1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 16:58:19.83 ID:6K5AmNjV0
俺たちは売れそうもないバンドをやっていて、そして、だから、貧乏だった。

煙草と汗のにおいで充満したライブハウスが満員になることなんてほとんどなくて、
かといってそこは大きなキャパを持った箱というわけでもなくて、
そして俺たちはもう20代の後半で、
焦りを感じることだって、ないわけじゃ、なかった。



でも、だからといって、

俺たちに、他に何ができるっていうんだ――?


俺たちは楽器を持って、歌うことしか。

それしか出来ないって、全員で、わかってたんだ。


( ゚∀゚)「今日もお疲れさん」

ライブ後の、打ち上げの飲みだって、公園でビールを一本だけ。






3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 17:02:54.60 ID:6K5AmNjV0
一本なんてあっという間で、でも俺たちは生粋貧乏だったから、
ビール一本で酔うっていう特技を身に着けていた。

そういうわけだから、今日も一本をあけた後は、妙なテンションで、しばらく公園で話してた。


(´・ω・`)「なんで僕たちの魅力に気がつかないんだろうね」

('、`*川「ジョルジュくんの書く曲がキャッチーじゃないからよ」

( ・∀・)「俺は好きだけどな、ジョルジュの曲」

( ゚∀゚)「おいおい、仲間なんだから、俺の曲くらい好きになれよ」

('、`*川「んん、あたしは好きなんだけど、まぁ、キャッチーではないよねぇ」

( ゚∀゚)「大衆に媚びるようになったら負けだよ」



なんて、そんな内容の会話は、もうルーティン。


5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 17:09:01.08 ID:6K5AmNjV0
なんだかんだ言って、バンドの結成から、このメンバーで固まったまま、変更は一度もない。
伊藤だって、新曲が出来ると真っ先に聞かせてくれと俺に言う。
そして聴き終わると、いつも満面の笑みで俺に言うのだ。

('、`*川「いい曲が出来たね。ベースラインも、すぐに思いついたよ」

伊藤はスマッシングパンプキンズのダーシーに憧れているらしい。
実際、ダーシーが作るようなベースラインを、伊藤は作る。


( ・∀・)「新しいギターほしいなぁ」

( ゚∀゚)「お前そのレスポールのローン終わってないだろ」

( ・∀・)「お前の新曲には、レスポの音じゃあわないだろ?」

( ゚∀゚)「んー……まぁ」

( ・∀・)「なんとかバイト増やして、もう一本くらい用意するよ」

モララーは言った。

( ゚∀゚)「おう」

俺は言った。



6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 17:13:31.85 ID:6K5AmNjV0
(´・ω・`)「それにしても疲れたなぁ」

ショボンが言った。
ショボンは、見た目こそしょぼくれてるけど、大体において、俺たちのリーダーだった。
そのドラムも、全ての音をすくい上げてくれるようなイメージがある。
俺は、その上なら安心して声を張り上げられる。

( ゚∀゚)「明日はスタジオかぁ」

(´・ω・`)「朝からだからね、遅れないように」

( ・∀・)「へいへい」

('、`*川「わかってると思うけど、遅れた人は昼飯おごるのよ」

( ゚∀゚)「わーってるよ」

(´・ω・`)「今度から時間内でも最後に来た人はおごるようにしたいんだけどどうだろう?」

えー。

三人の声が、かさなった。

8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 17:18:48.69 ID:6K5AmNjV0
ライブの後だったから、時刻はもう遅い。

終電まであと二十分くらいだったから、俺たちは荷物をまとめてそそくさと公園を出た。
ちなみに、さっきのショボンの提案は否決された。当然だ。

駅までは遠い。
少し、小走りになる。

駅に近づくと、人の量が増えてくる。
一応ここは、政令指定都市だ。

( ´∀`)「お兄さんたち飲んでいかない?今なら最初の一杯は無料だよ〜」

客引きを無視して、俺たちは駅に入った。
電車の時間まで、あと五分。余裕で間に合った。


( ゚∀゚)「……ん?」

視界の隅に、何かが入った。



9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 17:22:36.25 ID:6K5AmNjV0
    |        
    |  ( ^ω^) 
   / ̄ノ(   ヘヘ ̄ ̄□□□□



絵売りだった。
少し太り気味だが、普段からおいしいものを食べているような感じはしない。

彼の前には、何枚かの絵が並べられていた。
しかし、その絵の前に並ぶお客さんはいない。

( ^ω^)「……」


同情、とかではない。

俺はその男が妙に気になってしまった。
足をそちらに、向けようとした。

( ・∀・)「おいジョルジュ、早くいくぞ」

( ゚∀゚)「お、おお」



10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 17:26:02.06 ID:6K5AmNjV0
モララーに手を引かれて、俺は三人と一緒に改札を通り抜けた。

ホームに下りる間際、振り返って絵売りの方を見やったが、人が多すぎて、男の姿を確認することは出来なかった。

('、`*川「ジョルジュくん?」

( ゚∀゚)「ん、ああ、いや、なんでもない」

明日は、朝からスタジオだ。

俺は気持ちを切り替えた。

冷房の効いた電車内は快適で、俺たちはそろって眠りにおちた。
そして、終電だというのに乗り過ごして歩く羽目になった。

それでも、次の日は早起きしなければならないと思うと憂鬱な気分になった。

11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 17:30:24.92 ID:6K5AmNjV0
次の朝。

寝坊した。これはひどい。

ショボンに遅刻のメールをした。
返信は、

from:(´・ω・`)
本文:Bスタ

だけ。

(;゚∀゚) 「やっべ、怒ってるかなぁ」

俺は方に食い込むギターを抱えながら(ちなみにテレキャスだ。24万したんだぞ)、走ってスタジオまで向かった。

駅からスタジオまでの道程に小さい公園があって、そこを通ると少し近道になる。

( ゚∀゚)「よっしゃ」

俺は公園に入った。

そしてまた、視界の隅に、何かが入った。


16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 17:37:26.65 ID:6K5AmNjV0
予感はあった。


 ( ^ω^)/ | |
  ノ  ) | |
   || /\


そこにいたのは、やはり昨日の絵売りだった。
しかし今度は、地面にイーゼルを立てて、キャンバスに向かって筆を走らせていた。

( ゚∀゚)「……」

男が、俺に気づいた様子はない。

俺は足を止め、その絵を後ろから覗いてみた。


白いキャンバスを、青一色に塗ったくっていた。
これから描くところか、俺はそう思った。俺は高校の時美術選択だったから。

( ゚∀゚)「……っと」

時間も時間だったので、俺はすぐにその場を離れた。


17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 17:42:01.35 ID:6K5AmNjV0
スタジオに入った瞬間に、伊藤のピックが手裏剣のごとく飛んできた。

親しき仲に礼儀あり。
こういうところがルーズだと、ただの仲良しバンドで終わってしまうってわけだ。

(´・ω・`)「大盛りねぎ入り」

( ・∀・)「大盛りチャーシュー増し」

('、`*川「んっと……メンマ増し!」

(;゚∀゚) 「……」

容赦ねぇ。俺の財布は死んだ。


(´・ω・`)「んっと、何の曲からやる?」

( ゚∀゚)「おう、新曲から。タイトル未定」

('、`*川「おk」

ショボンのスティックが、リズムを刻む。


スタジオの予約は5時間。
夕方前に、俺たちはスタジオを出た。

19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 17:48:40.22 ID:6K5AmNjV0
ショボンとモララーはそのままバイトに行くといった。

(´・ω・`)「というわけで」

( ・∀・)「ごゆっくり」


俺たち二人を残して、男二人は駅に向かった。

('、`*川「んじゃあ、どうしよっか」

( ゚∀゚)「俺はこのあと暇」

('、`*川「じゃあ、あたしの買い物に付き合って」

(;゚∀゚) 「えっ!?」


伊藤の買い物は長い。
男三人は、その長さを怖いくらいに知っている。

(;゚∀゚) 「(俺もバイト入れてりゃよかったぜ……だからあの二人は)」

('、`*川「さ、いきましょ」

満面の笑みで、伊藤は言った。

20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 17:54:46.81 ID:6K5AmNjV0
19時。
伊藤の買い物が全て終わったのは、日が暮れて一時間が経過した、19時だった。

('、`*川「んじゃあ、あたしいくとこあるからここでっ!」

( ゚∀゚)「おお、またなっ」

伊藤は紙袋を抱えて、いつもと違う改札に向かっていった。

伊藤の姿が見えなくなったあと、俺はその場にへなへなと座り込んでしまった。


疲れた……。


(;゚∀゚) 「疲れたぜ……」

思わず二回繰り返した。
俺はひとつ大きなため息をつくと、家に帰るためいつもの改札に向かうことにした。

22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 17:58:26.24 ID:6K5AmNjV0
そして、そこにはまた、あの絵売りがいた。


    |        
    |  ( ^ω^) 
   / ̄ノ(   ヘヘ ̄ ̄□□□□


( ゚∀゚)「……」


お客さんの姿は、やはり、ない。



( ゚∀゚)「おう、おにいさん」

( ^ω^)「……」

(;゚∀゚) 「おい、あんだだよっ!」

(;^ω^)「おおおっ?お客さんかお?」

男はびっくりした様子で、変な声を出した。
余りにも滑稽な、その姿。

(;゚∀゚) 「(こんなんで絵売れるのかよ……物売るってレベルじゃねーぞ)」

25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 18:02:46.74 ID:6K5AmNjV0
俺は気を取り直して続けた。

( ゚∀゚)「絵、見せてくれるかい?」

俺がそういうと、男の顔はぱっと明るくなった。
そして、俺の前に絵を並べなおして言った。

( ^ω^)「おっおっ、どうぞだおっ!」

どれどれ。

繰り返すが、俺は高校の時選択科目で美術を選択していた。

( ゚∀゚)「(芸術を見る目……俺にないこともないんだぜっ)」


といったところで男の絵に目を向けた。

素直に、驚いた。

( ゚∀゚)「……すげぇ」

俺は声を漏らした。


26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 18:07:27.06 ID:6K5AmNjV0
多少、稚拙なところがあるが、上手い。上手い。

二回繰り返したが、もう一度繰り返してもいい。

( ゚∀゚)「あんた、すげぇな」

( ^ω^)「あ、ありがとうだおっ」



空を描いたものだった。

青い空、白い雲!
と表現が稚拙なのは許してほしいが、その表現が一番適切な気がする。

いきいきと、高くて深くて、青くて白い空が、キャンバスいっぱいに描かれていた。

( ゚∀゚)「……」

俺は、見入った。

そして、二枚目の絵に手を伸ばした。

28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 18:12:54.14 ID:6K5AmNjV0
二枚目は、海だ。
夜の海、静かな、落ち着いた海だ。

( ゚∀゚)「どこの海?」

( ^ω^)「八景の……」

( ゚∀゚)「あの人工浜からか」


揺れる波と、動かない浜辺。
まさに静と動。

( ゚∀゚)「(高校時代を思い出すな)」

しかし俺の描いていた絵のレベルなんて足元にも及ばない。
純粋にこの男、上手だ。

俺はそう思った。

( ゚∀゚)「……へぇ、あんた、うまいんだな」

( ^ω^)「どうもだお」






32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 18:16:16.09 ID:6K5AmNjV0
( ゚∀゚)「そんで、売れるのかい?」

( ^ω^)「ん?なにがだお?」

(;゚∀゚) 「あんたの絵だよ……」

(;^ω^)「ん、ああ……あー……それは」

言葉を濁すあたり、売れていないのだろう。

絵のレベルは高い。
でも、それでも買おうなんて、思わないよな。
こんなでっかいキャンバスをどうやってもって帰るんだ。


( ゚∀゚)「ちなみに、いくらだい?」

( ^ω^)「いくらでも、いいんだお。この絵なら、これで買ってやる。そう思える値段で買ってくれれば、いいんだお」

男はにこにこ笑いながら言った。


34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 18:21:35.45 ID:6K5AmNjV0
( ゚∀゚)「なるほどね……」

俺たちのバンドのチケットも、そうしようかな。
ぼんやりとそう思った。
お前らの歌なら、この値段で聞いてやる。そういう評価を、俺たちもてもらいたいな。

( ゚∀゚)「これが本職ってわけじゃないんだろ?」

( ^ω^)「本職はバイトだお。絵だけじゃ、まだ、全然食べていけないお」

( ゚∀゚)「そっか……まぁ、俺もそんなもんだよ」

( ^ω^)「おにいさんはなにやってるんだお?」

( ゚∀゚)「バンド。全然、売れないけどな」

( ^ω^)「バンドかお!かっこいいお!」

( ゚∀゚)「そんな、かっこいいもんじゃ、ないさ」


そうだ。

そんな、かっこいもんじゃ、ないんだ。

36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 18:25:42.20 ID:6K5AmNjV0
俺たちはもうバンドを結成して、8年くらいになる。
今、実質的なリーダーはショボンだけど、最初にバンドを立ち上げたのは俺だった。

( ゚∀゚)『どんな会場でも満員に出来るような、ビッグなバンドになろうぜ!』


ファーストシングルで注目されて、セカンドで大ブレイクして。
武道館もソールドアウトで。

曲が終わって、指をさしただけで大歓声で。

そこで俺は、

( ゚∀゚)『さんきゅー、おまえらっ!』

って叫ぶんだ。





でも、実際はどうだ?

39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 18:30:57.56 ID:6K5AmNjV0
キャリアだけは長くて、でも火がつくことはなくて、
日に当たることもなくて、
だけど諦め切れなくて、
同期のバンドはどんどん先に行って、
後輩のバンドには追い抜かれて、
俺たちは、取り残されて。



判ってるんだよ。

もう、夢を諦める時期だってことくらい。
でも、諦めきれないんだよ。

ショボン、モララー、伊藤。
あいつらは、文句も言わずについてきてくれるんだ。

信じてるんだ。
信じるものには、太陽は輝いてくれるということを。


( ∀ )「俺は……」

(;^ω^)「ちょっと、どうしたですかおっ?!」


41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 18:35:53.81 ID:6K5AmNjV0
その翠星石のような口ぶりに、俺は引き戻された。

( ゚∀゚)「あ、ああ……、すまん。ちょっと、考え事しちまった」

(;^ω^)「大丈夫ですかお?」

( ゚∀゚)「大丈夫、だよ」

俺は言った。

( ゚∀゚)「なぁ、あんた、名前、なんていうんだ?」

( ^ω^)「僕ですかお?僕は内藤。内藤ホライゾンですお」

( ゚∀゚)「俺はジョルジュ。ジョルジュ長岡だ」

( ^ω^)「よろしくだお、長岡さん」

( ゚∀゚)「ジョルジュでいいよ。内藤」

( ^ω^)「あ、じゃあ、僕のことはブーンって呼んでくれお」

( ゚∀゚)「ブーン?なんだそれ?」

( ^ω^)「昔からの、僕のあだ名だお」

( ゚∀゚)「そっかそっか。じゃあ、よろしくな、ブーン」

44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 18:41:42.43 ID:6K5AmNjV0
俺たちは笑った。
そして俺はブーンの絵のひとつを指さして、言った。

( ゚∀゚)「なぁ、俺、今全然金もってないんだけどさ……」

俺は千円札を二枚、財布から抜き出した。

( ゚∀゚)「その絵、売ってくれねぇ?」

( ^ω^)「いいお!ありがとうだお!」

( ゚∀゚)「ほんとは二千円以上の値をつけてやりたいんだが……いかんせん金がなくてなぁ」

( ^ω^)「いいおいいお!」

( ゚∀゚)「すまねぇな。あ、じゃあ、かわりといったらなんだが……」

俺は財布からレシートを取り出して、その裏にボールペンで日時を書いて、ブーンに渡した。

( ゚∀゚)「この日、ライブハウスでライブをやるんだ。ゲストリストにいれておくから、よかったら観に来てくれよ」

( ^ω^)「本当かお!楽しみだお!絶対いくお」

( ゚∀゚)「来てくれるのか、うれしいぜ」

俺は言った。



46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 18:44:33.22 ID:6K5AmNjV0
( ゚∀゚)「っと、そんなところで、そろそろ帰ろうかな」

( ^ω^)「わかったお。絵、買ってくれてありがとうだお」

( ゚∀゚)「おう。部屋に飾っとくぜ」

( ^ω^)「また会おうお」

( ゚∀゚)「おお」

俺はブーンに手を振った。
ブーンは、本当にうれしそうに手をふりかえしてくれた。



51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 18:51:08.51 ID:6K5AmNjV0
次の日はオフ。練習もない、ライブもない、バイトもない。

( ゚∀゚)「平日の真昼間から、ぶらぶら外を出歩くのって、反社会的な行為だよなぁ」

( ^ω^)「じゃあ、それを歌にしたらいいんじゃないかお?ロックなんだし」

( ゚∀゚)「スケールちいせぇwwでも、いいかもな、そういうもの、おもしろいかもww」

( ^ω^)「期待しとくおww」


猛烈に暇だった俺は、ブーンが昼間、スタジオ近くの公園で絵を描いていたことを思い出し、行ってみることにした。

案の定奴はそこにいて、またせっせと筆を走らせていた。
ただの青だったキャンバスには、少しずつ樹が生えてきていた。


( ^ω^)「一人で黙々と描くのもいいけど、人と話しながらってのもまたいいお」

( ゚∀゚)「邪魔してスマンな」

( ^ω^)「とんでもない。普段バイトでお客さんとか店長とかしか話さないから、すごく新鮮だお」

53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 18:57:41.93 ID:6K5AmNjV0
ブーンは言った。
キャンバスに向かうその姿は、普段がゆるいキャラとは思えないくらい、凛としている。

( ゚∀゚)「これは、ここの公園の絵か」

( ^ω^)「そうだお」

( ゚∀゚)「じゃあもっと、人を描けよ、樹とかだけじゃなくてさ。幼女とかいるじゃんよww」

( ^ω^)「あー……僕、人は、上手く描けないんだお」

( ゚∀゚)「どうして?そんなに上手いのに」

( ^ω^)「モデルを頼める人がいないんだお。だから、全然描いたことがなくて」

そんなリアルなことを言われると何も言い返せなくなる。
俺はさっきコンビニで買ったコーラを一口飲んだ。

( ^ω^)「ジョルジュは?今日は練習はないのかお?」

( ゚∀゚)「ん、ああ。今日はないんだ」

( ^ω^)「そうかお」



56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 19:02:09.64 ID:6K5AmNjV0
( ゚∀゚)「新しい曲も、このまえ書いたばかりだからな。なんもうかんでこねぇ」

( ^ω^)「インスピレーションは大事だお」

( ゚∀゚)「芸術家としては」

( ^ω^)「お互いに」


俺は空を仰いだ。
高くて深くて、青くて白い空だ。ブーンが描いた、あの空だ。

( ゚∀゚)「ところで、ブーンはどんな音楽を聴くんだ?」

( ^ω^)「僕かお?僕は……うーん、ピロウズとかが好きだお」

( ゚∀゚)「ピロウズか。どうしてまた?」

( ^ω^)「やってる音楽もそうだけど、その生き様なんかも好きだお」

( ゚∀゚)「へぇ…・・・」

60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 19:07:31.24 ID:6K5AmNjV0
( ^ω^)「やっぱり苦労して、苦労して、そうやって人も、バンドも、大きくなっていくものなんだお」

( ゚∀゚)「なるほどねぇ」

( ^ω^)「だから、もともとの知名度だけでCDを売るアイドル歌手とか、アイドルグループは、僕はなんか好きになれないお」

( ゚∀゚)「そっか。俺もピロウズは好きだよ」

( ^ω^)「そうなのかお!話合うお」

( ゚∀゚)「今のバンド、まぁ、今はオリジナルをやってるけど、結成したばかりで、コピーをやってたときは、よくピロウズをやってたよ」

( ^ω^)「なんの曲だお?」

( ゚∀゚)「ベスト盤に収録されてるような曲はほとんどやったかな。俺が一番好きなのはファニーバニー」

( ^ω^)「奇遇。僕もだお」

( ゚∀゚)「そうなのか!へぇ」

( ^ω^)「君の夢が叶うのは、誰かのおかげじゃないお」

自分の、力なんだお。

ブーンは続けた。

68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 19:13:14.85 ID:6K5AmNjV0
( ^ω^)「さて、今日はこの辺にしとくお」

ブーンは筆の絵の具を紙で拭き取りながら言った。

( ゚∀゚)「もういいのか」

( ^ω^)「やりすぎると、集中力もかけてくるし、納得できる作品は出来ないお」

( ゚∀゚)「ストイックだな」

( ^ω^)「疲れてきたってのもあるお」

( ゚∀゚)「そっか。じゃあ俺はそろそろ帰るわ。明日もスタジオだしな」

( ^ω^)ノシ「ん、わかったお。バンド、頑張ってお」

( ゚∀゚)ノシ「じゃな」

俺はブーンと別れ、駅に向かった。
途中、携帯電話を取り出して、ショボンに電話をかけた。

( ゚∀゚)『あ、ショボン?』

(´・ω・`)『なんだい?』

( ゚∀゚)『今度のライブさ、あの曲やんね?昔やった……』

71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 19:19:16.25 ID:6K5AmNjV0
('、`*川「ファニーバニー?どうしてまた?」

スコアを渡すと、伊藤は疑問符いっぱいの顔で俺を見た。

( ゚∀゚)「ちょっとやりたくなってさ」

('、`*川「うわぁ、なつかしいなぁ、これ」

( ・∀・)「俺は別に構わんよ。この曲のギター好きだし」

( ゚∀゚)「よかった。やろうぜ」

(´・ω・`)「この曲、ハイハット裏なんだよねぇ」

( ゚∀゚)「何を。ショボンともあろうお方が」

(´・ω・`)「まぁ、何回かやれば思い出してくるかな」

( ゚∀゚)「おっしゃ。んじゃ、とりあえず一回やってみようぜ」


ショボンのスティックが、リズムを刻む。
俺とモララーのギターがリフを鳴らして、伊藤のベースがオブリガードのようなベースを弾く。



106 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 19:42:41.51 ID:6K5AmNjV0
久しぶりのファニーバニーは、少しぎこちなかったかもしれない。
でも、何回かやっていくにつれて昔の勘も戻り、最後にはしっかりと演奏できるようになった。

( ゚∀゚)「最初のモララーのギターソロはひどかったな」

( ・∀・)「てめぇは歌詞覚えてなかったじゃねぇか」

( ゚∀゚)「はて」

('、`*川「この曲、やっぱりいいね」

(´・ω・`)「あんまり激しくないけどね」

( ゚∀゚)「それがいいんだよ」

(´・ω・`)「ところで、ジョルジュ。次のライブってゲストいる?」

( ・∀・)「俺らにゲストなんているわけないだろwww」

( ゚∀゚)「あ、一人いる」

(´・ω・`)「mjd?」

('、`*川「えー、だれだれ?」


116 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 19:47:21.03 ID:6K5AmNjV0
( ゚∀゚)「最近知り合った。……ああ、男だよ」

( ・∀・)「なんだ」

('、`*川「ふぅん。どんなひと?」

( ゚∀゚)「絵描き。絵売り。駅前でこの前見かけて……まぁいろいろあって友達になった」

(´・ω・`)「へぇ、今度つれてきなよ」

( ゚∀゚)「おう。あ、でもそういえばアドレス聞いてねぇや」

( ・∀・)「なんだそりゃ」

('、`*川「うーん、でもまぁアドレスを聞くタイミングって結構難しいよねぇ」

( ・∀・)「女の子ならまだしも……男だろ?」

( ゚∀゚)「いやぁ、でも携帯持ってるかどうかもあやしいなぁ」

(´・ω・`)「どんな奴だよwwいまどき珍しいな」

( ゚∀゚)「まぁ、今日も帰り際にいるかどうかみてみるから、そのときにでも」

126 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 19:52:17.18 ID:6K5AmNjV0
スタジオの予約は五時までだったので、俺たちは四時五十五分には機材をまとめてスタジオを出た。

( ゚∀゚)「こっちだこっち」

いつもならこの後どこかの安いファミレスでご飯を食べた後、缶ビールを一本だけ買って公園に行くのだが、今日は駅に向かう。

( ゚∀゚)「いるかな」



いた。

いつもの場所に、また絵を広げて座っている。
あいかわらず、お客さんはいない。

( ゚∀゚)「よう」

( ^ω^)「ジョルジュかお。後ろにいるのは……」

( ゚∀゚)「紹介するよ。バンドのメンバー」

('、`*川「伊藤です」

( ・∀・)「モララーだ」

(´・ω・`)「ショボン」

( ゚∀゚)「おおう、紹介する暇もなかったな」

136 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 19:56:23.00 ID:6K5AmNjV0
( ^ω^)「僕は内藤ホライゾンだお」

( ゚∀゚)「ブーンって呼んでやってくれ」

('、`*川「ブーン……?なんで?」

( ゚∀゚)「そういうあだ名らしい」

( ・∀・)「面白いあだ名だなww」

( ^ω^)「よろしくだお」

ブーンはいつものようにニコニコ笑いながら言った。

( ゚∀゚)「ところで、ブーン。この後飯食べに行くんだけど、行かないか?」

( ^ω^)「ご一緒していいのかお?」

('、`*川「全然構わないわよ」

( ^ω^)「だったら、行かせてもらうお!」

( ・∀・)「決まりだな」

(´・ω・`)「まぁ、あんまりお金ないから高い店にはいけないけど」

( ^ω^)「僕もお金ないから……ちょうどいいお」



152 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 20:02:05.39 ID:6K5AmNjV0
安いファミレスといったらやっぱりイタリアンのあの店なわけで、
俺たちはいつものように二百円台で買えるあの料理を全員が注文した。


( ゚∀゚)「ドリンクバーの元を取る!」

( ・∀・)「俺コーラね」

( ゚∀゚)「あいよ」

('、`*川「ブーンは、いつから絵を描いてるの?」

( ^ω^)「もう、そうだおね、10年くらいだお」

(´・ω・`)「僕らももう8年くらいバンドをやってるんだ」

( ^ω^)「お互い、随分長くやってるんだお」

('、`*川「辛くならない?」

( ^ω^)「何がだお?」

('、`*川「なんていうか……今の生活に。不安になったりは、しない?」

(´・ω・`)「……」

( ^ω^)「それは……」

168 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 20:07:55.06 ID:6K5AmNjV0
( ゚∀゚)「コーラお待ち」

( ・∀・)「さんきゅ。……って、なんだこれ、何混ぜた?!」

( ゚∀゚)「ふふふwwww」

('、`*川「あんたたちうっさい!今、ブーンと真剣な話してるの!」

( ^ω^)「……辛いとか、不安とか」

本当のことを言えば、不安はあるお。
ブーンは言った。

( ^ω^)「絵だけで食べていくって、本当に難しいことなんだお。わかってる、わかってるんだお」

('、`*川「うん」

( ^ω^)「僕、実は大学には行っていたんだお。一応、関東の国立だお」

( ・∀・)「すげぇ」

(´・ω・`)「関東の国公立って軒並み難しいよね」

( ^ω^)「でも、学校に行く代わりに絵をかけなかった。就職活動の時、夢と現実と、どっちが大事か。本当に悩んだお」

( ゚∀゚)「……」

186 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 20:13:29.42 ID:6K5AmNjV0
( ^ω^)「このまま就職したら、もう絵を描いて生きていくことは出来ない。
      絵は趣味。そう割り切ってしまえば、多分楽だったんだお。だけど……」

('、`*川「諦めきれないわよね」

( ^ω^)「そうだお。就職して、働きながら絵を描くということも出来たけど、それは二兎追うもの一兎を得ずというやつだお」

( ・∀・)「なるほどね……」

( ^ω^)「大学を卒業した後は、フリーターになって絵に専念することにしたんだお。そして、もう……何年も経つお」

(´・ω・`)「……」

( ^ω^)「でも、後悔はないお。後悔なんてしたら、今までの数年間を全部否定することになってしまうお。
      僕にとって絵は、そんなに軽いものじゃないお」

('、`*川「……そっか」

( ^ω^)「だから僕は頑張ってるお。おっおっ」

( ゚∀゚)「そうだよな……後悔しちゃあ、いけないよなっ!」」


197 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 20:16:26.50 ID:6K5AmNjV0
('、`*川「何よ、いきなり大声出して」

( ゚∀゚)「だから、俺たちも頑張ろうって話さっ」

(´・ω・`)「なんだいいまさら」

( ゚∀゚)「?」

( ・∀・)「頑張ろうって、俺たちも十分頑張ってるじゃん」

('、`*川「あなたについていくって決めて、もう何年も経ってるのよ?」

( ・∀・)「俺たちに後悔させる気か?ジョルジュ」

( ゚∀゚)「……」

(´・ω・`)「そういうわけさ。大丈夫、信じるものに、太陽はきっと輝いてくれるさ」

( ・∀・)「……くっせ」

(´・ω・`)「……歌詞の引用だよ」

('、`*川「何の歌詞から?」

(´・ω・`)「秘密」

( ゚∀゚)「なんだよそれww」

216 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 20:21:07.52 ID:6K5AmNjV0
( ^ω^)「おっおっ。話はまとまったかお?」

( ゚∀゚)「おう。思いがけずも、いい形でな」

( ^ω^)「それはよかったお」

( ゚∀゚)「おうよ」

( ^ω^)「じゃあ、次のライブ、楽しみにしとくお」

('、`*川「任せて」

(´・ω・`)「任せなね」

( ・∀・)「……あれ、ジョルジュ、あのファニーバニーってもしかして……」

(;゚∀゚) 「うわ、お前それ秘密のつもりだったのに!」

( ^ω^)「??なんのことだお?」

(;゚∀゚) 「わからなかったらそれでいいんだ、いいんだ」

( ・∀・)「次のライブでファニーーバニーをやろうって言い出してさ」

(;゚∀゚) 「ちょwwてめぇ」

( ^ω^)「それは楽しみだお!」

229 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 20:25:45.26 ID:6K5AmNjV0
(;゚∀゚) 「あーあ。秘密だったのに」

('、`*川「(意外とお茶目……)」

( ^ω^)「楽しみにしてるお。絶対いくお!」

( ・∀・)「ファニーバニーか……ピロウズが好きなのか?」

( ^ω^)「おっ」

( ・∀・)「ふぅん。昔はよく聴いてたなぁ……今はオリジナルばっかりだからなぁ」

('、`*川「あたしも。スマッシングパンプキンズと同じくらい好き!」

( ^ω^)「スマパン?ああ、僕もtodayが好きだお!」

(´・ω・`)「詳しいね。スマパン聴くんだ」

( ^ω^)「色々聴いてるお。最近はUKにはまってるお」

( ・∀・)「例えば?」

( ^ω^)「beat union とかblood red shoesとか」

( ゚∀゚)「へぇ」

('、`*川「なんか意外」

( ^ω^)「おっおっ」

251 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 20:31:12.10 ID:6K5AmNjV0
( ^ω^)「話が合って楽しいお」

(´・ω・`)「でも、そんなに詳しい人に演奏を聞かせるなんてちょっと緊張するね」

('、`*川「確かに」

( ゚∀゚)「まぁうまくやろうぜ。ライブは明後日だからな、ブーン」

( ^ω^)「おっ。わかってるお」



ファミレスで話し込みすぎて、公園に行く時間がなかった。
まぁそれはそれで、いいかなぁ。

ライブ前ってことで、明日もスタジオに行くことになっているので、また早起きしなければならない。
ちょっと憂鬱になった。

273 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 20:38:02.01 ID:6K5AmNjV0
ライブ当日。
ライブハウス『クソ・ミソ』。

俺たちはチューニングをしたり、スコアを見返したりとライブの準備をしていた。
リハは、数分前に終わった。


( ゚∀゚)「対バンは、『the very important persons』だっけ」

('、`*川「有名なバンドよね」

( ・∀・)「ボーカルはなんであんなに憂鬱そうなんだろうな」

(´・ω・`)「最近ギターに彼女が出来たらしく、その僻みらしい」

( ゚∀゚)「なるほど」


対バンが有名バンドだったので、客入りはいつもより少し多い。

( ・∀・)「客すげーな。俺たち目当てじゃないだろうけど」

('、`*川「まぁ、ごっそりいただいていきましょう」

(´・ω・`)「そうしようか」

( ゚∀゚)「よっしゃ、いくぜ」




292 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 20:44:48.55 ID:6K5AmNjV0
ブーンは最前列に居た。
体が強そうなやつじゃないのに、あんなに前にいて大丈夫だろうか。
なんて、杞憂かな。

( ゚∀゚)「ちぃーっす」

テレキャスを構える。最初の曲は、オリジナル。

ショボンのスティックでリズムを刻む音。そして同時に入る、俺とモララーのギターリフ。
スタジオで適当にジャムっているうちに出来た、オープニング向けのスピード感のある曲。

( ゚∀゚)「■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!」

実際、歌詞なんて聞き取れやしねぇんだ。

大事なのは心意気だよ心意気。


8曲を終えた段階で、最後のMCを入れる。

(;゚∀゚) 「……ふう。暑いぜ……。よし、次が最後の曲です」

310 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 20:52:43.52 ID:6K5AmNjV0
ええー、とブーイングを入れてくれるのはうれしい。
いくらか、俺らを好きになってくれたかな。

(;゚∀゚) 「えっと、最後の曲はカバーです。嫌いな人はここで退場していただいて結構です。
     僕らがバンドを結成して、一番最初にコピーした曲で、俺の友達が、一番すきだって言ってた曲です」

マイクに口をつけるくらい近づけて、俺は言った。

(;゚∀゚) 「the pilliws, funny bunny」

照明をひとつだけ残して、他全ての明かりが消えた。

同時に、ショボンのドラムがスタートした。
そして四弦開放をうまく使ったギターリフ。ルートというよりオブリガードのようなベースライン。

(;゚∀゚) 「■■■■■■■■■■■■■■■■■■!」


君の夢が叶うのは、誰かのお陰じゃないぜ。
風の強い日を選んで、走ってきた。


ブーンには、どんな風にその歌詞が映っただろうか。俺はそんなことを考えていた。

そして、曲が。


終わった。

320 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 20:58:22.29 ID:6K5AmNjV0
(;゚∀゚) 「おつかれさん」

(;・∀・)「ふぃ〜」

('、`*川「水のみたい」

(´・ω・`)「ふぅ」

楽屋に戻ってきて、俺たちはどさっと腰を下ろした。

(;・∀・)「最後のファニーバニー、やってた側がいうのもなんだけど、よかったな」

('、`*川「うん、エンディングに最適だったね」

(´・ω・`)「だね。綺麗に負われたね」

(;゚∀゚) 「おいおい、今度カバーアルバムでも作るかぁ?」

そんなことを言い合いながら、俺たちは笑った。

( ^ω^)「お疲れさんだお」

(;゚∀゚) 「おお、ブーン」

( ^ω^)「スタッフに頼んだら入れてくれたお。これ、飲み物」

('、`*川「あ、ありがとー」

332 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 21:02:06.77 ID:6K5AmNjV0
ミネラルウォーターが、体にしみこんでいく。

( ゚∀゚) 「水うめぇww」

(;・∀・)「おう、ブーン。ファニーバニーは、どうだった?」

モララーがブーンに問う。
伊藤も、その返事を聞くために身を乗り出す。

( ^ω^)「すごくすごく、よかったお!」

('、`*川「よかったぁ!」

( ^ω^)「最前列で汗まみれになった甲斐があったお。Tシャツが汗で完全に死んだおwww」

(;゚∀゚) 「うわ、くっせ。近づくなwww」

(´・ω・`)「ジョルジュも変らないよ」

(;・∀・)「お前もだろうがしょぼくれ野郎」

(´・ω・`)「ふふふ」



343 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 21:05:24.97 ID:6K5AmNjV0
その時、コンコンと扉を叩く音がした。
そして入ってくる、男二人組み。

('A`)「っす」

( ´∀`)「っす」

('、`*川「あ!」

(´・ω・`)「この前の居酒屋の客引き……」

(;´∀`)「モナ?!」

( ・∀・)「そういえば。最初の一杯が無料だっていう……」

('A`)「お前そんなバイトしてたのか」

(;´∀`)「モナ。あ、でもそうじゃなくて……」

(;゚∀゚) 「『the very important persons』のボーカルとギターだろ!」

('、`*川「あ」

(´・ω・`)「あ」

(;'A`)「ひっどいな……」

355 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 21:09:23.76 ID:6K5AmNjV0
(;´∀`)「と、とにかくモナ」

('A`)「おう。あんたたちの演奏、すっげぇよかったよ」

( ゚∀゚)「おお、mjd?」

('A`)「ファニーバニー、俺らもそのうちやろうかな」

('、`*川「是非やってみて」

( ´∀`)「僕あのギター好きモナ」

( ・∀・)「おう、仲間」

( ´∀`)「mjsk」

('A`)「まぁ、言いに来たのはそれだけ。また今度、対バン出来ればいいな」

( ゚∀゚)「おう。ライブ頑張ってくれ」

('A`)「おう」

( ´∀`)「それじゃあ」



362 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 21:12:58.11 ID:6K5AmNjV0
(´・ω・`)「地味に大物が」

('、`*川「だね」

( ・∀・)「いやぁ、今日はよかったなぁ」

( ^ω^)「おっおっ」

( ゚∀゚)「よっしゃ、さっさと片付けて飲み行こうぜ!」



いつもの安居酒屋にいって、久々に吐くまで飲んだ。
普段のメンバープラスブーン。すっかりみんな意気投合して、話題が尽きることはなかった。



372 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 21:22:03.46 ID:6K5AmNjV0
そんなこんなで、俺たちは少し有名なバンドになって、
少しずつ、客の入りも増えてきた。

ブーンは、ライブの度に観に来てくれた。
ピロウズの、ハイブリットレインボウを演奏したりもした。

( ゚∀゚)「新曲が書けた」

('、`*川「ん、聴かせて」

( ・∀・)「うんうん」

( ゚∀゚)「……どう?」

( ・∀・)「なんか少しキャッチーな感じだな、珍しく」

('、`*川「確かに。路線変更?」

(;゚∀゚) 「い、いや、そんなつもりはないんだけど」

(´・ω・`)「なんかアーバンヒムス期のリチャードみたいだね」

( ゚∀゚)「ほめてくれてる?」

(´・ω・`)「ただの感想」

381 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 21:25:45.86 ID:6K5AmNjV0
('、`*川「あ、そうだ。ブーン、アドレス教えてよ」

( ^ω^)「ん?いいお!」

( ・∀・)「そういや聞いてなかったっけ」

('、`*川「またタイミングを逃してたのよ」

( ゚∀゚)「聞いたもんだとばっかり思ってたからなぁ」

(´・ω・`)「赤外線は?」

( ^ω^)「あるお。……っと、おくれたかお?」

('、`*川「うん。って、あれ?」

( ・∀・)「お前アドレス帳に住所までいれてんのかよwwww」

( ゚∀゚)「うわwwマジだwww」

(;^ω^)「い、いや、暇だったからつい……メールを打つふりをして……」

( ゚∀゚)( ・∀・)「だははははwwwwwwww」



391 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 21:30:06.68 ID:6K5AmNjV0
ブーンの絵も、順調に書き進められているようだった。

( ゚∀゚)「真ん中寂しくねぇ?」

(;^ω^)「うーん。僕もそうおもってるんだお」

( ゚∀゚)「なにか書き足せよ」

(;^ω^)「うーん……」

( ・∀・)「俺描けよ俺」

( ゚∀゚)「ああ、ブーンは上手く人物は描けないんだよ」

('、`*川「そうなんだ。確かに風景画おおいよねぇ」

(;^ω^)「描けるようになりたいんだけど……」

(´・ω・`)「まぁ、きっと出来るようになるよ」

(;^ω^)「だといいお」


397 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 21:36:06.48 ID:6K5AmNjV0
前だけ見て歩くのはよくない。
ブーンはよくそういった。

( ^ω^)「たまには、振り返ったり、視界の隅をみて見るんだお。そういうところに、きっと何か面白いものとか、忘れていたものがあるんだお」

( ゚∀゚)「そういうもんかねぇ」

( ^ω^)「これから、少し気をつけてみるといいお」

ブーンは言った。

( ^ω^)「僕はよくそうしてるお。そういうところに、絵を描きたいと思えるような衝動が隠れてるんだお」

('、`*川「音楽の衝動もあるのかしら」

( ゚∀゚)「俺見つけたことねぇや」

('、`*川「見つけろ」

(;゚∀゚) 「はい」


そんな風に、日々が過ぎていった。
そういう完結した日常に満足していた俺たちには、もしかしたら、何か心の油断みたいなものがあったのかもしれない。

思わぬしっぺ返しを、食らうことになる。

403 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 21:41:07.23 ID:6K5AmNjV0
その日はライブの日だった。
ブーンも来ると言っていたので、俺たちはストレンジカメレオンを演奏するつもりでいた。

周りの色に馴染めない、出来損ないのカメレオンの歌。

その日の対バンはまた『the very important persons』で、楽屋にはドクオとモナーがやってきていた。
ドクオは相変わらず憂鬱そうで、モナーはなんかうれしそうだった。

( ´∀`)「♪」

('、`*川「どうしたの?今日機嫌よさそうだね」

('A`)「けっ、また渡辺さんとデートだろ」

('、`*川「へぇ。彼女いるんだっけ」

( ´∀`)「モナモナ」

('A`)「けっ。ボーカルは多少見た目が悪くてもモテることが約束されているはずなのに……」

( ゚∀゚)「俺もモテねぇ」

('A`)「同士よ!」

410 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 21:46:04.25 ID:6K5AmNjV0
俺たちは抱き合い、そしてその人生を呪った。
ああ神様。可愛い可愛い彼女を僕にください。

( ´∀`)「でもドクオにはクーさんが……」

(;゚∀゚) 「なにぃ!?」

('A`)「あー……でもクーは別に」

(;゚∀゚) 「このやろうっ!今同士って言っただろうがぁ!」

なんて、馬鹿騒ぎをしていると緊張がほぐれる。

ドクオに飛びつきながらも、俺は楽しかった。

そうしているうちに、俺たちの出番が来た。

(´・ω・`)「いこっか」

('A`)「しっかり会場温めとけよ」

( ・∀・)「けっ。そのうちお前らのほうが前座になるよ」

( ゚∀゚)「んじゃ、いくぜ」

420 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 21:51:49.99 ID:6K5AmNjV0
会場に入って、客を見渡した。
メインのバンドがバンドなだけに、客の入りは多い。

俺はブーンの姿を探したが、見つかりそうもなかった。

( ゚∀゚)「(404)」

Not found.

( ゚∀゚)「ちーっす」

いつものように挨拶をして、いつものようにオープニングの曲を演奏した。
かつてとは思えないほど盛り上がる。少しは、俺たちのファンも増えてくれたのかな。

(;゚∀゚) 「ふぃ……暑い……」

曲を次々に消化する。
そして、最後の曲、ストレンジカメレオン。

I want be a gentleman.

結局、ブーンの姿は、最後まで見つけられなかった。

425 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 21:55:41.13 ID:6K5AmNjV0
楽屋に来てるのかな、と思ったが、楽屋で待ち構えていたのはドクオとモナーで、
その日、結局ブーンは現れなかった。

('、`*川「どうしたのかな」

( ・∀・)「調子悪いんじゃね?」

(´・ω・`)「心配だね」

( ゚∀゚)「……」

携帯電話を開いてみたが、ブーンからの着信、メールはなかった。

( ゚∀゚)「……」

( ・∀・)「まぁ、ライブの度に来るのは大変だもんな」

(´・ω・`)「急用くらいはいるかもしれないしね」

( ゚∀゚)「……そうだな」

俺は携帯を閉じた。

433 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 22:01:38.54 ID:6K5AmNjV0
ライブ後、二日経っても、ブーンは現れなかった。

( ゚∀゚)「これはどうかんがえてもおかしい」

('、`*川「あたし昨日メールしてみたけど、返事きてないよ」

(´・ω・`)「同じく」

( ・∀・)「俺も」

( ゚∀゚)「俺は電話してみたんだが、出なかった」

('、`*川「もう一回」

( ・∀・)「だな」

(´・ω・`)「ジョルジュ、頼む」

( ゚∀゚)「おう……」

俺は携帯を取り出し、ブーンのアドレス帳を呼び出した。
住所の入力された、ブーンのアドレス帳。

コールが響く
二回、三回。
四回。
そして、

出た。

437 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 22:03:31.14 ID:6K5AmNjV0
『はい』

(;゚∀゚) 『ブーンか?!』

電話の向こうで、誰かが息を呑むのが判った。

(;゚∀゚) 『あの、ブーンじゃないのか?!』

『あ、あの……ブーンって、お兄ちゃんのことですか?』

電話の向こうで、女の子の声で、誰かがそういった。



443 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 22:07:10.42 ID:6K5AmNjV0
『内藤ホライゾン……のことですよね?』

(;゚∀゚) 『あ、はい。そうです』

『そう、ですか……あの』

(;゚∀゚) 『はい!』

電話の向こうで、一呼吸おかれるのがわかった。





『兄は……内藤ホライゾンは、三日前に交通事故に遭って、そのまま病院で……』

俺は思わず携帯を落としそうになった。

『……昨日、通夜も』



カツン、と音を立てて落ちたのは、俺の携帯だった。

449 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 22:09:58.71 ID:6K5AmNjV0
ブーンのアドレス帳には住所が書かれていた。

('、`*川「そっか、あたしたち」

伊藤が言った。

('、`*川「まだ、一度もブーンの家に行ったことなかったんだね」

( ・∀・)「……」

(´・ω・`)「……」

ブーンの家に向かうバスの中。
俺たちはほとんどしゃべらなかった。

いつも使っている駅から、バスに乗って20分。

ブーンの家は、そこにあった。



从 ゚∀从「こんにちは」

ブーンの妹さん。

ハインリッヒ。

456 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 22:12:32.18 ID:6K5AmNjV0
('、`*川「こんにちは」

( ゚∀゚)「こんにちは」

( ・∀・)「……」

(´・ω・`)「……」

从 ゚∀从「こちらへ」

見た感じでは、高校生くらいだろうか。
その頬に、涙の跡があった。

( ゚∀゚)「(そりゃあ、辛いよな……)」

俺たちは家に入り、大きな和室に通された。




そこに、あいつが居た。

( ゚∀゚)「……よう」



[( ^ω^)]



462 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 22:15:32.33 ID:6K5AmNjV0
写真の中で、あいつは笑っていた。
いつ撮った写真だ?
どうも、既視感がある。

('、`*川「これ」

伊藤が言った。

('、`*川「あたしたちと映った写真のブーンだ」

俺たちははっとした。
そのブーンは、確かにそうだ。
俺たちと一緒に映った写真で、ブーンだけ切り抜いたものだ。

从 ゚∀从「皆さんには悪いかと思いましたが……」

ハインは言った。

从 ゚∀从「兄が、一番楽しそうに映っていた写真だったもので」

構わない。

俺は言った。

466 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 22:16:50.63 ID:6K5AmNjV0
( ゚∀゚)「……」

('、`*川「……」

( ・∀・)「……」

(´・ω・`)「……」

( ゚∀゚)「……」

('、`*川「……」

( ・∀・)「……」

(´・ω・`)「……」

( ゚∀゚)「……」

('、`*川「……」

( ・∀・)「……」

(´・ω・`)「……」


( ∀ )「クっ……」

泣き出すのは、最後だって決めたのに。

473 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 22:20:27.23 ID:6K5AmNjV0
知らないうちに、頬を涙が伝っていた。
それから先は、もう何がなんだかわからないままに涙があふれてきた。

止めようとしても、止まらなかった。コンタクトレンズが、なくなった。
でも、そんなことどうでもよかった。

とにかく、今は。


泣けるだけ、泣いておきたかった。


(  ∀ )「……」

くそ。



俺、かっこ悪い。


480 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 22:23:54.85 ID:6K5AmNjV0
ブーンは余所見をしながら道を歩いていたらしい。

ブーンは振り向いていたんだ。今まで、歩いていた道を。
忘れていたもの、絵への衝動を、そこに探していたんだ。


そこに、突っ込んだのはトラックだった。

即死で、苦しみがなかったというのが、唯一の救いだった。



まだ葬式が終わってないので、線香を上げることは出来なかった。

四人で、黙祷をささげた。
あの世に向かっているブーンが、多分、今、振り向いているだろうから。

俺たちを見てくれているだろうから。

488 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 22:27:41.46 ID:6K5AmNjV0
从 ゚∀从「あなたたちに、見せたいものがあるんです」

( ゚∀゚)「……?」


ひとしきり泣いたあと、顔を上げるとハインがそう言った。

モララーと目を見合わせた。目が赤い。
こいつも、泣いてたんだな。

(´・ω・`)「行くよ」

ショボンが言った。


从 ゚∀从「こっちです」


そう言われても、すぐには立ち上がれそうにない。
首を振ると、ショボンが俺の手を引いて言った。

(´・ω・`)「行こう。行くんだ。立ち止まっていても、何も始まらない」

498 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 22:33:56.28 ID:6K5AmNjV0
一度庭に出て、倉庫に連れて行かれた。
あいつの家、こんなに大きかったのか。

貧乏なんじゃなかったのか……?

从 ゚∀从「兄だけは、一人暮らしでした」

ハインは俺たちの心を察したように言った。

从 ゚∀从「進路で、父と揉めたんです。大学の学費も出してもらえなくなりました。
      大学はなんとかアルバイトで卒業することができましたが……」

兄は、私たちとは違いました。
と、ハインは続けた。

从 ゚∀从「兄は本当は芸大に行きたかったみたいです。でも、そこは親に妥協して、普通の国立大学に行きました
      ……でも、夢は捨て切れなかったみたいですね」

( ・∀・)「夢を捨てちゃあ、夢を追ってた今までの自分を否定することになる」

从 ゚∀从「……そうですね」


503 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 22:39:11.72 ID:6K5AmNjV0
从 ゚∀从「兄のアパートに、これがあったんです」

ハインは、そう言って俺たちを倉庫の中に招き入れた。
布を被ったキャンバス、イーゼルが、そこにあった。




从 ゚∀从「これをみたとき、びっくりしました」

ハインは言った。

从 ゚∀从「今までの兄が、描かなかったようなものが描いてあったから」


ハインは布に手をかけ、布を取った。



その、露になったキャンバスの上。





そこには、俺たちがいた。

506 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 22:42:35.21 ID:6K5AmNjV0
( ゚∀゚)「ああ……」

('、`*川「……」

( ・∀・)「……」

(´・ω・`)「……」


あの、公園で描いていた絵の続きだ。

真ん中が寂しいって、俺が指摘したあの絵の続き。


青い空の下、緑の公園の中で、俺たちが笑っている絵。


从 ゚∀从「写真を見て、判りました。あなたちですね。これ」


ハインは言った。
その目には、うっすらと涙が浮かんでいる。

从 ∀从「私のことだって、描いたりはしなかったのに」

513 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 22:45:56.90 ID:6K5AmNjV0
ばっかやろうが。

ショボンは、そんなにかっこよくねぇよ。


伊藤だって、三割増しくらいで美人になってるじゃねぇか。


モララーはああ見えて足短いんだぜ?


よく見とけよ、ブーン。
長かった、とは、決していえなかったけど、それでも深い付き合いをしてただろうが。



そして、俺は……。



( ;∀;)「俺は、もっとかっこいいだろうが」


俺はつぶやいた。

523 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 22:50:27.38 ID:6K5AmNjV0
枯れたと思ってた涙が、またあふれてきた。
脱水症状で死んでしまうわ。ばか。

ブーン、お前俺たちにもそっちに行ってもらいたいのか?

なんて、冗談。


喪服の袖でゴシゴシと顔を拭いて、涙で滲んだ視界を回復した。
片方はコンタクトがなくなってて見えないけど。


( ゚∀゚)「……でも、ブーン」



お前、人物だって、


( ゚∀゚)「全然、上手に描けるじゃねーか」

自信持てよ。

ほんとに。

532 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 22:56:32.69 ID:6K5AmNjV0
ブーンの家を出て、俺たちはバスに乗り、駅に戻った。
絵を売るブーンの姿は、もうない。


( ゚∀゚)「……ショボン、次のライブっていつだっけ?」

(´・ω・`)「……三日後」

('、`*川「また『the very important persons』とだよ」

( ・∀・)「そいつは大事なライブだな」

( ゚∀゚)「マキシマムザホルモンは、あるライブで同じ曲を三回繰り返すという意味不明な行為を行ったという」

(´・ω・`)「ほう」

( ゚∀゚)「俺たちがやるとしたら、そりゃあ……なぁ?」

('、`*川「うん」

( ・∀・)「まぁ、決まってるよな」

( ゚∀゚)「おう」

決まってるよな、そんなの。

538 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 22:59:41.34 ID:6K5AmNjV0
俺たちはうたうんだ。

あの曲を。


( ゚∀゚)「あ〜神様の〜」

('、`*川「声〜に〜逆らって〜」


あいつが、好きだった曲を。



funny bunny を。

多分、振り返って、聴いてくれてるから。





( ゚∀゚)ジョルジュたちはうたうようです   おわり


あとがき的な


419 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 21:51:18.36 ID:j/UB655JO
あ、これか
ttp://nagixnagi.blog38.fc2.com/blog-entry-295.html

支援

553 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 23:03:27.60 ID:6K5AmNjV0
ひさしぶりにブーン系を書いた……
ながらは疲れる。

>>419
それのスピンアウト。
覚えてくれてた人いるんだな。



576 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 23:13:58.84 ID:lRN3XKST0
ワンダーウォール読んできたけどあっちじゃ
普通にブーンとショボン友達なのか

580 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/19(火) 23:16:20.39 ID:6K5AmNjV0
>>570
全然構いません。

>>576
……あ!!


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