122 :◆3m0SptlYn6:2007/10/11(木) 00:19:22.03 ID:PvKj0+7U0

35話


(('A`))「ツン、ロープを外す」

ξ゚听)ξ「……話は聞いてたわ、本当に大丈夫なの?」

(( ^ω^))「心配するなお、ツン。
        僕たちは必ず戻ってくるお」

ξ゚听)ξ「……了解」

('A`)「大丈夫だ、無線は繋がってるし無茶はしない」


そう言って2人は命綱を外す。


(( ^ω^))「じゃ、行って来るお」


ドクとブーンは顔を見合わせ、頷くと暗闇の中へ入っていった。


ξ゚听)ξ「……」


129 :◆3m0SptlYn6:2007/10/11(木) 00:21:28.10 ID:PvKj0+7U0


どのくらい歩いただろう。

10分な気もするし、1時間な気もする。

ライトの先にようやく扉が映し出され事態の発展を見せる。


(('A`))「扉があるって言うことは、この先に誰かがいるって事か」

(( ^ω^))「この通路も明らかに人工的なものだお」


各船をくりぬいて作ったような通路。
自然にできるはずがない、明らかに誰かが通るために作られた物だ。


(('A`))(この向こうに……)


134 :◆3m0SptlYn6:2007/10/11(木) 00:22:50.35 ID:PvKj0+7U0

(( ^ω^))「ドク、これ扉のボタンかお?」

(('A`))「ん?」


ブーンの指差す方を見ると、赤いスイッチがあった。
そして周りを見渡しても、他に何かあるようでもない。


(('A`))「そうだろうな、ブーン押してくれ」

(( ^ω^))「了解だお!」


ポチッとな


すると突然すぐ後ろに扉が下りてくる。


((;'A`))「うおっ」

((; ^ω^))「閉じ込められちゃったお……」


前にも後ろにも扉。
閉じ込められたと思った瞬間、2人共体に違和感を感じる。


137 :◆3m0SptlYn6:2007/10/11(木) 00:23:38.68 ID:PvKj0+7U0

((;'A`))「うっ……重い」

((; ^ω^))「コロニーの重力装置?」

((;'A`))「い…や……それ以上の……」


2人共スーツを着たままじゃ立っていられなくなり、
前のめりに倒れこんでしまう。


((;'A`))「ぐ……まだ…来るか」

((; ^ω^))「うえぇ」


ようやく収まったかと思ったときには、
スーツの中で身動き取れない状況になっていた。


139 :◆3m0SptlYn6:2007/10/11(木) 00:24:52.93 ID:PvKj0+7U0

((;'A`))「うっく、どうする?」

((; ^ω^))「とりあえずスーツを着たままじゃどうにもならないお。
        かと言って、脱ぐわけにも……」

ξ゚听)ξ「あーあー、聞こえる?」

((;'A`))「ツン、今ちょっとキツイ。後にしてくれ」

ξ゚听)ξ「……まぁ、いいけど。その空間酸素あるみたいなんだけどね」

((; ^ω^))「酸素?」

((;'A`))「本当か?」

ξ゚听)ξ「さぁ?後にして欲しいみたいだから切るわね」


ブツッ


((;'A`))「スネやがった……」

((; ^ω^))「……」


142 :◆3m0SptlYn6:2007/10/11(木) 00:26:10.10 ID:PvKj0+7U0

((;'A`))「……ブーン、スーツ脱いでみろよ」

((; ^ω^))「ドクこそ……苦しそうだお、脱いだ方がいいお」

((;'A`))「いやいや、お前暑そうだぜ」

((;^ω^))「ドクが脱いだら脱ぐお」

((;'A`))「……」

((; ^ω^))「……」

(('A`))「ラチがあかねぇ、いっせーのせで一緒に出ようぜ」

(( ^ω^))「把握した」



146 :◆3m0SptlYn6:2007/10/11(木) 00:27:33.20 ID:PvKj0+7U0





っせー





  人人人人
<  SE! >
  ΥΥΥΥ


('A`)「うぉぉぉぉぉぉ!」









(( ^ω^))「……」


151 :◆3m0SptlYn6:2007/10/11(木) 00:28:46.55 ID:PvKj0+7U0


('A`)「おぉ!マジだ酸素あるある!」

(( ^ω^))「……」

(#'A`)「……」

( ^ω^)「よっこらセックス」

(#'A`)「……おい」

( ^ω^)「ん?どうしたお?」

(#'A`)「なんか言うことがあんだろ」

( ^ω^)「……スーツ重かったおね」

(#'A`)「てんめぇぇぇぇぇ!!」

( ^ω^)「まぁまぁ」


154 :◆3m0SptlYn6:2007/10/11(木) 00:31:14.36 ID:PvKj0+7U0


2人が言い争っていると、目の前の扉がズズズと横に開く。

目の前に広がった光景は、豪華な飾り付けに彩られた家の中だった。

照明まで完備されており、ライトの必要も無い。


('A`)「おほー、趣味がいいって言うか悪いって言うか」

(* ^ω^)「凄いお!凄いお!」


ブーンがはしゃいで走っていく。



157 :◆3m0SptlYn6:2007/10/11(木) 00:31:55.83 ID:PvKj0+7U0

('A`)「おい、迂闊な行動は取るなよ」

(* ^ω^)「大丈夫だお、ほらほら!」


真っ赤なカーテンに向かってブーンが飛び込んで行った。


( ゚ω゚)「うぇあっ!」


しかし、ブーンはカーテンに絡まる事無く突き抜けて行った。


(;'A`)「あっ、おいブーン!」



159 :◆3m0SptlYn6:2007/10/11(木) 00:32:39.38 ID:PvKj0+7U0

カーテンを突き抜けて見えなくなったブーンを追い、
ドクもカーテンへと手を掛ける。

だが、手ごたえもなくスルリと手がカーテンをすり抜けた。


(#);^ω^)「いつつ……一体何が」

('A`)「……ブーン」


ドクが何度も、カーテンを手で掻き分ける。


('A`)「これ……ホログラムだ」

(; ^ω^)「えぇ!?」


ブーンもドクと同じように存在しないカーテンを触る。

が手ごたえがない。


163 :◆3m0SptlYn6:2007/10/11(木) 00:34:07.42 ID:PvKj0+7U0

(; ^ω^)「本当だお……どうみても本物にしか見えないお」

('A`)「……相当な技術者だな」


ドクのその言葉にブーンがハッとする。

ドクが追っている人物は技術に長けた人物だ。
裏付けとまではいかないが、ドクの発言からも読み取れた。


('A`)「とりあえず結構広いようだ、探索するしかねぇな」

( ^ω^)「把握した」

('A`)「二手に分かれて捜索しよう、連絡は無線で」

(; ^ω^)「ちょっと怖いお」


166 :◆3m0SptlYn6:2007/10/11(木) 00:35:27.93 ID:PvKj0+7U0

('A`)「大丈夫だろう、外部からの侵入者に罠を貼っているなら、
    現時点でなんらかのアクションがあるはずだ、危険は少ない」

( ^ω^)「確かに……」

('A`)「俺はこの部屋から時計回りに捜索する。
    ブーン、お前は逆周りだ」

( ^ω^)「おk」

('A`)「常に無線で連絡を入れろ、捜索の途中でも1時間後には必ずこの部屋に戻ること」

( ^ω^)「把握した」


ドクとブーンは護身用の携帯スタンガンを構え、
それぞれ別の部屋に入っていった。




168 :◆3m0SptlYn6:2007/10/11(木) 00:36:31.11 ID:PvKj0+7U0






(;'A`)(カッコ付けたのはいいが、やっぱ怖えぇな)


ビクビクしながら1つ目の扉を開く。

中は見たことがある部屋だった。


('A`)(……あれ……この部屋どこかで……)


誰もいない事を確認し、部屋を探して回る。

見たことのあるテーブル、見たことのある椅子。
そして見たことのある1枚の紙切れ。


('A`)(……ダイバー年間成績表?)


171 :◆3m0SptlYn6:2007/10/11(木) 00:37:03.93 ID:PvKj0+7U0

何枚にもホチキス止めされた書類を、ペラペラと流し見する。

その時、後ろから思いがけない声が聞こえた。




『ようドク、来たんならコーヒー淹れてくれよ』



(;'A`)「ッ!」


聞き覚えのある声、そして台詞。

恐る恐る後ろを振り返る。



173 名前:◆3m0SptlYn6:2007/10/11(木) 00:38:28.50 ID:PvKj0+7U0


  _
( ゚∀゚)「ん?どしたい」



(;'A`)「ジョ、ジョルジュさん!」


死んだと聞いていた。
しかもここ、β星雲で。

でも、ここにいる。
また会えた。


(*'A`)「ジョルジュさん!生きてたんすね!」

  _
( ゚∀゚)「おいおい、勝手に人を殺すなよ。それよりコーヒー」

(*'A`)「あっ、すんませんですww
    今淹れますね」



178 :◆3m0SptlYn6:2007/10/11(木) 00:39:24.47 ID:PvKj0+7U0

ドクは慣れた手つきでポットにお湯を入れ、
コーヒーを淹れ始める。


(*'A`)「んー、この臭いが!」


トポトポと少しずつお湯を注いで行く。

丁度7分目、ジョルジュはミルクも入れる。
ミルクを入れても溢れないように、ちょっとした気遣いもしていた。


(*'A`)「ジョルジュさんできたっすよ」


ドクがカップを片手に振り返る。


180 :◆3m0SptlYn6:2007/10/11(木) 00:40:20.90 ID:PvKj0+7U0

しかし、そこにはジョルジュの姿は無く、
周りの景色も見慣れた部屋ではなく、機械に囲まれた殺風景な空間になっていた。


('A`)「あれ……ジョルジュ……さん?」


周りを見渡すが、何も無い。

そしてドクの手にはひび割れた薄汚いカップに、
オイルとも泥水とも言えないような、液体が入っているだけだった。


(;'A`)「うわぁぁぁぁぁ!」


ドクは勢い良くカップを壁に向かって投げる。

カチャン

情けない音を立てて、カップが割れ中身が飛び散った。


184 :◆3m0SptlYn6:2007/10/11(木) 00:41:49.67 ID:PvKj0+7U0

(;'A`)「な、なんなんだ一体……」


カップからこぼれた液体が、異臭を立てて周りの機械を溶かし始める。


(;'A`)「う…うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


ドクは思いっきり走り、ドアを開けその部屋を出る。

しかし、入って来たドアを出たはずのドクに、さっきとは違った部屋が現れる。


(;'A`)「そんな……確かにこのドアから入って……」


クルリと後ろを振り返ると、そこにはもうドアが無くなっていた。


(;'A`)「あ…あ…あああぁぁぁぁぁ!!」


ドクは恐怖に駆られ闇雲に走るしかなかった。



188 :◆3m0SptlYn6:2007/10/11(木) 00:42:59.85 ID:PvKj0+7U0






( ^ω^)(随分古っぽいドアだお)


ガチャリ

ノブを回すタイプのドアは現在ではありえない。

見たこともないはずのブーンは、何故か「回して空けるもの」と認識し、
なんの疑いも持たずに部屋の中へ入る。


( ^ω^)(ここは……寝室?)


ベットが2段重ねになって、両脇に2個ずつ並んでいる。

共同生活でもしていたのだろうか。
4人部屋のような部屋だった。


190 :◆3m0SptlYn6:2007/10/11(木) 00:44:03.21 ID:PvKj0+7U0

( ^ω^)(んー誰もいなさそうだお)


キョロキョロと周りを見渡し、ベットも確認するが
案の定誰もいない。

ただ正面にある部屋の窓からは、
草木に覆われた景色を見ることができた。


( ^ω^)(おー、綺麗だお!こんな景色始めてみたお)





191 :◆3m0SptlYn6:2007/10/11(木) 00:45:09.43 ID:PvKj0+7U0




『うっ……ひぐっ』



その時後ろから、すすり泣くような声が聞こえてくる。


(; ^ω^)「ッ!」


ブーンが慌てて振り返ると、そこには一人。
泣いている青年がいた。


(;A;)「うっ……ふぐっ……」


青年は泣きながら、バックから荷物を取り出している。


193 :◆3m0SptlYn6:2007/10/11(木) 00:46:09.66 ID:PvKj0+7U0

取り出しては棚に置き、取り出してはベットに置き。
まるで元に戻すかのように手馴れた作業をこなしていた。


( ^ω^)「どうしたんだお?」


ブーンは思わず声を掛けてしまう。

しかし、顔を上げた少年の顔を見て、ブーンは驚愕した。


(;A;)「……」


(; ^ω^)「ドク!」


泣いている。
何故?こんなところで。

なんで荷物を出して?


195 :◆3m0SptlYn6:2007/10/11(木) 00:47:17.42 ID:PvKj0+7U0

(; ^ω^)「ど、どうしたんだお?」

(;A;)「……内藤」

(; ^ω^)「お?」

(#;A;)「お前さえ!お前さえ!いなきゃ俺が宇宙に行けたんだ!
     なんでだよ!俺が成績トップだったろ!?」

(; ^ω^)「ちょ……ドク落ち着くお」

(#;A;)「うるさいっ!お前だって内心喜んでるんだろ!?
     あのっ…あの念願の月に行けてよ!」


青年が窓の外を指差す。


(; ^ω^)「お?」



199 :◆3m0SptlYn6:2007/10/11(木) 00:48:27.42 ID:PvKj0+7U0

ブーンが振り返って窓の外を見てみると、いつの間にか暗闇になっていて、
ポッカリと月が浮かんでいた。


( ^ω^)「月……」


デジャブを感じる。
確かにこうして毎日、月を「見上げて」いたような。

コロニーからは正面に見えたり、下に見えたり。

だが、今は確実に「見上げて」いる。

この見上げる月に何かを感じる。


( ^ω^)「……」


ズキン


少し頭痛がした。


204 :◆3m0SptlYn6:2007/10/11(木) 00:50:33.71 ID:PvKj0+7U0

(; ^ω^)「ドク……僕は……」


ブーンは振り返りドクに聞こうとしたが、
視線の先に先程の少年はもう写らなかった。


(; ^ω^)「あれ……ドク?」



ズキン


回りもベットが無くなり、薄汚れた壁だけが見える。



206 :◆3m0SptlYn6:2007/10/11(木) 00:51:26.27 ID:PvKj0+7U0


ズキン


(; ^ω^)「……疲れてるのかお……」


ブーンは片手で頭を抑えたまま、
フラフラとその部屋を後にした。




ズキン




35話



〜完〜


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