3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/07(日) 00:06:08.48 ID:VnEwlYRV0

( ∵)「さあ、あなたに力を託します!」

(゚、゚トソン「ちょ、ちょっと待って。あなたが伝説の神器なの?」

( ∵)「そうよ。正確にはこの神器に魂を捧げた者の一人だけど」

(゚、゚トソン「ボーリングの球じゃなくて?」

( ∵)「そうよ。ボーリングの球じゃなくてこの神器に宿る精神体よ」

(゚、゚トソン「ボーリングの球じゃなくて?」

( ∵)「そうよ。RPGでいえばなんか武器に宿る精霊みたいなそんな感じのアレよ」


4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/07(日) 00:07:30.40 ID:VnEwlYRV0


 「からのー?」



 ( ^ω^)音楽が世界を救うようです




 第七話「場所」



 「だからボーリングの球じゃないっつーの!」


6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/07(日) 00:13:07.00 ID:VnEwlYRV0

トソンの前に現れたボーリングの球は意味不明なことを言いながら(#∵)「だからちげぇっつってんだろが!」



(゚、゚;トソン「ど、どうしたの急に!?」

(;∵)「あのねトソンちゃん。今あなたの大事な人たちが結構ヤバイことになってんの。
    ここでグダグダやってる時間は無いのよ。オッケー?」

(゚、゚トソン「う、うん!それで力を貸すって、どういうこと?」

( ∵)「言うは易く行うは難し!」

(゚、゚トソン「はい?」

( ∵)「ごめん百聞は一見にしかずだった。説明する暇も惜しいわ。さっそく解放するわよ」

(゚、゚;トソン「か、解放って」


トソンが言い終わる前に、視界が光に包まれ、また意識の混濁が始まった。


7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/07(日) 00:17:05.04 ID:VnEwlYRV0



(-、-;トソン「う……ん…」


(゚、゚トソン「はっ!」


視界が開けたとき、そこは元の廃墟の一角であった。





( ;< >< >)        ( ゚∀゚)
       (  ω )     ( ∀  )「ハァ…ハァ…」


(゚、゚;トソン「みんな!」



血だまりと分断された手足、瀕死の仲間たちが転がる地獄のような場所だ。

そして視界のずっと先には、黒い雨ガッパを着た少女が…。

(゚、゚トソン「いない!?どこに行ったの!?」


8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/07(日) 00:19:30.03 ID:VnEwlYRV0


 「ごめんなさい」



(゚、゚;トソン


声は後ろから聞こえた。

トソンの意識が離れている間に、黒頭巾はすぐ傍まで移動していたのだ。


黒頭巾は視界こそ無いが、動体探知能力を備えている。
後ろを振り返るような真似は出来なかった。


(゚、゚;トソン(ヒィィィィィィィイイイ)


10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/07(日) 00:22:49.84 ID:VnEwlYRV0


早く仲間を病院へ連れていかなければ、手遅れになってしまう。

だが動けば同じ目に遭うこととなり、全滅となる。


意識が遠ざかる前と状況は同じだった。


(゚、゚;トソン(力を貸してくれるっていうのはどうなったのよー!)


心の中で毒づいた瞬間、トソンの髪留めが淡く光り、宙を緩やかに舞った。
髪留めはドラムのスティックとなり、トソンの両手に分かれて収まった。


(゚、゚;トソン(こ、これでどうするの。ドラムだけで演奏すんの!?)


11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/07(日) 00:28:30.91 ID:VnEwlYRV0



 ―――ドラマーにだって居場所はあるわ



(゚、゚;トソン(来た!頭の中に聞こえる声!勝ちフラグ!)



 ―――でも自分の場所は、自分で護らなくちゃ

 ―――だからあなたに力を貸します。大切な場所を護る力


 ―――第一の能力。<絶対不可侵領域>

(゚、゚*トソン(格好いい!)


トソンの持つスティックが、桃色の光を放った。
美しく、優しい光であった。


 ―――さあスティックを振るのよ!狂ったように!もうなんかメチャクチャでいいわ!そしたら発動するから!


(>、<;トソン(か、かっこ悪い!)


12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/07(日) 00:31:53.63 ID:VnEwlYRV0

目の前にドラムセットがあると想定し、トソンは適当にスティックを振った。


  タンッ


(゚、゚トソン「え?」


 タンッ  ドン   パァァン


(゚、゚*トソン「クール!」


虚空を舞うスティックが、見えない何かに当たり、音を出している。
透明なドラムセットが置かれているような感覚だった。


13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/07(日) 00:35:45.06 ID:VnEwlYRV0

しかも自分がスティックを振った場所で、想定した音が出せるのだ。
これならリズム感さえあれば、本当に適当に振っても音楽になる。

それも演奏技術が四人の中で最も高いトソンが扱えば、最高の音を出すことができた。


(゚、゚トソン「!」


いつの間にか、スティックを振った場所の周囲に、淡い桃色の壁が出来ている。


(゚、゚;トソン「なるほど、わかった気がする!」


黒頭巾は動体を探知して動く。



从;ー;从「……」


16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/07(日) 00:40:49.65 ID:VnEwlYRV0

トソンは意を決してその場を離れ、仲間たちが地面に転がっている辺りの空中で、がむしゃらにスティックを振った。
宙を叩く度に生まれる小さな桃色の壁が、大きな半球面となってトソンたち五人を包んだ。


从;ー;从「ごめんなさい」

(゚、゚;トソン(来る!)


壁を張り終えたとき、黒頭巾の声が聞こえた。



(゚、゚;トソン「キャアァーーー!!」



ほぼ同時に聞こえた強烈な、爆発したような音にトソンは驚き、慌てて耳を塞いだ。

黒頭巾の姿が消えている。


つまりたった今、黒頭巾から攻撃を受け、そして防いだということだ。


18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/07(日) 00:44:21.89 ID:VnEwlYRV0

(゚、゚;トソン(状況に関しての描写力がなさ過ぎる!
      それはそうと、防いだ!私の場所!私の仲間!護ることができた!)

(゚、゚*トソン「凄いじゃんこの能力!えっと、<絶倫不謹慎教師>だっけ?」


 ―――<絶対不可侵領域>よ!


(゚、゚*トソン「ありがとう!あなたのおかげで護ることができた!」

(゚ー゚トソン「フヒヒヒさあ形勢逆転よ。こっから巻き返すわよ!!」


 ―――あ、それ無理。あの子強すぎるから


(゚ー゚トソン「帰りてぇ…」


19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/07(日) 00:49:32.28 ID:VnEwlYRV0

(゚、゚;トソン(どうするのよ!!)


 ―――どうしようかしら。とりあえず今の内に治癒しておかないとね


(゚、゚トソン「チュウ?」

(///トソン「え、あの、誰にすればいいのかな…」


 ―――トソンちゃん、私ね、伝説の武具に宿る精神体なの。突っ込みは得意じゃないのよ、わかる?



从;ー;从「ごめんなさい……ごめんなさい……」


トソンと精神体が会話している間にも、黒頭巾は<絶対不可侵領域>によって作られたバリヤを攻撃していた。
攻撃の度に凄まじい音が聞こえる。黒頭巾による高速攻撃の凄まじさがよくわかった。


20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/07(日) 00:53:45.97 ID:VnEwlYRV0

 ―――本気で攻撃してきたわ!バリヤを重ねて!

(゚、゚;トソン「これ破られちゃうこともあるの!?」

 ―――NOと言ったら嘘になる確率が限りなく高いわ

(゚、゚;トソン「ひいー!!!」


元々張ってあるバリヤに、重ねるようにスティックを振った。

黒頭巾の攻撃はさらに激しさを増し、バリヤの至るところで彼女の残像と、バリヤと接触する音が聞こえた。


(゚、゚;トソン「ギャー!!!やめてやめてやめて!!!」

 ―――後ろのバリヤ薄くなってきてるわよ!!違う違う違うそこの右!右!!うんそこ!!

(゚、゚;トソン「か、かっこ悪いよー!」


21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/07(日) 00:59:55.20 ID:VnEwlYRV0

 ―――よし、もういいわ!これで五分は保つ

(゚、゚トソン「あのさ、この能力さ、名前負けしてね?」

 ―――いいことを教えてあげる。この世に「絶対」なんて無いのよ

(゚、゚;トソン「自分の能力否定すんじゃねえよ!」

 ―――そこで第二の能力<治癒>の出番よ

(///トソン「え、あの、誰にすればいいのカナ?」

 ―――ああああああめんどくせぇぇ!!


精神体はかなり丁寧に、治癒について教えた。
そのせいで一分は消費した。


(゚、゚;トソン「このスティックで、叩けばいいの?」

 ―――そう。簡単でしょう?


22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/07(日) 01:04:08.18 ID:VnEwlYRV0

重体で横たわる仲間たちを前に、迷っている暇は無かった。

淡く光るスティックの先で、傷を負った仲間たちをスティックで叩いていく。

すると、彼らの体に淡い光が宿り、見る見るうちに傷が塞がっていった。


(゚、゚;トソン「すごい!これが<治癒>なんだ」

 ―――すごいでしょ?尊敬しちゃうでしょ?

(゚、゚;トソン「あんたを?いやそれは無いけど…」

 ―――ああそう。まあいいんだけど…。そうそう、いいニュースと悪いニュースがあるわ

(゚、゚;トソン「うわ出た!総合すると大抵ただの悪い知らせになるジョーク!」

 ―――どっちから聞きたい?

(゚、゚;トソン「聞きたくないけど…じゃあ悪いニュースから」


24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/07(日) 01:07:16.75 ID:VnEwlYRV0

 ―――バリヤがもうすぐ破られるわ

(゚、゚;トソン「張り直さないと!」

 ―――私の力はもう残ってないの

(゚、゚;トソン ヒィィィィィィハァァァァーーー!!!!


絨毯爆撃のような攻撃を常に受け続けているバリヤは、もう破られる寸前であった。


(  ω )「ん…」

( ;^ω^)「なんだお。俺は死んだはずじゃ…」


先ほどまで死ぬ寸前であった仲間たちが、順に起き上がってくる。
しかし事態はまだ最悪の状況から脱してはおらず、依然、絶体絶命だ。


25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/07(日) 01:09:37.53 ID:VnEwlYRV0

( ;^ω^)「なんだおこれ!」

( ・∀・)「んあ…よく寝たわ」

(;<●><●>)「一体どうなってるの」

( ゚∀゚)「アヒャヒャヒャヒャ」


(゚、゚トソン「みんな…」

( ー トソン「よかった…」


 ―――いいニュースはね


(゚、゚トソン「…あれ?」

精神体が話している途中で、突然、黒頭巾からの攻撃が止んだ。


27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/07(日) 01:12:27.30 ID:VnEwlYRV0

訝しむトソンの頭に、精神体の声が響く。


 ―――空に虹が見えるってこと


 ・
 ・
 ・
 ・
 ・


( <●><●>)「そう、神器に宿る意志のおかげだったのね」

(゚、゚トソン「うん。もしかしたら他の神器にもいるのかも」


雨が上がったことにより、黒頭巾から逃れることが出来た。

生き残ったという実感も曖昧なまま、五人は本部ヘと戻っていた。


28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/07(日) 01:16:09.35 ID:VnEwlYRV0

( ・∀・)「いいなー。俺もそういう能力欲しいぜ」

( ゚∀゚)「アヒャヒャヒャヒャ。これってあらチーのパク」


  ( ^ω^)=○)゚∀゚(○=(・∀・ )


(゚、゚トソン「全然被ってないわよ。レス数だって段違いじゃない」

( <●><●>)「自虐は見苦しいわよ」

(´・_ゝ・`)「メタはいい加減にしたまえ。朝になって読み返すと恥ずかしいぞ。
      それよりも、気になるのは黒頭巾という女だ」

( ^ω^)「黒頭巾も気になるけど、父ちゃんからもらったギターがどこにいったのかも気になるお」

(゚、゚トソン「あれ壊れてたよ」

( ゚ω゚)「え」


31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/07(日) 01:21:23.21 ID:VnEwlYRV0

(´・_ゝ・`)「実は魔族を研究しているチームから、興味深い情報が入ってきてな」

( <●><●>)「どういうものですか?」

(´・_ゝ・`)「魔族でもなく、人間でもない、非常に曖昧な種族の存在だ」


デミタス国務長官は、デスクの中から古ぼけた本を取り出した。


(´・_ゝ・`)「かつて今よりも文明が栄えていた頃、そういう種族が少ない確率で人間の子として生まれていたらしい。
      魔族が復活したことと大きく関係があるそうだ」

( ^ω^)「それどゆことデミちゃん」

(´・_ゝ・`)「絶対に重なることのない超平面が、何らかの衝撃により時空の特異点に到達し生まれてしまった歪みだ」

( ゚∀゚)「マジ日本語でおk」

( ・∀・)「アヒャが初めてまともなこと言ったわ」


32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/07(日) 01:26:10.71 ID:VnEwlYRV0

(´・_ゝ・`)「正直いうと私にもわからん。
      簡単にえば、魔族が復活したことで時空に歪みが生じて出来た生物だ。
      トレース元と似たような集合を形成するが、本質は全く異なる」

( <●><●>)「つまり人間に似た、人間でない存在」

(´・_ゝ・`)「研究チームの間では、便宜上その存在を<虚人>と呼んでいる」

( ・∀・)「巨人?いうほどデカくねえよ」

(´・_ゝ・`)「虚数の虚だよ。複素数の」

( ゚∀゚)「マジ日本語でおk」

( ・∀・)「おお!おまえ今日調子いいな!」

(´・_ゝ・`)「うん、まあいいよなんでも。巨人でいいよ巨人で」


34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/07(日) 01:33:58.47 ID:VnEwlYRV0

( <●><●>)「魔族だけでも頭が痛いのに」

(´・_ゝ・`)「ロックの効かない虚人。これはかなりの脅威だ。
      もしも魔族側についてしまうと、敵側の大きな戦力になる」

( <●><●>)「早急に手を打ちます」

(´・_ゝ・`)「もしかすると、黒頭巾いがいにも居るのかもしれんからな…」


圧倒的な戦力でワカッテマスたちを全滅させかけた、黒頭巾。

他にも同じような存在がいるのかもしれないと思うと、頭が重くなった。


( ^ω^)


しかし、誰もが心中穏やかでないそんなとき、ブーンだけは違うことを考えていた。
  _,、_
( ^ω^)(父ちゃんのギター…どこにいったんだお)

彼の一番の強さは、そのマイペースな所にあるのかもしれない。


第七話「場所」 終


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