- 259 :川 ゚ -゚)明日はきっと最良の日なようです:2008/01/16(水) 23:28:06.41 ID:+ns/DEJeO
- 川 ゚ -゚)「金属の性質としては展性・延性、電気伝導性、
特徴的な金属光沢などが上げられる」
学園都市アカデメイアの一角でクーは授業を行っていた。
川 ゚ -゚)「電気伝導性については金属結合によって原子から自由電子を出し、
それが陽イオンの間を自由に移動することによってえられる」
授業を聞いているのは8才〜15才の子供達だった。
このアカデメイアはいわゆる"天才"の養成施設だ。
早期教育の最先端である。
川 ゚ -゚)「この性質は金属の温度を下げると高まる。抵抗が小さくなる
ということだな。絶対零度まで下げれば抵抗はゼロだ」
- 261 :川 ゚ -゚)明日はきっと最良の日なようです:2008/01/16(水) 23:29:05.18 ID:+ns/DEJeO
- 普段は優秀な生徒達も今日ばかりはさすがに落ち着きが無かった。
無理もない。明日は一年に一度のイベントなのだ。
川 ゚ -゚)「その理由は簡単だ。温度が高ければ高いほど電子は――」
そこまで言ったところでチャイムが鳴った。
いつもならキリの良いところまで続けるのだが。
クーは生徒達のワクワクした顔を見ると仕方ない、というように肩をすくめて言った。
川 ゚ ー゚)「全く。じゃあ今日はここまで。明日の作戦に専念しなさい。
その代わり次までに理由を自分なりに推察して来るように」
生徒達はさすがクー先生、と歓喜の声をあげながらノートを素早く片付けて散っていった。
- 263 :川 ゚ -゚)明日はきっと最良の日なようです:2008/01/16(水) 23:29:54.67 ID:+ns/DEJeO
- 明日は一年に一度のダンスパーティー。
いや、ダンスパーティーが珍しいのでは無い。
アカデメイアではその日は一大告白イベントだった。
ダンスパーティーの最後の曲は今では珍しい人力ふいごのオルガンで演奏される。
その間に告白すれば恋が実る、と言われていた。
場の雰囲気の力とはすごいもので実際にかなりの数のカップルが毎年誕生している。
川 ゚ -゚)「若いとはいいものだな」
クーはホールのオルガンの前で呟いた。
ダンスパーティーの最後の曲の奏者は彼女だ。
三年前にその大切な役割を前任者から受け継いだ。
- 265 :川 ゚ -゚)明日はきっと最良の日なようです:2008/01/16(水) 23:31:05.13 ID:+ns/DEJeO
- 自分と彼の出す音が少年少女の恋を叶える。
クーはそれが楽しくて、少し羨ましかった。
('A`)「クーさんも充分若いでしょう」
川 ゚ -゚)「あ、お久しぶりです」
一年に一度アカデメイアを訪れる彼。
人力ふいご師――カルカントのドクオだった。
何でも孤児だった彼の育った教会に人力ふいごがあったらしい。
それ故に今では本当に珍しいカルカントという職業に彼はついていた。
川 ゚ -゚)「若いといえば若いのかもしれませんけど彼らに比べたら」
('A`)「気の持ちようですよ」
川 ゚ -゚)「そうかもしれませんね」
でも私若く無いと思ったからあなたに思いを告げることすら出来ない臆病者なんですよ―――
- 268 :川 ゚ -゚)明日はきっと最良の日なようです:2008/01/16(水) 23:33:53.37 ID:+ns/DEJeO
- ('A`)「今年もいい演奏にしましょうね」
川 ゚ -゚)「ええ。よろしくお願いします」
会話はいつもこれだけだった。
後はすべてが終わったあとに「また来年も笑って遭いましょう」と言って終わりだ。
少し寂しいな、とも思う。
だが、本来はアカデメイアと村の教会という遭遇しえない位置のドクオと
出会えただけでも幸せだとクーは勝手に納得していた。
そう、明日の演奏をいつも通り2人で素晴らしいものにして、生徒達の最良の日にする。
それだけで充分過ぎるほどだ。
クーはオルガンとドクオに向かって明日は頼む、と笑いかけてホールを後にした。
この年、オルガン奏者にもダンスパーティーの言い伝えは作用するのだがそれはまた別の話。
- お題
・金属結合
・ふいご
・また来年笑って遭いましょう
戻る