55 :◆3m0SptlYn6:2007/10/10(水) 23:45:40.50 ID:9SNddaIP0

34話


('A`)「システムチェック」

ξ゚听)ξ「オールグリーン、いつでもいけるわ」

( ^ω^)「こっちもOKだお」

('A`)「よし……」


ドクは大きく息を吐き、深呼吸する。


('A`)「今回の行き先はβ星雲だ、危険なフライトになると思う。
    俺の個人的な用事だが、付き合ってくれ」

( ^ω^)「おk、把握したお」


60 :◆3m0SptlYn6:2007/10/10(水) 23:47:26.09 ID:9SNddaIP0

ξ゚听)ξ「β星雲……ね」

( ^ω^)「大丈夫、僕らなら乗り切れるお」

('A`)「座標も決まってないが、星雲に入ったら闇雲に探す事になるかもしれない」

ξ;゚听)ξ「ちょっと……ワラを掴むようなもんじゃない」

('A`)「あぁ、だが目撃情報しかない。
    やるしかないんだ」

( ^ω^)「大体の位置も分からないのかお?」

('A`)「検討は付けてあるが、後は現場の星の流れ次第だな」

ξ゚听)ξ「期待……薄ね」

( ^ω^)「ま、やるしかないならやるだけだお」

('A`)「すまんな」


62 :◆3m0SptlYn6:2007/10/10(水) 23:48:42.74 ID:9SNddaIP0


キィィィィィィィィン


エンジンに熱が入り、いつもの感覚が身を包んでいく。


('A`)(これが最後のフライトになろうとも悔いは残さない)



今期、どの船よりも早く
レオパルトUが宇宙へ飛び立った。




65 :◆3m0SptlYn6:2007/10/10(水) 23:50:42.42 ID:9SNddaIP0







('A`)「ここが……β星雲か…」


まるで壁のように、隕石群が立ちはだかっている。


(;^ω^)「こんな中に突っ込むのかお……」

('A`)「……」


母を殺した場所、師匠を打ち砕いた場所。
そして許せない奴がいる場所、父の形見がある場所。

ドクは因縁めいたものを感じずにはいられなかった。


67 :◆3m0SptlYn6:2007/10/10(水) 23:52:03.43 ID:9SNddaIP0


('A`)「……行くぞ、回収目標はレオパルト!
    他には目もくれるな!」

(;^ω^)「了解!」

ξ゚听)ξ「了解」






10分後


早くも3人は後悔することとなった。



70 :◆3m0SptlYn6:2007/10/10(水) 23:53:47.67 ID:9SNddaIP0


ξ;゚听)ξ「両翼に隕石接近!」

(;'A`)「ブーン!左に抜けるぞ!」

(;^ω^)「抜けた後、右に切り返しするお!」

ξ;゚听)ξ「距離100四方に障害物約1000確認。
        安全地帯は確認できないわ」

(;'A`)「マジか……」

(;^ω^)「ドク、集中を切らさずに行くしかないお」

(;'A`)「あ、あぁ……」


ゴミのように押し寄せてくる隕石。

今までの比じゃない、息を付く間もない。
進路を気にする暇もなく、ただひたすらに回避行動をとるのみ。

神経と体力がジワジワと削りとられていく。


71 :◆3m0SptlYn6:2007/10/10(水) 23:55:35.12 ID:9SNddaIP0

β星雲に突入して一時間余り。

既に、数えきれない程の座礁船を目撃してきた。

見渡せば何処かには船を見付ける事ができる程。

ダイバーの墓場。


なるほど、そう呼ばれるにふさわしい場所であろう。


ξ゚听)ξ「α距離92に強烈な磁場を確認」

('A`)「磁場?」

ξ゚听)ξ「えぇ、そこに安全地帯も確認できたわ」


73 :◆3m0SptlYn6:2007/10/10(水) 23:58:04.63 ID:9SNddaIP0


( ^ω^)「ドク!行こうお!」

('A`)「磁場……安全地帯……」

( ^ω^)「ドク!」

(;'A`)「あ、あぁ」

( ^ω^)「ツン!目的座標をセット!
       多少強引でも切り抜けるお!」

ξ゚听)ξ「了解!モニタに地点を表示するわ」


隕石にかすりながら強引に進んで行く。

違和感に気付いたのはすぐだった。


75 :◆3m0SptlYn6:2007/10/10(水) 23:59:24.58 ID:9SNddaIP0

('A`)「ツン、出力を絞れ。ちょっとスピードが出すぎだ」

ξ゚听)ξ「了解」


(;^ω^)「ツン!出力を絞ってくれお、危ないお」

ξ;゚听)ξ「りょ、了解」


(;'A`)「うおっ、あぶねっ!ツン!もっと!もっとだ」

ξ;゚听)ξ「エンジン出力停止」

(;^ω^)「ツン!もっと絞って……え?停止?」



ξ゚听)ξ「えんじんてーし」

('A`)「……」

( ^ω^)「……」



79 :◆3m0SptlYn6:2007/10/11(木) 00:00:46.03 ID:PvKj0+7U0



(゚A゚)「逆噴射ぁぁぁぁ!!」(゚ω゚;)

ζ;゚ω゚)ζ「了解ぃぃぃぃぃ!」


最大出力でエンジンを逆噴射させる。

それでも中々速度は落ちずに、何かに引っ張られていく。


(;'A`)「迂濶だった!まさかこんなに強烈な磁場だとは……」

(;^ω^)「止まらんお……」



83 :◆3m0SptlYn6:2007/10/11(木) 00:02:20.79 ID:PvKj0+7U0


そして、目の前に広がった光景に二人は目を疑った。

(;'A`)「なんだ……」

(;^ω^)「ありゃ……」


今までの隕石群が嘘かのように、ポッカリと空間が空いている。

そしてその中心には巨大な丸いものが存在していた。


(;'A`)「この磁力の原因はアレか……」

(;^ω^)「……」


ξ゚听)ξ「減速確認、なんとか手前で停止できそうよ」


以前、最大出力のままだが磁力に反発して、
船を安定させる事ができた。

そして間近でその物体を見て、ようやく正体が分かった。


86 :◆3m0SptlYn6:2007/10/11(木) 00:03:30.25 ID:PvKj0+7U0

(;'A`)「これは……磁力に引き寄せられて集まった、
     座礁船の固まりか……」

(;^ω^)「いったい何隻分の固まりだお……」

(;'A`)「想像も付かねぇ……」

ξ゚听)ξ「ドク!このままじゃ燃料の消費が激しすぎるわ」

('A`)「了解、この区域から離脱すr」
(;^ω^)「ド、ドク!あれ!」

('A`)「ん?」


ブーンが指差した方向を見やる。

そこには見間違えるはずもない、船があった。


89 :◆3m0SptlYn6:2007/10/11(木) 00:04:34.00 ID:PvKj0+7U0


('A`)「レオパルト……」


恐らく座礁したのだろう、両翼を失い本体以外は見るも無惨に壊れかけている。


('A`)「離脱中止、レオパルトに接続する。
    出力を調整してゆっくり近付け」

ξ゚听)ξ「了解」


少しずつ機体を寄せていく。
そして細心の注意を払いながら船を接続させた。


('A`)「よし、エンジン停止」

ξ゚听)ξ「了解」


93 :◆3m0SptlYn6:2007/10/11(木) 00:06:27.77 ID:PvKj0+7U0

( ^ω^)「……ドク、船内への侵入ポイントが見付からないお」

('A`)「本体は殆ど外傷無し……か。
    ツン、ソナーを打て」

ξ゚听)ξ「それが……磁力が強すぎてソナーが使えないの……」

('A`)「……仕方ない、外装を壊して侵入するぞ」

( ^ω^)「了解したお!ツン、切断用のアームで穴を開けるお」

ξ゚听)ξ「了解、アーム出すわ」


いつもは機体からエンジンを切り離すために使われる工作用アームが、
レオパルトに穴を開けていく。

もし中に人がいたとしたら、即死だろう。
だがドクは、お構い無しに作業を続ける。


('A`)「……」

(;^ω^)「……」


そしてポッカリと大きな穴が開けられた。


98 :◆3m0SptlYn6:2007/10/11(木) 00:08:46.43 ID:PvKj0+7U0

('A`)「……よしブーン行くぞ」

(;^ω^)「あいお」


二人は船外活動用のスーツを着込み、
出来た穴からレオパルトへと入って行った。


(('A`))「……何も……無いだと?」


本体に外傷が無い限り、中のものが船外に出るはずがない。

それなのに、何も無いのだ。


奴の死体も


((;'A`))「馬鹿な……」


101 :◆3m0SptlYn6:2007/10/11(木) 00:10:26.21 ID:PvKj0+7U0

ドクは、シャキンは死んでいると思っていた。

いや、逆にこの状況で死んでいなければおかしい。
生きていられるはずがないのだ。


((;^ω^))「ドク!この船……」

(('A`))「あん?」


((;^ω^))「電源、生きてるお……」


((;'A`))「電源が?気のせいじゃないか?」

((;^ω^))「でも、ほら」


ブーンがパネルの操作画面を立ち上げる。


107 :◆3m0SptlYn6:2007/10/11(木) 00:12:23.40 ID:PvKj0+7U0

マザーCP「システムオールグリーン、外部に損傷ありフライト不可」

((;'A`))「マジだ……」


電源が生きてて、中には何もない。
考えられるのはひとつだけ。

そう、自ら船を出たのだ。


(('A`))(でも、一体何処へ……)

(( ^ω^))「……」


ブーンがパネルをパチパチ操作している。

すると後部の扉が音も無く開く。



109 :◆3m0SptlYn6:2007/10/11(木) 00:14:13.75 ID:PvKj0+7U0

(('A`))「まさか……」

(( ^ω^))「この先かお」


レオパルトは後部がめり込むようにして、
座礁船の星に突き刺さっている。

そしてその開いた扉から先には道ができていた。


(('A`))「かなり……長いな」


ライトで先を照らしてみるが、何も見えない。


((;'A`))(どうする……、命綱の長さは明らかに足りない……。
      踏み込んで帰ってこれるのか?)



112 :◆3m0SptlYn6:2007/10/11(木) 00:16:13.18 ID:PvKj0+7U0



(( ^ω^))「行こうお」

((;'A`))「え?」

(( ^ω^))「ドク、行こうお。
        ここで戻ったら、ドクは一生前に進めないお」

(('A`))「……」


そう、この件が終わらない限り、
ドクに安息の日は来ない。

ドク自身もそれを理解している。


(('A`))「来て……くれるか?」


115 :◆3m0SptlYn6:2007/10/11(木) 00:17:28.99 ID:PvKj0+7U0

(( ^ω^))「当たり前だお!僕は何時でもドクと一緒だお!」

(('A`))「ありがとう……ブーン」

((*^ω^))「こそばゆいお、気にすんなお!」


船からの命綱を外して行動する。
この行為は自殺行為に等しい。

だが2人は腹を決めた。





34話

〜完〜



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