2 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:03:46.83 ID:eINc4JpO0

 − 第六章 おばけと私と赤い夢 −

 〜 第一話 〜


こんにちわ、都村トソンです。

新生活もはや一月。初めての連続だった事柄がだいぶ日常に定着してきました。
すっかり新緑に覆われた並木道を、私はデレと大学へ向かい歩いています。

ζ(゚ー゚*ζ 「いい風だね〜」

(゚、゚トソン 「薫風、風薫るの五月ですしね。初夏の過ごしやすい頃合です」

ζ(゚ー゚*ζ 「そーだねー。でも……」

ζ(´へ`*ζ 「もうしばらくしたら、暑くなりそうだよねー」

確かにそうですね。過ごしやすいのはここしばらくだけでしょうね。
6月になれば梅雨の湿度の高い気候に、それを過ぎれば、日差しのきつい汗ばむ気候に。


4 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:04:34.55 ID:eINc4JpO0

そう考えると、少々憂鬱になりますね。暑い季節はあまり得意ではありませんので。

ζ(゚ー゚*ζ 「てことでさ、トソンちゃん、免許取ったりしないの?」

(゚、゚トソン 「何故そういう話になるのでしょう?」

ζ(゚ー゚*ζ 「いや、だってさー……」

通学が、坂が、と、デレ。まあ、確かに。暑い中、坂を登っての通学は大変そうです。
ですが、それと私が免許を取ることに直結するわけではないのですが。

ζ(゚ー゚;ζ 「え、だって、私が車とか運転できると思う?」

(゚、゚トソン 「出来ないから免許を取りに自動車学校へ行くのですが……」

とは言え、自動車学校へ行ったとしても、デレに運転免許は厳しい気がします。
道に迷う、鈍い等、様々な要因はありますが、万が一デレが免許を取れたとしても、
隣には乗りたくないというのが本音ですね。


5 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:04:59.15 ID:eINc4JpO0

(-、-トソン 「でもまあ、デレに関しては、取らない方が賢明かもしれませんね……」

ζ(゚ー゚*ζ 「でしょ?」

嬉しそうにいうデレですが、聞き様によっては馬鹿にしてるような台詞だったんですけどね、私の発言は。

(゚、゚トソン 「それは私にも言えるんですけどね。正直、向いていないと思います」

性格的には向いてそうだけどねー、とデレは言いますが、その辺はどうなんでしょうね。
あれば便利なのでしょうが、性格の事を言うなら、ないならないで何とかなってしまうだろうと思う性格ですからね。

でも、車があれば、ブーンを連れて色々なところへ行けますね。それは魅力的なことです。

そうそう、出かけるといえば──

(゚、゚トソン 「デレはツンちゃんとどこかへ出かけたりはしないのですか?」

ζ(゚ー゚;ζ 「しないねー」


6 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:05:26.91 ID:eINc4JpO0

(゚、゚トソン 「それは何故?」

ζ(´д`*ζ 「ツンちゃん、意外とでぶしょー」

そうなのですか。それは確かに意外かも知れません。もともと、旅をしていたらしいのに。
それとも、旅をしていたからこそなのでしょうか?

(゚、゚トソン 「それはちょっと計算外でしたね」

ζ(゚ー゚*ζ 「ん? 何かあったの?」

(゚、゚トソン 「いえ、先ほどの話とも少し繋がるのですが、出かけるには今はいい気候ですし、ブーンと
      いっしょに動物園に行こうと思っていたのですが」

相変わらず、ブーンは動物が大好きです。いつも楽しそうに動物図鑑を眺めています。
だから、一度は動物園に連れて行ってあげたいな、と私が思うのは自然なことでしょう。
折角だから、ツンちゃんもいっしょにどうかな、と考えていたんですけどね。

ζ(゚ー゚*ζ 「そういうことかー。うーん、でも、それなら来てくれるんじゃないかな?」

ブーンちゃんが頼めば、と、デレは言います。


7 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:06:04.01 ID:eINc4JpO0

(゚、゚トソン 「ブーンが頼めば……ですか?」

ζ(^ー^*ζ 「そうそう。なんだかんだ言ってるけど、ツンちゃんブーンちゃんには優しいからねー」

そう言われてみると、確かにそうかもしれませんね。ブーンを散々けなすは引っ叩くわするツンちゃんですが、
最終的には、ブーンの言い分を聞いてくれてますしね。いいお姉ちゃんといった感じで。

(゚、゚トソン 「そうですか、では、3人で行く計画を立てても大丈夫ですかね?」

ζ(゚ー゚*ζ 「いーんじゃないかなー? 3人で……3人で?」

ζ(゚ー゚;ζ 「ブーンちゃんと、ツンちゃんと……」

私ですね、と、私は言葉を引き継ぎました。

ζ(;д;*ζ 「私はー?」

(゚、゚トソン 「冗談ですよ。別に定員を設ける必要はないでしょう」

先ほどの話ではないですが、車ではないんですし。
それに、どうせこんな話をしたら、絡んできそうなアホに心当たりはありますしね。


8 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:07:30.28 ID:eINc4JpO0

ミセ*゚∀゚)リノシ 「おはろー」

噂をすればアホが差す。ミセリが相変わらずのお気楽な調子で私達に合流しました。

ミセ*゚ー゚)リ 「何のお話?」

(゚、゚トソン 「ミセリが免許を取れば、私達の通学も楽になるんですが、というお話です」

ζ(゚ー゚;ζ 「そうだっけ?」

ミセ*゚д゚)リ 「あー、免許かー。うーん……欲しいんだけどねー」

そういうと、意外にミセリは真面目な反応を見せました。

(゚、゚トソン 「車に興味があったのですか? 意外ですね」

ミセ*゚ー゚)リ 「うん、レースゲームとか好きだしね」

ζ(´д`*ζ 「私は苦手だなー、ああいうゲーム」


9 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:08:43.55 ID:eINc4JpO0

ミセ*゚ー゚)リ 「やってみると面白いんだけどねー。まあ、向き不向きもあるよ」

ゲームですか。生憎、私はその辺には疎いので、何とも言えません。
多分やれば、デレと似たような感想になりそうですが。

ミセ*゚д゚)リ 「最近のは絵とかすごいんだって。私もクレイジータクシーとかデストラクションダービーとか
       スリルドライブとかみたいに運転──」

     ドゴォォォ!  ゲボラッ!!!
/ ゚、。 /┌┛#)д゚)リ.・。 ’

(゚、゚トソン 「おはようございます、ダイオード先輩」

ζ(゚ー゚*ζ 「おはよーございまーす。あれ、お1人ですか?」

/ ゚、。 / 「おはよう……学食……待ち合わせ」

珍しくお一人のダイオード先輩。ヘリカル先輩とは学食で待ち合わせらしいです。
1コマ目の授業はないので、学食で朝食を取りながら駄弁る予定との事。


10 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:09:08.62 ID:eINc4JpO0

ミセ*;д;)リ 「だから、何で挨拶がハイキックなんですか?」

そういえば、ヘリカル先輩の指示がなくても蹴るんですね、ダイオード先輩。

/ ゚、。 / 「今のは……お前達……スルーしたから……」

何のことだかさっぱりわかりませんが、ダイオード先輩のお陰で事無きを得たのかもしれません。
ダイオード先輩は、それじゃあ、と去っていかれました。

私達はダイオード先輩に感謝しつつ、ミセリを置いて学校へ向かいました。

ミセ;゚д゚)リ 「マジで置いて行こうとすんなよ!!!」


 〜 第一話 おしまい 〜

    − つづく −   


11 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:10:53.85 ID:eINc4JpO0

 〜 第二話 〜


1コマ、2コマとさほど問題もなく授業は終わりました。
問題が0ではないのは、あまり興味の持てない教養科目の必修授業だったからですね。

2コマと3コマが授業の場合、必然的に休憩時間が学食の混む時間にしか取れないので、こういう日は
購買で買って、外の芝生で昼食というのが、私達のお決まりのパターンになっています。

川д川 「はあ……」

ミセ*´д`)リ 「教養4コマの日はだるすぎるぅぅぅぅぅ……」

否定はしませんが、まだ半分しか終わってません。午後からはさらに眠気との戦いもありますし、もっと
厳しいものになるというのに。

ζ(゚ー゚*ζ 「貞ちゃん、どっか具合でも悪い?」

デレが、心配そうに貞子さんに声をかけます。
講義室からここまで言葉がなかったのは、貞子さんを観察していたからでしょうか?


12 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:11:29.39 ID:eINc4JpO0

デレは人の顔色を見る、そういうと悪いイメージがありますが、その人の調子や体調を非常に敏感に感じ取ります。
高校時代、無表情で鉄面皮と称された私の感情ですら、大まかなところは理解できているようです。

逆に私は、他人の感情等、気付くのが相当鈍いらしいので、こういう時は無条件にデレの見解を信じることにしています。

川д;川 「え、いや、別に、元気、だよ?」

相変わらず、表情の読み取りにくい貞子さんですが、さすがにこれはわかります。

ミセ*゚ー゚)リ 「元気か、そうか元気ならばあれだな、悩みだな? 身体は元気、心は病気ってやつだね?」

悩みですか……。人は誰しも悩みを抱えているものです。
それは自然なことなのですから。できるならば、その解決のお力になりたいところですね。
私達は、友達なのですから。

川д;川 「え、あ、本当に大丈夫だから、心配しないで」

ζ(゚ー゚*ζ 「そう? 何かあったらいつでも言ってね?」

珍しくデレがあっさりと引き下がりました。いつもなら、しつこい位絡んで、実際に体ごと絡んできますが、
どうしたんでしょう?


13 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:11:54.43 ID:eINc4JpO0

不思議に思ってデレを見る私に、デレは無言で微笑みました。
多分、後で、という意味なのでしょう。

・・・・
・・・

\ミセ*´д`)リ/ 「やっとオワタぁぁぁぁぁー」

\ζ(´д`*ζ/ 「以下同文〜」

(゚、゚トソン 「……」

\ミセ*´д`)リ/「「……」」\ζ(´д`*ζ/

(゚、゚トソン 「……真似しませんよ?」

ミセ*゚ぺ)リ「「ノリ悪!」」ζ(゚ぺ*ζ

何故、時にこの2人はこうも息が合うのでしょう。少々せっかち気味のミセリと、どう見てもおっとりなデレ。
人間、多少は凹凸があった方がいいんでしょうかね。互いに引っかかって。

そういえば、ツンちゃんとブーンもそんな感じですね。


14 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:13:56.17 ID:eINc4JpO0

川д川 「……」

やはり随分とお疲れのようですね。貞子さんは何やら呆っとされています。

ζ(゚ー゚*ζ 「さて、帰ろっか、貞ちゃん?」

川д川 「……え、あ、はい、そうだね、帰りましょう」

私たちは揃って講義室を後にし、帰路へつきました。

・・・・
・・・


私達は3人連れ立って商店街を歩いています。
貞子さんの家は私達とは方向が違うので、学校を出て程なく別れました。
体調が悪そうだったので、送りましょうかという申し出は固辞されました。

ζ(゚ー゚*ζ 「どうしたの?」

(゚、゚トソン 「……いえ、結局まだ1度も貞子さんの家にお邪魔することは叶ってないなと」


15 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:14:28.89 ID:eINc4JpO0

あれから、何度かは貞子さんの家にお伺いしようと思ってはいたのですが、その都度、何かしらの
理由をつられけて、やんわりとお断りされています。

ミセ*゚ー゚)リ 「トソンに来て欲しくないんじゃない?www」

(゚、゚トソン 「……」

ζ(゚ー゚;ζ 「ちょっと、ミセリちゃん、トソンちゃんそういうの気にするから……」

その可能性は考えなかったわけではありません。
私は、対人関係での空気を読む技術に関してあまり自信がありませんので。

ミセ*゚ー゚)リ 「まあ、冗談だけどね。私も断られてるし」

それはあまり慰めにはなりません。

ζ(゚ー゚*ζ 「そだね、私もだよ」

デレもですか。だとしたら、家に上げたくない理由が何かしらおありなのでしょうか?


16 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:15:34.15 ID:eINc4JpO0

ミセ*゚ー゚)リ 「極度の潔癖症とか?」

有り得ない話ではありませんが、学校での貞子さんはそんな様子は見られませんね。

(゚、゚トソン 「……と言いますか、何故ミセリがいるんですか?」

ミセ;゚д゚)リ 「え、いちゃダメなの?」

(゚、゚トソン 「あなたの家はこちらではないでしょう?」

ミセ*゚ー゚)リ 「いやー、ちょっちブーンちゃんをもふもふしに行きたいなーって」

ついでに晩ご飯、などとミセリは言いやがります。
不本意ながら、ブーンもミセリは気に入ってますので、来る分には構わないんですが。

(゚、゚トソン 「……買い物して帰りますので」

ミセ*゚ー゚)リゞ 「荷物持ち1号了解!」

ζ(゚ー゚*ζゞ 「2号りょーうかーい!」


17 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:16:04.65 ID:eINc4JpO0

(゚、゚トソン 「……デレ?」

ζ(゚ー゚;ζ 「いやー、トソンちゃんのご飯美味しいしねー」

全く……、仕方ないですね。
私は、今日の献立を頭の中で組み立てながらスーパーに向かって歩き出しました。

・・・・
・・・

ミセ*゚人゚)リ 「ごちそーさまでした」

( ^人^) 「さまでしたお」

さして華もない普通の料理でしたが、一応は皆の胃袋を満足させるには至った模様です。
もう、座る位置まで決まってしまった5人での晩ご飯が終わりました。

(゚、゚トソン 「お粗末さまでした」


18 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:16:17.86 ID:eINc4JpO0

ζ(゚ー゚*ζ 「片付けは私がやるね」

ξ゚听)ξ 「じゃあ、アタシも──」

(゚、゚トソン 「あ、ツンちゃんはちょっと相談があるので──ブーン、頼めますか?」

( ^ω^) 「はーいだお」

ξ゚听)ξ 「ブーン、頼むわね。……相談?」

相談というのは貞子さんのことです。なにやら調子が悪そうな件。それと、家に上げたくない節が見られる件です。

ξ--)ξ 「うーん……、それだけだと何とも言えないわね。会った事もないし」

ミセ*゚ー゚)リ 「てか、まずツンちゃんに相談してるのがおかしくない?」

仕方ないじゃないですか。私の中の相談相手ランキングでは1位は貞子さんなんで、まさか本人に相談するわけには
いかないですから。2位に相談するのは必然の流れでしょう。


19 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:16:44.77 ID:eINc4JpO0

ミセ;゚ー゚)リ 「一応聞くけど、私は?」

(゚、゚トソン 「そりゃもちろん選択肢にすら入ってませんよ」

ミセ*;ー;)リ 「ヒドっ!」

ξ゚听)ξ 「それっていつぐらいからなの? それがわかれば少しは原因も絞れるんじゃない?」

なるほど、確かにそうですね。しかし、いつぐらいからでしょうか? 少なくとも、ここ数日はそんな感じでしたが。
そういえば、最初に貞子さんの家に行くのをお断りされたのはいつでしたっけ?

ζ(゚ー゚*ζ 「多分、あの後ぐらいじゃないかな?」

片付けが終わったらしく、デレがキッチンから戻ってきます。
狭い部屋ですのでこちらの話は聞こえていたのでしょう。水道の音で多少は聞き取りづらいですが。

(゚、゚トソン 「あの後とは?」

ζ(゚ー゚*ζ 「新歓コンパ」

(゚、゚;トソン 「そんなに前ですか?」


21 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:17:35.71 ID:eINc4JpO0

ええ、気付いてませんでしたね。言い訳をさせてもらえるなら、あの頃はちょっと浮かれてた感もありますから。
ブーンの事、私の事、色々と思う所がありましたので。

ζ(゚ー゚*ζ 「私達先に帰っちゃったからさ、あの後何かあった?」

私達の視線がミセリに集まります。その場にいたのはミセリしかいないのですから、それも当然でしょう。

ミセ*゚ー゚)リ 「……なんでこっち見んの? ──って、そっか、私しかいなかったねwww」

自分で気付けて幸いです。ともあれ、その辺りの事をミセリに話すよう促します。

ミセ;゚ー゚)リ 「と言ってもなー……、特には何もなくて」

何人かは上級生の方が貞子さんやミセリに話しかけては来たらしいですが、専ら、ミセリが相手をして、貞子さんは
あまり話さなかったとの事です。

ミセ*゚ぺ)リ 「2次会とかにも行かなかったしね」

( ^ω^) 「……」


23 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:18:11.60 ID:eINc4JpO0

ブーンは退屈そうですね。まあ、それも仕方ないでしょうけど。話の意味も、貞子さんのこともわからないはずですから。

(゚、゚トソン 「ブーン? テレビ、好きな番組にしていいですよ?」

(;^ω^) 「お? 聞いてたらじゃまかお?」

(゚、゚トソン 「邪魔ではないですが、聞いてても面白くないでしょう?」

( ^ω^) 「うん、よくわからんお。でも、トソンたちが困ってるなら、僕もいっしょに考えたいお」

(〃^ω^(ζ(>ー<*ζ 「ブーンちゃんはいい子だねー!」

ミセ*>ー<)リ)^ω^〃) 「うちに嫁に来い!」

(-、-トソン 「デレ、ミセリ、……離れなさい」

ミセ*゚д゚)リ「「はーい、お母さん」」ζ(゚д゚*ζ

ξ゚听)ξ 「話を戻しても?」

(゚、゚トソン 「ええ、すみません」


25 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:18:43.91 ID:eINc4JpO0

1人真面目に考えてくれているツンちゃん。いえ、私も考えてはいるんですけどね。

ξ゚听)ξ 「帰りはどうしたの?」

ミセ*゚ー゚)リ 「現地解散。確か貞ちゃんは歩いて帰ってたような……」

(゚、゚トソン 「お1人でですか?」

ミセ*゚ー゚)リ 「そだね、方向違うし。私はちょっとヘリカル先輩達と話してたしね」

一応総代として、とミセリは言いました。
1人でですか……あまり考えたくないですが、夜道の女性の1人歩きは……。
ミセリも自分の責務があったわけですし、その事を責められませんが、あの時、相応に酔っていた
貞子さんを1人で帰したのはまずかったのかも知れません。

ξ゚听)ξ 「……」

考え過ぎかも知れないとは思いますが、ツンちゃんも何も言わないところを見ると、
似たような結論にたどり着いたのでしょうか?


26 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:18:57.85 ID:eINc4JpO0

( ^ω^) 「ねー、トソン?」

(゚、゚トソン 「なんですか、ブーン?」

重くなりかけた場の空気の中、いつもと変わらぬ朗らかな口調でブーンが言います。

( ^ω^) 「さだこって、おともだちかお?」

(゚、゚トソン 「ええ、お友達ですよ」

( ^ω^) 「だったら、さだこにお話聞けばいいお」

(゚、゚トソン 「……それが出来ないから──」

ξ゚听)ξ 「まあ、結局それしかないでしょうね」

私がブーンに告げるよりも早く、ツンちゃんが口を挟みました。驚いて、ツンちゃんを見ると、
あごでブーンの方を見るよう促しました。


27 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:19:15.37 ID:eINc4JpO0

( ^ω^) 「おともだちだお。おともだちならお話してくれるお。お話してくれないおともだちはいないお」

(゚、゚トソン 「……そんなに簡単なお話では」

ミセ*゚ー゚)リ 「私もブーンちゃんに賛成かな」

(゚、゚トソン 「ミセリ、貞子さんが話してくれるとお思いですか?」

ミセ*゚ー゚)リ 「思わないねー」

ζ(゚ー゚*ζ 「遠慮しちゃうよね」

そう、それ、と、指をぱちんと鳴らしてミセリが言葉を引き継ぎます。

ミセ*゚ー゚)リ 「貞ちゃんさ、あんま自分から言い出すの苦手じゃん。それに、普段から私達にも気を使ってる」

(゚、゚トソン 「私も気は使ってますが」

ミセ;゚ぺ)リ 「トソンは遠慮しないでしょーが」

ζ(゚ー゚;ζ 「容赦なく言うもんねー……」


28 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:19:42.26 ID:eINc4JpO0

はいはい、そうですね、私は遠慮会釈もないですよ。
でも、気を使ってることは理解してくれてるんですね……と、思っていたら、ツンちゃんが、
トソンの場合は、気を使うというより目を光らせてる感じよね、だそうです。管理に近いと。

私は委員長気質でもないんですけどね。

ミセ;゚ー゚)リ 「てか、あんたが話逸らしてどうすんのよ」

ですね。失礼致しました。
私は改めて、ブーンに話の続きをお願いしました。

( ^ω^) 「言えないなら、聞いてあげればいいお。いっしょにいて、お話しするお」

ξ゚听)ξ 「友達だから言えないなら、友達だからこそ聞いてあげなさいよ」

(゚、゚トソン 「友達だからこそ、ですか……」

つまりは、多少、強引でもいいから何とかしろって事ですかね。
ただ、お節介だとは思われないでしょうかね。


29 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:20:05.00 ID:eINc4JpO0

ζ(゚ー゚*ζ 「思われてもいいんじゃないかな? 貞ちゃんがどこかおかしいのは確かだし、
       心配なのは私達全員の本音でしょ?」

(゚、゚トソン 「……そうですね、私は貞子さんが心配です。そしてそれをどうにかしたい。それでいいですね」

(〃^ω^) 「お! そうだお。それでいいお!」

ブーンが満面の笑みで嬉しそうに言います。話の流れとか、あまりわかっていないはずなのに、いや、
わかっていないからこそでしょうか、自分が大切に思うことをまっすぐに表してくれました。

(゚、゚トソン 「ですが、問題がないわけでもありません」

ζ(゚ー゚*ζ 「何かな?」

(゚、゚トソン 「私は、そういった、“強引な”事の運びは苦手ですよ?」

ミセ;゚д゚)リξ;゚听)ξ「「「え!?」」」ζ(゚д゚;ζ( ^ω^)?

(゚、゚;トソン 「……え?」


30 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:20:37.51 ID:eINc4JpO0

……おかしいですね? 私は普段からあまり自分の意見を通さず、控えめに裏方に徹して来てたはずですが、
なんでしょうね、この3人の反応は?

(゚、゚;トソン 「その反応は若干どころか引っかかりますが、こういうのはミセリの役目では?」

ミセ;゚ー゚)リ 「まあ、それはそうかもなんだけど、私だと、その強引に行った後がねー……」

ぶっちゃけ、聞きだす方が無理なんじゃないかと、意外と自己分析が出来ているミセリの言葉。

ζ(-、-*ζ 「出来れば、1人で話聞いてあげる方がいいだろうしねー……」

私もそこは同意権です。差し向かいの方が話しやすい気がします。
まあ、ブーンぐらいなら連れていっても問題ない気はしますが。

(゚、゚トソン 「わかりました。何とかしてみます。多少強引にでも貞子さんの家に行きましょう」

ξ;゚听)ξ 「強引つっても限度があるからね?」

(゚、゚;トソン 「何故そこにこだわられるのか、はなはだ疑問ですが、そんなに無茶はしませんよ」


31 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:21:14.37 ID:eINc4JpO0

(〃^ω^) 「お! トソン、がんばってお!」

(゚、゚トソン 「何を言ってるんですか、ブーン? あなたにもがんばってもらいますよ?」

(;^ω^) 「お?」

ミセ*゚ー゚)リ 「どーすんの?」

(゚、゚トソン 「取り敢えずは……」

ζ(゚ー゚*ζ 「とりあえずは?」

(゚ー゚トソン 「尾行(つけ)ますか」

(;^ω^) 「おー?」


 〜 第二話 おしまい 〜

    − つづく −   


33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/10(月) 21:24:40.33 ID:eINc4JpO0

 〜 第三話 〜


(゚、゚トソン 「では、行きますか」

( ^ω^) 「お!」

大学の授業が終わり、私は、ツンちゃんにブーンを連れてきてもらって、途中で合流しました。
私は用事があるので先に帰るということにし、貞子さんの方は、
ミセリとデレに多少引き止めてもらった後に尾行してもらっています。

どうせなら、尾行もツンちゃんの方がよかったのですが、致し方ありません。
私達は違う授業はあれど、コマ数は皆同じなのですから、ブーンを連れてきてくれる人がツンちゃんしかいませんし。

ξ゚听)ξ 「んじゃ、アタシは帰るわね」

(゚、゚トソン 「ええ、ありがとうございます」

ツンちゃんはまっすぐ帰られるのでしょうか?
デレから聞いた、ツンちゃんは出不精という言葉が、少し頭をよぎりました。

(-、-トソン 「……でも、今は貞子さんですね」


34 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:25:04.78 ID:eINc4JpO0

・・・・
・・・

ζ(゚ー゚*ζ 「こっちこっち」

私は、デレ達とメールで連絡を取り合い、合流しました。
その場所まで行くと、デレが小声でこちらを呼びながら手を振っています。

川д川 「……」

(゚、゚トソン 「見つかってはいませんか?」

ミセ*゚ー゚)リ 「大丈夫みたいだねー。貞ちゃんが調子悪いのが幸いしたかも」

そこは一応、計算に入れていました。今の呆っとされている貞子さんなら、気付かない公算が大きいと。

(゚、゚トソン 「では、ここからは私とブーンで」

ζ(゚ー゚*ζ 「2人だけで大丈夫?」

( ^ω^) 「お! 大丈夫だお」


35 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:25:42.65 ID:eINc4JpO0

何をするか教えていないのに、随分と自信がありますね、ブーン。
まあ、ブーンはそれでいいのですけどね。特に何もしてもらいませんし。
ただいてくれて、いつものような明るさで話してくれればいいのですから。

ミセ*゚ー゚)リ 「よーし、んじゃーブーンちゃんに任せた!」

( ^ω^) 「お! まかされたお!」

(゚、゚トソン 「と言いますか、ミセリもブーンも声が大きいですよ?」

(;^ω^) 「お、ごめんお。そうだったおね、こっそりついていくんだったおね」

ブーンにも一応は尾行の説明をしています。
貞子さんがブーンを見えないんだったらあんまり意味はないんですけどね。

貞子さんは単純という感じではないので、見えない可能性も少なくはありませんし。

ζ(゚ー゚*ζ 「そんじゃ、私達は私の部屋にいるからね、何かあったらメール頂戴ね」

(゚、゚トソン 「ええ、それでは」


36 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:26:27.78 ID:eINc4JpO0

・・・・
・・・

川д川 テクテク

(゚、゚トソン 「……」

( ^ω^) 「……」

貞子さんはこちらに気付く様子もなく、一定のペースで歩いています。
私には尾行の経験はありませんが、この感じならバレなくて済みそうですかね。

とは言え、バレてもしらばっくれる予定ですが。
特に隠れて尾行してるわけでもないので、単に気付かなかったフリで偶然を装います。

ブーンが貞子さんのそばまで行って尾行というか、いっしょに行ってもらうという手もあったのですが、
もし貞子さんがブーンを見えた場合、少々まずい点があります。

(゚、゚トソン 「……」

─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─(回想)


37 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:26:43.57 ID:eINc4JpO0

(゚、゚トソン 「貞子さんは、何と言いますか、こう、不思議なものとか信じられる方ですか?」

川д川 「え……」

(゚、゚トソン 「あ、いや、大した話ではないのですが、一般論的にそういったものは──」

川д;川 「そ、それはオカルト的な、とかですか?」

(゚、゚トソン 「え、あー、えっと、オカルトとも言えなくはないですが、どちらかと言えばファンタジー的な──」

川д;川 「それは、妖怪変化やおばけといった……」

(゚、゚;トソン 「うーん、平たく言えばそんな感じに近いような──」

川д;川 「駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目です、無理です無理!!!」

(゚д゚;トソン 「!」

川д;川 「私、おばけとかそういうのものすごぉぉぉぉぉぉぉっく苦手なんですぅーっ!!!」

─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─


39 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:28:03.14 ID:eINc4JpO0

(-、-トソン 「……」

といった感じで後退られましたからね……。
万一、ブーンが見えた場合は大パニックになりかねません。

(゚、゚トソン 「というわけで、ブーン」

( ^ω^) 「お?」

(゚、゚トソン 「あなたは私がいいというまでしばらくの間はぬいぐるみです」

( ^ω^) 「お? どういうことだお?」

動いては駄目、しゃべっては駄目。とにかくじっとしていることをお願いしました。

(;^ω^) 「おー……」

(゚、゚トソン 「移動は私が運びますので……」
(^ω^)
つ ⊂ ガシッ


40 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:28:35.65 ID:eINc4JpO0

(゚、゚トソン 「……」
(^ω^) 「……」
つ ⊂

(゚、゚トソン 「……」
(^ω^) 「お? さだこ、いっちゃうお?」
つ ⊂

(゚、゚;トソン 「……ブーン? あなた、最近ちょっと食べすぎでは?」
(^ω^)  「……お?」
つ ⊂

盲点でした。ブーンは意外に重かったです。
これは食べ過ぎと運動不足でしょうか? お腹とかぽよんぽよんです。
元からだったかもですが。

仕方ないので、ブーンには私の後ろのすぐを歩かせることにしました。
幸いにも、貞子さんはまだ見える距離でしたので、急いで後を追います。


41 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:29:21.39 ID:eINc4JpO0

・・・・
・・・

(゚、゚トソン 「あのマンションのようですね」

マンションというよりはアパートといった感じの外見ではありますが。
ともかく、その2階の1室に貞子さんは入って行かれました。

階段付近にある郵便受けを確認しましたが、金輪──貞子さんの名字ですが──とありましたので、
間違いないようです。

(゚、゚トソン 「じゃあ、行きましょうか」

やることは簡単です。単に私が用事が済んで歩いていたら貞子さんを見かけたので、折角だから挨拶に来た。
それだけの理由しか用意していません。

多少強引ですが、色々と不自然な理由を並べるよりはもっともらしいでしょう。

( ^ω^) 「僕はいつからぬいぐるみかお?」

(゚、゚トソン 「あの部屋の扉の前からです。よろしくね」


43 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:31:27.91 ID:eINc4JpO0

(゚、゚トソン ピンポーン
ガチャ
川д川 「はい……トソンさん?」

(゚、゚トソン 「こんにちは、貞子さん」

川д川 「……用事がおありだったのでは? それに、どうして──」

(゚、゚トソン 「用事が予定より早く済み、この辺りを通りかかったら、丁度貞子さんのお姿が見えましたので」

川д川 「そうなのですか……。……で、それは?」

それ、と言って指差された先は私の足に寄り掛かって座り込んでいるブーン。
……見えますか、貞子さん。
ですが、見えた場合のその質問は想定済みです。ブーンを連れていることへの無理のない解答はちゃんと考えてあります。

(゚、゚トソン 「これは私の大切なぬいぐるみのブーンちゃんです」

川д川 「え?」


44 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:31:49.21 ID:eINc4JpO0

(゚、゚トソン 「この子がいないと私は夜も眠れませんので、学校のないときは普段からこうやって持ち歩いています」

川д;川 「…………と、とにかく上がる? ここでお話しするのもなんだし」

私の無理のない完璧な解答に納得した貞子さんは、私を家に上げてくれるようです。
第一関門突破ですね、計算通り。

どこまでが計算かは御想像にお任せします。

(゚、゚トソン
(^ω^)
つ ⊂ ズリズリ……

川д;川 「……それ、意外と重かったりする?」

(゚、゚;トソン 「に、日課ですから、大したことではありませんよ」

川д;川 「何か飲み物……冷たいものの方がいいかな?」

そう言って、貞子さんは私に座るよう促して、飲み物の用意に台所へ向かわれました。


45 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:32:07.78 ID:eINc4JpO0

貞子さんの部屋は2Kといった間取りでしょうか?
1部屋は私の部屋よりは狭いですが、隣にもう1部屋あるのを考えると、居住空間は私の部屋より広いですね。

少々古い造りですが、1人暮らしならば快適な広さでしょう。

川д川 「どこか変かな?」

(゚、゚;トソン 「ありがとうございます。いえ、これといって、なかなか雰囲気のよいお部屋ですね」

私は出された冷たいお茶に礼をいい、正直な感想を述べました。
少しばかり日当たりは良くなさそうですが、逆にそれが、落ち着いた感じの部屋の印象を濃くしています。

川д川 「ちょっと古い感じだよね。でも、意外と住みやすくはあるんだけど……」

貞子さんは少々照れくさそうに御自分の感想を述べられます。

しかし、なんでしょう? 貞子さんはどうしても私を部屋にあげたくないといった感じではありませんでしたし、
実際に部屋の中も普通です。ずっと部屋に伺うのを断られていたのは、本当にタイミングが悪かっただけなのでしょうか。

川д゚川 「……」


46 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:32:30.84 ID:eINc4JpO0

ふと視線に気付き、そちらへ顔を向けると、目を見開いた貞子さんがこちらを見ています。

(゚、゚;トソン 「ど、どうされました?」

川д゚;川 「……い、今、そのぬいぐるみの頭、動きませんでした?」

……ブーン、じっとしていてください。

(゚、゚;トソン 「わ、私の手が当たっただけですよ」
(^ω^;(⊂ グキリッ!
つ   )

川д;川 「そ、そうですか?」

貞子さんは訝しがりながらも、それ以上は何も仰られませんでした。

 イタイオ シー!
(;^ω^)(゚、゚;トソン


47 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:33:03.93 ID:eINc4JpO0

それから、私達は、学校のことやらこの町のことやらたわいもない話をしました。
その様子を見る限り、具合が悪いというような感じは見受けられませんでしたね、貞子さん。

川ー川

横に寝かせておいたぬいぐるみブーンは、いつの間にか本当に寝入っていました。
寝息を立てないか冷や冷やしていましたが、無意識に空気を読んだのか、静かなものでした。

(゚、゚トソン 「すみませんね、長居をしてしまって」

川д川 「え?」

私は、一旦切り上げるか、強硬に聞きだすかの判断に迷い、話題転換のため、時間を口にしました。

(゚、゚トソン 「そろそろ晩ご飯の時間ですね。……もし、貞子さんがよろしかったら──」

川д;川 「す、すぐ帰って!!!」

(゚、゚;トソン 「え?」


48 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:33:28.63 ID:eINc4JpO0

時計を見た貞子さんは、弾かれたように大声でそう言われました。
私は、その尋常でない様子にたじろぎながらも、どうやら原因に突き当たったのではと考えていました。

(゚、゚;トソン 「どうしたのですか、貞子さん、突然大声で?」

川д;川 「ご、ごめんなさい……、で、でも、帰ってください。お願いします」

(゚、゚トソン 「家主に帰れと言われれば帰らざるをえませんが、できればその理由をお聞かせ頂きたいのですが?」

目の前にこうも興奮した人がいると、自分は逆に冷静になれるものですね。
私は、そういう感想を抱きながら、露骨に狼狽されている貞子さんを見つめました。

川д;川 「り、理由は聞かないで下さい。帰らないと、帰らないと、トソンさんが……」

    チョイチョイ
( ^ω^)つ(゚、゚トソン

いつの間にか起きていたブーンが私を突付きます。
ええ、あなたの言う通りでしたね、ブーン。友達だからこそ、ですね。


49 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:33:49.11 ID:eINc4JpO0

(゚、゚トソン 「貞子さん」

川д;川 「は、はい……」

(゚、゚トソン 「私は、あなたの何ですか?」

川д;川 「え……? 私の……?」

(゚、゚トソン 「あなたにとっての私です」

貞子さんは、ほんのわずか、考えている様子で、まっすぐに私の顔を見つめ、そしておずおずと口にされました。

川д川 「友……達……」

(゚ー゚トソン 「そうです、私は貞子さんのお友達です」

張り詰めた空気が弛緩するのを感じました。
貞子さんも心なしか落ち着かれたように見えます。


51 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:34:12.17 ID:eINc4JpO0

(゚、゚トソン 「友達が困っているのを見た友達に、何も聞かずに帰れと言うのはちょっと友達甲斐がなさ過ぎませんか?」

川д川 「で、でも……御迷惑を……」

(゚、゚トソン 「貞子さんは私が貞子さんに御相談申し上げたら御迷惑ですか?」

川д川 「そ、そんなことない! 私なんかに相談して頂いて嬉しい、って嬉しがっちゃ駄目なんでしょうけど、その──」

(゚、゚トソン 「私も同じですよ。相談して欲しいです」

川д川 「で、でも……、普通じゃなくて、信じてもらえない──」

(゚、゚トソン 「貞子さん、私はあなたを信じます」

川д川 「トソン……さん?」

(゚、゚トソン 「私の悩みを聞いて嬉しがってるのに、自分の悩みは黙ってるなんてずるいですよ?」

川д川 「え……? ずるい?」


52 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:34:30.32 ID:eINc4JpO0

(゚ー゚トソン 「私にも相談して、嬉しがらせてください」

川д川 「トソン……さん……」

貞子さんは、うなだれて、つぶやく様に私の名前を口にされました。
私は、何も言わず、それを見守っていました。

しばらくの後、貞子さんは顔を上げ、こちらをしっかり見据え口を開きます。

川;ー;川 「……はい」

その目にはわずかに浮かぶ、涙が見られました。


 〜 第三話 おしまい 〜

    − つづく −   


55 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:36:20.94 ID:eINc4JpO0

 〜 第四話 〜


(゚、゚トソン 「落ち着かれましたか?」

川ー川 「う、うん、ごめんね……」

帰れとか言っちゃって、と貞子さんは言います。
あれから10分もせずに、貞子さんは落ち着きを取り戻されました。

(゚、゚トソン 「そこは謝らなくていいですが、ずっと悩みを隠していたことは謝ってください」

もう何週間も、コンパ後ぐらいからでしょう? と、私が言うと、貞子さんは驚いたようにその通りだと言われました。
何故わかったのかも聞かれましたが、私は、普段からいっしょにいるのだからわかると答えておきました。

再びぬいぐるみ状態のブーンが何か言いたげでしたが、私は見ない振りで貞子さんに向き直ります。

川ー川 「うん、ごめん。……改めて、相談に乗ってくれるかな?」

(゚ー゚*トソン 「もちろんですよ」


57 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:37:44.86 ID:eINc4JpO0

・・・・
・・・

(゚、゚;トソン 「えーっとつまり、要約すれば、この部屋には…………出る……と」

川д川 「はい……、正しくは隣の部屋に、ですが……」

そう来ましたか……。コンパとか夜道とかどこへやら。それはそれで良かったのですが。
これは何とも、いえ、以前の貞子さんのそういったものに対する反応を考えると、これは由々しき事態なのでしょうね。

川д川 「管理人さんには相談したのですが……」

管理人さんには見えなかったとのことです。
この時点でいくつか思い当たる節はあるのですが……。
私は、横になってるぬいぐるみブーンをしげしげと眺めました。

ツンちゃんも連れてくるべきでしたでしょうか。

ただ、そうじゃない可能性も考えられます。


58 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:38:05.49 ID:eINc4JpO0

川д川 「うなり声と、ラップ音……じゃないな、何か風の音のような物が聞こえてくるんです、それも大体決まった時間に」

うなり声はまだしも、風の音ですか。声なら聞こえる人は聞こえますが……、風の音?
ブーンやツンちゃんの普段の行動を思い返してみても、思い当たる節はありません。
ですが、ブーンたちの外見や思考は、私が知っている3人ともがそれぞれ違います。
ここに出ると言われているのがもし夢見だったとしても、全然姿形も行動パターンも違う夢見の可能性は高いのですからね。

何にせよ、百聞は一見に如かずな気はしますが。幸い(?)、その時間は近づいてるらしいですし。

(゚、゚トソン 「中を確かめたことは?」

川д川 「一度だけ……。赤い髪を長く伸ばした後姿が見えました……」

他の特徴を聞いても、大きいようで小さいような、男のような女のような等々、今1つ要領を得ません。
うなり声が恐ろしくて、長く見ていられなかったということです。

(゚、゚トソン 「なるほど、大体わかりました。これは実際見た方が早そうですね」

川д゚;川 「ええぇ!!! 駄目ですよ、トソンさん、危険ですよ」


59 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:38:35.24 ID:eINc4JpO0

貞子さんが今まで私達に相談されなかった原因は2点。1つは信憑性の問題。
まず相談した管理人さんに相手にされなかったことで、私達へ相談したとしても、
同じような結果にならないとは言い切れなかったから。自分の幻覚なのかもという可能性が捨て切れなかったらでしょう。

そしてもう一点がこの──

(゚、゚トソン 「危険……ですか……」

ブーン達を見ている限りでは、そういった危険性は皆無ですが、
もちろん、私が知っているものとは違う夢見がいる場合も考えられますので、危険は0とは言い切れません。

(゚、゚トソン 「しかし、見てみない事には対策も立てられませんしね」

このままだと引っ越すぐらいしか対策は立てられないでしょう。

川д;川 「うん、でも──」

ガタッ……
   !!!   !!!
川д;川(゚、゚;トソン


60 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:39:10.35 ID:eINc4JpO0

物音が隣の部屋から聞こえてきました。
何かが……いますね。気配を感じます。

(゚、゚トソン 「開けますか……」

川д゚;川 「ええぇ! 決断早!!!」

貞子さんも1度は見ています。それはつまり、見てすぐ危険というわけでもないわけで。
まあ、何事にも例外はあるので、やっぱり危険がないわけでもないんですけどね。

私は、隣の部屋のふすまに手をかけました。ブーンは貞子さんから見えない位置で私の方に近づけてあります。
……確かに、何か風を切るような音が聞こえてきます。小刻みに、一定のリズムで。

私は、息を1つ吸い込むと、一気にふすまを開けました。

        うぉぉぉぉぉ!!!
 ノパ听)=つ≡つ
 (っ ≡つ=つ
 ./  │ ババババ
 レ ̄レ


61 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:39:25.52 ID:eINc4JpO0

(゚、゚;トソン 「……」

川д゚;川 「……」

いましたね、今までの流れからは形容しがたい何かが。
確かに、赤く長い髪をしていますが、どう見ても小さいです。
恐ろしいというよりは、むしろ……可愛いと言えるような外見です。
これはおそらく、ブーンといっしょ、夢見なのではないでしょうか。

(゚、゚;トソン 「……何をしてるんでしょうね?」

川д゚;川 「……ト、トソンさんも見えるんですか!?」

私は無言で頷きました。
その赤い夢見は、一心に何もない空間に向かって拳を繰り出しています。
先ほどの風の音はこの風切り音のようですね。うなり声も然り。

ノパ听) 「うぉぉぉぉぉ!!!」

この光景に思い当たるものは何かと尋ねられたら……。


62 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:39:41.45 ID:eINc4JpO0

(゚、゚トソン 「シャドーボクシング?」

川д;川 「え? あ……、確かにそんな感じも……」

ノパ听) 「うぉぉぉぉぉ!!!」

(゚、゚トソン 「ひょっとしてあれですかね、猫とかが何もない空間に向かって──」

川д;川 「そ、それだと、その空間に別の何かがいるってことに……」

日常的な事象に関連付けて安心させようとしましたが失敗でした。逆に怖がらせてしまう結果になりそうでした。

私は、見様によっては少々間の抜けたこの状況で、恐怖が薄れていることに気付きました。

(゚、゚トソン 「話しかけてみますか」

川゚д゚;川 「ええぇ!!! なんでそんな普通に!?」

私は、その問には答えず、赤い夢見に近付きます。
特に深い考えがあったわけではありませんが、不思議と大丈夫な気がしていました。


63 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:40:26.98 ID:eINc4JpO0

(゚、゚トソン 「こんばんは」

ノパ听) 「うぉぉぉぉぉ──ぉ?」

(゚、゚トソン

ノパ听)ヾ ?

"(゚、゚トソン コクッ

ノパ听) 「お前は私がわかるのかぁぁぁぁぁ?」

(゚、゚;トソン 「──っつ!」

これは、何と言うか……うるさい子ですね。
ですが、一応は話が通じそうではあります。

(゚、゚トソン 「ええ、わかりますよ。私はトソンと申します。あなたのお名前をお聞きしてもいいですか?」

ノパ听) 「私かぁぁぁぁぁ! 私はぁぁぁぁぁ──」


65 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:41:25.84 ID:eINc4JpO0

そこでピタと、赤い夢見さんの動きが止まりました。
その目は一点をじっと見つめています。
私の背後の──

( ^ω^)?

ノパ听) 「おまえはぁぁぁぁぁっ!!!」

と、吠えるや否やブーン目掛けてすっ飛んで行きました。そして──

   ウォォォ!  バキッ!  オォッ!
一二三ノパ听)つ#)>ω<).・。 ’

(゚д゚;トソン 「ブ、ブーン!!!」

殴られたブーンはごろごろと転がり、部屋の反対側まで吹っ飛ばされました。
私は慌てて駆け寄ります。

(゚、゚;トソン 「ブーン!?」


66 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:41:48.68 ID:eINc4JpO0

(メ´ω`)ノソ 「おー……」

良かった。取り敢えず大丈夫みたいです。ブーンは私の声によれよれと手を振ります。
しかし──許せませんね。
私は、こちらへ向かってくる赤い夢見の方へ向き直りました。

(゚、゚#トソン 「何のつもりですか、あなたは?」

ノパ听) 「あれは敵だぁぁぁぁぁ!!!」

敵? ブーンが? どういうことでしょう?

(゚、゚#トソン 「ブーンが敵? どういうことですか?」

私は、怒りの余り思った事をそのまま口にしていました。

ノパ听) 「?」

(゚、゚#トソン 「……」

ノハ--) 「……」


67 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:42:07.41 ID:eINc4JpO0

(゚、゚#トソン 「……」

ノパ听) 「!」

ノパ听) 「忘れたぁぁぁぁぁ!!!」

(゚д゚;トソン 「!!!」

この子は……。何ともやり辛いですね。

ノパ听) 「忘れたが、何となく覚えてるっ! あいつとは昔から何度も戦ってきたぁぁぁぁぁ!!!」

昔から? 赤い夢身は気になる事を口にしました。ブーンの昔の知り合いということでしょうか。

ノパ听) 「だから今日こそ決着を付けるっ!!!」

ノパ听) 「そこをどけぇぇぇぇぇ!!!」

(゚、゚トソン 「お断りします」

私は、ブーンをかばうように立ち、赤い夢見をまっすぐに見据えました。


68 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:42:39.65 ID:eINc4JpO0

ノパ听) 「どかないならお前からぶっ飛ばす!!!」

(゚、゚;トソン 「──っつ!」

正直に申し上げれば怖いです。私は、ケンカなどしたことはありません。
相手が小さい夢見だとしても、先ほどブーンを吹っ飛ばした腕力を見る限り、私よりは強いでしょう。

ですが──

(゚、゚#トソン 「退く訳には参りません!」

ノパ听) 「ならば──ぶっ飛ばぁぁ──!」

(メ`ω´) 「トソンをいじめるなお!!!」

  ドゴォォォ!!!
ノハ>(#⊂(`ω´メ)二⊃ ブーン!!!

(゚、゚;トソン 「ブーン!!!」


69 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:43:16.95 ID:eINc4JpO0

突如起き上がったブーンが今にも殴りかからんとする赤い夢見に体ごとぶつかって行きました。
今度は赤い夢見が吹き飛ばされ、ごろごろと転がって──

ノハ><) キュゥ……

反対側の壁にぶつかり、ピクリともしなくなりました。

(゚、゚;トソン 「気絶……しているようですね」

恐る恐る近付き、様子を確認したところ、赤い夢見は意識を失っている模様です。

(メ`ω´) 「おー! おー!」

ブーンは興奮しているのか、唸りながら立ち尽くしています。

(゚、゚トソン 「ブーン、私は平気です。もう大丈夫だから、落ち着いて、ね?」

(メ`ω´) 「……」

(メ´ω`) 「おー……」

ブーンは私の言葉が理解できたのか、弛緩した顔付きになり、がっくりと肩を落としました。


70 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:43:32.02 ID:eINc4JpO0

(゚、゚トソン 「大丈夫ですか、ブーン? 痛くないですか?」

(メ´ω`) 「痛く……ない? ……お?」

(メ;ω;) 「おーん、おーん、痛かったおー、怖かったおー」

張り詰めていた心が途切れたのか、ブーンは泣き出してしまいました。
私はそっとブーンを抱き寄せます。

(メ;ω;((-、-トソン 「よしよし……。痛かったでしょうね。ごめんね、ブーン」

(メ;ω;((゚ー゚トソン 「守ってくれてありがとう」

しばらくそうしていると、ブーンは落ち着いたのか、泣き止んで笑顔を見せてくれました。

( ^ω^) 「トソンが無事なら僕はへーきだお」

(゚ー゚トソン 「ええ、無事ですよ。ブーンのお陰です」

(〃^ω^) 「へへーだお」


71 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:43:50.63 ID:eINc4JpO0

ブーンは誇らしげに胸を張ります。
格好良かったですよ、ブーン。

さて、これでひとまず問題が片付き──
と、そこまで考えた時点で気付きました。問題が何1つ解決していない所か──

首を回し、この場にいるはずのもう1人に視線を向けると

川д川 「……」

気絶した貞子さんがそこにいました。


 〜 第四話 おしまい 〜

    − つづく −   


72 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:45:15.18 ID:eINc4JpO0

 〜 第五話 〜


川д川 「……う」

川д川 「……うーん」

川д゚川 「!」

ζ(゚ー゚*ζ 「あ、気が付いた?」

川д川 「……デレ……さん?」

ζ(^ー^*ζ 「そーだよー、デレだよー」

川д川 「……ここは?……なんでデレさんが」

ζ(゚ー゚*ζ 「貞ちゃんの部屋だよ。ごめんねー、勝手に上がっちゃって。トソンちゃんに呼ばれたの」


75 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:51:01.31 ID:QkO2U/9bO

川д川 「トソン……さん……?」

川д゚川 「!」

川д゚;川 「トソンさんが! おばけが! ぬいぐるみが! 危険が──」

「落ち着けミセリちょーっぷ!」
ミセ*>д<)リつ)д゚川<ゲボァ

いつぞや見たような光景が繰り広げられています。目が覚めるのは貞子さんのほうが早かったみたいですね。
あの赤い夢見は、気絶しているというよりは、グースカ寝てると言ったほうが相応しい表現で横になっています。

川д川 「ミ、ミセリちゃんまで?」

( ^ω^) 「お! さだこ起きた。おはよーだお」

ξ゚听)ξ 「あんたは馴れ馴れし過ぎんのよ。大丈夫、貞子、災難だったわね?」

(゚、゚トソン 「出来れば2人とも、私が相談するまで大人しくしておいて欲しかったのですが」

川д川 「ぬいぐるみさん? ちっちゃいデレちゃん? トソンさん?」


76 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:52:39.50 ID:QkO2U/9bO

ミセリのチョップが効いているのか、貞子さんは不自然を自然に受け入れています。
それとも、単に混乱が混乱を呼んでいるだけでしょうか。

(゚、゚トソン 「貞子さん、まず私はあなたに謝らなければならないことがあります、ごめんなさい」

川д川 「え?」

・・・・
・・・

(゚、゚トソン 「──といったことでした」

私は、今日私がここに来た理由、ブーンのこと、あの赤い夢見であろう生き物のこと、
そういったことを順に貞子さんに説明していきました。

貞子さんは途中、疑問に思った事に口を挟まれる以外は静かに聞いておられました。

(-、-トソン 「黙っていてすみません。改めてお詫び申し上げます」

ミセ*>д<)リξ--)ξ「「「「ごめんなさーい(お)」」」」ζ(´д`*ζ(−ω− )


79 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:56:43.18 ID:QkO2U/9bO

川д川 「皆さん…………ありがとうございます」

貞子さんは、深い感謝の意を告げられました。
私達の行動の根底にあった思い、友達が心配だったから、それがわかってるから何も言えない、
いえ、感謝の言葉しかないと。

ζ(゚ー゚*ζ 「次から何でも相談してね、私じゃ頼りなきゃトソンちゃんに」

ξ゚听)ξ 「なんであんたは端から他力なのよ」

ミセ*゚ー゚)リ 「賢明な判断と言えなくもないが、相談ならこのミセリ様に持ってくるのが筋と言うもの」

ζ(゚ー゚*ζ 「それか、このツンちゃんに相談してよ。この子、すっごい頼りになるよー」

ξ*゚听)ξ 「ちょ、ちょっとデレ、貞子はまだアタシ達のこと怖がってんだから──」

川д川 「ううん、もう怖くはないよ」

ミセ;゚д゚)リ 「ナチュラリースルー!?」


81 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:58:08.57 ID:QkO2U/9bO

川д川 「あの子、ブーンちゃんだったよね?」

( ^ω^) 「……」

貞子さんはブーンの方を指差して言います。
当のブーンは何やら部屋の中の一点を興味深げに見つめています。

(゚、゚トソン 「ブーン?」

( ^ω^) 「おー?」

ブーンが見ているの本棚ですね。貞子さんが読まれるような本だと、ブーンには難しいと思われますが。

川д川 「ブーンちゃん、あれが見たいの?」

(〃^ω^) 「お! うんお!」

そう言って貞子さんは立ち上がり、ブーンの視線の先にある少々大判の本を取り出し、ブーンに渡しました。


82 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 21:59:27.61 ID:QkO2U/9bO

( ^ω^) 「おー? ……ずかん。どうぶつさんじゃないお。なんて読むんだお?」

川д川 「これは植物図鑑。植物ってわかる? 花や草や木の図鑑」

(〃^ω^) 「お! わかるお! 読んでいいかお?」

川ー川 「うん、いいよ。読めない字があったら聞いてね」

貞子さんはそう言って、ブーンの頭を優しく撫でました。

川ー川 「あの子がね、トソンさんをかばうのは見たの。すごく勇敢だったね」

(゚、゚トソン 「気を失っておられたのでは?」

貞子さんが言うには、それはその後で、なんだか安心したら気が抜けていつの間にか意識がなくなっていた
ということらしいです。あの場の事は一通り見たということですね。


83 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 22:01:23.27 ID:QkO2U/9bO

川ー川 「その子はとってもいい子なんだよね? 私、おばけとかそういうの苦手で、怖かったけど、
     その子はそんなんじゃないって思えた」

(゚ー゚トソン 「ええ、ブーンはとってもいい子で、私の家族です」

私と貞子さんは見詰め合い、ふっと、どちらからでもなく微笑みあいました。

ブーン達の事は貞子さんも受け入れてくれるでしょう。

あと問題は……

ミセ*゚ー゚)リ 「貞ちゃんはさ、妙に気を使いすぎなんだよ」

川д川 「え?」

突然割って入るミセリ。何を言うつもりかはわかりませんが、ひとまず口を挟まず聞いておきます。

ミセ*゚ー゚)リ 「遠慮しすぎ。つまんない事でも相談しよう」

川д川 「あ、えっと……」


86 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 22:03:04.89 ID:QkO2U/9bO

ミセ*゚ぺ)リ 「女子大生は話題に飢えています。話題提供は友達の義務です」

川д川 「え、あ、うん……」

ミセ*゚ー゚)リ 「それと、トソン。あれはああいう性格でああいうしゃべり方が自然だからしょうがないんだけどさ」

(゚、゚トソン 「何か御不満が?」

ミセ*゚ー゚)リ 「あんたにじゃなくて貞ちゃんにね。貞ちゃん?」

川д川 「は、はい」

ミセ*゚ー゚)リ 「トソンはものすごーく硬い感じだけどさ、怖くはないからね?」

川д川 「うん」

ミセ*゚ー゚)リ 「あれと話してる時だけ、貞ちゃん何かしゃべり方があやふや」

川д川 「え……あ……」

そう言われてみればそうかもしれませんね。と言うか、私にのみ丁寧語だったような……。


88 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 22:06:47.73 ID:eINc4JpO0

ミセ*゚ー゚)リ 「そういうの距離作っちゃうからさ、自然に、ね?」

川д川 「……」

何となくわかりました。ミセリは私を出汁に、貞子さんの意識改革をしたいのかもしれませんね。
誰に対しても物怖じせず、自分らしく振舞えるように。人見知りの改善ですか。

(゚、゚トソン 「そうですね、確かに不自然でした。
      私の雰囲気のせいで、貞子さんを萎縮させてしまっていたようですね」

ミセ*゚д゚)リ 「あんたのその硬いしゃべりもどうかと思うけど、それは絶対変わらなさそうだからいいや」

川д川 「……そうです、いえ、そうだね。ごめんねトソンさん、何か壁作ってたみたいで」

(゚、゚トソン 「駄目です」

川д゚;川 「ええ!?」

(゚ー゚トソン 「駄目ですよ、……貞子」

川ー川 「あ……、ごめんね、……トソンちゃん」


91 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 22:07:49.52 ID:eINc4JpO0

ミセ*゚ー゚)リ

これもいろいろ考えたりはできるんですね。私は、ほんの少し感心してミセリを見ました。
何だか満足そうに笑みを浮かべています。

次に私の部屋に1人で来た時は、追い返さずにご飯ぐらいは作ってあげますか。

ζ(゚ー゚*ζ 「いよーし、これで万事解決ー!」

ξ;゚听)ξ 「ちょっと、1つでっかい忘れもんがあるわよ?」

ノハ--) 「ぐがー、ぐがー」

ζ(゚ー゚;ζ 「あ……」

そういえばそうでした。危うく一件落着とするとこでした。
しかし、この赤い夢見さんは、声をかけても揺すっても、起きる気配が全く見られません。

ξ゚听)ξ 「よし、もっかいぶっ飛ばそう」

ζ(゚ー゚;ζ 「そ、それはさすがに止めとこうよ」


93 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 22:08:56.28 ID:eINc4JpO0

とは言え、どうしたものやら。さすがに今日は少し疲れましたし。

(゚、゚トソン 「そう言えばブーン、ブーンはこの子を知っているのですか?」

赤い夢見さんは、昔からブーンと何度も戦ってきた、と言っていました。
ですが、ブーンに戦うというイメージがそぐわないのと、余り信頼の置ける記憶ではなさそうな様子から、
鵜呑みに出来る言葉ではないと思いますが。

( ^ω^) 「おー?」

植物図鑑に夢中だったブーンは、私の言葉を聞くとこちらにトテトテと走ってきました。
そして眠っている赤い夢見さんの顔をしげしげと眺めて一言、

(;^ω^) 「おー……わからんお」

(゚、゚;トソン 「ああ、やっぱりですか?」

これで後は本人から聞くしかなくなりました。必然的に、現在出来ることがなくなったわけですが。

ξ゚听)ξ 「……んじゃ、今日は解散でいいんじゃない?」

(゚、゚;トソン 「え?」


94 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 22:09:21.05 ID:eINc4JpO0

ツンちゃんの提案は、私とブーンは疲れてるから帰って、ツンちゃん、それに一応デレも貞子の家に
今日は泊めてもらって、赤い夢見さんが起きたら対応する、ということでした。ミセリはどうでも。

ξ゚听)ξ 「まあ、貞子の意見を重視したいとこだけど」

川д川 「お、お願いしても?」

ミセ*゚ー゚)リ 「泊めるのはかまわないの? 潔癖症とかではない?」

川д川 「そういうのはないですむしろ……」

ζ(゚ー゚*ζ 「むしろ?」

川д*川 「お友達が泊まってくれるのは嬉しいかな……」

そう言って貞子は微笑みました。デレやミセリも釣られて笑顔を向けます。

ξ゚听)ξ 「んじゃ、そういうことでいいかな、トソンも?」

(゚、゚トソン 「こちらは帰るだけですからね。問題ないと言いますか有難い提案ではあります」


95 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 22:09:57.12 ID:eINc4JpO0

ζ(゚ー゚*ζ 「じゃーそうしよう。……でも、ちょっと意外かな。貞ちゃん、賑やかなの苦手かと思ってたけど」

貞子は、そうですか? と、ちょっと首をかしげ微笑みました。
こういう雰囲気が嫌いなら、皆さんとはいられない気が、と続けます。

ζ(゚ー゚*ζ 「それもそうだね、ミセリちゃんとかとは特に」

ξ;゚听)ξ 「あんたもどっこいどっこいよ……」

ζ(゚д゚;ζ 「ええぇ!」

ミセ;゚д゚)リ 「なんだ、その心底心外リアクションは!」

川д川 「意外と言えば、トソンちゃんがブーンちゃんをぬいぐるみって紹介した時、
     あれはちょっと意外どころじゃなかったけどね」

ζ(゚ー゚*ζ 「え? トソンちゃん何て言ったの?」

(゚、゚トソン 「失礼な。自然に乙女な感じではなかったですか?」


97 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 22:11:44.13 ID:eINc4JpO0

川д;川 「ええっと…………ないわーとしか」

ミセ*゚3゚)リ 「まあ、ぬいぐるみ抱いてるのが似合わない女子大生ナンバーツーだしねwwwwww」

そんなことはわかってますけどね。あんなのに扉前に居座られるのは嫌だろうから、との計算ですよ。
……本当ですよ? ちなみにナンバーワンは/ ゚、。 /だそうです(ミセリ談)。

(゚、゚トソン 「それじゃあ、後はよろしくお願いしますね」

ξ゚听)ξ 「おつかれ。まあ、まかせておきなさい」

(゚、゚トソン 「ブーン、帰りますよ?」

( ^ω^) 「お……」

ブーンはまだ植物図鑑を眺めていました。うちにある動物図鑑より難しめなので、読めない字とか多そうですが、
それでも見入ってますね。気に入ったみたいです。

川ー川 「ブーンちゃん、それ、貸してあげるよ」

(〃^ω^) 「お! ホントかお?」


98 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 22:12:29.47 ID:eINc4JpO0

(゚、゚トソン 「貞子、いいのですか? 大事そうな本に見えましたが」

川ー川 「うん、大事なのは大事だけど、本は読むためのものだしね。ブーンちゃん、大事に読んでね」

(〃^ω^) 「お! わかったお。ちゃんと手を洗ってからよむお! さだこ、ありがとうだお!」

川ー川 「どういたしまして」

(゚、゚トソン 「ありがとう、貞子。今日は──」

川ー川 「もう謝らなくていいって。それよりも、これからも──」

ええ、そうですね、これからも──

川ー川「「よろしくね」」(゚ー゚トソン

私とブーンの2人は、皆に別れを告げ、手をつないでいっしょに帰りました。
今日の晩ご飯は、ブーンの好きなものにしましょうかね。


 〜 第五話 おしまい 〜

    − つづく −   


104 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 22:15:06.93 ID:eINc4JpO0

 〜 ( ^ω^)の日記 〜

 5がつ×にち はれ

きょうは、とそんとさだこをびこーしたお。

ぼくはぬいぐるみだ、っていわれたけど、よくわかんなかったお。
とそんといっしょにあるくのはだいすきだお。
はれてるときは、だいだいだいすきだお。

さだこのおうちで、ちっちゃいおんなのことあったお。
よくわかんないけどたたかれたお。たたくのはよくないんだお。
ぼくもたたいちゃったからよくないんだお。

でも、とそんはありがとうっていってくれたお。
とそんがよろこんでくれたから、ぼくはいいことしたのかお?

ばんごはんは、ぼくのだいすきなはんばーぐだったお。
おいしかったお。


105 :◆iW2kGg44LU:2008/11/10(月) 22:15:37.73 ID:eINc4JpO0

 〜 (゚、゚トソンの日記 〜

疲れました。この一言ですね。

尾行などとキャラにそぐわないようことをしたり、荒事に首をつっこんだりと、本当に疲れました。

しかしながら、貞子とは心持ち、親しくなれましたし、結果的にブーン達の事を説明するのが
手っ取り早く済んで助かりました。

後はあの赤い夢見さんのことだけですね。あの子はブーンの過去を知っているのでしょうか?

ブーンと言えば、最近日記を付け始めたようです。まだ平仮名しか書けませんが、自分の気持ちが
表すことが出来て嬉しいと喜んでしましたね。

(゚ー゚トソン「でも、日記を私に何度も読んでくれたら、覚えちゃってあんまり書いてる意味がなくなりませんかね?」


 − 第六章 おばけと私と赤い夢 おしまい −


   − 夢は次章へつづきます −   


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