770 :◆HGGslycgr6:2006/03/08(水) 12:39:58.63 ID:3zAydQlz0
いつだったかな、ゴミ捨て場のダンボールの中で震えるアイツを拾ったのは。


( ^ω^)「ブーン! ブーン!」
俺「はいはい、腹が減ったんだな」
この妙ちくりんな生物の名前はブーン。
あんまりにもブーン、ブーンって言うからそのまま俺が名前をつけたんだ。
俺「ほら、今日買ってきたポーションお前にも飲ませてやるよ」
ちなみにコイツは二本足では歩けないけど、手を使えたりする。
( ^ω^)「ブーン!」
器用に両手でコップを抱えてポーションをごくごく飲み始めるブーン。
(;^ω^)「ブッ! ペッ! ペッ!」
やっぱり口に合わなかったみたいだ。
(#^ω^)「ブーン!!」
俺「うはwwやべwww怒ってるwwww」
けれどもよちよちとケツで歩くコイツを見ると恐れどころか、逆に愛情が湧いてきたりした。



771 :◆HGGslycgr6:2006/03/08(水) 12:41:38.33 ID:3zAydQlz0
アイツは俺がパソコンをしてるとよく足元でうろついたり、足にしがみついたりしてくるんだ。


( ^ω^)「ブーン」
俺「ブーンじゃねぇよwwかわいいなぁこんちくしょうwww」
そんなブーンを抱き上げて、膝に乗せながら俺はVIPを探検する。
俺「未来安価か…kskっと」
ふとブーンを見ると、カタカタとキーを打ち込む俺の指をブーンが一生懸命手で捕まえようとしてた。
俺「お前もkskしてみるか?」
(*^ω^)「ブーン!」
俺はブーンの手を持ってゆっくり『ksk』と打ち込んで送信した。
俺「あ、やべ安価踏んじまった。お前のせいだぞ」
(*^ω^)「ブーン!」
どうやら全然状況を把握してないらしかった。



772 :◆HGGslycgr6:2006/03/08(水) 12:43:05.62 ID:3zAydQlz0
そんな事をしていたもんだから、ブーンが最初に喋った言葉が『ksk』だった。


( ^ω^)「ksk! ksk!」
俺「おまwwちょっとkskしすぎwwww」
俺がブーンに注意した瞬間、信じられないことにブーンは立ち上がって歩き始めていたんだ。
俺「ちょwww世紀の瞬間見逃したwwwwwwww」
⊂( ^ω^)⊃「ブーン! ksk! ksk!」
バランスを取るために広げた腕がなんとも可愛らしくて、俺はその日気合を入れてオムライスを作ってやったんだ。
( ^ω^)⊃「…ksk!」
けれども俺の傑作は半分以上ブーンがスプーンで撒き散らしてしまった。
俺「散らかすなwww」



773 :◆HGGslycgr6:2006/03/08(水) 12:44:57.49 ID:3zAydQlz0
ブーンに無限の可能性を感じた俺は、試しに文字を書かせてみたりもした。


俺「ほら、ブーン、『ksk』だぞ」
(#^ω^)「ブーン!!!」
けれども何回俺のお手本を見せても書けないどころか、ボールペンを持ったまま暴れ出す始末。
俺「おまwww刺さってる刺さってるwwww」
どうやら文字は書けないらしかった。
( ^ω^)「ブーン!」
俺「お前、kskは感謝を表す言葉なんだぞ」
悔しいからウソの情報を吹き込んでやった。
俺「俺はこんなにkskしてるのにブーンはまだ1枚すらkskしてくれないのか…寂しいぜ」
(;^ω^)「ブーン! ブーン!」
ブーンが俺の猿芝居に慌てて擦り寄ってきた。
何この愛くるしい生物。


776 :◆HGGslycgr6:2006/03/08(水) 12:47:34.03 ID:3zAydQlz0
そしてあの日、突然別れの時がやってきたんだ。


男「…申し訳ありませんでした」
よくある話だった。
捨てたは良いものの、後から気になってきて探し回ったらしい。
外に置いてあったダンボールを見つけて、思わず呼び鈴を鳴らしたとのことだった。
俺「アイツはもう俺に懐いてます。今更返す訳にはいきません」
男「いや…その…ですね…実はその子の親がウチに居まして…」
男の話では、子供が予想よりも大分多く生まれてしまい、経済的な理由でブーンを泣く泣く捨ててしまったらしい。
しかし、最近ブーンの母親が子供の数を数えては、何かを探しているかの様に家中を歩き回っているというのだ。
男「どうか、その子と親を一緒に暮らさせてあげてください…」
そんな事を言われて、俺はそれきり何も言えなくなってしまった。


779 :◆HGGslycgr6:2006/03/08(水) 12:49:23.32 ID:3zAydQlz0
ブーンが居なくなってから、いつもの部屋がやけに静かに感じた。
物音がするたびにブーンが居るのではないかと辺りをキョロキョロしたりした。
それにいつもより頻繁にオムライスを作るようになっていた。
俺「…ksk!」
なんてオムライスを散らかしても、後片付けが空しいだけだった。

そんなある日玄関のドアを開けると1枚の紙切れが落ちていた。
チラシでも落ちたのかと思って拾ってみたら、どうやらメモ用紙らしい。
広げて中身を確認したその瞬間、涙が溢れ出てきて止まらなくなった。
俺「…きったねぇ…字」
紙には、ぐにゃぐにゃな線で大きく『ksk』って書いてたんだ。
俺「馬鹿だな、ブーン…こういう時は『ありがとう』って言うんだよ…。簡単に…騙されやがっ…て」
その日俺は久しぶりに大声を上げて泣いた。

そして、今でもその紙は俺の財布の中にいつでも見れるように入っている。
時々見返しては、ちょっと切なくなる俺の思い出。


 
 ※タイトルは無かったのでこちらで付けてあります
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