3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 17:38:03.54 ID:mB6t12vw0


 「ごめんなさい…」



从;ー;从「ごめんなさい…ごめんなさい…」



降りしきる雨の中、少女の呟きが恐ろしく冷たく響いた。

彼女にやられたモララーは、地面に倒れたままぴくりとも動かない。
彼の首筋からは、今も黒い血が流れ続けている。


( ゚ω゚)「モララああああ!!!」


从;ー;从「ごめんなさい…止まらないの、私。ううん、止められないの…」


5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 17:39:16.41 ID:mB6t12vw0


 「楽しすぎて…」



 ( ^ω^)音楽が世界を救うようです




 第六話「異端」



7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 17:45:00.74 ID:mB6t12vw0

( ゚ω゚)(ヤバイヤバイヤバイヤバイお!こいつ、めちゃくちゃヤバイ!)

ブーンの本能が死を感じた。
恐怖と焦燥が嵐で巻き起こった濁流のように押し寄せる。



从;ー;从「私、駄目ナノ。イケナイ子…とってもとってもイケナイ子。許して…」



くらくらとする頭を抱えて、ブーンは一歩後ろによろめいた。

( ゚ω゚)「!?」

目の前を何かが、超高速で通り過ぎた“感じ”がする。

すると一拍遅れて、さっきまで自分がいた場所の地面が大きくえぐれた。
鋭い爪を持った巨人が地面を掻いたような、そんな光景だった。


8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 17:51:08.20 ID:mB6t12vw0


从;ー;从「よかった、よけてくれてありがとう。でもごめんなさい…次は当てるから」



雨ガッパの少女は全く別の場所にいた。
彼女の両手に土がついている。ブーンの額に冷や汗が浮かんだ。

( ゚ω゚)(速すぎる!速すぎてなにも見えねえ!)

(゚、゚;トソン「なによ今の!縮地!?」

( ;<●><●>)「あの停止状態から瞬間的に最高速まで速度を上げることにより
         目にも止まらぬ、いや写らぬ速度で敵に攻撃が出来る伝説の走法!?」

( ゚ω゚)「詳しいなおまえ腐女子か?宗×真か?」

( <●><●>)「けっこう余裕あんのね君」


10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 17:55:37.20 ID:mB6t12vw0


从;ー;从「ごめんなさい…許して…」


(゚、゚;トソン「また来るわよ!」

( ;<●><●>)「とりあえずモララーを車へ!」


血だまりに伏せるモララーに向かって、ワカッテマスが走り寄った。



スロウモーションに見えた。
ストッキングを身につけているワカッテマスの両足が、ハムのように分断され、二つとも空中に舞った。
両足を無くしたワカッテマスが、一瞬空中を浮いているような状態になり、次の瞬間顔から地面に落ちた。


( <○><●>)「あ…あぁああぁ…!」

( ゚ω゚)(゚、゚;トソン「あああああああああ!!!!!!」


13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 18:01:53.06 ID:mB6t12vw0


( ;< ><●>)「痛い…っ…痛い痛い痛いっ……痛いぃ……あっ……ああああっ…。
        いやっ…うぅうぅうぅっ…ああああああああああっ!!!痛いぃっ!ああっ!!!」

ワカッテマスは完全に混乱していた。
無くなった両足の先を見て、痛みに涙した。
長めのブーツのように無造作に転がっている自分の両足が、酷く滑稽に思える。

(゚、゚;トソン「キャアアアアア!!なに!あ…嫌ああああ!!」



从;ー;从「ごめんなさい…誰も逃がすつもり無くてごめんなさい…」



( ゚ω゚)

ブーンだけは、とにかく冷静に、今自分が置かれている状況と、そして生き残る為の策を思案していた。


14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 18:04:35.80 ID:mB6t12vw0

( ゚ω゚)「思いつかねえ」

諦めた。




(;、;トソン「やだ!やだ、死にたくないよっ」

( ;<○>< >)

(  ∀ )

( ゚ω゚)「うおぉぉぉぉトソン!死ぬ前に一発やらせてくれお!」

(;、;トソン「死ね!」

( ゚ω゚)「…?」

(゚、゚トソン「あら?」


17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 18:08:19.04 ID:mB6t12vw0



      从;ー;从



路地の真ん中に仁王立ちしている少女は、じっとしたまま動かない。
ブーンとトソンは、不思議と逃げることは考えず、彼女の挙動をじっと見続けることが出来た。


从;ー;从「ごめんなさい…」


その内、ブーンは気がついた。
フードのついている雨ガッパのせいで、今までよく見えなかったのだが、


( ;^ω^)「目を瞑っているお」

黒頭巾は、目を開けていなかった。


20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 18:12:39.77 ID:mB6t12vw0

( ゚∀゚)「アヒャヒャヒャヒャ!こんなところにボンレスハムが!」


断裂したワカッテマスの両足に向かって、アヒャが動いた。

( ゚∀゚)「アヒャ!?」

空間をえぐるような音がして、アヒャの左腕が吹き飛び、辺りに血の雨が降った。


( ゚∀゚)「いてぇーーーー!」



(゚、゚;トソン「わかった!動いてるものを襲ってる!」

( ;^ω^)「ナンダッテー!」


21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 18:15:36.78 ID:mB6t12vw0

( ゚∀゚)「いでぇよぉー!!!アヒャヒャヒャヒャヒャ!!」

( ;<●><○>)「うぅ……逃げて…あんたたち…」



( ;^ω^)「音を聴いて反応してるってことかお!?」

(゚、゚;トソン「だったら私たちの声にすぐ反応するはず!
      もっと別の…別の何かが動体探知機みたいに作用してるのよ!
      たとえば…」


トソンが空を見上げ、ブーンがそれにならって同じように顔を上げた。


(゚、゚トソン「この雨とかね」

( ;^ω^)「なるほど」


23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 18:19:14.09 ID:mB6t12vw0


从;ー;从「ごめんなさい…」



黒頭巾に動きは無い。
真新しい血のついた痕が、雨ガッパにいくつも残されていた。


(゚、゚;トソン「それがわかったから何だって話だけどさ!
      早く病院に連れていかないと、みんな死んじゃう!」

( ;^ω^)「でも演奏しようにも、メンバーのうち二人はもう…!」

(゚、゚;トソン「あんた、まだアレが魔族だと思ってんの?」

( ;^ω^)「…」


25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 18:23:02.12 ID:mB6t12vw0

(゚、゚;トソン「あれは人間よ。


   从;ー;从「すごく悪い子…私、悪い子…叱られちゃうの…みんな殺してごめんなさい…」


      よくわかんないけど、魔族とは違う。
      変な能力を持ってる、けれど歴とした人間。私たちと一緒!」


( ;^ω^)「楽器は効かないってことかお!?」

(゚、゚;トソン「そう。ファットガールは扱いに難しいってこと」


( ;< >< >)「……」        ( ゚∀゚)「あ……あひぇあ……」

       ( ∀  )「……」


(  ω )「みんな…死んじゃ駄目だお…」


26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 18:29:07.07 ID:mB6t12vw0

思い出すのは、あのロックフェスでの親友の死であった。

(  ω )「ロックは死なない」

自分のせいでショボーンは死んだ。

(  ω )「ロックは逃げない」

そう思い詰め、あのフェスからずっと眠れない夜を過ごした。

(  ω )「ロックは諦めが悪いんだお」

(実は)背負っていた父親の形見のギターを手に取り、軽く弦を弾いた。



(゚、゚;トソン「ブーン!(そんなの背負ってたんだ!)なにするつもり!?」

( ゚ω゚)「歌う!」

(゚、゚;トソン「馬鹿なの!?」


27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 18:38:24.60 ID:mB6t12vw0

( ゚ω゚)「魔族に効くロックがこんな変なやつに効かない訳が無いお!」

(゚、゚;トソン「全っっっっっっっっっ然りくつになってないから!」

(  ω )「ぐぅぅぅぅ…ショボーン…!!俺に力を貸してくれお!!
       音楽は誰にでも平等に…!!」

(゚、゚;トソン「ブーンっ!」

( ゚ω゚)「音楽に壁はあるお。国境もあるお!それをぶち壊すのがロックだお!!!」

(゚、゚;トソン「やめて!!やめてよ!やだよ!!死んじゃやだ!
      やっと、やっと手に入れたと思ったのに!!やめてよ!!
      僕の居場所!もう、どこにも無いんだよ!!」

( ゚ω゚)「おまえの立ってる場所が“おまえの場所”だお」


静かなアルペジオから、勢いよくコードへと繋げて、ブーンの旋律が雨中に舞う。
ブーンの右手につけている指輪が反応し、コンパクトなヘッドセットとなってブーンの頭に装着された。

( ゚ω゚)「〜〜〜〜〜〜!!!」


30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 18:44:39.45 ID:mB6t12vw0

ブーンは魂を込めて歌った。
技術はさほど無い、しかし聴く者の心を打つ何かが旋律の裏にあった。


降りしきる雨と、少女の泣き声と、ブーンのシャウトが交錯する。



ちょうど一曲歌い終わったときだった。

ブーンの着ているシャツのボタンが、上から一つずつ取れていった。

全てのボタンが取れたとき、



( ゚ω゚)「あ……」


首元から下腹部までの肉が裂け、脂の混じった血がどろりと沸き出した。

提げていたギターがめきめきと音をたてて、二つに割れて地面に落ちる。


从;ー;从「私…イケナイ子…」


黒頭巾の手が、さらに黒く染まっていた。


31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 18:49:05.18 ID:mB6t12vw0

(;、;トソン「あっ!」

(  ω )「…父ちゃん…ショボーン……今いくお………………………………」



前のめりに倒れ込む。
壊れたギターを抱え込んで、ブーンの意識は闇に落ちた。



(;、;トソン「やだ!!やだやだやだやだやだ!!!イヤアアァーーーーー!!!!!!」



トソンは体中の力が抜けていくのを感じた。
五感と思考力が鈍くなり、雨が降っているのか、止んでいるのか。
自分が立っているのか座っているのか。
息をしているのかしていないのかさえ分からなくなる。


34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 18:53:52.41 ID:mB6t12vw0


目の前が真っ暗になるという表現があるが、彼女はそれを言葉通りの意味で体現していた。
上も下もわからない空虚な空間で、ただ溢れる悲しみに絶望していた。



(;、;トソン



(゚、゚トソン「…?」


正気に戻った彼女は、本当に辺りが真っ暗闇になっていることに気がついた。


(゚、゚;トソン「え?モララー!ブーン!ワカッテマス!あれ?なに、ここ…え、夢?」

 「夢じゃないわ」


35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 18:56:48.77 ID:mB6t12vw0


(゚、゚;トソン「ひっ!?」


頭の中に響いた声に対し、大げさに反応を示す。

辺りを見回してみるが、全ての視界は闇で埋まっていた。


 「ただし現実でもない。ここはあなたの中」

(゚、゚;トソン「よ、よくわかんないけど、中2的なアレな感じで考えていい訳?」

 「そう言われると身も蓋もないけど大体合ってるわ」

(゚、゚;トソン「あなた誰!?」


声の主は女性のようだった。
落ち着いた物腰を感じる声色で、自分より年上のように感じる。


36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 19:00:11.33 ID:mB6t12vw0

 「私はあなたの髪留めよ」

(゚、゚トソン「神器!」

 「そう」

(゚、゚トソン「わかった!テイルズね!!」

 「そう言われると身も蓋もないけど大体合ってるわ」


声の主は、彼女の武器である神器、つまりあのドラムセットの意志のようだ。


 「ドラマーってさ、みんな同じこと言うの、知ってた?」

(゚、゚トソン「え?」

 「場所が無い―――て」

(゚、゚;トソン「それ練習場所とか置き場所のことじゃ…」


38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 19:04:05.11 ID:mB6t12vw0

 「あなたの場合、自分の居場所のことかもね」

(゚、゚トソン「―――!」




 「大切なあなたがいる場所。大切なあなたが、大切にしたい場所。大切な誰かがいる場所。
  護りたいなら、力を貸すわ」



(゚、゚;トソン「お願い!!お願いします!!!」

闇の中で、小さな光が生まれ、そこに顔のようなものが浮かび上がった。



( ∵)「いいわ。あなたに護る力を与えます」



(゚、゚トソン


色々と予想外だった。


第六話「異端」 終

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