- 57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/10(水) 01:00:40.39 ID:c/iPLqWB0
(´・_ゝ・`)「そうそうブーン、ギターの修理に関してなんだがね」
( *^ω^)「いい店が見つかったのかお!?」
(´・_ゝ・`)「評判のいい店があるから、場所を教えよう。
ワカッテマス、送ってあげなさい」
( <●><●>)「へーへーわかりましたよ。でもこんな遅くに行っても大丈夫なんですか?」
(´・_ゝ・`)「大丈夫だ。問題ない。というかその店は夜じゃないとやってないんだ」
( <●><●>)「夜じゃないとやってない店…?楽器屋ですよね?」
(´・_ゝ・`)「ああ。普通のな」
- 59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/10(水) 01:03:14.10 ID:c/iPLqWB0
( ^ω^)音楽が世界を救うようです
第十話「月人」
- 62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/10(水) 01:06:55.99 ID:c/iPLqWB0
車で二時間ほど行ったところに、寂れた楽器屋があった。
近くには山と海しか無い。
時刻はもう遅く、空には月が煌々と張り付いている。
( <●><●>)「ボロい店ね…。でもこんな時間に営業する根性は認めましょう」
( ^ω^)「すんげぇ上から目線。さあ入るお」
二人が入口のドアを開けようとしたそのときだった。
近くの茂みで何かが動いた音がした。
二人は即座に身構えた。
魔族の襲撃ならば最悪、虚人ならもっと最悪。
そこに居たのは、
( ^ω^)「―――あ」
- 63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/10(水) 01:09:41.95 ID:c/iPLqWB0
ξ゚听)ξ
( ^ω^ )
月の光を浴びた色白の女が、ぼうっとそこに佇んでいた。
彼女はブーンを興味深げに観察しているようだった。
( *^ω^)(か、かぁえぇ〜〜〜〜)
( <●><●>)(魔族ではないか…よかった)
- 64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/10(水) 01:11:43.05 ID:c/iPLqWB0
ξ゚听)ξ「ねえ」
( ゚ω゚)「は、はい!」
ξ゚听)ξ「どうしてそんなに大きいの?」
( ゚ω゚)「何がでしょうか!」
ξ゚听)ξ「お腹」
( ^ω^)「お腹?」
ξ゚听)ξ「お腹。ここ」
彼女は自分の腹の部分を指さした。
ブーンはむっとした顔をしている。
_,、_
( ^ω^)「デブだからじゃないの」
ξ゚听)ξ「デブってなに?」
( ;^ω^)「おっおっ????」
- 66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/10(水) 01:16:49.67 ID:c/iPLqWB0
嫌味で言っているようではなさそうだった。
きょとんとする顔すら、整いすぎて人間離れしている。
ξ゚听)ξ「ねえ」
「ツンデレ、お客さんをからかうのはやめなさい」
後ろからしわがれた声が聞こえた。
振り返ると、開いた店の入口から、腰の曲がった老人が顔を出していた。
/ ,' 3「すまねえなお客さん。その子はわしの娘じゃ」
( ^ω^)「いいえ、かまいませんお義父さん」
/ ,' 3「はっはっはよくわからんが殺すぞ若造」
(;<●><●>)「話が悪い方にとんとん拍子で…っ!」
- 67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/10(水) 01:24:37.13 ID:c/iPLqWB0
ξ゚听)ξ「お父さん、近くを散歩してきたいです」
/ ,' 3「この前一緒に歩いたところより、遠くへ行っちゃ駄目じゃぞ」
ξ゚听)ξ「わかったです」
ツンデレと呼ばれた女は、とたとたと小走りで離れていった。
よく見ると彼女は靴を履いておらず、スカートの下からつま先まですらりと素足が伸びている。
( <●><●>)「娘なのに敬語?」
/ ,' 3「礼儀正しいじゃろ?」
( <●><●>)「こんな時間に散歩?」
/ ,' 3「乙なもんじゃろ?」
( <●><●>)「あんた何歳であの子生んだのさ」
/ ,' 3「わしは生涯絶倫じゃ」
ワカッテマスのジト目が老人にからみつく。
老人は涼しい顔で受け流し続けた。
- 69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/10(水) 01:31:25.23 ID:c/iPLqWB0
( ^ω^)「やはりこう、人間の価値というかすばらしさは遺伝するのですねお義父さん。
おっと申し遅れました。わたくしブーンと申します」
/ ,' 3「荒巻じゃクソガキ」
(#^ω^)ビキビキ
( <●><●>)「荒巻さん、今日はギターの修繕の依頼に来たんですよ。
今お店開いてました?」
/ ,' 3「もちろん。ここは夜九時から午前三時までの営業じゃ」
( <●><●>)「調べたところ、昔は違ったらしいじゃないですか。何故です?」
荒巻の顔が険しくなった。
/ ,' 3「お嬢ちゃん、過ぎた口は災いを招くらしいぞ。知っておるか?」
( <●><●>)「そうらしいですね。もうやめましょうか。私も、興味本位ですから」
- 70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/10(水) 01:37:10.15 ID:c/iPLqWB0
二人の間に張り詰めていた緊張の糸が途切れ、穏やかな空気になった。
ブーンは状況についていけていない。
/ ,' 3「拾い子じゃ」
ぼそっと言った荒巻の一言に、ワカッテマスの丸い目がさらに大きく開く。
( <●><●>)「…なんかすみません」
/ ,' 3「いい。邪心からではないじゃろうしな」
初対面の二人だったが、お互いの性格をよく把握できたようで、もう何も隔たりは無かった。
( ^ω^)「…?」
ブーンだけはやはり置いてけぼりだった。
- 73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/10(水) 01:44:09.80 ID:c/iPLqWB0
・
・
・
・
・
部屋の中は天井と通路以外、ほとんどが楽器で埋め尽くされていた。
ギター、ベース、ドラムから、ピアノ、トランペット、EtcEtc…。
こんな辺境の地にあるのがわからないほど品揃えはよかった。
/ ,' 3「元々わしはトーキョーで店を開いておったんじゃが、都会が嫌になってな」
( ^ω^)「だからってこんなド田舎にこなくても…」
/ ,'
3「本当にいい楽器だけを集めたら、それでも買いにくるやつがいた。
そのこともわしは嬉しくてなあ。例えば、おまえの親父とかな」
( ^ω^)「ふーん、ん?」
/ ,' 3「はっはっは」
- 74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/10(水) 01:49:09.00 ID:c/iPLqWB0
( ;゚ω゚)「俺の父ちゃんがここに!?なんでわかるんだお!」
/ ,' 3「だってこのギターわしの店のだし…」
( ;^ω^)「あ、そうか…何一つおかしくねえ!
そうかー父ちゃんがここに…」
/ ,'
3「元気にしてるか?」
( ^ω^)「ううん死んだ」
/ ,' 3「マジか悪いな」
( <●><●>)「かっるぅー」
- 77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/10(水) 01:55:35.16 ID:c/iPLqWB0
/ ,' 3「あいつが大事にしてたギター、こんなにしちまって。
ライブでハッスルしちまったか?」
( ^ω^)「話せば長くなるから話さん」
/ ,' 3「その思い切りはわし好き」
( ^ω^)「娘くれ」
/ ,' 3「死ね」
( <●><●>)「営業時間が夜限定になったのって、あの子が関係してるんですか?」
一瞬の間が空いた。
/ ,' 3「関係ないな」
ワカッテマスには引っかかることがあった。
奇妙なのは、彼女自身それが何かわからなかったことだ。
- 78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/10(水) 01:59:10.84 ID:c/iPLqWB0
・
・
・
・
・
ξ゚听)ξ「あっ、デブ」
外に出ると、波打ち際を走り回るツンがいた。
潮の匂い、月の光、真っ白な少女はやはり現実感が無い。
_,、_
( ^ω^)「ブーンだお!」
( <●><●>)「ワカッテマスよ」
ξ゚听)ξ「初めましてです」
( *^ω^)「初めましてだお」
( <●><●>)「初めまして」
- 79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/10(水) 02:02:16.09 ID:c/iPLqWB0
ξ゚听)ξ「ブーンはどこから来たの?」
( ^ω^)「トーキョーの近くの田舎だお」
ξ゚听)ξ「トーキョーってどんな場所?」
( ^ω^)「お店がいっぱいあって人もいっぱいいて都会で楽しくて興奮するお!」
ξ*゚听)ξ「へー…」
( ^ω^)「トーキョーに行きたいのかお?」
ξ゚听)ξ「…わかんない」
( ^ω^)「おっ?」
ξ゚听)ξ「私、どこに行ったらいいのですか?」
_,、_
(
;^ω^)「て、哲学!!」
( <●><●>)「ねー眠いから早く帰りましょー」
車に寄りかかった姿勢のワカッテマスが、いかにも怠そうな声でブーンに呼びかける。
- 80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/10(水) 02:04:31.51 ID:c/iPLqWB0
( ^ω^)「今行くお!」
ξ゚听)ξ「お」
( ^ω^)「おっ?」
ξ゚听)ξ「お?」
( ^ω^)「おー!」
ξ゚听)ξ「おー」
( *^ω^)「また来るお」
ξ゚听)ξ「うん。いらっしゃって」
名残惜しそうに何度も後ろを振り返ってから、ブーンは車に乗り込んだ。
- 82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/10(水) 02:13:52.75 ID:c/iPLqWB0
( <●><●>)「ギターはどれくらいで直るって?」
( ^ω^)「一ヶ月はかかるらしいお」
( <●><●>)「費用は国が出してくれるらしいわ。よかったわね」
(
*^ω^)「ツンデレちゃん可愛かったお!
今度あの子にラブレター出してみるお」
( <●><●>)(今時ラブレターかよ)
車を運転しながら、ワカッテマスはツンデレのことを考えていた。
月の光を受けて妖しく浮かび上がる、カタコトの少女は、どこから来てどこへ行くのか。
これはブーンが世界を救うお話。
これはブーンがツンを殺すまでのお話。
第十話「月人」 終…
次へ/
戻る