233 :( ^ω^)がばっちゃの名にかけて!のようです:2007/07/06(金) 22:33:51.31 ID:2Ugi5L6XO
『犯人は貴方です。斉藤さん』

着物姿の女性は、斉藤にスッと指を差した。
女性ながらも凛々しい声。
絶対の自信を秘めた、気高き声。
全てを見透かす様な双眸。
部屋に居る者達の、斉藤に向けられる疑惑の視線。
それらに耐えきれ無くなり斉藤は、否定の声を上げる。

『ぼ、僕は殺してない!……そ、それにアリバイだって』

しかし着物姿の女性に悉く、斉藤によって造られた悪意の建造物は破壊された。
完膚無きまでに暴かれた完全犯罪。

『畜生!まさか名探偵―――が此処に来るとは!!』

考えに考えた策が水泡に帰し、気が狂ったかのように叫ぶ斉藤。
そんな斉藤を見据え、名探偵と呼ばれた着物姿の女性は言葉を紡いだ。

『秋風が立った故の凶行ですか。悲しいですね』

その言葉を聞いた斉藤は、大きく目を見開いた。

『ッッ!そうだ!そうだよ!あの女は俺を避け出したんだ!!』

237 :( ^ω^)がばっちゃの名にかけて!のようです:2007/07/06(金) 22:35:43.79 ID:2Ugi5L6XO
『でも彼女は貴方の事が、嫌いになった訳では無いみたいですよ』

『出鱈目を言うな!あの女は気変わりしたんだ!』

顔が紅潮し、全身を震わせながら斉藤は怒鳴る。
着物姿の女性は黙りながら、斉藤の元へとゆっくりと歩を進める。
そして、斉藤の目の前前に立ち、一枚の手紙を差し出した。

『貴方によって殺められた、伊藤さんからの手紙です』

『な……!?』

斉藤は引ったくる様に、手紙を手にする。
綺麗に折り畳まれた手紙には、直心で詰まった内容が書かれていた。

「斉藤さん、最近冷たくしてごめんなさい。
 私、試してみたくなったんです。
 中々、プロポーズしてくれないから、
 悪戯心で態と冷たくしてしまいました。ごめんなさい、斉藤さん。
      (中略)
 いつか、結婚式を挙げる時にこの手紙を見せるつもりです。
 斉藤さん、笑って許してくれますか?……やっぱり怒りますよね。
 でも、これだけは言わせて下さい。
 斉藤さん、私は貴方の事を愛しています。
      ―――伊藤より、斉藤さんへ」

239 :( ^ω^)がばっちゃの名にかけて!のようです:2007/07/06(金) 22:37:35.78 ID:2Ugi5L6XO
『…………』

手紙を読み終え、顔から表情が消え去った斉藤。
そんな斉藤に着物姿の女性は矢継早に語り掛ける。

『勘違い、誰にでもある事ですよ』

『でも、人を殺めてはいけませんね』

『彼岸に行った者は、此岸には戻って来れないんですから』

『彼女が無事、天国に行ける様に一生をかけて祈り続けなさい』

玉響の静寂。
斉藤が泣きながら地に膝を着く。
嗚咽混じりの声にならない声。

『ごめ……さい……ごめ………い……』

『フサギコ警部、後はお願いします』

『……あいよ。名探偵―――内藤デレさん』

………
……


242 :( ^ω^)がばっちゃの名にかけて!のようです:2007/07/06(金) 22:39:10.18 ID:2Ugi5L6XO
(#^ω^)「おらぁぁぁ!!犯人そっち行ったどおおぉぉぉ!!!」

ブーンは必死に追い掛けている。
三日間、探し回った犯人を。

lw´‐ _‐ノv「……捕まえた」

犯人は無事捕縛された。
ブーンの手によってでは無く、シューの手によってだが。

猫「ニャー」

ブーンが探していた犯人、それは猫だった。

彼は小さな探偵事務所を開いている。
事務所と言っても家賃激安のボロアパートに、だが。
因みに家賃は五ヶ月滞納している。

そんな探偵事務所に舞い込む依頼は、探偵にあるまじき物ばかりだ。
今回の依頼は『飼っていた猫が行方不明だから探して欲しい』
前回の依頼は『引越しの手伝いをして欲しい』
ほぼ、何でも屋状態であった。

243 :( ^ω^)がばっちゃの名にかけて!のようです:2007/07/06(金) 22:41:16.08 ID:2Ugi5L6XO
( ^ω^)「難事件だったお……」

lw*´‐ _‐ノv「……お礼に米菓子とは、依頼主空気読んでる」

(#^ω^)「読めて無いお!お金が欲しいお!あとピーナッツも!!」

依頼を無事に達成した二人。
ブーンはトボトボと、シューはるんるんと事務所への帰路につく。

lw*´‐ _‐ノv「……ふふふぅ」

( ^ω^)「…………」

ブーンは横目でシューを見る。
彼女には無料で助手をして貰っている。
このVIP国の最高学府、ニュー速大学を首席で卒業した経歴を持つ彼女。
何故大手企業へと就職せずに、自分の助手をしているのか疑問だった。
彼女曰く『名推理が見たい』らしいが、ブーンには意味が分からなかった。

lw´‐ _‐ノv「……あれ」

シューが呟き、指を差した。
指の先に視線を移すと、内藤探偵事務所の前に誰かが立っていた。

244 :( ^ω^)がばっちゃの名にかけて!のようです:2007/07/06(金) 22:43:32.21 ID:2Ugi5L6XO
(;^ω^)「やべえ!大家かお!?」

ブーンは、素早く電柱の陰に隠れる。
そして、事務所兼ボロアパートの前に立っている人物を窺う。

lw´‐ _‐ノv「……違うみたい」

事務所の前に立っていたのは、年の程20歳くらいの若い女性であった。
その女性は、事務所のインターホンを押している。

(*^ω^)「依頼きたこれ!?」

ブーンは悦びの鼓動を抑え切れず、電光石火で女性の元へと駆けて行った。
女性の背後から呼び掛けるブーン。
女性が後ろを振り向くと、そこには変態が立っていた。

(;^ω^)「はぁはぁ……何か…はぁはぁ……ご用件が……」

川 ゚ -゚)「お前は誰だ?変態か?」

lw´‐ _‐ノv「……運動不足」

川 ゚ -゚)「君は?」

ブーンの後に続いて現れたシューに、女性は問掛ける。

lw´‐ _‐ノv「……内藤探偵事務所助手のシュー。名探偵内藤さんはこちら」

(;^ω^)「はぁはぁ……僕が探偵内藤ホライゾンですお」

247 :( ^ω^)がばっちゃの名にかけて!のようです:2007/07/06(金) 22:45:46.07 ID:2Ugi5L6XO
lw´‐ _‐ノv「……粗茶ですがどうぞ。米菓子は出しません、渡しません」

川 ゚ -゚)「ありがとう」

( ^ω^)「で、早速だけどクーさん。依頼はどんな内容かお?」

川 ゚ -゚)「…………」

ブーンが依頼の内容を聞いた途端、依頼主のクーは沈黙してしまった。
視線を机の上に落とし、表情を察する事が出来ない。

( ^ω^)(何この雰囲気?浮気調査かお)

川 ゚ -゚)「………くれ」

( ^ω^)「お?何て言ったんだお?」

川 ゚ -゚)「……私達を殺人鬼から守ってくれ」

クーは消え入りそうな声でそう言った。
事務所内が静まり返る。
クーの言葉には余りにも非日常的なワードが入っていた。

(;^ω^)「殺人鬼て……」

250 :( ^ω^)がばっちゃの名にかけて!のようです:2007/07/06(金) 22:48:41.16 ID:2Ugi5L6XO
川 ゚ -゚)「私は大学のゲーム愛好家サークルの一員だ」

川 ゚ -゚)「この夏、合宿……と言うか遊びに行こうと皆で計画を立てていた」

川 ゚ -゚)「そんな矢先、こんな物が私達全員に送りつけられた」

クーは言い終えると、鞄の中からピンク色の手紙を取り出した。
そしてブーンに差し出す。
ブーンはそれを受け取り、手紙を読み始めた。
手紙には赤い色の文字で、こう書かれていた。

『合宿を中止しろ
 さもないとお前達を一人残らず殺してやる』

(;^ω^)(何と言う在り来りな脅迫状……)

( ^ω^)(ん?あれ?何か違和感が……胸がもやもやするお)

そんな様子を隣で見ていたシューが、ぼそりと呟いた。

lw´‐ _‐ノv「……その文字、何かの動物の血で書かれてる」

(;^ω^)「ひえっふ!?」

253 :( ^ω^)がばっちゃの名にかけて!のようです:2007/07/06(金) 22:51:15.21 ID:2Ugi5L6XO
ブーンは急いで手紙をクーに返した。
そしてブーンは直ぐ様話を切り出した。

(;^ω^)「これは警察に任せた方が良いと思うお」

川  - )「警察は駄目だ」

(;^ω^)「いや、でもさ」

川  - )「警察など頼りにならない……あの時だって―――」

クーは何かを言おうとしたが、ハッとしたかの様に口をつぐんだ。

(;^ω^)「……?」

川 ゚ -゚)「兎も角、大学生活最後の夏休みだ。合宿を取り止める気は無い」

川 ゚ -゚)「しかし、危険が潜んでいるかもしれないのも事実だ」

川 ゚ -゚)「そこで伝説の名探偵、内藤デレのお孫さん。君に護衛を頼みたい」

(  ω )「ッ―――」

lw´‐ _‐ノv「…………」

255 :( ^ω^)がばっちゃの名にかけて!のようです:2007/07/06(金) 22:53:05.65 ID:2Ugi5L6XO
クーは返事はまた今度で良い、と言い残し帰って行った。
ブーンは畳の上に寝転びながら考えている。
依頼を受けるべきか否か。
こんな大事な依頼は、ブーンにとって初めてであった。

(  ω )「ばっちゃ……僕でも大丈夫なのかお?」

昭和から現在に至るまで名を轟かせる祖母に、ブーンは問掛ける。
どんな難事件にも立ち向かい、解決した希代の名探偵―――内藤デレ。

(  ω )「それに比べて僕は……」

目を瞑り、悩んでいるブーンの耳に声が聞こえた。

lw´‐ _‐ノv「……私はブーンの名推理が見たい」

その声に呼応するかの様に、ゆっくりと目を開く。
ブーンの隣で、三角座りをしているシューの姿が目に映った。

( ^ω^)「シュー……。でも僕は、ばっちゃみたいにはなれないお」

lw´‐ _‐ノv「……もう一度言う。私は『ブーン』の名推理が見たい」

257 :( ^ω^)がばっちゃの名にかけて!のようです:2007/07/06(金) 22:54:52.64 ID:2Ugi5L6XO
( ^ω^)「……お、僕のかお?」

lw´‐ _‐ノv「犯人は貴方です。ブーンさん」

シューはブーンに指を差す。
そして指先を数回くるくると回し、腕を降ろした。

lw´‐ _‐ノv「……とかやってみたくない?」

( ^ω^)「…………」

(*^ω^)「……フヒヒ!やってみたいお!!」

ブーンは身を起こし、立ち上がる。
そして決意を言葉にする。

( ^ω^)「僕はばっちゃみたいになる―――いや」

( ^ω^)「ばっちゃを越えて見せるお!!」

今、一人の探偵が生まれた。
全くのゼロからのスタート。
そんな彼は、名探偵へ挑戦状を叩きつけた。

目指すは合宿地、鮫島。
僕が惨劇を食い止めてみせる。


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