2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 01:34:46.12 ID:XVTDah/Z0

最後のデート以来、モララーは以前と変わり無い生活を送っていた。

( ・∀・)「ご飯出来たよ―――あ」

それでも時々、彼女を思い出してしまう。
壊れたゲーム機を起動させようとした時や、綺麗に折りたたまれた衣服を出す時に。

その度にモララーは、肩を落として思いに馳せた。


( ・∀・)「はあ……」


ピンポーン


( ・∀・)(ん、誰だろ……)

( *・∀・)「ひょっとしてあの綺麗な巫女さん?」

そんなある日、彼のアパートに訪問者がやってきた。


6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 01:37:17.44 ID:XVTDah/Z0

( ;・∀・)(いや、もしかしてもしかすると……)


彼女が帰ってきたのかもしれない。
ありえない事なのに、頭では否定するのに、心がそれを許さない。


( ;・∀・)「はい、今開けます」


心臓の鼓動が高まる。
モララーは震える手でドアを開けた。





( ^ω^)('A`)「オイースwwwwwwww」

( ・∀・)


10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 01:40:38.20 ID:XVTDah/Z0

( ・∀・)

(#^ω^)「ドクオから聞いたお! 幽霊なんて嘘つきやがって!
       この前デートしたんだろあぁ!?」

('A`)「君という人間の人格を疑うね」

( ・∀・)

( *^ω^)「で、どこまでいったんだお? 経過からじっくり聞かせてもらおうか」

('A`)「今夜のオカズにするんだ。生々しい描写を頼むぜ」

( ・∀・)「キス……」

( ^ω^)「つまんねー! キスだけかお!?」

( ・∀・)「いや、キスしたかったけど、出来なかった……」

('A`)「ヘタレ乙wwwwww」 ←内心嬉しい


12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 01:42:56.15 ID:XVTDah/Z0

(^ω^ )

( ^ω^)「あの女の子は何処だお?」

('A`)「隠すとためにならんぞ」

( ・∀・)「……」

( ^ω^)「ドクオ警部! 犯人が黙秘権を行使しています!」

('A`)「これは刑法第774条に乗っ取って強制取り調べの刑に処す必要があるな」

( ・∀・)「―――れた」

('A`)「ん?」





( ・∀・)「別れた」


14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 01:44:25.15 ID:XVTDah/Z0

( ^ω^)

('A`)

( ・∀・)

( ^ω^)「……」

('A`)「……」

( ・∀・)




( *^ω^)「わwwwwwかwwwwwwれwwwwwwたwwwwwwwww」

('∀`)「wwwwwわwww笑っちゃ悪いぜ……wwwwwwwwww」


18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 01:47:11.21 ID:XVTDah/Z0

( ^ω^)「ドンマイドンマイwwwwwwwwwwwww」

('∀`)「人生そんな事もあるってwwwwwwwwww」

( ・∀・)「ああ……」

( ^ω^)「それはそれで経緯を聞きたいお!」

('A`)「俺たちには知る権利があるんだぜ」

( ・∀・)「死に別れたんだ」

( ^ω^)「しwwwwにwwwwwwww……」



( ^ω^)「え?」

('A`)「え?」


20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 01:49:11.85 ID:XVTDah/Z0

( ・∀・)「もう、あの子はいないんだ」



( ^ω^)('A`)



( ;^ω^)「ごめん……」

(;'A`)「すいませんでした……」

( ・∀・)「いや、いいよ……」

( ;^ω^)「あの、気を落とさないように……」

(;'A`)「力になれる事があったら何でも……」

( ・∀・)「いいんだ」



( ・∀・)「もう―――いいんだ」


23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 01:51:41.61 ID:XVTDah/Z0

( ・∀・)

( ;^ω^)

(;'A`)


ブーンたちは、思いもよらない事態に、声が出ないでいる。
モララーは彼らとは逆に、とても落ち着いていた。

( ;^ω^)「あの、今日はごめんお……また来るから」

( ・∀・)「ああ……」

(;'A`)「何かあったらすぐ連絡しろよ。ニートは年中有休だから」

( ・∀・)「わかった」


26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 01:57:00.30 ID:XVTDah/Z0

ブーンたちが帰った後、モララーは部屋の掃除を始めた。
たった数週間で、部屋はゴミ箱のように散らかっていた。

ちょっと前なら、脱ぎ捨てた服を洗濯機に入れる人がいた。
何も言わなくても、ゴミ袋を出してくれる人が―――いた。




( ・∀・)




乱雑に散らかった部屋のように、モララーの心は荒れていた。
整理出来ない感情が渦を巻き、燃えさかる炎のように暴れ回っている。

初めての恋だった。


だから、これが初めての失恋となる。


30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 01:59:50.66 ID:XVTDah/Z0

   ∧_∧
  ry ^ω^ ヽっ
  `!       i
  ゝ c_c_,.ノ
     (  
      )
 .∧ ∧.(
 (・∀・)∩
 o   ,ノ
O_ .ノ
  .(ノ
 ━━


32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 02:01:41.19 ID:XVTDah/Z0


 暗い―――


 冷たい―――


 ここは何処―――


 私は―――



 誰?



35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 02:04:30.38 ID:XVTDah/Z0



ドンドン!


煤i ;・∀・)「!」



激しいノック音で、モララーは目を覚ました。
部屋の明かりをつける。時計の針は2時4分を指している。

( ;・∀・)(今のは、夢か)

不思議な気分だった。夢なのに、夢じゃないような。
感じるというよりは、客として見ているような、違和感。

まるで誰かの夢を覗いているような感覚だった。


37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 02:06:52.74 ID:XVTDah/Z0

( ;・∀・)(ていうか、こんな時間に誰だ?)

草木も眠る丑三つ時にやってくるような知り合いはいなかった。
部屋を間違えた酔っぱらいかと思ったが、ノック音は止まらない。

( ;・∀・)

ゆっくりとドアに近づき、耳をすました。


「―――て―――い! 開けて――――さい!」

( ・∀・)「!」


その声には聞き覚えがあった。
(自称)スーパー美少女巫女の声だ。


40以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 02:09:45.78 ID:XVTDah/Z0

鍵を外し、ドアを開ける。

川;゚ -゚)「モララーさん!」

( ;・∀・)「クーさん! どうして?」

走ってきたのか、クーは息を切らして肩で呼吸をしている。
ひとまず中に迎え入れ、お茶を入れた。

川 ゚ -゚)「ゴクゴク」

川 ゚ -゚)「まずい粗茶をありがとうございます」

( ・∀・)「どういたしまして……」

川;゚ -゚)「そうだ! こんなまずい粗茶を飲んでる場合じゃないんですよ!」

( ・∀・)「二回も言われた……むなしい」


42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 02:12:41.63 ID:XVTDah/Z0

( ;・∀・)「大体あなた、どうやってこの家を知ったんですか」

川 ゚ -゚)「巫女ですから!」

( ・∀・)「そう言い切られると何だか説得力があります……」

川;゚ -゚)「じゃなくて、貞子さんの事でわかった事があるんです!」

( ;・∀・)「え!?」


自分のコップに伸ばした手を止めて、クーの顔を見つめる。
彼女の肩を掴んで、前後に激しく振った。


( ;・∀・)「どういう事ですか!? 何がわかったっていうんです!?」

川 ゚゚゚ -゚゚゚)))「おおおお落ち着いて下さいいいいいいい」


43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 02:17:02.33 ID:XVTDah/Z0

( ;・∀・)「すいません。でも一体何が?」

川 ゚ -゚)「何から話そうかな……そう、まずですね、彼女はもの凄く特殊な幽霊だったんです」

( ・∀・)「特殊ですか。確かに、あんなゲーマーな女の子そうそういない」

川#゚ -゚)「私帰りますよ」

( ;∀;)「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!」

コホン、と咳を一つ。

川 ゚ -゚)「いいですか。除霊の儀式の最中、私はずっと違和感を覚えていました」

( ;・∀・)「―――というのは?」

川 ゚ -゚)「今まで幾度となく除霊の儀式は行いましたが、あんなにスムーズに出来たのは初めてです。
     それにですね、彼女を初めて見たとき、私は彼女が幽霊だと気がつかなかった」


45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 02:18:45.70 ID:XVTDah/Z0

( ・∀・)(それは単に貴方の力不足では……)

川#゚ -゚)「殴りますよ」

( ;・∀・)「すいませんでした! あと心は読まないで下さい!」

コホン、と咳をもう一度。

川 ゚ -゚)「その原因というのがようやくわかったんです。彼女は、生き霊だったんです」

( ・∀・)「生き霊……」

川 ゚ -゚)「ええ」

( ;・∀・)「生き霊!?」

川 ゚ -゚)「ええ」


47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 02:23:46.79 ID:XVTDah/Z0

( ;・∀・)「そんな馬鹿な! だって彼女はずっと昔に死んでるはずじゃ……」

川 ゚ -゚)「確かにその通りです。これを見て下さい」

クーはどこからともなく、古めかしい一冊の本を取り出した。
所々黒ずんでいて、中を開けるとほこりが舞った。

川 ゚ -゚)「この本の―――ここです。見て下さい」

( ・∀・)「ええっと……」

川 ゚ -゚)

( ;・∀・)「これは……!?」

川 ゚ -゚)「お分かり頂けましたか?」

( ・∀・)「いえ、僕古典の成績2なんで全然読めません」

川 ゚ -゚)「死ねばいいのに……」


50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 02:27:55.72 ID:XVTDah/Z0

川 ゚ -゚)「死ねばいいのに」

( ・∀・)「また二回も……てんどんは一度で十分ですよ。
      二回目はそこまでウケません」

川#゚ -゚)「いいですか」

( ;・∀・)「はい」

川 ゚ -゚)「ここにはこう書いてあります。
     作物が育たず、大飢饉に襲われた村の為に、天の神に生け贄を捧げた。
     選ばれた少女の名前は貞子。聖水の泉にその身を沈めた、と」

( ・∀・)

川 ゚ -゚)「わかりますか?」

( ・∀・)「貞子が……生け贄に……?」


52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 02:31:36.27 ID:XVTDah/Z0

川 ゚ -゚)「おそらく、陰陽師か巫女か、その道のプロがやったのでしょう。
     見事に貞子の魂だけが天に逝き、肉体には命が残った」

( ;・∀・)「命と魂って、分離出来るもんなんですか?」

川 ゚ -゚)「例えば、植物状態の人間なんかはその類です。
     それが魂が先に逝き、命だけが残っている状態なんです」

( ;・∀・)「じゃあ貞子の魂は」

川 ゚ -゚)「帰るべきところに帰りました。そう」



川 ゚ -゚)「命ある肉体にです!」

( ・∀・)


53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 02:33:04.93 ID:XVTDah/Z0

( ・∀・)「貞子は、死ぬ直前の記憶が、無かった」

川 ゚ -゚)「記憶の一部が肉体に留まったのが原因でしょう」

( ・∀・)「貞子は生きてる」

川 ゚ -゚)「そうです。貞子さんは生きてる」




( ;∀;)

川 ゚ -゚)「……」

( ;∀;)「良かった……本当に、良かった……」


57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 02:38:51.76 ID:XVTDah/Z0

煤i ;・∀・)

( ;・∀・)「待ってください!」

(゚- ゚ 川「はい。どの辺で待てばいいでしょうか?」

( ;・∀・)「そうじゃなくて、貞子は何百年も前の人間なんでしょう!?
      肉体なんて、もうぼろぼろなんじゃ……」

川 ゚ -゚)「ですが、彼女はちゃんと生き霊でした」

( ・∀・)「どうして……」

川 ゚ -゚)「聖水の力ですよ。
     そして強力な儀式によって、彼女の肉体は聖なる力によって保たれたんです」

( *・∀・)「じゃあ会えるんですよね!? 貞子に!」

川 ゚ -゚)「問題はそこです」

( ・∀・)「え?」


60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 02:43:32.23 ID:XVTDah/Z0

川 ゚ -゚)「魂と命が一度分離してしまうと、簡単にはくっつかない。
     おそらく今彼女の肉体には、融合出来ないそれら二つが存在している状態です。
     これが長く続けば、彼女は本当に死んでしまう」

( ;・∀・)「そんな……」

川 ゚ -゚)「だから―――」



川 ゚ー゚)「私が来たんです」

川 ゚ー゚)「今度は私が融合の儀式を行う。
     そうすれば、彼女は生き返る事が出来る」

( *・∀・)「やっほほーい! 流石はクー様!
      一般人には出来ない事を平然とやってのける!」

川 ゚ -゚)「そこに痺れる憧れるぅ!……ですが、今言いましたよね?」

( ・∀・)「何がです?」


62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 02:49:04.26 ID:XVTDah/Z0

川 ゚ -゚)「このまま時間が経てば、彼女は本当に死んでしまうと」

( ;・∀・)「あぁぁそうだ! 時間が無い!」

川 ゚ -゚)「ええ、しかし一つ問題が」

( ;・∀・)「まだ何かあるんですか!?」

川 ゚ -゚)「彼女がいたのは、別府村という場所です。
     グループ峠の廃道を通って、速山に入らなければならない」

( ・∀・)「それがなんで問題なんですか?」

川 ゚ -゚)「あそこは幽霊が出る場所という事で有名なんですよ。
     いろんな雑誌で特集記事とかあったのに読んでないんですか?」

( ;・∀・)「巫女さんが幽霊を怖がってどうするんですか!」


63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 02:52:31.60 ID:XVTDah/Z0

川 ゚ -゚)「怖いですよ。神道に携わる者なら、必ず一度は耳にしますから。
     『あの場所にだけは近づくな』という忠告を」

クーの表情はいつも以上に堅く、真剣そのものだった。
それほどまでに、危ない場所だという事である。

( ・∀・)「俺は行きます」

川 ゚ -゚)「死ぬかもしれませんよ」

( ・∀・)「……俺はこの数日間、ずっと死んでいた」

(#・∀・)「貞子がいないなんて、死んだも同然なんですよ!」

川 ゚ -゚)

(#・∀・)

川 ゚ー゚)「わかりました」


64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 02:55:52.76 ID:XVTDah/Z0

川 ゚ -゚)「さっそく行きましょう。車で飛ばせば、明日の朝にはつきます」

( ;・∀・)「すいません。変な事に巻き込んでしまって」

川 ゚ -゚)「いいんです。こういう時の為の巫女ですから」

(  ∀ )「―――ありがとうございます」

川 ゚ -゚)「では早速……」




「「話は聞かせて貰った!!」」


川;゚ -゚)「だ、誰だ!?」

( ・∀・)「俺わかるー」


67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 02:59:37.98 ID:XVTDah/Z0

(  ω )「天知る地知る我が知る!」

( ・∀・)「あれがブーンで」

( A )「正義の心が知っている!」

( ・∀・)「あっちがドクオです。友達です」

川 ゚ -゚)「なるほど」


(#^ω^)「「コラ――――――!!」」('A`#)


(#^ω^)「お前友達の登場シーン潰して何が面白いんだお!」

(#'A`)「血も涙も無いぜ!」

( ;・∀・)「今おまえらに構ってる暇無いんだよ!」


68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 03:03:15.34 ID:XVTDah/Z0

二人は顔を見合わせて、ふふんと鼻を鳴らした。

( ^ω^)「モララー」

('A`)「俺たちも別府村に行くぜ」

( ;・∀・)「え、い、いや、お前らは関係……」

( ^ω^)「友達が困ってるのに見捨てておけるかお!」

('A`)b「安心しろ! 自宅警備員のバイトは有休使ってきたぜ!」

( ;・∀・)「死ぬかもしれないんだぞ!」

( ^ω^)「承知の事だお!」

('A`)「ニートは命もかけれない臆病者だとでも思ったのか?」

( ;∀;)「―――くぅぅ、おまえら」


71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 03:08:20.42 ID:XVTDah/Z0

( ^ω^)('A`)
  。
  0
  ○

(貞子が生き返る →  貞子に友達が出来る → その友達を紹介してもらう
  → 彼女が出来る → ウマー)


( *^ω^)「お前にだけ良いかっこさせないお!」

(*'A`)「俺たち友達だもんな! 友・達・だ・も・ん・な!」

( ;∀;)「ありがとう……ありがとう……」

川 ゚ -゚)「凄く……不純です」


かくして、巫女と大学生とピザとニートのパーティが出来上がった。


72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 03:11:29.04 ID:XVTDah/Z0

彼らは意気揚々と外に出て、クーの車に乗り、

川 ゚ -゚)「悪いな。これ二人用の車なんだ」

込めない。


(;'A`)「そんな!」

( ;^ω^)「助けてモラえもん!」

( ・∀・)「あ、トランク空いてる」

( ;゚ω゚)(;゚A゚)「モラえも――――――ん!!」


不安しかないパーティが、一人の女の為に出発した。
闇の者たちが待ち受けているとも知らずに。


74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 03:14:39.15 ID:XVTDah/Z0

ヨッ    ●
  ( 'A`)ノ
  ノヽ ノ
 < ● >

●  ハッ
ヽ('A` )
  ) /)
 < ● >

ヨッ    ω
  ( 'A`)ノ
  ノヽ ノ
 < ● >



75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 03:16:38.90 ID:XVTDah/Z0


 怖い―――


 誰か―――


 助けて―――


 お願い―――



 モラ―――



78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 03:20:23.38 ID:XVTDah/Z0


 ろ―――


 きろ―――



川#゚ -゚)「起きろ――!!」

( ;・∀・)「はいぃ!!」

川 ゚ -゚)「着きましたよ」

( ;・∀・)「あ……ここが」

川 ゚ -゚)「はい。グループ峠です」

助手席から辺りを見回すと、霧のかかった深い谷が、ガードレールの向こう側に見えた。
反対には山の中に続く道がある。
木々が生い茂り、とても車で入れるような大きさじゃなかった。

あれが、クーの言っていた廃道である。


80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 03:25:09.93 ID:XVTDah/Z0

川 ゚ -゚)「今は朝の八時です。
     早く中に入らないと、別府村に着くまでに日が暮れてしまいます」

( ;・∀・)「そんなに時間がかかるんですか」

川 ゚ -゚)「ええ。だから食料を詰めたリュックを持ってきました。
     トランクの中に置いてあります。とりあえず降りましょうか」

モララーたちは車から降り、車の後ろに回る。

( ・∀・)「あ」

川 ゚ -゚)「あ」

トランクの中には、汗で全身を濡らした男たちが入っていた。

( ゚ω゚)「おはよぅ……」

(゚A゚)「もう朝か……」

( ・∀・)「うわあ…………」


84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 03:47:05.18 ID:XVTDah/Z0
  _,、_
川 ゚ -゚)「リュックびしょびしょやん」

( ゚ω゚)「俺たちの心配もしてくれお……」

(゚A゚)「死にたくなってきた……」

( ・∀・)「―――よし、行こう」

既に瀕死の二人を連れて、モララーたちは廃道へと足を踏み入れた。




廃道は、何とも気味の悪い道だった。
木々から差し込む光は乏しく、真っ昼間だというのに薄暗い。

じめじめした空気と、体を撫でるような冷気が恐怖を煽る。


87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 03:53:02.12 ID:XVTDah/Z0

(;'A`)「何か、妙に涼しいな」

( ^ω^)「山の中だから、ほら、マイナスイオンによって……」

川 ゚ -゚)「いえ、この山が霊山だからです。
     そこら中に妖気が漂っているので、素人のあなた方でも感じられるのですよ」

( ;・∀・)「何だか、今にも何か出てきそうな感じですね」

歩きながら、クー以外の三人は忙しなく辺りを見回している。
貞子以外の幽霊を見た事の無い三人にとって、この山はとても恐ろしい場所だ。


パキ


(;'A`)「ひ!」

( ^ω^)「木が折れただけだお。びびってやんのwwwwwww」

(;'A`)「てめえ……」


89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 03:56:20.54 ID:XVTDah/Z0


ガサガサ


( ゚ω゚)「うお!」

( ・∀・)「おお、タヌキだ。初めて見た」

('A`)「びびってんじゃないスかブーンさんwwwwwww」

( ;^ω^)「ちょっと声出しちゃっただけだお!」

( ;・∀・)「おまえらなぁ……」

川 ゚ -゚)「!」


先頭を歩いていたクーが、突如立ち止まった。
怪訝そうな顔で、周りに視線を走らせている。


91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 03:59:54.17 ID:XVTDah/Z0

( ・∀・)「どうしたんですか?」

川 ゚ -゚)「うん……気のせいだと思うんですけど」

('∀`)「あっれーwwww巫女さんしっかりしてくださいよwwwww」

( ^ω^)「誰もいないっすよwwwwwwwww」

川 ゚ -゚)「今一瞬だけ、私たちが五人いるように感じました」

( ;・∀・)「本当ですか?」

(;゚A゚)「いやちょっとそういう言い方は……」

( ;゚ω゚)「怖いからやめてくださいお」


四人はしばらくの間立ち止まり、辺りに注意を払った。
しかし鳥の鳴き声が聞こえるだけで、目に見える範囲には動物すらいない。


93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 04:05:19.09 ID:XVTDah/Z0

(・∀・; )

(^ω^; )

( ;^ω^)「誰もいませんお。ちゃんと四人です」

(;'A`)「そうですよ。やだなー」

川 ゚ -゚)「そのようですね……」

( ´∀`)「しっかりして下さいモナー」

( ;・∀・)「そうですよクーさん」

川 ゚ -゚)「私とした事が……ん」



( f´∀`)f



( ゚∀゚)(゚A゚)( ゚ω゚)川;゚ -゚)「「「「出た――――――!!!!」」」」



97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 04:08:38.80 ID:XVTDah/Z0

生気の無い白い顔。青い唇。広がった瞳孔。
そして何より、人間の気配を感じさせないそれは、間違いなく幽霊だった。


( ´∀`)「この山に何の用モナー。人間は帰れモナー」

( ;・∀・)「クーさん! 早く除霊を!」

川;゚ -゚)「駄目です!」

( ;・∀・)「どうして!?」

川;゚ -゚)「強力な怨念を感じます。私の力では、太刀打ちできない」

( ;・∀・)「嘘ー!?」

( ゚ω゚) ← 気絶

(゚A゚) ← +失禁


100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 04:12:28.23 ID:XVTDah/Z0

( ´∀`)「さっさと……」

木々がざわめいている。
張り詰めた空気が、ぴりぴりと体に突き刺さる感覚を覚えた。


(#´∀`)「帰れモナぁぁぁぁ――――!!!」

( ;・∀・)「うあああ!!」

川;゚ -゚)「おお――モーレツ!!」


全身の毛が逆立つような生ぬるい突風が吹いた。
悪意をもった霊気の風に、意識を持っていかれそうになる。

川;゚ -゚)「大変です。美少女巫女大ピンチ。タキシード仮面は来ないんでしょうか」

( ;・∀・)「たぶん来ないんじゃないかなぁ!?」


102 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 04:15:13.15 ID:XVTDah/Z0

( ´∀`)「次は殺すモナ」

( ;・∀・)「頼む! ここを通してくれ!」

( ´∀`)「それは出来ないモナ。俺はこの速山の四天王の一人、モナー。
      リーダーから人間は通すなと言われてるモナ」

川 ゚ -゚)「厨展開になってきましたね。私こういうの大好きです。
     テンション上がってきた」

( ・∀・)「あんた意外と余裕あるな」

( ´∀`)「ふふふ」



「待ちな」

( ´∀`)「む」


103 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 04:18:18.68 ID:XVTDah/Z0

( ・∀・)「ドクオ!」

('A`)「こいつは俺に任せろ。お前らは先に行け」

川;゚ -゚)「何を言っているんですか。ズボンびっしょびしょですよ」

('A`)「それは言わんといて……」


ドクオは股間部分を濡らしながらも、戦うつもりらしい。
一人でモナーの前に歩み出る。


( ´∀`)「俺に勝てると思って……む、お前、まさか!?」

('A`)「ふ、そのまさかだ」

( ・∀・) ゚ -゚)「?」


106 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 04:21:34.00 ID:XVTDah/Z0

モララーたちには、彼らがどういう会話をしているのか理解出来ない。

('A`)「早く行け。時間が無いんだろう」

( ;・∀・)「本当に大丈夫なのかよ」

('A`)「大丈夫だ。俺の未来くらい大丈夫だ」

川 ゚ -゚)「じゃあ駄目だと思うんですけど」

(;'A`)「いいからさっさと行けって! そこの気絶したピザも連れてけよ!」

( ;・∀・)「……わかった」


モララーたちは、半信半疑だったが、ドクオに従う事にした。
今は迷っている時間すら惜しいのだ。


107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 04:26:32.34 ID:XVTDah/Z0

モララーたちは後ろ髪を引かれる思いで、ドクオを置いて走っていった。
対峙している二人は、モララーたちが見えなくなるまで無言で見つめ合っていた。


( ´∀`)「お前は―――」


( ´∀`)「童貞引きこもりニート。そうなんだな?」

('A`)「ご名答」


('∀`)「お前と同じさ」

( ´∀`)「……」



二人の間に異様な空気が立ちこめる。
駄目人間しかわからない特殊な妖気だ。


108 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 04:30:46.28 ID:XVTDah/Z0

( ´∀`)「俺は三十歳で死ぬまでずっと童貞だったモナ。
      死因は何だと思う?」

(;'A`)

(#´∀`)「―――自慰行為中の心臓発作だモナ!!」

(;゚A゚)「ぐは!」

ドクオは頭を抱えてうずくまる。
呼吸が荒く、今にも意識を失って倒れそうだ。

( ´∀`)「ほう、持ちこたえるとは凄いモナ」

(;'A`)「ふ……今度は俺の番だ。俺はな、小学生の頃よく学級会議にかけられたんだ」

( ´∀`)「イタズラでもしてたのか?」

(;'A`)「違う」


110 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 04:36:27.98 ID:XVTDah/Z0

(;'A`)「もっぱら議題は『ドクオ君が気持ち悪いので何とかして下さい』だ!!」



(*゚ー゚)『ドクオ君の机運びたくないでーす』

*(‘‘)*『ドクオ君が持った食器使いたくありませーん』

从 ゚∀从『何かドクオがきもい』

(,,゚Д゚)『ではドクオ君がどうしたら気持ち悪くならないか、みんなで話し合いましょう!』



( ;´∀`)「ぐぁぁ!! 誰が得するんだその学級会議はぁぁ!!」

(;A;)「俺はみんなの前に立たされて、いつも半べそで会議を見守っていた……」

( ;´∀`)「中々やるじゃないか。しかし俺はまだまだやれるモナ!」


命をかけた不幸自慢の火ぶたが切られた!


113 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 04:39:35.87 ID:XVTDah/Z0


.       _  
.   (⌒⌒⌒).)
    |    |:|.  (゚ - ゚ 川ト ……
──|    |:|‐─○──○──
    ̄ ̄ ̄~
 
                 _
          (⌒⌒⌒).)
           | (;;;;,,,.. |:|  ムギュ
          (つ___と)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

        _
   (⌒⌒⌒).)
    | ゚ - ゚ |:|   (゚ - ゚*川ト
──|    |:|‐─○──○──
    ̄ ̄ ̄~


114 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 04:44:13.36 ID:XVTDah/Z0

(・∀・; )「大丈夫かな、ドクオの奴」


速山の頂上で、モララーたちはリュックから取り出した食料を広げていた。


川 ゚ -゚)「わかりません。戦っている気配はするんですけど」

( ・∀・)「けど?」

川 ゚ -゚)「何か……言葉にするのもアホらしい戦いが繰り広げられている気がします」

( ・∀・)「何ですか、それ」

川 ゚ -゚)「さあ」

( ^ω^)「ところで、持ってきた食料が全部ソイジョイなのは何でだお」


116 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 04:49:39.87 ID:XVTDah/Z0

食事をすませると、彼らは山を下り始めた。
依然妙な気配を感じるも、幽霊が襲ってくる事は無かった。

( ・∀・)「あとどれくらいでしょうか」

川 ゚ -゚)「三時間、というところですかね」

( ;^ω^)「もう足が限界ですお」

川 ゚ -゚)「―――!」

川;゚ -゚)「モララーさん!」

( ;・∀・)「はい」

川;゚ -゚)「今感じました。貞子さんの霊気を」

( ;・∀・)「本当ですか!」

不明確な情報だった別府村に、途端に希望が沸く。
しかし現実はもっと切羽詰まっていた。


118 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 04:55:26.83 ID:XVTDah/Z0

川;゚ -゚)「はい。ですが凄く弱々しい、今にも消えそうな気配でした」

( ;・∀・)「く―――」

( ;・∀・)「急ぎましょう!」

川;゚ -゚)「ええ!」


彼らは歩く事をやめて、走り始めた。
しかし整備された道路とは違い、山道は険しく、彼らの行く手を阻む。

何度も転びそうになったが、それでも彼らは走った。
伸びた枝が体に当たり、ひっかき傷を作っても、走り続けた。

( ;・∀・)(急げ急げ急げ! 貞子!)

いつの間にか先頭はモララーになっていた。
霊気を辿る事が出来るクーとは違って、モララーは道がわからない。

それなのに、モララーは間違えずに進んでいた。
彼女を想う気持ちが起こした、小さな奇跡なのかもしれない。


121 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 04:58:30.92 ID:XVTDah/Z0

( ;・∀・)「ふう! ふう!」

川;゚ -゚)「はぁ……はぁ……」

( ;^ω^)「ぶひぃ……ひぃ……良いダイエットになるお」

いつの間にか、空は一面雲に覆われていた。
遠くの山には、分厚い雨雲も見える。

( ;^ω^)「ひぃ、ひぃ」

「そんな事でダイエットになると思うの?」

( ;^ω^)「ならないのかお?」

「甘いわね。だからあなたはデブなのよ」

( ;^ω^)「うるさいお!」


125 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 05:00:48.35 ID:XVTDah/Z0

( ;・∀・)「ブーン」

( ;^ω^)「何だお! モララーまでデブって言う気かお!」

( ;・∀・)「いや、お前、誰と話してるんだ?」

( ^ω^)

(^ω^ )



ξf゚听)ξf



( ;・∀・)「げ!」

( ;^ω^)「まさか」

川 ゚ -゚)「出ました。悪霊です」


128 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 05:04:05.44 ID:XVTDah/Z0

ξ゚听)ξ「私はツン。速山を守る四天王の一人」

( *^ω^)「可愛いおにゃのこキター!
      これも生き霊?」

川 ゚ -゚)「安心してください。しっかり死んでます」

( ^ω^)「ですよねー……」

ツンは確かに美しい幽霊だった。
ややきつい目つきをしているが、整った顔立ちをしていて、スタイルもそれなりに良い。

ξ゚听)ξ「私は生前、ずっと体重を気にして生きてきた」

(・∀・ )「何か語り出した。聞いても無いのに語り出したよ」

川 ゚ -゚)「RPGのボスはみんなそうです」


130以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 05:10:12.82 ID:XVTDah/Z0

ξ゚听)ξ「ダイエットの為にデューク更家のウォーキングを90時間ぶっ続けでやったわ。
      そしたら過労で倒れて死んだの」

川 ゚ -゚)「なんて面白い死に方―――!!」

ξ゚听)ξ「私の怨念、簡単には消えなくってよ!」

( ;・∀・)「次から次へと邪魔しやがってくそ……」

( ^ω^)


( ^ω^)「え、ていうか、太ってなくね?」

ξ゚听)ξ「え?」

( ^ω^)「スタイル良いし、ダイエットの必要とか無いお」

ξ*゚听)ξ「ほ、本当?」

( ・∀・)

川 ゚ -゚)


132 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 05:15:06.23 ID:XVTDah/Z0

( ^ω^)「普通に可愛いお」

ξ*゚听)ξ「そ、そんな、事言われても、信じないわよ!」

( ^ω^)「本当だお。ブーンが今まで見てきた中で一番可愛いお」

ξ*゚听)ξ「やだそんな……」

( ^ω^)「お世辞じゃないお」

ξ*゚听)ξ「ふふふ」



( ・∀・)「クーさん。放っといて行きませんか?」

川 ゚ -゚)「そうしましょう。まともに戦っても負けるだけですし」

時間が無いので、彼らをおいて先に行く事にした。
見ているだけでムカついてくるからという理由もあったが。


134 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 05:15:44.40 ID:XVTDah/Z0

 /⊃⌒ヽ
 |( `ω´)アチョー!
 ヽ  ⊂)
  (,,つ .ノ 
   し'


137 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 05:19:53.64 ID:XVTDah/Z0

( ;・∀・)「どっちに行けばいいんですか」

川 ゚ -゚)「うーん……」

モララーたちは崖の前で立ち止まっていた。
道がほぼ垂直の壁で阻まれていたのだ。

川 ゚ -゚)「別府村は、この先のはずなんです。
     貞子さんの気配も感じます」

( ・∀・)「じゃあもしかして」

川 ゚ -゚)「この崖を登る必要がありそうですね」

ちょっとしたビルくらいの高さがありそうな崖を見上げる。
もし途中で落ちれば、ひとたまりも無い。


139 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 05:23:43.01 ID:XVTDah/Z0

( ・∀・)「他の道を探している時間は無いでしょう」

川 ゚ -゚)「……はい。残念ながら」

遠くに見えていた雨雲が、今では空全体を覆っている。
もう少しで、雨が降りそうだった。

( ・∀・)「この崖を登りましょう」

川;゚ -゚)「し、しかし」

( ・∀・)「貴方は俺が運びます。背中に乗ってください」

川;゚ -゚)「私を背負ってこの崖を登る気ですか!?」

( ・∀・)「それしか方法が無いんですから、仕方ありません」

川;゚ -゚)「落ちたら、本当に死にますよ」

( ・∀・)「貴方だけは守ります」

川;゚ -゚)「……」


140 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 05:25:49.35 ID:XVTDah/Z0

川;゚ -゚)

( ・∀・)

川;゚ -゚)「頑固ですね」

( ・∀・)「頑固です」

モララーの目には決意がみなぎっていた。
全ては貞子の為だ。

川 ゚ -゚)「わかりました。ただ一つ良いですか」

( ・∀・)「ありがとうございます! 何でしょう」

川 ゚ -゚)「この崖の先―――つまり別府村に、貞子さん以外の気配を感じます」

( ・∀・)「もう一つの気配?」


143 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 05:31:10.29 ID:XVTDah/Z0

川 ゚ -゚)「ええ。悪意を持った霊の気配です。
     今まではずっと、別府村にいる貞子さんの気配を探っていた。
     だから霊が接近しても気がつかなかった」

川 ゚ -゚)「ですがここまで近づいてわかりました。
     貞子さんの気配に隠れるように、小さな霊気を感じるんです」

( ;・∀・)「小さいという事は、弱いんじゃ……」

川 ゚ -゚)「いえ、強い霊ほど霊力を隠すものです。
     今まで出てきた霊よりも、さらに強力な悪霊がいるのでしょう。
     おそらく四天王の残り。彼らのリーダー格の幽霊が」

( ;・∀・)「……」

一瞬だけ、空が眩しく光る。
かなり遅れて、落雷の音が辺りに轟いた。

( ;・∀・)「ごめんなさい。俺は、行く。貞子に会わないといけないから」


145 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 05:39:49.99 ID:XVTDah/Z0

( ;・∀・)「貴方の命は死んでも守ります。
      でも貞子も生き返らせたい。彼女も助けたい」

( ;・∀・)「俺の全てを賭ける価値が、この村にあるんです!」

川 ゚ -゚)

モララーの顔が、二度目の落雷によって白く照らされた。
人間の進入に、山が怒っているようだ。

それでもモララーの決意は全く揺るがない。
全てを賭けるという彼の気持ちに偽りは無かった。

川 ゚ -゚)「わかりました。ですが、命を賭けるというのはやめて下さい。
     貴方は生き抜くべきだ。貞子さんと共に」

( ・∀・)「クーさん……」

そっと頷いてから、モララーは後ろを向いてしゃがみ込んだ。
背中にクーを乗せると、行く手を阻む壁を睨みつけ、力強く立ち上がった。


147 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 05:45:47.84 ID:XVTDah/Z0

崖はごつごつした岩が無数に飛び出しているので、掴む場所には困らない。
しかしロッククライミングの経験が無いモララーにとって、この高さは危険きわまりない。

唯一の救いは、クーが生前のツンよりもずっと軽いという事だ。


( ;・∀・)「―――!」


数メートルまでは、スムーズに上る事が出来た。
問題はそこからだった。


まず腕から疲弊してきて、掴む力が弱まってくる。
同時に足の踏ん張りも効かなくなってくるので、体の安定が徐々に無くなってきた。

少しでも足を引っかけるところを間違えれば、真っ逆さまに落ちてしまう。
その恐怖がどの岩を掴むか躊躇わせ、時間の消費が体力の消費に繋がる。


過酷な試練だった。
自分だけでなく、二人の女の命も関わってくる事を考えると、精神的な疲労は甚大なものでる。


148 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 05:49:41.42 ID:XVTDah/Z0

( ;・∀・)「ぐ―――!」

つかみ所が悪かったか、指の爪が半分剥がれてしまった。
慌てて別の岩を掴むが、力はさらに弱まった。

既に十メートル以上上っている。
今下の堅い地面に落ちれば―――ただではすまない。


川;゚ -゚)「……」

クーはとても歯がゆかった。
彼の背中にしがみつく事しか出来ない自分が情けなかった。

声援だけなら送る事も出来るが、集中力を削いでしまうだけなのでそれも出来ない。
今はただ、無事に上り切る事を祈るだけしか出来なかった。


150 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 05:54:49.60 ID:7qb4hfyV0

( ∀ )「ハァ――ハァ――」

( ;・∀・)(まだいけるさ……俺はまだいける……)

指先から流れ出た血が、腕を伝って顔に落ちる。
力を込めれば、それだけ血も溢れた。

一つ岩を掴む度に、指に激痛が走った。
もはや体力は底をついていた。


彼を動かしているのは、ただただ心の力だった。



151 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 05:57:53.83 ID:7qb4hfyV0
  ∧_∧
 (    )
 (    )
 (__)_)


153 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 06:00:40.60 ID:7qb4hfyV0


( ; ∀ )「はあ……はあ……っ!!」


モララーは大の字で地面に転がっている。
乳酸が体の中で暴れ狂っているようだ。

川 ゚ -゚)「モララーさん」

( ;・∀・)「わかってます。時間は無い」

立ち上がり、前を見据える。
そこに広がっているのは、かつて人が住んでいた場所の残りクズ。
廃墟となった、別府村だった。


154 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 06:06:51.12 ID:7qb4hfyV0

川 ゚ -゚)「気配は感じますが、正確な場所はわかりません。
     記述によると、貞子さんは村の中にある聖水の泉にいるはずです。
     手分けして泉を探しましょう」

( ;・∀・)「はい」

二人は別れて村を探索する。
しかし廃墟の別府村はとても狭く、探し回る程の大きさは無かった。

川;゚ -゚)「何か見つかりましたか?」

( ;・∀・)「いいえ。もしかすると村の外なんじゃないですか?」

川;゚ -゚)「気配はこの村から感じます。泉は必ずこの村のどこかにあるはずなんです」

( ;・∀・)「ほとんどの家は腐ってぼろぼろです。
      完全に無くなった家も含めたら、たぶん村はもっと大きかったんでしょう」

川;゚ -゚)「だとしても、気配は確かにこの中に感じるんです!」


157 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 06:10:22.53 ID:7qb4hfyV0

( ;・∀・)「でも……」

周りを見渡したところで、目につくのは半壊した家屋だ。
完全に残っているのは、村の中心にある井戸だけである。

川;゚ -゚)「もう一度手分けして探しましょう」

( ;・∀・)「はい」

時間はもう無かった。
そんな時、まるでタイミングを計ったかのように、奴がやってきた。


「オーッホッホッホッホッホ!」


( ;・∀・)「何だ……まさか!」

川;゚ -゚)「とうとう来た……」


158 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 06:14:39.95 ID:7qb4hfyV0

別府村に巣くう、悪霊である。


川;゚ -゚)「私が戦います。モララーさんは泉を」

( ;・∀・)「融合の儀式はクーさんしか出来ないんでしょう!
      ここは俺が足止めします!」

「人間ごときが私にたてつこうなんて百億光年早いわ!
 四天王のリーダーの力見せてあげるわ!」

川;゚ -゚)「あの強力な悪霊二人を束ねる者ですよ!
     下手したら一撃で、魂を喰われる!」

( ;・∀・)「だからって貴方がどうこう出来る相手でも……百億光年?」

川 ゚ -゚)「……光年は距離ですね」

「嘘、マジで?」


161 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 06:17:58.27 ID:7qb4hfyV0

('、`*川「年ついてるからてっきり時間の単位かと思ってたわー。
     超恥ずかしい。他の二人には黙っておいてね」

( ・∀・)「……」

川 ゚ -゚)「……」

( ・∀・)「強いですか。この悪霊」

川 ゚ -゚)「ほとんど霊力を感じません。きっと隠しているんでしょう。きっと」

('、`*川「ふふふ。パンピーが霊力を計ろうなんておこがましい!
     私は冥界からやってきた一流の悪霊なのよ!」

( ・∀・)「このうさんくささ―――まさかお前」



( ・∀・)「ペニサスか!」

('、`*川


165 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 06:24:59.08 ID:27YxxmGH0

('、`;川「ちちち、違う! 私は冥界の帝王ルシフェル! この速山四天王の一人よ!」

(・∀・ )「ルシフェルって聞いた事あるんですけど何でしたっけ」

川 ゚ -゚)「一番偉い悪魔です。こんな山にいる訳無いんですけど」

('、`;川「あーあールシフェルはルシフェルでも、スペル全然違うから!」

( ・∀・)「やっちゃって下さい」

川 ゚ -゚)「てい」

('、`;川「グェ――――! お前パンピーじゃないじゃん! 何やっちゃってんの!
     何それ、お札? ちょっとありえなーい! 何本格的に除霊とかしちゃってんのマジ勘弁ー!」

( ・∀・)「ここに来てなんなんだこいつは……そしてもう一人の四天王は何処だよ」

('、`*川「実はまだ三人しかメンバーいないのよね」

川 ゚ -゚)「何ですかこのうさんくさい帝王は……」

( ・∀・)「貞子の先輩らしいですよ……どうでもいいんですけど」


167 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 06:30:29.99 ID:27YxxmGH0

('、`*川「あら、貞子知ってんの?
     あの子をメンバーに入れたいんだけど、全然起きないのよね」

( ;・∀・)「起きない? 貞子を見たのか!?」

('、`*川「この村にいるよー。ほら、あの井戸の中」


川;゚ -゚)「「井戸!!」」(・∀・; )


('、`;川「え、え、何? 井戸そんなに珍しい?」

川;゚ -゚)「村に泉を作るには時間がかかった」

( ;・∀・)「だから元からあるものを泉にした……そういう事ですか!」

川 ゚ -゚)「行きましょう!」

( ・∀・)「はい!」

('、`;川「えぇちょっと待って超置いてけぼりなんですけどー」


169 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 06:36:45.96 ID:27YxxmGH0

モララーたちは井戸に駆け寄り、中を覗いた。
しかし暗闇が視界を遮り、底が見えない。

川;゚ -゚)「この桶、まだ使えそうですね。私が中に入ります。
     合図をしたら、そこのうさんくさい奴と一緒に縄を引いて下さい」

( ;・∀・)「いや、俺が入りますけど」

川 ゚ -゚)「駄目です。私では貴方の体重を上げられない」

( ;・∀・)「わ、わかりました……」

クーは桶に足を入れ、縄に捕まる。
繋がっている縄は、モララーがしっかりと握った。

そのままクーは、モララーの支えにより、ゆっくりと井戸の中に入っていった。


173 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 06:43:27.44 ID:27YxxmGH0

( ;・∀・)「大丈夫ですか!」

「ああ! そのままずっと下げてくれ!」

( ;・∀・)「わかりました!」

(・∀・; )「しっかり縄を持てよルシフェル!」

('、`;川「ひぃ……ひぃ……なんで私がこんなこと……」

井戸は深く、途中で千切れていた縄の余裕が無くなってきた。
このままいくと、途中で止まってしまう。
しかしもう限界まで下げたというところで、ふと重みが無くなった。

ついに下まで下がったのだ。

( ;・∀・)「クーさん!」

「……」

( ;・∀・)「貞子は……!」


175 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 06:48:14.71 ID:27YxxmGH0

「……貞子さんは、見つかった! 縄を上げてくれ……!」

( ・∀・)「は、はい!!」

縄にかけた手にさらに力がこもる。
下げた時よりも貞子の体重分だけ重みが増していた。

それでもモララーにとって、この重みは何でもなかった。
この為に、命を賭けてここまで来たのだ。


( *・∀・)「やった……やった……!」


全身を使って縄を引き上げていく。
下げた時の数倍の早さで、クーは戻ってきた。

その腕の中に、眠り続ける貞子を抱いて。


( ・∀・)「貞子!」


176 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 06:52:42.07 ID:+TUiJgoI0


川д川


( *・∀・)「本当に……本当に生きてたんだ……!」

川;゚ -゚)「……」

( ・∀・)「早く融合の儀式を!」

川;゚ -゚)「え、ええ」

クーはそっと貞子の体を地面に下ろした。
リュックから札を取り出し、貞子の濡れた体に貼り付けていく。

川 ゚ -゚)「儀式……という程ではありません。
     生者がかけた呪いを外すだけですから……いきます」

横たえた体に両手を添え、クーは目を瞑った。


177 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 06:56:44.36 ID:+TUiJgoI0

川 ゚ -゚)「―――。―――――――」

呪文のような言葉を小さく呟き出す。
それと同時に、彼女の両手から、淡い緑色の光が溢れてきた。

( *・∀・)「貞子……」

('、`;川「……」

光は貞子を包み、体の表面から紫色の煙が立ち上ってくる。
呪いの力が体から抜け出ているのだ。

しばらくその状態が続いたが、やがて煙の量が減ってきた。
最後に一塊吹き出すと、もう煙は出てこなくなった。

川;゚ -゚)「―――終わりです。呪いは解けました」

( *・∀・)「やった……やったぞー!!」


178 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 06:59:11.45 ID:+TUiJgoI0

( *・∀・)「貞子!」

川д川

( ・∀・)「……貞子?」

いくら呼びかけても、貞子が目を覚ます事は無い。
肩を揺さぶっても、冷たくなった体に、何も反応は無かった。

川;゚ -゚)

(・∀・ )「クーさん、貞子は……」

川;゚ -゚)

(・∀・; )

( ;・∀・)「嘘だろ……そんな……」

川;゚ -゚)



川;゚ -゚)「間に合い、ませんでした」


182 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 07:03:42.39 ID:+TUiJgoI0

( ・∀・)「あ……」


( ;∀;)「あ……ああぁぁぁぁ……」


( ;∀;)「さだ……こぉぉ……」



握りしめた拳に、涙の滴が落ちる。
すると彼に同調したように、雨が降り出してきた。


( ;∀;)「さだ……こ……どうして……」


降りしきる雨に、涙は流されていく。
彼と同じように、空も泣いているようだった。


185 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 07:08:29.61 ID:+TUiJgoI0

川;゚ -゚)「呪いは解けました。融合も、ちゃんと……。
     でも彼女の体から、霊力がほとんど抜けきっていた。
     人として生きられるだけの霊力すら無い肉体は、もう目覚める事はありません」

( ;∀;)「さだこ……目を開けてくれ……」

川;゚ -゚)「壊れた器で、魂と命はもたない。彼女はもうすぐ、天に還ります」

( ;∀;)「くそ……くそぉ……」


(;∀; )「何とかならないんですか! クーさん!?」

川;゚ -゚)「すいません―――私では力不足です」

(;∀; )「くっ……うぁぁああ……くそ!!」


186 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 07:10:53.65 ID:+TUiJgoI0

( ;∀;)「お前のせいだぞ!」

('、`;川「え……」

( ;∀;)「お前がフザけた事やって邪魔したから!!
      だから貞子は死んだんだ!! どうしてくれるんだよぉぉ!!」

('、`;川「あの……私は……」

川;゚ -゚)「モララーさん。貞子の霊力はもっと前に尽きていた。
     この幽霊のせいではありません」

( ;∀;)

川;゚ -゚)「どうか、貞子さんのご冥福を祈って」

( ;∀;)「ふ……ざけるなぁぁ!!!」


189 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 07:17:23.68 ID:+TUiJgoI0

( ;∀;)「俺は!! 何の為に……ここまで!!
      ここまで来たんだよ!!!」

川;゚ -゚)「貞子さんを生き返らせる為―――です。
     しかし全く無駄だった訳ではありません。
     こうする事により、貞子さんの魂はちゃんとした場所へ送られます。
     だから無駄じゃないんです。貞子さんはきっと、貴方に感謝しています」

( ;∀;)「………………」



激しい雨が体を打つ。
貞子の白い肌に、容赦なく降り注ぐ。

モララーは堪らず貞子を抱きしめた。
彼の止まらない嗚咽は、雨音よりも大きく、悲しく、別府村に響く。


('、`;川(………………)



190 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 07:18:00.22 ID:+TUiJgoI0

('A`)
ノヽノヽ===333
   \\
      ミ


194 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 07:21:24.38 ID:+TUiJgoI0

木陰で雨宿りをしている、人間と幽霊の姿があった。

( ´∀`)「球技大会は毎年ズル休みしてたモナ」

('A`)「ぶっちゃけ基本だよな。あとバレンタインな」

( ´∀`)「あの日は苦痛だったモナ……」

相当な時間話し込んでいた為、すっかり打ち解けている。
もはや敵同士だった事など覚えてすらいない。

( ´∀`)「さて、そろそろいくか」

('A`)「帰るのか?」

( ´∀`)「違うモナ。成仏するんだモナ」

(;'A`)「マジかよ」


197 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 07:25:07.74 ID:+TUiJgoI0

('A`)「未練があるからこの世にいるんじゃないのか?」

( ´∀`)「確かにあったモナ。けど―――」


( ´∀`)「もう一度、来世で頑張ってみるモナ」

('A`)「……」


数時間前の彼とは打って変わって明るい表情だった。
ドクオと話していたのはただの不幸自慢だったのだが、それでも彼の中で、何かが変わったようだ。


('∀`)「そうだな、それがいい」

( ´∀`)「お前も頑張れモナ。間違ってもアレの最中に心臓麻痺になるなよ」

('A`)「ああ。それだけは勘弁したい」


200 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 07:31:33.26 ID:+TUiJgoI0

( ´∀`)「じゃあな童貞」

('A`)「あばよ童貞」

( ´∀`)「―――!」


今まさに、成仏しかけたそのときだった。
モナーは突然立ち上がり、あさっての方向を見上げて険しい目つきになった。


('A`)「どうした。気が変わったのか?」

( ´∀`)「……ああ。ちょっと用事が出来たモナ。
      成仏するのはその後にするモナ」

('A`)「そうか……」

( ´∀`)「それじゃ」

モナーはまるで空気に溶けるようにして消えていった。

一人になったドクオは、モララーの事を思い出していた。
一緒についてきたのは、最初こそは不純な動機だった。
しかし彼の気持ちを考えると、そんな事を考えられなくなってきていた。

彼は生まれて初めて、他人の恋が成功する事を、心の底から祈った。


202 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 07:33:09.99 ID:+TUiJgoI0

  n /⌒ヽ
 (ヨ(^ω^ )
  Y    つ


205 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 07:37:59.93 ID:+TUiJgoI0

ブーンとツンは、大きな岩の亀裂の中で、寄り添うようにして雨を凌いでいた。
まるで恋人たちがベンチで肩を寄せ合っているようだ。

ξ゚听)ξ「なんでダイエットとかしちゃったんだろ」

( ^ω^)「……さあ」

ξ゚听)ξ「それもデューク更家のウォーキングなんか」

( ^ω^)「何でだろね」

ξ゚听)ξ「……」

( ^ω^)「……」

ツンのため息は、雨音にかき消されて音もなく消えていく。

ξ゚听)ξ「やり直したいわ」


207 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 07:40:43.86 ID:+TUiJgoI0

ξ゚听)ξ「もう一度、最初からやり直したい」

( ^ω^)「出来るのかお?」

ξ゚听)ξ「もう幽霊だから無理―――」

ξ*゚听)ξ「いえ、出来るわ!」

( ;^ω^)「うぉ、びっくりした」

ξ*゚听)ξ「来世でやり直せば良いのよ!
       このまま幽霊で居続けるなんてもったいないじゃん!
       ほら、私って美少女だし?」

( ^ω^)「そだね」

ξ*゚听)ξ「あーもうなんで早く気がつかなかったんだろ!」

( ^ω^)「おっおっ」


210 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 07:44:32.53 ID:+TUiJgoI0

ξ゚听)ξ「という訳で私成仏します」

( ^ω^)「唐突だな……」

ξ゚听)ξ「短い付き合いだったけど、アンタには感謝してるわ。
      このまま四天王なんてよくわからない仕事してるより、
      成仏した方が望みあるって気がつかせてくれたんだもん」

( ^ω^)「まず四天王ってところに疑問を持たなかったのかお?」

ξ゚听)ξ「だって冥界の帝王様に誘われたら断れなくない?」

( ;^ω^)「何それ……この山そんなのがいるんだ」

ξ゚听)ξ「私もびっくりしちゃったわよ。だから―――」

ξ゚听)ξ「……」

( ^ω^)「?」


211 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 07:47:17.64 ID:+TUiJgoI0

ツンは立ち上がり、一人で岩の影から出て行った。
怪訝そうな顔でブーンが後を追う。

( ;^ω^)「どうしたんだお」

ξ゚听)ξ「最後の仕事みたい。私行かなきゃ」

( ^ω^)「そうかお……」

ξ゚听)ξ「ブーン。私が成仏したらそのピザ直しなさいよ」

( ;^ω^)「く……だんだん調子に乗ってきたな」

ξ゚听)ξ「……じゃあね」

( ^ω^)「……」



( ^ω^)「さようなら」


214 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 07:49:22.11 ID:+TUiJgoI0
   __
 /   \
(____ )
 |´∀`|
 |   |
 |   |
 |   |
 |   |
  \  ノ

 ↑モナーの前世


216 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 07:53:02.29 ID:+TUiJgoI0


( ;∀;)「……」


モララーは、もう泣き果てて声も出ない様だった。
彼の腕の中で、静かに眠る貞子は、彼の様子も知らずおだやかな顔をしていた。


川 ゚ -゚)「……」

('、`*川「あのう……」

川 ゚ -゚)「まだいたんですか……」

('、`*川「霊力が足りれば、貞子は助かるんですよね?」

川 ゚ -゚)「ええ。ですが他人の体に分けるとなると、相当量の霊力がいります。
     私と貴方ではとても足りない」

('、`*川「じゃあ……」


218 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 07:59:18.59 ID:+TUiJgoI0


( ´∀`)「お呼びでしょうか」

ξ゚听)ξ「ルシフェル様」


('、`*川「この二人もいるとしたら、霊力は足りますか?」

川;゚ -゚)「!!」

川;゚ -゚)「足りる、かもしれません!」

一筋の光明が差した。
賭けるとすれば、もはやそれしかなかった。

川;゚ -゚)「ですがそうなると、全ての霊力を使わないとおそらく……」

( ´∀`)「事情はわからないけど、どうせ成仏する身だモナ。全部使ってやるモナ」

ξ゚听)ξ「自分も同じく」

川;゚ -゚)「それなら……いける!」


221 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 08:03:12.44 ID:+TUiJgoI0

( ;・∀・)「……」

( ;・∀・)「良いんですか……本当に」

( ´∀`)「どくんだモナ」


モナーが貞子に手を当てる。
淡い小さな光が、彼の手のひらに灯った。


( ´∀`)「……」

( ´∀`)「お前の彼女モナ?」

( ;・∀・)「あ、えっと……」

光が強くなるにつれて、モナーの体が、徐々に薄くなってきた。

...;;;;;;;;∀`)「大事にしてやるんだモナ―――」

その言葉を最後に、モナーは光の粒となって、消えていった。


228 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 08:08:43.48 ID:+TUiJgoI0

ξ゚听)ξ「次は私ね」


モナーと同じように、貞子の体に手を当てる。
その手から発する霊気は、悪霊とは思えない程、柔らかい光を放った。


ξ゚听)ξ「はー。いいわねー恋人持ちって」

( ;・∀・)「すいません。俺なんかの為に」

..;;゚听)ξ「別にあんたの為じゃないけどね」

...;;;;;;;;゚)ξ「ま、せいぜい幸せになりなさい―――」


光に溶けていく彼女は、まるで女神のようだった。
「ブーンによろしくね」消える直前、彼女はそう言い残した。


230 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 08:13:12.45 ID:+TUiJgoI0

川;゚ -゚)「では少ないですが、私の霊力を与えます」

('、`*川「ちょい待ち。私がまだよ」

川;゚ -゚)「言っちゃ悪いですけど、貴方私よりずっと霊力がありませんよ」

('、`*川「ずばっと言うわね−。あんたはもんたか。
      大体あんたは生きてる人間なんだから、全部の霊力は使えないでしょ?」

川;゚ -゚)「それは貴方も同じでしょう」

('、`*川「私もあいつらと同じで、成仏するつもりだから大丈夫よ」


クーの制止も聞かず、ペニサスは貞子に触れる。


( ;・∀・)「そうしてくれるのは嬉しいんですけど……。
      この世に残した未練とか、あるんじゃないんですか」

('、`*川「あったわよ」


234 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 08:18:46.71 ID:+TUiJgoI0

彼女が発する光は、モナーやツンに比べると、ずっと小さいものだった。
しかし全ての霊力をつぎ込んでいる分だけあって、その光は力強い。

('、`*川「私ね、可愛いー後輩が欲しかったのよ」

( ・∀・)「後輩……」

('、`*川「自分で言うのもなんだけど、私って人の上に立つタイプじゃないじゃん?
     でも学級委員長とか、部活の部長とか、めんどくさい事はよく押しつけられてたの」

川 ゚ -゚)「……」

.;;、`*川「後輩は言うこと聞かないくせに、文句ばっかし……。
     だから幽霊になったら、何でも言うこと聞くパシリが欲しいなーと」

( ;・∀・)「ひどっ」

..;;;;;;`*川「……本当は、友達が欲しかっただけかもしれないけどね。ねえ、モララー」

( ・∀・)



「この子を幸せにしてあげて―――」



238 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 08:22:53.95 ID:+TUiJgoI0

( ・∀・)

( ・∀・)「―――はい、必ず」

川 ゚ -゚)「……では、これで最後です」


クーは出せる分だけの霊力を、貞子の体にありったけ注ぎ込んだ。
体がふらつき、モララーに支えられるまで、彼女は霊力を使い切った。

これで駄目なら、全てが終わる。


川;゚ -゚)

( ;・∀・)

川д川



( ・∀・)



243 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 08:25:46.91 ID:+TUiJgoI0









川д川「モララー……さん?」






( ・∀・)「貞子……」








248 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 08:30:13.66 ID:+TUiJgoI0

( ・∀・)「さ……」

( ;∀;)「あ……」

川;д川「あ、あれ……?」

川д;川「私たちかんらんしゃに乗ってたんじゃ……」

( ;∀;)「……」

川;゚ー゚)「……」

川;д川「あの……なんで泣いているんですか……? それと……」

川*д川「く、苦しいです……」

( ;∀;)「ごめん。でもしばらくこうしてたいから……」

川*д川「あ、あの、嫌じゃ、ないんですけど……」



(゚ー゚;川))) (素直クーはクールに去るぜ……)


253 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 08:35:32.56 ID:+TUiJgoI0


「貞子……」

「はい……」

「地球も観覧車なんだよ。ずっと回ってるから……」

「言われてみれば……」


彼らの初めの出会いは、貞子の呪いだった。
その呪いは、巫女であるクーが解いた。


「だからあの時の続きを……」

「と、とりあえず鼻水を……鼻水を拭いて下さい……!」


しかしモララーには、もう一つの呪いがかかっていた。
その効力はすさまじく、数百年の時を超えて、彼らを結びつけた。



258 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 08:39:53.75 ID:+TUiJgoI0


「はい、チーンして」

「んぐ……」

「全くもう……子供じゃないんだから……」


巫女であるクーでさえ、解けないその呪いは、


「貞子……」

「はい……」



( *・∀・)「―――ただいま」

川*д川「―――おかえりなさい」



これから先、一生解ける事は無いだろう。



259 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/27(水) 08:40:39.22 ID:+TUiJgoI0

        /^ヽ
        { i  }
   ,-‐'゛ ゙̄"'ヽ  ノ⌒゙'' 、,
   `、.._  ヽ r'⌒ヽー,  ノ'
     ゙'.,.ィ´ト、*,イ⌒`',、
      / /  }  ``  }
      |_,.イ´i`ー,--‐'′
       /.ヽ_,i、ノ
       / /
      / /
  |   / /
  ||  / /   /}
  | .| / /   / /__
 | |/ / / ̄ ̄,,,,-‐'
             ̄

 隣の貞子さんのようです  ―完―



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