2 :愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 19:12:14.15 ID:c1BLRdYz0

lw´‐ _‐ノv「そもさん」

と、妻のシューがブーンに問いかけたのは、
雨上がりの、ある夏の昼下がりだった。
ブーンはパソコンのモニタから顔を上げないまま答える。

( ^ω^)「説破」

lw´‐ _‐ノv「『雨の弓』ってなーんだ」

んむむ、と顔を歪めるブーン。

3 :愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 19:14:09.56 ID:c1BLRdYz0

( ^ω^)「っていうか、それ謎かけじゃなくてなぞなぞだお」

lw´‐ _‐ノv「ふふん、謎かけとなぞなぞは同じくとんちを競うものなのだよ」

得意げであった。

( ^ω^)「なんにせよ、そもさんって問いかけは間違ってるお」

lw´‐ _‐ノv「ぎゃふん」

( ^ω^)「答えはあれだお」

ブーンは窓の外に目をやる。

( ^ω^)「アルカンシェル」

4 :愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 19:15:29.31 ID:c1BLRdYz0

lw´‐ _‐ノv「はて?」

( ^ω^)「フランス語だお」

lw´‐ _‐ノv「翻訳家風情が調子に乗りおってからに」

( ^ω^)「つーか仕事中だお。静かにして欲しいお」

そう言いつつも、迷惑そうな顔はしない。
手元は忙しなくキーボードをたたき続けているが、存外に余裕はあるらしい。

5 :愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 19:16:42.92 ID:c1BLRdYz0

lw´‐ _‐ノv「まったく、いつも仕事仕事と。貴様はファイヤーアントか」

( ^ω^)「なんのことやらだお」

lw´‐ _‐ノv「アリの種類。毒持ってるんだぜ、毒」

( ^ω^)「んん、意味わからんお。けど、この時期は毎年忙しいから」

分かってくれお、と言う。
やれやれという様子で、シューは答える。

lw´‐ _‐ノv「でも見送りぐらいは」

( ^ω^)「もちろんするお。そろそろペニサスちゃんも……」

6 :愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 19:18:00.25 ID:c1BLRdYz0

その時階下から「親父―!」と声がかかった。中学生になる娘の声だ。

( ^ω^)「言ったそばからかお。じゃあちょっと行ってくるお」

階段を下りてペニサスの部屋へ向かう。
ペニサスは住み込みで働いてもらっている若い家政婦さんだ。
この度結婚が決まり、この家を出ていくことになったのだった。
相手はフランスの小金持ちコッチ・ミルナという人物で、ペニサスを見染めたときの第一声、

( ゚д゚ )「ホウセキ ミツケタ」

は一部であまりにも有名であった。主にブーンたちの周りで。

7 :愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 19:19:39.35 ID:c1BLRdYz0

从 ゚∀从 「おー親父。ペニサスねーちゃんが話があるってよ」

ペニサスの部屋の前で、娘のハインが立っていた。
部屋に入っていないのは気を使っているからか。
中学に入ってから妙にませてきた、とブーンは思った。

( ^ω^)「お、ハインはちゃんと挨拶すませたのかお?」

从 ゚∀从 「あったりめぇよ。なんてったって」

言いかけた時、扉が開いてペニサスが顔を出した。
その瞬間、うっかりブーンの顔がほころんだ。
彼女の着ている真っ白なワンピースは、かつてブーンが誕生日にプレゼントしたものだった。

8 :愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 19:21:12.38 ID:c1BLRdYz0

('、`*川 「あ、ブーンさん、ハインちゃん……」

( ^ω^)「お、その服まだ持っててくれたのかお」

('、`*川 「はい、お気に入りですから。あの、ブーンさん」

从 ゚∀从 「お、そんじゃ俺は自分の部屋に戻るとするぜ」

( ^ω^)「こら、俺っていうの止めなさいっていつも言ってるお」

从 ゚∀从 「へーへー。そんじゃお二人さんごゆっくり〜」

手を振りながら歩み去るハインリッヒの背中に、

( ^ω^)「ちゃんと今月中に宿題終わらせるんだお!」

と、声をかけるブーンであった。
もう手伝ってくれるお姉さんはいないのだから、とは言わなかった。

9 :愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 19:24:01.59 ID:c1BLRdYz0

ペニサスの部屋は、狭いながらも一番日あたりのいい場所にある。
窓から入る雨上がりの太陽光はとても眩しくて、ブーンは顔をしかめた。

('、`*川 「今までお世話になりました」

ふかぶかと頭を下げるペニサス。
この娘がこの家にやってきて何年になるだろうか、と考えた。

( ^ω^)「こちらこそ、今までありがとうだお。ハインも手がかかる年頃だったし、本当に助かったお」

('、`*川「二十歳の時に都会に出てきて、六年間、赤の他人にも関わらず、家にまで住まわせてもらって、ずっとよくして頂きました。
私には兄妹はいませんが、お兄さんと、年の離れた妹ができたような、そんな毎日でした」

11 :愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 19:26:09.45 ID:c1BLRdYz0

( ^ω^)「そう言ってもらえると、こっちも嬉しいお」

('、`*川 「……実を言うと、私がいなくなった後がちょっと心配だったりしますが」

( ^ω^)「心配無用だお。ハインももう大きくなったし、自分のことは自分でできる人間に育ってくれたお」

('、`*川 「でも、ブーンさん、原稿が立て込むと、すぐご飯食べるの忘れちゃうじゃないですか」

(;^ω^)「う……」

('、`*川 「家事にしても、私がちょっと家をあけると、ゴミは溜まっちゃうし、洗濯物はきちんと畳まないし……」

それから……それから……と、心配の種は尽きないようだった。

12 :愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 19:29:47.17 ID:c1BLRdYz0

(;^ω^)「こ、これからはきちんとするお! 約束するお!」

('、`*川「ホントですか?」

(;^ω^)「ホントのホントだお。だからペニサスちゃん」

安心して、向こうに行ってくれお、と言った。

('、`*川 「はい。でも辛くなったらすぐ帰ってきますので、その時はまたよろしくお願いします」

( ^ω^)「ははっ、そりゃもちろんだお」

13 :愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 19:33:53.53 ID:c1BLRdYz0

そうして、迎えが来るまでに荷物をまとめるというペニサスを残して、部屋を出る。
部屋の前には、自室に戻ったはずのハインがしかめっ面で立っていた。

( ^ω^)「なんだお。部屋に戻ったんじゃないのかお?」

从 ゚∀从 「なーんかね。気になっちまって。普通の別れの挨拶しかしねーのな」

(;^ω^)「おいおい、ちょっと悪趣味なんじゃないかお?」

从 ゚∀从 「俺はさー、親父」

( ^ω^)「なんだお。ってか、俺って言うの止めるお」

ハインリッヒは言いづらそうに、口にしてはいけないことを言うように、

从 ゚∀从 「親父がペニサスねーちゃんの事好きなんじゃないかって、ずっと思ってたんだよ」

そう告げた。

14 :愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 19:34:47.42 ID:c1BLRdYz0

( ^ω^)「な、なんだお、いきなり……」

从 ゚∀从 「だってよー。親父、いっつも難しい本読んで他人寄せ付けねーみたいな感じなのに、ペニサスねーちゃんには妙に優しいじゃねえか」

( ^ω^)「そりゃ家族だから……」

从 ゚∀从 「それに、親父が人にプレゼント渡すのなんて、ペニサスねーちゃん以外見たことねーし」

( ^ω^)「それも家族だからだお。それにハインにも毎年渡してるお」

从 ゚∀从 「でもさ、じゃあなんだったんだよ、さっきの顔は」

( ^ω^)「さっきの顔?」

从 ゚∀从 「ペニサスねーちゃんが自分がプレゼントしたワンピース着てくれてるのを見た、あの顔だよ!」

ああ、子どもってのは、なんで時にこう鋭いのだろう、とブーンは思った。

16 :愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 19:37:32.13 ID:c1BLRdYz0

( ^ω^)「そりゃあプレゼントを気に入ってもらえたら嬉しいに決まってるお」

从 ゚∀从 「でも……」

( ^ω^)「つまらないこと言ってないで、宿題でもするお。もうペニサスちゃんはいなくなっちゃうんだから」

今度はそう言った。
一瞬でも、ひどくつまらないことを考えた自分にも、言い聞かせるように。

17 :愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 19:38:48.15 ID:c1BLRdYz0

自室に戻ると、シューが海外小説の原書を難しい顔で眺めていた。

lw´‐ _‐ノv「これは……むぅ」

( ^ω^)「どうかしたかお?」

lw´‐ _‐ノv「さっぱりわからん」

( ^ω^)「そりゃフランス語だからだお」

lw´‐ _‐ノv「ほほう。して、これをどうするのだ?」

( ^ω^)「出版社からの企画で、小難しい文学を、現代のなるべく解り易い言葉で翻訳するって仕事だお。
今回の仕事の邦題は『ゲロ』だお。そりゃサルトルも草葉の陰で泣いてるお」

lw´‐ _‐ノv「なるほど。確かめて来ようか?」

( ^ω^)「いいお。知りたくもない」

18 :愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 19:42:54.13 ID:c1BLRdYz0

ブーンはパソコンの前に陣取り、作業の続きを開始する。
こうしている時は全てを忘れて、キーボードを打つことに没頭できる。
本当なら、誰にも邪魔されたくない、大事な時間だった

lw´‐ _‐ノv「ところで、旦那さん」

しかし、妻は別である。
作業を止めるわけではないが、それでも返事はきちんとする。

( ^ω^)「なんだお、奥さん」

lw´‐ _‐ノv「さっきのハインとの会話だがね」

19 :愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 19:44:04.58 ID:c1BLRdYz0

( ^ω^)「聞いてたのかお。母子そろって盗み聞きとは、侮れないお」

lw´‐ _‐ノv「ええい、ちゃかすでないぞ。なんだね、君はペニサスちゃんの事を好いていたのかね?」

( ^ω^)「違うお。全然違うお」

lw´‐ _‐ノv「隠さなくてもよろしいぞ。こう見えても私は、米の銘柄を当てることだけは長けているのだから」

( ^ω^)「それが何の関係が……」

21 :愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 19:45:15.02 ID:c1BLRdYz0

lw´‐ _‐ノv「私に遠慮しているのなら、やめてほしい」

(;^ω^)「……」

lw´‐ _‐ノv「それだけ。では、私はそろそろ、もち米を集める作業にでも戻ろうか」

(;^ω^)「シュー、あの……」

lw´‐ _‐ノv「君もそろそろ新しいホウセキを見つけたまえ。私もそれを望んでいるよ」

そういって、シューは部屋から出て行った。
部屋に独り残されたブーンは、頭をひとつ掻いたあと、キーボードを打つ作業に没頭するのだった。

22 :愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 19:46:08.76 ID:c1BLRdYz0

そして男がやってきたのは、それから数時間もしないうちだった。

( ФωФ)「ごめんください。ペニサス様をお迎えにあがりました」

皺ひとつないスーツをぴしりときめた男は、ミルナの家の使用人らしい。
男の到来は、つまりペニサスとの別れを意味していたのだった。

23 :愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 19:47:39.03 ID:c1BLRdYz0

( ^ω^)「もう荷物は全部まとめたのかお?」

('、`*川「はい、大きな荷物は後日送ってもらうことになりますけど」

( ^ω^)「かまわんお。住所はまた知らせてくれお」

でも、行く前に、とペニサスは言った。

('、`*川「あの、すいません、もう少しだけ待っててもらえますか?」

男は頷き、あとは直立不動。ぴくりとも動かない。
命じられたこと以外は、呼吸を除きいっさい無駄なことと言わんばかりであった。
訓練された使用人というのが、かくも業務に忠実なのかと、ブーンは驚きを隠せなかった。

24 :愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 19:48:29.02 ID:c1BLRdYz0

ブーンたちは居間に腰をおろした。
三人で膳を囲んだちゃぶ台に、三人全員がそろうのは、ひょっとしたら今日が最後なのかもしれない、と思った。

从 ゚∀从 「あーあ、明日っからペニサスねーちゃんいねーのかー。飯どうすんだよ親父」

( ^ω^)「飯のことだけかお。もっとなんかないのかお」

('、`*川「簡単なものは冷凍してあるから、しばらくは大丈夫よ。あとはハインちゃん、教えた通りに作れば大丈夫だから」

( ^ω^)「なに、ハイン、ペニサスちゃんに料理習ってたのかお?」

('、`*川「そうですよ。ハインちゃん飲みこみ早いから、教えたって程の苦労もなかったですけど」

从*゚∀从 「なんだよーダセーから言うなよー。親父、仕方ねぇから俺が料理作ってやるから、感謝しろよな」

(;^ω^)「食えるんだろうな、それ。シューみたく生米出されても困るお」

26 :愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 19:49:35.81 ID:c1BLRdYz0

シューの名前を出した途端、三人の顔が一点に集中する。
仏壇。写真の中で微笑む女性。
ブーンの妻である人は、いつもそこで三人を見守っていた。

('、`*川「私は会ったことはありませんけど、えっと、私が来る少し前に」

( ^ω^)「交通事故だお。ちょっと変わったやつだったけど、最後はベタ過ぎて笑っちゃうお」

lw´‐ _‐ノv「む、失敬だな君は。コシヒカリの特売日で気が急いていたのだから仕方がなかろう」

从 ゚∀从 「よく言うよ。親父、その後泣きっぱで、式は全部親戚のおじさん頼みだったの、
俺ちっちゃかったけど、ちゃんと覚えてんだからな」

27 :愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 19:50:27.78 ID:c1BLRdYz0

ペニサスが仏壇の前に座り、手を合わせる。

('、`*川「今まで、お世話になりました」

lw´‐ _‐ノv「恐縮ッス」

从 ゚∀从 「今日はお盆だからなー。案外かーちゃんそこらへんにいたりしてな」

lw´‐ _‐ノv「ほう、よくぞ気づいた。さすがわが娘。さあ早く新しい米を供えるんだ」

( ^ω^)「これもう乾いちゃってるから、新しいのに変えるお」

お供え物のご飯を取り換える。みんなのいる前ではこれくらいしかできないから。

28 :愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 19:51:10.46 ID:c1BLRdYz0

('、`*川「さて、じゃあそろそろ行きます」

( ^ω^)「お、そうだおね」

从 ゚∀从 「んじゃーいっちょお見送りしますか」

lw´‐ _‐ノv「新しい米―」


( ФωФ)「もうよろしいのですか?」

男は先ほどと変わらぬ姿勢で玄関に立っていた。

('、`*川「ええ、お待たせしました。では、二人とも……」

( ^ω^)「ああ、元気で」

从 ゚∀从 「いっちまうのかー」

lw´‐ _‐ノv「元気でなー」

29 :愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 19:52:35.13 ID:c1BLRdYz0

外に出ると、黒塗りの高級車が止まっていた。
男はペニサスを後部座席に乗せると、自分も運転席に乗り込み、ボタン操作でペニサスの座っている側の窓を開けてくれた。

('、`*川「本当にお世話になりました。どうかお元気で」

从 ∀从 「ねーちゃん。俺ちゃんと料理作るから、食べに来てくれよな」

('、`*川「もちろん。美味しいの期待してるからね」

从 ;∀从 「ねーちゃん、俺…俺……」

lw´‐ _‐ノv「無理すんな」

たまらず、ハインは家の中に飛び込む。

30 :愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 19:53:10.29 ID:c1BLRdYz0

lw´‐ _‐ノv「あーらら」

( ^ω^)「今生の別れってわけでもないお。そっとしとくお」

('、`*川「ブーンさん」

( ^ω^)「うん」

( 、 *川「あの、今言うのもおかしな話なんですが…その……」

lw´‐ _‐ノv「おお、ただならぬふいんき。ありゃ、変換できない」

('、`*川「いえ……ワンピース、ありがとうございました。一生大事にします。それと」

( ^ω^)「なんだお?」

('、`*川「あなたのホウセキ、見つけてくださいね」

31 :愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 19:54:06.73 ID:c1BLRdYz0

窓が閉まり、車が発進する。
夏の高い空に向かうような、そんな力強い走りで。

( ^ω^)「行っちゃったおねー」

誰もいないと思い、シューにそう言った。
後ろを振り返る。
しかし、誰もいなかった。

( ^ω^)「そうか」

雨上がりの、ある夏の昼下がり。
盆の終りの、綺麗な雨の弓が空にかかる、気持ちの良い日。

( ^ω^)「君も、あの虹を渡って、行ってしまったんだおね」

32 :愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 19:55:42.44 ID:c1BLRdYz0

毎年シューは盆にだけ、ブーンの前にだけ現れる。
その意味を、ブーンはなるべく考えないようにしていたが、今は、分かってしまったような気がした。

( ^ω^)「せめて、見送りぐらいさせてくれお」

34 :愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 19:56:37.84 ID:c1BLRdYz0

家に入ると、真っ赤な目をしたハインが座っていた。
慰めるように、ブーンは頭をなでる。

( ^ω^)「もう行っちゃったけど、またすぐに会えるお」

从 ;∀从 「分かってらあ、そんなこと」

( ^ω^)「そっか」

从 ;∀从「親父ぃ。俺さー」

( ^ω^)「こら、一人称」

从 ;∀从「親父って仕事中、俺が何やってもぜんぜんこっち見てくれねえじゃん。
でもさ、かーちゃんとペニサスねーちゃんに関することだけは、仕事中でも返事するしさ、
結局、俺、それが結構悔しかったんだよなー」

35 :愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 19:57:39.61 ID:c1BLRdYz0

( ^ω^)「うん。……いや、ごめんだお」

从 ;∀从「ペニサスねーちゃんとくっ付いてほしかったよ。かーちゃんもそれを望んでたろうし、ペニサスねーちゃんもきっと気づいてたと思うぜ」

( ^ω^)「そうかもしれないおね」

また涙がぶり返してしまったハインの頭をなでつづけるブーンだった。
やがて、しゃっくりをしながら、ハインが言う。

36 :愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 19:58:19.31 ID:c1BLRdYz0

从 ;∀从「腹、減ったね」

( ^ω^)「お、もうそんな時間かお。どうする? ペニサスちゃんが作っていってくれた冷凍ものでも……」

从 ;∀从「ん、俺が作る」

力強く、ハインはそう言った。

( ^ω^)「お、助かるお。もうシューもペニサスちゃんもいないんだから、台所はハインが頼りだお」

从 ;∀从「おう、任せとけ」

ハインが台所に行く。
その背中を見て、背格好はどことなくシューに似てきたかな、と思った。

37 :愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中:2008/06/09(月) 20:00:05.71 ID:c1BLRdYz0

もしかしたらシューはもう現れないのかも知れない。
それはとても悲しいことだったが、仕方のないことだった。


lw´‐ _‐ノv『君もそろそろ新しいホウセキを見つけたまえ。私もそれを望んでいるよ』


( ^ω^)「ごめんだお、シュー。君にそんなことを言わせて」

君のように愛せる人がまた現れるかは分からないけれど、
彼女のように魅かれる人がまた現れるかは分からないけれど、
今までどうもありがとう。

( ^ω^)「これから頑張ってみるお。どうか見ててください」

そのためにも、まずはハインの料理で、腹ごしらえをしなくては。




お題
・雨の弓
・ホウセキ ミツケタ
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