2 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:10:29.41 ID:DGncvttJ0

 − 第七章 ココアと私とすべりだい −

 〜 第一話 〜


おはようございます、都村トソンです。

貞子の家での出来事から明けて翌日、今日も空は晴れ渡り、清々しい五月の朝です。
今日はいつもより少々早起き。ブーンは眠い目をこすりながら、私の横を歩いています。

( つω`) 「おー……」

(゚、゚トソン 「眠いですか、ブーン? ちゃんと目を開けて歩かないと危ないですよ?」

朝からブーンを連れている理由は、貞子の家に寄って、ブーンを置いてくるためです。
私達が大学へ行ってる間、ツンちゃんが例の赤い夢見さんを見てくれるということになりましたが、
一応念のため、ブーンもいっしょにいてもらうことにしました。

それならいっそ、と貞子が朝ご飯もいっしょにどうかというお誘いがあったので、少々早めに部屋を出て、
貞子の部屋に向かっている最中です。


3 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:11:31.02 ID:DGncvttJ0

・・・・
・・・

(〃^ω^) 「いただきまーすお」

(゚、゚;トソン 「いただきます……」

貞子の部屋に着き、朝ご飯のいい匂いが漂ってくると、ブーンの目はすっかり覚めたらしいようで、何とも現金なものです。

ξ;゚听)ξ 「えーと、いただきます」

ζ(^ー^*ζ 「いっただっきまーす」

ミセ*゚ー゚)リ 「飯だ飯だ、いただきまーす」

川ー川 「はい、召し上がれ」

まだ赤い夢見さんは目覚めてません。見た所、怪我をしているとかの様子も見られず、
どちらかと言えば安らかに寝入ってる類なので、そのまま寝かせてあります。


4 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:12:42.38 ID:DGncvttJ0

それはともかく、この食卓。朝から6人分の朝食を用意するのは大変だろうと思っていたのですが、何と言いますか……

(゚、゚;トソン 「貞子は朝はいつもこんなに召し上がられるのですか?」

川ー川 「ううん、でも、今日はみんなが食べてくれるって事でちょっと張り切っちゃった」

純和風の献立の朝ご飯。汁物、焼き物、煮物、それが複数種類ずつ、一部洋風のサラダもあります。
それらがあふれんばかりに食卓に並べられ、頭数で割っても1人分が多過ぎる気がします。

ξ;--)ξ 「随分と朝早くから準備してたみたいよ」

ツンちゃんが私が言いたい事を察したのか、呆れたように口にしました。

(〃^ω^) 「おいしいお!」

ミセ*゚ー゚)リ 「ホントに美味いわ、これ」

川ー*川 「えへへ……」

張り切りすぎでは、と思いつつも、食事はとても美味しいので、有り難くいただきました。
貞子が嬉しそうなので、これはこれでいいのかとも思います。今後は私の負担も軽くなりそうだと、若干の打算を働かせつつ。


5 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:13:01.11 ID:DGncvttJ0

・・・・
・・・

(゚、゚トソン 「それでは、私達は大学へ行って来ます。本日は3コマまでですので、3時頃には帰ってきますが──」

ξ゚听)ξ 「大丈夫、大丈夫、ブーン1人ならまだしも、アタシがいるんだから」

川д川 「ごめんね、留守をよろしくね」

ξ゚听)ξ 「いいから、いいから、あんたが謝る話でもないんだから」

ツンちゃんは軽い調子で私達を送り出します。確かに、ツンちゃんなら任せて大丈夫な気はしています。
お昼ご飯も、今朝の残りのおかずがありますので、特に問題はないでしょう。

(゚、゚トソン 「それじゃ、いってきます」

(〃^ω^)ノシ 「いってらっしゃ〜いだお」

・・・・
・・・


7 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:13:53.41 ID:DGncvttJ0

ミセ*゚ー゚)リ 「さあ、お昼だ、おっ昼♪」

ζ(゚ー゚;ζ 「私達、食べてばっかりな気が……」

(゚、゚トソン 「どうしました、貞子?」

2コマめの授業が終わり、私達はいつものように購買に行こうと立ち上がりましたが、貞子はまだ席に座ったままです。

川д川 「え? あ、うん……」

(゚、゚トソン 「何か悩み──」

ミセ*゚ー゚)リ 「さ〜だ〜ちゃん?」

私が言い終えるより早く、ミセリが割って入りました。ミセリの言いたいことの意味がわかった私は、
ミセリから貞子の方に視線を戻します。

川д*川 「あ! うん、私ね、今日はもう帰ろうかと思うんだ」


8 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:14:47.67 ID:DGncvttJ0

ζ(゚ー゚;ζ 「え? 何か具合でも悪い?」

川д川 「そうじゃなくて、やっぱり心配だしね。それに自分の部屋のことだから、まかせっきりなのも悪いし」

(゚、゚トソン 「なるほど。ですが授業は──」

ミセ*゚ー゚)リ 「3コマ目は大して重要な授業じゃないじゃん。出席も取らないし、いいんじゃない?」

重要かどうかはさておき、どの授業も3回ぐらいは自主的に休める余裕は設けられておりますので、
確かに帰るのも構わないですね。

ζ(゚ー゚*ζ 「ああ、そういうことか。いいんじゃない? 今日は特別って事で。そう何度もあることじゃないだろうしね」

ミセ*゚ー゚)リ 「そうそう、ノートはちゃんと取っておくからさ」

ミセ*゚ー゚)リb「「トソン(ちゃん)が」」dζ(゚ー゚*ζ

(゚、゚トソン 「ええ、貞子の分だけは取っておきますから、貞子のしたいようにしてください」

ミセ;゚д゚)リ「「だけ!?」」ζ(゚д゚;ζ


9 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:16:17.88 ID:DGncvttJ0

川ー川 「みんな……ありがとう」

そう言って、貞子は先に帰られました。少々真面目すぎるきらいのある貞子ですが、その責任感は見習うべきですね。

ミセ;゚ー゚)リ 「ねえ……」

ζ(゚ー゚;ζ 「ノート……」

(゚、゚トソン 「午後一は眠いからといって、ノートも取らずに寝てるのは感心しませんね」

私は、そう言い残し、1人で購買へ向かい歩き出しました。

ミセ;゚ー゚)リ 「ちょ、ちょっとトソンちゃ〜ん? 今日は私がジュースおごったりしちゃおうかな〜なんて……」

ζ(゚ー゚;ζ 「待ってよー」

実に平和な午後ですね。

(゚ー゚トソン    ミセ;゚д゚)リζ(゚д゚;ζ

 〜 第一話 おしまい 〜

    − つづく −   


10 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:16:52.76 ID:DGncvttJ0

 〜 第二話 〜


ノハ;;)
( o o
と_)_)

私が貞子の部屋のドアを開けると、正座で涙目の赤い夢見さんが見えました。

(゚、゚;トソン 「えーと……ただいま?」

授業が終わり、一旦自宅に戻って荷物を置いてきたりしてくるというデレとミセリとは別行動で、
私は1人先に貞子の部屋に来ています。

この状況の説明を誰に聞けばいいのでしょうか。
ツンちゃんは赤い夢見さんの前に仁王立ちです。貞子は姿が見えません。ブーンは……寝てますね。

ξ゚听)ξ 「ああ、おかえり」

ノハ;;) 「お、おかえりなさぁぁぁぁい!!!」


11 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:17:13.55 ID:DGncvttJ0

ξ#゚听)ξ 「うるさい! いちいち怒鳴るなと言ったでしょうが? やり直し!」

ノハ;;) 「お、おかえりなさい……」

うわぁ……。何となくですが状況がつかめた気がします。

川д川 「あ、おかえりー」

奥の部屋から、貞子が出てきます。片付けものでもしていたのでしょうか、手に何枚か洋服をかけたままです。

川д川 「ツンちゃん、あんまりヒートちゃんをいじめないであげてね」

ξ゚听)ξ 「いじめてないわよ。これはしつけよ、しつけ」

ヒートちゃん、と言うのがこの赤い夢見さんの名前なのでしょう。そういった事を聞きだすのは成功しているみたいですが、
それ以上に何か色々と進行しているみたいですね。

ツンちゃんは再びヒートちゃんに目を向け、あごで何かを促しました。


12 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:19:09.39 ID:DGncvttJ0

ノハ;;) 「こ、この度は、たいへんごめいわくをおかけいたしました。ご、ごめんなさぁぁぁぁぁい!!!」

ξ#゚听)ξ 「だから、怒鳴るんじゃないと──」

(゚、゚;トソン 「ツンちゃん、ストップ! ストップ!」

私は、再び怒鳴りつけようとしたツンちゃんを抑え、状況の説明を求めます。
ヒートちゃんはビクりと震えて、後は微動だにしていません。

ξ゚听)ξ 「簡単な話よ。力関係というやつを教えてあげただけ」

ツンちゃんからは大体予想通りの答えが返ってきました。

お昼過ぎ、貞子が帰って間もなく、ヒートちゃんは目覚めたそうです。
そして、起きるなり暴れようとしたので、ツンちゃんがちょっとメッってしたら(ツンちゃん談)、
素直に言う事を聞く様になったとの事でした。

川д川 「はい、ヒートちゃん、よく謝れましたね、えらいえらい」

そう言って貞子は、ヒートの前にカップを置きました。
私にも、何がいいか聞かれましたので、お茶をお願いしました。


13 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:21:31.15 ID:DGncvttJ0

ノハ;;) ?

川д川 「それはココアよ。飲み物。よければ、飲んでみて?」

貞子はお茶を煎れながら、ヒートちゃんに優しく教えます。
ヒートちゃんは恐る恐るカップを持ち上げ、警戒するように匂いをかぐと、ゆっくりとカップに口をつけました。

ノハ*゚听) 「甘い……。おいしい……」

(〃^ω^) 「お! 僕もココア! ココア!」

ココアの匂いに惹かれたのか、起き出したブーンが貞子にココアをねだります。

(゚、゚トソン 「ブーン? ただいま」

(;^ω^) 「お! トソン、いつの間に……おかえりだお」

私は無言でブーンの元に歩み寄り、お腹をツンツンぷにぷにしました。


16 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:22:54.11 ID:DGncvttJ0

(;^ω^) 「ちょ、なんだお? なんでつっつくんだお?」

(゚、゚トソン 「別に何でもありませんよ」

私の声で起きなかったのに、ココアの匂いで起きたことなんて気にしてはいませんからね。

程なくして、デレとミセリが到着したので、私達はテーブルに着き、ヒートちゃんから話を聞くことにしました。

ノパ听) 「ヒ、ヒートと言いまぁ──言います……。ごめいわくをおかけしました」

昨日とは打って変わって大人しいヒートちゃん。先ほどのツンちゃんとのやり取りを見る限りでは、文字通り
打たれて変えられた気がしなくもありませんが……。

私達もそれぞれ自己紹介しましたが、さすがに全員分を一気に覚えられるとも思わないので、
それはその都度覚えてもらうことにしましょう。

(゚、゚トソン 「では、ヒートちゃんにお聞きしたいのですが、なぜ貞子の部屋に?」

ノパ听) 「わから──わかりません」

(゚、゚トソン 「何をしていたのですか?」

ノパ听) 「修行してた──していました」


18 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:23:52.97 ID:DGncvttJ0

(゚、゚;トソン 「えーと……ヒートちゃん?」

ノハ;゚听) 「は、はい!」

(゚、゚トソン 「うるさくしなければ、自分の好きなように話していただいて構いませんよ?」

無理に敬語で話す必要はありません、と言いますか、この状況だと何だか尋問してると言うか、
苛めてる様に見えなくもないので……。

(゚、゚トソン 「ツンちゃんも、別にいいですよね?」

ξ--)ξ 「……あんたがいいなら、それでいいわよ」

私はこの場におけるヒートちゃんの力関係の上位?のツンちゃんに確認を取ることでヒートちゃんに安心を与えました。
ヒートちゃんは素直に頷き、

ノパ听) 「は、はい、じゃない、うん、わかったぞ」

と、まだ多少ぎこちなく返事をしました。


19 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:24:29.46 ID:DGncvttJ0

(゚、゚トソン 「では、改めて……、修行とは?」

ノパ听) 「強くなるための修行だ」

ζ(゚ー゚;ζ 「強くなる?」

ノパ听) 「そうだ! 私は世界最強になるのが夢なんだぁぁぁぁぁ!」

ゴチン!!!

ノハ;;) 「私は、世界最強になるのが夢です」

ξ゚听)ξ∩" 「ったく……」

夢……ですか。今まで夢見で夢をはっきり語ったのはヒートちゃんが初めてですね。
夢を語る時に熱くなり過ぎてツンちゃんに頭を叩かれましたが。

しかし……世界最強?


20 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:25:14.39 ID:DGncvttJ0

ミセ*゚ー゚)リ 「あー最強は夢だよね、夢。男なら、一度は憧れる最強への道」

ζ(゚ー゚;ζ 「だから男ではないよねって」

となると、あれはやはりシャドーボクシングの類であってたのでしょうかね?
ヒートちゃんの話では、寝過ごした時以外は決まったスケジュールでトレーニングしてたらしいので、
風切り音が決まった時間に聞こえてきたのはそのせいのようです。

その他のトレーニングは外を走ったりだったらしく、起きてる時はあまり部屋にはいなかった模様。

では、寝てる時は?

川ー川 「それなんだけどね……」

貞子が言うには、今までずっと同じ部屋で寝ていたらしいです。
タンスの上の奥、普段使ってないタオルや服などをひとまず置いておいた所にヒートちゃんの寝床が
確保されていたとのこと。

川ー川 「おかしいよね、散々怖がってたおばけさんと同じ部屋で寝てたんだもんね」

そういって貞子は、さも可笑しそうに笑います。先ほど片付けていた服はヒートちゃんの寝床でしょうか?


21 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:26:11.53 ID:DGncvttJ0

(゚、゚トソン 「なるほど。まさに、幽霊の正体見たり枯尾花、といったとこですか」

( ^ω^) 「お? どういうことだお?」

今まで嬉しそうにココアをすすってたブーンが口を挟みます。
今は植物図鑑に興味津々なので、花という言葉に反応したのかもしれません。

ミセ*゚ー゚)リ 「ああ、それはね、幽霊だと思ったら正体は彼、オバマさんだっt──」

ミセリが全てを言い終わる前にツンちゃんの拳が炸裂しました。
助かります。ブーンにウソを教えたらそのまま覚えてしまいますからね。

ξ;゚听)ξ 「いや、これはもうアタシが仕留めたから、湯のみを下ろしなさいよ」

残念、もう一足、ツンちゃんが遅かったらと思いながらも振り上げた湯のみを下ろし、
私は言葉の意味を噛み砕いてブーンに教えました。

( ^ω^) 「すすき?」

ブーンは早速、植物図鑑で調べています。
デレがそれを手伝っているので、私達は話を戻し、ヒートちゃんに聞きます。


22 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:26:43.33 ID:DGncvttJ0

(゚、゚トソン 「つまりはここで普通に暮らしていたわけですね」

そうなると、食事などはどうしていたのでしょうか?

ξ゚听)ξ 「それはアタシから」

私がその事を聞くと、ツンちゃんが答えました。

ξ゚听)ξ 「まあ、これの話聞いてて気付いたんだけど、多分アタシら食べなくても大丈夫なんだわ」

ミセ;゚ー゚)リ 「そうなの? 私、食べないと死ぬよ?」

(゚、゚トソン 「ミセリ、ちょっと黙っててください」

ξ゚听)ξ 「でも、食べないと行動時間が制限される」

(゚、゚トソン 「と言いますと?」

ξ--)ξ 「うん、それで睡眠時間が延びるわけね」


24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/14(金) 22:28:24.02 ID:DGncvttJ0

ということは、ヒートちゃんは食べてなかったから、あんな長時間眠っていたということですか。
しかし、全く食べずに生きられるのはある意味すごいのですが──

ξ゚听)ξ 「で、それが度を越すとおそらく──」

ノパ听) 「……」

深い眠りにつく……。しかしこれは推測らしいです。
おそらく、私と出会ったばかりのブーンがこの深い眠りから覚めたばかりだったのでは、と。

そうなると、眠る前のことはあらかた忘れてしまう、これも推測ですね。

ξ゚听)ξ 「ま、ほぼ推論よ。何せ、忘れちゃってるんだろうからね、アタシ自身も」

ノパ听) 「……」

ヒートちゃんもツンちゃんの話を黙って聞いています。何かしら、思う所があるのかもしれません。
ブーンは……ススキは見つかったみたいですね、デレとはしゃいでいます。


26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/14(金) 22:29:29.49 ID:DGncvttJ0

(゚、゚トソン 「ヒートちゃんは何か思い当たる節が?」

ノパ听) 「全くわからんぞぉぉぉぉぉ!!!」

ゴチン!!!

ノハ;;) 「全然、わかりません。何も覚えていません……が」

(゚、゚トソン 「が?」

ノパ听) 「夢だけはおぼえてたぞ!」

ヒートちゃんは夢の事を語るときは、自然と熱くなるようです。言葉に力が篭ります。
それだけ、夢が大事なものなのでしょうね。
私は、ブーンの方に視線を向けましたが、当のブーンはデレとじゃれあってて、こちらの話は聞いてはいないようです。

ノパ听) 「私は、世界最強をめざすんだぁぁぁぁぁ!!!」

吠えるヒートちゃんですが、ツンちゃんは何もしません。呆れたのか、それとも夢だけは特別扱いなのでしょうか?
そういえば以前デレが言いかけたツンちゃんの夢ってなんだったんでしょうね?


27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/14(金) 22:30:15.54 ID:DGncvttJ0

ミセ*゚ー゚)リ 「でもさー、最強を目指すっても、近場にこんな越えられない壁があったんじゃ大変だよねー」

ノパ听) 「……」

ξ゚听)ξ ?

ノハ;;)

川ー川 「よしよし……」

ミセリの心無い、ですが的確な一言でまたヒートちゃんは涙を浮かべています。何とも感情の起伏の激しい子ですね。
そんなヒートちゃんを、貞子が優しく頭を撫でています。

(゚、゚トソン 「なるほど。大体のところはわかりました」

これ以上話を聞いても進展がなさそうなことも含めて。

(゚、゚トソン 「後はどうしたいか、ですね。ヒートちゃん、……そして貞子」

私はまず、ヒートちゃんに視線を向け、それから、ゆっくりと貞子の方を向きました。


29 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:30:51.04 ID:DGncvttJ0

ノパ听) ?

ヒートちゃんは周りをキョロキョロ見回し、自分に注目が集まっていることに気付きます。

ノハ;゚听) 「わ、わた、私は……、私は?」

川д川 「ねえ、ヒートちゃん?」

どう答えていいかわからず、パニクるヒートちゃんに貞子が語りかけます。

川д川 「ヒートちゃんは自分が住んでいた場所って覚えてる」

ヒートちゃんは無言で首を振ります。

川д川 「ヒートちゃんはどこか行く場所はある?」

この質問にも無言で首を振ります。

川д川 「じゃあ、ヒートちゃんさえよかったら、ここでいっしょに──」

ミセ*゚ー゚)リb 「ちょい待ち!」


30 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:31:38.43 ID:DGncvttJ0

ξ゚听)ξ「「空気嫁」」(゚、゚トソン

ミセ*;д;)リ 「ええ、私だって夢見といっしょに〜──」

川д川 「ヒートちゃんさえよかったら、ここでいっしょに暮らさない?」

ノハ;゚听)ヾ ?

"川ー川 コクッ

ノパ听)

ノパ听) 「よ……」

ノハ;;) 「喜んでぇぇぇぇぇ!!!」

ゴチッ


 〜 第二話 おしまい 〜

    − つづく −   


32 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:32:18.23 ID:DGncvttJ0

 〜 第三話 〜


そんなこんなで、ヒートちゃんは貞子といっしょに暮らすことになりました。
今はツンちゃんにより、共同生活のレクチャーをしつけ──教えられています。

私は、ブーンといっしょにのんびりと植物図鑑を眺めてますが、なかなか面白いですね。
見たことはあっても意外と名前は知らないものなんですね、植物は。

ミセ*゚ペ)リ 「私も夢見欲ーしーいー!!!」

ブーンがススキを見たいと言いだしましたが、季節が違うのでまだ駄目だと教えて、
秋になったらいっしょに見に行く約束をしました。

ミセ*゚д゚)リ 「欲ーしーいーったら、欲ーしーいー!!!」

……全く。

(゚、゚トソン「うるさいですよ、ミセリ」


33 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:32:43.61 ID:DGncvttJ0

ミセ*゚д゚)リ 「だってさー、私だって前から欲しかったのに、昨日今日知った貞ちゃんがいきなりだよ?」

(゚、゚トソン 「あの子達は物じゃないのですから、本人達にも都合があるのですよ?」

ζ(゚ー゚*ζ 「でも、それ言っちゃうとミセリちゃんのとこには来なさそうだもんね」

ミセ;゚д゚)リ 「デレ!?」

冗談だよ、とデレは言いますが、ツンちゃんが無言で頷いてたのが視界の端に映りました。

ふと気付くと、ブーンが空になったカップを眺めています。

(゚、゚トソン 「お代わりが欲しいのですか?」

(〃^ω^) 「お!」

ココアは邪道ですよ。そう思いはしましたが、子供にはコーヒーよりはこちらの方が好みかもしれませんね。
私は、一抹の寂しさを感じながらも、貞子に断り、ココアを淹れました。


34 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:33:14.36 ID:DGncvttJ0

(〃^ω^) 「あまいおー」

(゚、゚トソン 「ココアは気に入りましたか?」

(〃^ω^) 「うんお! おさとう入れなくてもあまいお」

(゚、゚トソン 「そうですか、では、今度うちにも買っておきましょうかね」

( ^ω^) 「お? うちにはコーヒーがあるお?」

(゚、゚トソン 「ココアの方がいいんでしょう?」

( ^ω^) 「トソンはココア飲まないのかお?」

(゚、゚トソン 「私は、コーヒーの方が好みですね」

( ^ω^) 「じゃあ、僕もうちではコーヒーがいいお」

(゚、゚トソン 「どうしてですか?」

(〃^ω^) 「トソンといっしょがいいお!」


35 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:33:40.37 ID:DGncvttJ0

ブーンはにっこりと、私の顔を見上げて微笑みます。
いつも思うのですが、この顔を向けられると、こちらも微笑まざるを得ないんですよね。

(゚、゚トソン 「わかりました、やはりココアは買っておきましょう」

( ^ω^) 「お? なんでだお?」

(゚ー゚トソン 「ブーンがココアを飲みたい時は、私もココアを飲みます。そうすれば──」

(〃^ω^) 「お! いっしょだお!」

ええ、いっしょですね。あとでココアの淹れ方も練習しましょうね。私の分は少し甘さ控えめになるように。

ミセ;゚皿゚)リ 「くそぅ、これ見よがしにいちゃつきおって!」

ζ(゚ー゚*ζ 「ほーんと、2人とも仲いいよね」

(゚、゚トソン 「そういうのではないのですがね。仲良しではありますが」

ヾ(〃^ω^)ノシ 「トソンと僕はなかよしだおー」


36 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:36:01.16 ID:DGncvttJ0

私は、ブーンの頭を優しく撫でました。恨めしそうに見ていたミセリでしたが、
苦笑いを浮かべて、やれやれといった感じで首を振っていました。

ノパ听) 「トレーニングの時間だ!」

そんな折、突然、ヒートちゃんが叫び出しました。

ξ゚听)ξ 「うるさい」

ノハ;;) 「え、えっと、いつもトレーニングとして走りに行っている時間なので、出かけてもよろしいでしょうか?」

川ー川 「うん、いいよ、晩ご飯までには帰ってきてね」

ミセ*゚ー゚)リ 「いよぉーし、私も行くぞー!!!」

(゚、゚トソン 「そのまま御自宅に帰って構いませんよ」

ミセ*゚ぺ)リ 「この野郎」


38 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:38:04.29 ID:DGncvttJ0

ミセ*゚ー゚)リ 「ちゃんと戻ってくるっての。貞ちゃん、私の分のご飯もねー」

相変わらず図々しいですね、ミセリは。今日ぐらい、ヒートちゃんと2人にさせてあげればいいのに。

ですが、そう思っていたのは私だけのようで、貞子すら、全員での食事を希望されました。
まあ、私自体は楽になるので、特に文句はないのですが。

ミセ*゚ー゚)リ 「ヒートちゃん、どこまで走りに行くの?」

ノパ听) 「丘の上の公園だぞ!」

それはひょっとして、あのブーンとの思い出の公園でしょうか?
そう思って、ヒートちゃんに大体の場所を尋ねてみると、果たしてそのようですね。

ミセ*゚ー゚)リ 「……あ、そうだ、ブーンちゃんも行かない?

( ^ω^) 「お?」

突然のミセリの提案に、ブーンは首をかしげ、ミセリを見て、私の方を見ました。


39 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:38:28.63 ID:DGncvttJ0

(゚、゚トソン 「ブーンの好きにしていいですよ?」

ミセ*゚ー゚)リ 「本ばっか読んでないで、たまにはパーっとお外で遊ぼうよ?」

(〃^ω^) 「お、わかったお! 僕も行くお!」

(゚、゚トソン 「まあ、私は行きませんが」

ミセ*´へ`)リ「「……」」(´ω` )

(゚、゚;トソン 「な、何ですか、その目は?」

ミセ*´へ`)リ 「ブーンちゃん?」

( ´ω`) 「僕はトソンといっしょに行きたいおー」

(゚、゚;トソン 「くっ──」

何ですか、この2人のコンビネーションは。修行という名目でなければ、付いて行くのもやぶさかではないのですが、
さすがにここからあの公園までは走れません。


41 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:39:41.52 ID:DGncvttJ0

(゚、゚;トソン 「ブーンはともかく、なんでミセリまでそんな顔なんですか?」

ミセ*゚ー゚)リ 「そりゃ、お友達と遊びたいからだよーwww」

こいつは……、私が体力がないのを知ってのことですね?

( ´ω`) 「トソン……いっしょに行かないのかお?」

(-、-;トソン 「…………私は走りませんからね?」

ζ(^ー^*ζ 「優しいお母さんだねー」

(〃^ω^) 「お!」

・・・・
・・・

ノパ听) 「ついたぞぉぉぉぉぉ!!!」

(〃^ω^) 「おー!」


42 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:40:14.57 ID:DGncvttJ0

・・・・
・・・

ミセ*゚ー゚)リ 「2人とも早いなー。おねーちゃん負けちゃったよ」

・・・・
・・・

( 、 ;トソン 「……」

ミセ*゚д゚)リ 「遅!!!」

うるさいですね、これでもちょっとはがんばったんですから……。
私は、公園のベンチに倒れこむように座り込みました。

ミセ*゚ー゚)リ 「ほれ」

ミセリがペットボトルを差し出します。スポーツドリンクのようです。意外と気がきくんですね。


45 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:41:16.23 ID:DGncvttJ0

ミセ*゚ー゚)リ 「あー、礼とかいいから、大体何言いたいかわかるから。
       ちなみに、ブーンちゃん達はあっちで修行ってか、追いかけっこしてるね」

そうですか、ブーンとヒートちゃんはいっしょに──
そう言えば1つ忘れてました。ヒートちゃんはブーンを敵だと……。またケンカして──

ミセ*゚ー゚)リ 「そういや、ヒートちゃんに聞いたんだけどさ、昔、何か真っ白いのと追いかけっこしたりして
       争ってたの覚えてたって」

( 、 ;トソン 「……」

ミセ*゚ー゚)リ 「で、まあ、話聞いた限りだと、敵と言うよりは遊び相手とかライバルみたいな感じだったよ。
       本人もライバルって事で納得してたwww」

( 、 ;トソン 「……」

ミセ*゚ー゚)リ 「でもさ、それがブーンちゃんだった証拠はないんだよね。あの子のことだから、その辺転がってる
       ボールと追いかけっこしてた可能性もありそうじゃない?www」

驚きましたね。本当に私の言いたいことがわかってるのでしょうか?
しかも、やけにスムーズにヒートちゃんからも話を聞きだしてます。


47 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:41:51.97 ID:DGncvttJ0

ミセ ー )リ 「……私は昔っから、空気読むのは上手かったんだよ」

(゚、゚;トソン 「ミセリ……?」

ミセ*゚ー゚)リ 「お、ブーンちゃん、どうした? お母さんが心配?」

(゚、゚;トソン 「だから、お母さんは止めてください。ブーン、どうしました?」

(;^ω^) 「おー……。トソン大丈夫かお?」

心配して来てくれたのでしょうか。私は、大丈夫、ただの運動不足の弊害だとブーンに告げました。

(;´ω`) 「むりやりさそってごめんおー」

(゚、゚;トソン 「何を言ってるんですか。私もブーンとこの公園に来たかったんですよ?
       ちょっと休んだら私もいっしょに遊びますから、ヒートちゃんと遊んでてくださいね」

ミセ*゚ー゚)リ 「よし、ブーンちゃん! 3人で遊んでよう! トソンはしばらくここで見てるってさ」


48 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:42:44.44 ID:DGncvttJ0

(;´ω`) 「おー?」

私は、ちょっとしょんぼりしているブーンに優しく微笑みかけます。

(゚ー゚トソン 「ちゃんと後でいっしょに遊びますからね? 少しだけ休ませてくださいね」

( ^ω^) 「お! わかったお!」

私はブーンをよろしく、といった意味合いの目線をミセリに向けました。

ミセ*゚ー゚)リ 「いよぉーし、ブーンちゃん、あの木まで競争ねー!」

(〃^ω^) 「お! ミセリずるいお! 待っておー!」

仲のよい兄弟みたいですね。以前から思ってましたが、ミセリは子供の扱いが上手いです。
兄弟ないし、姉妹の多い御家庭だったのでしょうか。

私は息を整え、1つ大きく息を吐きました。
周りを見渡すと、既に桃色の花はなく、緑の木々に覆われています。

時々はブーンといっしょにここに来ましょうかね。たまには運動しないとよくないですね。


49 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:43:04.25 ID:DGncvttJ0

私は目を閉じ、ミセリからもらったペットボトルを口に当てます。
ほのかに甘いスポーツドリンクが、疲れた身体に心地よい潤いを与えます。

「なんだー? 増えたな……。お前さん、そういうの引き寄せる体質か?」

不意に、こちらに語りかけてくる声が聞こえてきました。
私が目を開けると、そこには──

('A`) 「トソンちゃんだったけ? どうやら仲良くやってるみてーだな」

(゚、゚トソン 「……コギオさん」

そこには、初めてこの公園に来る時も出会ったコギオさんが立っていました。

(;'A`) 「いや、ドクオね、ドクオ」


 〜 第三話 おしまい 〜

    − つづく −   


51 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:44:05.15 ID:DGncvttJ0

 〜 第四話 〜


('A`) 「見たところ、問題なさそうだな」

(゚、゚トソン 「ええ、お陰様で」

ドクオさんは、公園の奥の方で走り回ってるブーンを見て、心なしか満足そうにそう言われました。

('A`) 「で、もう1人もいっしょに?」

(゚、゚トソン 「いえ、あの子は私の友達の家で──」

私は、ヒートちゃんやツンちゃんの事を掻い摘んで説明しました。

(;'A`) 「ツンもいるのか……」

(゚、゚トソン 「やっぱり御存知なんですか」

(;'A`) 「ああ、ほんの少しな」


53 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:44:31.85 ID:DGncvttJ0

ドクオさんは言葉同様ほんの少し顔を歪めました。元が元なので、判別はし辛いですが、
ツンちゃんと何やらあったのでしょうか。

(;'A`) 「ああ、まあ、その……顔を見るなり殴られた」

(゚、゚トソン 「ああ……」

(;'A`) 「え? 何、その納得した表情?」

(゚、゚トソン 「いえ、その、ツンちゃんの性格とドクオさんの顔は存じ上げてますので」

(;'A`) 「え? 俺の顔? それは何? 殴られても仕方のない──」

(゚、゚トソン 「そんな事よりです、どうしてこちらへ?」

(;'A`) 「え……、うん、ちょっとそこで切られるのは納得いかないとこあるけど、特に用事はないな」

単にぶらぶらしているだけだと、ドクオさんは言います。
多分、1人でドクオさんがこのベンチで座っていたら、それはきっとリストラされたサラリーマンに
見えかねない気はしますね。


54 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:45:16.53 ID:DGncvttJ0

('A`) 「ここは変わらないな……」

ドクオさんはどこか遠くを見るような目でそう言われました。変わらない、そう言われても私は、
ほんの1ヶ月前のここしか知りません。どこにでもある、何の変哲もない公園だと思います。

でも、どこか居心地がいいとも感じています。それは多分、ブーンとの思い出があるからなのでしょう。

(゚、゚トソン 「ドクオさんは、ペニサスさんをご存知なんですね」

それは、ほんの思い付きでした。ドクオさんがここに来る理由。私が、ここを居心地よく感じる理由。
その2つは、似ているのかもしれないと。

(゚、゚トソン 「ペニサスさんからは、ドクオさんにつながるような話は何も」

単に私の勘ですが、と続けました。
ドクオさんは、しばらく無言で遠くを見ていました。そしておもむろに、

('A`) 「その話を止めてくれるなら、お前さんの質問に何でも1つ、答えてやるよ」


56 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:46:06.31 ID:DGncvttJ0

俺の知り得る範囲でだがな、と、ドクオさんは付け加えました。
ペニサスさんとの話も、聞きたいといえば聞きたいのですが、これは悪い取引でもないですね。
先の話に関しては、ドクオさんとペニサスさんが何かしら関係があることがわかっただけでも十分です。

(゚、゚トソン 「いいでしょう。この話は止めておきます」

('A`) 「助かるよ」

さて、ドクオさんに何を聞くべきでしょうかね?
ブーンの今後のため、知っておいた方がいいことはなんでしょうか。

……やはり夢のことでしょうかね。

(゚、゚トソン 「ドクオさんは、どんな夢を持っておられるのですか?」

('A`) 「それがお前さんの聞きたいことかい?」

(゚、゚トソン 「いえ、どちらかと言えばどうでもいいことですね」

(;'A`) 「あ、そう。うん、聞かないでくれる方が俺は助かるんだけど、何かこう、ね……」


58 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:46:40.18 ID:DGncvttJ0

夢見にとっての夢とはなんでしょう?
ブーンは夢を忘れています。ヒートちゃんは堂々と夢を語ります。
ツンちゃん、それとドクオさんもでしょうか、夢を語るのを躊躇います。
でも、ツンちゃんはデレには語ってるのでしたね。ツンちゃんの性格上、恥ずかしがってるだけでしょうか。
しかし、よくよく考えると……

(゚、゚トソン 「夢を忘れてるブーンだけがちょっと異質なんですかね……」

(;'A`) 「お、おい、今なんって言った!?」

(>、<;トソン 「キャッ!キモイ」

(;'A`) 「え、今回は詰め寄ってないんだけど?」

(゚、゚トソン 「失礼、つい反射的に」

(;'A`) 「あ、うん、その、何かもういいや。それより夢だ。あいつは夢を覚えていないのか?」

どうしたことでしょう。ドクオさんは見て取れるほどに狼狽されています。
夢見にとって、夢を忘れるということは、そんなに大変なことだったのでしょうか。


60 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:47:10.49 ID:DGncvttJ0

('A`) 「夢見は、夢を忘れることはない。いくら深く眠ってもだ」

私が聞くより早く、ドクオさんはその答えを口にされました。

(゚、゚トソン 「では、ブーンは眠っていたから夢を忘れたわけじゃないのですか?」

では、何故? その問いに、ドクオさんは苦々しげな表情で答えます。

('A`) 「夢見が夢を忘れる時は、それが歪められた時だけだ。……人間によってな」

(゚、゚トソン 「え……、人……間……?」

人間? 私はその言葉を頭の中で何度も反芻させました。
それは一体──いえ、ブーンが夢を忘れている以上それは事実、そういうことなのでしょう。

(゚、゚トソン 「具体的には、どういった事をされた場合ですか?」

その問に、ドクオさんは一瞬苦しそうな表情を見せた後、一切の感情をなくしたような顔で言います。

('A`) 「そうだな……、例えば、自分の夢の実現に対して、重大な嘘を吐かれた時とか……だな」


63 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:48:40.18 ID:DGncvttJ0

(゚、゚トソン 「うそ……ですか……」

うそ……ですか……。私は、心の中で同じ言葉をつぶやきました。
夢を惑わす嘘、夢を阻害する嘘、夢を壊す嘘。
ブーンは夢を傷付けられたのですか?

( 、 トソン 「ブーンは苦しんだんでしょうか……」

('A`) 「わからん……。本人も忘れてるだろうしな。逆に言えばそれが救いかも知れんが」

( 、 トソン 「ブーンは夢を忘れています。でも、夢の実現の為に人間になりたがってたということは覚えてるんです」

私は、ツンちゃんの記憶に関する推測をドクオさんに話しました。
ドクオさん本人の感覚だと、恐らくそれであってるとの話です。

('A`) 「……俺達は一旦深く眠ると、夢以外の記憶はあやふやになるからな。何が残って何が消えるかはわからん」

そして、消えた記憶がどんなものだったかもわからなくなる。
消えた記憶、残った記憶、どちらが重要だったのかは確かめる術もない。
自分達は、それを繰り返しながら夢に向かう生き物だとドクオさんは言います。


64 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:49:28.61 ID:DGncvttJ0

そうだとしたら、ブーンはどこへ向かって生きていけばいいのでしょう?
夢を忘れたブーンは──

(゚、゚トソン 「忘れたなら、思い出させてあげればいいんですよね」

('A`) 「……強いな」

(゚、゚トソン 「え?」

('A`) 「いや、なんでもない。そうだな、他の記憶ならともかく、夢なら思い出せるかも知れん」

そうですよね。夢に向かう生き物、ドクオさんは自分の事を、そう称されました。
外見、発言ともに、この年でいつまでも夢見がちという駄目な大人にしか見えないドクオさんですが、
それが生きる目的というのなら、それも仕方のないことでしょう。

だったらブーンも心のどこかで、夢を覚えているのではないでしょうか。
寝ぼすけのブーンは、夢もちょっと寝坊気味なだけかもしれません。

私は、ドクオさんとしばらくその話をして、自分なりの結論を出しました。

(゚、゚トソン 「結局、私のやるべき事は変わらないわけですね」


66 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:50:20.67 ID:DGncvttJ0

('A`) 「……仲良くしてやってくれ」

(゚ー゚トソン 「もちろんですよ……、で、質問なんですが──」

(;'A`) 「おいおい、俺はもう十分答えただろうが?」

露骨に顔をしかめるドクオさん。ええ、十分答えてもらいましたよ。感謝はしてます。

(゚、゚トソン 「あれはドクオさんが勝手にしゃべっただけじゃないですか? 私がした質問ではありません」

(;'A`) 「……ったく、ちゃっかりしてんな。……で、聞きたいことは?」

(゚、゚トソン 「そうですね……」

(゚ー゚トソン 「ドクオさんの好きなものはなんですか?」

('A`) 「は?」

鳩が豆鉄砲を食らったような顔で、と表したら鳩が気を悪くするかもしれませんが、
ドクオさんは間の抜けた言葉を返されます。


67 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:50:46.22 ID:DGncvttJ0

(゚、゚トソン 「次会う時に差し入れしますよ」

そこまで言うと、こちらの言わんとせん事をようやく理解したのか、かなわんな、と苦笑され
その問に答えられました。

('A`) 「コーヒー。ブラックのな。インスタントじゃ駄目だ。ちゃんと淹れたものじゃないとな」

(゚、゚トソン 「顔の割りに贅沢ですね」

(;'A`) 「か、顔は関係ねーだろ?」

(゚、゚トソン 「失礼、つい本音が」

(;'A`) 「うん、俺、お前さんのそういう正直なとこ嫌いじゃないけど、さすがに応えるから」

冗談ですよ、そう言って私は微笑みました。

(゚、゚トソン 「しかし、毎回神出鬼没じゃ届けようもありませんね」


69 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:51:17.17 ID:DGncvttJ0

私がそう言うと、しばらくの沈黙の後、ドクオさんはゆっくりと口を開かれました。

('A`) 「この時間はたまにここにいるよ」

ドクオさんは、言葉と同じ様、ゆっくりとベンチから立ち上がります。

(゚、゚トソン 「好きなのですか?」

この、何の変哲もない公園が。

('A`) 「……ああ、気に入ってるよ」

そういい残し、ドクオさんは去って行かれました。
私が後ろから、ではまた、と声をかけると、無言で手を振り返されました。


ミセ*゚ー゚)リ 「あれ? 今、誰かと話してた?」

それからしばらくして、ミセリがこちらへ走ってきました。
子供の相手は大変だーと言いながらも、その顔には笑顔が張り付いています。



71 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:52:34.06 ID:DGncvttJ0

(゚、゚トソン 「ええ、ドクオさんと」

ミセ;゚д゚)リ 「うぉぉぉぉい!!! 教えろよ!!! 私が捕まえる予定でしょうが!?」

そういえばそんな話もありましたね。今となってはそれは良くない事のようにも思えますが。
まあ、ドクオさんならミセリ如きには捕まらないような気はしますからいいでしょうかね。

(゚、゚トソン 「そんなことより、遊びますよ」

ミセ*゚ー゚)リ 「おお、何かやる気だ! どうする? 晩ご飯まで耐久鬼ごっこ、参加する?」

(゚、゚;トソン 「できれば、走らない遊びでお願いします」

ミセ*゚ペ)リ 「しょーがないなー……。おーいブーンちゃん、ヒートちゃん!」

・・・・
・・・


72 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:53:15.21 ID:DGncvttJ0

(゚、゚;トソン 「まさかこの年で……」

ミセ*゚ー゚)リ 「年は関係ないって。ってか、むしろ年取ってからも乗るよ、お母さんになったらね」

そう言って、眼下のミセリは微笑みます。

(〃^ω^) 「おー! たかいおー!」

私の前にちょこんと座るブーンは、普段より空に近いこの場所が気に入ったようです。

(゚、゚トソン 「まあ、確かに、こういう景色も悪くないですがね」

(〃^ω^) 「トソーン! 早くすべろうお!」

私の目の前のブーンは、出会った時から変わらない、晴れやかな笑顔で私を見ます。
かつてこの笑顔が歪められたのだとしたら、そう思うと、胸が張り裂けそうになります。

しかし、今、目の前にいるブーンはこんなにも笑顔でいます。

(〃^ω^)


73 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:53:34.94 ID:DGncvttJ0

……そうですね、かつてと、これからは違います。私がブーンのこれからを作って、
いいえ、私とブーンでこれからをいっしょに作っていけばいいのですよね。

ノパ听) 「私もすべりたいから早くしてくれぇぇぇぇぇ!!!」

(゚、゚トソン 「はいはい。ゆっくりね。ゆっくりいっしょにすべりましょう」

(〃^ω^) 「いくおー!」

(゚ー゚トソン 「ええ!」

私とブーンは、いっしょに並んですべりだいをすべりました。

 (゚ー゚トソン
 (^ω^)
 つ ⊂


 〜 第四話 おしまい 〜

    − つづく −   


75 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:54:13.92 ID:DGncvttJ0

 〜 第五話 〜


ミセ*゚ー゚)リξ゚听)ξノパ听)「「「「「「ごちそうさまでした(お)」」」」」」(^ω^〃)(゚、゚トソン川ー川

ミセ*゚ー゚)リ 「食べた食べた、貞ちゃんホント料理上手いわ!」

ζ(゚ー゚;ζ 「私は今日食べてばっかな気がするねー」

ノハ;;) 「うまかった……、うまかったぞぉぉぉぉぉ!!!」

ゴチン

ξ゚听)ξ 「全く……。ほれ、あんたは片付けの手伝い。ちょっとずつでもいいから覚えなさいよ」

ノハ;;) 「はい……」

( ^ω^) 「僕も手伝うお。ヒート、教えてあげるお!」

川ー川 「じゃあ、3人ともお手伝いよろしくね」


77 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:54:51.31 ID:DGncvttJ0

(゚、゚トソン 「……」

ζ(゚ー゚*ζ 「どしたの?」

別にどうした、というほどのことでもないのですが、仲良くやっている3人を見守っていただけなので。
デレは何も言わない私に、不思議そうに首を傾げます。

デレ達には、話しておくべきでしょうか? ブーンの夢の、忘れた理由の話を。
ドクオさんには、その話はブーン達にはしないでくれと頼んでおきました。

─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─(回想)

('A`) 「まあ、それには俺も賛成だな」

(゚、゚トソン 「ご理解、感謝します」

('A`) 「それであいつが、お前さんの事をどう思うかわからん──」

(゚、゚トソン 「そこは心配してませんよ。私はブーンを信じてますし、ブーンも私を信じてくれます」


79 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:55:09.95 ID:DGncvttJ0

('A`) 「……大した自信だな」

(゚、゚トソン 「事実ですから……、と言いたいとこですが、半分は願望ですね」

('A`) 「……いいね、トソンちゃん。俺がもっと前にお前さんに会ってたら多分惚れてたよ」

(゚、゚トソン 「微塵も考える余地もなくお断りしますけどね」

('A`) 「…………うん、だと思った」

(゚、゚トソン 「私の事や、私の友達のことは信じてくれても、人間全体をどう思ってしまうかわからないですからね」

('A`) 「……お前さんたち以外と接したがらなくなるかもな」

(゚ー゚トソン 「それでもブーンなら、優しい見方しか出来ないような気もするんですけどね」

('A`) 「……いい子なんだな、あいつは」

(゚ー゚トソン 「ええ、とっても……」

─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─※─


80 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:55:37.10 ID:DGncvttJ0

(-、-トソン 「……」

ζ(゚ー゚*ζ 「トソンちゃん?」

(゚、゚トソン 「すみません、ちょっと考え事を」

内容については後ほど、と、デレに伝え、私は立ち上がりました。
特にやることもないので、片付けをする3人と貞子を見ます。

ブーンとヒートちゃんには黙っておくとして、ツンちゃんにはどうしましょうか……。
伝えておくべきか、それとも……。

ξ*゚听)ξノハ;;)(^ω^〃)

……ツンちゃんも、まだ子供な部分はありますよね。
私は、この話はブーン達3人には伝えないことに決めました。

ミセ*゚ー゚)リ 「いやー、至れり尽せりだよねー」

(゚、゚トソン 「後で食費の1部ぐらいは負担してくださいね」


82 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:56:38.44 ID:DGncvttJ0

そりゃもちろん、と、ミセリはおどけた口調で言います。
でも、貞子は受け取らなさそうですね。その場合は、少々無理にでも受け取ってもらいましょうかね。
受け取ってもらえないと、貞子の家では遠慮して食べにくくなるとか理由を付けて。

・・・・
・・・

ζ(゚ー゚*ζ 「ヒートちゃん寝ちゃったね」

ミセ*゚ー゚)リ 「何気にブーンちゃんも」

(゚、゚トソン 「そして私も少し眠いのですが」

公園まで行った組は、ミセリを除き睡魔に襲われている模様です。
帰るならブーンを起こさなければいけませんが、その前に貞子に聞いておくべきことがあります。

(゚、゚トソン 「貞子は後悔していませんか?」

川д川 「え?」

ヒートちゃんのことですよ、と私は再度聞き直します。


84 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:56:58.65 ID:DGncvttJ0

川д川 「後悔って……まだあったばかりでよく知らないし」

(゚、゚トソン 「ええ、ですから、よく知らない人といっしょに住むことになっても大丈夫なのか、ということです」

ミセ*゚ぺ)リ 「おいおい、トソン? それはヒートちゃんが良くないってことかね? 今日いっしょに遊んだ限りでは──」

(゚、゚トソン 「いえ、そういうことを差し引いての問題です」

ξ゚听)ξ 「そうね、それは確かにちゃんと考えるべきことね」

私の発言を、ツンちゃんがサポートしてくれます。
すみません、本来なら、あなたのいないとこでするべき話だったかもしれませんね。
こちらを見て頷くツンちゃんは、私の懸念に気付いているようでした。

ζ(゚ー゚*ζ 「ツンちゃん?」

ξ゚听)ξ 「ペットを飼うのだってそれなりに大変よ。ましてアタシらはそんなのよりは厄介よ」

(゚、゚トソン 「そういう言い方をするつもりはありませんが、この場合は責任ですね」



86 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:57:29.72 ID:DGncvttJ0

川д川 「責任……?」

貞子は私の言葉をそのまま口にします。

(゚、゚トソン 「いっしょに住むと決めたこと、いっしょにいると決めたこと、それがどういうことなのか、今はまだ、
      実感がわかないかもしれません」

ミセ*゚−゚)リ 「……」

(゚、゚トソン 「お互い意思も感情もある同士、ぶつかることもあります。それでも、いっしょにいられますか?」

川д川 「私は……」

貞子はそこで一旦言葉を切り、眠っているヒートちゃんをしばらく眺めていました。
私は、同じく、眠っているブーンに目を向けました。

川д川 「私は、1人っ子で、ずっと兄弟や姉妹に憧れてた。お父さんも母さんすごく優しかったから、
     寂しくはなかったけど、やっぱりそういう人とは別に、話せる家族が欲しかったんだ」


88 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 22:57:54.24 ID:DGncvttJ0

川д川 「トソンちゃんの心配もわかる。そしてそれは、たぶん経験からなんだよね?」

私は無言でうなずきました。

川д川 「ヒートちゃんと私、どう見ても正反対な感じだもんね」

(゚、゚トソン 「貞子……」

川д川 「でもね、私はやっぱりヒートちゃんといっしょに暮らしたい。よく知らない同士だし、どうなるかも
     わからないけど、私はね──」

川ー川 「私の淹れたココアを美味しそうに飲んでるヒートちゃんを見て、この子はいい子だって心から思えたんだ」

川д;川 「あはは、何か全然説得力ないね……。でも、後片付けも手伝ってくれたし、ツンちゃんに言われてだけど、
     でもね、でもね──」

ミセ*゚д゚)リ 「はーい、オッケー。もういいよ、貞ちゃん。 でしょ?」

(゚、゚トソン 「ええ、試すような事を申し上げてすみません、貞子」

川д川 「え?」


94 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 23:04:56.61 ID:oubbDKp5O

ミセ*゚ー゚)リ 「回りくどい。私は貞子が心配です。困ったら何でも言ってください、でいいじゃん?」

ζ(゚ー゚*ζ 「貞ちゃんは1人じゃなくて、私達がいるから大丈夫だよね、トソンちゃん?」

(゚、゚トソン 「私はただ──」

ξ゚听)ξ 「はいはい、ツンデレ乙」

ンソト;゚、゚) 「それはあなたが言っていいセリフではない気がしますが……」

川ー川 「フフ……」

やれやれ、余計な心配でしたでしょうか。
貞子が場の雰囲気に流されてしまってないかと思いましたが、杞憂だったようですね。

そもそも、私が言えるような事ではないんですよね。
私がブーンといっしょにいる事を決めた理由だって、漠然としたものなのですから。

でも、その気持ちに嘘はなく、漠然としてはいるが確かなもの、という何とも矛盾したものですよね。


96 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 23:06:48.20 ID:oubbDKp5O

(゚、゚トソン 「では、私はこれで……ミセリ?」

丁度よい頃合なので、そろそろ帰ろうかと切り出したところ、何故かミセリが私の手を掴んでいます。

ミセ*゚ー゚)リ 「今日は全員でお泊りだー」

(゚、゚;トソン 「何を言ってるんですか。こんなとこに7人も──」

Σ川д;川 「こんなとこ!?」

(゚、゚;トソン 「あ、いや、こんな狭い──じゃなくて、大学生の1人暮らし部屋に7人は多すぎるだろうと──」

事実でも言い様に困りますね。常識的に考えれば、難しいのはわかるでしょうに。

ζ(゚ー゚*ζ 「3人はちっこいから大丈夫だよ」

(゚、゚;トソン 「なんでデレまで乗り気なんですか?」

え、楽しそうだから、とデレ。ツンちゃんは、勝手にすれば、と、どっちでもよさそうな姿勢です。

(゚、゚;トソン 「貞子も迷惑でしょうに」


98 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 23:08:11.45 ID:oubbDKp5O

川д川 「え? わたしはむしろ嬉しいけど……」

ミセ*゚ー゚)リ 「いいじゃん、明日休みなんだしさ」

(-、-;トソン 「わかりました……。そうせざるを得ないようですね……」

賛成多数。また私が折れる他、道はありません。

ミセ*゚ー゚)リ 「よし、じゃあいっしょにお風呂入ろう」

(゚、゚;トソン 「嫌に決まってるでしょうが」

ミセ*゚д゚)リ 「うわ、冷た」

突然何を言い出すのでしょうか、このアホは。私ににもべなく一蹴されると、ミセリは他の面々見回します。

ζ(゚ー゚;ζ 「ミセリちゃん以外となら……」

川д川 「私も……」

ξ゚听)ξ 「川にでも飛び込んで来い」


100 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 23:10:45.56 ID:oubbDKp5O

ミセ*;д;)リ 「ひど!!!」

何でしょうね、このミセリがたまに見せる浮かれっぷりは。集団行動慣れしてないのでしょうか?
時折、異様なほどハイテンションになることがあります。単にそういう性格なだけかもしれませんが。

(゚、゚トソン 「何にせよ、着替えたりしたいので、一度帰りますよ?」

ミセ*゚ー゚)リ 「よし、じゃあ、そのまま逃げ出さないように付いていくー」

(゚、゚;トソン 「ブーンがいるんですからちゃんと戻ってきますよ」

・・・・
・・・

ミセ*゚ー゚)リ 「いやーなんとか寝られるもんだねー」

場所はともかく、布団が何枚もあるわけでもないので、必然的にその辺りは苦しくなります。
要は、1枚の布団に数人で寝ている状態です。

川д川 「寒くない?」


104 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 23:12:13.67 ID:oubbDKp5O

ζ(゚ー゚*ζ 「大丈夫、大丈夫、ツンちゃんあったかーい」

ξ゚听)ξ 「べたべたくっつかないでよ」

普段ならツンちゃんの意見に賛成なのですが、こんな状況だと、くっつかざるを得ませんね。

(゚、゚トソン 「どうしようもなくなったら、ミセリは台所で寝せましょう」

ξ゚听)ξ 「そうね」

ミセ;゚д゚)リ 「君らは目が笑ってないからなー」

ミセリが顔を引きつらせ、そう言います。もちろん私は本気ですとも。

川д川 「ヒートちゃん、こっちこっち」

ノハ*゚听) 「いいのか?」

川ー川 「ここが今日からヒートちゃんの家だよ。いいも悪いもないです」

ノハ*゚ー゚) 「……うん!」


106 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 23:13:52.74 ID:oubbDKp5O

あの2人なら、うまくやっていけるでしょうね。
仲睦まじく並んで布団に入る貞子とヒートちゃんを見て、私は安心した笑顔を浮かべられました。

ミセ*゚ー゚)リ 「ブーンちゃんは?」

(゚、゚トソン 「日記を書いてますよ」

ミセ*゚ー゚)リ 「ブーンちゃん字が書けるの? すっげ、後で見せてもらおっと」

ブーンがいいと言ったらですよ、勝手に見ないで下さい、とミセリに釘を刺しておきます。
いつも日記を読み上げてくれるブーンです。嫌とは言わないでしょうけどね。

(〃^ω^) 「お!」

そんな事を考えてると、ブーンがもぞもぞと布団に入って来ました。

(゚、゚トソン 「日記は書けたのですか?」

(〃^ω^) 「書けたお! うんとね、うんとね──」


109 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 23:15:46.48 ID:oubbDKp5O

(゚ー゚トソン 「話してくれるのは明日でいいですよ。今日はブーンも疲れたでしょうし、もう寝ましょうね」

(〃^ω^) 「はーいだお!」

ξ゚听)ξ 「じゃあ、寝ますか」

ミセ*-д-)リξ--)ξノハ--)「「「「「「おやすみなさーい(お)」」」」」」(-ω-〃)(-、-トソン川ー川

・・・・
・・・

(-、-トソン 「ねえ、ブーン、今日はどんな夢が見れるでしょうかね?」

(〃-ω-) 「おー……? わからんおー」

そう言えば、あなたが夢を見せる存在だという言葉の意味は、未だにわかってませんでしたね。
夢を見る存在、そちらは多分、ブーン自身の生き方に繋がっているのかもしれませんが。


112 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 23:17:43.11 ID:oubbDKp5O

(〃-ω-) 「わからんけど多分……」

(-、-トソン 「多分?」

(〃´ω`) 「いい夢だおー……zzz」

(-、-トソン 「……ええ、そうですね」

ねえ、ブーン、あなたの夢はなんだったんでしょうね?
私はあなたの夢を知りたいです。
もし本当になくしてしまったのだとしたら、また探しましょう。

2人でいっしょにね。


 〜 第五話 おしまい 〜

    − つづく −   


116 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 23:19:36.14 ID:oubbDKp5O

 〜 ( ^ω^)の日記 〜

 5がつ×にち はれ

きょうは、こうえんまでぶーんってしたお。
ひーとはすっげーはやかったから、ぼくもまけないようにぶーんってしたお。

こうえんではいっぱいいっぱいあそんだお。
とそんといっしょにすべりだいにのったお。
たかいところはよくわかんないけどきもちがよかったお。
すべりだいはぴゅーんってすべっておもしろいお。

ばんごはんはみんなでいっぱいたべたお。
さだこのごはんおいしいお。
とそんのごはんとおんなじぐらいおいしかったお。

ここあもおいしかったお。
こんどとそんがかってくれるんだお。うれしいお。


119 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 23:21:07.34 ID:oubbDKp5O

 〜 (゚、゚トソンの日記 〜

最近はどうにも平穏とは程遠い毎日ですね。
ヒートちゃんのことは貞子もヒートちゃんも納得していっしょに暮らすようですから、これ以上、
私がどうこう言うのはただのお節介ですよね。

私は2人が何か困った時に、相談に乗ってあげることにしましょう。
私達が困った時も、2人に相談しましょう。

しかし、久しぶりに運動らしき事をしたら、身体がものすごくなまっている事に気付きました。
受験前頃から、体育の授業すらろくになかったですからね。これも無理のない事でしょうか。

ブーンもヒートちゃんもホント元気でした。
それについていけるミセリも、なかなかやるもんですね。

ミセリといえば、意外に子供の扱いが上手かったり、そのくせやけに自分は子供っぽかったりと、
何だかよくわからない点が見えましたね。

あれもあれで色々あったりしたのでしょうが。


121 :◆iW2kGg44LU:2008/11/14(金) 23:22:24.32 ID:oubbDKp5O

そして、久しぶりにドクオさんに会いました。
相変わらず覇気のない顔でしたが、今日は色々と気になることが聞けました。

ブーンの夢が人間によって歪められた。

その一言がずっと私の胸に突き刺さっています。
ブーンは悲しんだのでしょうか? 苦しんだのでしょうか?
そんな時に、そばにいてあげたかったです。

私は、ブーンの夢の手助けをすること改めて誓います。
ブーン、いつかきっと、あなたの夢を見つけましょうね。

(゚、゚トソン「ブーンの夢……そういえば、私の夢ってなんでしたっけ……?」


 − 第七章 ココアと私とすべりだい おしまい −


   − 夢は次章へつづきます −   



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