3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 20:00:06.92 ID:2pwpgm0a0

( ´_ゝ`)「なあ弟者、アレはなんだ?」

青年が指さしたのは、中年の女性が連れているペットの犬であった。

(´<_` )「あれは犬だ。犬の中でも、プードルって呼ばれてる種類だよ」

弟者と呼ばれた男がそう返すと、青年は感心しているのか、しきりに頷いた。
二人は同じ顔、同じ体格である。

( ´_ゝ`)「流石は弟者だ。博識だな」

(´<_`; )「常識っていうんだよ」

( ´_ゝ`)「この世界は未知ばかりで楽しいな」

(´<_` )「どうせすぐ飽きるさ」

( ´_ゝ`)「ふうん。じゃあ」


4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 20:02:37.89 ID:2pwpgm0a0


 「兄者ってのは、退屈過ぎて死んじまったのかい?」



 ( ^ω^)音楽が世界を救うようです




 第十一話「人気」



 「……二度と、二度と俺の兄貴の名前を、軽々しく口にするなっ!」



5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 20:04:59.64 ID:2pwpgm0a0

(>、<トソン「見て見て見てこれー!!!」


本部のドアを勢いよく開けて入ってきたトソンは、その場にいた全員の注目を浴びて、
少し我に返ったようだった。

トソンの手には小さな人形が握られている。


( ^ω^)「なにそれ」

(゚、゚トソン「“僕”のストラップだよ!知らないの?トソンファンクラブが設立されてることを!」

( ・∀・)「知らない…知りたくもない」

(゚、゚#トソン「知らないならおせーてやんよ!」


7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 20:09:06.49 ID:2pwpgm0a0


 「 トソンファンクラブ 」


 (@∀@)   <ヽ`∀´>

魔族と闘うロッカーたちの中で最もアイドル的な存在の
トソンちゃんを影ながら応援し時にはやさしく手とか握って
もらっちゃったりして励ましながら励まされようという粋な
団体であり全国を飛び越え世界的に有名になっている
彼らサイコクラックオーバードーズのファンたち(主にトソンの)
に向けてグッズ販売などを精力的に行っている基本的に
彼女がいない人たちの集団。


(゚、゚*トソン「だよ!」

( <●><●>)「上の文章に中身はありません。読まないでください」


8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 20:11:52.15 ID:2pwpgm0a0

( ^ω^)「ていうか俺たちのバンド、そんな名前だったんだ」

( ・∀・)「なー。今思い出したよ」

(゚、゚トソン「僕も…」

( ゚∀゚)「俺も」

(´・_ゝ・`)「自分たちのバンド名くらい覚えなさい。
      どうしても覚えられないなら、改名しても構わんが」

( *^ω^)「いいんですかお!?じゃあプッシーピッグズで!」

(´・_ゝ・`)「広報が困るようなのは駄目だ」

(゚、゚トソン「だったら変えるんじゃなくて、縮めちゃおうよ。サイコ…クラ…」

( <●><●>)「サイコクラッカーズ。どう?」

( ^ω^)「いいおそれで」


10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 20:14:20.15 ID:2pwpgm0a0

( ・∀・)「サイコクラッカーズ…これなら覚えられそうだ。
      ていうかトソンが男って知らない連中ばっかなんだろ?ファンクラブってよ」

(゚、゚トソン「ううん。僕はちゃんと公表してるよ」

( ;・∀・)「マジかよ!連中は全員しり穴好きってことか!?」

( ^ω^)「彼らは男とか女じゃなくて、トソンが好きなんだお」

(^、^トソン「そう!そういうこと!わかってるねーブーンちゃん。キスしてやろうか?」

( ^ω^)「いらん」

( ゚∀゚)「お、俺もプレゼント、もらったことある」

( ;・∀・)「マジかよ!?」


11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 20:16:47.05 ID:2pwpgm0a0

( ゚∀゚)「アヒャヒャヒャ。バイヤーから差し入れを」

( ^ω^)「ああ、そういうのならもらったことあるお」

( ;・∀・)「え……ブーンも?」

( ^ω^)「俺は家に餃子の盛り合わせが届いたお」

(゚、゚トソン「食べ物は怖くない?」

( ^ω^)「美味かった」




   ( ・∀・)「う」

  ( ・∀・ )「嘘だろ…」

 (・∀・ )「マジかよ…」

(∀・  )「俺だけかよ…」


12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 20:18:48.92 ID:2pwpgm0a0


  こんなにイケメンで

         頭脳明晰
 服のセンスも抜群

  動物にも優しい



(  ∀ )「という」


( ;・∀・)「この俺がああああああああああ!!!!!
      ひあああああああああああああああ!!!!!
      何故だあああああああああああ!!!!!」



絶叫するモララーに応えるかのように、部屋にサイレンの音が鳴った。

(´・_ゝ・`)「魔族が出たらしい。出撃だ」


13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 20:20:53.20 ID:2pwpgm0a0

( <●><●>)「さあ行くわよ」

( ^ω^)「すぐ行くお」

(゚、゚トソン「また?今日はこれで三回目だよー」

( ゚∀゚)「アヒャヒャヒャヒャ!ライブが始まる!ライブー!!」


( ・∀・)


(´・_ゝ・`)「モララー。行きなさい」


( ・∀・)「……お、おう」


14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 20:22:31.70 ID:2pwpgm0a0

こんなはずでは無かったのに。
モララーは今までのモテっぷりを思い出しながら、頭を抱えた。


 ・
 ・
 ・
 ・
 ・



( ゚ω゚)「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!〜〜〜〜〜!!」
         ♪

(゚ー゚;トソン「ひゃっほぉー!」  ♪

   ♪

( ゚∀゚)「アヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!!!」


16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 20:25:14.48 ID:2pwpgm0a0

( ;・∀・)(よし!俺のベースは今日も絶好調だ!)



ブーンが叫び、トソンが刻み、アヒャが奏でてモララーが深める。

サイコクラッカーズ。彼らの演奏はまさしく化学反応であった。
街を荒らしていた魔族たちは、為す術もなく彼らの演奏の前に破れた。


( ;^ω^)「ふう。今日の魔族も手強かったお」

(゚、゚;トソン「疲れたわー」

( ゚∀゚)「アヒャヒャヒャヒャヒャ」

( ;・∀・)「へへへ。んだよ情けねえな。これくらいの魔族へでもねえや」


  \トソンちゃーん!!!/


(゚、゚*トソン「あ!僕のファンクラブの人だ!応援ありがとー!」


17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 20:26:50.13 ID:2pwpgm0a0

( ・∀・)「ケッ。アイドル気取りのファッキンビッチが」


 \ブーン!!最近太ったかー!?/


( ゚ω゚)「うっせえ!ほっとけ!!」


 \ぎゃはははははは!!/



( ・∀・)「……」



( ゚∀゚)「アヒャヒャヒャ」


 \アヒャちゃーん!こっち向いてー!/


( ゚∀゚)「アヒャ?」


18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 20:28:28.05 ID:2pwpgm0a0


< トソンちゃーん!!

 (^、^トソン「ありがとー!」


      ( ^ω^)「また来るお!」

      いつもありがとね!>



      ( ・∀・)



  ( ゚∀゚ )「アヒャヒャヒャ!」

 \アヒャー!応援してっぞー!/


19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 20:29:59.49 ID:2pwpgm0a0

( ・∀・)「もしかして」

( ・∀・ )

(・∀・ )「俺って」

(∀・  )

(・   )「あんまり」

(    )

(   ・)「人気が」

(  ・∀)

( ・∀・)「無い?」


22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 20:34:16.69 ID:2pwpgm0a0


 「そん、そんそそそそそそ」


( ;・∀・)「そんなはずがねえ!!だって、俺ってイケメン設定だし!!」


あまりの悲しみに、モララーは膝から崩れ落ちた。

( ;・∀・)「はっ」

そんな彼の前に近寄ってきたのは、メガネをかけたチェック柄のシャツの男。
彼は冷たくモララーに言い放った。

(-@∀@)「…ベースって目立たないんだよ…」ボソッ

( ・∀・)

( ・∀・)「え―――」




  ―――ベースは目立たない――――?




24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 20:38:50.04 ID:2pwpgm0a0

(-@∀@)「トソンちゃーん!こっち向いてー!」

( ;・∀・)「ま、待て!」

(-@∀@)「なんだい。トソンちゃんファンクラブ第一号会員の僕に何か?」

( ;・∀・)「ベースは、ベースは目立たないって、そんなことねえだろ!
      おまえは偉大なベーシスト、シドを知らないのか!?」

(-@∀@)「シドは知ってるよ。麻薬常習者のベーシストだろ?
      でも君はシドじゃない」

( ・∀・)「え…」



(-@∀@)「どこにでもいそうなただのイケメンなんだよ!!!」


なああぁぁあぁぁ( ;・∀・)にいいぃいぃいぃ!!!


27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 20:45:02.80 ID:2pwpgm0a0

(-@∀@)「愛されるキャラクタには何かしらの理由がある。
      タトゥーや自由な姿が憧れと愛嬌を生むアヒャ。
      見た目はごついが優しくていじられやすいブーン。
      ごっつかわええトソンちゃん。
      それに比べて、おまえには何一つ魅力が無いんだよ!!!
      ていうか名前知らん!!!!!!!!!!」



ほおおおおおおおおおあああああああ( ;∀;)ああああああああああああああ!!!!!



         /⌒|___/⌒ヽ 
      ○。 |  .|   ヽ /。/
        <|  .|   |ノ/ /  絶望だああ!!!!!!
   。・    | 丶    ヽ./
         ヽ     ヽ
          \     \  
            \     \  
             /      \
            /   /\  \
           /  /   \  .\
          /  /      \  ヽ
丿⌒ ̄ ̄ ̄⌒   /  ノ⌒ ̄ ̄ ̄   丿
|_つ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄    |_つ


28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 20:47:55.70 ID:2pwpgm0a0

( ;∀;)「お〜ろろろろろろろろろ!!!
      おろろろろろろろろろろ!!!!!」

( ;^ω^)「うわっなんか泣いとる。モララー、本部ヘ帰るお」

( ;∀;)「うるせえ!おまえなんかもう友達じゃねえ!!」

(゚、゚トソン「なに言ってんのさ。ガキじゃあるまいし」

( ;∀;)「うぐぅ、くそおおお!」

( ゚∀゚)「一発打っとくか?」

( ;∀;)「いらんわ!!」


( <●><●>)「なにやってんの。早く帰るわよ」

モララーは車に乗り込んだ後も、ぶつぶつと愚痴を呟いていた。



29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 20:49:40.43 ID:2pwpgm0a0



その夜。



( ・∀・)(確かに俺には魅力が無いのかもしれん)



一人、ベッドの上で悩むモララーの姿があった。



( ・∀・)(調べてみたら、ブーンキーホルダー。アヒャストラップ。トソンに至っては薄い本すら出ていた。
      俺には何もなし。グッズはおろか公式サイトに名前が間違って載ってた…) モルルァ


( ・∀・)「ベースなんて、いらないのか…?」


32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 20:53:51.41 ID:2pwpgm0a0

子供の頃、モララーの周りでロックが流行っていた。


 「俺はギターを練習する!」

    「俺もギター!アコギを極めるぜ!」
  「ドラムがいいな」    「キーボードだろjk」

 「僕はカスタネットちゃん!」  「うんたん!」


( *・v・)「俺、俺、ベースやる!シドになるんだ!」




( ・∀・)「とか言ってたのが懐かしいな…。
      結局俺は、シドにはなれないんだ」

憧れのロックバンド、憧れのライブ、それで世界が救えるのなら言う事なし。
そう思っていたモララーだったが、自らの必要性に疑問を持ち始めたとき、彼の中の何かが切れた。


33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 20:56:06.24 ID:2pwpgm0a0


次の日。



(´・_ゝ・`)「む」


自分のデスクの上に折りたたまれた手紙があり、デミタス長官はめくるめく不倫ライフに瞬時に思いを馳せた。
しかしそれはラブレターではなかった。


(´・_ゝ・`)「くそっ。違ったが。ふむふむ」

(;´・_ゝ・)「……モララー……!」



( <●><●>)「長官。おはようございます。どうされました?」


34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 20:59:20.00 ID:2pwpgm0a0

(´・_ゝ・`)「これを見てくれ」

( <●><●>)「はあ」

デミタスから受け取った手紙を開き、中に書いてある文章を見たとき、ワカッテマスの瞳孔がさらに広がった。

(;<●><●>)「…読めん」

(´・_ゝ・`)「そうなんだ。名前のモララーっていう字はぎりぎり読めるんだが…」

( <●><●>)「これって“む”ですかね?」

(´・_ゝ・`)「わからん。“お”じゃないか?」

解読作業が始まった。
旧字体をさらに崩したような字を書くモララーの手紙は読みづらくて仕方無かった。


そして、全ての解読が終わったとき、ワカッテマスの瞳孔がもう一度開くこととなった。


35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 21:01:38.47 ID:2pwpgm0a0


 「  おれはいらないと思う のだ

     だからおれはいえを出る

   つまり バンドからぬけるってこった

   じゃあな たっしゃでな

   おれはシドヴィシャスにはなれなかった

                モララー     」



(;<●><●>)「タイミングが悪いっていうかいいっていうか!!」

(´・_ゝ・`)「まずいな。これはもの凄くまずい。
     虚人の新事実をもっと早くに教えていればよかった」


39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 21:07:31.16 ID:2pwpgm0a0

(;<●><●>)「捜索隊を総動員してモララーを探します!」

(´・_ゝ・`)「そうしてくれ」


デミタスの寝不足顔が、いつもより険しく歪んでいた。


(´・_ゝ・`)「もしも我々より先に虚人がモララーを見つけたら、彼はおそらく死ぬだろう。
      むろん、魔族でも同じだ」

(;<●><●>)「研究チームからの報告は、本当に確かなものなんですか?
        “神器と虚人は惹かれ合う”っていう理論が確立されたって!!」

(´・_ゝ・`)「モララーが実証してしまうかもしれない。早く探すんだ」

(;<●><●>)「は、はい!!」


別の時空の住人、虚人。
魔のエネルギーを持つ生命体、魔族。
そして人間。


この世界で今、なにが行われようとしているのか、正確にわかっている者は、まだいなかった。


40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 21:10:27.93 ID:2pwpgm0a0

ましてや



( ・∀・)「旅に出よう…アキタにいってアキタ美人と付き合おう…」



これから自分が



爪'ー`)y‐「やったぜ!敵軍の最重要人物がいる!」

(;・(エ)・)「すごい!これはチャンスですよ!本当にやつらを倒せるかも!」

▼;・ェ・▼「しゅ、出世のチャンスだー!」



たった一人で


41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/11(木) 21:13:08.07 ID:2pwpgm0a0




  「見つけた」
       「私のエモノ誰にも渡さない」 「超ラッキー」
   「絶対逃がさない」  ゚д「うふふふ」  「嫌な風ね」
      「殺してやる」  「逃げたら殺す」 「逃げなかったら殺す」




虚人と魔族を相手にするなど、モララーが知っているはずもなかった。




第十一話「人気」 終


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