2 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 20:19:09.85 ID:pF2ZjsKN0
―――――8月12日


(-_-)「……」

カチッ カチカチッ


(-_-)「……エフッ」


(-_-)「エフッ エフッ エフッ エフッ」


(*-_-)「「アハッ ハハハハハ ハハハハハ、想像上のカマキリだとォ!!?」」lw´*‐ _‐ノv


(;-_-)「……あれ?」

3 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 20:22:33.23 ID:pF2ZjsKN0












lw´‐ _‐ノv陽炎の夜のようです











4 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 20:25:54.83 ID:pF2ZjsKN0
lw´‐ _‐ノv「ユージロー乙」

(;-_-)「え?え、え?」


いきなりの女の子の登場で、ぼくは現状を把握できずに戸惑ってしまう。


……何が起こったのか、理解するために少し記憶の整理をしよう。

ぼくの名前は小森 マサオ。
長男の17歳、現在ヒキコモリの高校生。
母親はすでに他界、父親は仕事の都合でほとんど家にいない。

今日も家に1人きりだったため、2ちゃんねるで面白そうなスレを探してた。
そしてとあるスレを見つけて1人で大笑いしてた。

はずだったんだけど……。

lw´‐ _‐ノv「おっと、そういえば挨拶がまだだったね。
       こんばんわっと」

(;-_-)「こ、こんばんわ……じゃなくて」

(;-_-)「えと……き、キミ、誰?」

目の前の女の子を見る。
白いシャツに短めのネクタイ、デニムのホットパンツ。
ロングのストレートで眠そうに細めている目と、アニメに出てくるような幼い声が印象的だ。

5 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 20:29:16.54 ID:pF2ZjsKN0
人と話すのは久しぶりだ。
言葉が上手く出てこなかったが、何とか質問することが出来た。
そしてぼくの言葉を聞いた女の子は、表情を変えずに答えてくれた。

lw´‐ _‐ノv「一応、君のクラスメイトだよ。
       とりあえず自己紹介しとくね。
       私の名前は、砂尾 示由流(すなお しゆる)。
       みんなからシュールとかシューとか呼ばれてるから、君もそう呼んでくれると嬉しい」

lw´‐ _‐ノv「ちなみに私の名前はDQNネームじゃないよ。
       親が悩みに悩みぬいて考えた名前だよ。
       名前の由来がたしか……『示した理由を流す』だったかな?」


流したらだめじゃん……っていうかそんなこと聞いてないけど。

lw´‐ _‐ノv「まあ由来は嘘だけど」

いきなり嘘宣言ですか。カミングアウト早すぎでしょ。

lw´‐ _‐ノv「嘘を言ってもすぐ話す。それが私のジャスティス」

…………なんというか。

6 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 20:32:35.08 ID:pF2ZjsKN0
(-_-)「……こほん。あ、あの、砂尾さん?」

lw´‐ _‐ノv「……他人行儀だね。私と君との仲なのに」

(;-_-)「……他人ですがなにか?じゃなくて」

lw´‐ _‐ノv「?」

(;-_-)「な、なんで勝手に人の家に上がりこんでるの?しかもこんな時間に?」

lw´‐ _‐ノv「??」

(;-_-)「……ただいま夜の11時なんですけど」

lwσ‐ _‐ノv「????」


(;-_-)「そこでワケワカランって顔しないで!!」


lw´‐ _‐ノv「……」


lw´‐ャ‐ノv ニヤ


(;-_-)「な、なに?」

lw´*‐ _‐ノv「元気があるようで安心したよ」

9 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 20:35:55.44 ID:pF2ZjsKN0
(;-_-)「……」

砂尾さんはぼくの様子を見るためだけにここにきたのだろうか?
……多分ちがうと思う。

ぼくと砂尾さんは親しい間柄じゃない。
クラスメイトなのに顔を覚えてないぼくがそれを証明している。
そんな空気並みに希薄な関係で、ぼくのことを見にくるとは思えない。

先生に頼まれたからきた、というのも違う気がする。
学校が関わってるのなら、こんな非常識な時間にくるはずない。

だからプライベート的な……何らかの用件があるはずだ。
しかし、彼女はなかなか用件を言い出さない。
会話もさきほどのでストップしてしまった。
もちろん、ぼくからその用件を聞き出す、なんて芸当はできるはずがない。

……ひとまずパソコンの電源を切ることにしようか。

(-_-)「……ふぅ」

カチカチッ

lw´‐ _‐ノv「あれ?パソコンやめちゃうんだ」

lw´‐ _‐ノv「あれれ?どこいくの?」

(-_-)「……」

11 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 20:39:17.41 ID:pF2ZjsKN0
とりあえず家を出ることにする。
砂尾さんから離れたかった。
他人を家に置いたままにしておくのは少し不安だが、問題ないだろう。
物を取るつもりならぼくに声をかけないだろうから。


じゃあなんの用でぼくの家にきたのだろう?
家に用がないとするなら、ぼくに用があった……きた理由はこれだろう。

じゃあぼくになんの用があったのだろう?
詳しくは知らない。もしかしたら学校に来いと説得しにきたかもしれない……聞く気も起こらない。

じゃあぼくはどうするべきだろう。
逃げるに決まってる。ぼくはそうやって今日まで過ごしてきたのだから。



lw´‐ _‐ノv「家に友人があがってるのに外出するのってある意味大物だね」

(;-_-)「……ついてこないで」

lw´‐ _‐ノv「いいじゃん減るものじゃないのだから」

(;-_-)「……」

うん。
逃げたかったんだけど砂尾さんは逃がしてくれないみたいだ。
彼女はぼくのうしろにぴったりついてきてた。

13 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 20:42:41.83 ID:pF2ZjsKN0
lw´‐ _‐ノv「それで、どこにいくの?」

(;-_-)「……」

行き先は決まっている。
ただ答えたくなかった。
あまりぼくの生活に干渉してほしくなかった。
だから沈黙で抵抗した。

それでも彼女はぼくのあとをついてきたけど。

車の通っていない車道の真ん中を歩き、点滅した信号機がぼくらを照らす。
音は2人の足音しかなく、外が1つの大きな部屋のような錯覚を覚える。

やがて、ぼくらはとある公園にたどり着いた。

すでに消灯時間のため、公園内は暗かった。
それでも明かりがないわけではない。
ぼくは自動販売機の光を頼りに、その近くにあるベンチに腰を下ろす。
砂尾さんもぼくに倣って腰を下ろす。

lw´‐ _‐ノv「こんなところになにがあるの?」

(-_-)「……なにもないよ」

lw´‐ _‐ノv「フーン」

15 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 20:46:15.03 ID:pF2ZjsKN0
(-_-)「……」

lw´‐ _‐ノv「……」

(;-_-)「ね、ねえ」

lw´‐ _‐ノv「ん?」

(;-_-)「そ、そろそろ日付が変わると思うよ。帰らなくていいの?」

lw´‐ _‐ノv「姉ちんに事情を話してきたから問題ない」

……どんな事情を話したのですか?

lw´‐ _‐ノv「……」

(;-_-)「……」

しかし……緊張するなぁ。
とにかく落ち着くんだ、ぼく。
ぼくにはもう1つ聞かなければならないことがあるはずだ。
どもってまともな会話ができなければ、翌日悶え苦しむのは自分なのだから。

深呼吸を1つ、2つ……

17 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 20:49:36.68 ID:pF2ZjsKN0
(-_-)「ねえ」

lw´‐ _‐ノv「ん?」

(-_-)「なんでぼくにかまうの?」

lw´‐ _‐ノv「……」

(-_-)「ぼくは1人でいられればそれでいいんだ。
     だから放っておいてよ」

lw´‐ _‐ノv「……」

(-_-)「……」

lw´‐ _‐ノv「どうしてだろうね」

(-_-)「え?」

lw´‐ _‐ノv「んー……とりあえずあとで理由を話すよ。
       今は言えないってことで納得してほしい」

(-_-)「……」

lw´*‐ _‐ノv「秘密を持ってるってかっくいいよね?」

(;-_-)「……」

19 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 20:53:06.03 ID:pF2ZjsKN0
(;-_-)「はぁ……」

lw´‐ _‐ノv「……」


lw´‐ _‐ノv「ねえ」

(-_-)「……うん?」

lw´‐ _‐ノv「君は1学期のあいだ、学校に来なかったよね?」

(-_-)「……」

lw´‐ _‐ノv「別に来ないから悪いといってるわけじゃないよ。
       私は教師でも委員長でもないから。
       ただ来ないなら来ないなりに理由でもあるんじゃないのかなって思って」

(-_-)「……」

ぼくは今年の2月から学校に行ってない。
今、引きこもってるのに理由らしい理由はない。
ただ、行きたくないから行かないだけだ。

あえて理由をあげるとするなら、

(-_-)「そういう考え方をしてるからかな?」

lw´‐ _‐ノv「kwsk」

20 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 20:57:40.60 ID:pF2ZjsKN0
(-_-)「今はどうも学校にいく気がしないんだ。
     皆が楽しくやってても、それに入り込めない。
     なにかが違ってる気がして、ね」

lw´‐ _‐ノv「ふーん」

(-_-)「まあ、苛められたからとか忙しいから、……などで不登校してるわけではないんだ。
     だから引きこもってる明確な理由もないんだ。
     今言った理由も、それほど悩んでるわけではないから理由にはならないだろうし」

lw´‐ _‐ノv「なるへそ」

(-_-)「……」

lw´‐ _‐ノv「……」

(-_-)「……」

lw´‐ _‐ノv「……」

(;-_-)「……ねえ」

lw´‐ _‐ノv「ん?」

(;-_-)「……黙らないでなにかしゃべって」

lw´‐ _‐ノv「っと言われてもねえ」

22 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 21:00:53.87 ID:pF2ZjsKN0
引きこもり生活はとても閉鎖的だ。
そのため対人恐怖症に陥りやすい。
ぼくだって久しぶりに人と話すので、黙られると怖く感じる。

逃げちゃおうかな?

lw´‐ _‐ノv「私は君が不登校してる理由について、言うことはないよ。
       そういう考えもあるだろうし」

(;-_-)「……え?」

意外な言葉が返ってきた。
理由なく不登校していることを話せば、説得してくるものだと思ってた。
しかし、出てきた言葉は肯定だった。
おかげでぼくはみっともなく混乱してしまった。

(;-_-)「……登校するように説得しないんだ?」

lw´‐ _‐ノv「しないよ」

(;-_-)「???」

彼女は何を考えてるのだろう?

23 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 21:04:11.06 ID:pF2ZjsKN0
(;-_-)「……砂尾さんは何しに来たの?」

lw´‐ _‐ノv「君に会いに来たんだよ」

(;-_-)「え?あ?………う?」


会いに?
ただそれだけのために?
えーと?
実はぼくのことが?
いやいや、そんなわけない!!
むしろ……

そうか、罰ゲームだ!
好きでもない男に告白するやつだ!!
今回の罰ゲームでぼくのところにきたんだ!!
そうに違いない!!!


lw´‐ _‐ノv「どうどう」

(;-_-)「ぅええ!!」


    い  き  な  り  抱  き  つ  か  な  い  で  え  え


25 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 21:08:01.62 ID:pF2ZjsKN0
lw´‐ _‐ノv「……」

(;-_-)「あうあうあう!」

lw´‐ _‐ノv「………」

(;-_-)「あうあぅ」

lw´‐ _‐ノv「…………」

(;-_-)「あぅ」

lw´‐ _‐ノv「……………」

(;-_-)「……………」





lw´‐ _‐ノv「……落ち着いた?」

(;-_-)「……うん、だから離して」

lw´‐ _‐ノv「ほいほい」


砂尾さんはすぐ離してくれた。
やわらかかったなあ。

26 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 21:11:18.43 ID:pF2ZjsKN0
lw´‐ _‐ノv「少し話を戻そうか。
       どうして登校するように説得しないか。
       君はそこに疑問を感じてるんだね?」

(;-_-)「う、うん」

lw´‐ _‐ノv「こういう言葉がある。
       『人間はひとくきの葦にすぎない。自然のなかで最も弱いものである。だが、それは考える葦である』
       ……意味分かる?」

(;-_-)「え、えと。
     人間は自然の中では矮小な生き物にすぎないが、考えることによって宇宙を超えるって意味だっけ?
     たしかパスカルって人の言葉だったかと」

lw´‐ _‐ノv「正解。彼の書いたパンセって断片集の一文だね」

lw´‐ _‐ノv「ではもう1つ質問。
       なんで考えることで宇宙を超えると思う?」

(;-_-)「……分からない」

lw´‐ _‐ノv「あのね。それは人間の頭の中には無数の自分がいる、ってことじゃないかな?」

(;-_-)「……えーと?」

28 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 21:14:33.83 ID:pF2ZjsKN0
ぼくが砂尾さんの言葉を理解できなかった。
そんなぼくの様子を見た砂尾さんは、少し長くなるよ、と前置きをして説明してくれた。

lw´‐ _‐ノv「例えば、アイスを買いたいけどお金があまりないとしよう。
       当然、買うかどうか悩むよね。
       で、そのとき頭の中には、『アイスを買いたい自分』と『お金を使いたくない自分』の2種類の葦が確認できる」


lw´‐ _‐ノv「もっと細かく見ると、
       『おこづかい日が近いから買ってもいい自分』
       『太るからいらない自分』
       『どうしても誘惑に勝てない自分』
       『万引きしてアイスにありつこうとしている自分』……」


lw´‐ _‐ノv「簡単に考えてもこれだけの葦が確認できる」


lw´‐ _‐ノv「これより多くの葦が確認できたなら、人の頭の中は1つの世界と定義できる。
       さらに未知の葦の存在も含めると、それは1つの宇宙と定義できる。
       ……パンセなんて読んだことないから、私は勝手にそう解釈しているんだけどね」

lw´‐ _‐ノv「で、ね。
       そうなると頭の中の妄想世界と私たちが生きている現実世界、それらはとてもよく似ている。
       現実世界には、よく知る友達や知らない他人がいる。
       妄想世界にも、よく知る自分や知らない自分がいる。
       それなら現実世界と頭の中の世界はリンクしてるんじゃないかな?。
       妄想は現実があって成り立つものだからね」

29 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 21:17:48.88 ID:pF2ZjsKN0
lw´‐ _‐ノv「私は私をよく理解できていない」


lw´‐ _‐ノv「そして私の中には『殻に引きこもる』葦の存在はまだ確認できていなかった」


lw´‐ _‐ノv「だから私は君には何も言えない」


lw´‐ _‐ノv「できることといったらせいぜい……それも1つの考え方かな、と肯定することだけなの」


安易な否定は思考停止してるのと同じだからね、と締めくくる。
それを聞いた感想は、

(;-_-)「……ずいぶん難しく考えてるね」

lw´‐ _‐ノv「そういうのが好きだから」


ぼくは脳内言語バーを出して1つの単語を登録する。

語句は『砂尾 示由流』
読みは『へんなやつ』

登録はすぐに終わった。

30 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 21:21:06.51 ID:pF2ZjsKN0
lw´‐ _‐ノv「つまるところ、私ごときが君の考えに口出しできないってことだね。
       私が君と接触して『殻に引きこもる』葦をもらうことが出来たけど、まだ私の中に根付いていないから」

今の砂尾さんの言葉をすぐには理解できなかった。

えーと?こういうことかな?
“葦をもらう”っていうのは、ぼくのような考え方があると認識することで。
“根付いていない”っていうのは、完璧に理解しているわけではないってことかな?

lw´‐ o‐ノv「ん……ふぁあ」

(-_-)「……ねむいの?」

lw´‐ _‐ノv「ん?うん、いつも日付が変わるあたりに寝てるからね」

(-_-)「ふぅん」

そういえば今は何時くらいだろう。
まあ、確実に日付は変わっているだろう。
ぼくは引きこもってから、夜型になったのでなんともないけど。
砂尾さんは頭がゆらゆら揺らいでいる。

(-_-)「……もう帰ったほうがいいよ」

ここで、送っていくよ、と出てこなかったのは、ぼくが臆病者だから。
早く1人になりたいというのもある。
そんな卑屈な考えを露とも知らず、砂尾さんは、そだね、と告げた。

31 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 21:23:30.06 ID:pF2ZjsKN0
lw´‐ _‐ノv「よっと」

彼女はベンチから立ち上がり、軽く体を伸ばす。
そのまま公園の出口へ足を向け……唐突に立ち止まり、ぼくの方を振り向く。

lw´‐ _‐ノv「そうだ。君に1つ問題を出そう」

(;-_-)「……?」


lw´‐ _‐ノv「『自分』とはなんぞや?」


lw´‐ _‐ノv「よく考えて答えを出してほしい」

lw´‐ャ‐ノv「おやすみ、ヒッキー」

彼女はそこまでいうと、今度こそ公園を出ていった。
そうしてぼくは1人になる。
『自分』とはなにか?
えらく哲学的なことを聞いてくるなぁ。
しかもいきなりそんな質問をぶつけてくるとは。

いや、それより……

(;-_-)「……ヒッキーって……ぼくのこと?」


32 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 21:27:08.06 ID:pF2ZjsKN0
砂尾さんと別れたあと、無人の町を適当にぶらついた。
夏の夜特有の生ぬるい風をうけながら、ぼくは考える。

(;-_-)「……なにがしたかったんだろ?」

ぼくに会いにきて、外出するときは後ろを付いてきた。
ぼくと話をして、最後にはよく分からない質問をしてきた。

やっぱり罰ゲームかな?


んー、分からない。
分からないから違うことでも考えよう。
去り際に、自分とはなにか?って聞いてきたなあ。


自分、ねえ……。


(-_-)「とりあえずバカな奴だってのは分かるんだけどさ……」


1人ごちる。
もうちょっと散歩を続けてから家に帰ろうかな。



33 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 21:30:23.07 ID:pF2ZjsKN0
―――――8月13日


(-_-)「……」


(-_-)「……」


(-_-)「……」


(-_-)「……」


lw´‐ _‐ノv(-_-) …フゥー


(-_-;)「あwせdrftgyふじこlp;@:!!!!」



35 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 21:33:55.28 ID:pF2ZjsKN0
(;-_-)「す、す、すす砂尾さん!!」

lw´*‐ _‐ノv「耳に息を吹きかけられて、そんなに慌てるなんて……案外かわいいところあるじゃん」

誰でも慌てますから!

lw´‐ _‐ノv「というわけでこんばんわ、ヒッキー」

(;-_-)「こ、こんばんわ……じゃなくて」


混乱して言いたいことが出てこない。
いろいろ文句を言いたいのはたしかなのに。

不法侵入とかまた夜の11時にきたのかとか
耳に息を吹きかけないでとか夜に男の家にくるなとか
ぼくにかまわないでくれとかどうせくるなら分かるようにきてほしいとかえーとえーと!!


lw´‐ _‐ノv「……落ちついて。
       まだ慌てるような時間じゃないよ」

38 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 21:37:41.10 ID:pF2ZjsKN0
(;-_-)「あ……ぐ……」

lw´‐ _‐ノv「……まったく」


lw´‐ _‐ノv「落ちつかないと、思春期の男の子がもってると言い伝えられてる聖書を全部もっていくよ?
       ベッドの下とか机の引き出しの奥が隠し場所の定番なんだよね?」






(;-_-)「 そ う だ ! 外 に 出 よ う ! ! 」





lw´‐ _‐ノv「え?」

lw;‐ _‐ノv「わわ、引っ張らないで」


これ以上なにかされてたまるか!!

39 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 21:40:40.70 ID:pF2ZjsKN0
で、砂尾さんを連れて昨日の公園にまたきた。
2人で自動販売機の近くにあるベンチに座る。


lw´‐ _‐ノv「……そんなに聖書が大事なの?」

(;-_-)「……」

女性の裸ばかり載ってる聖書をあなたに見られるのが大事なんです!
……とはとてもいえないなぁ。

とりあえず話をはぐらかすとしよう。

(;-_-)「なんでまた来たの?」

lw´‐ _‐ノv「ん?昨日、ある程度話さなかった?」

(;-_-)「今は話せないってしか聞いてないよ」

lw´‐ _‐ノv「ちゃんとした理由はあとで話すよ」

(;-_-)「……今話せばいいじゃん」

lw´*‐ _‐ノv「秘密があったほうが萌えない?」

(;-_-)「ううん」

lw´‐ _‐ノv「……つまらん」

41 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 21:43:36.48 ID:pF2ZjsKN0
lw´‐ _‐ノv「ともあれ、そういうことだから楽しみにしてなさいな」

(-_-)「……砂尾さんは素直じゃないね」

lw´‐ _‐ノv「そう?けっこう素直な奴じゃないかなーって思ってたんだけど?」

(;-_-)「自分でそれをいうか……」


(-_-)「でも、なんだかんだで隠し事してるし、素直じゃないんじゃない?
     そんな名字なのにね」

lw´‐ _‐ノv「相手にバカ正直に話すことが素直だっていうのなら、私は素直じゃなくていいよ」

(-_-)「でも素直って相手にバカ正直に話すから表現できるものじゃないの?」

自分に嘘をつかないのは『正直』。
相手に嘘をつかないのは『素直』。
こう考えてたんだけど……違うかな?

lw´‐ _‐ノv「そうかもね。
       素直っていうのは、ひねくれてなくて相手の言葉に従順なさま……って意味だからね。
       でも、私は君の質問にちゃんと答えてるよ。
       今、話したくないことは『後で話す』ってちゃんといってるし」

42 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 21:46:40.37 ID:pF2ZjsKN0
(;-_-)「……うーん?」

lw´‐ _‐ノv「納得できない?
       じゃあさ、何をもって“素直”を表現できると思う?
       メイドのようにイエスマンになればいいの?
       サラリーマンのように頭を下げ続ければいいの?」

(;-_-)「それは違うでしょ……。
      彼らは仕事で従順なんだから」

lw´‐ _‐ノv「でも、プライベートで従順にふりまかないと素直じゃないと一概にはいえないよ?
       そもそも『従順』とは自分を放棄していること。
       それは自分に正直じゃないことを意味している。
       自分を偽って相手に接すれば、嘘をついてるも同じでしょ?」

(;-_-)「そう、なのかな?」


彼女のいってることは硬論で邪論じみてる。
でも、数式のように道理に沿って持論を展開していってる。

おかげで、ぼくの頭は熱をもち始めてきた。

43 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 21:49:31.18 ID:pF2ZjsKN0
lw´‐ _‐ノv「だからこそ嘘をつく、つかないはそんなに大切なことじゃないよ。
       大切なのは自分の意思をもつ事だよ。
       そこを忘れてしまえば、私たちは駄作 ・ 原作レイプのアニメの登場人物と同じだよ。
       テンプレートな行動しかできない私たちが自分の意思を持たないと、結果、うすっぺらい人間にしかならない」

(;-_-)「……テンプレート?」

lw´‐ _‐ノv「そ。
       私たちはキラ様みたいにフリーダムじゃないんだ。
       肉体的、精神的、社会的な縛りでガチガチに固められている。
       だから『常識』、『アイデンティティー』などのテンプレートに従い、行動している。
       べつにテンプレートが悪いといってるんじゃないよ?
       流されようが流されまいが、自分をしっかりもったほうがいいといってるんだ」


lw´‐ _‐ノv「なぜなら私たちは現実を生きてるからね。
       だから私は二次元的な素直さをもってないかもしれない。
       でもね、四次元を生きてる私はなるべく自分に嘘をつかないようにしてるよ」


lw´‐ _‐ノv「なるべく、といってるのは嘘をつかない人間などいないから。
       嘘のない人生を送れるのは、平面に住んでるヒトカタの何かだけだよ。
       なら自らの意思を持ち、うまく嘘と折り合いをつける。もしくは正直に嘘をつく。
       ……それが素直というものじゃないかな?」


(;-_-)「砂尾さんは相変わらず難しく考えるね……」

正直、よく分からないけど……でもなんだか砂尾さんが素直な奴に思えてきたから不思議だ。

46 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 21:52:49.11 ID:pF2ZjsKN0
lw´‐ _‐ノv「……」





lw´‐ _‐ノv「ところでさ。その『砂尾さん』っていうの、いいかげんやめてくれない?」

(;-_-)「……え?」

lw´‐ _‐ノv「シュール、シュー、or 示由流。
       どれかで呼んでちょうだいな」

(;-_-)「で、でも」

lw´‐ _‐ノv「……苗字で呼ばれるの、きらいなんだよ」

(;-_-)「……」


(*-_-)「分かった………シュー……ル」

lw´*‐ _‐ノv「おーおー、顔を紅くしちゃってまあ。やっぱ可愛いねえ」

(;-_-)「う」

lw´‐ _‐ノv「ともあれサンクス、ヒッキー」


47 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 21:56:27.13 ID:pF2ZjsKN0

 ヒュー

    パーン


(-_-)「ん?」

lw´‐ _‐ノv「花火の音だね。
       深夜だっていうのに若人が頑張ってるのかねえ?」

(-_-)「そういえばそんな季節だったね」

lw´‐ _‐ノv「もうお盆だしね」

(-_-)「そうだったんだ?」

lw;‐ _‐ノv「……カレンダーくらいみなよ」


そんなこと言われても……。
外に出ない生活をしてると日付のことなんて頭からトぶものですよ?
見る必要ないし。

49 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 21:59:17.31 ID:pF2ZjsKN0
lw´‐ _‐ノv「そういえば」

(-_-)「ん?」

lw´‐ _‐ノv「今年のお盆なんだけど、ヒッキーはどこかへ行く予定ある?」

(-_-)「ないよ、全然ないよ」

なんせお盆のことなんて今日知ったくらいなんだから。
父さんも何も話さないから、きっと忙しいのだろう。
つまり、明日から引きこもり天国なのだ。

lw´‐ _‐ノv「なら、明日は花火を持っていくよ」

(;-_-)「……」


……スケジュールはシュール強襲地獄に変更してしまいました。

50 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 22:02:21.40 ID:pF2ZjsKN0
lw´‐ _‐ノv「さて、今日は何を話そうか?」

(-_-)「もう充分話した気がするんですけど」

lw´‐ _‐ノv「ところがどっこい、まだ日付は変わってない…………っっ!!!!」

(;-_-)「話す以外に何かやることないの?」

lw´‐ _‐ノv「なにもないよ」


シュールは両手を肩の高さまでもってきて、「やれやれだぜ」といいそうなポーズをとる。
どうやら『手ぶらで来た』とアピールしているらしい。
じゃあ、小難しい話をするしかないのか……はぁ。
……知恵熱が出てもいいように覚悟だけはしとこう。

(-_-)「で、何を話すの?」

lw´‐ _‐ノv「そうだね、ここは1つ……」



lw´*‐ _‐ノv「愛、について語り合おうか」

(;-_-)「ぶッッッ!!!!!」

52 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 22:05:10.39 ID:pF2ZjsKN0
lw;‐ _‐ノv「ヒッキー……きちゃない……」

(;-_-)「いや、あの、その……あうあう」

lw´‐ _‐ノv「まあ私が君と恋仲になりたい、ってわけじゃないから安心して」

(-_-)「……ですよねー」


lw´‐ _‐ノv「さて、と。
       ヒッキーは愛というものを自覚したことがあるかい?」

(-_-)「……ないよ」

lw´‐ _‐ノv「そういうと思ったよ。
       でもね、ヒッキーの中にも愛はあるんだよ」

(;-_-)「……どこらへんに?」


lw´‐ _‐ノv「家に引きこもる行為。
       いいかえると、これは自分を守る行為なんだよ」

lw´‐ _‐ノv「つまり一般的に『自己愛』って呼ばれてるやつだね」

(-_-)「ふむ」

lw´‐ _‐ノv「……愛とはなにかの対象を肯定する気持ち。
       対象に存在意義や価値を見出したり快を感じたりする気持ちのことだから、」

53 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 22:08:39.75 ID:pF2ZjsKN0
lw´‐ _‐ノv「……つまり愛とは欲求のことでしょ?」


lw´‐ _‐ノv「欲求を満たせる存在に対して向ける思考を愛というなら……。
       私たちはシマウマを食べるライオンと違いがあるだろう?」


lw´‐ _‐ノv「私はないと思う。
       私たち人間は、他の獣とちがって少しだけ賢かったんだよ。
       だからこそ欲求とはちがうと考え、より高貴と自己暗示かけたものを愛と呼んでるんじゃない?
       人間は、自身の理想像として『神』を創ってまで愛を肯定してるからね」


lw´‐ _‐ノv「神は全てのものを平等に愛する。
       でも人は神にはなれない。
       神というのは人間の無理難題を押し付けられて創られた理想像だから。
       だから宗教やってる人は、神に頭を垂れる」


lw´‐ _‐ノv「……私が何をいいたいか理解できてる?」

(;-_-)「全然」

lw´‐ _‐ノv「おkおk、分かりやすく話すよ」

54 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 22:11:29.38 ID:pF2ZjsKN0
lw´‐ _‐ノv「私はね、引きこもりの人を獣と考えてないんだ。
       引きこもりはね、神に通じるものがあると思ってるんだ」

(;-_-)「……どこらへんが?」

lw´‐ _‐ノv「孤独で他人に影響を与えない。
       ネットの普及もあって、人間関係を結ばなくても世界の大まかな事柄を見渡せる。
       全てのものを愛するということは全てのものを愛さないと同義だから、外の世界に関心がうすい」


lw´‐ _‐ノv「これらの点に引きこもりと神との違いはないと思うんだ」


lw´‐ _‐ノv「ただ他人に影響を与えないというのは、あくまで巨視的に見た場合に限るけどね。
       引きこもりでも何らかの形で認識されてるからね。
       認識するのは、ストーカーから社会、ペットまで様々なものがある」

lw´‐ _‐ノv「だから『不完全な神』といったほうがいいね。
       頭を垂れるのは親だけだしね」

(;-_-)「……orz」


lw´‐ _‐ノv「……神になろうとしても結局人間は神になれない。
       人が神になれないなら、獣のまま対象に欲求をぶつけたほうがいい。
       そのほうが私たちらしい。
       そうは思わない?」

56 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 22:14:36.95 ID:pF2ZjsKN0
(;-_-)「……思ったらいけないと思う。
      それがまかり通ったら、性的犯罪を肯定してるも同じだよ」

lw´‐ _‐ノv「そうだね。
       ただ、愛なんてものは全てが全て、崇高なものじゃないよ。
       社会の常識に沿った“貴賤”というものがあると思うの。
       『愛は正義』なんて全てに当てはまらないよ」


lw´‐ _‐ノv「じゃあ、どうすればより貴い愛を示すことが出来るか?
       ……これは人それぞれに答えがあるだろうと思う。
       もちろん私だけの貴い愛があるし、ヒッキーだけの貴い愛がある。
       でもね、千差万別の答えがあるから自分にしか分からないんだよね」

lw´‐ _‐ノv「だからヒッキーにも貴い愛に気づいてほしい。
       それが人を愛すことにつながるかもしれないから。
       だから頑張りなよ?」

(;-_-)「最後、投げやりだね……」

lw;‐ _‐ノv「あのねえ……私にだって全てをうまく説明することはできないの。
       16歳の乙女なんだから、森羅万象を理解して分かりやすく話せってのは無理があるでしょ」


lw´‐ _‐ノv「あ。
       それと、これはあくまで1つの考え方、という点を理解しておいてね。
       この考えはあってるかもしれないし、違うかもしれない」

(-_-)「ふーん」

57 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 22:18:26.29 ID:pF2ZjsKN0
lw´‐ o‐ノv「というわけで、私にとって愛とはそういうm……ふぁぁ……そういうものなの」

(-_-)「……眠い?」

lw´‐ _‐ノv「……うん」

(-_-)「じゃあこれで解散だね」

lw´‐ _‐ノv「……うん」

さて、と。
さっさと家に帰るかな。

(-_-)「んじゃ、バイバイ」

lw´‐ _‐ノv「とぅ!」

(;-_-)「うげっ!」


別れの挨拶をしてこれから公園から出ようというときに、背中に衝撃を受けた。
倒れそうになる体を足でふんばり、体勢を立て直そうとして……背中にずっしりとした重みを感じた。

…………まさか。

lw´‐ _‐ノv「おんぶ」

(;-_-)「……そこの大きい赤ちゃん、降りなさい」

59 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 22:22:00.40 ID:pF2ZjsKN0
lw´‐ _‐ノv「ねむいからおくっていって?」

(;-_-)「……重いから却下」

lw#‐ _‐ノv「……女の子に向かって重いっていうな」

(;-_-)「はいはい。でも家知らないからやっぱり却下」

lw´‐ _‐ノv「案内するから」

(;-_-)「遠いだろうから却下」

lw´‐ _‐ノv「ここから200m程度だよ」

(;-_-)「うん、遠い」

lw´‐ _‐ノv「近いってば」

(#-_-)「……引きこもりの運動神経をなめないでほしい」

lw;‐ _‐ノv「うわーあ、だーめにーんげーん」

(-_-)「うん、駄目人間だよ。だから却下」


lw´*‐ _‐ノv「 死 ん で も こ の 腕 を は な さ な い ! ! ! 」


(;-_-)「……」

60 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 22:25:30.04 ID:pF2ZjsKN0
lw´‐ _‐ノv「あきらめなよ」

(;-_-)「……はぁ」

結局、大きい赤ちゃんを送っていくことになった。

(;-_-)「シュールってさ、ひょっとして抱き癖ある?」

lw´‐ _‐ノv「ないよ。
       ヒッキーにだけ抱きついてるだけだよ。
       君はすぐ逃げようとするからね」

(-_-)「……ん、たしかにそうかも」

lw´‐ _‐ノv「……」

(-_-)「……」


lw´*‐ _‐ノv「で、胸を押し当ててるんだけどどうよ?興奮する?」

(;-_-)「っ」


やわいです。
おおきいです。
めろんちゃんです。

意識しないようにしてたので改めていわないでください。

62 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 22:28:42.36 ID:pF2ZjsKN0
lw´‐ _‐ノv「お、そこを右に曲がって」

(;-_-)「……右側にあるのは道じゃなく川ですよ。突っ込む気ですか?」

lw´‐ _‐ノv「蛍を見たい」

(;-_-)「眠いのだからベッドに直行しなさい」

lw´*‐ _‐ノv「……えっちぃね」

(;-_-)「っ」



(;-_-)「……ぼくで楽しんでるでしょ?」

lw´‐ _‐ノv「当たり前でしょ」

64 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 22:31:37.58 ID:pF2ZjsKN0
lw´‐ _‐ノv「話がはずむと眠くなりにくいものだよ」

(;-_-)「じゃあ、なんでおんぶさせてるのさ?」

lw´‐ _‐ノv「逆に言えば、話し相手がいないと眠っちゃうの。おんぶは君を逃がさないためだよ」

(;-_-)「……さいですか」


lw´‐ _‐ノv「っと、ここまででいいよ。
       ありがとね」

(;-_-)「……ふぅ」


lw´‐ _‐ノv「さて、ここでお別れだけど……今日も1つ問題を出しておこう」

(-_-)「……?」


lw´‐ _‐ノv「『愛』とはなんぞや?」


lw´‐ _‐ノv「よく考えて答えを出してほしい」

lw´‐ャ‐ノv「また明日ね、ヒッキー」


……

65 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 22:34:30.44 ID:pF2ZjsKN0
―――――8月14日


(-_-)「……あ、……あー」


(-_-)「うん、声は出るね」


(-_-)「こほん、そこの貴方に質問!」


(-_-)「不肖ながらわたくし、歌を歌いたいと思います!」


(-_-)「何かリクエストはありませんか!?」



lw´‐ _‐ノv「お?ならスカボローフェアで」

(;-_-)「……うん、なんとなくいるような気はしたよ」

lw´‐ャ‐ノv「むっふっふ〜♪」


本当は独り言だったんだけどね。

68 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 22:37:46.52 ID:pF2ZjsKN0
(-_-)「で、なんだっけ?スカトr」

lw#‐ _‐ノv「やっぱり却下」

(;-_-)「なんでさ?」

lw#‐ _‐ノv「……わっぱ、それ以上汚い言葉を使おうものなら拳骨では済まさんぞ?」


(;-_-)「え、ええ?スカt」


lw´*‐ _‐ノv「ここで爆竹やったら面白そうだよね?」



(;-_-)「ごめん、もういわない」

lw#‐ _‐ノv「……ったく」

69 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 22:40:58.40 ID:pF2ZjsKN0
w´‐ _‐ノv「さ、外に出るべ」

(;-_-)「……今、18時ですよ?早くないですか?」

lw´‐ _‐ノv「いいんだよ。
       むしろ、いつもより早めに出ないと花火はできんよ」

(;-_-)「だって、まだ外明るいよ。
      こんな時間に出れるわけないじゃん」

lw;‐ _‐ノv「……黄昏時で暮色蒼然となってる町並みを明るいと申すか」

(-_-)「ごめんねー。ぼく、日の光を浴びると灰になっちゃうから」

lw;‐ _‐ノv「だから日は沈んでるんだってば」

(#-_-)「大体、ぼくが外に出れる時間帯は深夜なんだよ!
     日中は人が沢山いて出れるわけないじゃないか!!」

lw;‐ _‐ノv「……日は沈んでるって何回言えばいいんだろう?」

(-_-)「そんなわけで人がいなくなるまで出ないのでよろしく」


lw#‐ _‐ノv「……へぇ?なら最終手段を使おうかな?」

(;-_-)「た、たとえ家の中で花火をやられても出ないんだからね!!」

lw´‐ャ‐ノv「ほうほう?」

70 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 22:44:04.79 ID:pF2ZjsKN0
シュールはバックから携帯電話をとりだす。
なにをするつもりだろう?
疑問に思いつつ、彼女の行動をかんさつする。
彼女はボタンをいじくり、やがて携帯を耳にあて、


lw´‐ _‐ノ】「もしもし。
       おー、わたしわたし。
       ちょっと内気な男子がいてね。
       うん……性格を矯正したいんだよ。
       だから連絡簿でクラスの皆に『今夜、その男子の家にくるように』って伝えておいてくれにゃい?」


(-_-)




……………はい?


71 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 22:46:56.34 ID:pF2ZjsKN0
lw´‐ャ‐ノ】「うん?
       大丈夫。彼、料理うまいし。
       晩ごはんごちそうしてくれるって。
       え?誰の家かって?」

lw´*‐ _‐ノ】「あのね、小もr」



(;-_-)「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
      あああああああああああああああああああああああああああ
      ああああああああああああああああ
      あああああああああああああああああああああ
      ああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」



lw;‐ _‐ノv「うわなにをするやめr「なにやってんの!ぼくを殺す気なの!!」(-_-#)

もみくちゃになったよ。
ちからづくで奪ったよ。
そっこうで通話きったよ。
ひさしぶりに全力で運動したよ。

もうね、肉体的にも精神的にも疲労で倒れそうだよ。

73 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 22:49:57.40 ID:pF2ZjsKN0
(;-_-)「はぁ……はぁ……」

lw;‐ _‐ノv「ふぅ……ふぅ……」


lw;‐ _‐ノv「けーたい……かえして……」

(;-_-)「もう仲間を……呼んだりしない……?」

lw;‐ _‐ノv「うん……」

(;-_-)「なら……」


はい、と携帯を渡す。
シュールは、ありがと、といって受け取る。


lw´‐ _‐ノv「リダイヤルっと」


(;-_-)「ぎゃああああああああああああああああああああああああ
      あああああああああああああああああああああ
      ああああああああああああああああああああああああああああ
      あああああああああああああああああああああああああああああああああ」

76 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 22:52:48.27 ID:pF2ZjsKN0
lw´‐ _‐ノv「はい、この画面をよく見て」

(;-_-)「ああああああああ……………え?」



……117番?

lw;‐ _‐ノv「ハッタリのつもりだったんだけど……効果は抜群だったね」






(;-_-)「……orz」


ぼくはその場で崩れおちた。

77 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 22:56:18.52 ID:pF2ZjsKN0
その後、自力で立ち上がることができなかったぼくは、シュールに引っ張られて外にでた。
といっても、玄関からでて数歩程度の外だが。

(-_-)「……」

lw;‐ _‐ノv「……怒ってる?」

(-_-)「……」

lw;‐ _‐ノv「……ごめんね」

(-_-)「……」

lw;‐ _‐ノv「……むぅ」

(-_-)「……」



lw´‐ _‐ノv「んじゃ許してもらわなくていいや。
       ところでさ、ここで花火やる?」

(;-_-)「…………すっごい話題の変え方だね」

lw´*‐ _‐ノv「お?やっと食いついてきたか」

78 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 23:00:02.36 ID:pF2ZjsKN0
(;-_-)「……たまにシュールのことが分からなくなるよ」

本当はたまに、じゃなくて常時なんだけどね。
それは言わぬが花だろう。

lw´‐ _‐ノv「どこが分からないの?
       私で教えられるのなら詳しく説明するよ?」

(;-_-)「じゃあ……許さなくていいって考え方が」

lw´‐ _‐ノv「あー」

半ば習慣になっている夜の散歩のおかげで、自然と足を公園に向ける。
シュールは花火セット&バケツをもってぼくのあとに続く。


lw´‐ _‐ノv「怒っている人を説得するなんて至難の業なんよ。
       そういうときは怒りが静まるのを待つしかないよ」

(-_-)「ふーん」

lw´‐ _‐ノv「なにしろ相手は話をきく態勢がととのってないからね。
       だから怒らせとけばいい。
       怒りをぶつけたいなら受け止めてやる。
       ……こちらはそういう姿勢でいたほうがいいんだよ」

81 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 23:03:27.83 ID:pF2ZjsKN0
(-_-)「大人だね」

lw´‐ _‐ノv「そうでもないよ。
       私も子供だから、だめな時はだめなんだよ。
       怒らせると困っちゃうし、怒られると悲しいし、…………無視されるとつらい。
       泣いちゃうことだってあるよ」

(-_-)「……意外だなあ。
     キミならなんでも跳ね返せそうな気がするのに。
     いつものおかしな論調でさ」

lw;‐ _‐ノv「あのねぇ……私は鉄人じゃないんだから常に無敵無双みたいにいわないの」

(;-_-)「ご、ごめん」

lw´‐ _‐ノv「それは私がいうべき旨でしょうが」

(-_-)「……それもそうだね」


lw´*‐ _‐ノv「じゃあこれでチャラにしようか?」

(*-_-)「だね」

82 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 23:06:31.65 ID:pF2ZjsKN0
道中、仲直りをしたぼくらは果たして公園に着いた。
その後、定位置のベンチに花火をおき、迅速に準備をする。
ぼくはろうそくを立てて火をともした。
シュールはバケツに水をくんできた。

(-_-)「で、どんな花火をもってきたの?」

lw´‐ _‐ノv「見ればわかるよ」

(-_-)「どれどれ?」


えーと?
ドラゴン×5コ、爆竹×50束、へび玉×50袋、煙玉×30コ、線香花火×50束……


(;-_-)「ドラゴンはいいとして……そのほかの花火がおかしいんですけど」

lw´‐ _‐ノv「私が選んで買ってきたものにケチをつけるとな?
       おかしいと思った根拠をいってみよ」

(;-_-)「あ、そっか。お金はあとで払うよ。
      根拠は地味すぎ。
      そして地味なやつの数がありえない」

83 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 23:09:32.41 ID:pF2ZjsKN0
lw´‐ _‐ノv「……………地味な子でもいいじゃん」

(;-_-)「見栄えわるくない?」

lw´‐ _‐ノv「派手なのより落ち着けるよ?
       大体さ、文句いってももう店しまってるから新しいの買えないよ?」

(;-_-)「う」

lw´*‐ _‐ノv「だから今日はこれで楽しむべ」

(;-_-)「……そうだね」


たぶん楽しめるだろう。
うん、楽しめるにちがいない!!

……そう自分を騙さないとやってられないような気がするけどさ!

86 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 23:12:26.08 ID:pF2ZjsKN0
lw´*‐ _‐ノv「最初は何をやる?ドラゴン?」

(;-_-)「待った!
      ドラゴンは数少ない派手な花火だからあとでやろうよ。
      最初からとばしていって、地味なのを延々とやってたら情けなくて泣いちゃうから」

lw´‐ _‐ノv「それもそうだね。
       じゃあ爆竹?」

(-_-)「……まあ無難なチョイスだと思うよ。
     爆竹は地味そうに見えてけっこう派手だからね」

lw´*‐ _‐ノv「んじゃ1番、砂尾示由流……いきます!!」

(*-_-)「おーいけいけー」


   シュウウゥゥゥゥ…………………………


(;-_-)「って早く手をはなしなよ!!!」

lw´‐ャ‐ノv「むっふっふ〜♪…………ていっ!」


  パンパンパンパパンッ


88 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 23:15:19.90 ID:pF2ZjsKN0
(;-_-)「……心臓にわるいよ」

lw´*‐ _‐ノv「ぎりぎりまでもってて、爆発する瞬間に投げるのが爆竹の楽しみ方じゃないの?」

(;-_-)「そういう楽しみ方もあるだろうけど……」

lw´*‐ _‐ノv「では2番、小森マサオ……いきます!!」

(;-_-)「絶対いかない!!!」


lw´‐ _‐ノv「……けつの穴の小さいやつめ」

(;-_-)「小さくてけっこうです」


lw´‐ャ‐ノv「なら私の爆タケをうけてみよ!!」


(;-_-)「ぎゃああああああこっち投げるなああああああああああああ!!!!」




89 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 23:18:20.88 ID:pF2ZjsKN0
………………………………………


lw´*‐ _‐ノv「次はなにやる?」

(;-_-)「地味なのをお願いします……」

lw´‐ _‐ノv「……爆竹投げられたくらいで元気をなくすなんて、貴様、それでも若人か?」

(;-_-)「残りの爆竹全て投げられたらこんなものですよ……。
     にげるので疲れたので体力を使わないのを本当にお願いします……」

lw´‐ _‐ノv「なら煙玉だね」


lw´*‐ _‐ノv「一気にいくよ!!」








(;-_-)「……煙で何も見えないのですが」


      「煙玉ってこういう……ゲホゲホ……も゛のでじょ?」

(;-_-)「……むせてるね」

90 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 23:21:10.05 ID:pF2ZjsKN0
………………………………………


lw´‐ _‐ノv「そろそろドラゴンいってみる?」

(*-_-)「いいねー」

lw´*‐ _‐ノv「ならまとめて……と」

(;-_-)「待て、その理屈はおかしい」

lw;‐ _‐ノv「え?」

(;-_-)「っていうか、ふと思ったんだけど。
      花火はまとめて火をつけるものと勘違いしてない?」


lw;‐ _‐ノv「…………」


lw´*‐ _‐ノv「またまたぁー、私をからかおうたってそうはいかないよ」


91 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 23:24:18.16 ID:pF2ZjsKN0
(; _ )「ドラゴンだけは……ドラゴンだけは1コずつ楽しませてください……」

lw;‐ _‐ノv「……何も泣かなくても」

(; _ )「さっきの煙が目にしみたんだよ……」

lw;‐ _‐ノv「……」



lw;‐ _‐ノv「花火ってまとめて火をつけるものじゃないの?」

(; _ )「よい子を見れば分かるでしょ……危険なんだよ……」



lw´ _ ノv「……なんということだ」




93 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/27(水) 23:27:18.40 ID:pF2ZjsKN0
………………………………………


lw´*‐ _‐ノv「ドラゴンを1コずつ見るのもわるくなかったね」

(*-_-)「でしょ」

lw´‐ _‐ノv「次は」


lw;‐ _‐ノv「……へび玉」

(;-_-)「……」


lw;‐ _‐ノv「1袋5コ入りで50袋あるけど……これも1コずつ?」

(;-_-)「それはまとめてやろう。時間がかかりすぎるよ」

lw´*‐ _‐ノv「ん、そうだね」

(;-_-)「……」


(;-_-)「もしかして、まとめてやるために山買いしたの?
      爆竹も煙玉も線香花火も…………へび玉も」

lw;‐ _‐ノv「お願い聞かないで」

95 :(-_-)◆06NY4sFIG.:2008/08/27(水) 23:30:08.76 ID:pF2ZjsKN0
………………………………………


(;-_-)「うん……すごかったね」

lw´‐ _‐ノv「数が数だったからね。
       煙もすごかったね」

(;-_-)「生まれ落ちたものの量もね」

lw´‐ _‐ノv「これだけあれば何か作れそうだね」

(-_-)「灰だから無理だけど……これでふがし作れたらいいね」

lw´*‐ _‐ノv「あー、黒糖をよく使ってる駄菓子だね。
       うんうん、それいいね」

(*-_-)「さて、この灰を壊そうか」

lw´*‐ _‐ノv「ぶっちゃけるとそれが楽しみでした」



101 :(-_-)◆06NY4sFIG.:2008/08/28(木) 00:09:29.03 ID:jnCKQ+be0
………………………………………


lw´‐ _‐ノv「じゃあそろそろ線香花火といこうか」

(-_-)「線香花火っていつも最後だよね」

lw´‐ _‐ノv「あの侘しさが締めにちょうどいいからじゃない?」

(-_-)「たしかに」

lw´*‐ _‐ノv「んじゃまとめてっと」

(;-_-)「……いきなり1束ってアホの子ですか?」

lw´‐ _‐ノv「こうでもしないと減らないよ」

(;-_-)「そんなことしたらすぐに火が落ちるじゃん……あー」

lw´‐ャ‐ノv「むっふっふ〜♪」

(;-_-)「すぐ落ちるのに火をつけるなんて……」





lw´‐ャ‐ノv「〜♪」

(;-_-)「…………なんで落ちないの?」

102 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 00:14:34.02 ID:jnCKQ+be0
………………………………………


なんだかんだで全ての花火を消費できた。
そしてそれなりに楽しめた。
地味な花火で通夜みたいになると思ったが、シュールのバカげた花火利用のおかげだろうね。


爆竹は、1コをのぞく全てがぼくに投げられた。
煙玉は、1度に全て火をつけたため、屋外バルサンになった。
ドラゴンはぼくが哀願したおかげで1コずつたのしめた。
へび玉は灰をふみつぶすときの感触が心地よかった。

線香花火は……なぜかシュールの火がおちなかった。すごく不思議だ。


(;-_-)「あんな大量の線香花火で火が落ちなかったのか……不思議でならない」

lw´‐ _‐ノv「昔、特訓してね。
       まあ慣れだよ、慣れ」

(;-_-)「すごいね」

雑談しながらぼくらは後片付けをする。
シュールはゴミの片付けを、ぼくは花火で黒くした地面をタワシでこする作業を。
シュールも黒ずみを綺麗にするといったが、さすがに重労働なのでぼくがやることになった。
これは男の意地だ。

104 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 00:18:49.26 ID:jnCKQ+be0
引きこもりは無駄にプライドが高くて困るね。
他の引きこもりはどうなのかは知らないけど。

(;-_-)「これで……どう?」

lw´‐ _‐ノv「んー……いいんじゃない?
       暗くて微妙に分からないけど」

(;-_-)「ん」

lw´‐ _‐ノv「明日の昼に来てみて、目立つようなら私がやっておくから」

(;-_-)「うーん……じゃあお願いしようかな。
      昼はさすがに厳しいからね、ぼく」

lw´‐ _‐ノv「日の光を浴びると灰になっちゃうもんね」

(;-_-)「うん、そうだね」


lw´‐ _‐ノv「ところでこれからどうする?」

(-_-)「解散でいいんじゃない?」

lw´‐ _‐ノv「まだ早いよ?」

(-_-)「世間一般では充分深夜で通る時間帯でしょ」

106 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 00:24:04.26 ID:jnCKQ+be0
けっこう花火で遊んだからね。
今は大体9時くらいだし。
大体、というのは公園の時計で時間を知ったんじゃないから。
掃除の途中で消灯したので、それくらいだろうなあ、と思ったから。

lw´‐ _‐ノv「いつも日付が変わるあたりで解散してるじゃん」

(-_-)「まあ、そうだね」

lw´‐ _‐ノv「だからもう少しここにいない?」

(-_-)「でも……何をするの?」

lw´‐ _‐ノv「駄弁る」

(-_-)「好きだねー、キミも」

lw´*‐ _‐ノv「よせやい、照れるじゃないか」

(;-_-)「呆れてるんだよ」

lw´‐ _‐ノv「……大声で泣き叫ぶぞコラ」

(;-_-)「やめて。ぼくが冤罪で捕まっちゃう」

lw´‐ _‐ノv「なら駄弁ろうぜ!」

(;-_-)「はぁ……」

108 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 00:27:28.35 ID:jnCKQ+be0

グゥ…

lw´‐ _‐ノv「……」

(-_-)「……」

lw´‐ _‐ノv「そういえば晩ご飯食べてなかったなあ」

(-_-)「おなか減ったね」

lw´‐ _‐ノv「あれ?私のおなかが鳴ったと思ったんだけど?」

(-_-)「いや、ぼくのおなかも鳴ったよ。
     ダブって鳴ったんだね」

lw´‐ _‐ノv「これが噂のシンクロニシティか……!!」

(;-_-)「絶対違うよ」

109 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 00:31:05.14 ID:jnCKQ+be0
こんなこともあろうかと、と前置きしてシュールが弁当箱を2箱取り出した。
あらかじめ準備をしていたようだ。
中身は簡単に作れるものの代表、おにぎりだった。

そんなわけでぼくらは公園で少し遅い晩ご飯をとることにした。

lw´‐ _‐ノv「うまい?」

(-_-)「うん……おなかが減ってるからおいしく感じる」

lw´‐ _‐ノv「なんか引っかかるいい方だね」

(;-_-)「だってねぇ……作ってきてもらって何なんですが、いわせてもらいますよ。
      コレ、具が入ってませんよ」

lw´‐ _‐ノv「あ、それ大当たり」

(;-_-)「おみくじじゃないんだからさ。
      あと、これはどう見てもはずれじゃない?」

lw´‐ _‐ノv「日本人たるもの、白米をおかずに白米を食えずにどうする!?」

(;-_-)「……どうするったって、ねえ?」


まあ、いってみただけです。
作ってきてもらったのだから、ぼくに文句をいう資格はないのだろうし。
でもなぁ……。

112 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 00:34:22.24 ID:jnCKQ+be0
明らかに物足りなく感じてしまうのは贅沢な悩みなのだろうか。
シュールはぼくの顔をみて一言。

lw´‐ャ‐ノv「あとは外ればかりだからどんどん食いなしゃい」

具が入ってるのなら外れでもいいですよ。
とりあえずその言葉に従うことにする。



lw´‐ _‐ノv「さて、話は変わるけど……人とのつながりとは何だろうね?」

(;-_-)「唐突に変えるねえ」

lw´‐ _‐ノv「変化は常に唐突なものだよ。で、どう思う?」

(-_-)「んー、やっぱり家族とか友達のことじゃないの?……モグモグ」

lw´‐ _‐ノv「まあそうだね」

(;-*-)「すっぱあ!!」

lw´‐ _‐ノv「レモン……大外れだね。
       でもそれだと、私と君はつながってないことになるよ?」

113 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 00:37:47.92 ID:jnCKQ+be0
(;-_-)「うへあ……。
      つながってないってどうして?」

lw´‐ _‐ノv「はいはい、このお茶をのめい。
       だって家族でもなければ友達でもないじゃん。
       もちろん恋人でもないしね」

シュールは話しながらペットボトルのお茶を渡してきた。
ありがたく頂戴し、口の中のすっぱさを流す。

(-_-)「フゥ……ありがとう。
     たしかに友達といわれると疑問符が付くね。
    じゃあぼくらの関係って何さ?」

lw´‐ _‐ノv「うーん……縁?」

(-_-)「えにし?……モグモグ」


(;-Д-)「からああああっっ!!」

lw´‐ _‐ノv「からし……凶外れだね。
       ほら、お茶をのむのむ」

114 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 00:40:53.52 ID:jnCKQ+be0
lw;‐ _‐ノv「っていうかさっきからすごい外れ引いてるね」

(;-_-)「っていうか、からしはおかしいでしょ、からしは……。
      あー、ヒリヒリするー、あーあー」

lw;‐ _‐ノv「あーあーいい過ぎ」

(;-_-)「この方が楽なんだよ。
      で、縁だっけ?
      ずいぶん宗教的なものを持ってくるね。そっち方面の人?」

lw´‐ _‐ノv「私は一応無宗教だよ。
       縁は仏教から引用させてもらったけど。
       まあ4大宗教は1つの考え方としてありだと思うよ?」

(;-_-)「ふーん」

lw´‐ _‐ノv「ちょっと宗教を分かりやすく説明しとくね。
       宗教は平たくいってしまえば神任せってことなんだ。
       大抵、任せる内容は『現在以外の時間』の事柄だね」

(;-_-)「現在以外?」

lw´‐ _‐ノv「そ。未来なら明日1日から死後まで幅広くサポートするよ」

115 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 00:45:13.33 ID:jnCKQ+be0
lw´‐ _‐ノv「例えば……そうだね、イスラム教を例にだしてみるね。
       イスラム圏に旅行にいってガイドさんに、明日8時に起こしてくれ、といったとするよ。
       するとね、十中八九こう答えるよ。
       分かりました、インシャラー……ってね」

(-_-)「いんしゃらー?」

lw´‐ _‐ノv「イン ・ シャー ・ アッラーの略だね。
       『もしも神がそれを望んでおられたなら……』って意味だよ。
       つまりね、未来の事柄を神におしつけたってことなんだね」

(-_-)「おしつけたってことは……もし、翌日8時に起こしにこなかったら神のせいにするの?」

lw´‐ _‐ノv「お、理解がはやいね。そうだよ。
       ガイドさんは『神が8時にくることを望んでなかったから』とかいうだろうね」

lw´‐ _‐ノv「この考え方はキリスト教や仏教でも同じことなんだ。
       キリスト教では、イエス様が『明日のことまで思いなやむな』っていってるね。
       仏教では、お釈迦様が『過去を追うな。未来を願うな』うんぬんいってるしね」

(-_-)「スケジュール立てれないね」

lw´‐ _‐ノv「だね。
       ちなみにこれらの言葉は『未来は神に任せろ』というと同時に『今を精一杯生きろ』ってことなんよ。
       予測不能な未来にとらわれず、変えることのできない過去にとらわれず、いかに現在を過ごすか……それが宗教的考えの1つだよ。
       まあカルトみたいなのもあるから一概に言い切れないけどね」

119 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 01:07:05.34 ID:jnCKQ+be0
lw´‐ _‐ノv「で、『今を精一杯生きろ』ってわけだけど。
       ぶっちゃけ『今』なんて自分1人しか把握できないわけなんよ」

(-_-)「どういうこと?」

lw´‐ _‐ノv「そうだね……私たちは会話してるよね。
       私の言葉をきいてヒッキーは疑問を投げかけた。
       でもそれは『過去の私』の言葉をきいての疑問なんだよ」

(-_-)「そりゃあ、返答するってことは反応をかえすってことだからね」

lw´‐ _‐ノv「そうそう。
       つまり『過去の私』に接しているわけだね。
       会話だけじゃない、見るという動作でも同じこと。
       目で見て、脳に電気信号が届いて、やっと像を認識できる。
       そのわずかな時間差だけ過去を見てるということだよ」


lw´‐ _‐ノv「いってしまえば『今を精一杯生きる』ってことは『1人で今を過ごせ』ってことと変わらない。
       『今』を認識できるのは自分だけだからね」

(;-_-)「……うーん」

120 :(-_-)◆06NY4sFIG.:2008/08/28(木) 01:10:03.62 ID:jnCKQ+be0
lw´‐ _‐ノv「さて、そこで人とのつながりだ。
       今、私たちにつながりはあるだろうか?
       おそらく今はないだろうと思う」

lw´‐ _‐ノv「人とのつながりが『今』にないならどこにあるだろう?
       ……『今』にないなら、これまで積み重ねてきた『過去』にしかないだろうね。
       だって過去を見て人と触れあってるんだもの」


lw´‐ _‐ノv「だから縁なんだよ。
       『今を生きてる』私たちにはあずかり知らぬもの。
       それが私とヒッキー、人と人とのつながりじゃないのかな?」






(;-_-)「……最後に神のせいにしたね?」

lw´‐ャ‐ノv「それも1つの考え方だよ」

121 :(-_-)◆06NY4sFIG.:2008/08/28(木) 01:13:19.45 ID:jnCKQ+be0
(-_-)「ふむ……しかし……なるほどね」

シュールの考えをまるまる受け止めることはできないが、考え方は理解できた。
現在とは自分1人しか感じとれない。
だから人は過去をみて他者を感じている、ということだろう。


……過去か。

(-_-)「今回のシュールの持論……いままでより理解しやすかったよ」

lw´‐ _‐ノv「さっき、うなってなかった?」

(;-_-)「そりゃあなかなかぶっとんだ話だからね。
      難しかったけど、いままでと比較するとかんたんだったってことだよ」

lw´‐ _‐ノv「ふーん」

シュールは一通り話し終えたらしく、おにぎりに手を向ける。
個性のかけらもないそれらの1つを弁当からとりあげ、小さく一口かじる。
口に含んだ米をゆっくり咀嚼し、嚥下し、一言。

lw´*‐ _‐ノv「肉じゃが……当たりか」

(;-_-)「すっごくうらやましいのですが」

lw´*‐ャ‐ノv「むほほほほ〜」

122 :(-_-)◆06NY4sFIG.:2008/08/28(木) 01:16:39.48 ID:jnCKQ+be0
lw´‐ _‐ノv「ムグムグ……で、今回の話は理解しやすかったんだよね?」

(-_-)「うん。…………改めてきくなんてどうしたのさ?」

lw´‐ _‐ノv「えーとね……ムクムグ」

(;-_-)「食べおわってからでいいよ」

lw´‐ _‐ノv「さんきゅー。んじゃダッシュで」

lw´‐ 0‐ノv「あーん」

シュールは口を大きくあけ、手のひらに乗っているおにぎりをパクリ。
コンビニ弁当を袋にいれるように、残り全てを一気にたいらげる。

『女の子は人前で大口をあけることはない』
そう考えてた時期がぼくにもありました。

まあ、これがシュールだからね。
そう考えると、この動作も彼女にとっては自然な気がしてくる。

やがて、全てを飲みこんだシュールはぼくに尋ねてきた。


lw´‐ _‐ノv「ヒッキーは過去につらいこととかあった?」

123 :(-_-)◆06NY4sFIG.:2008/08/28(木) 01:20:10.43 ID:jnCKQ+be0
(;-_-)「また、突拍子もないことをきいてくるね」

lw´‐ _‐ノv「突拍子なくないよ」

(-_-)「どうしてそんなこと聞くの?」

lw´‐ _‐ノv「んーとね……今回の話、理解しやすかったんだしょ?
       理解できるってことは自分もそういうふうに考えたことがあるからなんだよ。
       私の話してることはあくまで考え方についてだからね」


lw´‐ _‐ノv「前に葦の話をしたよね。
       あれはね、いろんな物事の考え方が自分の中にあるかどうかについての話なんだよ。
       もし自分の中にその考え方がなかったら、困惑するのが普通なんだよ。
       学校で行列を習ったときのようにね」

(-_-)「行列が苦手なんですね、わかります」

lw´‐ _‐ノv「うっさい。
       で、困惑しないですんなり自分の中に入ったなら……その考え方はもとから自分の中にあったということ。
       今回の『人とのつながり』では過去 ・ 現在 ・ 未来について話した。
       ………………。
       ねえ、ヒッキー……」

124 :(-_-)◆06NY4sFIG.:2008/08/28(木) 01:23:34.52 ID:jnCKQ+be0
lw´‐ _‐ノv「君の中にはどんな葦があるの?
       未来を他者に任せる、という葦?
       それとも1人で今を過ごせ、という葦?
       それとも……過去を見て人と触れ合っている、という葦?」

(-_-)「……」

lw´‐ _‐ノv「1つ目なら問題ない。みんな誰かに頼って生きてるんだから。
       2つ目ならちょっと悲しいが問題ない。強引に接すれば孤独を紛らわせられるだろうから。
       3つ目なら…………うん」

(-_-)「3つ目ならなにさ?」

lw´‐ _‐ノv「……今を精一杯生きて、過去を見るくらいならいいんだよ。
       でもね、過去に縛られすぎて現在で動けなくなるくらいだと……とても悲しい。
       君の過去を知らないかぎり、私にはどうすることもできない」

(-_-)「……」


125 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 01:26:56.24 ID:jnCKQ+be0
(-_-)「全部」

lw;‐ _‐ノv「え?」

(-_-)「今あげた全ての葦があるよ。
     未来なんて何も考えてないから誰かに任せるしかないし。
     引きこもりだから1人で今を過ごしてきたし。
     過去に嫌なことがあったから、引きこもり生活を始めたんだし」

lw;‐ _‐ノv「え、え?
       引きこもり生活はなんとなく始めたんじゃないの?
       君、以前、そういってたじゃん」

(-_-)「以前?……ああ、初めて一緒にこの公園にきたときね。
     あれは『現在引きこもってる』理由であって、『昔、引きこもりを始めた』理由じゃないんだよ。
     引きこもるようになったのは別に理由があるよ」

lw;‐ _‐ノv「……」

(-_-)「まあ、そういうこと。
     未来は見えなくて、今も見てなくて、過去ばかり見て……。
     ぼくはそんなだめ人間ですよ〜」

lw;‐ _‐ノv「……過去に、縛られているの?」

(-_-)「おそらくね」

127 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 01:30:13.13 ID:jnCKQ+be0
他人事のようにいって自分を自虐する。
だって自他ともに認めるだめ人間だもの。

会話が途切れる。
他にやることもないから、ぼくたちは黙ってベンチに腰掛けている。
遠くからみれば恋人のようにみられそうで、近くでみれば他人のようにみられそうだ。


(-_-)「……シュール。何か話さないの?」

lw´‐ _‐ノv「……」

シュールは何も答えない。
彼女に目を向けると、熱心に考え事をしてるみたいだ。
もしかしなくても、ぼくのことについて考えているのだろう。

彼女と話すのは正直楽しい。
内容があまりにも常識から外れてるからだろうから、新鮮味がある。
でも、ぼくのことで悩むということは……多分、常識的なことを言おうとしてるんだろうな。

例えば、『相談に乗るよ』とか『元気出せ』とか。
『私がそばにいるよ』……は幻想の見過ぎか。

そういう言葉は聞きあきてる。
だから、そういう言葉をきく前にぼくは立ち去ることにする。

(-_-)「じゃ、そろそろ帰るから」

lw´‐ _‐ノv「……」

129 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 01:34:17.23 ID:jnCKQ+be0
一言だけ、そういってぼくは立ちあがる。
そしてシュールから離れるために足を動かす。

が、すぐに止まる。
後ろから服を引っぱられているからだ。

(;-_-)「はなして」

lw´‐ _‐ノv「……ヒッキー、今夜の問題だ」

(;-_-)「?」


lw´‐ _‐ノv「『人とのつながり』とはなんぞや?」


lw´‐ _‐ノv「よく考えて答えを出してほしい。
       できれば今日の私とは違う答えもみつけてほしい」

lw´‐ _‐ノv「じゃあ……おやすみ」


131 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 01:37:51.37 ID:jnCKQ+be0
シュールは服を掴んでいた手を離し、ぼくに別れの挨拶をした。
ぼくはその行動をみて、シュールに背を向けて公園から出る。

結局、シュールはシュールだった。
聞きあきた言葉じゃなくいつも通りのそれをぼくに送った。
それが少しだけ嬉しく、寂しい。
そして少しだけほっとしている自分がいる。

(-_-)「……何を考えてるんだろうね、シュールは」


独り言は夏の夜空に吸い込まれていく。
答えは決まっている、“ぼくには分からない”ことだ。
何を考えてるか分からないから、シュールとの話は楽しい。
むずかしくて知恵熱がでることがよくあるけど。

今日の問題は『人とのつながり』か。
これまたむずかしいのをきいてきたね。
つながり、ね。

引きこもりのぼくにきいてまともな答えが返ってくると思ってるのかねえ。


(-_-)「とりあえず考えておくかな」

139 : ◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 02:10:46.73 ID:jnCKQ+be0





 ぼくは生ぬるい風を感じながら思想の海に潜り込んだ。


   ―――――私は生ぬるい風を感じながら思想の海から浮かび上がった。






140 : ◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 02:14:27.53 ID:jnCKQ+be0
ヒッキーは帰った。
私はまだ公園のベンチに座っている。
もう遅い時間なので帰らなきゃいけないけど、今はまだ動く気になれない。


lw´‐ _‐ノv「……なにがあったんだろうねー?」


独り言は夏の夜空に吸い込まれていく。
答えは決まっている、“私が知りえない”ことだ。
何があったのか分からないから、ヒッキーとの接し方は困る。
まあ、楽しいから別にいいけど。

今日はなかなか重い話をきいたね。
詳しくきいてないから、何も知らないけど。
……過去、ね。

さて、明日からの身の振り方でも考えておくかな?


lw´‐ _‐ノv「あまり電波なことばかり口走ってたら引かれちゃうもんねえ」

頭のネジが取れてる子、と認識されると話をきいてもらえないときがあるからね。
人間関係を良好にするために、自らが発言を受け入れられる場を作らないとね。
とはいえ、私は人間関係のプロフェッショナルではない。
とりあえずやれるだけやってみようと思う。

141 :lw´‐ _‐ノv◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 02:19:53.92 ID:jnCKQ+be0
lw´‐ _‐ノv「ふぁいとー、おー」

力の入らない声で活を入れる。
一応、深夜なので小声で活を入れるしかないし……私の声が幼い子供のようなそれだというのも原因だろう。
近所迷惑にならないだけいいじゃん。

よし、気合を入れたところで帰ってるようか。
立ちあがり、帰る準備をする。



ジャリ…

  _
( ゚∀゚)「……」

lw´‐ _‐ノv「……」

音がしたので振り返ると、知らない男が公園内に入ってきてた。
男はまっすぐ私のほうに向かってくる。
……念のためだ、警戒くらいしておこうか。

142 :lw´‐ _‐ノv◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 02:23:07.71 ID:jnCKQ+be0
男が声をかけてきた。

  _
( ゚∀゚)「こんばんわ。君さ、今ヒマ?」

lw´‐ _‐ノv「……さようならー」
  _
(;゚∀゚)「いやいや、いきなり会話終わらせようとしないで!」

lw´‐ _‐ノv「知らない人についていっちゃだめだって姉ちんにいわれてるから」
  _
(;゚∀゚)「ちょっとききたいことがあるんだってば!小森のことについてだから!!」

lw´‐ _‐ノv「む?」

小森……ヒッキーのことか。
となるとこの男はヒッキーの知り合いかな?
私の疑問を感じとったのか、男は自己紹介を始めた。
  _
( ゚∀゚)「おっとすまん。
     申し遅れたが、俺の名前は長岡 丈治(ながおか じょうじ)。
     皆からジョルジュって呼ばれてるんでそう呼んでくれ」

144 :lw´‐ _‐ノv◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 02:26:48.37 ID:jnCKQ+be0
lw´‐ _‐ノv「……何ゆえジョルジュ?」
  _
( ゚∀゚)「英語のジョージをフランス語にするとジョルジュらしいよ。
     なんでフランス語なのかはあだ名つけた奴にいってくれ」

lw´‐ _‐ノv「ほうほう。
       私は砂尾 示由流。
       シュールって呼ばれてるから、君もそう呼んでくれると嬉しい」
  _
( ゚∀゚)「シュールね」

lw´‐ _‐ノv「そうだよジョルジュ」


  _
( ゚∀゚)「じゃあさっそくシュールに質問したいんだが」

lw´‐ _‐ノv「おう、ばっちこーい」
  _
( ゚∀゚)「お前ってあいつの恋人?」

lw´‐ _‐ノv「ううん。全然違うよ」
  _
(* ゚∀゚)「お?
      なら俺と付き合わない?
      顔はタイプだし、胸は大きいし、アニメ声だし、もろストライクゾーンなんだよ」

lw´‐ャ‐ノv「……他を当たれナンパ野郎。
       あとアニメ声には触れるな、ぶちころすぞ」

145 :lw´‐ _‐ノv◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 02:30:29.75 ID:jnCKQ+be0
  _
(  ∀ )「……ごめんなさい」

lw´‐ _‐ノv「んじゃ、私は帰るから」
  _
(;゚∀゚)「ちょ、ちょっとまって!」

lw´‐ _‐ノv「……なにさ」
  _
( ゚∀゚)「恋人じゃないなら、お前と小森は友達なんだよな。
     今、あいつはどんなかんじなんだ?」

lw´‐ _‐ノv「……」

さて困った。
なんと答えるべきか。
私とヒッキーは友達と呼べるほど濃い関係ではない。
そしてどんなかんじかといわれても、うまく言い表せる自信がない。
……とりあえず思ったことを正直に答えようか。

lw´‐ _‐ノv「私たちは友達ではないよ。ただのクラスメイトだよ。
       あと、どんなかんじかってきかれても……うーん、まあ、普通なんじゃない?」
  _
( ゚∀゚)「……」

lw´‐ _‐ノv「漠然とした答えでごめんね。
       昔の彼を知らないから、今どんなかんじかうまく言い表せないんだ。
       ちゃんと話をしたのも最近からだからね。
       ……そろそろ帰るね」

147 :lw´‐ _‐ノv◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 02:33:49.19 ID:jnCKQ+be0
  _
( ゚∀゚)「待て」

lw´‐ _‐ノv「……何度呼び止める気なんだよ」
  _
( ゚∀゚)「すまんすまん」

lw´‐ _‐ノv「で、どうしたよ?」
  _
( ゚∀゚)「いやな、お前は知らないだろうから一応いっておく」



  _
( ゚∀゚)「俺もあいつのクラスメイトなんだぜ?」

lw;‐ _‐ノv「……む」
  _
( ゚∀゚)「クラスメイトの顔は全員覚えてたつもりだったんだがな。
     でもお前の顔は忘れてたみたいだよ、ごめんごめん」

lw;‐ _‐ノv「……」


lw;‐ _‐ノv「そろそろ帰るね、じゃあねー」
  _
( ゚∀゚)「まてや」

148 :lw´‐ _‐ノv◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 02:38:06.39 ID:jnCKQ+be0
肩をつかまれる。
ふむ、これは俗にいうピンチというやつか?
  _
( ゚∀゚)「お前、何者だよ?」

lw;‐ _‐ノv「……」
  _
( ゚∀゚)「恋人ではない、友達ではない、クラスメイトですらない。
     そんでもって小森に近づいてる。
     お前、あいつに何するつもりなんだよ?」

lw;‐ _‐ノv「……」
  _
( ゚∀゚)「あいつを傷つけたら、例え女でも許さねえぞ」

lw;‐ _‐ノv「……」


lw´‐ _‐ノv「……まあ私が何者かはどうでもいいことだけど。
       傷つくかどうかは彼次第だよ」
  _
(# ゚∀゚)「……」

lw´‐ _‐ノv「何か気に食わないことでもあるなら答えるから質問してよ。
       だからそんなに睨まないでよ」

149 :lw´‐ _‐ノv◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 02:42:28.61 ID:jnCKQ+be0
  _
( ゚∀゚)「ああ……すまんすまん。
     じゃあ1つ目だ。何者かはどうでもいい、とはどうしてだ?」

lw´‐ _‐ノv「それは些事だから。
       例えば私が幽霊だとしたらジョルジュはどうするの?」
  _
( ゚∀゚)「さわれる幽霊なんていないだろうが……」

lw´‐ _‐ノv「……本当にそう思う?
       それは生きてる人が勝手にそう思ってるだけかもよ?
       そもそも死んだことのない人間が、どうして死んだ人間の性質を知ってるわけ?」
  _
(; ゚∀゚)「え……?ちょ、それってマジで?」

lw´‐ャ‐ノv「むっふっふ〜」
  _
(; ゚∀゚)「……」

lw´‐ _‐ノv「まあ、私がどんな奴だろうが小森くんへの対応は変わらないよ。
       それだけはマジだから」
  _
(;゚∀゚)「そ、そうか……そうだな。お前がどういうやつかなんてどうでもいいな!」

lw´‐ _‐ノv「うんうん。
       で、他の質問は?
       1つ目っていったからには2つ目もあるんでしょ?」

152 :lw´‐ _‐ノv◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 02:47:04.32 ID:jnCKQ+be0
・・
  _
( ゚∀゚)「あ、ああ。
     お前は何をするつもりなんだ?
     あいつを傷つけることなのか?」

lw´‐ _‐ノv「暴力は振るわないよ。
       あくまで話をするだけだから」

lw´‐ _‐ノv「ただし、小森くんの心を傷つけてしまうかもしれない。
       私がやろうとしているのはそういうこと。
       傷つくかどうかは本人にしか分からないことだから、私にも分からないけど」
  _
( ゚∀゚)「……詳しく話せ」

lw´‐ _‐ノv「しかたがないなぁ」

ジョルジュに近づき、内緒話をするように耳打ちする。
深夜というのは静かなもので、そんなに大きくない音でもよく目立つ。
おそらくないだろうが、万が一、ヒッキーにきかれたら明日からやりにくくなる。

……ごにょごにょっと。

lw´‐ _‐ノv「というわけ」

157 :lw´‐ _‐ノv◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 03:13:31.01 ID:jnCKQ+be0
  _
(# ゚∀゚)「お前、最低じゃね?」

耳打ちが終わり、体を離して最初にきいた言葉がそれだった。
まあそれっぽいこと言うだろうな、とは思っていたけど。
しかし『最低』ときたか………『最低』ねえ……。

lw´‐ _‐ノv「別に最低でもいいよ」
  _
(# ゚∀゚)「お前がどう思おうが小森にとってはよくないだろうが。
     なんだよ、それ。
      あいつを傷つけてそんな楽しいのかよ?」

lw´‐ _‐ノv「……傷つくかどうかは本人にしか分からないってば。
       もしかしたら傷つかないかもしれない。
       あと、私は人を傷つけて楽しいって感じる人種じゃないよ」
  _
(# ゚∀゚)「普通傷つくだろ、そんなことされたらよ。
     傷口広まる前に今すぐあいつから離れろよ!」

思わず溜息をつく。
そしてジョルジュを見て言ってやった。


lw´‐ _‐ノv「OK、分かったよ」

159 :lw´‐ _‐ノv◆06NY4sFIG.:2008/08/28(木) 03:18:41.55 ID:jnCKQ+be0
lw´‐ _‐ノv「そのかわりさ、明日から私の代わりをしてくれない?」
  _
(# ゚∀゚)「いやに決まってるだろ」

lw´‐ _‐ノv「じゃあ私が去った後、小森くんは1人になっちゃうよ?」
  _
( ゚∀゚)「……」

lw´‐ _‐ノv「この場合どうすれば最善なんだろうね?」
  _
( ゚∀゚)「……」

lw´‐ _‐ノv「答えてよ」
  _
( ゚∀゚)「……お前が知る必要はねえよ」

ふむふむ、ふむ。
つまり私……私に限らずその他大勢かもしれないが……に知られたくないと。
ジョルジュの態度から彼がどんなアクションをするのか考える。


…………ふむ。
1つ、もっとも実行されそうなアクションを思い浮かべる。
それを実行されるとヒッキーのためにならないなあ。

どれ、ちょっと切り口を変えてみるか。

160 :lw´‐ _‐ノv◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 03:23:00.88 ID:jnCKQ+be0
lw´‐ _‐ノv「あのね、1人っていうのはなかなか寂しいものだよ」
  _
(; ゚∀゚)「な、なんだよ?」

私の雰囲気からなにかを察したのか、顔をしかめて身構えた。
でも、逃げる様子を見せなかったのでかまわず聞くことにする。

lw´‐ _‐ノv「君はそれを理解してるの?」
  _
( ゚∀゚)「それくらい分かってる」

へえ、分かってるの。
じゃあ続けて質問するとしよう。

lw´‐ _‐ノv「じゃあなんで小森くんについてあげないのさ?」

ジョルジュはなにも言わない。
ただ、目を見開いて私の体を視線で刺してくる……穴あきチーズになるからそんなに見るなよ。

lw´‐ _‐ノv「初めて小森くんに会ったとき、彼は1人でいられればいいって言われたけどさ……。
       それでも君は小森くんの友達なんでしょ?
       なんで小森くんを1人にするのさ?」
  _
(# ゚∀゚)「……あいつが1人でいたいっつったんだよ。
     事情も知らない奴が文句つけんな」

やっぱりジョルジュも言われてたか。
となると……なるほど、電波まみれの私の頭も今回は働いてくれたわけか。

つまり、ジョルジュのアクションは『なにもしない』だ。

161 :lw´‐ _‐ノv◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 03:27:48.66 ID:jnCKQ+be0
ははは、そんな奴に『最低』といわれたのか。
笑えるね。
心の内で大爆笑する。
ついでに心の外でも大爆笑する。

lw´‐ャ‐ノv「あはははははははははははwww」
  _
(# ゚∀゚)「……何がおかしいんだよ?」

lw´‐ャ‐ノv「だって、ねえ?
       文句つけんなって、ねえ?
       バカも休み休み言ってよ、……プッ…あはっ、ははははははは!」
  _
(# ゚∀゚)「何がバカだってんだ!?」



lw´‐ _‐ノv「……事情を知ってても何もしない奴にいわれたくない。
       バカだからそういってるのが分からないの?」
  _
(# ゚∀゚)「あ?」

ジョルジュはご立腹の様子。
でも私だって彼の態度に苛立ちを覚えてる。
なので言葉のナイフでえぐってやろうと思う。

162 :lw´‐ _‐ノv◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 03:32:16.54 ID:jnCKQ+be0
lw´‐ _‐ノv「人に近づかないでといわれたら離れていくの?
       それが友達というものなの?
       ……なるほど、それも1つの考え方だね。
       私はそんなのお断りだけどね」
  _
(; ゚∀゚)「っ」

lw´‐ _‐ノv「友達が苦しんでるのなら力になってあげなよ。
       それができないのなら君は私とそんなに変わらないと思うよ。
       いってる意味分かる?
       最低だってことだよ」
  _
(  ∀ )「……っ」

lw´‐ _‐ノv「そんなんでよく人に説教できるね?
       人間は矛盾を孕む生き物だけど、人にいい聞かせるときにダブルスタンダートはよくない。
       自分は小森くんから離れて、私が近づくと友達面して近づくなとな?
       私を笑い殺す気なの?」
  _
(  ∀ )「……」

……おっと、やりすぎたかな?
形だけでも謝っておくとしよう。

lw´‐ _‐ノv「ごめん、いいすぎた」
  _
(  ∀ )「……謝らなくていい。
     本当のことだからな」

lw´‐ _‐ノv「うん、そうだね」

165 :lw´‐ _‐ノv◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 03:36:49.80 ID:jnCKQ+be0
  _
( ゚∀゚)「お前……そこは慰めるところだろ。
     なに肯定してるんだよ?」

lw´‐ _‐ノv「否定したら嘘になっちゃうじゃんか」
  _
( ゚∀゚)「それもそうか」

lw´‐ _‐ノv「うんうん」




lw´‐ _‐ノv「だからさ。まあ、今のところは現状維持でいいよね?」
  _
( ゚∀゚)「んー。どうしたもんかね?」

あ、また悩みだしそうだね。
これ以上はメンドイから帰るとするかな。

lw´‐ _‐ノv「じゃ、そういうことで」

  _
( ゚∀゚)「だから待てってば。まだなんにも解決してねえよ」


逃げ切れなかった。
うーん、ある程度本心を話さないと帰してくれそうにないね。

167 :lw´‐ _‐ノv◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 03:41:13.90 ID:jnCKQ+be0
lw´‐ _‐ノv「私のやってることって悪いことなの?」
  _
( ゚∀゚)「人を傷つけるのは悪いことだろ」

lw´‐ _‐ノv「人を傷つけるのは普通の交友関係でも起こりうることでしょ?」
  _
( ゚∀゚)「それをなるべく避けるのも交友関係の鉄則だろ?」

lw´‐ _‐ノv「……なるほど、君は優しいんだね」
  _
(* ゚∀゚)「だろー?」

調子に乗るのはいただけないけどね。

lw´‐ _‐ノv「……それでもずっと1人のときを過ごしていれば構ってほしくなるものだよ。
       傷つけるかどうかはその次でいいんだよ」
  _
( ゚∀゚)「それはストーカーの言い分じゃね?」

lw´‐ _‐ノv「それなら小森くんが私を拒絶するでしょ。
       もし傷つけて拒絶されたらおとなしく去るよ。
       どうせそのときになったら私も去る時期だろうしね」
  _
( ゚∀゚)「それは離婚する老夫婦の言い分じゃね?」

……さっきからなかなかいってくれるね。
もしかして、ジョルジュって人を傷つけて楽しいって感じる人種なの?

心の内でひっそりと文句をいう。外にはださない。

169 :lw´‐ _‐ノv◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 03:45:54.02 ID:jnCKQ+be0
そして私は語り続ける。

lw´‐ _‐ノv「小森くんが引きこもりじゃなかったら、私は彼に会うことはなかった。
       彼が1人だったからこそ、私は彼に会おうと思った。
       放っておけなかったんだよ」

lw´‐ _‐ノv「その考えがどこからきたものか分からない。
       1人のつらさを体験したことがあるから同情したのかもしれない。
       私は人付き合いがヘタだから、小森くんと傷を舐めあう間柄になりたかったかもしれない。
       引きこもりを調べるためのいいサンプルと思ったのかもしれないし、もしかしたら恋仲になりたかったかもしれない。
       …………真意は私にすら分からんよ」
  _
( ゚∀゚)「……」

lw´‐ _‐ノv「それでも放っておくことなんてできなかった。
       だから私にやれることをやってるだけだよ。
       ユー、アンダースタン?」
  _
( ゚∀゚)「……」

心の内で文句をいう。
バカの子には理解できなかったの?と。
ついでに心の外でも文句をいう。

lw´‐ _‐ノv「バカの子には理解できなかったかー?」
  _
(; ゚∀゚)「いやいや、理解できてるから!」

171 :lw´‐ _‐ノv◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 03:50:28.90 ID:jnCKQ+be0
  _
( ゚∀゚)「いや、まあ、なんというか……お前は頑張ってくれてるんだな」

lw´‐ _‐ノv「さあ?私はやりたいようにやってるだけだよ」

だから君にも『最低』っていわれたわけだし。
そう考えていたところに思わぬ言葉が出てきた。
  _
( ゚∀゚)「まあそういうことならお前に任せておけるわ。
     あいつを頼むぜ」

……GOサインをいただけた。
やっと納得してくれたということだ。
ともあれサンクス。
私もジョルジュにエールを送っておこう。

lw´‐ _‐ノv「君も頑張りなよ。
       私ももうすぐ去らなきゃいけないんだからさ」

  _
( ゚∀゚)「……ああ。お前が消えたら俺がしっかりカバーしてやるよ」

173 :lw´‐ _‐ノv◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 03:54:48.98 ID:jnCKQ+be0
  _
(; ゚∀゚)「ところでさ、どこに去るんだ?」

lw´‐ _‐ノv「ヒント、お盆」
  _
(* ゚∀゚)「いとこに会いに遠いところから遊びに来たってことですね、わかります!」

lw´‐ _‐ノv「??もちろんそうだけど……力入れて確認するほどのものかい?」
  _
(; ゚∀゚)(さっき幽霊うんぬんいってたじゃねえか……)

lw´‐ _‐ノv「なにか言った?」
  _
(; ゚∀゚)「ううん、なにも」



lw´‐ _‐ノv「さて、さすがにもう遅いからそろそろ帰るね」
  _
( ゚∀゚)「おう、じゃあな」

lw´‐ャ‐ノv「夜道には気をつけろよー」
  _
(; ゚∀゚)「お前がいうと本気で怖いから」

lw´‐ _‐ノv「?」

177 :lw´‐ _‐ノv◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 04:20:32.22 ID:jnCKQ+be0






さて、どうなることやら。









178 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 04:25:00.95 ID:jnCKQ+be0
―――――8月15日


(-_-)「……」


(-_-)「……夏という季節はどうして鬱になりやすいのだろうか?」


(-_-)「……それはおそらく楽しい過去があったからにほかならない」


(-_-)「……過去と現実とのギャップはときに人を傷つける」


(-_-)「……例えばカーテンをあけると祭りの光がここまで来てる」


(-_-)「……鬱だ死のう」


lw;‐ _‐ノv「こらこら」

180 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 04:29:59.02 ID:jnCKQ+be0
lw;‐ _‐ノv「いきなり何いい出すのかな君は?
       死ぬなら私のいないところで死んでくれ。
       夢に出てくるでしょうが」

(-_-)「……シュールもなかなかひどいね」

lw´‐ _‐ノv「だって私、自分本位な人間ですから」

(-_-)「だいたい君が出ていけばいいじゃん」

lw´‐ _‐ノv「だって私、構ってちゃんな人間ですから」

(-_-)「……ひどいね」

lw´‐ _‐ノv「そうだね」


(-_-)「で、今日は何しに?」

lw´‐ _‐ノv「遊びにきた」

(-_-)「今日は外に出ないから帰ってくれない?」

lw;‐ _‐ノv「……祭りごときに何びびってんの?」

182 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 04:34:12.39 ID:jnCKQ+be0
(#-_-)「うるさい!君に何が分かる?!
      子供の楽しそうな声がどれだけぼくを蝕むと思ってるの?!」

lw´‐ _‐ノv「そんなの知らんよ。
       外のことなんかに関わらんからね。
       私が今、関わるべきなのはヒッキーだけだよ」

(;-_-)「……あぅ」

lw´‐ _‐ノv「ここで話をする?」

(;-_-)「……公園にいこう」

lw´‐ _‐ノv「外に出ないんじゃなかったの?」

(;-_-)「気が変わったんだよ。
      ここに居座られても困るしね」

lw´‐ _‐ノv「把握した」

183 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 04:38:37.63 ID:jnCKQ+be0
そうしてぼくらは公園へ向かう。
ここのところ毎日いってるなあ、とふと思う。
それもこれもシュールのせいだ。
彼女に引っぱられて、その手を振り払うこともできなくて……。
気がつけば、夜の散歩が楽しく思えてきた。

しかし、同時に言い知れぬ違和感を感じてた。

(-_-)「……」

lw´‐ _‐ノv「……」

(-_-)「……」

lw´‐ _‐ノv「……」


キャーキャー……

(;-_-)そ ビクッ

lw;‐ _‐ノv「……あのねえ」

(;-_-)「だ、だって怖いものは怖いんだよ……」

lw;‐ _‐ノv「声がきこえた程度でビビるなってば。
       だいたい、声出してる人は私たちを見てすらいないんだから」

(;-_-)「むう……」

185 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 04:43:41.58 ID:jnCKQ+be0
lw´‐ _‐ノv「まあいいや。
       ほら、君の大好きな公園のベンチですよー」

(;-_-)「いや、大好きじゃないから」

lw´‐ _‐ノv「でもいつもおんなじところに座ってるじゃん」

(;-_-)「習慣ですから」

lw´‐ _‐ノv「ふーん…………ん?」

(;-_-)「ど、どうしたの?」

lw´‐ _‐ノv「……いや、なんでもない」

(;-_-)「?」


lw´‐ _‐ノv「さあ駄弁ろうぜ!!」

(;-_-)「……どうしてこんなに急な方向転換するんだろうね?」

lw´‐ _‐ノv「しらん」

(;-_-)「自分のことでしょうが!」

lw´‐ャ‐ノv「ナイスツッコミ」

(;-_-)「……はぁ」

187 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 04:48:04.78 ID:jnCKQ+be0
(-_-)「で、今日は何を話すの?」

lw´‐ _‐ノv「そうだね……。
       いままでエセ哲学的なやつばっかり話してたから、別のことを話そうか。
       例えば……」

(-_-)「例えば?」

lw´‐ _‐ノv「暴露話」

(;-_-)「ばくろ……」

lw´‐ャ‐ノv「……猥談のほうがよかった?」

(;-_-)「……」


(*-_-)「ぜひ!」

lw´‐ _‐ノv「……するわけないでしょうが。
       こちとら花も恥らう乙女なのですよ」

(;-_-)「……絶望した」

lw´‐ャ‐ノv「はっはっは。
       男を磨いて出直せい」

(;-_-)「……精進します」

189 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 04:52:37.87 ID:jnCKQ+be0
(-_-)「で、暴露話って……何を暴露するの?」

lw´‐ _‐ノv「お互いに秘密とか過去とかいろいろあるでしょ?
       それを思いつく限り口に出そう」

(;-_-)「……膨大な量になりそうだね」

lw´‐ャ‐ノv「今夜は寝かさないぜえ?」

それを本来の意味できいてみたいものだよ……。

lw´‐ _‐ノv「というわけでヒッキー、話せ」

(;-_-)「いきなりぼくですか?」

lw´‐ _‐ノv「だっていつも私ばっか話してるじゃん。
       たまには君から話してよ」

(;-_-)「う、うん。わかった」



(-_-)「うーん……。
     といっても秘密らしい秘密はないかな?
     まあ、過去は17年分あるけどさ」

lw´‐ _‐ノv「オーケー、じゃあ思い出話に花を咲かそう」

191 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 04:57:23.58 ID:jnCKQ+be0
(-_-)「えーと……そうだね。
     よくこの公園で友達や妹と遊んだもんだよ。
     そこの木の下にタイムカプセルなんかも埋めたね」

lw´*‐ _‐ノv「よし、それを掘り起こそう」

(;-_-)「こらこら」

lw´‐ _‐ノv「…………で、妹さんは今なにしてるの?」

(-_-)「……」



(-_-)「死んだよ」

lw´‐ _‐ノv「……」

(-_-)「去年の2月あたりに交通事故でね」

lw´‐ _‐ノv「……そう」



192 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 05:01:39.93 ID:jnCKQ+be0
lw´‐ _‐ノv「なんか一気に暗くなったね」

(-_-)「そりゃ明るい話題じゃないからね」

lw´‐ _‐ノv「あー。それもそうだけど……そうじゃないよ」

(-_-)「??」


lw´‐ _‐ノv「話だけじゃなく君の雰囲気も、だよ。
       もう過ぎてしまったことに落ち込みすぎだと個人的に思ってね。
       半年も経ってるんだし、そこまで雰囲気が変わるものなんだ?」

(-_-)「……」

lw´‐ _‐ノv「妹さんのこと、好きだったんだ?」

(-_-)「………かもしれないね。
     少なくとも大切にはしてた。
     うちは片親だから、ぼくが妹の面倒をみなきゃいけなかったからね」

lw´‐ _‐ノv「ふーん」


(-_-)「でもぼくが目を離したばっかりにあいつは……」

lw´‐ _‐ノv「愚痴りたいなら愚痴ればいいよ」

(-_-)「ありがとう」

195 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 05:06:01.37 ID:jnCKQ+be0
(-_-)「妹は今年高校に入学するはずだったんだ。
     高校はぼくと違うけどね。
     で、久しぶりに時間ができた妹と一緒に買い物に出かけたんだ」

(-_-)「そして少し目を離した隙に妹が消えてた。
     ウインドショッピング大好きっ子だったからね。
     ぼくはしょうがないなあ、と思いながら探したんだよ」

lw´‐ _‐ノv「……」

( _ )「……近くで玉つき事故が起きた。     
     けが人が出た。
     いくつかの車が近くの建物に突っ込んだ。
      妹はそれで……」

lw´‐ _‐ノv「……」

196 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 05:10:29.06 ID:jnCKQ+be0
( _ )「……今でも思うんだ。
      あのとき買い物にいかなければ、てね。
      あいつとは一番、一緒のじかんを過ごしたんだけどね……そんな妹を殺してしまった、てね」

lw´‐ _‐ノv「もしかしてそれが引きこもりの原因?」

( _ )「そうかな?…………そうかもね」

( _ )「妹が死んでからね……何もする気が起きなくなったんだよ。
     学校にいっても違和感ばかりがつきまとうんだ。
     おそらくショックだったんだろうな。
     もしかしたら大切なものがふとした事で壊れるから、そういうものを作りたくなくなったかもしれない。
     それとも……妹を殺したことに罪を感じてるのかもしれないね」

( _ )「……どれが答えかよく分からないうちに引きこもってた」

lw´‐ _‐ノv「ふーん」


( _ )「……これで終わり」

lw´‐ _‐ノv「乙」



lw´‐ _‐ノv「といいたいところだけど1つアドバイスしとくよ」

198 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 05:14:58.14 ID:jnCKQ+be0
( _ )「……?」

lw´‐ _‐ノv「そんなにツライなら忘れればいいのに」

(;-_-)「な……?」



(#-_-)「何言ってるの?
      そんなことできるわけないじゃん」

lw´‐ _‐ノv「人はいつか死ぬ。
       生きてる人がやるべきことは死人を引きずることじゃない、弔うことだよ。
       引きずれば死んだ人が傷つく。
       そんなことするくらいなら忘れたほうがいい」

(#-_-)「……なんでそんなこと言われなきゃいけないの?」

lw´‐ _‐ノv「……なんでだろうね?
       私もよく分からない」

(#-_-)「ふざけないで!」

lw´‐ _‐ノv「……」

( _ )「……もういいよ…………もうほっといてよ…」

201 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 05:19:54.79 ID:jnCKQ+be0
lw´‐ _‐ノv「それはできないよ」

(#-_-)「いいかげんにしてよ!
      うっとうしいいいだよ!!」


lw´‐ _‐ノv「……」


lw´‐ _‐ノv「そう」

(;-_-)「……あ」

友達の1人が頭をよぎる。
……また、やってしまった。

彼女は口を開く。


lw´‐ _‐ノv「そうやってジョルジュも拒絶したわけ?」

(;-_-)「っ!!」


(;-_-)「ど、どうしてジョルジュのことを?」

lw´‐ャ‐ノv「どうしてだろうね?」

203 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 05:24:29.08 ID:jnCKQ+be0
lw´‐ _‐ノv「さて、私も暴露するか」

(;-_-)「……」

lw´‐ _‐ノv「実は私も目的があって君に近づいたわけだ。
       その目的はね……」



lw´‐ _‐ノv「君に憑くことだったりするんだよね」



(;-_-)「…………へ?」



lw´‐ _‐ノv「意味が分からない?
       君にとり憑くことだっていってるの」

(;-_-)「え、え、?」

彼女の表情は変わらず、しかしその能面が微妙に変わったような気がした。
……なにそれ、イミワカンナイヨ?

204 :(-_-)◆06NY4sFIG.:2008/08/28(木) 05:28:45.57 ID:jnCKQ+be0
lw´‐ _‐ノv「君って1人じゃん。
       そういう人間にはとり憑きやすいんだよねー。
       今に囚われてないしね。
       だいたい私たちの出会い方も異常だったと思わない?」

(;-_-)「だ、だって君、触れられるでしょ?」

lw´‐ _‐ノv「触れられるから生きている?
       君は私を笑い殺す気なの?
       生きてる人間に死者の常識なんてわかるはずないでしょ?」


(;-_-)「……」


lw´‐ャ‐ノv「ねえ……妹さんの死は悲しい?
        今でも痛い?
        そう感じていながらなんで君は生きてるの?
        なんで君は死なないの?
        死にたいなら今すぐ連れていってあげるよ?フフ……ムフフフフ」

(;-_-)「う……うわああああああああああああああああああああああああああああっっ!!!!!!」


ぼくは情けない悲鳴をあげながらシュールから離れた。
シュールと数メートルの距離をあけたが、まだ足りない。
彼女の微笑みが黄泉への誘いのようで、一目散に公園から抜け出した。
彼女との距離が十数メートルから数十メートルとなり、無我夢中で家まで走った。

206 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 05:33:44.80 ID:jnCKQ+be0
―――――そんなわけで私は暴露した。


     「う……うわああああああああああああああああああああああああああああっっ!!!!!!」


したら彼は悲鳴をあげ、一目散に私から逃げた。
……そんなに驚かなくてもいいじゃない。


lw´‐ _‐ノv「……」


lw´‐ _‐ノv「……ジョルジュが隠れて私を見てるのはワカッテマス」


ガサッ

  _
(# ゚∀゚)「……」

lw´‐ _‐ノv「なにもあんなにビビらなくていいのにねー」

208 :lw´‐ _‐ノv◆06NY4sFIG.:2008/08/28(木) 05:37:17.35 ID:jnCKQ+be0
  _
(# ゚∀゚)「おい」

lw´‐ _‐ノv「ん?」


パンッ、とはじける音がきこえた。
つづいて熱を頬にかんじた。
今の衝撃で視界が明後日をむいてたので元に戻す。
ジョルジュの手は握り締められてなかった。

平手打ちくらいならまあ……許そう。

lw´*‐ _‐ノv「気が済んだ?
        なら早くヒッキーのもとにいってあげなよ。
       彼、今頃ビクビクしてるだろうからさ」
  _
(# ゚∀゚)「いろいろききてえんだよ。
      これがお前のいってたことなのか?」

lw´*‐ _‐ノv「けっこう効果的でしょ?」
  _
(# ゚∀゚)「ふざけるなよ。
      なにが『ショック療法して外に出れるようにする』だよ?
      これじゃあますます引きこもるじゃねえか!?」

lw´*‐ _‐ノv「そこをどうにかするのがジョルジュの仕事でしょ?」

209 :lw´‐ _‐ノv◆06NY4sFIG.:2008/08/28(木) 05:40:41.77 ID:jnCKQ+be0
 

パーン……


lw´*‐ _‐ノv「男女を平等に扱ってくれるのは嬉しいけどあんまり叩かないで。
        家の人にいいわけができなくなるでしょうが」
  _
(# ゚∀゚)「うるせえよ」


  _
(  ∀ )「お前なら何とかしてくれる、と思った俺がバカだったよ……」

lw´*‐ _‐ノv「そうだね、バカだね」
  _
(# ゚∀゚)「……」

lw´*‐ _‐ノv「……今日、理由きいて理解できたよ。
        ヒッキーにはああするしかないよ。
        引きこもりから脱するには、誰かに頼らざるを得ない環境を作るしかないよ」
  _
(# ゚∀゚)「……」

lw´*‐ _‐ノv「私は拒絶された。
        だから宣言通りおとなしく去るよ。
        そろそろそういう時期だからね」
  _
( ゚∀゚)「……」

214 :lw´‐ _‐ノv◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 06:20:48.13 ID:jnCKQ+be0
lw´*‐ _‐ノv「私はもうヒッキーに頼られる立場じゃない。
        ジョルジュが頼られるべきなんだ。
        友達なんだからできるでしょ?」
  _
(; ゚∀゚)「……」

lw´*‐ _‐ノv「返事してよ」
  _
(; ゚∀゚)「できる、と答えたいが。
     正直分からない。
     俺だって拒絶されてるんだからな……」

lw#‐ _‐ノv


パーン……

  _
(* ∀ )「……いてぇ」

lw#‐ _‐ノv「強引でいい。
       追い返されたら何度も特攻しろ。
       それでもだめなら忍び込んででも接触しろ」

lw´ _ ノv「じゃなきゃ……なんでヒッキーを遠ざけたのか分からなくなるじゃないか」
  _
(; ゚∀゚)「……」

215 :lw´‐ _‐ノv◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 06:26:27.10 ID:jnCKQ+be0
lw´‐ _‐ノv「ヒッキーの友達が現れて嬉しかったんだよ。
       これで彼は1人じゃなくなると思ったから。
       1人は寂しいから……でも私だけじゃどうしていいか分からなかったから……」
  _
(; ゚∀゚)「……お前」

lw´‐ _‐ノv「だから最初は彼にとり憑こうと思ってた。
       でも君が現れたからわざと怖がらせてしてヒッキーを遠ざけた。
       私みたいなのと関わるより友達と関わったほうがいいからね。
       なのに……結局は無駄だったみたいだね」
  _
(  ∀ )「っ」

lw´‐ _‐ノv「こんなことならとり憑けばよかったとつくづく思うよ……でももう手遅れか。
       私が姿を現してもすぐに追い返されちゃうからなぁ」
  _
( ゚∀゚)「……おい、シュール」

lw´‐ _‐ノv「ん?」
  _
( ゚∀゚)「いろいろすまんかった。
     今からあいつのところにいってくるわ」

lw´‐ _‐ノv「そう」
  _
( ゚∀゚)「ありがとな。あと殴ってすまん!」

lw´‐ _‐ノv「……」

216 :lw´‐ _‐ノv◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 06:31:08.98 ID:jnCKQ+be0
lw´‐ _‐ノv「ジョルジュ」
  _
( ゚∀゚)「ん?」


パーン…… 


lw´‐ _‐ノv「これでおあいこ」
  _
(* ∀ )「……いてえ」

lw´‐ _‐ノv「気合入ったでしょ?」
  _
(* ゚∀゚)「……ああ」

lw´‐ _‐ノv「よし、じゃあいってこい」
  _
(* ゚∀゚)「おう!」








lw´‐ャ‐ノv「……概ね計算どおり、かな」


217 :( ゚∀゚)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 06:36:05.37 ID:jnCKQ+be0
―――――昨日、シュールはこう耳打ちした。

   『極論をいえば、私はヒッキーにとり憑きたいんだよ。
    まあ、とり憑くっていうのは比喩だけどね』

はっきりいえばその案は最悪だった。

   『私という存在が他人の心にどれだけ入ることが出来るか?
    それだけが知りたかったんだ。
    だから引きこもりの彼を選んだ』

その言葉は小森を傷つけるためだといっていた。

   『私の存在が根付いたと感じたら、私は消えるとしよう。
    それでも彼が私を忘れようとしなければ実験は成功だよ。
    私は彼にとり憑くことが出来たというわけだからね』

なら、

   『まあ、それで脱引きこもりになればヒッキーも喜ぶだろ?
    私を探すためには外へ出なければいけないのだからね。
    ……一種のショック療法だよ』

昨日の言葉と今日の言葉が違うと感じるのはなぜだろう?
昨日の表情と今日の表情が違うと感じるのはなぜだろう?

   『ヒッキーの友達が現れて嬉しかったんだよ』
   『こんなことならとり憑けばよかったとつくづく思うよ』

218 :( ゚∀゚)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 06:40:35.36 ID:jnCKQ+be0
シュールに促され、あいつの家へ走って向かう。
  _
( ゚∀゚)「……」

俺は小森に避けられた。
俺も小森を避け続けた。
この年になればそういうやつが、ぽつりぽつり出てくる。
小森とも交友関係が疎遠になっていただけだった。

疎遠になった理由なんて普通はないだろう。
新しい関係ができたから、昔の関係を維持できなくなってくるだけなのだから。

なら俺らの関係は普通じゃない。
昔は小森と小森妹と3人でよく遊んでいた。
そしてとある事故で小森妹は亡くなって、あいつも引きこもるようになった。

それでも俺はあいつに会いにいった。
で、あいつに『もうこないで』って言われたんだっけ。
だから俺はあいつに会わないようにした。
しばらく会わないほうがあいつのためだと思ったから……。

  _
(  ∀ )「……」

なんつー大馬鹿者なんだ俺は。
シュールに言われたとおり俺は最低だよ。

220 :( ゚∀゚)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 06:45:28.51 ID:jnCKQ+be0
  _
( ゚∀゚)「……ハァ」

明かりがついた、家の1つの前で立ち止まる。
表記には『小森』と書かれている。
深夜といえる時間帯だが、かまわずインターホンを押す。

…………。

  _
(# ゚∀゚)「おい」

小森は寝てるのか?
さっきまで公園でシュールと話してたんだから、答えはノーだ。
思いっきりドアを叩く。
ついでに大声で小森の名前を呼んでやった。
これで出てこなかったらそいつは勇者だ。

やがて、ドアの先に気配が現れる。
気配は鍵をあけ、ドアを開いた。

(;-_-)「……どうした、の?」
  _
( ゚∀゚)「急用だ。邪魔するぜ」

(;-_-)「あ、ちょっと」

返事を待たずに中へ入る。
勝手知ったるなんとやらだ。

222 :( ゚∀゚)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 06:50:32.46 ID:jnCKQ+be0
  _
( ゚∀゚)「お前の家に入ったのも久しぶりだなー」

(;-_-)「……そうだね。
      それでどうしたの?
      こんな時間に訪ねてくるなんて」

まあ、そうだよな。
こいつが不信がるのも当たり前だ。
用件をいう。
  _
( ゚∀゚)「ヒッキーって呼ばれてるんだって?
     俺もそう呼んでいいか?」

(;-_-)「……っ!!」
  _
(;゚∀゚)「こらこら、逃げんな。
     シュールのことで話があるんだ」

(;-_-)「なん、で?」
  _
( ゚∀゚)「この前、花火やったよな?
     そのときの煙がすごかったんで、野次馬根性まるだしで公園にいったんだ。
     で、そのときお前らをみたから、お前が帰ったあとにシュールと話したんだよ」

(;-_-)「……あの屋外バルサンね」

223 :( ゚∀゚)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 06:54:46.83 ID:jnCKQ+be0
  _
( ゚∀゚)「あー……シュールが『憑く』とかいってたが気にすんな。
     あれは比喩だから」

(;-_-)「え?」

昨日の夜のことを詳しく説明した。

人の心にどれだけ入れるか、ということ。
それを『憑く』と表現したこと。
そういう事情から引きこもりのこいつに接触したこと。
  _
( ゚∀゚)「シュールについて知ってることはこれくらいだ。
     あいつは幽霊じゃないから安心しろ」

(;-_-)「う、うん」
  _
( ゚∀゚)「正直な、シュールの案はひどいと思ったよ。
     でも、そもそもお前が引きこもってたから起こったことなんだよな。
     原因はお前にもあるし俺にもある。
     だからシュールを許してほしい……まあむかつくだろうけど」

とりあえずシュールを殴った自分を棚に上げておく。
今は俺のことよりヒッキーのことについて話さないといけないんだから。

(-_-)「……」
  _
( ゚∀゚)「もっとお前と話をするべきだったよ。
     そしてお前が引きこもらないようにするべきだったよ。
     だから、その……ごめんな」

225 :( ゚∀゚)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 06:59:24.57 ID:jnCKQ+be0
(-_-)「……謝らなくていいよ。
     全部ぼくが悪いんだから」
  _
( ゚∀゚)「それは違う」

(-_-)「どうして?」
  _
( ゚∀゚)「つらいときに支えてやるのが友達だからな。
     今まで支えてこなかった俺にも責任がある。
     だから全部自分のせいにするな」

(-_-)「……」
  _
( ゚∀゚)「……俺もお前にとり憑きたいんだ。
     お前の妹だけに独占させてたまるかっつの」

(-_-)「……余計なお世話だよ」
  _
( ゚∀゚)「やーだね。
     俺がそうしたいんだからそうするんだ。
     指図すんな」

(#-_-)「……余計なお世話だっていってるでしょ」
  _
( ゚∀゚)「……指図すんなっつってるだろ」

226 :( ゚∀゚)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 07:03:54.24 ID:jnCKQ+be0
(#-_-)「……」

おー、こわいこわい。
努めてポーカーフェイスやっているが内心汗だくだ。
でも俺だってひくわけにはいかないんだ。
  _
( ゚∀゚)「なあ、話は変わるけどよ……シュールといて楽しかったか?」

(;-_-)「……いきなり変えてきたね」
  _
( ゚∀゚)「変化は常に唐突なモンだ。気にすんな」

(-_-)「……シュールみたいなこと言うね」
  _
( ゚∀゚)「……それはいやだな」

(-_-)「うん、まあ、楽しかったと思うよ」
  _
( ゚∀゚)「そかそか」


  _
( ゚∀゚)「でもよ、あいつどこかに消えると思うぜ?」

(;-_-)「え?」

227 :( ゚∀゚)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 07:08:30.14 ID:jnCKQ+be0
  _
( ゚∀゚)「前もっていってたんだよ。
     『もし傷つけて拒絶されたらおとなしく去るよ』ってな」

(;-_-)「……」
  _
( ゚∀゚)「シュールとは数回しか話してないからよく分からんが、それでもお前のことを想って行動していた。
     そして俺はシュールに頼まれたんだ。後は任せるってな」

(;-_-)「それ、ほんと?」
  _
( ゚∀゚)「ああ。
     だから……俺は、もうお前を避けねえぞ!
     何度追い返されようが、お前を支え続けるぞ!
     つらいのなら俺もそのつらさを肩代わりできるようにしてやる!!
     いたいのなら俺もそのいたみを味わってやるからな!!!」

(;-_-)「……そう」



( _ )「……ありがとう…………ごめん」
  _
( ゚∀゚)「……」

229 :( ゚∀゚)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 07:13:22.93 ID:jnCKQ+be0
これで大まかなところを話し終えた。
グッジョブ、俺。
後は……

  _
( ゚∀゚)「んじゃ、これから何して時間つぶす?」

(;-_-)「……うん。……………………え?」
  _
(* ゚∀゚)「久々に泊まりにきたんだから盛大に騒ごうぜ!!」

(;-_-)「え?え?
     いつの間にそんなことが決まってたの?」
  _
(* ゚∀゚)「今」

(;-_-)「……」
  _
(* ゚∀゚)「いいじゃんいいじゃん。
     せっかく友達が遊びにきたんだからよ。
     お前も楽しもうぜ!!」

(*-_-)「……ハァ。君らしいよ」


文句をいいながらもまんざらではない様子のヒッキー君。
ひとまず、今日の接触は成功だな。
背中を押してくれたシュールに感謝する。
……ほんのちょっぴり、心の中でだけど。

230 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 07:17:41.40 ID:jnCKQ+be0
―――――8月16日


(-_-)「……」

(-_-)「……」

(-_-)「………………………………………zzz」
  _
(* ゚∀゚)「おーい、朝だぞー」

(-_-)「………………………んん」
  _
(* ゚∀゚)「早く起きないとカールひげと額に肉だぞー」

(-_-)「……………zzz…………zzzz」



  _
(* ゚∀゚)「オーケーおーけー、それがお前の答えなんだな?」

231 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 07:23:31.95 ID:jnCKQ+be0
 

……朝起きて、目が覚めて、マサオさんぼんやり鏡みた。


僕の今日は絶叫からはじまった。
僕より早く起きてたジョルジュが、僕の顔にラクガキをしていた。
鏡のなかの異人を前にして、脊髄につららが刺さったような気持ちになった。
そしてラクガキを洗い流そうとして、油性でかかれたことを知り、絶望した。

そんなこんなで2時間後。
時計の針は左上を指していた。

(;-_-)「……ったく」
  _
( ゚∀゚)「お?やっと落ちたか」

(;-_-)「うん。おかげで顔がヒリヒリするよ」
  _
( ゚∀゚)「それは僥倖」

233 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 07:27:46.01 ID:jnCKQ+be0
(#-_-)「……ジョルジュは朝飯抜きね」
  _
(; ゚∀゚)「なん……だと…?」

(-_-)「というわけでそろそろ出ようか」
  _
(; ゚∀゚)「待ってくれ!
     朝飯を食わないと脳がうまく働いてくれないんだぜ!
     そんなんでシュールに会ってもちゃんと話せるわけないだろ!!」

(-_-)「引きこもりをなめンな。
     一日一食を確保できれば問題ないから」
  _
( ;∀;)「ごめんなさい。
      ラクガキしたの謝ります。
      だから朝ごはんください〜」

(;-_-)「……やれやれ」

とりあえずジョルジュに菓子パンを投げつけてやった。
彼は大いに喜んでいた。

234 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 07:32:45.41 ID:jnCKQ+be0
  _
( ゚∀゚)「さて、そろそろいくか」

(-_-)「うん」
  _
( ゚∀゚)「あいつの家って公園の近くだっけ?」

(-_-)「うん、そうだと思う」
  _
( ゚∀゚)「……」

ぼくらは外に出てシュールに会いに行く。
前にシュールの家の近くまで送っていった事があったから、大体の場所だけ把握している。
その場所周辺で『砂尾』という家を見つければいい。
珍しい苗字だからすぐ見つかると思う。
見つかったら……とりあえず怖がってごめん、と謝っておこうか。
  _
( ゚∀゚)「……あのよ」

(-_-)「ん、なに?」

235 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 07:37:06.38 ID:jnCKQ+be0
  _
( ゚∀゚)「シュールって何者なんだ?」

(-_-)「……ぼくらが出会ったのは最近だから、詳しいことは知らない。
     知っているのはクラスメイトだってことだけだね」
  _
( ゚∀゚)「っ。それは」

(-_-)「ん?」
  _
( ゚∀゚)「………………。いや、なんでもねえ」

(-_-)「???」
  _
( ゚∀゚)「……っと。ここがあいつの家か?」

(-_-)「『砂尾』って表記もあるね」
  _
( ゚∀゚)「んじゃ、いってみようぜ!」

(;-_-)「あ、でもシュールの家じゃないかもしれないよ?」
  _
( ゚∀゚)「んなもん家の人に確認とればいいじゃねえか」

まあそうだけど。
ぼくが戸惑っていると、ジョルジュは止める間もなくインターホンを押す。
数秒後、家からくぐもった返事がきた。

果たして玄関から1人の女の子が出てきた。

237 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 07:41:30.91 ID:jnCKQ+be0
ノパ听)「どちらさまで……あ」


  _
(* ゚∀゚)「お、お前は!!
     暑苦しいがそこが可愛らしい!
     熱血漢じゃなく熱血少女!!
     夕日に向かって吼える姿が甘酸っぱい!!
     情熱に燃える我らがクラスのアイドル、砂尾 瞳 ことヒートじゃないかっっ!!!」

ノパ听)「そういうお前は!!
     顔はまず良し、だめ性格!
     心の中はピンク色!!
     おっぱいこそがわが人生!!
     我らがクラスの女子の敵、長岡 丈治 ことジョルジュじゃないかっっ!!!」

(;-_-)「……」



  _
(  ∀ )「しにたい」

ノハ;゚听)「すまんすまん、調子に乗りすぎたよ。
     で、何の用なの?」

238 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 07:45:41.33 ID:jnCKQ+be0
  _
( ゚∀゚)「ヒッキーがお前に話があるんだってよ」

ノパ听)「ヒッキー?……っと小森じゃん、久しぶり!!」

(;-_-)「う、うん、久しぶり」

ノパ听)「……あー、それでヒッキーって呼ばれてるのか。
     で、何の用なの?」

(;-_-)「いや、ヒートに用があるわけじゃないんだけど。
     砂尾 示由流って知らない?」

はじめのジョルジュとヒートのハイテンションに若干引き気味だったけど、何とか用件を伝えることができた。
でも、おそらくこの家にはシュールはいないだろうと思う。
双子でもないかぎり、同年齢の子供が一緒に住むことはないのだから。

しかしぼくの思惑とは裏腹に、ヒートは首をかしげて聞いてきた。

242 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 08:10:01.04 ID:jnCKQ+be0
ノパ听)「……シュールのこと知ってるの?」
  _
( ゚∀゚)「ヒッキーがここ数日、お世話になったから礼をいいたいんだってさ」

ノパ听)「お世話?」

(-_-)「……君のほうはシュールを知ってるの?」

ノパ听)「知ってるもなにも。
     シュールは私のいとこだよ」
  _
( ゚∀゚)「ほう?さっそくそいつに会わせてくれないか?」

ノパ听)「その前に私からも聞きたい。
     シュールにお世話になったって……どういうこと?」

とりあえずここ数日間のお茶会の内容を話した。
その話をしていると、ヒートの表情がだんだん険しくなっていった。
そして全てを話し終えるとヒートは一言。

ノパ听)「とりあえず2人とも中に入って」

ぼくらはヒートの言葉に従った。

243 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 08:14:43.04 ID:jnCKQ+be0

ノパ听)「ほい、麦茶。
     くつろいでいってくれ」

(-_-)「ありがとう」
  _
( ゚∀゚)「麦茶うめー」

ノパ听)「で、ヒッキーに聞きたいんだけど。
     君が会った女の子は本当に示由流と名乗ったの?」

(-_-)「うん、そうだけど?」

ノパ听)「……ふーん」
  _
( ゚∀゚)「なあ、いいかげんシュールに会わせてくれよ」


ノパ听)「それは無理」


(;-_-)「……え?」
  _
( ゚∀゚)「……説明してくれねえか?」

ノパ听)「だってシュールは他県に住んでるもの。
     会わせようたってできないよ」

ぼくらは耳を疑った。

245 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 08:19:04.25 ID:jnCKQ+be0
ノパ听)「本当ならシュールは今年もお盆に、遊びに来るはずだったの。
     でも、今回はこっちに来なかったんだよ。
     だから他県にいるシュールに合わせることが出来ないの」
  _
(; ゚∀゚)「ちょっとまて、それはおかしい。
     だとしたら俺らはシュールに出会うこともないじゃないか……」

ノパ听)「うん、私もおかしいと思う。
     だからよく分からないんだよ。
     ……ちょっと待ってて」

そういうとヒートは電話の子機を握り、ボタンを押す。
とある番号にかけて、子機を耳にあて数秒……。

ノパ听)「もしもし……空さんですか?ご無沙汰してます!
     示由流いますか?」

それからヒートは電話と話をする。
その間、ぼくたちはヒートからの情報について話し合っていた。
まあ電話してる人がいるので小声でだけど。

246 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 08:23:42.99 ID:jnCKQ+be0
  _
( ゚∀゚)(……シュールは別の学校に通ってて、おれらのクラスメイトじゃないってことは確定したな)

(;-_-)(それは分かったけど……じゃあぼくらが会ったシュールは誰だったの?)
  _
(; ゚∀゚)(……それは分からん。そもそもなんでシュールの名前を語るのかも分からん)

(;-_-)(うーん?)







ノパ听)「うん……うん………分かった。んじゃ待ってるね!」

247 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 08:28:00.45 ID:jnCKQ+be0
ヒートの電話が終わった。
それにあわせてぼくらは姿勢を正す。
そんなぼくらにヒートは、楽にしていいよ、といった。

ノパ听)「シュールに聞いたんだけど、やっぱり今年はこっちに来てないってさ。
     そもそも引越しの準備でそんな暇ないって少し怒ってたよ。
     早くこっちに来たいって愚痴もいってたね」

(;-_-)「??早くこっちに来たい?」

ノパ听)「……ああ、夏休み明けにこっちに転校してくるんだよ。
     その準備で今年のお盆は忙しくて来れなかったんだよ。
     ちなみに君たちのこともさりげなく探っておいたよ。
     シュールは会ったことないっていってた」

(;-_-)「……」
  _
(; ゚∀゚)「……」

ノパ听)「……君ら、誰に会ったんだよ?」

その疑問にぼくらは答えられなかった。
そんなのこっちが知りたいよ。

249 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 08:32:17.64 ID:jnCKQ+be0
結局、あの後ヒートと別れた。
ヒートいわく、狐にでも化かされたんじゃないのか、と。
なのでぼくらはそれを確かめるため、例の公園でシュールを待つ。
……シュールが来るかどうかなんて分からないけど。


で、今の時刻は午後7時。
空には仄かに太陽の光が残っている。

(-_-)「……」
  _
( ゚∀゚)「……」

(-_-)「……」
  _
( ゚∀゚)「……」

(-_-)「……」
  _
( ゚∀゚)「あいつ、来るかな?」

(-_-)「さあ?」

250 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 08:36:45.49 ID:jnCKQ+be0
  _
( ゚∀゚)「何時ごろまで待ってみる?」

(-_-)「日付が変わるまで」
  _
(; ゚∀゚)「うわあ……すごい根性だな」

(-_-)「……慣れてるから。
     別に帰ってもいいよ。
     シュールは来ないかもしれないんだし」
  _
( ゚∀゚)「……帰らねえよ。
     俺だってあいつの正体を知りたいんだからよ」

(-_-)「そう」
  _
( ゚∀゚)「……」

(-_-)「……」

会話が途切れる。
向こう側で破裂音が聞こえた。
その方向に目を向けると、薄く煙が上がっていた。

……花火か。
そういえばシュールとやったなあ。
今年は絶対にやらないと思ってたのに。
まあ、あれは楽しかったな。

251 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 08:41:04.77 ID:jnCKQ+be0
何が楽しかったかって、あの花火の仕方がだ。
爆竹を人に向けて投げてくるし。
まとめて火をつけるのを当然と思っていたし。
束になった線香花火の火を最後まで落とさなかったし。

(-_-)「……あの線香花火の仕方、聞いておけばよかったよ」


独り言をつぶやく。
ジョルジュはなにも答えない。
そして、



      「聞いただけでできるほど易しくないよ、あれは」



待っていた人の声がきこえた。

253 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 08:45:24.04 ID:jnCKQ+be0
lw´‐ _‐ノv「はろー」
  _
(; ゚∀゚)「……」

(;-_-)「……」

ぼくたちは声が出なかった。
ヒートと話したことでシュールがシュールじゃないと思ってしまったからかもしれない。
そんなぼくらにシュールは再び声をかけてきた。

lw´‐ _‐ノv「……人の挨拶を無視するとな?」

あ、怒った。
表情は変わらないけど言葉に怒気が含まれているのを感じる。
その人間っぽさのおかげでぼくは冷静になることができた。
改めてシュールをみる。
その格好にお化けらしいところが見当たらない。
手には白いビニール袋を持っている。

……おっと、そういえばぼーっとしてて挨拶がまだだったよ。

(;-_-)「あ、ごめん。こんばんわ」

lw´‐ャ‐ノv「そうそう、挨拶は大切だよ。
       ところでさ、ジョルジュと一緒にいるところをみると……ふーん、へえ?」

256 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 08:50:04.42 ID:jnCKQ+be0
(;-_-)「あー……なんか昨日、くさい台詞を吐いてきたから。
     まあそんなこんなで今、一緒にいるの」

lw´‐ャ‐ノv「ほうほう、頑張ったねジョルジュも」
  _
(* ゚∀゚)「うるせえよ」

lw´‐ャ‐ノv「むっふっふ〜。照れるな照れるな」

(-_-)「……」


(-_-)「それで君は誰なの?」

  _
( ゚∀゚)「ヒートから聞いたぞ。
     今年のお盆は引越しの準備でここに来れないってな。
     ならここにいるお前は何者なんだ?」

(-_-)「……」

lw´‐ _‐ノv「……」

261 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 09:15:11.37 ID:jnCKQ+be0
lw´‐ _‐ノv「そう……ヒートに会ったんだ」


それだけいうとシュールはビニール袋を地面に置く。
中に入っているのは……薪だ。
シュールはしゃがみ、積み木よろしく薪を組み立てる。
そして薪を弄りながらゆっくりと口を開く。


lw´‐ _‐ノv「私の家はね、父さん、母さん、姉ちんの4人家族なんだ」


lw´‐ _‐ノv「父さんも母さんも忙しくってね。
       だから自分たちの教育がしっかりしているかは、学校の成績でしか判断できなかったんだよ」

lw´‐ _‐ノv「姉ちんはしっかりした人でね。
       頭がよくて、成績優秀だからどんなことでもそつなくこなしてた。
       ありゃ、天才だね」


lw´‐ _‐ノv「だから私は親にいわれ続けてたんだ。
       もっと勉強しなさいってね。
       優秀な姉ちんと比べられてたんだね」

lw´‐ _‐ノv「一生懸命勉強したよ。
       寝る間も惜しんで努力したよ。
       自慢じゃないけど成績は常に学年で10位以内だったよ。
       ……それでも、もっと努力しろ、どうしてこんな成績なんだっていわれたよ」

262 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 09:19:30.51 ID:jnCKQ+be0
トントンと薪が積み上げられていく。
ぼくらは黙ってその話を聞いていた。
……なんとも厳しい家庭だな、と思う。

lw´‐ _‐ノv「そのうち私はノイローゼになってね。
       そこまでいってやっと親も気づいたんだね。
       私は姉ちんみたいな天才じゃないってね」

lw´‐ _‐ノv「だから療養もかねて私に違う生活をさせようってことになったんだよ。
       具体的には親元を離れてさせて、違う学校に通わせようってこと。
       いとこのヒートのところで一緒に生活させれば大丈夫だろうってね」

lw´‐ャ‐ノv「ちなみに発案者は姉ちん。
       親の反対を押し切って私を転校させることにしたわけだよ。
       姉ちん流石だよ。惚れ直したよ」

lw´‐ _‐ノv「そうして学校の友達に別れを告げた。
       悲しくはあったけど、それ以上にこの地での生活に期待してたから特に問題なかった。
       まあ、引越しの準備でお盆に来れなくなったのが残念だけどね」



lw´‐ _‐ノv「で、気づいたらなぜかここにいた、ってわけ」


  _
(; ゚∀゚)「ちょ、それ説明にもなってないだろうが!!」

ジョルジュはツッコんだけど、ぼくもそう思う。
なんでいつの間にかここにいることになってるんだよ?

264 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 09:24:04.00 ID:jnCKQ+be0
lw´‐ _‐ノv「あわてないあわてない。
       人の話は最後まで聞くものだよ」

薪を組み終わった。
そうしてシュールは立ち上がり、ぼくらに向いた。


lw´‐ _‐ノv「正直いうとね……お盆の時期が一番心が休まる時期だったんだよ。
       だってこんな家庭なわけだから。
       なのに今年はここに来れないときたもんだ」

lw´‐ _‐ノv「おそらく……それが今、私がここにいる理由なんだろうね」
  _
(; ゚∀゚)「……さっぱり分からん」

(;-_-)「どういうこと?」

lw´‐ _‐ノv「私のその想いがもう1人の私を作ったんだよ。
       つまりね……」



lw´‐ _‐ノv「生霊だっていえば……理解してくれる?」



265 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 09:28:59.84 ID:jnCKQ+be0
生ぬるい風が吹く。
遠くからきこえた花火の音も今はきこえない。
空に残っていた太陽の光もすでに消え去っていた。

(;-_-)「いき……りょう……?」

声が震える。
正直いって怖い。
だって昨日、『憑く』っていわれた身だ。
怖くないわけがない。

  _
(; ゚∀゚)「……なんでヒッキーの前に現れたんだよ」

lw´‐ _‐ノv「……」
  _
(; ゚∀゚)「おい!!」



lw´‐ _‐ノv「どうしてだろうね?」

  _
(; ゚∀゚)「はあ?」
(;-_-)「へ?」

266 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 09:33:33.28 ID:jnCKQ+be0
lw´‐ _‐ノv「……正直さ、どうしてヒッキーと接触したのか私にも分からないんだ」

シュールはポツリと腹のうちを語る。

lw´‐ _‐ノv「親との関係が最悪だったから……1人のつらさを体験したことがあるから同情したのかもしれない。
       私は人付き合いがヘタだから、ヒッキーと傷を舐めあう間柄になりたかったかもしれない。
       引きこもりを調べるためのいいサンプルと思ったのかもしれないし、もしかしたら恋仲になりたかったかもしれない。
       ………本当にとり憑きたかったのかもしれない」

lw´‐ _‐ノv「ただ、ヒッキーを1人にしておくことができなかった。
       放っておけなかったからヒッキーに会おうとおもったんだ」

(;-_-)「……」

lw´‐ _‐ノv「……ねえヒッキー。
       私は君に問題を出してたよね。
       『人とのつながりとは』、『愛とは』、『自分とは』……君なりに答えを見つけることができたかな?」

(;-_-)「……一応」

lw´‐ _‐ノv「きかせて」

少しばかり思考する。
そうして口を開く。

268 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 09:37:54.01 ID:jnCKQ+be0
(;-_-)「人のつながりとは……ジョルジュとシュールのように……知らず知らずのうちに皆どこかでつながってると思う。
      ただ、それに気づけるかどうかは本人にしか分からない。
      そしてそのつながりの良し悪しは……神に丸投げしようとおもう」

lw´‐ャ‐ノv「はは」


(*-_-)「愛とは……他者を想えばそれは愛なんじゃないの?
     詳しく説明するとサブイボ立つから……これで勘弁して」

lw´*‐ _‐ノv「ほうほう」


(-_-)「自分とは……一番近くて一番分かりにくいものだとおもう。
     妹が亡くなる前は引きこもる自分を想像できなかった。
     ジョルジュを遠ざけた自分が理解できなかった。
     そして……ちょっとしたきっかけで太陽の下で歩き回った自分が信じられないよ」

lw´‐ _‐ノv「ん?kwsk」
  _
( ゚∀゚)「昨日お前と変な別れ方したろ?
     だから謝りたくってお前のことを探し回ったんだよ。
     昼前くらいからだぜ?すげーよな」

lw´*‐ャ‐ノv「ほう?それは嬉しいね」

(*-_-)「……」

269 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 09:42:50.95 ID:jnCKQ+be0
lw´‐ _‐ノv「さて、ちょっと長話しようか」

lw´‐ _‐ノv「……私は生霊で今日中に消えるでしょうな。
       お盆にヒートのところに行きたい、という念が私を作ったんだからね。
       だけど消えないほうの私は消える私を知らないでしょう。
       私が過ごした記憶もあっちの私に受け継がれることもないしね」

(;-_-)「え?消えるって……」

lw´‐ _‐ノv「きけ」

シュールの一言でぼくは黙ってしまった。
それほどまで話したい内容なのか?
ぼくらは無言でシュールの話を聞いた。


lw´‐ _‐ノv「……私はね、君らと普通に会いたかったよ。
       君らと普通に駄弁って、衝突しあって、笑いあって。
       それでまた明日もその繰り返して……そんな未来を見てみたいよ」


lw´‐ャ‐ノv「でもね、神様は許してくれないみたいだよ。
       むしろお前がこの地にいる奇跡を感謝しろ、っていってるのかねえ?ふふふ」


lw´‐ _‐ノv「それでも、本物の私はここにいない。
       幽霊の私は今年のお盆限定でこの地にいることができて……そして消えるの。
       神様の都合で勝手に産み落とされて殺される。消えたくないのにね。
       やんなっちゃうね」

271 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 09:47:11.53 ID:jnCKQ+be0
lw´‐ _‐ノv「できれば私の記憶をあっちのシュールにあげたいよ。
       それなら私はまだ消えない。
       どっちも同じシュールなんだからね」


lw´‐ _‐ノv「でも無理みたい。
       私は本物をモデルにして作られた陽炎みたいなものだからね。
       本物のシュールにはなんら影響を与えられない。
       だからヒッキーと駄弁った夜の記憶はこの身同様、ここで消える」


lw´‐ャ‐ノv「なら私はなんのためにここにいたのだろう?
       なんのためにヒッキーに接触したのだろう?
       霊だから『人とのつながり』も『愛』も全て幻でさ……『自分』すら持ってない有様だよ」


lw´‐ _‐ノv「だから私は試したわけだ……ヒッキーに憑けるかどうかをな。
       私が愛をもって接してみれば、なにかしら結果がでるかも、と思ってね」

(;-_-)「……」

272 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 09:51:40.72 ID:jnCKQ+be0
lw´‐ _‐ノv「さて、質問だ。
       私は何か残せたかい?」

(;-_-)「……残せてるよ。
      君が話してくれたから、ぼくはここにいるんだ」

lw´*‐ャ‐ノv「そう……ありがとう」

(;-_-)「どうにもならないの?」

lw´‐ _‐ノv「どうにもならないね」

(;-_-)「……」

lw´‐ャ‐ノv「なに、そう悲観することないよ。
       人間は皆、生まれたときから死んでいるんだ。
       違いがあるとすれば、その死が早いか遅いかだけで……私の場合、ちょっぴり早かっただけなんだから」

(;-_-)「……そう」


274 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 09:56:44.11 ID:jnCKQ+be0
lw´‐ _‐ノv「さて、そろそろ……」

シュールはそういってポケットからマッチを取り出す。
そして火をつけて組み上げた薪の中に投げる。
火は煙を上げながらどんどん大きくなっていった。
  _
(; ゚∀゚)「げほっごほっ……って、煙すごすぎだろ」

lw´‐ _‐ノv「そりゃあ、この薪全部松の木だから煙……というより煤がすごいだろうね」
  _
(; ゚∀゚)「松の木はあくまで火種用だろ……常考」

(;-_-)「てか、何してんのさ?」

lw´‐ _‐ノv「……送り火だよ。
       本来はご先祖様を送るための火だけどさ」

275 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 10:01:32.34 ID:jnCKQ+be0
なるほど。
これで自分を送るわけか。
てか本当に煙すごいなあ。
まるであのときのよう……ってちょっと待った!

(;-_-)「この人絶対煙玉入れたよ!!
     黄色い煙なんて立つはずないもん普通!!」

lw´*‐ _‐ノv「あ、ばれちった」

シュールは肯定してビニール袋から大量の煙玉をとりだした。
そして、まとめていくよー、といって送り火の中に追加していった。
  _
(; ∀ )「ちょwwwおまwwwww」

悲鳴をあげるジョルジュの顔もよく見えない。




lw´ _ ノv「仕方ないでしょ。
       別れるのは悲しいもの。
       泣き顔を見られたくないもの」

277 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 10:05:59.47 ID:jnCKQ+be0
(;-_-)「え?」

シュールの声がきこえる。
顔はよく見えない。

lw´ _ ノv「ジョルジュ。
       正直いって君は苦手だ。
       とはいえ君と話すのはなかなか楽しかった……わけではないなあ。
       とりあえずヒッキーを支えてやってくれ」
  _
(; ∀ )「すげえ複雑な心境だが……分かった、頑張る」

lw´ _ ノv「そしてヒッキー。
       世の中は楽しいことばかりじゃない……辛いこともある。
       だから時には受け流せ」

(;-_-)「……シュール」

lw´ _ ノv「この別れがつらいのなら受け流してくれてもいい。
       君にとってとるに足らないものなら忘れてくれてもいいから」

(;-_-)「……そんなのできないよ」

lw´ _ ノv「その理由は?」

( _ )「君といて……楽しかったから」

lw´ ャ ノv「そか」

278 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 10:10:51.58 ID:jnCKQ+be0
      「それでも……私との思い出に負い目を感じたなら捨ててちょうだいな。
       引きずられるのは正直ごめんだから」

( _ )「……っ」

      「私の名前の由来はね、『自分で考え、それを行動に移すべきかどうかを判断できる聡い子になれ』って意味らしい。
       理由の“由”をはさむように“流す”“示す”という字を当ててそれを表しているんだとさ」

( _ )「……」

      「自分の殻に閉じこもるのは勝手だけどね……現状がつらいなら行動に移すべきだよ。
       じゃないと妹さんもうかばれないしね。
       せめて妹さんがあっちの世界で自慢できるような兄になってみなよ」

( _ )「……ぼくはどうすればいいのさ?」

      「そこはじぶんで考えなよ。
       ともあれ頑張ってね」

( _ )「うん、うん……頑張ってみるよ」


      「んじゃ、またね」



      「そうそう。火消し、よろしくね」



280 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 10:15:18.65 ID:jnCKQ+be0
 













………………………煙が晴れたときにはすでにシュールの姿はなかった。

282 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 10:19:54.30 ID:jnCKQ+be0
―――――9月1日


(-_-)「……というわけ」
  _
( ゚∀゚)「さすがの俺もびっくり体験だったぜ」

ノパ听)「へー」
  _
( ゚∀゚)「ヒッキーも学校にくるようになって万々歳だ」

(;-_-)「う」

ノパ听)「そりゃすげーよ。
     シュールに教えたらびっくりするかもなー」
  _
( ゚∀゚)「あ、そういやシュールって今お前の家にいるんだよな?」

ノパ听)「うん、そうだよ」
  _
( ゚∀゚)「会わせろ」

ノパ听)「断る」
  _
(# ゚∀゚)「なんでだよっ!?」

ノパ听)9m「お前が危険人物だからに決まってるだろおおおおおおお!!」
  _
(  ∀ )「うわあ、しにてえ」

283 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 10:24:42.28 ID:jnCKQ+be0
今日から学校だ。
といっても今日は始業式だけなので昼前に終わった。
今は放課後で、ヒートにこの前のことを話してたところだ。
ちなみに今日は転校生がやってくることはなかった。

ノパ听)「どうせここに転校してくるんだから近いうちに会えるでしょうが!」
  _
( ゚∀゚)「でもいきなり馴れ馴れしく接したら引くだろ、実際」

ノパ听)「安心しろ。
     お前はクラスの女子みんなが引いてるから。
     馴れ馴れしくしなくてもシュールはちゃんと引いてくれるから!!」
  _
(  ∀ )「ははは、ほろにげえ」

ノパ听)「せめて普段の行いを正せばもっとモテるのになあ」
  _
( ゚∀゚)「え?マジ?それマジ?」

ノパ听)「…………調子に乗りそうだから黙秘権を使わせてもらいます」
  _
(# ゚∀゚)「いえよ!!」

(;-_-)「……」

285 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 10:29:07.27 ID:jnCKQ+be0
シュールの件を話し終えたら、別の件でヒートアップする2人。
とりあえずしばらく傍観者でいさせてもらいますね。

ノパ听)「あ、そうそう。
     ヒッキーはシュールに会いたい?」

(;-_-)「え、あ……うん。会いたいよ」

急に話を振られてビビるぼく。
あれ?俺との対応と違うくね?……と驚いてるジョルジュ。
ジョルジュを無視して話し始めるヒート。

ノパ听)「ヒッキーになら会わせてもいいよ。
     多分あの公園にいるだろうから」
  _
(* ゚∀゚)「よっしゃあ、いくかヒッキー!!」

(*-_-)「う、うん!」

ノパ听)「これこれ、そこのゲジ眉。
     君は私といっしょに帰ろうか」
  _
( ゚∀゚)「え?なんで?」

ノハ#゚听)「た、い、せ、つ、なシュールを汚されないようにするためだ!!」
  _
(; ゚∀゚)「何気に俺って有害物質扱い?!」

286 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 10:33:43.35 ID:jnCKQ+be0
ノパ听)「あ、その表現もらい。
     これからは有害物質名乗ってね」
  _
(* ゚∀゚)「あ、でもこれってデートじゃね?」

ノパ听)「……うわあ、しにてえ」
  _
(# ゚∀゚)「台詞パクんな!!」

そうしてジョルジュはヒートに引きずられていく。
ジョルジュは何だかんだで嬉しそうだ。
ヒートは何故か一生懸命ジョルジュの相手をしている。
やがて2人の姿が見えなくなったところで、

(-_-)「……帰るか」


289 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 10:38:11.90 ID:jnCKQ+be0
学校の外にでて、歩きながら考える。
この夏の不思議体験についてだ。

煙が晴れるとシュールの姿はすでになかった。
彼女はなにを思ってぼくの前に姿を現したのだろう?
なにを思ってぼくに付き合ってくれたのだろう?
そして、なにを思って消えていったのだろう?

シュールは消える前にある程度、心の内を吐露した。
が、それだけで彼女の心を理解してるとは正直いえない。
そもそも人の心なんて他人には理解できないものなのだから。

もし理解できるのなら、そいつの頭の中は相手と同じ構造をしていることになる。
ぼくと話したシュールと未だ話したことのないシュールのように。
ならば片方は陽炎のように消える運命なのだろう。

(;-_-)「……ん」

……ここまで考えて気づく。
ぼくはまだ顔を見たことのないシュールを恐れていることを。

正確には、ぼくが会ったシュールと未だ会ってないシュールが違っていたら……と不安に思っているのだ。
だから2人のシュールが同じ人物であることを望んでいる。
実際どうなのだろう?

シュールに会いたい。
シュールが怖い。

その2つの葦が相反しながらも、何かに引きずられるように公園に向かう。

291 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 10:43:49.31 ID:jnCKQ+be0
故に、ぼくは公園に辿りつく。
そして、いつも座っていたあのベンチで足を止める。

ぼくはそのベンチに向かって声をかける。


(;-_-)「具が入ってないおにぎりって美味しいの?」

lw´‐ _‐ノv「……日本人たるもの、白米をおかずに白米を食えずにどうするの?」

(;-_-)「どうするったって、ねえ?」

そんなこと聞かれても困る。
そういえば、以前もこんなやりとりがあったなあ。
お盆のころを懐かしく思いながら、ぼくもベンチに腰掛ける。

(-_-)「そんなんで物足りないと思わないの?」

lw´‐ _‐ノv「大丈夫、外れもいっぱい作ったから」

(-_-)「具がレモンやからしのを?」

lw´‐ _‐ノv「……。
       まあそれ以外にもあるけど。
       なんでおにぎりの中身を知ってるの?」

(-_-)「似たようなものを以前食べてしまってね」

lw´‐ _‐ノv「……ふーん」

295 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 11:09:05.92 ID:jnCKQ+be0
lw´‐ _‐ノv「ムグ………あのさ…ムグムグ」

(;-_-)「話は飲み込んでからでいいから」

lw´‐ _‐ノv「はぁーい」

w´‐ 0‐ノv「あーん」

野菜を風呂敷で包み込むように、手のひらにあったおにぎりを一気に平らげる。
そして流れるようにお茶を手に取り、口に含んで米と一緒に嚥下する。

しばらくすると口の中に何もなくなったようで、彼女はぼくに聞いてきた。

lw´‐ _‐ノv「君の名前をおしえてくれない?」

(-_-)「……小森 マサオ。
     友達からヒッキーって呼ばれてる。
     好きなように呼ぶといいよ」

lw´‐ _‐ノv「……」


lw´‐ _‐ノv「私の名前は砂尾 示由流。
       みんなからシュールとかシューとか呼ばれてるから、君もそう呼んでくれると嬉しい」

(-_-)「分かったよ、シュール」

lw´‐ _‐ノv「よろしくね、ヒッキー」

296 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 11:14:28.71 ID:jnCKQ+be0
lw´‐ _‐ノv「いきなり暴露するけどさ。
       今日、私がここにいるのはヒート……砂尾 瞳という子の指示だったりするんだよ。
       ここにいればヒッキーという人物がやってくるから、てね」

(;-_-)「え?」

lw´‐ _‐ノv「お盆のときの話、ヒートからちょこっと聞いたんだよ。
       ……まあ、以前から『1度も顔を会わせたことないクラスメイトがいる』って、私たちの中で話題にはなってたけどね。
       それはともかく、なんでも私の名前を語る人物にあったんだって?
       詳しく教えてくれにゃい?」

(;-_-)「……」

ここにいるシュールはお盆のころの記憶がない。
今、彼女の頭には、ヒートの家に行って話した情報くらいしかないのだろう。
ヒートにだって今日、学校で話したばかりなんだし。

      『私は本物をモデルにして作られた陽炎みたいなものだからね。
       本物のシュールにはなんら影響を与えられない。
       だからヒッキーと駄弁った夜の記憶はこの身同様、ここで消える』

残暑厳しい今日の気温と反比例してぼくの頭が冷えていくのを感じる。
つまりぼくが会ったシュールは幻で、あのときの彼女ははここにいないというわけだ。
ならばぼくらは今日はじめて出会ったことになる。

( _ )「……」

lw´‐ _‐ノv「どうしたの?」

(-_-)「……ううん、なんでもない」

299 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 11:19:19.41 ID:jnCKQ+be0
それからぼくはお盆の件をシュールに聞かせた。
そこでどんなやりとりがあったのか。
そこで何をいわれたのか。
できるかぎり詳しく話した。


lw;‐ _‐ノv「……なるへそ。そりゃあすごい体験だったね」

(-_-)「……うん。
     そのおかげもあってか、今では脱引きこもりしたよ」

lw´‐ _‐ノv「ふむふむ」


lw´‐ _‐ノv「ねえ」

(-_-)「ん?」

lw´‐ _‐ノv「その陽炎の私についてkwsk聞きたいんだけど、いい?」

(-_-)「……いいよ」


302 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 11:23:37.42 ID:jnCKQ+be0
lw´‐ _‐ノv「私はどんなこと話してたの?」

(;-_-)「けっこうワケ分かんないことはなしてたよ。
      『考える葦』とか『宗教的考え』とか『縁』とか……。
      本当に無宗教なのか疑わしく思ったよ」

lw´‐ャ‐ノv「ふふ……それは厄介な奴に目をつけられたね。
       新聞はいらないって言ったほうが良かったんじゃないの?」

(;-_-)「今度現れたらそういっておくよ」

lw´‐ _‐ノv「それとその頭のネジがトんでる奴はどんな格好をしてた?
       あと、ヒッキーと一緒にどんなことして遊んでた?」

(;-_-)「格好は今の君とおんなじだよ。
      遊びは……花火くらいかな?
      常識では考えられないような花火の仕方で驚いたよ」

lw´‐ _‐ノv「ほうほう。例えばどんな?」

(;-_-)「爆竹は人に投げてくる。
      煙玉で屋外バルサンする。
      線香花火は1束まるまる火をつけても火を落とさない。
      ……今でもあのときの体験は夢じゃないかと思うほどだよ」

304 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 11:28:13.62 ID:jnCKQ+be0
lw´‐ャ‐ノv「それほどすごかったんだ?」

(;-_-)「もうすごいのなんの。
      大体、花火を大量に買いすぎ。
      あと、まとめて火をつけるなんて危なすぎだよ」

lw´‐ _‐ノv「ん?花火ってまとめて火をつけるものじゃないの?」

(;-_-)「だから違うってば。
      近所の小学生を見ればわかるでしょ」

lw´ _ ノv「おお……ジーザス……」

(;-_-)「いやいや、ジーザス……じゃないから。
      危ないから君もやらないほうがいいよ」

lw´‐ _‐ノv「ん、善処します」

(;-_-)「心配だなあ」


lw´‐ _‐ノv「それで……君の知っているシュールがいなくなってさみしい?」


(-_-)「……」

(-_-)「…………ちょっと」

lw´‐ _‐ノv「そか」

305 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 11:33:12.08 ID:jnCKQ+be0





lw´‐ャ‐ノv「でも安心しなよ。
       ヒッキーの知ってるシュールはちゃんとここにいるから」







(;-_-)「え?」



いま、なんて、いったの?


310 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 11:39:40.72 ID:jnCKQ+be0
lw´‐ _‐ノv「お盆になにが起こったかは君から大まかに教えてもらえた。
       だから私は君の知っているシュールになることができるってことだよ」


lw´‐ _‐ノv「だってそうでしょ?私たちは同じシュールなんだから。
       お盆の記憶をもらうことができたら、私は君の知っているシュールになれる。
       ……正確には記憶じゃなくて記録なんだけどね」


lw´‐ _‐ノv「それでもまったく同一の葦が私たちの中にある。
       その記録だけでもう1人の私がなにを思ったか、手に取るように分かる。
       そら、そこまでいけば2人のシュールに何の違いがある?」

(;-_-)「……あ」

lw´‐ _‐ノv「それでもまだ、もう1人のシュールにはなれないのだろうけどね。
       情報が足りないんだよね。
       君とは今日はじめて会ったから。まだ君のことをよく知らないから。
       ……だからね」


lw´‐ャ‐ノv「これから君のことを知ろうと思うんだ」

(;-_-)「っ!!」

312 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 11:44:22.06 ID:jnCKQ+be0
lw´‐ャ‐ノv「だからよろしくね。
       こんなおかしな私だけど、友達になってくれたら嬉しい」

( _ )「……う、ん。
     こちらこそよろしく」

lw´*‐ _‐ノv「感涙したの?
       私のために泣いてくれるなんて……いやはや感激だなあ」

(;-_-)「いやいや!泣いてないよ!!」

lw´‐ャ‐ノv「むっふっふ〜♪」

(;-_-)「……その笑いはなに?」

lw´‐ャ‐ノv「いやいや、なんでもないですよ〜。
       むっふっふっふっふ〜♪」


314 :(-_-)◆06NY4sFIG. :2008/08/28(木) 11:46:55.40 ID:jnCKQ+be0



残暑厳しい今日

空は快晴

太陽は大地を照らし

風はなく空気は重く暑苦しい

2人はベンチに座って駄弁りあい



―――――遠くで陽炎がゆらゆらとぼくらを見ていた。


                             fin


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