1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/14(土) 22:52:31.74 ID:9OsDd2LQ0
― 素直家二階 ―


o川*゚ー゚)o「はー順位操作してぇ……露骨に順位操作してぇ……」

川 ゚ 々゚)「おーいごはんだよー」ガチャ

o川*゚ー゚)o「うおお誰っ!? って、お姉ちゃんか……一番使われてない」

川 ゚ 々゚)「ひどいなー。それよりなんでイライラしてるの?」

o川*゚ー゚)o「まあちょっと来てみ。来てこれ見てみ」

川 ゚ 々゚)「はーい。なにこれ、パソコン?」

o川*゚ー゚)o「で、この今閲覧してるページ」

川 ゚ 々゚)「ふむふむ。ええと『ブーン系妹にしたいAAランキング』?」

o川*゚ー゚)o「そう! それだ!」

3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/14(土) 22:57:32.71 ID:9OsDd2LQ0
川 ゚ 々゚)「なにこれー?」

o川*゚ー゚)o「そのまんまの意味だっての。妹キャラとしての人気」

川 ゚ 々゚)「えーと、一位が妹者ちゃん」

o川*゚ー゚)o「これは仕方ない! 名前に妹入ってるし!」

川 ゚ 々゚)「二位がヘリカルちゃん」

o川*゚ー゚)o「これも仕方ない! ロリキャラだから!」

川 ゚ 々゚)「次の三位が……しぃちゃん」

o川*゚ー゚)o「おかしいだろてめぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

川 ゚ 々゚)「わっ!?」

o川*゚ー゚)o「お前の妹要素どこにあるんだよこの野郎!」

o川*゚ー゚)o「普通末っ子キャラで売ってる私じゃないの、そこは!?」

5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/14(土) 23:00:39.20 ID:9OsDd2LQ0
川 ゚ 々゚)「でも四位にも五位にもキューちゃんいないよ?」

川 ゚ 々゚)「五位とかヒートお姉ちゃんだし」

o川*゚ー゚)o「があああああ傷口を抉るな!」

川 ゚ 々゚)「ご、ごめん」

o川*゚ー゚)o「はぁ、はぁ……」

o川*゚ー゚)o「……私の順位が知りたいか……」

川 ゚ 々゚)「え? いやそんなに……」

o川*゚ー゚)o「知りたいのか?」

川 ゚ 々゚)「あ、はい……」

o川*゚ー゚)o「私の妹キャラランクは現在八位だ……」

川 ゚ 々゚)「なんかコメントしづらい位置……」

8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/14(土) 23:04:47.83 ID:9OsDd2LQ0
o川*゚ー゚)o「なぜだ! なぜ私がそんな順位に甘んじてるんだ!」

o川*゚ー゚)o「素直家が増えていっても私は一番下で固定されてるというのに……」

川 ゚ 々゚)「なんかごめんね、いきなりお姉ちゃんで」

o川*゚ー゚)o「謝罪はいいよ。うちらビジネス姉妹だし」

o川*゚ー゚)o「叶姉妹と同じシステムを導入してるんで」

川 ゚ 々゚)「でも、なんでキューちゃんの順位低いんだろうね」

o川*゚ー゚)o「決まってるでしょ……露出ですよ露出」

川 ゚ 々゚)「露出?」

o川*゚ー゚)o「私の出番が少ないの! 明らかに!」

o川*゚ー゚)o「たまに使われても性格終わってる腹黒キャラだったり」

o川*゚ー゚)o「あるいはクッソスレの女神としてだよ! キュート成分どこいった!」

9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/14(土) 23:09:47.11 ID:9OsDd2LQ0
川 ゚ 々゚)「うーんわかんない」

o川*゚ー゚)o「大体我々素直家は『素直』って部分ほとんど使われないわけよ」

川 ゚ 々゚)「たしかに」

o川*゚ー゚)o「大抵下の名前の部分で作品ごとのキャラの性格が決められるわけよ」

川 ゚ 々゚)「なるほどなるほど」

o川*゚ー゚)o「私の場合中心となる属性は『キュート』。つまりかわいい」

川 ゚ 々゚)「いいじゃん」

o川*゚ー゚)o「よくねーよ! ブーン系の女AAなんてどいつもかわいい役ばっかだろうが!」

o川*゚ー゚)o「標準装備されてるんだよその設定は!」

o川*゚ー゚)o「つまり私に備わっているものは無! 武器なし! 素手!」

川 ゚ 々゚)「あー」

13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/14(土) 23:17:04.09 ID:9OsDd2LQ0
o川*゚ー゚)o「たとえばクー姉ちゃんなら冷静でかわいい」

o川*゚ー゚)o「ヒー姉ちゃんなら熱血でかわいい」

o川*゚ー゚)o「シューお姉ちゃんなら意味不でかわいい、ということになる」

川 ゚ 々゚)「ねー私は私は? わくわく」

o川*゚ー゚)o「頭おかしいキチガイキャラってのがあるだろ」

川 ゚ 々゚)「頭おかしくなんてないもん。ぐすん」

o川*゚ー゚)o「なに『くるうちゃんカワユイ(キュピーン』って言って欲しかったの?」

川 ゚ 々゚)「うん」

o川*゚ー゚)o「あるだけマシだよ。そういうキャラ設定なんて希少種だっての」

o川*゚ー゚)o「ところが私はかわいいだけ!」

o川*゚ー゚)o「これではライバルと張り合えませんな!」

o川*゚ー゚)o「私に出来る役は大概他のAAでもまかなえますからな!」

18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/14(土) 23:23:52.61 ID:9OsDd2LQ0
o川*゚ー゚)o「あぁぁぁぁぁぁ出番をよこせやああああ!」ボゴン!

o川*゚ー゚)o「作者は至急私をヒロインに任命しろ! 私で一本書きやがれ!」ゲシゲシ!

川 ゚ 々゚)「おっ、落ち着いて! くまさんに罪はないよ!」

o川*゚ー゚)o「はぁ、はぁ……怒りに震えて思わずヒグマを殴ってしまったが……」

川 ゚ 々゚)「え、ぬいぐるみの感じで諭したけどリアル熊だったの?」

o川*゚ー゚)o「覚えておけこれが叙述トリックだ」

o川*゚ー゚)o「とにかく私は人気がほしいの!」

o川*゚ー゚)o「そのためにはまず使ってもらわないと……」

川 ゚ 々゚)「だけど私もあまり使われてないよ? 私もいろんな話に出たい」

o川*゚ー゚)o「お姉ちゃんは『=lニニフ』←これ持ってあひゃあひゃ言ってればいいじゃん」

川 ゚ 々゚)つ=lニニフ「おー」

21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/14(土) 23:28:05.17 ID:9OsDd2LQ0
川 ゚ 々゚)「でも刃物振り回してアヒャヒャってつーちゃんが本家だよ?」

o川*゚ー゚)o「キャラかぶりを恐れるな」

川 ゚ 々゚)「最近はおっさんトリオのキチガイちゃんの領分だし……」

o川*゚ー゚)o「気にするな。ここはVIPだ」

川 ゚ 々゚)つ=lニニフ「それにこれ、外見がチャーハン作る奴と同じ……」

o川*゚ー゚)o「シャラップ! 贅沢言うんじゃない!」

川 ゚ 々゚)「ご、ごめん」

o川*゚ー゚)o「私はニニフを掲げることすら出来ないんだぞ……」

o川*゚ー゚)o「未だに『oo』が何なのか議論になっているからな!」

o川*゚ー゚)oつ=lニニフ「見ろ! 何がなんだかわからんだろ!」

川 ゚ 々゚)「ほんとだ、どれが手だかわかんない……」

23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/14(土) 23:33:41.41 ID:9OsDd2LQ0
o川*゚ー゚)o「つーわけで」

o川*゚ー゚)o「今作者連合に呼びかけて私を配役するよう頼んでるから」

川 ゚ 々゚)「そんな連合実際にあるの?」

o川*゚ー゚)o「いいんだよフィクションにいちいち突っ込むな」

o川*゚ー゚)o「とにかく名前が売れないことにはランキングが上がらない……」

川 ゚ 々゚)「ねぇキューちゃん」

o川*゚ー゚)o「なによ?」

川 ゚ 々゚)「せっかくだし、キューちゃん自身も宣伝活動したら?」

o川*゚ー゚)o「バカ、それだとモロ自演になっちゃうでしょ。そんなのすぐバレる」

o川*゚ー゚)o「だから間接的にしてもらうの」

川 ゚ 々゚)「なんかやり方が汚いなぁ」

28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/14(土) 23:39:38.13 ID:9OsDd2LQ0
o川*゚ー゚)o「私だって、なにも無償でやってもらおうとしているわけじゃない」

o川*゚ー゚)o「ちゃんと相応の報酬も用意してある」

川 ゚ 々゚)「うわ、いよいよもって汚いよ」

川 ゚ 々゚)「末っ子キャラなのに大人のえげつないやり方だよそれ」

o川*゚ー゚)o「いいんだ……私はかわいい以外何もない女だから……」

川 ゚ 々゚)「ここまで見た感じかわいいと思えるところがひとつもないんだけど」

o川*゚ー゚)o「と・に・か・く! 人気を獲得するためにこっちも画策してるの!」

o川*゚ー゚)o「お姉ちゃんも出番が欲しかったら努力しなさい」

川 ゚ 々゚)「はーい。あ、それよりごはんの時間を教えにきたんだった」

o川*゚ー゚)o「ああそういえばだった……冷蔵庫に千枚漬け残ってたかな……」

川 ゚ 々゚)「キュートキャラなんだったらもっと女の子っぽいものを食べようよ」

32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/14(土) 23:44:01.83 ID:9OsDd2LQ0
― 素直家 ―


川 ゚ 々゚)「お姉ちゃーん、キューちゃん呼んできたよー」

川 ゚ 々゚)「ってあれ?」

( ^ω^) ξ゚听)ξ ('A`) (,,゚Д゚) (*゚ー゚) 从 ゚∀从 (´・ω・`) ガヤガヤ

川 ゚ 々゚)「お客様? なんかいっぱいいるけど」

o川*゚ー゚)o「はっ、あれは!」

川 ゚ 々゚)「どうしたの?」

o川*゚ー゚)o「どうしたのじゃない! 早くこっちに来て隠れろ!」

川 ゚ 々゚)「わっわっ!? 引っ張らないでよもう……どうしてリビングから逃げるの?」

o川*゚ー゚)o「あそこは我々がいていい場所じゃない……」

川 ゚ 々゚)「?」

38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/14(土) 23:49:01.90 ID:9OsDd2LQ0
川 ゚ 々゚)「なんで?」

o川*゚ー゚)o「見たらわかるでしょうが! あれは明らかにメジャーAAの集い!」

o川*゚ー゚)o「私たちみたいなマイナーAAが存在していていいところではない……」

o川*゚ー゚)o「まさに聖域……」

川 ゚ 々゚)「人気者になりたいんじゃなかったの?」

川 ゚ 々゚)「だったらああいう集まりに混ざっていけばいいのに」

o川*゚ー゚)o「職場以外で顔を合わせることは無礼に当たるじゃん!」

o川*゚ー゚)o「私みたいな格下がそんな馴れ馴れしく……ああ! 想像しただけで死ぬ!」

川 ゚ 々゚)「精神的に負けてるよ……」

o川*゚ー゚)o「しかし何の話をしてるか興味があるので覗き見はするぞ」

川 ゚ 々゚)「私も気になるー」

45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/14(土) 23:55:11.17 ID:9OsDd2LQ0
川 ゚ -゚)「まあなんだ」

川 ゚ -゚)「本当は私の家族全員揃った会食の場にしたかったんだが」

川 ゚ -゚)「誰も来ないな」

( ^ω^)「もういいから早く食べたいお。さっきから腹が鳴ってるんだお」

ξ゚听)ξ「あんたには辛抱というものがないわけ?」


川 ゚ 々゚)「なんか私たちも入っていいみたいな空気だけど」

o川*゚ー゚)o「騙されるな! それは気体ではあるがエアロゾルだ!」

o川*゚ー゚)o「しかし流石メジャーAA軍団……オーラが凄まじい……」


川 ゚ -゚)「仕方あるまい。私も恥ずかしながら空腹だ」

川 ゚ -゚)「我々だけで始めるとするか」

( ゚∀゚)「待ってました!」

50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 00:02:24.89 ID:9OsDd2LQ0
川 ゚ -゚)「それではブーン系AAを代表して、ブーン、よろしく頼む」

( ^ω^)「いいから食うぞおまいら!!」

('A`)「うおおおおおおおお三ヶ月ぶりの牛肉だああああああ!!」

( ・∀・)「食い気が激しいなあみんな」

(´・ω・`)「それにしても、どうしてクーの妹は来ないんだい?」

川 ゚ -゚)「知らん」

(,,゚Д゚)「いやあしかし、こうして『テンプレ1』の面々が揃うのも久しぶり」

从 ゚∀从「感慨深いものがあるな!」

(*゚ー゚)「本当ね。普段は作品の中でしか絡まないけど……」

(´・ω・`)「君たちは、いや僕たちか、いろいろな名作で共演してきたからね」

ζ(゚ー゚*ζ「私はまだ新人気分です」

52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 00:07:24.70 ID:7+708su/0
o川*゚ー゚)o「がああああデレの野郎、私と大して変わらんくせに一軍に入りやがって……」

川 ゚ 々゚)「でもデレちゃんってテンプレの一番上段にいるよね」

o川*゚ー゚)o「あれはコネだ! 偉大なる先輩ツンのコネに過ぎない!」

川 ゚ 々゚)「えー」


('A`)「あれか? 俺たちがブーン系を引っ張ってきたみたいな?」

( ´_ゝ`)「ぶっちゃけそういう自負はある」

从'ー'从「だよね〜」

('、`*川「みんな主役を晴れる器で羨ましいわよ。私なんて脇役ばっかり」

( ´∀`)「いやいや名脇役あってのブーン系だモナ」

川д川「そうそう」


o川*゚ー゚)o「すみません……脇役ですらない端役ですみません……」

54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 00:12:37.43 ID:7+708su/0
ガチャ

ノパ听)「ありゃ? 皆さんなんの集まりで」

川 ゚ -゚)「お、ようやく帰ってきたか」

lw´‐ _‐ノv「これは……談合」

川 ゚ -゚)「違うわ。いいから二人とも早くこっちに来て座れ」

ノパ听)「いやあ、でもなんか、気が引けて」

ξ゚听)ξ「何言ってるのよ。あなたたちも立派なメジャーAAじゃない」

( ・∀・)「そうそう、気後れすることはないよ」

(´<_` )「二人とも何度も主役を務めてきたじゃないか」

ミ,,゚Д゚彡「二○○七、八年頃から既にメジャーだったしな」

lw´‐ _‐ノv「じゃあ遠慮なく」

59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 00:20:20.59 ID:7+708su/0
(`・ω・´)「今後もいっそうの活躍を期待する」

( ゚∀゚)「負けねぇからな」

ノハ*゚听)「ありがとうございます!」

ノパ听)「これからも精進しますゆえ!」

*(‘‘)*「ぶっちゃけこれ書いてる奴もヒートさんが素直家で一番好きですから」

ノパ听)「あ、それはいいです」

lw´‐ _‐ノv「ちっ」

川 ゚ -゚)「悔しがる意味がわからないんだが」

( ^Д^)「まあ今後もよろしく頼むわ」


o川*゚ー゚)o「なんか馴染んでるしさー、ああお姉ちゃんたちが羨ましい……」

62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 00:25:38.17 ID:7+708su/0
o川*゚ー゚)o「こうしてはいられない!」ピポパ

川 ゚ 々゚)「どこに電話してるの?」

o川*゚ー゚)o「こちらも召集をかける。あ、もしもし、暇? 暇だろどうせ」

o川*゚ー゚)o「今から白木屋に来い。全速力で。んじゃ」

o川*゚ー゚)o「はー次々……」

川 ゚ 々゚)「ねーごはん食べてきていい?」

o川*゚ー゚)o「あそこで食事できる権利が我々にあると思ってるのか!」

o川*゚ー゚)o「……ふう、こんなもんでいいか。さて私も向かうかな」

川 ゚ 々゚)「いってらっしゃい」

o川*゚ー゚)o「なに寝ぼけたこと言ってるの! お姉ちゃんも来るの! 自覚持とう!」

川 ゚ 々゚)「えっ? えっ?」

63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 00:30:08.61 ID:7+708su/0
― 白木屋VIP支店 ―


川 ゚ 々゚)「……」

o川*゚ー゚)o「おら! 店員さっさと次の焼酎持ってこいや!」

o川*゚ー゚)o「とっくに一時間居座ってるんだからこっちの飲むペースくらい把握しとけ!」

川 ゚ 々゚)「まあこっちはいいとして……」

(´・_ゝ・`)「なー、なんで俺たち呼ばれたの?」

(゚、゚トソン「まったく理解できないんですけど……」

( "ゞ)「同意見です」

川 ゚ 々゚)「なんなんだろう、このメンバーは……」

<_プー゚)フ「帰っていい?」

o川*゚ー゚)o「拒否! とりあえず私の話を聞いてよ!」

64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 00:35:29.94 ID:7+708su/0
o川*゚ー゚)o「さて私が君たち二軍を呼び集めたのは」

o川*゚ー゚)o「あ、お一人ほど三軍も混じっておりましたね。失敬失敬」

( "ゞ)「こっち見て笑わないでくださいよ……」

爪'ー`)y‐「ぶっちゃけ俺もお前には優越感を感じている」

ミセ*゚ー゚)リ「私も」

(-@∀@)「僕も」

( "ゞ)「なんてことだ、ここは晒し首にされる場だったのか」

o川*゚ー゚)o「とにかく、我々はいわゆる『マイナーの中のメジャー』」

o川*゚ー゚)o「使われるか使われないか微妙ならラインのメンバーなわけです」

⌒*リ´・-・リ「言われて見ればそんな面々……」

o川*゚ー゚)o「お前らはそれでいいのか! 現状を打破したいと思わないのか!」

66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 00:41:37.81 ID:7+708su/0
(゚、゚トソン「ええ……私は特に不満があるわけではありませんけど」

【+  】ゞ゚)「自分も何回か主役やったし」

▼・ェ・▼ワンワン

(・(エ)・)クマー

川 ゚ 々゚)「さっきのリアル熊連れてきてたのか……」

o川*゚ー゚)o「……お前らはゴミクズだ!」バン!

o川*゚ー゚)o「ただなすがままに自分が置かれている立場を受け入れる家畜だ!」

o川*゚ー゚)o「向上心のない者は死すべし!」バンバン!

リハ´∀`ノゝ「あのー店内であまり大声で騒ぐのは困るのですが……」

o川*゚ー゚)o「黙っとけや! てめぇは焼酎を運ぶ機械に徹しとけ自給七百八十円!」

リハ;´∀`ノゝ「す、すみません……ロックでいいですか」

o川*゚ー゚)o「早くしろ。今のグラスがあと二十秒後には空く」

68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 00:46:26.20 ID:7+708su/0
o川*゚ー゚)o「……そしてそれは私も変わらない」

o川*゚ー゚)o「私たちは人間になりすました豚なんだ……」

川 ゚ 々゚)「みんなごめん、キューちゃん酔ってるから……」

(´・_ゝ・`)「いや普段からこんなもんだろ」

o川*゚ー゚)o「お前ら、今の店員を見たか?」

<_プー゚)フ「さっきの? 名前すらわかんねーけど」

o川*゚ー゚)o「あれが真の空気キャラだ。モブキャラと変わらない」

o川*゚ー゚)o「お前らもあのようになりたいのか? ああ!?」

(-@∀@)「そういうわけじゃ……」

o川*゚ー゚)o「AAは日々生まれ続ける……今の座で安寧することはできない」

o川*゚ー゚)o「私たちはもっとメジャーにならなければいけないの!」

73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 00:52:35.44 ID:7+708su/0
o川*゚ー゚)o「ゆくゆくはテンプレ一番目に格上げ……」

o川*゚ー゚)o「数多の作品でヒロインを務め上げる私……」

o川*゚ー゚)o「メジャーAAのみに参加を許された華の社交界デビュー……」

o川*゚ー゚)o「そして与えられる永遠の妹キャラの称号……」

⌒*リ´・-・リ「でも、どうするつもりなの?」

o川*゚ー゚)o「わかってる。わかってる」

o川*゚ー゚)o「君たちにも有名になりたいという気持ちがあるのはわかってるさ」

【+  】ゞ゚)「ねぇよ」

o川*゚ー゚)o「そうだな、まずはメジャーAAを排斥した作品に出ること」

( "ゞ)「なぜですか? どうせなら大衆性のあるキャラと組んだほうがよさそうですが」

o川*゚ー゚)o「馬鹿がっ! 石も糞に混ざればダイヤに見えるだろうが!」

川 ゚ 々゚)「なんてひどい思考」

75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 00:57:12.87 ID:7+708su/0
o川*゚ー゚)o「だがまったくの無名と絡むのも効果がない」

o川*゚ー゚)o「途端にインディーズ臭が増す」

<_プー゚)フ「ははあ、なんとなくわかったぞ。俺たちを呼んだ理由」

(´・_ゝ・`)「俺も。要は俺らみたいな微妙なポジションの奴だけの作品に出るってことだな?」

o川*゚ー゚)o「理解が早くて助かりますわ」

爪'ー`)y‐「ってことは俺らは糞なのかよ」

o川*゚ー゚)o「いやお前は石だ。まだこの中では比較的石寄り」

(゚、゚トソン「私たちの間にも格差があるんですか?」

o川*゚ー゚)o「そう。そしてお前も私と同じ程度に石」

川 ゚ 々゚)「私は?」

o川*゚ー゚)o「糞」

川 ゚ 々゚)「石がいいよー」

79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 01:02:30.51 ID:7+708su/0
o川*゚ー゚)o「いいか、独断だがこの十人の中で石なのは」

o川*゚ー゚)o「私、トソン、デミタス、フォックス、オサム。これだけ」

o川*゚ー゚)o「残りは糞」

ミセ*゚ー゚)リ「ひどい! 私結構目立ってるほうだと思ったのに!」

o川*゚ー゚)o「自分をよく省みろ! 二重人格設定はどこにいったんだ!」

o川*゚ー゚)o「なに元気っ娘ポジに納まろうとしてんの?」

ミセ;゚ー゚)リ「そ、それは……」

o川*゚ー゚)o「誰でもいいんだよその役目は!」

▼・ェ・▼ワンワン!

(・(エ)・)クマー

o川*゚ー゚)o「獣は論外」

80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 01:09:35.19 ID:7+708su/0
o川*゚ー゚)o「アサピーは眼鏡キャラなだけ。他のAA弄れば代用できる」

o川*゚ー゚)o「リリ。他の女キャラに勝てない」

⌒*リ´・-・リ「知ってたけど! 知ってたけど!」

o川*゚ー゚)o「エクストも同様。優先して使われることあるのお前?」

<_プー゚)フ「悪かったな、キャラが薄くて……自由に使いやすいと言い換えてくれ」

川 ゚ 々゚)「じゃあ私は?」

o川*゚ー゚)o「お姉ちゃんは逆に使いづらい」

川 ゚ 々゚)「むう。否定できなくて悔しい」

( "ゞ)「あの……十人の中にカウントされてなかったんですが……」

o川*゚ー゚)o「あ、ごめん。三軍は忘れてた(笑)」

( "ゞ)「この女を法的に訴えることはできないのでしょうか」

82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 01:15:56.25 ID:7+708su/0
(´・_ゝ・`)「でもだな、キュート」

o川*゚ー゚)o「なに?」

(´・_ゝ・`)「俺たちしか出てない作品って面白いの? 個性の問題で」

o川*゚ー゚)o「確かにデミタスやデルタで出来る役は大概ショボンでも出来る……」

【+  】ゞ゚)「名役者だからな、あの辺のキャラは」

o川*゚ー゚)o「しかし、だからこそ」

o川*゚ー゚)o「この二軍メンバーの中でなら新しい魅力が生まれるかも知れない!」

(゚、゚トソン「なるほど……」

o川*゚ー゚)o「つーわけで出演交渉してくる」ポペプピパ

ミセ*゚ー゚)リ「あれってどこに掛けてるの?」

川 ゚ 々゚)「さあ……」

84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 01:22:04.94 ID:7+708su/0
o川*゚ー゚)o「ダメだ、全然契約がとれない……」

o川*゚ー゚)o「普段から私を売り込むよう頼んでたはずなのに……」

o川*゚ー゚)o「複数名の出演となるとやはりこれだけの額ではダメか……」

o川*゚ー゚)o「私にも予算というものが……」

川 ゚ 々゚)「思ったんだけど依頼してる割にキューちゃんの出番増えてないよね」

川 ゚ 々゚)「お金持っていかれてるだけなんじゃ」

o川*゚ー゚)o「やめろ! それ以上はいけない!」

o川*゚ー゚)o「ちっ、仕方ない。言い出しっぺの法則というものがあるし……」ピピピ

o川*゚ー゚)o「あ、これ書いてる>>1? とりあえずお前が書け。即刻。以上」

o川*゚ー゚)o「……よし! 契約ひとつ取れたぞ!」

川 ゚ 々゚)「ええ……>>1の作品とか乗り気しない……」

86以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 01:28:07.40 ID:7+708su/0
ミセ*゚ー゚)リ「>>1……」

(-@∀@)「>>1か……」

⌒*リ´・-・リ「よりによって、>>1……」

o川*゚ー゚)o「がっかりする気持ちはわかる!」

o川*゚ー゚)o「だけど後から誰か続いてくれる人が現れるかもしれないだろ!」

<_プー゚)フ「この>>1が先駆者になれるとは思えないんだけど」

o川*゚ー゚)o「もっともな意見だけど! とりあえず試してみろ!」

o川*゚ー゚)o「あいつ『マイナーAA使ってみたい』とか無駄にやる気だったし!」

川 ゚ 々゚)「わ。キューちゃんがステマするお話と思わせて」

川 ゚ 々゚)「>>1が作品を使ったステマだったってオチ?」

o川*゚ー゚)o「ふっ……」


89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 01:32:01.04 ID:7+708su/0
というわけでここからは僕が彼女たちを活躍させるスレです


使用AAはこの13キャラ

o川*゚ー゚)o 川 ゚ 々゚) (゚、゚トソン ミセ*゚ー゚)リ ⌒*リ´・-・リ
(´・_ゝ・`) 【+  】ゞ゚) ( "ゞ) 爪'ー`)y‐ <_プー゚)フ (-@∀@)
▼・ェ・▼ (・(エ)・)


お題・AA・ジャンルを指定してくれたらそれで書きます

92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 01:35:03.29 ID:7+708su/0
待って! とりあえず安価させて!
>>95

95以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 01:37:10.47 ID:S9MWPOmT0
(゚、゚トソン
ファンタジー


99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 01:46:30.75 ID:7+708su/0
魔法使いならば黒い猫を飼え、とは言うが、
しかし私が使い魔にしたのは熊だった。腕力に惚れ込んで。

(-(エ)-)zzz

(゚、゚トソン「私のベッドで寝ないでください!
     重くてどかせないし毛が落ちるし臭いが移るし、ああああああ!」

もちろん邪魔だった。
想像以上に邪魔だった。

(・(エ)-)「くま?」

(゚、゚トソン「ハァ、ハァ……眠るなら自分の寝床で眠ってください……」

(・(エ)・)「くまー」

鳴き声がおかしいので、ややもすると熊ではない可能性すらあった。

100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 01:47:35.85 ID:7+708su/0





    〜 (゚、゚トソンの宅急便のようです 〜




 

103 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 01:59:20.94 ID:7+708su/0
正直これほどまでに役に立たないとは思わなかった。

まず食費。

(゚、゚;トソン「ありえません」

飼料の代金が書かれた羊皮紙を受け取るたびに、私は強い眩暈感に襲われる。
『基本草食なので大丈夫ですよ!』などと使い魔販売業者は言っていたが、
しかし量が半端ではないので結果的に額も凄まじいことになる。

おまけに時々、おやつ感覚なのか肉をねだってくる。
あげないと暴れて私の生命に危機が訪れるので、仕方なく与えるが、それにしても。

(゚、゚トソン「穀潰しめ……」

そんな言葉でしか表せなかった。
私もたまには肉をキロ単位で食べてみたいものだ。

当然その皺寄せは私のほうへと波及している。
わざわざ専用の生活スペースを小屋の中に確保する必要もあったし、
本人――本熊はじゃれているつもりであっても、力は完全に獣なので、
私に抱きつく都度ローブに損傷がいき、経済的な事情もあり夜なべして縫い直さねばならない。

結果衣食住すべてにおいて負担になっている。

106 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 02:08:50.30 ID:7+708su/0
終わっているのが移動で、熊の重量もあり箒には乗れず、基本的には徒歩。
小屋の中に置いておこうにも、
守護契約を済ませているので指定範囲内でしか単独で行動できない。

距離の問題だけではなく、この使い魔は巨大な図体をしている癖にメンタル面に弱点があるようで
私が一時間ほど近辺の散歩に行っているだけで泣き出してしまうのだ。
その場合帰宅時の小屋内の荒れようが恐ろしいことになるので、
外出の際はどんな些事であっても一緒に行動することが私の義務になっている。

熊が去った後、今や部屋のインテリアと化している箒を見つめながら、私はぽつりと漏らす。

(゚、゚トソン「埃を掃く道具が埃をかぶっているとはどういうことですか」

そもそも魔法使いにとって飛ぶ道具なのでその台詞すらおかしいのだが、
長らく飛行していないのでこんな感想しか口から出てこない。

(-、-トソン「はあ」

私がため息を吐いたのとほぼ同時に、木戸を叩く音が聴こえた。

(゚、゚トソン「来客?」

珍しい。胡乱な頭を抱えながら戸口へと向かい、開ける。

109 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 02:17:00.99 ID:7+708su/0
(´・_ゝ・`)「やあ、これはどうも」

玄関の先には山高帽を被った中年男性が立っていた。
冴えない面で、これといった特徴もない平凡な男だ。

(゚、゚トソン「私に何かしら用事でもあるのでしょうか?」

こんな森の奥深くにある辺鄙な木造小屋にまでわざわざ来ているのだから、
そうでなければ理由が行動と符合しない。

(´・_ゝ・`)「えっ? はあ、いやそうなのです。
      先日、ヴィップの町でこの森に魔女が住んでいるという噂を聞きつけまして」

(゚、゚トソン「……まあ、いかにも私がその魔女ですけども。
     しかし『魔女』というのは心外ですね。『魔法使い』と呼んでください」

(´・_ゝ・`)「違うのですか?」

(゚、゚トソン「『魔女』と『魔術師』と『魔法使い』は別物です。
     それで、なんの用件でしょうか? 
     生憎ですが、無理な頼みだとしたら断らせていただきますよ」

110 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 02:24:51.03 ID:7+708su/0
(´・_ゝ・`)「無理……難儀なことではあると思いますけど」

男性は下がった眉尻を更に下げて、申し訳なさそうな表情をした。

(´・_ゝ・`)「こちらになるのですが」

言いながら、男性は懐から赤褐色の小箱を取り出し、私に手渡す。
唐突に得体の知れないものを右手の中に握らされたので私も少々戸惑いを覚える。

(゚、゚トソン「えっ、なんですかこれ? 中に何かが……」

(´・_ゝ・`)「ああっ、ちょ、ちょっと!」

小箱の蓋を開けようとする私の左手を男性は慌てて制止した。

(´・_ゝ・`)「すみません、中身を覗こうとするのはやめてください」

(゚、゚トソン「なぜですか?」

(´・_ゝ・`)「いえ、その、中は空っぽなのですが、蓋を開けてはならないのです」

さっぱり意味が理解できなかった。

111 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 02:33:11.88 ID:7+708su/0
(´・_ゝ・`)「これはオルゴールなのです」

(゚、゚トソン「オルゴール? これが?
     失礼ですが、ただの正方形の箱にしか見えませんけど」

(´・_ゝ・`)「ええ、ただの正方形の箱ですから」

これは何かの問答なのだろうか。
もしかしたら私は危うげな新興宗教に勧誘されているのかもしれない。

(゚、゚トソン「今のうちに言ってきますが、
     私は魔法使いだからと言って悪魔崇拝者というわけではありません」

(´・_ゝ・`)「なんの話ですか。それよりですね、実はこれ、魔道具なのです」

(゚、゚トソン「魔道具? 魔力が込められた品なのですか?」

いかなる日用品であっても、
魔力によって本来の機能を超越した機能を持たされればそれは魔道具である。

たとえば空飛ぶ箒などはその代表格だし、
休日広場で大道芸師が相方にしている喋る人形――腹話術ではなく本当に喋る――なども、
それに当てはまる。

115 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 02:48:31.12 ID:7+708su/0
(´・_ゝ・`)「町で評判の魔道具店がありまして、かねてから私も興味があり行ったのです。
      そこでオルゴールとして売られていたのが、
      音を奏でる装置ではなく、音自体を封入する箱――これなのです」

(゚、゚トソン「ははあ、なるほど」

つまり形あるものだけでなく、形のないものまで収納可能になったということか。

(´・_ゝ・`)「主人の話では適当な音楽をこれに入れて適当に聴け、だそうです。
      実際にこの箱を聖堂やホール、あるいは酒場などに持ち込んで、
      聖歌隊の合唱や楽団の生演奏を入れてもらいに行く人が多いみたいです。
      そして聴きたい時に、好きな場所で聴くことができる」

(゚、゚トソン「わかりましたよ、先程蓋を開けるなとおっしゃったのが。
     それは箱ですから、出してしまったものは戻さない限り出たまんま。
     だけどそこから出てくるものは『音』だから決して元に戻すことはできない」

放たれた音は霧散していく。

(´・_ゝ・`)「そうなのです。一度きりなのです。
      もちろん、また違う音楽を入れ直せば再利用は可能ですが」

しかし、と男性は続けた。

116 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 02:56:22.09 ID:7+708su/0
(´・_ゝ・`)「ここに入っているのは音ではなく声なのです」

(゚、゚トソン「声?」

(´・_ゝ・`)「はい。私の」

(゚、゚トソン「いやそこまでは訊いていませんが。
     それにしてもなぜ声なんかを?」

自分の声を持ち運んで聴くだなんて、私なら御免だ。
とてもじゃないけれど堪えられない。恥ずかしい。むしろ嫌な気持ちになるかも。

(´・_ゝ・`)「私が聴くのではないのです。聴かせるためのものなのですよ。
      実は私には娘がいるのですが、
      しかし出稼ぎにヴィップまで来ているので長らく会えておりません。
      手紙を読んでも、文面といえば直接話がしたいの一点張り。
      遠く離れた地で随分と寂しい思いをさせてしまっているようです。そこで、この箱」

(゚、゚トソン「はあ、つまり、これは肉声による手紙みたいなものですか」

(´・_ゝ・`)「そうです!」

119 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 03:06:14.01 ID:7+708su/0
(´・_ゝ・`)「娘は私の声が聴きたがっているみたいでしたから、ちょうどいいと、
      そう思い立ってこの箱を購入することにしたのです」

こういうのを親心と言うのだろうか。
親馬鹿とも言われるが、しかし我が子を案じる心情は私にもわからなくもない。

(゚、゚トソン「これが母性の目覚めでしょうか……」

(´・_ゝ・`)「はあ?」

(゚、゚トソン「いえ、お気になさらず。ええと、ということはですね、
     まさかとは思いますけど、これを私に配達して欲しい、なんて依頼では……」

(´・_ゝ・`)「その通りなのです。これを娘の元にまで届けてほしいのです」

男性の口調にはかなりの熱がこもっている。
押し流されそうになるのをなんとか踏ん張って、私の都合、というか立ち位置を伝える。

(゚、゚トソン「あのですね。私はそういったことを仕事にしているわけじゃありませんよ?
     魔法使いはなんでも屋じゃないんです。
     第一、郵便網は既に十分各地に張り巡らされてるじゃないですか。
     専門家に頼んでください。パニーニはパニーニ屋に、です」

120 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 03:17:23.51 ID:7+708su/0
(´・_ゝ・`)「手紙ならばそれでいいでしょう。しかしこれは魔道具。
      普通に障害なく送り届けるということは不可能です。
      魔法使いのあなたもご存知でしょう?」

(゚、゚トソン「ええ、それは私ももちろん周知のことですが……」

当然の話だが、魔道具がこの世界に与える影響は果てしなく大きい。

ただ娯楽用途であるのみならばまだいいが、
例を上げると私が所有している箒。飛行能力はあらゆる分野において効力を発揮する。
火を吐く鍋やひとりでに超音波を奏でるヴァイオリンに至っては、
他愛ない製品がベースにもかかわらず殺傷能力まで有してしまっている。

そのために魔道具は厳しい管理下に置かれ、決して郵便事業で扱われることはない。

さらには使い魔、契約を済ませた梟なり鴉なり猫なり狼だったりも、
魔法の管理下にあるとして一般には民間流通に乗ることが禁じられている。

(゚、゚トソン「そのせいで島流しに出来ないんだけど」

(´・_ゝ・`)「先程から独り言が多くありませんか?」

123 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 03:26:57.24 ID:7+708su/0
とにかくだ。
魔道具を娘に渡したいが配達の手立てがなくて困っている。
そこでこの男性は私に個人輸送を頼んでいるということだろう。

(゚、゚トソン「どこまでも面倒くさそうですね」

(´・_ゝ・`)「もちろんタダとは申しません。謝礼は支払います」

(゚、゚トソン「……謝礼?」

その甘美な響きに私は思わず食いついてしまう。

(´・_ゝ・`)「とりあえず、このぐらいで……」

男性が指を立てる。一本、二本、三本、四本、五本。
綺麗に平手になった。

(゚、゚トソン「五百ですか……悪くない話ではありますが……」

(´・_ゝ・`)「いえ五千ですよ」

(゚、゚;トソン「五千っ!?」

やりましょう。二つ返事での快諾だった。

124 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 03:34:22.96 ID:7+708su/0
(゚、゚トソン「是非やりましょう。やらせてください。
     これは私にしか出来ない依頼なので他を当たっても無駄です」

何分使い魔のせいで糊口をしのぐような生活なので儲け話にはめっぽう弱い。
私のまとまった収入といえば魔法協会からの支援金程度だが、
それだけではとても満足な魔法使いライフが送れるとは到底思えない。
というか現実に送れていない。小麦粉が生命線の日々である。

(゚、゚トソン「……だから、ここを逃すわけには……」

(´・_ゝ・`)「引き受けていただけるんですか?」

(゚、゚トソン「はい。」

(´・_ゝ・`)「ありがとうございます! それではこちら……」

男性は今度は、懐からじゃらじゃらと金属がぶつかりあう音が鳴る袋を出して掲げた。

(´・_ゝ・`)「さっきお話した前金になります。どうぞ」

そしてそれが私の手の中に。

126 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 03:44:09.17 ID:7+708su/0
手の中に――

(゚、゚;トソン「ぶほぉっ!?」

ずしりと重い。これが幸せの重さと解説されたら間違いなく信じる。

(゚、゚;トソン「えっ? えっ? えっ? どういうことですかこれ?」

(´・_ゝ・`)「ですから前金の五千モリタポですよ。金貨五十枚分。中を改めてみてください。
      成功報酬はこれとは別に、倍の一万出します」

(゚、゚;トソン「あばばばば……」

金貨。それは永遠の憧れ。少年少女と、世間の荒波に揉まれた大人たちの夢。
一モリタポが銅貨一枚。銅貨十枚で銀貨一枚。銀貨十枚で金貨一枚。
つまりは金貨一枚で百モリタポに相当する。
それが五十枚。私の財布に五十枚。そして更にはこれの倍の枚数が私に――

なんだこれは。天国なのか。
ここが失われた楽園だったのか。

そんな俗物的な考えですら神聖な表現に昇華されてしまうほどの夢心地に、
私は狼狽しながらも浸っていた。

129 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 03:53:00.97 ID:7+708su/0
(゚、゚トソン「おほん……お任せください。
     必ずやお嬢さんの元にお届けいたしましょう」

(´・_ゝ・`)「おお、お願いしますよ」

私の承諾と宣言を受けて男性は晴れやかな顔になる。
私も口元がにやけてしまうのを堪えられないほどに大笑いしたくなる気分だった。
いやあ人助けとは気持ちがいい。本当に。最高。

(゚、゚トソン「……ところで、どうして私なんかに?」

(´・_ゝ・`)「ああそれですか。実は娘は海を隔てた土地におりまして。
      こちらがその住所を記した羊皮紙になるのですが」

(゚、゚トソン「えっ」

(´・_ゝ・`)「ですが魔法使いのあなたなら空飛ぶ箒でひとっ飛びでしょう?
      一番早くて安全です。日帰りできる距離にあなたがいてくれて助かりました」

(゚、゚トソン「いや、あの、もしもし」

130 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 04:03:38.06 ID:7+708su/0
(´・_ゝ・`)「それでは頼みましたよ!
      私の住まいもその地図の裏にメモしておきましたんで、
      完了したら報告に来てください。それでは!」

そう言い残して、男性は喜びを抑えきれない軽やかなステップで私の小屋から離れていった。
その背中が見えなくなった頃、ふと私は振り返る。

(・(エ)・)「くま?」

居候がいた。
尻をついたのんきな体勢で。
部屋の隅では箒が木偶の坊のように突っ立っている。

(゚、゚トソン「……」

右手上にある小箱と、左手中に握っている金貨袋を見つめながら、しばし私は熟慮する。

(゚、゚トソン「……船旅ですね……」

精神的に長い旅路になりそうだ。

131 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 04:12:42.26 ID:7+708su/0
※※※


ヴィップ対岸の港町、シベリアにその少女は住んでいるらしい。
ここよりも随分と北に位置する寒冷な土地である。

<_プー゚)フ「おいそこ! そこの橙色した三角帽の女!」

その港に向かう帆船に乗り込む直前になって、
私は不意に船員らしき男に呼び止められた。

<_プー゚)フ「あんた何者よ? そいつなんなんだよ!?」

(゚、゚トソン「見ての通りの魔法使いで、これは使い魔の熊ですが」

(・(エ)・)「くまくま」

(゚、゚トソン「もちろん販売目的ではありませんので大丈夫です」

<_プー゚)フ「いやそういうことじゃなくてだな、そのまま船に熊を乗せるつもりなのか?」

(゚、゚トソン「仕方ないでしょう。檻でもあるって言うんですか?」

133 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 04:22:52.82 ID:7+708su/0
<_プー゚)フ「う、ううん……しゃーねぇか……。
        大人しくさせておけよ。船に傷つけたら全額弁償だからな」

(゚、゚トソン「とのことです。よかったですね」

(・(エ)・)「くまー!」

<_プー゚)フ「うわ、抱きつくな!? 離れろ! おわあああ!!」

相棒が喜びを爆発させているのを横目に、私は早々と綱梯子を昇り乗船した。

<_プー゚)フ「おい待てって! こいつどうやって船に上がらせるんだよ!?」

下で船員が騒いでいる。着ていた服は熊に引き裂かれて半裸になっていた。
あれも弁償させられるのだろうか。いやいや『船』と限定していたので大丈夫だろう。

(゚、゚トソン「この程度の距離なら呼び寄せの呪文で好きなだけ移動させられますよ。
     契約者使役魔法の基本ですから。ほら」

(・(エ)・)「くまま?」

私が呪文を唱えると共に熊が消失。一瞬の間が合ってから、私の傍らに再出現した。

(・(エ)・)「くまー♪」

(゚、゚;トソン「私にも抱きつくのはやめなさい! 私の半裸はまずいです!」

135 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 04:31:41.98 ID:7+708su/0
熊の興奮状態をなんとか鎮めると、
疲れたのか船壁にもたれて眠りについてしまった。

(-(エ)-)zzz

(゚、゚トソン「この子は自分のサイズと筋力が頭に入っているのでしょうか……」

ただ、こうして寝息を立てている時だけはまだ可愛らしい。

(゚、゚トソン「それにしても、シベリアですか……」

おそらく一週間もあれば入港できるだろう。
幸い私は船酔いするような体質ではないので心配はないのだが、問題は熊のストレス。
船上生活で鬱憤が溜まって暴走に至る可能性は捨てきれない。

(゚、゚トソン「そのケアも私の役目ですか……どこまでも手のかかる子です」

選んだ私が悪いのだけど。

(゚、゚トソン「私はあなたの母親じゃないんですよ。あくまで主人です。
     ……わかってます?」

熊の耳元でそっと囁いてみるが、相変わらず気持ちよさそうに鼻ちょうちんを膨らませるばかりだった。

136 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 04:41:01.04 ID:7+708su/0
( "ゞ)「かわいいペットですね」

そんな挨拶に視線を上げてみると、背の高い男性が私の隣に立っていた。

(゚、゚トソン「ペットではなく使い魔です。その線引きは重要です」

( "ゞ)「いやこれは失敬」

使い魔はどんなに絆を深めようとも愛玩動物ではない。
私は少々腹を立てた。

( "ゞ)「私はデルタという者でして、これから故郷シベリアに帰る途中なのです」

(゚、゚トソン「はあ、そうですか」

( "ゞ)「シベリアは本当にいい町です。今もあの五種の豆類のスープの味が恋しくて……」

その後も男性はいかに自分の生まれた町が素晴らしいかを長々と語り聞かせてきたが、
微塵も興味がなかったので適当に相槌を打って流していた。

137 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 04:49:29.54 ID:7+708su/0
※※※


航海が始まって今日で四日が経つ。
ようやく旅の半分が終わったといったところか。

(゚、゚トソン「往復と考えると四分の一ですが」

熊は案外居心地がいいのか、他の乗客に迷惑をかけることもなくのんびりと過ごしている。
逆に、老若男女問わず乗客たちから可愛がられている始末。

( "ゞ)「……で、シベリアの西には町全体を見渡せる見張り塔がありまして、
    今は戦争もありませんから誰でも自由に利用できるんですね」

私はというと、未だにデルタに粘着されて長話を聞かされ続けていた。

(゚、゚トソン「私が熊だったら寝落ちしても問題ないのに……」

( "ゞ)「どうかされましたか?」

(゚、゚トソン「いえ、別に」

140 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 05:03:35.32 ID:7+708su/0
まだ穏やかな青波の音に耳を預けていたほうが気が安らぐ。

( "ゞ)「なにせ寒い気候の地域ですから、空気が澄んでるんですよ。
    だから塔の上から見る夜景がより格別に……」

<_プー゚)フ「お、こんなところにいたのか、あんたたち」

(゚、゚トソン「船員さん」

助かった。船の上で助け舟が来た。

<_プー゚)フ「船長と航海士からの通達だ。
        雲と波の様子からして今夜は嵐になるってさ。
        だから夜は甲板に出たりしないで大人しく船室にいてくれよ」

( "ゞ)「せっかくシベリアの海域に入って、星が綺麗に望めるんですがねぇ」

<_プー゚)フ「ごちゃごちゃ言うなよ。死にてぇのかって話。
        ま、それだけだ。じゃあな」

(゚、゚トソン「あ、ちょっと!」

早すぎる。もうちょっといて欲しかった。
案の定隣から自慢話が再開され、私の忍耐力の鍛錬が始まった。

142 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 05:14:50.83 ID:7+708su/0
結局それが日没まで続き、私が解放されたのは夕食の時間。

(・(エ)・)「くまくま♪」

といっても私の夕食ではなく、熊のである。
普通の乗客は食堂で食べることができるがこの子はそうはいかない。

(゚、゚トソン「相も変わらず健啖家ですね。
     多めに木の実を買い込んでおいて正解でした」

熊の餌を切らせることだけは避けなければならない。
熊は雑食なので腹を空かせばなんでも食べる。つまりは、そういうことである。

(゚、゚トソン「さて、空模様も忠告どおり怪しくなってきましたし、
     降られる前に私たちも部屋に戻りますか」

(・(エ)・)「くま!」

(゚、゚トソン「言っておきますが、今日こそ私がベッドですよ。
     主人を地べたで寝させる使い魔がありますか、まったく」

(・(エ)・)「くまま?」

(゚、゚トソン「わからないふりですか……何度それでやり過ごすなんですか……」

149 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 05:23:52.46 ID:7+708su/0
船内の部屋には広くはないが、かといって窮屈ということもない。
もっとも私の場合はお荷物がいるので他の乗客よりは狭苦しく感じているけれども。

(-(エ)-)zzz

(゚、゚トソン「……部屋に入るなりベッドにごろんですか……」

今宵も床に毛布を敷いての就寝が確定である。

(゚、゚トソン「ですが、これもあと今日含め三晩のこと。
     我慢しましょう大人として……それにしても揺れますね」

どうやら嵐が始まったらしい。
風雨が闇を裂く音はあまり聴こえないが、しかし、船体の振動でそれが伝わってくる。

こんな夜は早めに寝て越えてしまうに限る。

(゚、゚トソン「おやすみなさい。聞こえてないでしょうけど」

(-(エ)-)「くま……」

そして私は横になって、ゆっくりと目を閉じた。

151 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 05:31:13.47 ID:7+708su/0
(-、-トソン「……ん……ううん……」

いつ頃から意識が落ち、何時間ほど眠りについていたのだろう。
船の揺れがちょうど眠りの浅い波長と重なって、私は不意に目が覚めてしまった。

(゚、-トソン「……おや?」

瞼をこすり視界をはっきりさせると、すぐに異変に気づく。

(゚、゚トソン「いない……?」

熊がベッドの上から消えている。
起き上がって急いで灯りを灯したが、やはり船室内に熊の姿は見えなかった。

(゚、゚トソン「おかしいですね」

胸騒ぎがする。

なんだか――嫌な予感がする。

また、がたん、と船体が傾いた。
私は転げそうになった姿勢を立て直して、部屋の外へと飛び出した。

153 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 05:40:09.53 ID:7+708su/0
<_プー゚)フ「おお、あんた……魔法使いの?」

廊下に出た刹那、船員の男に遭遇した。
肩にはなぜかロープを担いでいる。

<_プー゚)フ「何やってんだ、部屋にいてろって伝えたろ!」

(゚、゚トソン「それどころじゃないんです! どいてください!」

<_プー゚)フ「こっちだってそれどころじゃねぇんだよ!
        転落者が出たんだ! 乗客の中から!」

(゚、゚トソン「え……・?」

脳天に叩きつけられた強い衝撃を、私は確かに感じた。

<_プー゚)フ「見張りの報告だ! 親の目を盗んだのか知らないけどよ、
        女の子が一人甲板に出てしまってたんだ!
        今、必死に船の側面にしがみついてる!
        だがこのシベリア地方の寒さだ、いつまで持つかわからねぇ!
        だから俺は早く行かなきゃなんねぇんだよ! ほら、どけ!」

私は突き飛ばされるように道を譲り、そして、しばらく立ち尽くしていた。

154 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 05:50:24.98 ID:7+708su/0
ようやく頭の芯から霞が晴れると、私は無意識に船員を追って走り出していた。
熊の行方も気になる。だがそれ以上に人命は最優先。

甲板に出ると同時に、雨が飛沫となって私の顔にふりかかる。

<_プー゚)フ「なんで来てんだよ! これは俺たち船乗りの出る幕だ!」

(゚、゚トソン「私は魔法が使えます! 必ず役に立ちます」

<_プー゚)フ「チッ、知らねぇぞ……船長、どんな状況ですか?」

船長と呼ばれた男が、葉巻片手に手短な説明を始める。

爪'ー`)y‐「ああ、今は外側の船壁に取り付けられたフックをつかんで耐え忍んでいる状態だ。
      体は半分海水に浸かっているが、
      こちらの呼びかけにも答えられているから体力的にも精神的にもまだ余裕はあるだろう。
      だからそれほど危険視する必要はない。が」

そこで一旦区切り煙を吐く。
煙は激しい風に流されて、すぐに散り散りになってしまった。

爪'ー`)y‐「いつまでそれが続くかなんて定かじゃない。急いでロープを降ろせ」

<_プー゚)フ「うっす!」

156 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 05:59:26.62 ID:7+708su/0
船長の指示を契機に、船員数名が協力してマストにロープを結びつけ始める。
日中マストに張られていた真っ白い帆は既に収納され、船は進行を止めていた。

爪'ー`)y‐「あー……トソンさんだったか。乗客の」

(゚、゚トソン「はい」

爪'ー`)y‐「手助けしたいって気持ちはありがたい。
      だけどこれは俺たちで対処できる問題だ。安心していてくれ」

(゚、゚トソン「みたい……ですね。私もほっとしました」

あとはロープを体に巻きつけてもらって引っ張り上げるだけだろう。

爪'ー`)y‐「幸運にも淀みなく済ませられそうだし……」

と、言いかけた瞬間。

ぐらりと。
風がより勢力を増し、船が高波に衝突して大きく傾いた。

それから間もなく、船員の間で悲鳴が上がった。

<_プー゚)フ「まずい! 今の揺れで女の子が手を離しちまった!」

157 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 06:08:25.67 ID:7+708su/0
爪;'ー`)y‐「なんだと!? 舵を止めろ! 小船を出せ!」

<_プー゚)フ「とっくに止めてますって!
        それに今からじゃ小船を準備しても間に合いません!」

爪'ー`)y‐「クソッ……おい水練に自信のある者! 俺の後に続けるか?」

<_プー゚)フ「無茶です! この荒波ですよ!?」

爪'ー`)y‐「この荒波に客がさらわれてるんだろうが!」

怒鳴り声に船員の背筋はびくんと収縮した。私まで叱られたような気分になる。

(゚、゚トソン「あ、あ……」

大事件だ。
どうすればいい。私に出来ることはなんだ。私にしか出来ないことは。

(゚、゚;トソン(ダメ、整理できない!)

錯乱してしまっている。
この不足の事態に私は――
いくら魔法が使えようと、結局、勇気と決断力がないならば、なんの力もないのと同じだ。

158 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 06:21:08.72 ID:7+708su/0
<_プー゚)フ「いや……待ってください! あれ!」

突然、船員が驚愕の叫びを上げ、目を見張って海面を指差した。

爪'ー`)y‐「な、なんだありゃ?」

なにやら影が見える。あれは――

(゚、゚トソン「ふえ……?」


(・(エ)・)「くま!」


熊だ。
私の使い魔が小船に乗っている。

(゚、゚トソン「な、なんであなたがそんなところにいるんですか!?」

(・(エ)・)「くま!」

(゚、゚トソン「え? 今日の昼間この女の子と喋ったの?」

159 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 06:26:57.44 ID:7+708su/0
(・(エ)・)「くまくま! くま!」

利口にも、こちらに理由を告げながら少女が流されている地点へと進んでいっている。

(゚、゚トソン「そこで夜空の星を眺めたい、部屋を抜け出そうかなという話を聞いて……。
     不安だから様子を見に行ったら予想通り甲板に出ていて、海に落ちちゃって、
     助けるために小船を探しに行ってただって?」

(・(エ)・)「くままま!」

<_プー゚)フ「ってかあんたよく熊の言語を理解できるな……」

(゚、゚トソン「主従関係にありますから当然です」

私たちの業界における常識だ。

爪'ー`)y‐「そんなことを気にかけてる場合じゃない!
      いずれにせよ渡りに船だ! あの熊のサポートをするぞ!」

<_プー゚)フ「で、ですが船長」

爪'ー`)y‐「なんだ、何かあるなら歯切れよく報告しろ」

161 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 06:36:59.78 ID:7+708su/0
<_プー゚)フ「あの小船はせいぜい二人か三人しか乗れません!
        熊一頭分でも既に体重オーバーなんですよ!」

言われてみれば、船は浮力を満足に保てず若干浸水している。

<_プー゚)フ「あれで更に女の子を乗せるとなれば、帰還前に沈んじまいます!」

爪'ー`)y‐「ううむ……」

船員たちが苦悩の表情を浮かべている。
けれど、私はそれよりも、熊の行動力に胸を打たれていた。
普段は臆病で怠惰な奴だと思っていただけに、一層こみ上げてくるものがある。
むしろ、精神的に未熟だったのは私のほうだ。

そうしているうちに、熊が女の子の元へと辿り着いた。

(・(エ)・)「くまー!」

海中から女の子を抱え上げる熊。

(・(エ)・)「……くま?」

だが、救出した途端に小船が沈下を始めた。

162 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 06:46:56.48 ID:7+708su/0
熊は不思議そうな顔をする。どんどん体が沈んでいっている。
私はただそれを遠目に見ることしか出来なかった。

<_プー゚)フ「ほらやっぱりです! あれじゃろくに進めませんよ!」

熊は、ようやく自分の重量が原因であると気づいたらしい。
一度息を吸って、そして。

(・(エ)・)「……くまっ!」

海中へと飛び込んだ。
過積載から解き放たれた小船は、ゆっくりと浮上し、そして水面を漂う。

(゚、゚トソン「あの馬鹿っ……何してるんですか!?」

潮の流れが功を奏したのか、
女の子だけになった救護船は徐々に帆船へと近づいてきていた。

爪'ー`)y‐「あいつ……そういうことかよ!」

今度は船長が上半身の衣服を脱ぎ捨てて海へと身を投げる。
そして波の立った海面を驚くほどの速度で?き分けて小船へと向かっていく。
乗船。
二人を乗せた小船はまだ支障なく浮いている。

164 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 06:57:28.68 ID:7+708su/0
櫓を漕ぎながら船長が大声でこちらに連絡をする。

爪'ー`)y‐「女の子は無事だ。体は凍えきってるが、まだ脈がある」

その報告に胸を撫で下ろす船員たち。
だけど私は気が気ではなかった。それよりも。

(゚、゚;トソン「あの子はどうなったんですか!?」

爪'ー`)y‐「今後ろから泳いで着いてきている。が……」

そこで船長は口ごもる。

爪'ー`)y‐「正直、厳しいな。水温で体力を奪われてしまってるようだ
      動きが鈍い。泳ぎも得手ではなさそうだしな。
      とりあえず、一度俺が戻ってから再び船を出して……」

(゚、゚;トソン「そんな悠長なことをしてる余裕はあるんですか?
      あの子は得意不得意以前に泳げないんですよ!
      体力がなくなったからじゃなくて単純に泳げないんです!」

165 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 07:05:54.39 ID:7+708su/0
爪'ー`)y‐「はあ? だったらあれは泳いでるんじゃなくて溺れてるのか?」

(゚、゚トソン「そうですよ! ですからなんとかしないと……」

思考の糸を手繰る。
浮き輪をくくりつけたロープを投げようにも、
人間用に設計されたものであの巨漢を支えられるとは思えない。

<_プー゚)フ「なあ、あんた」

(゚、゚トソン「なんですか!」

<_プー゚)フ「あれやればいいじゃん。この船に乗り込む際に使ってた魔法。
        確かさ、あれ熊を瞬間的に移動させてただろ?」

(゚、゚トソン「呼び寄せは……この距離では厳しいものがあります。
     せめてもう少し近づかなければ……」

<_プー゚)フ「この暴風だ! 今から帆を張ることなんて出来ないぜ!」

(゚、゚トソン「わかってます! だから考えてるんじゃないですか!
     私の命の問題でもあるんですよ!」

166 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 07:18:36.72 ID:7+708su/0
<_プー゚)フ「はあ? なんであんたの命が関係するんだ?」

(゚、゚トソン「熊と私は守護契約を結んでいます。
     その代償として、一定の距離から離れることが出来ないんです。
     これを破った瞬間、両者ともども罰が下されます。絶対死という名の」

恐怖と格闘しながら私は次の台詞を接続していく。

(゚、゚トソン「……ですからこのままあの子が流されてしまうと、
     私の四肢はちぎれ、無残な姿を晒すことになるでしょうね」

それが主人と使い魔のルールだ。
使い魔は主人を裏切れないし、主人も使い魔を邪険に扱えない。
永遠の忠誠と永遠の支配。

<_プー゚)フ「おいおい、じゃあどうすんだよ!
        あいつだけじゃなくあんたまで死んじまうじゃんか!」

(゚、゚トソン「……助かる方法はあります。ありますが……」

それは契約の破棄を意味する。

そんな非情な選択を、私に取れというのだろうか。

167 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 07:27:13.97 ID:7+708su/0
海面上に一ヶ所、せわしなく水柱が吹き上がっている場所がある。
あそこに熊がいる。

一瞬、熊の顔が海の中から覗いて、視線が交差した。
その瞳はとても穏やかで、その顔はわずかに微笑みかけているように、私の目には映った。

(゚、゚トソン「あの子は……私にそうしろとでも言うのでしょうか」

自ら海に身を投じた以上、熊なりにそこまで考えているのだと推測できる。
だけど。
だけどだ。

(゚、゚トソン「……ふざけないでくださいよ」

己の使い魔を見捨てるほど私は残酷でも冷徹でもない。

たとえ日頃どれだけ迷惑を被っていようと、
熊は熊。
私が選んだ相方だ。

(゚、゚トソン「どこまで手がかかる子なんですか。
     いいからそこで大人しくしていなさい。すぐ向かいますから」

169 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 07:35:34.60 ID:7+708su/0
<_プー゚)フ「でもどうすんだよ!」

(゚、゚トソン「……浮き輪を貸してください」

<_プー゚)フ「は? これか? こんなんじゃ熊の体は無理だぜ?」

(゚、゚トソン「いいから早く!」

<_プー゚)フ「わ、わかったよ……ほら」

(゚、゚トソン「協力感謝します」

箒の力では熊を乗せては飛べない。
元が浮遊する機能からはかけ離れているから。

(゚、゚トソン「だけど、浮くための道具に浮く力をこめれば……」

浮き輪に手をかざし、専心する。
全身を駆け巡る魔力を指先に集束させ、慎重に放出し、そして呪文を口ずさむ。

私は魔道具製作の専門家ではない。
それでも、少なくとも所有している魔力に関しては一人前の魔法使いであるという自負はある。
魔法のことは魔法使いだ。やって出来ないということは、きっとないだろう。

170 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 07:46:57.26 ID:7+708su/0
(゚、゚トソン「……できました」

<_プー゚)フ「なあ、なにやったんだ……それ?」

(゚、゚トソン「空飛ぶ救命用浮き輪、試作型、です」

全工程を終了し、今度は私自身が行使する魔力を練るために精神を統一し直す。
いける。絶対に熊を連れて飛べる。

(゚、゚トソン「ふっ!」

宙に向かって浮き輪を投げる。
すると浮き輪は空中で静止。
それが私の意志に応じて上下左右前後に動くと、船員たちからどよめきの声が漏れ出た。

(゚、゚トソン「うん、うん。これだけ操れればおそらく問題ないでしょう」

すっと輪の上に飛び乗る。
私が急に乗ってもびくともしない。箒より数倍安定感がある。

(゚、゚トソン「これなら……!」

私は意を決して浮き輪を出発させ、灰色の雨のカーテンを切り裂いた。

173 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 08:00:23.09 ID:7+708su/0
冷たく降りしきるシャワーの中で私は水柱と波紋を頼りに熊を探していた。
熊がいるのだとしたらそこは他よりも水の動きが激しいはず。

(゚、゚トソン「……あそこ!」

目視確認し、急降下。
海面すれすれで停止してその場に留まる。

(゚、゚トソン「今助けますから!」

ローブの袖を巻くり上げて、漆黒の海へと震える手を突き刺す。

(゚、-;トソン「うっ……!」

肌を刺すような極寒に、思わず私は顔をしかめてしまう。
けれどまだ右腕一本だけの苦しみ。
全身をこの冷淡で凶暴な海の中に預けている熊と比べたらあまりに些細なことだ。

(゚、゚;トソン「早く……つかみなさい」

その呼び声に応じるかのように、私の手を握る感触があった。

174 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 08:12:39.54 ID:7+708su/0
(゚、゚トソン「っ! 引き上げますよ!」

浮き輪が上昇を開始する。
しかし、途中から上がらなくなってしまった。
熊の半身がやっと海中から抜け出せたところなのに、もうそこから浮上できない。

(゚、゚;トソン「体毛が濡れてて……重い……!」

想定していたよりも遥かに重い。魔道具の限界重量を越えている。

(;-(エ)-)「くま……」

熊はかなり衰弱していて、覇気のない声を唇の端からこぼすばかりだった。
よほど体温が下がっているのか肩は小刻みに震え、
私の手に伝わってくる握力も平素の暴君ぶりからすると信じられないほど弱々しい。

(゚、゚トソン「何を……くじけそうな表情してるんですか……。
     私まで気が滅入ってしまうじゃないですか……しっかりなさい!」

(;・(エ)・)「くま、くま」

(゚、゚トソン「絶対に置いてなんていきません。
     熊が人を助けられたように、人も熊を助けられます!」

道具に限界があるならば私が自分の限界を超えればいい。
いや、最初から限界なんてない。そんなのは勝手に自分で定めた言い訳のための言葉だ。
全力を出し切ればそれが自然と限界点になるのだ。

176 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 08:21:31.09 ID:7+708su/0
浮き輪が浮上を再開する。
熊の体が宙に舞った。

(゚、゚トソン「私の手を離さないように。このまま船へと戻ります」

(・(エ)・)「くまー……」

(゚、゚トソン「大丈夫です。辛くはありません。
     あなたは私の心配より自分の心配をするべきです」

口ではそう強がったが、しかしやはり過酷だ。
溢れ出んばかりの魔力を制御するために脳が奔走して、頭がおかしくなりそうになる。

それでもなんとか力を振り絞り船へと帰還した。

爪'ー`)y‐「……生きているのが不思議だ」

(゚、゚トソン「この子、ハァ、相当長い時間……ハァ、海中に晒されていましたからね……」

爪'ー`)y‐「あんたもだよ。まったく無茶するぜ。
      魔法使いってのは、今日まで知らなかったが、意外と武闘派なんだな」

たぶん褒め言葉だ。そういう解釈をしておこう。

177 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 08:33:57.38 ID:7+708su/0
熊は脇で火に当たっている。
無論、船の木材に燃え広がらないよう私が起こした火だが。

(-(エ)-)「くまー」

芯から冷えているのだろう、炎熱を全身で浴びて弛緩しきった表情を見せている。
私はその光景を目にして思う。

(゚、゚トソン「これが親心とかいうあれなのでしょうか」

私も流石に船長に淹れてもらったカカオだけでは厳しいので、火のそばへと行く。

(゚、゚トソン「横、失礼しますよ」

(・(エ)・)「くま!」

私の顔を見た瞬間、熊は親に懐く子供のように、嬉々として抱き寄ってきた。

(゚、゚トソン「だから、急に抱きつかないでくださ……って……。
     なんだ……力の加減できるんじゃないですか」

(・(エ)・)「くまー♪」

熊の優しい抱擁は私の体温よりもずっと温かく、冷えた体をじんわりと溶かしてくれた。

178 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 08:41:46.36 ID:7+708su/0
※※※


硬質な呼び鈴の音色が鳴ってからしばらくして、そのドアは開かれた。

⌒*リ´・-・リ「はい、どなたですか?」

(・(エ)・)『こんにちは!』

⌒*リ;´・-・リ「わ! くまさん!?」

(・(エ)・)『はじめまして、僕は幸せを運ぶ通りすがりのくま!』

⌒*リ´・-・リ「幸せくまさん……ところでなんで人の言葉が喋れるの?」

(・(エ)・)『そこは、あまり深く考えなくてもいいんだよ!
     今日はね、いい子にしていたリリちゃんにプレゼントがあるんだ!』

⌒*リ´・-・リ「リリにプレゼント?」

(・(エ)・)『そう! しかも、君のお父さんからだよ!』

⌒*リ´・-・リ「お父さんから!?」

180 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 08:53:57.12 ID:7+708su/0
(・(エ)・)『そうだよ! じゃじゃん、これさ!』

⌒*リ´・-・リ「ちっちゃい箱……?
       これがお父さんがリリにくれたプレゼントなの?」

(・(エ)・)『うん! とにかく開けてごらんよ! きっと驚くよ!』

⌒*リ´・-・リ「くまさんがそう言うなら、開けてみるよ。えいっ」

――あ、あ、こほん、リリ? 聞こえるかい。

⌒*リ´・-・リ「わっ、箱が喋ったよ!? お父さんの声だ……」

(・(エ)・)『静かに! 一回きりだからちゃんと聴いて!』

⌒*リ´・-・リ「う、うん」

――お父さんだよ。リリ、元気でやってるか? 風邪はひいていないか?
   お父さんは毎日元気にお仕事がんばってるよ。
   リリが毎月送ってくれる手紙、あの手紙にお父さん凄く元気をもらえているからね。
   お父さんの手紙リリはちゃんと読んでくれてるかな? いや、こんなこと聞いても仕方ないな。
   リリはお父さんが手紙出したら、ちゃんと返信くれるもんな。
   こちらから送ることはリリに比べて少ないけど、決して絶やしたりはしないからね。

182 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 09:09:27.26 ID:7+708su/0
――リリ。きっとお前は今びっくりしているだろうな。
   なんたって、箱の中からお父さんの声が聴こえてくるんだもの。驚くのも無理ない。
   あのな、リリ。これは実は魔法なんだ。
   魔法の力を借りてリリのところまで声を届けているんだよ。
   ずっとお父さんの声が聞きたいって、手紙に毎度のように書いてあったから。
   だからこうして、今回は声でリリにメッセージを送ることにしたんだ。
   喜んでくれると嬉しいよ。

――リリ、お前も大きくなった。今年でもう十歳だったね。
   ずっと寂しい思いをさせてきてすまないと思ってる。
   でもな、リリ。あまりお父さんに依存しすぎるのもよくないと思うんだ。
   手紙の回数を減らしたりしてもいいんだぞ。毎月書き続けるのも大変だろう。
   辛いかもしれないけれど、きっとリリのためにもなると、そう考えてるんだよ。

――ダメだな。いざ声を入れようとしても、うまく喋れないもんだな。
   それに手紙に書く内容とあまり変わらないね。期待外れだったらごめん。
   ……なあリリ。さっき、お父さんを頼りにしすぎるなって言ったけど、
   本当は父さんが一番リリに依存しているんだ。
   子はいつか親の元を離れていくけれど、親はいつまで経っても子離れできないものなんだよ。
   だからこうして、リリのために魔法で声を送り届けてるくらいなんだから。

――遠く隔たりがあってもお父さんはリリのことを片時も忘れたことはないよ。
   今は離れ離れだけど、仕事の都合がついたら、いつか昔のように一緒に暮らそうな。
   じゃあな、リリ。元気でやるんだぞ。シベリアはこれから寒くなるから体に気をつけて。

185 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 09:15:23.56 ID:7+708su/0
⌒*リ´・-・リ「……お父さん……」

(・(エ)・)『リリちゃん、喜んでもらえたかな?』

⌒*リ´・-・リ「……うん。リリ、凄く気に入ったよ!
       お父さんがすぐそこにいるみたいだった!」

(・(エ)・)『それはよかった! 幸せを運ぶくまも嬉しいよ!』

⌒*リ´・-・リ「お父さん、ありがとう……くまさんもありがとうね」

(・(エ)・)『いえいえ! ところでリリちゃん!』

⌒*リ´・-・リ「なあに?」

(・(エ)・)『リリちゃんもお父さんのところに声を届けたいと思わないかい?』

⌒*リ´・-・リ「そんなこと出来るの?」

(・(エ)・)『出来るさ! この魔法の箱があればね!』

188 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 09:22:28.24 ID:7+708su/0
⌒*リ´・-・リ「この箱? でも、もう空っぽになっちゃったよ」

(・(エ)・)『空っぽになったら、今度はリリちゃんが声を入れられるのさ!
     声を詰め込んだら蓋をして、お父さんのところにまた届けるんだ!』

⌒*リ´・-・リ「そんなふうに使うんだ! 魔法って凄いなぁ……」

(・(エ)・)『この箱の中にお父さんがいると思って話しかけてごらん!』

⌒*リ;´・-・リ「わ、わ、急には恥ずかしいな」

∩(>(エ)<)∩『大丈夫! 僕はこうして目をつむって耳をふさいでるから!』

⌒*リ´・-・リ「うん、じゃあ……やってみるよ」

(・(エ)・)『終わったら僕のおなかを叩いてね! それじゃ、どうぞ!』

⌒*リ´・-・リ「けふんけふん、ええと……。
       ……お父さん、リリだよ。プレゼントありがとう」

∩(>(エ)<)∩『……』

189 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 09:30:15.00 ID:7+708su/0
⌒*リ´・-・リ「……だからずっと大好きだよ、お父さん。
       お仕事頑張ってね。リリより。……くまさんくまさん」

∩(・(エ)・)∩『終わったかい?』

⌒*リ´・-・リ「うん。いっぱい喋っちゃった」

(・(エ)・)『それでいいの! お父さんも喜ぶよ!』

⌒*リ´・-・リ「くまさんはこれからお父さんのところに行くの?」

(・(エ)・)『そうさ! リリちゃんの言葉を伝えにね!
     こうしちゃいられないや、早く行かないと!』

⌒*リ´・-・リ「もう行っちゃうんだ? なんだかちょっと寂しいな」

(・(エ)・)『僕もだよリリちゃん。でも、行かなきゃ。僕は幸せを運ぶくまなんだもの。
     それじゃね、リリちゃん! いい子にしてるんだよ!』

⌒*リ´・-・リ「くまさんバイバーイ!」

(・(エ)・)「……」

(゚、゚(・(エ)・)「……ふう」

ドアが完全に閉め切られるのを確認して、私は隠れていた熊の背後から顔を出した。

192 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 09:38:12.46 ID:7+708su/0
(゚、゚トソン「我ながら完璧な腹話術でした」

口の動きを見られないで済むのだから、どうやっても完璧な仕上がりになる。

(゚、゚トソン「あなたの大きさに今回ばかりは感謝しましょうか」

(・(エ)・)「くまー」

(゚、゚トソン「いいんですよこれで。粋な演出というやつです。
     私みたいな素性不明の女より、
     多少なりとも愛らしさがあるマスコット的存在のあなたにやらせたほうが、
     効果的です。ああいった純粋な子供相手には」

(・(エ)・)「くまくま」

(゚、゚トソン「しかし、奮発してしまいました。
     このようなサービスは頼まれていなかったのですが」

手元にある、新しく声を封じられた小箱を見下ろしてひとり呟く。
『父から娘へ』の次は『娘から父へ』。

(゚、゚トソン「自然な流れではありますが……それにしても私らしくありません」

196 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 09:49:17.80 ID:7+708su/0
乾いた風が冷たい大気を薙ぐ。
寒気によって更に低温化した北風が、私の頬を容赦なくかすめていく。

(゚、゚トソン「それにしても……寒いですね。防寒具の用意が不十分でした」

私は紅くなった両頬を両手で交互にさすり、それからシベリアの清澄な空気を吸い込んだ。
意味もなく爽快感を得る。
そしてまた、寒空の下を熊と一緒に歩いていく。

(゚、゚トソン「もう少し近寄ってください。毛に覆われたあなたのほうが温かいですし」

(・(エ)・)「くままー♪」

私の提案に満面の笑みを見せてくる使い魔。

なんの役にも立たないと思っていた。
ただただ私の財産を食い尽くすだけだと思っていた。
使い魔に選んだことを常々悔やんでいた。

けれど本当は私なんかよりも数段勇敢で、誠実で、格好よくて、
何より、私の中で想像していた以上に大きな存在なのだと、この旅の中で痛感させられた。

197 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 10:00:43.85 ID:7+708su/0
(・(エ)・)「くま、くま」

隣を歩く大きな熊は、なんだか来た道よりも頼もしく見えて。

(゚、゚トソン「……そうですね。結局そういうことでしょう」

(・(エ)・)「くま?」

きっとあの親子と私たちは同じだ。

(゚、゚トソン「私も子供を心配する親の気持ちというものを、
     自分なりに理解してしまったからでしょうね。恥ずかしながら」

一方的に養ってるんじゃない。
気づきにくいだけでお互いに支え合っているのだ。

だからこうして、あの父親のためにおまけしようなどと、
これまでの私らしくない非利益的な配慮をしてしまったのだと、そう思う。

198 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 10:04:43.01 ID:7+708su/0
(・(エ)・)「くま!」

(゚、゚トソン「あなたも伝えたいことがあったら、
     あの娘さんのように素直に伝えたほうが得策ですよ」

私はそう言って、ただ一頭だけの契約者に、母親のような心境で微笑みかけた。

(・(エ)・)「くまっまー!」

甘い顔を見せた途端無邪気に抱きついてくる熊。
というよりもこれは抱きついているのではなく襲撃である。
森の王が人を殺す時の勢いである。

(゚、゚トソン「ちょっ、誰が行動で示せと言いましたか!
     獣だからですか! 獣だから肉体言語でしか表現できないんですか!
     ちょっと、待、落ち着き、やっ、ああああああ!」



そして私はここ、遠くシベリアの地で。

露出狂の悪名を轟かせてしまった。               〜 fin 〜



203 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 10:09:13.59 ID:7+708su/0
― 楽屋 ―


(´・_ゝ・`)「ふーお疲れー」

<_プー゚)フ「お疲れさまでーす」

(゚、゚トソン「いやあ、主人公というのは緊張しますね……」

爪'ー`)y‐「俺も海にダイブさせられた時はキツかったぜ」

⌒*リ´・-・リ「子役って難しいねー」

(・(エ)・)クマー

o川*゚ー゚)o「待てやこらああああああああああ!!」

<_プー゚)フ「うお!? うるさっ。なんだよ」

o川*゚ー゚)o「私の出番がなかったやんけ。一回も出とらんやないけ」

205 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 10:12:55.92 ID:7+708su/0
爪'ー`)y‐「出てたじゃん」

<_プー゚)フ「あの真冬の海に投げ出された女の子の役」

o川*゚ー゚)o「なんでモブやねん!」

o川*゚ー゚)o「しかもやらされてること一番きついじゃん!」

o川*゚ー゚)o「スタントマンか私は!」

( "ゞ)「いいじゃないですか」

( "ゞ)「私なんて行数稼ぐためのただウザいだけのキャラですよ」

o川*゚ー゚)o「高望みすんな! 十分だろ!」

(゚、゚トソン「まあまあ落ち着いて」

o川*゚ー゚)o「うるせぇこの人気キャラが! お前指定してる奴ばっかじゃねぇか!」

o川*゚ー゚)o「萌えキャラですか!? それが萌えキャラってやつなんですかー!?」

207 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 10:20:03.33 ID:7+708su/0
o川*゚ー゚)o「だからこの>>1はダメなんだ!」

o川*゚ー゚)o「五十レス以上も書けば全員に見せ場作れるだろ!」

o川*゚ー゚)o「これだから雑魚は……」

川 ゚ 々゚)「じゃあ次はキューちゃんが主役の作品がいいの?」

o川*゚ー゚)o「当たり前だ! 誰か書け! いや書いてくださいお願いします」

ミセ*゚ー゚)リ「>>1は?」

o川*゚ー゚)o「放置で」

(-@∀@)「なんかまだ書くとか興奮気味に電話してきたけど」

o川*゚ー゚)o「無能な働き者はこれだから困るんだよ……」

【+  】ゞ゚)「あー帰りたい。出番もないし帰りたい」

o川*゚ー゚)o「貴様も海の中に叩き落すぞ!」

o川*゚ー゚)o「とにかく次は私主人公固定ね! 私が一番輝けるジャンルとお題で!」


209 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 10:22:27.21 ID:7+708su/0
というわけでキュートちゃんにぴったりのお題とジャンルを募集

>>210


あと参加者も募集中だよ!
みんなもキュートちゃんをトップアイドルにしよう!

210 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 10:22:50.73 ID:Q9271gFU0
残像でも作ってろ


214 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 10:30:36.78 ID:7+708su/0
。, .。o ☆ + o川*゚ー゚)o素直ニュートのようです ゜。 *。.☆ 。 。+ .



(´・_ゝ・`)「おはようさん」

【+  】ゞ゚)「うーっす、おぱゆー」

(´・_ゝ・`)「きめぇからやめろ」

【+  】ゞ゚)「それより昨日のニュース見た?」

(´・_ゝ・`)「なに」

【+  】ゞ゚)「あれあれ、光より早い物質が見つかったってやつ!」

(´・_ゝ・`)「おーそれなら見たぞ。ニュートリノだったかな」

【+  】ゞ゚)「すげーよなー。アインシュタインぶん殴るようなもんだもんなー」

(´・_ゝ・`)「時代を超えたロマンというやつか」

【+  】ゞ゚)「そう、それよ! それが言ってみたかったの!」

215 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 10:34:36.18 ID:7+708su/0
(´・_ゝ・`)「実際に時代を超えるタイムマシンが出来たりして!」

【+  】ゞ゚)「マジか。そこに繋がっちゃうわけ?」

(´・_ゝ・`)「あの光より早いんだからありそうじゃね?」

【+  】ゞ゚)「技術転用かー現実にそうなったらすげーなー」

(´・_ゝ・`)「SFの世界の話だもんな」

【+  】ゞ゚)「いやー本当に凄いよなニュートリノ……」

ガララ

(´・_ゝ・`)「ん?」

o川*゚ー゚)o「どうも、私がそのニュートリノです」

【+  】ゞ゚)「えっ」

(´・_ゝ・`)「なにこの人。うすら怖い」

217 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 10:41:01.25 ID:7+708su/0
【+  】ゞ゚)「ってか同じクラスのキュートじゃん」

o川*゚ー゚)o「違うの。私は今日からニュートリノの擬人化」

o川*゚ー゚)o「素直ニュートとして生まれ変わったの!」

(´・_ゝ・`)「おい大丈夫か? 病院いくか?」

ガララ

川 ゚ 々゚)「あっ、キューちゃんおはよー」

o川*゚ー゚)o「あっ、おはよー」

【+  】ゞ゚)「普通に挨拶してんじゃねーか」

ミセ*つ>ー゚)リつ「くらえ、おはようビーム! しびびびび!」

o川*゚ー゚)o「こっちこそおはようビーム!」シュババン!

ミセ;゚ー゚)リ「ぎゃあああああああああああああああ!!」

219 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 10:44:13.85 ID:7+708su/0
キャーキャー!

メカラナンカデタゾー!

⌒*リ;´・-・リ「ミセリちゃんしっかり!」

ミセ*゚ー゚)リ「生きてる……なんとか生きてるよ……」

ミセ*゚ー゚)リ「かすっただけ、かすっただけだから……あはははは……」

o川*゚ー゚)o「きゃっ、ニュートリノ漏れちゃった☆ いっけなーい☆」

(´・_ゝ・`)「なに……今の光線……」

o川*゚ー゚)o「女の子のLOVEと一緒にニュートリノが溢れちゃったんだゆ☆」

【+  】ゞ゚)「お、おいみんな逃げるぞ! 殺戮兵器が来たぞ!」

ウワアアアアア

o川*゚ー゚)o「逃げられると思うな!」

220 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 10:49:19.31 ID:7+708su/0
フッ… l!
  |l| i|li ,      __ _  ニ_,,..,,,,_
ol|!*゚ー゚ :lo __ ̄ ̄ ̄    ;;|ilo*゚ー゚)o≡
  !i   ;li    ̄ ̄ ̄    キ     三
  i!| |i      ̄ ̄  ̄  =`'ー-三‐ ―

              /  ;  / ;  ;
          ;  _,/.,,,//  / ヒュンッ
            o(゚ー゚*o /
            |  /  i/    
           //ー--/´
         : /               o川*゚ー゚)o「わははははははは!!」
         /  /;
    ニ_,,..,,,,,_
    o川*゚ー゚)o  ニ≡            ; .: ダッ
    キ    三    三          人/!  ,  ;
   =`'ー-三‐     ―_____从ノ  レ,  、




(´・_ゝ・`)「なっ、なんか人間離れした動きでこっちに来たぞ!」

221 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 10:52:50.29 ID:7+708su/0
o川*゚ー゚)o「見て! この目にも止まらぬスピード!」

o川*゚ー゚)o「ニュートリノだから可能なんだよ!」

(´・_ゝ・`)「いや結構視認できてたけどな」

【+  】ゞ゚)「残像出来てたし」

o川*゚ー゚)o「やん、失敗失敗。てへぺろ」

爪'ー`)y‐「残像できてただけで規格外だろ……」

o川*゚ー゚)o「あっ、先生!」

爪'ー`)y‐「一体なんの騒ぎなんだこれは?」

爪'ー`)y‐「教室入ったら焦げ臭くてかなわなかったんだが」

o川*゚ー゚)o「実は私、ニュートリノとして生きていくことにしたんです!」

爪'ー`)y‐「はあ?」

225 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 10:59:00.22 ID:7+708su/0
爪'ー`)y‐「おい男子。説明しろ」

(´・_ゝ・`)「頭が」

【+  】ゞ゚)「残念」

爪'ー`)y‐「わかりやすい説明ありがとう」

ミセ*゚ー゚)リ「でもなんでこんなことが出来るようになったの?」

爪'ー`)y‐「それだよ」

爪'ー`)y‐「頭イカれただけでこれはないだろ。超人だぞ」

川 ゚ 々゚)「キューちゃん……昔から思い込みが激しかったから……」

爪'ー`)y‐「思い込みでこんなことになるのかよ。怖いわ脳医学」

o川*゚ー゚)o「思い込みじゃないもん! 本物のニュートリノだもん!」

226 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 11:02:52.49 ID:7+708su/0
o川*゚ー゚)o「ほら、証拠だよ! 見てて!」

⌒*リ´・-・リ「見てたけど……」

ミセ*゚ー゚)リ「ただ突っ立ってただけだよ?」

o川*゚ー゚)o「違うよ! さっきの〇・一三秒の間に地球を一周してきたんだよ!」

(´・_ゝ・`)「嘘つけ!」

o川*゚ー゚)o「本当だもん!」

o川*゚ー゚)o「私は日付変更線またいできたんだもん!」

o川*゚ー゚)o「だから今ここにいるのは未来の私!」

(´・_ゝ・`)「えっ……そういう話になるの?」

【+  】ゞ゚)「よくわからんことになるからやめてくれ」

227 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 11:10:03.28 ID:7+708su/0
o川*゚ー゚)o「とにかく私を地球上で最速の物質と認めて!」

(-@∀@)「あのー、すみません」

【+  】ゞ゚)「うわ、なんか増えた」

(-@∀@)「こちらにキュートさんの担任はいらっしゃいますか?」

爪'ー`)y‐「私ですが」

爪'ー`)y‐「っていうか誰ですかあなた」

(-@∀@)「失礼。私、日本オリンピック委員会のものです」

(-@∀@)「先程キュートさんがありえないくらい速いとの噂を聞きつけまして」

爪'ー`)y‐「はあ」

(-@∀@)「五輪参加要請を出しに参りました」

o川*゚ー゚)o「まあ、それは凄い! ぜひぜひ!」

o川*゚ー゚)o「私の恐ろしさを人類に見せつけてくるわ!」

228 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 11:14:41.45 ID:7+708su/0
―国立競技場―


o川*゚ー゚)o「まずは選考会ね!」

(-@∀@)「決勝までは手を抜いてもらったけど」

(-@∀@)「最終組では全力で走ってみようか!」

o川*゚ー゚)o「任せて!」

o川*゚ー゚)o「さーてトラックに行こっと」

( "ゞ)「高校生には負けませんよ」

o川*゚ー゚)o「はっ、あなたは日本人初の九秒台を叩き出したデルタさん!」

o川*゚ー゚)o「Wikipediaで見ました!」

( "ゞ)「そういう微妙な挨拶はやめて」

229 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 11:20:41.67 ID:7+708su/0
o川*゚ー゚)o「とにかくお互い頑張りましょうね!」テクテク

( "ゞ)「……」

( "ゞ)「……行ったか」

( "ゞ)「いやいや負けるわけないだろ。なんで男子部門に混じってるわけ?」

( "ゞ)「いくら男子百メートルが一番の人気競技だからって……」

( "ゞ)「それに、性別詐称って男が女と偽って出るのが普通だろ」

( "ゞ)「逆パターンとか聞いたことねーわ」

( "ゞ)「決勝には残ってるが、そろそろ終わりだな。俺もレーンに向かうか……」

セット...ポーン

( "ゞ)「八秒台……だと……!?」

o川*゚ー゚)o「ごめんなさいアサピーさん! 最後99.97メートル手抜いちゃった!」

( "ゞ)「おい、それもう全部じゃねぇか……」

o川*゚ー゚)o「始まったんだわ……私の夢舞台が!」

230 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 11:25:41.20 ID:7+708su/0
― 五輪本選、決勝 ―


(゚、゚トソン「始まりました男子百メートル決勝!」

(゚、゚トソン「実況は私トソンでお送りいたします!」

(゚、゚トソン「注目選手はなんといってもキュート選手!」

(゚、゚トソン「どこからどう見ても女子高生ですが人類初の八秒台!」

(゚、゚トソン「今大会ぶっちぎりの優勝候補なのでお咎めありませんでした!」

(゚、゚トソン「汚い事情が見え隠れしますが、しかし日本人初の金メダルが期待されます!」

(゚、゚トソン「更に元日本記録保持者のデルタ選手も決勝にいます!」

(゚、゚トソン「こちらは国民全員素直な気持ちで応援しましょう!」

(゚、゚トソン「まもなく開始です!」

231 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 11:31:18.99 ID:7+708su/0
o川*゚ー゚)o「うう、緊張するなあ」

o川*゚ー゚)o「周りはみんなムッキムキの黒人さんばかり……」

o川*゚ー゚)o「デルタさんもこの日のためにステロイド打ったからムキムキだし……」

o川*゚ー゚)o「……でも大丈夫よね!」

o川*゚ー゚)o「私は地球史上最速の物質」

o川*゚ー゚)o「四十六億年の歴史の中で、私が一番なんだもん!」

o川*゚ー゚)o「だから、この大舞台でそれを見せつけてやるんだわ」

o川*゚ー゚)o「……予選はすべて流したけど……」

o川*゚ー゚)o「決勝では……全速力!」

o川*゚ー゚)o「みんな見て! これがニュートリノの速さ!」

233 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 11:35:13.45 ID:7+708su/0
  ヘ(; "ゞ)ノ ←9秒94 関ヶ原デルタ
≡ ( ┐ノ
:。;  /
   ヘ(; `Д)ノ←9秒79 ベン・ジョンソン
 ≡ ( ┐ノ
 :。;  /
   ヘ(; `Д)ノ←9秒79 モーリス・グリーン
 ≡ ( ┐ノ
 :。;  /
    ヘ(; `Д)ノ←9秒77 タイソン・ゲイ
  ≡ ( ┐ノ
  :。;  /
     ヘ(; `Д)ノ←9秒74 アサファ・パウエル
   ≡ ( ┐ノ
   。;  /

    一二 (゚ω゚ )←9秒69 ウサイン・ボルト
  一二  /    \
 一二((⊂ /)   ノ\つ))
   一二  (_⌒ヽ
    一二  丶 ヘ |
     一二  ノノ J  
                                                  
                                                                           一ニ三三三三 
                                                                          一ニ三三三三 o川*゚ー゚)o ←0秒00000033 素直キュート
                                                                           一ニ三三三三 バビューン
                                                        

236 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 11:40:56.42 ID:7+708su/0
o川*゚ー゚)o「やったわ! 自分でも満足のできる走りができた!」

o川*゚ー゚)o「ちょっぴりスタートは失敗しちゃったけど、でも頑張った!」

ザワザワ

o川*゚ー゚)o「あらら? どうかしたのかな?」

(゚、゚;トソン「た、大変です! 計器が測定不可能な数値を叩き出しています!」

(゚、゚;トソン「ど、どういうことなのでしょう。スタートの合図と同時に……」

(゚、゚;トソン「キュート選手がゴール地点に……」

(;"ゞ)「ト、トリックだ! これはトリックなんだ!」

(゚、゚トソン「審判団が協議しています! あっ、今JOC役員の方に伝えられました!」

o川*゚ー゚)o「おなかすいたなー」

237 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 11:44:54.71 ID:7+708su/0
(-@∀@)「キュートちゃん……凄く残念だけど、どうやら君の記録」

(-@∀@)「ありえなさすぎて無効になりそうだよ……」

o川*゚ー゚)o「ええっ! なんでですかプロデューサーさん!」

(-@∀@)「いやプロデューサーじゃないけどね」

(-@∀@)「……今になって女子が男子の部に出てるってことで」

(-@∀@)「失格が決まったんだよ」

o川*゚ー゚)o「ひどい! お偉いさんたち相手に枕営業させられたのに!」

(-@∀@)「いやさせてないけどね。僕らがお金積んだだけで」

o川*゚ー゚)o「ひ、ひどい、ひどすぎるよ……いっぱい頑張ったのに!」

o川*゚ー゚)o「こんなに苦しいのなら……悲しいのなら……」

o川*゚ー゚)o「ニュートリノなどいらぬ!」

238 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 11:49:49.05 ID:7+708su/0
― いつもの教室 ―


川 ゚ 々゚)「キューちゃんおっはよー」

o川*゚ー゚)o「おはゆー」

ミセ*つ>ー゚)リつ「おはようビーム! ずびびびび!」

o川*>ー<)o「なんの! おはようビーム返し! ぴしゃーん!」

⌒*リ´・-・リ「キューちゃん、今日の髪型かわいいね」

o川*゚ー゚)o「ありがとなのだ☆」

【+  】ゞ゚)「なんか……いきなり以前までの学生生活に戻ってるんだが」

(´・_ゝ・`)「俺は未だに受け入れられてないぞ。どっちが現実だったかすら区別できん」

【+  】ゞ゚)「よく女子たちはすぐに馴染めるな……」

(´・_ゝ・`)「女はつえーよ」

241 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 11:56:31.37 ID:7+708su/0
(´・_ゝ・`)「ところで昨日の深夜番組見た?」

【+  】ゞ゚)「おう見たとも。国産クラシックカー特集だろ?」

(´・_ゝ・`)「それそれ」

【+  】ゞ゚)「かっこいーよなー俺もいつか乗ってみたいぜ」

(´・_ゝ・`)「無理無理。とても手が届くようなもんじゃねぇよ」

【+  】ゞ゚)「でもさ、クラシック風の車もついでに特集してたじゃん」

(´・_ゝ・`)「ああ、あれか。光岡自動車のビュート」

【+  】ゞ゚)「それだよ! ジャガーっぽいやつな」

(´・_ゝ・`)「あれは現行品だから買えなくはないか」

【+  】ゞ゚)「だよな。将来の候補に入ってくる……」

242 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 12:01:29.81 ID:7+708su/0
o川*゚ー゚)o「いいことを聞いた」

【+  】ゞ゚)「おわっ、いきなり背後から現れるなよ」

o川*゚ー゚)o「決めた! 今日から私は素直ビュート!」

o川*゚ー゚)o「現実的な速度で動ける女子高生!」

(´・_ゝ・`)「全然凄そうじゃない……」

o川*゚ー゚)o「これならオリンピックで認められる範疇だわ!」

(゚、゚トソン「あ、キューちゃんおはようビーム」

o川*>ー゚)o「おはようビーム!」ペカーン

【+  】ゞ゚)「ま、まずい、逃げろ! ……って……」

(´・_ゝ・`)「ただのハイビーム……」

o川*゚ー゚)o「やりすぎないレベルなのだ☆」





                                           おわり

 


244 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/15(日) 12:05:21.25 ID:7+708su/0
― 楽屋 ―


ミセ*゚ー゚)リ「おつかれー」

(´・_ゝ・`)「いやあ見事な主役振りでしたなあ」

o川*゚ー゚)o「……全然嬉しくない……」

爪'ー`)y‐「は?」

o川*゚ー゚)o「全然嬉しくない! 何これ!」

(゚、゚トソン「念願の主役だったじゃないですか」

o川*゚ー゚)o「人外じゃねーか! CG合成が大変だったわ!」

川 ゚ 々゚)「でもキューちゃん輝いてたよ?」

o川*゚ー゚)o「アホか! それはCGで光源処理しとるだけじゃ!」


291 :◆zS3MCsRvy2:2012/01/15(日) 15:28:43.47 ID:7+708su/0
お題とAAとジャンル募集
>>295

295 :ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/15(日) 15:29:55.63 ID:ws9KGRv+0
えすえふデミタス


306 :ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/15(日) 15:55:47.42 ID:7+708su/0
水平線の向こう側に大陸が存在しないのと同様に、
ドアの向こう側に世界は存在していない。

(´・_ゝ・`)「おかしな話だ」

そんなお伽噺じみた説話を聞かされながら、
デミタスは他の顔も知らない誰かたちのように施設内で大人になった。

デミタスはそこで思考を停止してしまうような人間ではないからちゃんと知っている。
かつて水平線の向こう側に大陸は存在していたことを。
結局先の言葉は少し調べれば分かるような大嘘で、子供騙しに過ぎないのだ。

だからきっとこの合金製のドア一枚隔てた先には、
新大陸と同じように違う世界が広がっているに違いない。
デミタスが大人になってもその考えは捨てられずにいた。





(´・_ゝ・`)生理食塩水の臭いのようです

312 :ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/15(日) 16:11:19.74 ID:7+708su/0
いつ頃から人々がこの避難施設の中で蟻や蜂のような生活を始めたのかは知らない。
聞いた話では核保有国間の均衡状態が崩壊したことが原因らしいが、
その手の資料は皆閲覧不可になっているからデミタスにはよく分からない。

それにしても本当に退屈で単調な生活で、
個々人に与えられた部屋にはベッドとデスクとコンピュータ、あとはトイレとシャワー程度しかない。
喉が渇いたらメールを送れば即座にシューターから缶に入ったジュースが届くし、
腹が減った時もそれと同じ手順だ。
どこから送られてくるのかデミタスは知らない。そもそもメールの宛先さえ、誰のものなのか不明だ。

ただ漫然と食事をし、時間を消費し、適当な頃に寝る。
昼と夜の区別が時間でしか判断できないから、デミタスは次第に時計を見ることをやめた。
今が何時だろうと自分が目覚めた瞬間が朝だし、自分が眠った瞬間が夜だ。

色のない日々。

この個室からは一歩も出ることが許されていないから、
施設がどういう構造になっているのかすら把握できていない。

ドアを開けると、その先はすぐに他人の部屋に繋がっているのか、
あるいは通路のようなものが通っているのか、
はたまた直接外の世界と繋がっているのかもしれない。

けれどドアが開いたためしはデミタスが物心ついた頃からないし、
開けようとしても堅く閉ざされているからやるだけ無駄だった。

315 :ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/15(日) 16:28:09.19 ID:7+708su/0
ならばドアはなんのためにあるのか。
役目が壁と変わらないのではあれば形状がドアである必要はない。
やることのないデミタスは一日中考え続け、ある日ひとつ回答を思いついた。

(´・_ゝ・`)「そうか。ドアは出るためだけじゃなく、入るためでもあるもんな」

おそらく生まれたばかりの個室へと運び入れるためにドアは必要なのだろう。

デミタスはどこでどう精子と卵子が結びついて自分が誕生したか知らない。
両親の顔ですら見覚えがない。
幼年期の記憶が忘却の彼方へと消え去ってしまっているのではなく、
気がついたときには既にこの部屋の中で、真っ白い壁と真っ白い天井が揺りかごだった。

だけど自分がどう育ってきたかは覚えている。

デミタスの脳に刻まれている中で、一番古く、なおかつ鮮明な記憶が、
大人の女の人の腕に抱かれて眠っていたことだ。

けれどもあまりにも人工的な臭いがして、頭を撫でる手は不自然に熱っぽかったので、
すぐにこれは人間ではないということを子供ながらに悟った。
そして今いる自分の現状と照らし合わせて、これは母親代わりに用意されたのだろうとも察していた。

322 :ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/15(日) 16:42:15.81 ID:7+708su/0
事実、デミタスがひとつ歳を取るとまた新しい人造の母親が送られてきた。
古い人造母体は一年もすると劣化し腐臭を放ち出していて、
一緒に暮らすのがはっきり言って苦しかった。
奇妙なことに新しい人造母体がやってきた翌朝には、
活動を止めて部屋の片隅で転がっていた旧モデルはどこかへと消えていた。

そうして毎年決まって母親役は入れ替わっていた。
不思議なもので、最初は好きじゃなかった人体に使われている生理食塩水の臭いも、
デミタスにとっては心が落ち着く母親の臭いになっていた。

だけどデミタスが十四歳になった時、母親役が送られてくることはなくなった。
もう一人で生きていけると判断されたのだろう。
室内は一気に広くなった。何もない空間が、本当に何もない空間へと変貌した。

そしてデミタスは大人になった。
この細胞のような部屋の中で培養されて、デミタスは十分に大人へと育った。

(´・_ゝ・`)「ああ、つまらない。毎日が変わり映えしない」

だけど大人になったからと言って何かが変わるわけではない。
大人と子供の間に明確な境目があるとして、ならばその境目をまたいだ昨日と今日では、
とても大差があるとは言えないのだから違いを実感することもない。

326 :ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/15(日) 16:52:16.05 ID:7+708su/0
つまりデミタスの中では、いつの間にか子供が終わり、いつの間にか大人になっていた。
それだけのことだった。

だけどそんなある日、久しぶりにシューターから生活必需品以外のものが届いた。

(´・_ゝ・`)「なんだこれ?」

とても大きな長方形のケースだった。デミタスの身長ほどもある。
おまけに注文した覚えも一切ないから、まずデミタスは疑ってかかった。

(´・_ゝ・`)「まさか爆発したりだとかは……。
      ん? いやいや違う、この箱は俺は知ってるぞ。見たことがある」

コンピュータ内のカレンダーをチェックしてみる。

(´・_ゝ・`)「やっぱりだ。俺の誕生日だったのか、今日は」

昔は人造母体が一年に一度、定期的にデミタスの元に送られてきていたので、
時間の感覚を完全に失念してしまうということはなかった。
しかし今はそうではない。
顔つきの同じ毎日が連綿と続いているから、ふと時の流れという概念を忘れてしまう。

331 :ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/15(日) 17:03:36.01 ID:7+708su/0
(´・_ゝ・`)「今になって母親が必要なことなんてあるのか?」

疑問を抱きながらも、やはり興味を捨てることは出来ないので開封する。
案の定女性型の人造体が詰め込まれていた。

(´・_ゝ・`)「でもなんか……若いな。俺と同い年くらいに見える」

デミタスが想像する母親像からは幾分かけ離れている。
少年時代に世話になっていた人造母体は、
あからさまに肌の質感が作り物っぽいことを除けば、
デミタスが空想世界でイメージしている母親の要素をいくつか備えていた。

だが、これは違う。そうは思えない。

ミセ*゚ー゚)リ「……」

前触れもなく人造体の瞼が開いた。
そしてむくりと姿勢よく九十度に体を起こし、

ミセ*゚ー゚)リ「こんにちは」

と、これまたやけに畏まった口調の挨拶をデミタスに行った。

334 :ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/15(日) 17:16:59.50 ID:7+708su/0
(´・_ゝ・`)「ええと、なんすか」

ミセ*゚ー゚)リ「代理母体による体内受精をしに参りました」

(´・_ゝ・`)「そんなものは希望した覚えがないんだが」

ミセ*゚ー゚)リ「これは男性収容者全員に行っていることです」

人造体の話では、別途に採取した卵子を埋め込まれた自分と同じモデルが、
二十五歳を迎えた男性の個室へ派遣されるらしい。

(´・_ゝ・`)「いらない。俺の遺伝子なんて残さなくていい。
      俺の遺伝子が誰のものなのかすら分かっていないのに」

ミセ*゚ー゚)リ「ですが、これは施設の中における義務なのです。
      私のモデルは性欲処理活動も期待されて作られていますので、
      他の人造体よりも遥かに人間に近い容貌をしております」

確かに皮膚素材はこれまで目にしてきたものより大分デミタスのものと近いし、
容姿も悪印象を抱くような作りをしていない。普遍的な外見をしている。

336 :ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/15(日) 17:30:13.97 ID:7+708su/0
(´・_ゝ・`)「でもな、俺にとっては見た目じゃないんだ。
      生理食塩水の臭い。それだけでダメなんだよ、人間らしさを感じない」

本能ではない、後天的な部分でデミタスは強い拒絶反応を示している。
生理食塩水の臭い自体は嫌いではない。
しかしいざ生殖行為に励めるかというと、やはりそうはいかず、気分を害してしまう。

ミセ*゚ー゚)リ「これでもでしょうか?」

すると人造体は上半身の衣服を脱いで立ち上がり、デミタスの首に手を回して抱きついた。
柔らかくそれでいて作り物っぽくない感触。
人肌で、不自然に熱かったりしない。
これが人の温もりなのだろうかと、不覚にもそんなことがデミタスの頭によぎる。

そして鼻先をくすぐるのは、ほのかにプラスチック臭の混じった塩化ナトリウムの臭い。
デミタスはこの臭いが嫌いではない。
どうしようもなく落ち着く。幼少の頃、この臭いに抱かれて毎日を過ごしていた。

これが母親の臭いなのだろうか。

これが――

338 :ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/15(日) 17:43:03.80 ID:7+708su/0
(´・_ゝ・`)「……いや、待て! 違う!
      こんなものが母親の思い出なわけがない!」

デミタスは体をさながらスプリングのように跳ね起こして、人造体を払いのけた。

(´・_ゝ・`)「これはただの紛い物の臭いだ」

呆気にとられる人造体に目をくれることもなく、自分に言い聞かせるように一人呟く。

(´・_ゝ・`)「こんなものに懐かしさを覚えるのは刷り込みに過ぎない。
      最初から仕組まれていたんだ、拒否できない体質に慣らされていたんだ」

今考え直すと明らかに符合が合わない部分がある。
いくら主を保存するためとはいえ、わざわざ体内受精をさせる必要がない。
おそらく卵子が埋め込まれているというのは嘘だ。
そんなものが手に入ったならば確実性を上げるために人工授精させるだろう。
第一男性にだけというのも辺だ。いるかどうかも知らないが女性収容者差別に該当しかねない。

本当は精子の採取に来たに違いない。
それさえ揃えば試験管内で作為的に受精させられる。

341 :ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/15(日) 17:56:01.40 ID:7+708su/0
その理屈が正しいのか間違っているのか、デミタスには区別できない。
けれどそれで構わない。自分の中で納得できれば、それでいい。

ミセ*゚ー゚)リ「デミタスさん?」

(´・_ゝ・`)「もういやだ、まっぴらだ。ここには嘘しかないのに、
     嘘をひとつ見破っただけで得意げになって、結局俺も飼い慣らされていた。
     この生理食塩水の人工的な臭いに麻痺させられていたんだ。
     こんな場所はまっぴらだ。俺は今心からそう思ってる」

ドアに手を掛ける。

鍵ははかかっていなかった。

開けようとしても開かなかったのは、
単に自分が心のどこかで躊躇して、抑制してしまっているだけだったのだろう。
最初から施錠などされていなかったのだ。
肝心なのは強固な意志だった。

部屋を満たしていた臭気が薄くなっていく。

(´・_ゝ・`)「俺は蟻じゃない。コロンブスだ」

ああ、扉が開く。

そこから世界が始まった。                / 終



347 :ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/15(日) 18:06:40.63 ID:7+708su/0
― 楽屋 ―


(´・_ゝ・`)「いやー三本続けてメイン張っちゃったよ(笑)」

o川*゚ー゚)o「また私が出てないじゃないか! 真面目な話では用無しか!」

o川*゚ー゚)o「そんなに存在自体がネタなのか!」

ミセ*゚ー゚)リ「いーじゃん、そんなに脱ぎたかったの?」

o川*゚ー゚)o「いや……乳は何度も見せてきたが評判はよろしくない」

【+  】ゞ゚)「そりゃあな」

(゚、゚トソン「汚れ役って大変」

o川*゚ー゚)o「次こそ私が主役で活躍してやる!」

o川*゚ー゚)o「次こそはだ……覚えておけ!」


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