287 :名も無きAAのようです:2012/02/11(土) 06:51:10 ID:7Nh0DAuMO

 僕はコンビニでバイトをしている。

 理由はそのまま、金を稼ぎたいから。
 ここを選んだ理由は家から近いから。

 他には大した理由はなく、ただだらだらと、惰性で働き続けている。


 しかし僕は、本当は、



   ( ^ω^)やめたいようです。



 僕は、ここを辞めたくてしょうがない。

288 :名も無きAAのようです:2012/02/11(土) 06:52:09 ID:7Nh0DAuMO

( ^ω^)「いらっしゃいませー」

( ^ω^)「お弁当あたためますかー」

( ^ω^)「ありがとうございましたー」

( ^ω^)「いらっしゃいませー」

( ^ω^)「少々お待ちくださーい」

( ^ω^)「お待たせしましたー」

( ^ω^)「ありがとうございましたー」

( ^ω^)「はぁ……」


 ここでバイトを始めてもう二年、ほぼ毎日同じような日々を過ごしている。

 客を相手にいらっしゃいませー、ありがとうございましたー。
 時々はクレーマー相手に申し訳ございませんでしたー。

 朝も昼も夜も関係なく、昼勤夜勤もごちゃまぜに、僕はただただ愛想を振り撒く。

289 :名も無きAAのようです:2012/02/11(土) 06:53:08 ID:7Nh0DAuMO

 給料は大して上がらず、平凡かつ無感動極まりない毎日。

 こんな面白くもない仕事、さっさとやめてしまいたい。

 しかし生きるには金がいる、金のためには働かざるをえない。
 僕がここで仕事をしている理由なんて、金のため以外にあるはずもない。


(,,゚Д゚)「おい内藤」

( ^ω^)「あ、店長」

(,,゚Д゚)「お前また品出しサボってんだろ、給料下げられてぇのか」

( ^ω^)「すみません、すぐやります」

(,,゚Д゚)「ったく、ダラダラやってんじゃねぇよ」


 ここの店長はガラが悪い。
 話し方は威圧的だし、僕に対して妙に厳しい。

 しかもことあるごとに給料を下げるだのなんだのと脅してくる。

 全く上司にも恵まれない職場だ。

290 :名も無きAAのようです:2012/02/11(土) 06:54:08 ID:7Nh0DAuMO

(,,゚Д゚)「……おい内藤」

( ^ω^)「はい」

(,,゚Д゚)「お前、クリスマスもバイト入れてんのか」

( ^ω^)「ええまあ、他に予定もないんで」

(,,゚Д゚)「寂しいやっちゃなあお前も」

( ^ω^)「ははは」


 しかもデリカシーの欠片もないと来たものだ。


(,,゚Д゚)「ほら、余ったケーキやるから食え」

( ^ω^)「え、良いんですか」

(,,゚Д゚)「予約キャンセルになったんだよ、こうなったら売りようもねぇ」

( ^ω^)「ありがとうございます」


 僕一人でホールケーキを食えと言うのか。

 なんて店長だ、僕の血糖値をどれだけ上げれば気が済むんだ。

291 :名も無きAAのようです:2012/02/11(土) 06:55:08 ID:7Nh0DAuMO

 だいたいこの店長はいつもこうだ。

 やれ飯は食ってるのか、やれ腹は減ってないか。
 僕を大食漢か何かだと勘違いをしていないかこの店長は。


 いつもいつも嫁が作りすぎただの、弁当が余っただのと、僕に残飯処理まで押し付ける。

 お陰でカロリー過多で痩せる暇すらありゃしない。
 このまま成人病にでもなったらどうしてくれるんだ。


(,,゚Д゚)「お前、親御さんはよ」

( ^ω^)「あー、まー」

(,,゚Д゚)「ったく、たまには帰って顔を見せてやれよ」

( ^ω^)「ははは、わかりました」


 プライバシーをなんだと思ってるんだ。

 僕にだって家庭の事情と言うものがある。
 そんな事も気にせずずかずかと首を突っ込む、なんてデリカシーの無い男か。

292 :名も無きAAのようです:2012/02/11(土) 06:56:08 ID:7Nh0DAuMO

(,,゚Д゚)「ほれ、クリスマスプレゼントってわけじゃねぇけど」

( ^ω^)「これは?」

(,,゚Д゚)「ボーナスみてぇなもんだよ、もらっとけ」

( ^ω^)「あ……ありがとうございます!」


 差し出されたポチ袋からは、うっすらと諭吉さんが見えた。


 バイト相手に金を渡して懐柔でもしようと言うのだろうか。

 だいたいこれは違法取引にはならないのだろうか。
 受け取っても法的にセーフなのか、僕にはわからないが怪しくてしょうがない。

 しかし受け取らないわけにもいかないので、おとなしくそれをポケットにしまった。


 真面目なバイトをこうも悩ませるとは、汚い、店長さすが汚い。

 早いところ、こんなところは辞めてしまいたい。

293 :名も無きAAのようです:2012/02/11(土) 06:57:16 ID:7Nh0DAuMO



ξ゚听)ξ「すみません、ポットのお湯が切れてるみたいですけど」

( ^ω^)「あ、申し訳ございません」

ξ゚听)ξ「前も切れましたよ、よく確認しておいてください」

( ^ω^)「申し訳ないです、すみません」

ξ゚听)ξ「これ、お会計お願いします」

( ^ω^)「ありがとうございます」


 いつもいつも僕に文句をつけてくる客だ。
 巻き髪の女子大生、口うるさくて面倒くさいったらありゃしない。

 だが一応は客なのでそんな事はおもてには出さない。

 こんなのでも客が居ないと店がなりたたない、そして店がなりたたないと僕も給料を貰えない。


ξ゚听)ξ「……あの」

( ^ω^)「はい?」

ξ゚听)ξ「髪、寝癖ついてますよ」

(;^ω^)「え、あ、すみません」


 正面から言わないでも良いじゃないか、恥ずかしい思いをするとわからないのだろうか。

295 :名も無きAAのようです:2012/02/11(土) 07:00:10 ID:7Nh0DAuMO

(;^ω^)「すみません、あとで直します」

ξ゚听)ξ「じっとしてください」

(;^ω^)「あ、えっ」

ξ゚听)ξ「直りましたよ」


 人様の髪に気安く触るとは、何て不躾な客だ。
 失礼だとは思わないのか。

 しかもその髪をどうするつもりだ、まさか呪ったりでもするのか。


 ここにはろくな客も来やしない。


(*^ω^)「お……あ、ありがとうございます……」

ξ*゚听)ξ「あ、い、いえ……」

294 :名も無きAAのようです:2012/02/11(土) 06:58:09 ID:7Nh0DAuMO

ξ*゚听)ξ「あ、あの……これ」

(*^ω^)「へ?」

ξ*゚听)ξ「いつも、お疲れさまです……それじゃ!」

(*^ω^)「あ……ありがとう、ございました……」


 去り際に置いていったのは一つの箱。
 可愛らしくラッピングされてるが、それの中身は察する。

 バレンタインのチョコとかそんなところだろう。
 こんなとこでも義理を配るとはご苦労様だ。


 どうやら手作りらしいが、何が入ってるかわかったもんじゃない。
 受け取った以上どうしようもないのだが。

 それに食べ物に罪はない、嫌々でも食べておこう。
 三月にはお返しもしなければならない、面倒この上ない事だ。


 全く、客にまで困らせられるなんて。

 早いところ、こんなところは辞めてしまいたい。

296 :名も無きAAのようです:2012/02/11(土) 07:01:15 ID:7Nh0DAuMO


  _
( ゚∀゚)「でさー、そいつが言うわけよー」

ミ,,゚Д゚彡「マジかよパネェwwww」
  _
( ゚∀゚)「だろwwwww」


 うわ来た、嫌なタイプの客だ。

 人の迷惑も考えずに店で騒ぐ、めんどくさい客。
 出来るのなら今すぐ出ていって欲しい。

  _
( ゚∀゚)「んで……おい何してんだよ」

( ・∀・)「は? 何お前」
  _
( ゚∀゚)「いや、棚荒らすなよ、戻せ」

( ・∀・)「るっさいな……店員でもない癖に」


 それあとで戻すの僕だろうが。

297 :名も無きAAのようです:2012/02/11(土) 07:02:13 ID:7Nh0DAuMO
  _
( ゚∀゚)「戻す店員の手間考えろや、アホかお前」

ミ,,゚Д゚彡「おい長岡」

( ・∀・)「だからお前が店員でもないだろ? お前に言われる筋合いないし」
  _
( ゚∀゚)「そう言う問題じゃねーよ、ちゃんとしろよ」

ミ,,゚Д゚彡「なあ長岡」

( ・∀・)「だからうっせぇって、何なのお前?」
  _
( ゚∀゚)「は? お前こそ何なの?」

ミ,,゚Д゚彡「ねぇ長岡」

( ・∀・)「喧嘩売ってんの? あ?」
  _
( ゚∀゚)「は、お前が喧嘩売ってんのかよ?」

ミ,,゚Д゚彡「ねぇってば長岡」


 おい後ろの毛量すごいやつ可哀想だぞ。

298 :名も無きAAのようです:2012/02/11(土) 07:03:09 ID:7Nh0DAuMO
  _
( ゚∀゚)「うるせーよフサ、何だよ」

( ・∀・)「口挟むなよお前」

ミ,,゚Д゚彡「長岡、上着引っ掛かってお菓子落ちてる」
  _
( ゚∀゚)

ミ,,゚Д゚彡「お前もマフラー引っ掛かってお菓子落ちてる」

( ・∀・)

ミ,,゚Д゚彡「ちゃんと戻そう、な?」
  _
( ゚∀゚)「うん、ごめんな」

( ・∀・)「俺もなんか、ごめんな」

ミ,,゚Д゚彡「あと店で喧嘩すると店に迷惑だから、な?」
  _
( ゚∀゚)「うん、ごめん」

( ・∀・)「ごめん」


 毛量すごいやつ良い奴だな。

299 :名も無きAAのようです:2012/02/11(土) 07:04:11 ID:7Nh0DAuMO

(,,゚Д゚)「お、ドリンク補充終わったか」

( ^ω^)「あ、はい、大丈夫でしたか?」

(,,゚Д゚)「あ? あー、あれ俺の弟と友達だから」

( ^ω^)「マジすか」

(,,゚Д゚)「おう、ホットスナック補充するからレジ頼むわ」

( ^ω^)「あ、はーい」
  _
( ゚∀゚)「すんませー、これー」

( ^ω^)「いらっしゃいませ、ありがとうございますー」
  _
( ゚∀゚)「すんません騒いじゃって」

( ^ω^)「いえ、そんな」

ミ,,゚Д゚彡「長岡、俺にくまん」


 お前は筋肉達磨だろう。

300 :名も無きAAのようです:2012/02/11(土) 07:05:07 ID:7Nh0DAuMO

( ^ω^)「すみません、今仕込んでるところで……」

ミ,,゚Д゚彡「え……マジで……」

(,,゚Д゚)「文句があるなら表に来い」

( ^ω^)「店長怖いですから」

ミ,,゚Д゚彡「ごめんなさいアメリカンドッグください」

( ^ω^)「110円でーす」

( ・∀・)「アメリカンドッグ三つで」

( ^ω^)「お会計はご一緒でよろしいでしょうかー」

( ・∀・)「はい、俺払います」

( ^ω^)「お会計330円でーす、お箸おつけしましょうかー」

( ・∀・)「二つお願いします」


 お箸いるのかよ。

301 :名も無きAAのようです:2012/02/11(土) 07:06:09 ID:7Nh0DAuMO

( ^ω^)「ありがとうございましたー」

(,,゚Д゚)「内藤お疲れ、そろそろ時間だろ」

( ^ω^)「ですねー、でもまだ次の人来ませんね」

(,,゚Д゚)「だなぁ、それまで一人で回すわ」

( ^ω^)「いえ、来るまで居ますよ」

(,,゚Д゚)「残業出ねーぞ」

( ^ω^)「ははは、別に良いですよそんなの」

(,,゚Д゚)「悪いな、晩飯奢るわ」

( ^ω^)「ありがとうございます」


 晩飯で残業を強いるとはひどい店長だ。
 だが居ると言った手前、帰るわけにはいかない。

 ああもう、早いところ、こんなところは辞めてしまいたい。

302 :名も無きAAのようです:2012/02/11(土) 07:07:08 ID:7Nh0DAuMO

(,,゚Д゚)「内藤、定職にはつかないのか?」

( ^ω^)「今は難しくて」

(,,゚Д゚)「社員なれるけど、どうする?」

( ^ω^)「ううん、まだバイトとして勉強したいです」

(,,゚Д゚)「そっか、腕あるから枠あけばいつでもなれるぞ」

( ^ω^)「ありがとうございます」

(,,゚Д゚)「じゃ、時給アップな」

( ^ω^)「え、本当ですか」

(,,゚Д゚)「おう、スキルアップしてるからな、10円上がったぞ」

( ^ω^)「ありがとうございます!」

(,,゚Д゚)「おうおう、これからも頑張れよ」

( ^ω^)「はい!」

303 :名も無きAAのようです:2012/02/11(土) 07:08:22 ID:7Nh0DAuMO

(,,゚Д゚)「よし、もうバイト来るってよ」

( ^ω^)「じゃあ引き継ぎの準備しますね」

(,,゚Д゚)「おう、悪いな」


 時給が上がってしまったんじゃ、なかなか辞めるに辞めづらいではないか。

 これも店長の巧妙な罠なのだろうか。
 全くなんて嫌な店長なのだろう。


 店長は怖くて強引だし。
 客は面倒だしクレームはつける。
 しかも不良まがいの客がたまに喧嘩をする。

 本当にこの職場はやっていられない。
 早いところ、こんなところは辞めてしまいたい。


( ^ω^)(でも、まあ)


 もうしばらくは、ここで働いてやっても、悪くはないな。



 おわり。


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