

川 ゚ -゚)「何にせよ、話の終わりにわかる事だ」

( ^ω^)「そういう事にしておきますお」

そこに食い下がっても無駄な様なので、僕は大人しく引き下がる。

彼女に会えばわかる。
その言葉には僕も同意するから。

川 ゚ -゚)「で、居場所だったな」

( ^ω^)" コクッ

721 :名も無きAAのようです:2011/10/12(水) 23:22:24 ID:HQjueml60

川 ゚ -゚)「知らん」

(;^ω^)「……さも意味ありげに引っ張っておいて、答えがそれはないと思うお」

川 ゚ -゚)「知らんものは知らん……が」

( ^ω^)「が?」

川 ゚ -゚)「おまえ自身は知っているはずだ」

( ^ω^)「僕自身……」

しばし考えてみるが、僕には思い当たる場所はない。
首を傾げ、クーの方を見るが、クーは知らないとばかりに首を振るだけだ。

( ^ω^)「せめてヒントを」

川 ゚ -゚)「早いな。もう少し考えようとは思わんのか?」

( ^ω^)「全く思い浮かばないもんで」

川 ゚ -゚)「お前あれだろ、ゲームとかすぐネットに頼る口だろ?」

722 :名も無きAAのようです:2011/10/12(水) 23:29:51 ID:HQjueml60

俗な事を口走るクーを見ていると、やはりクーが怪異な存在とは思い難いものがある。

ちなみに僕は、すぐにネット見て調べるような事はしない。
詰まって二進も三進も行かなくなったら調べるタイプだ。

( ^ω^)「最善は尽くしましたお」

つまり現状は既にそういう状態という事だ。
元々、ノーヒント続きでここまで来ている。
ここでようやく当たりを引けたような物なのだ。

場当たり的というか何と言うか、無意識に彼女に繋がる道を、ことごとく避けていた様にも思える。
思うがまま、全ては本能に従った結果かもしれない。

川 ゚ -゚)「それで正解だよ」

( ^ω^)「お?」

川 ゚ -゚)「答えがお前が知っていると言っただろ?」

723 :名も無きAAのようです:2011/10/12(水) 23:38:02 ID:HQjueml60

川 ゚ -゚)「だから、お前が思う場所が答え、あいつの居場所さ」

( ^ω^)「お……」

突き放された様で諭された様な、しかし、最終的にはヒントをくれたらしい。
あまり感情の篭っていない、冷たい物言いをするクーはだが、意外と世話焼きなのかもしれない。

ともかく僕はクーの言葉に従い、答えは自分で決める事にしよう。

川 ゚ -゚)「そんな所か」

( ^ω^)「そんな所だおね」

それがクーとの話の終わりの合図だったらしい。
クーはゆっくりと後方に下がり、宙を浮いて池の上に出る。

川 ゚ -゚)「それでは、旅人よ。良き道行を」

両手を広げ、少し芝居がかった口調でクーは祝福の言葉を述べる。
それが女神としての所作なのだろう。
なかなか堂に入ったものだ。

724 :名も無きAAのようです:2011/10/12(水) 23:49:08 ID:HQjueml60

( ^ω^)「助かったお、ありがとだお」

それに対し、僕は極めて軽い調子で礼を述べる。
軽んじているわけではなく、自然体で接する事を望んだクーへの僕なりの敬意だ。
あまり形式ばった言い方はウソ臭く聞こえるし。

川 ゚ ー゚)「お前の進む道に、希望の有らん事を」

わずかに笑顔を見せ、クーは池の中に消えて行く。
僕は笑顔でそれを見送った。

それはごく自然に浮かんだ笑顔だった。

( ^ω^)「さてと……」

道は開けた。

( ^ω^)「……と思う、多分」

後は自分次第という、如何せん、アバウトな答えが今回得たものだ。
それをどう生かすかは、僕次第という事らしい。

725 :名も無きAAのようです:2011/10/13(木) 00:03:33 ID:k4FGe9Fg0

( ^ω^)「て、事らしいんだけど、どう思うかお?」

僕は振り返り、この場に共に来てくれた友達の方へ視線を向ける。
  _
( ゚∀゚)「ごめん、ぶっちゃけ今意識戻ったから聞いてない」

(´<_` )「今、映像確認してんだから話しかけんな」

( ^ω^)「……」

友達は選べ、そう言ったクーの言葉が何故か僕の中で響いた様な気がした。
いや、感謝はしてるけどね。

でも、何かこう……

( ^ω^)「……空気嫁お」

そう思わざるを得ない、残念な友達の姿であった。



      第七章  了



                              つづく・・・


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