9 :◆3m0SptlYn6:2007/10/10(水) 23:13:39.79 ID:9SNddaIP0





( A )「ブーン…フライトの準備だ」

(;^ω^)「えっ?でも…」

(゚A゚)「ゴチャゴチャうるせぇんだよ!
    さっさと準備するぞ!」

(;^ω^)「わ、分かったお」


ブーンを煽るように工房へと追いやる。

焦ったようにブーンは走っていった。


( A )「…クク…」



10 :◆3m0SptlYn6:2007/10/10(水) 23:14:50.30 ID:9SNddaIP0

そう……そうだ

忘れちゃならない。

俺がダイバーでいる理由。





ある男を



殺す





( ^ω^)のMemories


第33話



12 :◆3m0SptlYn6:2007/10/10(水) 23:16:45.77 ID:9SNddaIP0
年始

ダイバー達は束の間の急速を得、心身ともに休みを取る時期。
だがそんな中、慌しく作業を進めるチームがあった。



ξ゚听)ξ「ねぇ?」


('A`) カチャカチャ

( ^ω^) カチャカチャ


ξ゚听)ξ「ねぇねぇ?」


('A`) カチャカチャ

(;^ω^) カチャカチャ


ξ#゚听)ξ「おい屑共!返事もできねーのか!」


Σ(;^ω^) ビクゥ


堪忍袋の緒が切れたか、ヒステリーを起こすマザー。

14 :◆3m0SptlYn6:2007/10/10(水) 23:18:03.43 ID:9SNddaIP0

('A`)「……だまれ」


ξ;゚听)ξ「……」

(;^ω^)「……」


いつもオドオドしていて、気弱そうなドクから出た台詞に、
思わずツンもたじろいでしまう。


ξ;゚听)ξ(ねぇねぇ…どうしたのよ?
       あんなにピリピリしてるドクなんて始めて見たわ)

(;^ω^)(うー…色々あったんだお…。
       今はそっとしてあげて欲しいお)

ξ;゚听)ξ(色々…ねぇ・・・。それでフライトに出るの?)

(;^ω^)(恐らく、β星雲に行くことになると思うお)

ξ;゚听)ξ(ちょ…βって超が付く危険地帯よ?)

(;^ω^)(それでも…行かなきゃならない理由があるんだお)


15 :◆3m0SptlYn6:2007/10/10(水) 23:19:11.53 ID:9SNddaIP0

ブーンにも分かっている。
ドクの気持ち、今の心情。


心の中では「復讐」なんて理由で飛んで欲しくない。
もっと前向きな理由で飛んで欲しい。

そう思っていた。


だが、大切な者を失った悲しみと、
その原因を作り出した存在に対する怨みは消せるものではない。


( ^ω^)(ドクには……幸せになって欲しいお)


純粋にそう思っていた。



16 :◆3m0SptlYn6:2007/10/10(水) 23:20:40.13 ID:9SNddaIP0





ビーッ



普段、あまり鳴ることの無いブザーが鳴る。


( ^ω^)「お…どなたさんかお?」

('A`)「ブーン、出てくれ」 カチャカチャ

( ^ω^)「了解したお」


作業手袋をしたまま、トコトコと玄関まで歩いていく。


( ^ω^)「おっ、どなたさんですかお?」



17 :◆3m0SptlYn6:2007/10/10(水) 23:22:47.15 ID:9SNddaIP0

ミ,,゚Д゚彡「…やぁ内藤、ドクはいるかな?」

(; ^ω^)「な…い…とう?」


見たことがある様な、話した事がある様な気がしたが、
ブーンには一向に思い出せない。

だが本能からか、なんとなくドクに合わせてはいけないと感じた。


(; ^ω^)「ド、ドクは留守ですお!」

ミ,,゚Д゚彡 「む?じゃぁ奥から聞こえてくる作業の音は誰かな?」

(; ^ω^)「あ…あなたには関係無いですお!」



18 :◆3m0SptlYn6:2007/10/10(水) 23:26:19.37 ID:9SNddaIP0
思わず声を荒げてしまうブーンだったが、
その声を聞き、ドクが奥から顔を出した。


('A`)「なんだ?誰だ?」

(; ^ω^)「あ、何でもないお!」


必死でフサギコが見えないように、ドアを閉めようとしたが
足がドアの間に割り込まれる。


ミ,,゚Д゚彡「やぁ、ドク」

('A`)「……どうも」

ミ,,゚Д゚彡「ちょっと話があるんだがいいかな?」

('A`)「いえ、フライトの準備中なんで」

ミ,,゚Д゚彡「まぁ、そう言わずに」

(;'A`)「ちょ、ちょっと」

フサギコは強引にドクを掴むと、部屋から引っ張り出す。
とても片腕のみの力とは思えないほど。


(; ^ω^)「……」

19 :◆3m0SptlYn6:2007/10/10(水) 23:27:34.35 ID:9SNddaIP0





('A`)「何の用ですか?忙しいんですけど……」

ミ,,゚Д゚彡「はは、すまんすまん。
      ただね、どうしても聞きたい事があってね」

('A`)「聞きたいこと?」

ミ,,゚Д゚彡「あぁ、ドクオの事なんだが」

('A`)「父ちゃん?」


何故今更?
ダイバー協会長で父の友人でもあるフサギコが、
自分に聞きたい事?


21 :◆3m0SptlYn6:2007/10/10(水) 23:29:10.18 ID:9SNddaIP0

ミ,,゚Д゚彡「なぁドク、ドクオがブーンを連れてきたのはいつだった?」

('A`)「ブーンを?うーんいつだったかなぁ、去年だったと思うけど」

ミ,,゚Д゚彡「その時のブーンはどんな感じだった?」

('A`)「どんな感じって……あいつは記憶喪失が原因で、
    幼児退行する病気だったっすよ」

ミ,,゚Д゚彡「なるほど……じゃぁブーンは君の家に来たときは子供だったと?」

('A`)「性格だけですけどね」

ミ,,゚Д゚彡「さっき話した感じじゃ普通だったが?」

('A`)「そりゃ……1年も立てば……」

ミ,,゚Д゚彡「1年でダイバーになれるほど成長したって事か」


23 :◆3m0SptlYn6:2007/10/10(水) 23:30:20.50 ID:9SNddaIP0

確かに改めて、そう言われてみればブーンは凄い速さで成長してきたと思う。
だが、自分にとっては嬉しい事であり疑問を持つところではなかった。


('A`)「病気が治ったって事なんじゃないですかね」

ミ,,゚Д゚彡「なるほどね……」


フサギコが何かを確信したかのように、うんうんと頷いている。


('A`)「それがなんすか?」

ミ,,゚Д゚彡「まぁ、この際だハッキリ言っておこう」


以前もフサギコと話していたときに味わった感覚が戻ってくる。

聞かなかった方がいいフラグ。


25 :◆3m0SptlYn6:2007/10/10(水) 23:31:51.90 ID:9SNddaIP0

(;'A`)「ま、待って」

ミ,,゚Д゚彡「ブーンの本当の名は内藤と言う」

(;'A`)「……」


有無を言わさず聞かされてしまった。


(;'A`)「本当の名って……記憶喪失になる前の名前ですか?」

ミ,,゚Д゚彡「いや、産まれる前の話さ」

(;'A`)「は?」


産まれる前の名前?
意味が分からない。


27 :◆3m0SptlYn6:2007/10/10(水) 23:33:01.86 ID:9SNddaIP0

ミ,,゚Д゚彡「ちょっと昔話になるが、僕が地球にいた頃VIP宇宙局には
      2人の優秀な研修生がいた」

(;'A`)「……」


ミ,,゚Д゚彡「1人目はドクオ、そしてもう1人が内藤ホライゾンだった」

(;'A`)「その人の……話は父ちゃんから聞いたことがあります」

ミ,,゚Д゚彡「そうか、なら話が早い。なら内藤が死んだ事も知ってるだろう」

(;'A`)「ええ」

ミ,,゚Д゚彡「話は飛ぶが、荒巻教授とは仲が良かったよね?」


その名前を聞いて、一瞬シャキンを思い出した。
ドス黒い感情が湧いてくるのを必死で抑え、1回だけ頷く。


29 :◆3m0SptlYn6:2007/10/10(水) 23:34:06.04 ID:9SNddaIP0

ミ,,゚Д゚彡「彼は表向き機械機器系の研究者だったが、
      本職は生物学の権威ある研究者だった」

(;'A`)「はぁ……」

ミ,,゚Д゚彡「出生率や女性減少の問題は、君も知っているよね?」

('A`)「それは習いました」

ミ,,゚Д゚彡「それを解決するために、荒巻教授は人類のクローン化を研究していたんだ」

(;'A`)「ク、クローン?」

ミ,,゚Д゚彡「そう簡単に言えば複製だね、ちなみに当時はトップシークレットだったから、
      この事を知っているのは、関係者のごく一部だけだ」


クローン?複製?

夢のようだが、もしできればどれだけ救われる事か。


34 :◆3m0SptlYn6:2007/10/10(水) 23:35:52.90 ID:9SNddaIP0

ミ,,゚Д゚彡「ただクローン化するためには、その人の細胞が必要らしい」

('A`)「元がなきゃダメって事ですね」

ミ,,゚Д゚彡「ドクオがダイバーを続けていたのも、
      君のお母さんを再生することが目的だったらしい」

('A`)「母ちゃんを?」

ミ,,゚Д゚彡「そして偶然、ドクオは回収してしまったんだよ。
      地球が滅びる前に宇宙で行方不明になった、内藤が乗った宇宙船を」

(;'A`)「まさか……」

ミ,,゚Д゚彡「そう、ブーンはその時回収した内藤の細胞から再生されたクローンなんだよ」


36 :◆3m0SptlYn6:2007/10/10(水) 23:37:13.05 ID:9SNddaIP0



(゚A゚)「嘘だッ!!!!!」


そんな訳がない、あいつはちゃんとした人間だ。
感情もある、意思もある、食事だってちゃんとする。


ミ,,゚Д゚彡「クローンというのは、最初からすべてが一緒という訳じゃないらしい。
      産み出されて成長する過程で、元の人格になり易い。
      というレベルらしい」

(゚A゚)「違うッ!!違うッ!!そんなんじゃない!あいつは人間だ!」

ミ,,゚Д゚彡「いや、クローンだよ。残念ながら、ね」

( A )「ブーンはブーンだ……その内藤って言う人じゃない」


40 :◆3m0SptlYn6:2007/10/10(水) 23:38:40.26 ID:9SNddaIP0


ミ,,゚Д゚彡「まぁどっちでもいいんだけど、彼じゃ君の足手まといになる。
      来期、TOPを取るためにベテランのサポーターを紹介したいんだが?」

(゚A゚)「っざけんな!」


ドクの右手がフサギコの頬を捉える。

思いっきり勢いと体重を掛けて殴った。

フサギコは後ろに倒れこみ、口を切ったのか血も流れている。



43 :◆3m0SptlYn6:2007/10/10(水) 23:40:10.90 ID:9SNddaIP0

ミ,,゚Д゚彡「君も……同じなのか?」

(゚A゚)「はぁ…はぁ…」

ミ,,゚Д゚彡「やはり僕の思い通りには動いてくれないんだね」

(゚A゚)「誰があんたなんかの思い通りに動いてやるか!
    俺の相棒は内藤って奴でも、ベテランの人でもない!ブーンだけだ!」

ミ,,゚Д゚彡「やれやれ失望したよ、ドクオの息子とは思えない愚息だ。
      やっぱり彼女の血が入ったのがまずかったかな」


愚息?彼女?
今度は母の事も愚弄するつもりなのか。



45 :◆3m0SptlYn6:2007/10/10(水) 23:41:17.03 ID:9SNddaIP0

(゚A゚)「それ以上言ってみろ、いくらあんたでも許さねぇ」

ミ,,゚Д゚彡「はは、僕からも君はお断りだよ。
      そんな甘ちゃんにTOPは任せられない」


お互いに唾を吐き捨て、背中を向ける。


ミ,,゚Д゚彡(こうなると、ドクも邪魔になるな)


フサギコ本人しか分からない話だが、ドクの母、クーに
「β星雲で政府の船が座礁した」と情報を入れたのはフサギコ本人である。

フサギコはクーに思いを寄せていたが、クーが心を開いたのはドクオだった。
何度もアタックを拒み続けられ、「思い通りにならないのならばいっそ」。

クーは母として、そしてダイバーとして「政府の船の回収」に食い付いて来た。

回収に成功すれば、経済的な心配は一切必要なくなる上、
β星雲から回収成功という、ダイバーとしての名誉も付いてくる。

プライドの高さや性格を加味した上で、確信を持ってクーに情報を流した。


そして今のターゲットはドクとブーンに絞られた。


48 :◆3m0SptlYn6:2007/10/10(水) 23:43:31.77 ID:9SNddaIP0



('A`)(ブーンがクローン?そんな馬鹿な)


1人考え事をしながら自宅へと向かう。

何をどうすればいいのか、全く検討が付かぬまま家へ着いた。


( ^ω^)「おっ、おかえりだお!遅かったおね……」

('A`)「ん?ああ、すまんな」


ブーンがジロジロとドクの様子を伺う。


(;'A`)「なっ、なんだよ、気味悪いな」

( ^ω^)「何を話してたんだお?」

('A`;)「ら、来期の事だよ」


思わず目を逸らし、噛んでしまう。


51 :◆3m0SptlYn6:2007/10/10(水) 23:44:40.07 ID:9SNddaIP0

( ^ω^)「ふーん……まぁいいお」


こいつがクローン?

確かに言われれば、おかしいと思うことは多々ある。
だが、それを補って余りある信頼と時間を共有してきた。

今更、こいつが何者であろうと関係ない。


('A`)「それより、フライトの準備を進めようぜ」

( ^ω^)「了解だお!」




そういいんだ、このままで





33話


〜完〜


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