- 553 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[]投稿日:2007/05/13(日) 22:16:07.54 ID:UG089Q3vO
- 梅雨も明けた初夏。
晴れ渡る空の下、そんな季節に似合わない黒いコートを羽織った男が一人歩いていた。
男は右手に日傘の柄を、左手に地図を持ち、
地図と住宅を交互に睨んでいる。
「ねぇ」
「何だ」
「物凄く暑いんですけど」
「文句は太陽に言え」
「あのねぇ。わざわざ黒いコート着て日傘さすおバカさんが何処にいるのさ」
因みに男がさしている日傘もコートと同じ黒色だ。
- 554 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/13(日) 22:17:10.25 ID:UG089Q3vO
- 「働かざるは食うべからずだ」
「これじゃ労働を通り越して拷問だよ・・・・・・」
「目的地はここら辺だ。それまで我慢しろ」
(*゚∀゚)「ねぇ、ドクオ」
('A`)「・・・・・・今度は何だ」
(*゚∀゚)「たった今通り過ぎたんじゃない?「斎藤不動産」」
('A`)「・・・・・・」
- 556 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/13(日) 22:18:47.86 ID:UG089Q3vO
- (・∀ ・)「やぁ、よく来てくれました」
ドクオが依頼を受けて訪ねたのは、不動産を経営する斎藤またんきという男だった。
('A`)「依頼の件ですが・・・・・・」
ドクオはいつも通り依頼の話を切り出す。
(・∀ ・)「そうそう。依頼したいのはね、幽霊退治なんだ」
斎藤またんきの話はこうだ。
数年前、ある資産家の住んでいた館を買い取ったまたんきは、他の客にその館を売り払った。
しかし、その館というのが訳あり物件だったらしく・・・・・・
(・∀ ・)「実はさ、資産家の息子が自殺しちゃってるんだよね。その館で」
またんきはそれを隠して売り付けたらしい。
(・∀ ・)「たった数日で苦情が来ちゃってさー。
夜な夜な何かが徘徊してる音や気配がするって。
んでもって契約はパー」
それが噂となって広まり、それ以来買い手が全く付かなくなってしまったという。
- 557 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/13(日) 22:19:46.72 ID:UG089Q3vO
- (・∀ ・)「物件自体は文句なしだし、どこかの心霊研究者とか物好きが買ってくれないかと待ってみたんだけど、全然ダメ」
またんきは館そのものは諦め、取り潰して土地だけを売るつもりらしかった。
(・∀ ・)「でもさぁ、ホラ、呪われたりとかしたら嫌じゃない?
だから、アンタに幽霊を追っ払って、安心して取り潰しが出来るようにして欲しい訳よ」
('A`)「・・・・・・分かりました。
取り敢えず今夜、館に行って調べてきます」
(・∀ ・)「頼むよ。実は土地だけなら買ってもいいって客がいるんだ」
そうしてドクオはまたんき宅を後にした。
- 558 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/13(日) 22:22:37.05 ID:UG089Q3vO
- (*゚∀゚)「・・・・・・何て言うか、引っ掻きたくなる奴だったね」
ドクオの脇を歩く黒猫が、不機嫌そうにそう言った。
ドクオは来る時には持っていたはずの日傘を持っていない。
('A`)「依頼主だ。文句は言えないさ」
(*゚∀゚)「でもさー」
('A`)「つー。また当分三食煮干しの生活をしたいのか?」
(*゚∀゚)「う・・・・・・」
つーと呼ばれた、ドクオの脇を歩く黒猫・・・・・・よく日差しを吸収して熱くなる真っ黒な日傘だったり、
ポケットに入るサイズの何かだったりする・・・・・・は、その一言で反論しなくなった。
- 561 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/13(日) 22:26:29.29 ID:UG089Q3vO
- その後、ドクオは館について色んな人から話を聞いて回った。
その結果、資産家の息子は引きこもりだったこと、
息子が自殺したのを苦にして資産家夫妻は家を手放したことが分かった。
(*゚∀゚)「ホラーの定番みたいな館だね」
('A`)「そうだな」
深夜。
ドクオとつーはその館の前までやって来た。
資産家の家というに相応しい、重々しい鉄の門を押し開けて、中へと入る。
(*゚∀゚)「・・・・・・あの不動産やる気あんのかな」
門から踏み込んだ先は、雑草が生え放題で、お世辞にも手入れされているとは思えない。
しかもそれがかなりの広さを持っていて、草原と言っても差し支えないだろう。
買い手がつかないのはこのせいもあるのだろうが、ドクオ達には関係の無い話だった。
- 562 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/13(日) 22:27:47.27 ID:UG089Q3vO
- 雑草を掻き分けつつ、一人と一匹は館目指して前進する。
(*゚∀゚)「あーもう!!雑草が高すぎて前が見えないよ!!」
つーがいらだたしいとばかりに叫んだ。
(*゚∀゚)「ねぇ、ドクオー」
ドクオの肩に乗っけてもらおうと、つーが猫撫で声を出したが、返事は無い。
(*゚∀゚)「ドクオってば!!」
つーが我慢しかねて二本足で直立し、雑草から頭を出すと・・・・・・。
(*゚∀゚)「あれ?」
ドクオはいなかった。
- 563 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/13(日) 22:30:10.92 ID:UG089Q3vO
- (*゚∀゚)「え?ドクオ?」
辺りを見回すがドクオの姿は無い。
(;゚∀゚)「ドクオ?隠れたりとかしてないよね?」
もう一度辺りを見回す。
すると、百合の花が咲き乱れている一角に、人の影があった。
(*゚∀゚)「何だ・・・・・・いるんじゃないのさ・・・・・・」
つーの表情が和らぎ、つーは人影向かって駆け出した。
(*゚∀゚)「ドクオー!置いてかないでよ!」
しかし、その声に気付いて振り向いた人影の顔は・・・・・・
川д川「・・・・・・」
ドクオとは似ても似つかない、長い黒髪を顔の前に垂らした女性だった。
(;゚∀゚)「ギャアアアアア!!」
つーは一目散に逃げだした。
- 564 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/13(日) 22:32:23.41 ID:UG089Q3vO
- 川д川「・・・・・・」
(;゚∀゚)「ドクオー!ドクオー!」
一心不乱に飼い主の名を叫びながら走る。
(;゚∀゚)「ドクオー!ドク('A`)「うるさい」
唐突に首根っこを掴まれて持ち上げられた。
('A`)「騒ぐな。近所迷惑だ」
(*;∀;)「・・・・・・ドクオー!」
張り詰めていた線が切れたつーは、ドクオに飛びつき、胸に顔を埋めた。
- 568 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/13(日) 22:35:07.70 ID:UG089Q3vO
- ('A`)「女性を見た?」
ドクオは服を涙と鼻水で濡らすつーを引っぺがし、再び首根っこを持ち上げた状態で尋ねた。
(*゚∀゚)「そう!スッゴい長い黒髪の女の人」
('A`)「で、食われると思い込んで、泣き叫びながら逃げて来たのか」
(*゚∀゚)「・・・・・・うん」
('A`)「・・・・・・そうか」
ドクオはつーをポン、と肩に乗せる。
('A`)「百合の花畑だな?」
(*゚∀゚)「うん」
ドクオはつーの言う、館の敷地内の一角にある百合の花畑に向かった。
- 575 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/13(日) 22:47:29.67 ID:UG089Q3vO
- ('A`)「お前・・・・・・どうやったら迷い迷ってこんな館の裏側に出るんだ」
百合の花畑があったのは館を挟んだ門の反対側だった。
(*゚∀゚)「あれ?でもさっきいた時には館なんて見えなかったのに・・・・・・」
('A`)「・・・・・・お前の言う女の人もいないな」
(*゚∀゚)「嘘じゃないよ!アタシは確かに見たんだから!」
('A`)「別に嘘だとはいってないだろ。
今はもういないってことと、
お前がパニックになったせいで、その女の人がどっちの世界の人なのかも判別できなかったってだけで」
(*゚∀゚)「・・・・・・」
つーはふて腐れた顔で黙り込んだ。
('A`)「・・・・・・取り敢えず館の中に入ろう。
本題は中にいるヤツだからな」
- 578 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/13(日) 22:49:05.47 ID:UG089Q3vO
- 再び玄関の方向に回ったドクオは、またんきから預かった鍵を開けてドアを押した。
ドアの軋む音と共にドアは開き、ドクオ達を中へと招き入れる。
(*゚∀゚)「・・・・・・あの人絶対不動産に向いてないよ」
つーの一言ももっともで、ドクオが館の中へ入った瞬間、足元から埃が舞い上がった。
('A`)「まずは二階だな」
ドクオは資産家の息子が自殺した二階の彼の部屋に向かうべく、玄関の奥にある螺旋階段を上がる。
埃は積もっているものの、建物自体はまだまだ現役のようで、
床が抜けるなんて事は無くすんなりと二階に着くことが出来た。
- 581 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/13(日) 22:52:27.76 ID:UG089Q3vO
- ('A`)「彼の部屋は右手の一番奥だったな・・・・・・」
ドクオがそう呟いて歩き出した瞬間。
(;゚∀゚)「キャァッ!」
(;'A`)「うおッ!」
つーが悲鳴をあげて、それを耳元で聞く羽目になったドクオも驚いた。
(;-_-)「ゴ、ゴメンナサイ!まさか触れるなんて思わなかったんです!!」
ドクオが振り向くと、気弱そうな青年が両手を挙げて謝っていた。
('A`)「・・・・・・ヒッキー君か」
ドクオが尋ねると、ヒッキーと呼ばれた青年は驚いた。
(-_-)「・・・・・・そうですけど・・・・・・僕が見えるんですか?」
('A`)「見えなきゃこうやって会話出来ないと思うんだが」
幽霊と会うたびに毎回聞かれる質問に、ドクオは毎回使う答えを言った。
- 582 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/13(日) 22:53:53.43 ID:UG089Q3vO
- 場所をヒッキーの部屋に変え、ドクオは自分がここにきた理由を話した。
(-_-)「そうですか・・・・・・この館を・・・・・・」
それを聞いたヒッキーは悲しそうに肩を落とした。
('A`)「君がまだこの世にいるって事は、何らかの未練がある筈だろう?」
ドクオが尋ねると、ヒッキーは自嘲気味な笑いを漏らした。
(-_-)「可笑しいでしょう?自ら死を選んだ人間がこの世に未練を持ってるなんて」
そんなことないさ、と言いながら、ドクオはその訳を聞いた。
('A`)「よかったら話してもらえないか。
出来ることなら手伝わせて欲しい」
(-_-)「・・・・・・好きな人がいるんです」
- 585 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/13(日) 22:57:17.42 ID:UG089Q3vO
- ヒッキーは自分が惚れた「彼女」についてゆっくりと話し始めた。
(-_-)「自殺してすぐに、初めて彼女を見かけたんです。
そしたら彼女が気になって気になって仕方がなくなりました。
館から出れないほどの引きこもりだったんで、
最初は何でこんな気分になるのか分からなかったんですけど、
時間だけは膨大に余っていたから、考えている内に、ああ、好きになってたのかなって」
(-_-)「既に死んでる身だから今更分かったって意味無いし、
自殺してからも引きこもりだし・・・・・・。
でも、せめて彼女に一言言えたら・・・・・・って思ってるうちに、もう一年経っちゃいました」
自殺して何か吹っ切れたのか、話で聞いていたより彼は明るい性格のようだった。
さっきの遭遇の時も、聞こえないかもしれないと知りつつ謝る辺り、人柄自体は悪くないのだろう。
とはいえ、つーやドクオにその気配を悟られないというのは、かなり影の薄い性格だと言える。
- 590 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/13(日) 23:00:44.28 ID:UG089Q3vO
- ('A`)「その彼女が何処の誰なのか知っているのかい?」
ドクオの問いに、ヒッキーは首を横に振る。
(-_-)「詳しくは知りません。名前も・・・・・・」
('A`)「・・・・・・失礼な言い方ですまないが、君は生前から、館から一歩も出られない引きこもりで、
今でも出られないんだろう?何処で彼女を見たんだい?」
(-_-)「・・・・・・彼女が、僕が死んでからうちの庭によく忍び込むのを見るんです。
裏にある百合の花畑で何かしてるみたいで・・・・・・
ここからそれはよく見えましたから」
- 593 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/13(日) 23:03:39.61 ID:UG089Q3vO
- 百合の花畑。
('A`)「もしかして、その女の人は長い黒髪で顔を隠してる?」
(-_-)「そうです!どうして知ってるんですか!?」
('A`)「いや、さっき会ったというか、目撃情報があったというか・・・・・・
ただ、何処の誰かは分からなかったよ」
(-_-)「そうですか・・・・・・」
('A`)「・・・・・・最後に一ついいかな?」
(-_-)「何ですか?」
('A`)「あの百合の花畑だけど・・・・・・いつからあそこに?」
(-_-)「さぁ・・・・・・詳しくは知りませんが、父はこの館が建つ前からあったと言っていました」
('A`)「・・・・・・分かった。ありがとう。
彼女についても、出来る限りの事はしてみるよ」
(-_-)「ありがとうございます」
ドクオが館を出た時には、朝日が顔を出し始めていた。
- 597 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/13(日) 23:07:09.76 ID:UG089Q3vO
- (*-∀-)「・・・・・・アタシ、今晩だけで寿命がかなり縮まった気がするよ」
ドクオの肩に乗り、ぐったりとしながらつーは呟いた。
('A`)「そう言うな。一応お前の恐怖体験は役に立ったんだ」
(*゚∀゚)「全ッ然嬉しくないね」
('A`)「・・・・・・問題は「何故あそこに行くのか」だよな」
ドクオはそう言ったっきり黙り込んだ。
こういう時のドクオは一切反応しなくなるのをつーは知っている。
(*゚∀゚)「はぁ・・・・・・」
つーは溜め息を着いて、瞼を閉じた。
それからドクオは、ヒッキーの想い人について話を聞いて回ったが、誰も「長い黒髪で顔を隠した女性」を知らなかった。
日が暮れ始める時刻になって、ドクオはコンビニで買った(熟睡しているつーはコンビニ脇に置いておき、買った後にまた肩に乗せた。)おにぎりを、
近くの公園で食べながら、どうしたものかと思案を巡らせていた。
彼女は何故あの館の百合の花畑にやってくるのか。
('A`)「・・・・・・百合?」
- 601 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/13(日) 23:11:05.24 ID:UG089Q3vO
- その瞬間、ドクオは理解した。
(;'A`)「そうか百合か!」
(;゚∀゚)「ギャッ!」
ドクオはおにぎりのご飯粒を口から発射しながら立ち上がり、
つーは肩から落ちて最悪な目覚めを迎えた。
何故今までソレを思い出さなかったんだ。
ドクオは自分を叱責し、公園を後にした。
- 605 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/13(日) 23:15:58.66 ID:UG089Q3vO
- その日の深夜。
館の百合の花畑に、一人の女性が現れた。
女性は百合の花畑の中心で、何やらごそごそとやっている。
「そこまでだ」
不意に声がして、女性は振り向いた。
('A`)「それは「禁忌」だ。
君が何を思ってそんなことをしているのかは知らないが、
それだけは犯してはならない」
女性はユラリと立ち上がり、顔を隠す長い黒髪の間から覗く目でドクオを睨んだ。
川д川「邪魔しないで・・・・・・」
('A`)「それは出来ない。禁忌を犯しても君には何の利点もないぞ」
ドクオはその目線を真っ向から受け止めて言った。
- 608 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/13(日) 23:21:35.67 ID:UG089Q3vO
- 川д川「・・・・・・そう、貴方は私を生き返らせたくないのね」
女性は何処からか十字のハンマーを取り出した。
次に釘。口にくわえる。
最後に取り出したのは藁人形だった。
('A`)「人が生き返る術なんて無い。
君がやっているのは・・・・・・!」
川д川「私の邪魔をするなら・・・・・・呪う」
女性は藁人形の胸に、釘を打ち込んだ。
- 612 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/13(日) 23:24:38.72 ID:UG089Q3vO
- (;'A`)「ウグッ!」
その瞬間、ドクオの胸に鋭い痛みが走る。
川д川「邪魔・・・・・・しないで」
ニ本目は足。藁人形を地面に置いて打ち込まれた釘は、地面と藁人形を縫い留めた。
(;'A`)「クッ!」
ドクオの右足から力が抜け、微塵も動かせなくなる。
川д川「今日で終わりなの・・・・・・」
女性はドクオが動けなくなったのを確認して、再び「儀式」を始める。
(#'A`)「止めろ!それは君の願いを叶えるためのものじゃない!!」
ドクオの叫び虚しく、女性は最後の行程・・・・・・百合の花畑に魔法陣を書くこと・・・・・を終えてしまった。
次の瞬間、強い風が巻き起こり、百合の花畑が激しくなびく。
< ヽ`∀´>「ウェーッハッハッハ!!久し振りの地上ニダー!!」
そして、魔法陣の中心に黒い人の形をした何かが現れた。
(#'A`)「クソッ!!」
そのモノ・・・・・・悪魔を見据えながら、ドクオは悔しさの篭る拳で地面を殴り付けた。
- 619 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/13(日) 23:28:08.20 ID:UG089Q3vO
- < ヽ`∀´>「ご苦労ニダ、貞子!」
悪魔は風圧で倒れてしまっていた女性・・・・・・貞子に、下卑た笑い顔を見せた。
川д川「約束・・・・・・生き返らせて」
倒れながら貞子が言った、その一言を聞いた悪魔は、堪え切れずに笑い出した。
< ヽ`∀´>「ウェーッハッハッハ!馬鹿な人間ニダ。
本当に生き返ることが出来ると思っていたニダか?」
川д川「え・・・・・・?」
< ヽ`∀´>「嘘ニダよ!百合の花の封印を解けば願いを一つ叶えてやるなんて嘘ニダー!」
そういって悪魔はさらに高笑いした。
('A`)「・・・・・・百合の花は悪魔の封印に使われる。
君は悪魔に唆されて、その手伝いをしたのさ」
ドクオから悪魔に視線を移して、貞子は呟くように言った。
川д川「騙したの・・・・・・?」
- 625 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/13(日) 23:30:22.58 ID:UG089Q3vO
- ('A`)「つー・・・・・・」
苦悶の表情を浮かべながら、ドクオは自分の肩から離れなかったつーに口を寄せる。
('A`)「藁人形から釘を抜いて来てくれ・・・・・。
それと・・・・・・」
そして、悪魔と貞子が会話する中、つーに耳打ちした。
(*゚∀゚)「分かった!」
ドクオの命を受けたつーは、ドクオの肩から飛び降りて、藁人形目指し駆けた。
< ヽ`∀´>「今更分かったニダか?
本当に馬鹿ニダねー!!」
悪魔は笑い続けている。
そうして事実を知った貞子の身体は震えていた。
- 628 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/13(日) 23:33:21.35 ID:UG089Q3vO
- その時。
(-_-)「ドクオさん!」
声の方から走って来たのは、ヒッキーだった。
(;'A`)「来るな!」
ドクオの一喝でヒッキーは立ち止まらない。
(#-_-)「その人達に何してるんだ!!」
自分に館という自分の作り出した檻を飛び出させた精一杯の勇気を、
もう一度振り絞りヒッキーは叫ぶ。
さらには足元にあった石ころを掴み、悪魔に向かって投げ付けた。
しかし、ニダーは石ころを弾き飛ばし、ヒッキーを見てニヤリと笑った。
< ヽ`∀´>「そう言えば・・・・・・長い間肉体を持っていなかったから、肩慣らしと腹ごなしが必要ニダね」
ニダーは大きく背伸びをして、次の瞬間ヒッキーに向かって跳躍した。
- 631 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/13(日) 23:36:28.89 ID:UG089Q3vO
- が、伸ばした腕は間に割って入った何かによって止められる。
(#'A`)「肩慣らしなら俺が付き合ってやるよ・・・・・・!!」
つーが寸でのところで間に合い、釘を引き抜いたのだ。
両腕で悪魔の一撃を防いだドクオを、怪訝そうな顔で悪魔が見る。
< ヽ`∀´>「お前・・・・・・生きてるニダね?
何であの馬鹿女やこの貧弱そうな餓鬼や俺様が見えるニダ?」
('A`)「お前に教える義理はねぇ」
< ヽ`∀´>「そうニダか・・・・・・なら死ねニダ!」
もう一本の腕がドクオの脇腹をえぐり取る為に突き出される。
が、その腕は地面を陥没させるだけだ。
ドクオはヒッキーを脇に抱えて距離を取っていた。
< ヽ`∀´>「非力な人間がいつまでもつか見物ニダね!!」
悪魔が嘲るように言う。
('A`)「お前こそ、その呪いにいつまで耐えられるかな」
< ヽ`∀´>「呪い?何の事・・・・・・」
一瞬の沈黙に、何かを打つ音が聞こえた。
- 634 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/13(日) 23:38:56.68 ID:UG089Q3vO
- < ;`∀´>「ア、アイゴー!?」
ニダーは突然脇腹を押さえて苦しみ出した。
川д川「私を騙したのね・・・・・・」
後ろを振り向いたニダーが見たのは、
木に添えた藁人形に向かって二本目の釘を打とうとする貞子だった。
こちらも、つーを通じたドクオの伝言・・・・・・仕返しを思う存分やってくれ・・・・・・が間に合ったのだ。
- 640 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/13(日) 23:45:58.35 ID:UG089Q3vO
- 川д川「私を!」
< ;`∀´>「アイゴッ!」
川д川「騙して!」
< ;`∀´>「アイゴーッ!」
川д川「自分だけ!!」
< ;`∀´>「ま、待つニd」
川д川「いい思いして!!」
< ;`∀´>「ヒィッ!」
川д川「許さない!!」
< ;`∀´>「ギャッ!」
川д川「この怨み!!」
< ;`∀´>「グエッ!」
川д川「晴らさでおくべきか!!!」
< ;`∀´>「アイゴ〜!!」
川д川「死ねッ!死ねッ!死ねッ!」
(;'A`)「・・・・・・」
(;-_-)「・・・・・・」
(*゚∀゚)「いいぞー!もっとやれやれー!」
- 642 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/13(日) 23:47:19.30 ID:UG089Q3vO
- その後、貞子の思う存分な仕返しを受けた悪魔はドクオにより再び封印されたのだった。
- 644 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/13(日) 23:49:36.89 ID:UG089Q3vO
- さて、事の顛末はこうだ。
ヒッキーより先に死んでしまっていた貞子は、
あてもなくふらりと入った館の庭で、窓から少しだけ顔を出して黄昏れている一人の青年ヒッキーを見かけ、一目惚れしてしまった。
貞子はその後も度々ヒッキーの顔を見にきたが、
ヒッキーはその時はまだ生きており、貞子の姿はヒッキーには見えなかった。
貞子は「自分が生きていたら・・・・・・」と思いつつも、ヒッキーの顔を見ることしか出来なかった。
そして経つこと一年。
たまたまその館の敷地内にある百合の花畑に封印されていた悪魔が、
貞子の恋心を利用し、自分の復活を企てる。
「私の復活を手伝えば生き返らせてやる」と貞子に言ったのだ。
それに貞子は二つ返事で騙され、毎晩百合の花畑で悪魔復活の準備を始めた。
ちょうどその頃ヒッキーが自殺、両親が家を売り払ったが、
夜中にしか訪れない貞子はそんなことは知らないまま準備を続ける。
ヒッキーには貞子が見えるようになり、ヒッキーもまた貞子に一目惚れする。
後はドクオが訪れ、今に至るのだ。
- 647 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/13(日) 23:53:02.34 ID:UG089Q3vO
- (-_-)「あ、あの・・・・・・」
川д川「!」
肩を揺らし、ゼェゼェと息を吐いている貞子に、ヒッキーが心配そうに声をかけると、
貞子は恥ずかしそうに顔を逸らした。
川д川「ごめんなさい・・・・・・見苦しかったでしょ・・・・・・」
貞子としては自らの純情を利用された故の当然の行動だったが、
方法が方法なだけに会わす顔がないのだろう。
(-_-)「いえ・・・・・・助けてくれたんでしょう?
ケガとかありませんか?」
貞子は顔を赤らめ、小さく頷いた。
川д川「ありがとう・・・・・・」
- 649 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/13(日) 23:55:14.92 ID:UG089Q3vO
- (*゚∀゚)「アッチでうまくいくかなァ、あの二人」
二人を天に還し、またんきに依頼の終了を告げたドクオは、脇を歩くつーの呟きに答えた。
('A`)「一応行く前にそれぞれに両想いだとは伝えたから、大丈夫だろ」
結局、館は取り潰されるらしいが、あそこにはもう行き違いに悩む男女はいないのだから、
大した問題ではないだろう。
百合の花畑に関してもドクオが釘を指しておいたから、その区画だけ販売はされないそうだ。
(*゚∀゚)「でもさー、何だかんだ言って合ってるかもね、あの二人」
('A`)「・・・・・・そうだな」
引っ込み思案の彼と、切れると怖い彼女。
なかなかに味のあるカップルだと思った。
- 650 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/13(日) 23:58:02.87 ID:UG089Q3vO
- 一人と一匹が歩く道には、初夏の陽射しがサンサンと降り注いでいる。
(*゚∀゚)「ところでさー、アタシ今回は大活躍だったよね?」
つーがニヤリとした顔でドクオに言う。
(*゚∀゚)「美味しい物食べに連れていってくれるよね?」
確かに、今回ばかりはつーの助けが無ければ危うかっただろう。
観念したようにドクオは溜め息をついた。
('A`)「・・・・・・何がいいんだ」
(*゚∀゚)「そうだねー・・・・・・」
- 654 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/13(日) 23:59:20.81 ID:UG089Q3vO
- それから数分後。
牛丼の玉葱は抜きで頼んでねってあれほど言ったじゃないのさ!!このバカー!!
晴れ渡る空の下、一匹の猫の鳴き声が響いた。
('A`)と(*゚∀゚)と館のようです fin
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