154 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/17(木) 22:47:08.14 ID:J4GckeoZO
秋。
読書に食欲に芸術。
人々の様々な欲求を掻き立てる季節は、同時に実りの季節でもある。

そんな季節、一人の男がとある村を訪れていた。

男は身体には黒いコートを羽織り、頭には真っ黒な帽子を被っている。

左手に持った地図と睨めっこをしながら、道を歩いていた。

「・・・・・・何処だよココ」

「だからそんな大雑把な地図じゃあ駄目だって言ったじゃないのさ」

「・・・・・・行けると思ったんだよ」

「ドクオはもっと自分の方向音痴を自覚すべきだと思うんだよね」

「・・・・・・してるよ」


そして数時間後。
男は一軒の家の前でようやく足を止めたのだった。

('A`)「やっと着いた・・・・・・」


('A`)と(*゚∀゚)と祭のようです


156 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/17(木) 22:49:43.57 ID:J4GckeoZO
その家の主である中嶋バルケンが、ドクオの依頼主だった。

( ,'3 )「いやはや、遠いところをわざわざご苦労様です」

この中嶋バルケンという男性、苗字こそ違うが、
以前ドクオが依頼を受け解決した荒巻スカルチノフの弟であり、
兄の薦めもあってドクオに依頼したのだそうだ。

( ,'3 )「兄がお礼を言っておいてくれと言っていましたよ」

('A`)「そうですか」

( ,'3 )「とは言え、今度は私が貴方に力を貸してもらわねばならんのですが」

余り意味の無い話が得意ではないドクオは、話の矛先が依頼に向きかけたと見るや、一気に持ち掛けた。

('A`)「依頼の内容は「幽霊対策」と伺っていますが」

( ,'3 )「ええ。私、こう見えてこの町の組合長をやっているのですが、
     最近この辺りで幽霊が出たとの噂や話が出回っており、困っておるのですよ」


159 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/17(木) 22:54:04.07 ID:J4GckeoZO
中嶋バルケンの話を要約するとこうだ。

ここ数週間、夜中に出歩いているものが背後から話し掛けられるという事が多発している。
それが例えば知り合いだったりすれば良かったのだが、話し掛けられた者が振り向いても誰もいない。

しかも話し掛けられる時は決まって「私の大事な物は何?」という、
真夜中の一人ぼっちの外出時に尋ねられるには恐怖を抱く質問なのだ。

( ,'3 )「特別な危害を被っているわけではないのですが、幾分気味が悪いでしょう?
     しかもこの村では二日後に祭を控えておりましてな。
     大変身勝手なお願いですが、出来ればそれまでに住民を安心させてやってくださいませんか。
     この通りです」

バルケンはそう言って深々と頭を下げた。


160 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/17(木) 22:57:11.00 ID:J4GckeoZO
('A`)「分かりました。何とかしてみます」

そうして、ドクオは中嶋バルケン宅を後にしたのである。

ドクオはさっきまで被っていた黒い帽子を今は被っておらず、代わりにその脇に一匹の黒猫がついて歩いていた。

(*゚∀゚)「そうか、ここが「森田舗町」かー。
    通りで大掛かりな準備をしていたわけだ」

黒猫はバルケンの話を聞いて納得していたようだった。

('A`)「何だ。何か知っているのか」

(*゚∀゚)「結構有名じゃない?森田舗町の「大太鼓祭」。
    おっきい太鼓を叩いて森の神々を奉る祭らしいけど」

('A`)「・・・・・・聞いたこと無いな」

(*゚∀゚)「猫より無知ってどうなのさ?」

('A`)「少なくともお前よりは博識である自信はあるぞ、つー。」

(*゚∀゚)「失礼だね。アタシだってこれで中々物知りなんだよ?」

そう言って、つーと呼ばれた黒猫・・・・・・時には真っ黒な帽子だったりポケットに入るサイズの何かだったりする・・・・・・は、意地を張るように言った。


162 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/17(木) 22:59:28.37 ID:J4GckeoZO
('A`)「さて。取り敢えずは幽霊さんとご対面しなきゃ仕方無いな」

中嶋バルケンの話では、幽霊に話し掛けられる場所は毎回違っているらしい。

('A`)「ひたすらに歩き回るしかないか・・・・・・?」

(*゚∀゚)「また歩くの?大変だねぇ」

('A`)「ああ、大変だからお前を肩に乗せたり頭に被ったりする余裕は無いな」

(*゚∀゚)「ゲ」

とは言え、がむしゃらに歩くのも得策では無い。
ドクオは取り敢えず目撃者・・・・・・いや、遭遇した者の家を回ることにした。


「ああ、あの時の事か。とにかく気味が悪かったね。
確かに後ろから声がして、振り向いてみりゃ誰もいやしない。
しかも聞かれる内容が「私の大事な物は何?」だ。
そんなホラー映画みたいな不気味な体験すりゃ、そりゃあ誰だって怖いだろう?」

他の情報も似たり寄ったりの物であった。
遭遇した場所も、遭遇した人の年齢、性別、服装にも共通する部分は無い。


163 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/17(木) 23:03:12.12 ID:J4GckeoZO
('A`)「これは本格的にがむしゃら歩きするしかないな・・・・・・」

ドクオがそう言うと、つーが呟いた。

(*゚∀゚)「嫌だなァ・・・・・・」

何故にそう毎回毎回嫌がるのか、たまには文句言わずに黙ってろ!

とドクオは言いたかったが、言っても多分聞かないので言わない。

('A`)「依頼が終わったら祭を見に行けるだろう。それまで辛抱しろ」

(*゚∀゚)「・・・・・・」

つーは黙っている。

('A`)「不服なのか?」

(*゚∀゚)「違うよ。あれ・・・・・・」

そう言ってつーが指差したのは、

lw´‐ _‐ノv「・・・・・・」

道の端で佇む一人の女性だった。


167 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/17(木) 23:10:00.05 ID:J4GckeoZO
('A`)「・・・・・・ああ、そうだな」

ドクオはつーの言いたいことを察知した。

('A`)「探す手間は省けたかもしれない」

そのまま女性に向かって歩き続ける。
あと数メートルと近づいた所で・・・・・・。

lw´‐ _‐ノv「・・・・・・」('A`)

ドクオと女性の目が合った。

lw´‐ _‐ノv「・・・・・・」

('A`)「・・・・・・」

lw´‐ _‐ノv「・・・・・・」

('A`)「・・・・・・」

lw´‐ _‐ノv「・・・・・・」

しばし目線を交わしあっていた二人だったが、女性は突然某ヒーローの変身ポーズのような格好を取った。


170 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/17(木) 23:13:24.38 ID:J4GckeoZO
('A`)「・・・・・・?」

ドクオが怪訝な顔をする。
lw´‐ _‐ノv「・・・・・・見えてますか」

すると、女性はドクオに向かって呟いた。
そういうことか、とドクオは理解する。

('A`)「ああ、見えてるよ」

lw´‐ _‐ノv「・・・・・・貴方、私の大事な物は何か知っていますか」

少し間を置いて、女性が尋ねた。

('A`)「・・・・・・さぁ。見当も付かないな」

lw´‐ _‐ノv「私も知りません」

ドクオは少し戸惑ったが、いつも通りに切り出した。

('A`)「もし良かったら、君の手伝いをさせてほしいんだが」
lw´‐ _‐ノv「・・・・・・私の大事な物を探してくれるのですか?」
('A`)「ああ」
lw´‐ _‐ノv「そう。よろしく」
(;'A`)「・・・・・・」

どうやら、今回の霊は一癖ありそうな人らしい。


174 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/17(木) 23:18:45.83 ID:J4GckeoZO
('A`)「成る程。君には生前の記憶が無いんだな」

ドクオは女性を山を少し登ったところにある、町の神社に連れて来ていた。

lw´‐ _‐ノv「そもそもワットアムアイです。
おまけにここら辺からエスケープも出来ません」

霊が死後暫く死んだ場所から動けないというのはよくある話だ。

('A`)「自分の名前も分からないと」

lw´‐ _‐ノv「うん」

('A`)「何か覚えていることはないのかい?」

lw´‐ _‐ノv「・・・・・「雲雀」と「カナリア」」

女性はしばし考え込んだ後、そう言った。

('A`)「「雲雀」と「カナリア」?あの鳥の?」

lw´‐ _‐ノv「・・・・・・分からない。でも違うような気がする。好きだけど」

ドクオは眉を寄せた。

lw´‐ _‐ノv「とにかく「雲雀」と「カナリア」。それしか覚えてない」

('A`)「・・・・・・分かった。色々聞いてみるよ」

そう言って、ドクオは彼女に出来れば神社の辺りに居て欲しいと頼み、一旦別れたのだった。


177 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/17(木) 23:22:00.88 ID:J4GckeoZO
('A`)「とは言ったものの・・・・・・」

(*゚∀゚)「何か、不思議な雰囲気の女の人だったよね」

('A`)「ああいうタイプは正直苦手だな。
   掴み所の無いというか、雰囲気が独特というか」

(*゚∀゚)「それ何て言うか知ってる!
    「同族嫌悪」って言うんだよね!」

('A`)「・・・・・・」

アヒャヒャヒャ!!やめてー!!肉球は弱いのー!!


それからドクオはぐったりしたつーを肩にに乗せ、
女性について知っている人を探したが、
誰ひとりとして、ドクオの伝えた情報に一致していてかつここ数週間で亡くなっている、もしくは行方の分からなくなっている女性を知っている人はいなかった。


181 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/17(木) 23:23:15.07 ID:J4GckeoZO
('A`)「結局、手掛かりは「雲雀」と「カナリア」だけか・・・・・・」

しかし、この町でこの二つの単語に関わる特産物や手工業製品があるという情報も得られなかった。

(*゚∀゚)「ねぇ、今日はもう何処かに宿を決めて休まない?
    アタシはもう疲れたよ・・・・・・」

('A`)「・・・・・・分かった。
   じゃあ、「彼女」も一緒だな」


182 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/17(木) 23:24:38.02 ID:J4GckeoZO
(*゚∀゚)「・・・・・・」

lw´‐ _‐ノv「・・・・・・」

とある民宿の一室。
ドクオが取ったその部屋で、つーは女性と二人っきりの気まずい時間を過ごしていた。

ドクオは「ほっとくわけにはいかないだろう」と、女性を部屋まで案内し、後をつーに任せて、バルケンに「取り敢えずもう気味の悪い思いをすることは無い」と伝えに出ていってしまった。

恐らくはついでに聞き込みもしてくるのだろう。

(*゚∀゚)「・・・・・・あ、あのー・・・・・・」

lw´‐ _‐ノv「・・・・・・不吉?」

(*゚∀゚)「・・・・・・」

(*;∀;)「ぶわっ」

lw´‐ _‐ノv「・・・・・・ゴメン」


186 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/17(木) 23:27:07.64 ID:J4GckeoZO
('A`)「で、耐え切れず民宿の玄関で俺を待ってたのか」

(*;∀;)「だって、だって、黒猫に、「不吉?」って聞いたんだよ!?」

確かに思い付く限り最も言ってはならない単語だろう。

('A`)「気持ちは分かった。
   でも、彼女を一人にするなと言っただろう」

(#゚∀゚)「もういい!ドクオ見たいな冷血漢にはアタシの気持ちは分かんないよ!」

そういうなりつーは部屋に帰っていった。


189 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/17(木) 23:29:41.50 ID:J4GckeoZO
ドクオが後に続いて部屋に入ると、つーは押し入れのドアを器用に尻尾で閉めて閉じこもっていた。

lw´‐ _‐ノv「ごめんなさい。
       思ったことはすぐに口に出てしまう」

女性は申し訳なさそうにドクオに言った。

('A`)「謝るのはあの拗ねてる黒猫にしてやって。
   あれで結構傷付きやすいんだ」

押し入れからは何も聞こえない。
恐らくは中で丸まったりしているのだろう。

lw´‐ _‐ノv「・・・・・・分かった」

この女性も、根は悪くないのだろう。
ただ表現の仕方が特殊なだけで。

('A`)「さて、寝るとしますか」
ドクオが提案すると、女性も頷く。

その日はそのまま終わることとなった。


192 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/17(木) 23:31:57.26 ID:J4GckeoZO
そして次の日。

(*゚∀゚)「結局私達をほっぽいて昨日歩き回った意味は無かった訳?」

朝になっても閉じこもっていたつーを宥め、ドクオは再び女性の身元の手掛かりを得るべく散策を開始することにした。

('A`)「ああ。彼女も、「雲雀」と「カナリア」についても、知っている人はいなかったよ」

(*゚∀゚)「じゃあどうするのさ」

('A`)「逆だ。向こうが知らないなら、こっちに思い出してもらうしかない」

本来、霊や依頼主に動いてもらうのはドクオの主義に反していたが、この際は仕方なかった。

(*゚∀゚)「あの人に何か思い出してもらうって事?」
つーは、長閑な田園風景を眺めている女性を見ながら言った。

('A`)「そうだ」

(*゚∀゚)「でも、今日はお祭りだよ?」

('A`)「その分人が出て来るだろう。
   偶然に期待するしかないだろうな」


193 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/17(木) 23:35:40.96 ID:J4GckeoZO
大太鼓祭のメインは、何と言っても町中に響き渡る太鼓の音だろう。
勇ましいリズムは祭の雰囲気を盛り上げる。
そんな太鼓の音が響く中、ドクオ達は立ち並ぶ屋台の間を歩き回っていた。

lw´‐ _‐ノv「・・・・・・」

女性は興味津々とばかりに辺りを見回している。

('A`)「君はここら辺の人じゃないのか?」

lw´‐ _‐ノv「多分違う・・・・・・気がする」

('A`)「そうか」

(*゚∀゚)「ねぇドクオ」

('A`)「何だ」

(*゚∀゚)「タコ焼き食べt('A`)「却下だ」


195 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/17(木) 23:37:14.78 ID:J4GckeoZO
やがてドクオ達は屋台群を抜け、祭の中心である大太鼓が演奏されている広場に着いた。

ここまで近付くと大太鼓はかなり迫力があり、その鼓動が腹に響く。

(*゚∀゚)「凄いねぇ。太鼓叩いてる人は格好良く見えるね」

('A`)「そうだな。何にせよ、精一杯取り組んでいる人はそう見えるものさ」

すると、女性が呟いた。

lw´‐ _‐ノv「・・・・・・あの太鼓叩いてる人」

('A`)「何か思い出したかい?」

lw´‐ _‐ノv「・・・・・・惚れた」

(;'A`)「・・・・・・そうか」

今の所掴んだ新たな手掛かりは0。
そもそも彼女は何故ここにいるのかすら分からないのだ。

生前の記憶を失った霊の依頼をドクオ一人で行うのは、実はこれが初めてである。

('A`)(クソッ・・・・・・!どうすれば良い?)

今までの情報と記憶をひっくり返し思考する。

と、その時だった。


199 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/17(木) 23:41:13.61 ID:J4GckeoZO
「お姉ちゃん」

ドクオから見て、女性の背中越しに立っていた一人の少年が、そう言ったのだ。

その目線はしっかりと女性を捉えていた。

「やっぱり!あの時のお姉ちゃんだ!」

間違いなかった。この少年は彼女が見えていて、しかも知っている。

多少の霊感を持っているのだろうが、
そんなことはドクオの頭からは飛んでいってしまった。

lw´‐ _‐ノv「私の事・・・・・・知っているの?」

「田んぼに立ってたお姉ちゃんでしょ?」

('A`)「ゴメン、ちょっと良いかな?」

ドクオは少年の肩を叩いて話し掛けた。

('A`)「このお姉さんの事を知っているんだね?」

「うん」
少年はあどけない表情で頷く。


201 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/17(木) 23:43:37.44 ID:J4GckeoZO
('A`)「いつ、どこで見たのか覚えていないかな」

「んーとね、梅雨が明けてすぐぐらいに、
あっちの田んぼの道で僕が自転車で転んだとき、お姉ちゃんがバンソーコー貼ってくれたんだ」

絆創膏が貼れたということは、まだその時は生きていたのだ。
時期もバルケンの言う女性が現れ始めた時期と一致する。

('A`)「お姉ちゃんは何か言っていたかい?」

「「大丈夫?」って聞いてくれた。あと、ヒーローの真似とかして遊んだよ」

ヒーローの真似をする辺りで、本人なのは間違いないだろう。

('A`)「そうか。ありがとう」

「うん。じゃあね、お姉ちゃん!!」

そういって少年は走り出した。
しかし、何かを思い出したように振り返る。

「頑張って美味しい「雲雀」や「カナリア」を育ててねー!」

知っている!

(;'A`)「待って!!」

しかし、ドクオの叫び空しく、少年は人込みに消えた。


204 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/17(木) 23:46:11.40 ID:J4GckeoZO
('A`)「・・・・・・」

「美味しい「雲雀」や「カナリア」を育てる」。

育てるのは分かる。雲雀もカナリアも飼育できる鳥類だ。

しかし「美味しい」とはどういう事だろう。
食用の雲雀やカナリアというのは聞いたことが無い。
何か別の物を指しているのか。

再び頭をフル回転させて考える。

考えろ。思い出せ。
今までの情報、彼女の言動、そして少年の言葉。

('A`)「・・・・・・!」

それらのピースを繋ぎ合わせ、ドクオの頭の中に一つの答えが浮かんだ。

('A`)「そうか・・・・・・!」


208 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/17(木) 23:48:47.44 ID:J4GckeoZO
('A`)「つー、少し出掛けてくる。
   彼女と一緒にいてくれ。
   暗くなったら民宿に戻ってろ!」

自分の脇で屋台に並ぶ食べ物をよだれを垂らしながら見ていたつーにそういうなり、ドクオは駆け出した。

(*゚∀゚)「ええ?待ってよ!まだ何も食べてないじゃん!!」

つーの叫びは人込みの喧騒に掻き消される。

(*゚∀゚)「・・・・・・もう!」

そして、チラリと女性を見上げた。

lw´‐ _‐ノv「この前は、ゴメン、ね」

女性はつーを見てすまなさそうに言った。

ああもう。選択肢は二つあってこそ選択肢なのに!

(*゚∀゚)「仕方無いかぁ・・・・・・」

つーはガックリと肩を落とした。


210 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/17(木) 23:52:39.02 ID:J4GckeoZO
(*-∀-)「Zzz・・・・・・」

lw´‐ _‐ノv「・・・・・・」

丸まって眠る黒猫の背を撫でるようにしながら、女性は静かに窓の外を見ていた。

その時、ドクオがドアを開けて入って来た。
手には風呂敷を持って。

('A`)「見つかったよ。「雲雀」と「カナリア」」

そう言ってドクオは風呂敷をテーブルに置く。

lw´‐ _‐ノv「・・・・・・本当?」

女性はつーを起こさないようにテーブルに寄る。

('A`)「ああ」

触ることの叶わない女性の代わりに、ドクオが風呂敷を広げる。
包まれていたのは、タッパーだった。


213 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/17(木) 23:55:35.23 ID:J4GckeoZO
lw´‐ _‐ノv「・・・・・・!」

女性は一瞬目を見開いて、そして思い出した。

lw´‐ _‐ノv「・・・・・・米」

('A`)「そう。君の言っていた「雲雀」と「カナリア」は、二つの品種の米だった」

タッパーを開けた中には、艶やかに輝くおにぎりが入っていた。

('A`)「この町の先に米の品種改良を行ってる研究所があるんだ。
   そこの所長さんが・・・・・・って、もう分かってるか。
   素直シュールさん?」

女性・・・・・・素直シュールは静かに微笑む。

lw´‐ _‐ノv「ありがとう。全部を思い出した」

彼女は、その研究所で米の品種改良に携わる仕事についていた。
そこで彼女が品種改良の末に作り上げたのが「雲雀」と「カナリア」という、彼女が好きな鳥の名前を付けた品種だった。

恐らく彼女は、研究所への通勤途中にここを通り道としていて、
そしてここの周辺で何らかの原因によって命を落としてしまったのだろう。

故にこの地で、頭の片隅に残っていた米への情熱が、彼女に田園風景を意識させ、
少年は彼女と会っていたのだ。


217 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/17(木) 23:58:14.73 ID:J4GckeoZO
('A`)「「彼女の夢は、彼女が作り上げた品種米で作ったおにぎりを見て、
   たくさんの人に食べてもらうことだった」と、所長さんが言っていたよ」

ドクオの言葉に、シュールは頷く。

lw´‐ _‐ノv「・・・・・・良かった」

その時、部屋の隅で寝ていた黒猫が、その匂いを察知した。

(*゚∀-)「ん・・・・・・良い匂い・・・・・・」

あの四つん這いのまま頭を下げて腰を上げる猫独特の背伸びと欠伸をして覚醒したつーは、その匂いの元を発見する。

(*゚∀゚)「あ!おにぎりだ!」

(;'A`)「お前は食欲と睡眠欲だけで生きてるな」

(*゚∀゚)「このおにぎり、ドクオが買ってきたの?」


219 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/18(金) 00:00:37.79 ID:8wuvFlOVO
('A`)「馬鹿言え、来春に栽培が開始される米で作ったおにぎりだぞ。
どこ行ったって買えない。
所長さんに無理言って持ってきたんだ」

(*゚∀゚)「ウヒャー!食欲がそそられるね!」

lw´‐ _‐ノv「・・・・・・本当なの?」

「来春に栽培が始まる」ことの真偽を問うシュールに、ドクオは言った。

('A`)「ああ、おめでとう。君の夢は叶うそうだ」

lw´‐ _‐ノv「・・・・・・そう」

シュールは立ち上がる。

そして、窓の方を向いて、あの某ヒーローの変身ポーズを取った。

lw´‐ _‐ノv「・・・・・・ヤッタ!」

(*゚∀゚)「ねぇ、食べていい?食べていい!?」

しばらくして、その部屋から「オイシー!!」との叫びが聞こえてきたのは言うまでもない。


222 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/18(金) 00:04:02.22 ID:8wuvFlOVO
(*゚∀゚)「本当に美味しかったなあ、あのおにぎり」

('A`)「そりゃ良かったな。彼女も喜んでるだろうよ」

夕日が町を紅く照らす中。
中嶋バルケンに本当の意味での依頼の解決を伝えた後、
ドクオとつーは大太鼓の音を聞きながら歩いていた。

(*゚∀゚)「何て言うの?愛情が篭ってたね」

('A`)「そうだな」

彼女の、何があってもそれだけは決して忘れないほどの愛情を注いだ米は、多分大人気になるだろう。

(*゚∀゚)「でもさぁ、やっぱりお祭りの時にも何か食べたかったなぁ」

ドクオは眉をしかめる。

('A`)「お前な。
美味しいおにぎり食っといて何を言ってるんだ」

俺の分まで食いやがって、とは口に出さない。


224 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/18(金) 00:07:02.20 ID:8wuvFlOVO
(*゚∀゚)「それはホラ、別腹」

('A`)「・・・・・・太るぞ」

女性・・・・・・否、雌にとっても、言われると痛い言葉は、つーの脇腹にも突き刺さった。

(*゚∀゚)「・・・・・・大丈夫だもん」

('A`)「それとも既に太り始めてるのか?」

(*゚∀゚)「アーアー聞こえなーい」

('A`)「自分で自分の重みを確かめてみるか?」

そう言ってドクオはニヤリと笑った。


226 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/05/18(金) 00:09:58.23 ID:8wuvFlOVO
数分後。


待って待って!!離さないで!離しちゃ嫌!!
ゴメンナサイもうドクオのまで食べたりしません!!
食べ過ぎにも注意します!!
だからお願い宙づりの刑は止めてー!!


太鼓の響く茜空に、
尻尾を掴まれ、逆さにされ、支えになっている手を外されたら宙づりになってしまう体制の、
一匹の猫の太鼓に劣らない鳴き声が聞こえた。




('A`)と(*゚∀゚)と祭のようです fin


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