4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 18:20:59.42 ID:4h/rVIkO0


( ;-∀-)「―――っ」

( ;・∀・)「!」


視界が開けると、そこは元の狭い路地だった。

むせ返るゴミの匂い、死の匂い、緊迫した空間の中にいる自分を再確認する。



(;・(エ)・)「よくも…よくもフォックスさんを…!」

川ワ川「アハー!」「ウフフフフフフフフ!!」「怒ってるの?」「怒ってたの」



( ;・∀・)(やるしかねえなら、やるしかねえか)

唇のピアスを外し、彼の神器、ベースを具現化させた。


5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 18:23:23.17 ID:4h/rVIkO0

 「やだなぁ。死にたくねえなあ」



 ( ^ω^)音楽が世界を救うようです




 第十四話「加速」



 「まだ遺書書いてねえんだよ」


7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 18:29:28.55 ID:4h/rVIkO0

爪; − )

▼;ェ;▼「クマっ、逃げろ……」


フォックスは壁によりかかり、肩で小さく呼吸していた。
もう一歩も動けないらしい。

首に負った傷は深く、上半身は自身の血で染まっていた。

彼の傍に寄り添うようにしているイヌも、致命傷に近い傷を負っている。
自分が逃げるのは諦めていた。


(;・(エ)・)「!モナカ、ベースなんて出してなにする気だよ」

( ・∀・)「さあな。俺にもわからん。おい、どうすりゃいいんだよ俺は」

モララーの頭の中に声が響く。


―――アホか。弾けばいいんだよ。ロッカーだろ?


11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 18:39:29.04 ID:4h/rVIkO0

( ・∀・)「弾くことで発動するってか。
      いいぜ。モララー様のオンステージ、始めてやろうじゃんか」

(;・(エ)・)「万次郎、ベースだけ弾いても意味ない!そもそもあいつは魔族じゃないんだよ!」

( ・∀・)「知ってるさ。まあ見てろって」

(・(エ)・)「マカロニご飯…」

( ;・∀・)「マジで!?モララーだぞ俺!いい加減突っ込むぞ!」


狭い空から注ぐスポットライト、ゴミとガレキのステージに、廃人のオーディエンス。
最底辺の劇場で、モララーのライブが始まった。


川ワ川「うふ」

川ワ;;;;,,,「うふふふふふ」


虚人の体がぐにゃりと歪んだ。
体が消えていく。移動が始まったのだ。


14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 18:41:24.49 ID:4h/rVIkO0

モララーは既に失血死してもおかしくない傷を負っている。

この状態でもう一度攻撃を喰らえば死、紛う事なき死が待っている。


( ;・∀・)(や、やばっ!)


―――俺様の能力は、ダテじゃないぜ


( ;・∀・)「早くしてくれー!!」


―――オーケー。“早く”してやろうじゃないの

( ・∀・)「!」



―――“加速”するぜ


30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 21:25:16.36 ID:ZXFEJBzb0

キィィン―――という耳鳴りが聞こえ、その直後、世界の全てがスロウになった。

空中を舞うほこりの挙動さえ見分けられる。

海の底にいるような感覚、それでいて動きづらくなく、また音も鮮明に聞こえる。


( ・∀・)(これは、何だ?)


―――加速したのさ、テメエの“感覚”がな


自分以外が遅い訳ではなく、自分の動きも遅く感じる。
このときのモララーの思考力と動体視力が、人間の限界を遥かに超えていたからだ。


川ワ川

( ・∀・)(見える!)


31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 21:32:19.44 ID:ZXFEJBzb0

死角から現れた女の一撃を、すれすれで躱した。

いや、“すれすれ”には違いないが、感覚としてはかなりの余裕があった。

今まで捉えることすら出来なかった女の動きが、亀のように鈍く感じる。



―――全細胞の性質を高め超感覚を手にする、<超加速>

( ・∀・)(見える!見える!躱せる!)

―――今のおまえは、“ハルク”より強いぜ


ベースを弾きながら、全方位から迫り来る攻撃を余裕で躱すことができる。
脳天を突き抜けるような細胞の高まりを感じた。

筋肉が引き締まり、細胞が躍動する。
<超加速>、というより、急激な進化を遂げているようだった。


32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 21:37:12.85 ID:ZXFEJBzb0

「なんで躱すのよ」「なんで躱せるのよ」「どうして?」
川д川「逃げないでよ」「コッチオイデ」
「きらきらり」「絶対に逃がさない」「あなたは私の材料」


( ;・∀・)(避けることに専念していれば、攻撃を喰らうことは無い、けど…!)


昂ぶる気持ちとは裏腹に、モララーには心配事があった。

“攻撃方法”が無いのだ。

ベースに神経を集中させなければならない以上、避けるので精一杯。
反撃をしようものなら、演奏が中断し、能力が解除されてしまう。


( ;・∀・)「結局駄目じゃん!時間稼ぎしかできねえ!」

―――アンだとお!?俺様の能力にケチつける気か


33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 21:40:22.81 ID:ZXFEJBzb0

( ;・∀・)「だって!」

―――ベーシストは一人じゃ何もできねえ。そう言いたいのか?

( ;・∀・)「―――っ、俺はただ」

―――ファイナルアンサー?……………正解!!!1000万だ!!!

(#・∀・)「何もできねえのかよ!!」

―――そうだよ?

\( ・∀・ )/


攻撃すればこちらがやられる。
演奏を中断しないのなら、攻撃方法が無い。
そしていずれモララーは失血死する。

打つ手がないように見えた。


35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 21:42:49.84 ID:ZXFEJBzb0

( ;∀;)「おぉ〜いおいおいおい…おぉ〜いおいおいおい…」

―――ベース一人だけいても、何の役にもたたねえよ

( ;∀;)「終わりや…!ワイはベーシストの星になるんや!」

―――でもな



( ・∀・)「―――――――!!!」




(;・(エ)・)「モンテスキュー!!何をしたんだ!ま、周りの動きが遅いんだ!!これなに!?」




―――おまえは一人じゃないんだよ


37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 21:45:28.49 ID:ZXFEJBzb0


「うふふふふふ!!!!!」「うふふふ!!」
川ワ川「うふふふふ!!!!!!!!!!」
「アーッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!!!!!!!!!!」



( ・∀・)「クマーーーー!!!!!!!!!!!!」

(・(エ)・)「!!!」

( ・∀・)「ぶっっっっっっっっっっっっ飛ばしてやれええええええええええ!!!!!!」




ベースだけじゃ演奏にならない。
ベースがいなくちゃ演奏にならない。


―――バンドマンには、何よりも仲間が必要なんだ


38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 21:48:17.85 ID:ZXFEJBzb0


(`・(エ)・´)「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」



川ワ川「ウーフーフフフフフフフフフフフフフフゥーーーー!!!!!!」



(#・∀・)「いけええええええええええええええええええ!!!!!」




―――全細胞の性質特化、<超加速>。ソウルで繋がった者のみに、効果が現れる


―――な、ダテじゃないだろ?


40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 21:51:45.58 ID:ZXFEJBzb0

時空が歪み、虚人が出てくる瞬間を見極め、クマが走った。

体に当たる風、体毛をそよがせる空気の流れ、その一つ一つが如実にわかる。


川д川「え?」


(`・(エ)・´)


振り上げた拳は、キングフォックスの為に、親友の為に。

それから、頭の悪いファッキンベーシストの為に。


クマの一撃は見事虚人を捉え、彼女の小さな体は地面をバウンドし、コンクリートの壁にぶつかった。


42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 21:56:27.55 ID:ZXFEJBzb0

川゚X川「ぶ」「ぶぼぉ」「ぶっ」


彼女の手足は、脱力した操り人形のようにそれぞれあさっての方向を向いていた。


川゚X川


川゚X;;;; ; ;; ;; ;


(;・(エ)・)「!消え…」

間もなく彼女の顔辺りから空間が歪み始め、彼女はゆっくりと消えていった。
まだ襲ってくるのかと思いクマは身構えたが、もう女の気配はどこにも感じなかった。

最後に消えたのは、どこかに移動したというより、その場で存在が消滅したようであった。


45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 21:59:33.98 ID:ZXFEJBzb0

 「く、クマ」

(・(エ)・)「?」

爪;'ー`)「よ、く、や、た」

(・(エ)・)「フォックス様!」

虫の息であったフォックスだったが、いつの間にか傷は治りつつあった。
しかし首に受けた傷は、やはりまだ相当痛むようだ。

▼;・ェ・▼「やったね。死ぬかと思った」

(・(エ)・)「サーモンを捕る要領で叩いたら、何とか勝ったよ。サーモンクラッシュって名付けたよ」

▼;・ェ・▼「うん、それは別にいいんだけど…」


46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 22:03:32.70 ID:ZXFEJBzb0

爪;'ー`)「に、人間に、助けられちまった、な」

(・(エ)・)「フォックス様、喋らないで!」

▼・ェ・▼「あれ、そういえばモラトリアムは…?」


先ほどまで激しくベースを弾いていた彼の姿が見あたらなかった。


(;・(エ)・)「―――あ」


(  ∀ )


唯一動けるクマが近くを探すと、ゴミに埋もれるように倒れているモララーの姿を見つけた。

右肩から流れる血でゴミが赤く染まっている。
利き腕でベースを弾き続けたせいで、出血が早まったのだ。


49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 22:09:41.78 ID:ZXFEJBzb0

(;・(エ)・)「モンテスキュー!」

▼・ェ・▼「文字ぴったんがどうかした?」

(;・(エ)・)「モバイルが血を流して倒れてる!あいつに受けた傷だ」

▼;・ェ・▼「…フォックス様」

爪'ー`)y‐「―――そうだな、俺は魔族のプリンスだ。
      だったらやるべき事は一つ、わかるだろ?」

(・(エ)・)「フォックス様…」

▼・ェ・▼「……」




(  ∀ )




50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 22:10:28.77 ID:ZXFEJBzb0

 ・
 ・
 ・
 ・
 ・



―――モララー


(  ∀ )


―――モララー


(  ∀ )「なんだよ」


51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 22:12:52.35 ID:ZXFEJBzb0

―――力が欲しいか


(  ∀ )「…ああ、欲しい」


―――マジで?


(  ∀ )「あ、ああ。マジで欲しい」


―――じゃあ例えば堀北真希クラスのセフレ100人と力、どちらが欲しいお?


(  ∀ )「え!?そ、それは、堀北真希で…」


―――よろしい。正直に答えた君に、金の堀北真希を授けましょう


53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 22:14:50.58 ID:ZXFEJBzb0




( ;・∀・)「いらねええええええええええ!!!!!」





( ^ω^)      (゚∀゚ )アヒャ

   ( ・∀・)    (゚、゚トソン

( <●><●>)


( ・∀・)「あ?」

( ^ω^)「やっべ。起きちゃった」

(゚、゚トソン「面白かったのになー。“眠れる力覚醒ごっこ”」

( ・∀・)「え?はい?ここは…?」


54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 22:18:10.06 ID:ZXFEJBzb0

無機質な白い部屋に、白いベッド。
点滴に繋がれた自分の体を見て、ようやく病院なのだとわかった。


( <●><●>)「危なかったわね。もうすぐで呼吸困難起こして死ぬところだったわ」

( ・∀・)「そうか…助かったのか」

(゚、゚トソン「ねえ、全然覚えてないの?」

( ・∀・)「いや、覚えてる、はずだ。どうしてここにいるのかは、わからないが」

( ^ω^)「毛むくじゃらのクマ男が運んでくれたらしいお」

( ;・∀・)「クマ!?それって、もしかしてクマみたいなやつか!?」

( ^ω^)「うんだから言ったじゃん今」


56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 22:22:16.76 ID:ZXFEJBzb0


( ・∀・)「そうか、クマが」



   ――貸しは返すのが、上流貴族ってもんだ。なあ?モントリオール国際芸術祭



( ・∀・)「へへ――」




(#・∀・)「モララーだ馬鹿やろーーー!!!!」

( ;^ω^)「うわ!まだ意識が混乱してるお!」

( <●><●>)「モルヒネ持ってきてモルヒネ」

(-ε-トソン「プリチートソンちゃんの目覚めのキッスはいかが?」

( ゚∀゚)「よし、打っとくか?」


58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 22:26:53.57 ID:ZXFEJBzb0

騒がしい病室が、妙に懐かしくて、まるで昔の友人と会っているかのように気分は高揚していた。


(  ∀ )「へへへ」


( ・∀・)「やっぱ最高だぜ、ロックってのは」


ベースはいらない?
ベースは地味?



( ^ω^) ( <●><●>) (゚、゚トソン ( ゚∀゚ )アヒャ


例え人気があろうが無かろうが、関係無い。
仲間がいる限り、仲間が聞いてくれる限り、弾き続ける。

それがサイコクラッカーズの大黒柱、

( ・∀・)「アナーキーモララー様だぜ」


61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/15(月) 22:31:44.57 ID:ZXFEJBzb0

 次の日。


         ブーンよくやったぜー!>
( ^ω^)「また応援頼むお」


         ( ・∀・ )


(゚、゚*トソン「あとで握手会するわよー!」

< やったぜー!


             ( ゚∀゚)
 
      \アヒャちゃーん!写真撮らせてー!!/




( ;∀;)「おお……おぉ…!!!」

             なにあの人泣いてる怖い…>

人気はやっぱり欲しかった。

第十四話「加速」 終

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