4 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 21:32:05.13 ID:7FuxW4Ne0
 
 − 第十七章 残暑と私と秋の風 −
 
 〜 第一話 〜
 
 
こんにちは、都村トソンです。
夏休みが終わり、大学が始まりましたが、まだまだ残暑が厳しい日々が続いております。
 
授業は後期日程に入り、まだまだ教養科目も多く、真面目に大学へ足を運ぶ毎日です。
 
コンコンコン
(゚、゚トソン 「失礼します」
 
( ゚д゚ ) 「ああ、都村、わざわざ呼び出してすまんな」
 
授業が終わり、帰ろうかとした所、私たちのクラスの指導教官であるミルナ先生に呼び出されました。
他の生徒づての話であったので、何の用件なのかは把握していません。
特別、呼び出されるような事はしていないとは思いますが。
 
(゚、゚トソン 「いえ……。それで、ご用件は……」
 
( ゚д゚ ) 「うん、いや、大したことはないんだが、学祭の件でだな……」


6 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 21:32:43.76 ID:7FuxW4Ne0
 
学祭ですか? 学祭と言えば、来月に行われるはずでしたが。
時期的には、他と被ることのない多少中途半端な時期で、規模もそう大きくない、
全体的に地味なものだと聞き及んでおります。
 
(゚、゚トソン 「その学祭のどういった件で、私にお話なのでしょう?」
 
総代、クラスの代表はデレとミセリで、私は特に何の役職もありませんし、ただの1生徒なのですが。
そんな1生徒に学祭についてのお話とは何なのでしょうか。
 
( ゚д゚ ) 「わが人文社会課程は、毎年1年生が模擬店、まあ、出店だな。それを出す事になってるのだが……」
 
新1年生が中心、と言うよりは、本当に1年だけでやる形に近いそうです。
手伝うのは2年の総代のみ。つまり、あの御二方ですね。
 
出すお店も例年に倣い、いくつかの候補から選ぶみたいですが、規定の範囲内なら比較的自由みたいです。
 
(゚、゚トソン 「大体の所はわかりました。しかし──」
 
何故私に? その部分の答えが得られていません。
ミルナ先生は、その私の問いに、事も無げに答えられます。
 

7 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 21:35:41.14 ID:7FuxW4Ne0
 
( ゚д゚ ) 「本来なら2年の総代経由で話が行くんだが、少々忙しいらしくてな。代わりに俺が伝える事になったんだが、
      あいつらに、1年の総代に伝えるより、都村に伝えたほうが話が早いと言われてな……」
 _, ,_
(-、-トソン 「……納得してしまう自分とその周りの環境が不本意なのですが、先生はそれでよろしいのですか?」
 
( ゚д゚ ) 「俺もせっかちな方だからな。それに、沢近達の言葉は信用できるしな」
 
そう仰られ、ミルナ先生は1枚のプリントを差し出されます。
ざっと目を通すと、学祭の運営に関する注意事項等が書かれている事がわかります。
 
(゚、゚トソン 「わかりました。必要事項はこの紙に、ということでよろしいのですね?」
 
そしてそれを、1年の総代2人に伝え、何とかすればいいんですね、とミルナ先生に確認を取ります。
 
( ゚д゚ ) 「任せるよ。わからない事は俺に聞くより沢近達に聞いたほうが早いとは思う」
 
私は、再び、わかりました、と答え、善処はしますと言い、部屋を後にする事にしました。
 
・・・・
・・・
 

8 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 21:38:18.81 ID:7FuxW4Ne0
 
ノパ听) 「お、トソン、どうしたー?」
 
大学を後にし、いつもの公園に向かいました。
皆には先に帰ってもらっていたので1人でしたが、この時間ならブーン達がいるかと思い、ここまで足を伸ばしてみました。
 
(゚、゚トソン 「こんにちは、ヒートちゃん。大学の帰りに、ブーンの様子を見に寄っただけですよ」
 
私は、そう言って汗ばんだヒートちゃんのおでこをハンカチで拭いてあげました。
暦の上では夏は過ぎたとは言え、まだまだ運動するには暑い時期です。
 
ノハ*゚听) 「ハンカチ汚れるぞー?」
 
(゚、゚トソン 「ハンカチは汚れるものですよ。洗えば済む事です」
 
私はさらに、ヒートちゃんの顔全体を拭って、頭を撫でました。
ヒートちゃんは元気よく礼を言って、ブーンがブランコの所にいると教えてくれました。
 
ブランコの方に行くと、一心にブランコを漕ぎ、いつかのドクオさんのように大きく高く、ブランコを揺らすブーンの姿があります。
少し離れた場所でツンちゃんが、何も言わずにそれを眺めていました。
 

9 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 21:42:05.81 ID:7FuxW4Ne0
 
(゚、゚トソン 「こんにちは、ツンちゃん」
 
ξ゚听)ξ 「ああ、トソン、こんにちは。今帰り?」
 
(゚、゚トソン 「そうです。ブーンの様子を……元気そうですね」
 
( ^ω^) 
 
ブーンはブランコに乗り、まっすぐに空を見詰めています。
いつになく真面目な横顔が、少し新鮮かもしれません。
ブーンは空が好きですからね。空に近付けるブランコが、きっと好ましいのでしょう。
 
ξ゚听)ξ 「元気……なんだかねぇ?」
 
私が笑顔でブーンを見ていると、ツンちゃんが難しい顔でつぶやきます。
私が、顔だけをツンちゃんに向けると、ツンちゃんは、難しい顔のままで言います。
 
ξ゚听)ξ 「最近よくブランコに乗ってんのよ」
 
それは、ドクオさんに乗り方を教わったからじゃないでしょうか。
新しい遊び方を教わったので、それを試したくて仕方がないとか。
 

10 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 21:42:21.35 ID:7FuxW4Ne0
 
私は、ツンちゃんにそう伝えましたが、ツンちゃんはゆっくりと首を振り、言います。
 
ξ゚听)ξ 「何て言うかね、あいつらしくないの」
 
私は、ツンちゃんの言葉の意味がわからず、ただその続きを待ちました。
 
ξ゚听)ξ 「じっと空を見て、周りの声とか何も聞こえてないみたいで──」
 
( ^ω^) 「お!」
 
ブランコが、がたんと大きく揺れ、ブーンは空へ飛び立ちました。
これもドクオさんがやっていた事ですね。
ブーンは青空に白い放物線を描き、綺麗に地面に降り立ちました。
 
ξ゚听)ξ 「いつも最後はああやって飛んでるわ」
 
( ^ω^) 「おー? お! トソン! おかえりーだお!」
 
着地したブーンは、こちらに気付いたのか、いつもの笑顔で走ってきて私を迎えてくれます。
先ほどまでの空に向けていた眼差しは、どこにも見当たりません。
 

11 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 21:43:41.64 ID:7FuxW4Ne0
 
(゚、゚トソン 「ただいま、ブーン。あんまり危ない乗り方しちゃダメですよ?」
 
私は、ブーンの顔をヒートちゃんと同じようにハンカチで拭います。
こそばゆいのか、身体をくねらせ逃げようとしますが、私は逃がさないようにブーンを捕まえます。
 
(〃^ω^) 「おー、くすぐったいお。お顔は洗うからいいお」
 
(゚、゚トソン 「もう終わりますから。はい、これでよし、と」
 
私は、ブーンの顔を拭き終わり、これからどうするのか皆に聞きました。
まだ少し時間早いので、遊ぶ時間はあるのですが、私といっしょに皆も帰るみたいです。
 
(゚、゚トソン 「じゃあ、帰りましょうか」
 
(〃^ω^) 「お!」
 
ξ゚听)ξ 「今日はあんたんち?」
 
(゚、゚トソン 「先ほど貞子に電話したら、貞子がご飯作ってるそうなので、一度帰って着替えてから貞子の家に行くつもりです」
 
ノパ听) 「じゃあ、私は先に帰るぞぉぉぉぉ!」
 

14 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 21:44:24.98 ID:7FuxW4Ne0
 
そういうなりヒートちゃんは駆け出します。まだ身体を動かし足りないのでしょうか。
私は、走り去るヒートちゃんの背に車に気を付けて帰るように呼びかけました。
 
ノハ*゚听)ノシ 「おー!」
 
(゚、゚トソン 「さて、それでは私たちも帰りましょう」
 
(〃^ω^)つ 「うんお!」
 
私はいつものようにブーンの手を取り、何かを言われる前に、反対側の手でツンちゃんの手を取りました。
ツンちゃんは、一瞬、驚いたような顔を見せ、何かを言いかけましたが、私とブーンを見て、肩をすくめ歩き出します。
 
繋いだ手はそのままで、私達3人は、並んで歩いて帰りました。
 
 
 〜 第一話 おしまい 〜
 
    − つづく −   
 

15 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 21:46:12.32 ID:7FuxW4Ne0
 
 〜 第二話 〜
 
 
ζ(゚ぺ*ζ 「学祭かー……」
 
ミセ*゚ぺ)リ 「また祭りかー……」
 
一度部屋に戻り、デレを伴い貞子の部屋に訪れると、そこには当然のようにテレビの前に陣取るミセリと、
甲斐甲斐しく料理の準備をする貞子とそれを手伝うヒートちゃんという、ある種見慣れた光景がありました。
 
ζ(゚ぺ*ζ 「私達が下準備とか色々やるのかー」
 
(゚、゚トソン 「正確には、デレとミセリがですね」
 
貞子は、私とブーンが着くと、料理の手を止め、お茶を淹れようとしましたが、そこはやんわりと制し、
自分で淹れる事にしました。
 
ミセ*゚ぺ)リ 「また私達、あの先輩方にこき使われんのかー」
 
(゚、゚トソン 「正確には、デレとミセリがですね。それも踏まえて、夏祭りも手伝わせたのかもしれませんね」
 

16 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 21:46:47.30 ID:7FuxW4Ne0
 
台所から何やら香ばしい匂いが漂ってきます。
さほどお腹は空いていないと思っていたのですが、こういった匂いをかぐと、空腹感を呼び起こされますね。
 
ζ(゚ー゚*ζ 「ねー、トソンちゃん?」
 
(゚、゚トソン 「私は忙しいので手伝いませんよ?」
 
ζ(´д`;ζ 「冷た!」
 
ミセ*゚ー゚)リ 「忙しいって言っても、家庭教師だけじゃね? どうせ肉体労働は向かないんだから、
       最初の計画とかには付き合ってくれてもいいじゃんか」
 
デレとミセリは、最初からこちらの助力を当てにしていたようですね。予想はしていましたが。
手伝ってもよいのですが、と言いますか、目を離すと不安な点もあるのですが、最初からこちらが乗り気だと、
頼り過ぎたりされそうですからね。最大限、自分達でやって欲しい所です。
 
( ^ω^) 「おー? がくさいってお祭りなのかお? どんなお祭りかお?」
 
私達が尚も押問答を繰り広げていると、お祭りという単語が気になったのか、
図鑑を読んでいたブーンが私に聞いてきます。
 

18 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 21:49:18.27 ID:7FuxW4Ne0
 
dζ(゚ー゚*ζ 「学祭ってのはねー」
 
ミセ*゚ー゚)リb 「大学のお祭りでねー」
 
ミセ*゚ー)リ「「……」」ζ(ー゚*ζ
 
ミセ;゚ー゚)リ「「どんな祭り?」」ζ(゚ー゚;ζ
 
(゚、゚トソン 「私に聞かれても困りますし、それがわからないから、先輩方に話を聞いて準備をするのでしょう?」
 
まだ準備ができてないし、行った事もないからわからない、とブーンに言いました。
夏の商店街のお祭りみたいに踊ったりはしないだろうけど、とも付け加えます。
 
( ^ω^) 「おー。そうなのかお? どんなのかわかったら教えてほしいお。僕も行きたいお!」
 
(゚、゚トソン 「……」
 
私は、ブーンのその言葉にすぐには答えられませんでした。
ブーン達を大学へ連れて行った事は1度もありません。
人の多い場所ですし、大学生ぐらいならブーン達が見える人もそれなりにいるかもしれません。
色々と問題がありそうなので、今までは避けてきました。
 

19 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 21:49:51.57 ID:7FuxW4Ne0
 
川д川 「あ、ごめん、ちょっと机の上片付けてもらえるかな?」
 
(〃^ω^) 「お! わかったお!」
 
ご飯が出来上がったので、そのお話はそこでおしまいになりました。
しかし、近い内にまた聞かれるでしょうから、どうするべきか考えておく必要はありますね。
 
・・・・
・・・
 
(〃^ω^) 「おー! おいしそうだお! これ、なんだお?」
 
川д川 「茄子の鴫焼きだよ」
 
テーブルに置かれた大皿の上には、半分に切って揚げたナスの上に味噌を塗ったいわゆる鴫焼きが並んでいます。
先ほどの香ばしい匂いはのこ匂いでしょうね。
 
(〃^ω^) 「ナスは苦くないからいいお! おいしいお!」
 
ξ゚听)ξ 「あんたも一応、食べられる野菜もあるのね」
 
(゚、゚トソン 「苦くなければ大丈夫みたいですよ。ジャガイモとかかぼちゃとか大好きですし」
 

20 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 21:51:01.35 ID:7FuxW4Ne0
 
鴫(しぎ)焼き以外にも、季節の野菜やお肉を使った料理が数品並び、相変わらずの料理の腕を見せてくれます。
秋は食べ物が美味しくて困りますよね。ついつい食べ過ぎてしまいます。
 
ミセ*゚∀゚)リ 「うめー!」
 
ノハ*゚听) 「うまいぞぉぉぉぉ!」
 
好き嫌いなしコンビは躊躇なくどんなものにも箸をつけていきます。
貞子が作ってるのですから、美味しくないという事はないはずですが、もう少し味わって食べてもよいのでは、とも思います。
 
ξ゚听)ξ 「あんたらの食べ方には風情がないわ」
 
ζ(´ー`*ζ 「このお茄子美味しいー」
 
ツンちゃんは決してがっつくような事はせず、器用な手付きで食事を口に運びます。
気に入ったものや、疑問に思った事など時折貞子に質問し、料理人としては中々手強いお客様です。
まあ、貞子はツンちゃんに料理の事を色々聞かれるのはすごく嬉しいみたいですけどね。
やはり自分の好きな分野の事で話が出来るのは楽しいのでしょう。
 
デレはのんびりですが、意外と食べますよね。
好き嫌いなど味の嗜好はブーンそっくりですが、ブーンよりは食べるのは遅いです。
 

21 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 21:52:56.70 ID:7FuxW4Ne0
 
川д川 「どうしたの、箸が進んでないみたいだけど? 何か問題あった?」
 
(゚、゚トソン 「いえ、何も。もちろん、料理にも文句の付けようがないです」
 
私は、貞子に今しがた考えていた事を話しました。
それぞれの食べ方、味の好み、皆それぞれに違う事を。
 
川ー川 「うん、そうだね。当たり前と言えば当たり前の事なんだけど、そういうのって、あんまり気付かないよね」
 
気付かないと言うか、意識しない、かな? と、貞子は言葉を補います。
そうですね、人はそれぞれ違うものですから、それは当たり前の事ですね。
 
貞子は皆の反応を見ながら食べるので遅いし、食べる量も少ないですが、それを言うと、味見でお腹が膨れてるから、と返されます。
私が作った時は私が作った時で、1つ1つ味わって食べるので、やっぱり食べるのは遅いです。
 
そんな風ですから、私も料理に手を抜けません。
貞子はあれだけの腕を持ちながらも、よく私に味付けなどを聞いてきます。
人によって加減が違うから勉強になると貞子は笑っていました。
その熱心さには頭が下がります。
 

22 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 21:53:16.77 ID:7FuxW4Ne0
 
川ー川 「私達は気付きやすいんだろうけどね」
 
(゚、゚トソン 「どうしてですか?」
 
川ー川 「いつも、誰かといっしょだから、違いがある事もわかるんじゃないかなって」
 
(゚、゚トソン 「そうですね、確かに……」
 
そんな簡単な、当たり前の事でも、ずっと1人だと、気付く事もないのかもしれませんね。
私は、改めてこの笑顔に満ちた食卓を眺めます。
自分の幸せに感謝をしながら。
 
ミセ*゚ー゚)リ 「トソン、それ食べないの? 食べないなら私が──」
 
ミセ;゚д゚)リ 「痛! 何すんのさ? 箸で叩くなよ!」
 
(゚、゚トソン 「私の奴に手を出す者は何人たりとも許しません」
 
ζ(゚ー゚*ζ 「トソンちゃん、お豆腐好きだよねー」
 
(゚、゚トソン 「ええ、好きですよ。色々な物と組み合わせられますし、様々な味が楽しめます。
      それに、白いですし」
 

24 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 21:54:59.24 ID:7FuxW4Ne0
 
ミセ;゚ー゚)リ 「色は割とどうでもよくね?」
 
などと言うミセリですが、やはりお子様ですね。
料理は目でも楽しむものですよ? でなければ、盛り付けなど趣向を凝らす必要がなくなってしまうではないですか。
私は、持論を主張しつつ、自分のおかずが無くなったらしいブーンに目配せをします。
 
ミセ;゚ー゚)リ 「まあ、そうだけどさ。でも、単に食材の色だけとそれとは──」
 
(〃^ω^) 「お! 肉じゃがおいしいお!」
 
ミセ;゚д゚)リ 「ブーンちゃん、それ、私のぉぉぉぉ!?」
 
d(゚、゚トソン グッ!
 
ミセ;゚д゚)リ 「貴様の指示か!? おのれ、人がせっかく取って置いた楽しみを!」
 
川ー川 「まあまあ、肉じゃがならまたいつでも作ってあげるからさー」
 
ミセ*;д;)リ 「今食べたかったんだよー! 私の肉じゃがぁー!」
 
(;^ω^) 「おー、ごめんお、ミセリ」
 

25 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 21:57:20.99 ID:7FuxW4Ne0
 
ξ;゚听)ξ 「肉じゃがぐらいで泣くんじゃないわよ」
 
ミセ*;д;)リ 「ぐらいとはなんだ、ぐらいとは! 肉じゃがは至高! 至宝の家庭料理──」
 
⊂(゚、゚トソン スッ
 
やれやれ、肉じゃが1つでうるさいですね、ミセリは。
まさか泣かれるとは思ってませんでしたが、私は最初からそうするつもりだった私の分の肉じゃがをミセリに差し出しました。
 
ミセ*゚∀゚)リ 「トソーン! 大好きー!」
 
(゚、゚;トソン 「キモいので勘弁してください」
 
本当は私の分をブーンに渡すつもりだったのですが、その前にワンクッションおいただけで、こうも反応が変わるものなのですね。
いささか冗談が過ぎたかもしれませんが、私がやろうとした事の結果自体は変わっていないというのに。
 
ソーッ
⊂ζ(´д`*ζ
 
ミセ;゚д゚)リ 「デレー!?」
 
ζ(´д`;ζ バレタ!
 

27 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 21:58:52.87 ID:7FuxW4Ne0
 
ξ;゚听)ξ 「あんたは何やってんのよ?」
 
ζ(´ー`*ζ 「いやー、他人のご飯ってやたらと美味しそうに見えない?」
 
( ^ω^) 「お! それ知ってるお! となりの花は甘いってやつだお」
 
(゚、゚トソン 「赤いですよ、正しくは」
 
ノハ*゚听) 「となりのご飯は知らんが、家のご飯はうまいぞぉぉぉぉ!」
 
川ー川 「ありがとう、ヒートちゃん」
 
ξ--)ξ 「それじゃことわざの意味とか滅茶苦茶じゃないの……」
 
ミセ*゚∀゚)リ 「肉じゃがウマー!!!」
 
毎度毎度の賑やかな食卓ですが、これが私達の普通で、私達の今なのでしょうね。
私は、ブーンの頬っぺたに付いたご飯粒を取りつつ、そんな事を考えていました。
 
 
 〜 第二話 おしまい 〜
 
    − つづく −   
 

29 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 22:01:15.54 ID:7FuxW4Ne0
 
 〜 第三話 〜
 
 
*(‘‘)* 「……と、まあ、そんな感じですよ」
 
/ ゚、。 / 「うむ……」
 
明けて翌日、早速ヘリカル先輩達に連絡を取った所、授業の終わった後に説明すると言われ、
私達4人は学食に来ています。
 
何故か私も強制参加のようでしたので、いっその事、貞子も巻き込んでみる事にしました。
 
川д川 「えっと、では、何のお店かはこちらで決めていいんですか?」
 
*(‘‘)* 「そうですね。規定の範囲内であれば、私らも口出ししませんよ」
 
川д川 「うーん、迷うなぁ……。あ、でも、クラスみんなの意見聞かなきゃね」
 
/ ゚、。 / 「いや……その辺りは……お前達で決めていい」
 
*(‘‘)* 「まあ、総代特権ってやつですね」
 

30 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 22:01:56.49 ID:7FuxW4Ne0
 
川*д川 「ホントですか? じゃ、じゃあ……、えーっと、何がいいかなー」
 
(゚、゚トソン 「……あ、少々お待ちください」
 
zzz ミセ*´ー`)リζ(´ー`*ζ zzz
 
バシッ!×2
 
私は、話し合いに参加している気配のない、本来の総代2人を叩き起こしました。
まさか、ついでで呼んだ貞子がこんなに張り切るとは思いませんでしたが、一応この2人が
本来の総代なのですから、話し合いに参加させないとまずいでしょう。
 
ミセ;゚ー゚)リヾ 「貞ちゃんがんばってるし、私らいらなくね?」
 
ζ(゚ー゚;ζ 「むしろ足引っ張りそう……」
 
確かに今の所不要ですが、何かあった時の事もありますし、一応把握しておいて欲しい所です。
そもそも、2人がもっと積極的に参加すべきなのですから。
 
*(‘‘)* 「てめーら総代がサボってんじゃねーですよ」
 
/ ゚、。 / 「眠いなら……起こそう……か?」
 

31 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 22:04:16.98 ID:7FuxW4Ne0
 
私が諫めるまでもなく、ヘリカル先輩の怒声とダイオード先輩の静かな脅しが飛びます。
ミセリとデレは、結構です、と慌てて居住まいを正します。
 
川*д川 「うーん……、やっぱり迷うなー。デレちゃんは何がいい? ミセリちゃんはどう思う?」
 
矢継ぎ早にデレとミセリ、それと私に先輩方にと質問を繰り出す貞子。
料理が関わると子供のようにはしゃぐのは、何度か見た光景ですが、いつもながら微笑ましいですね。
普段が真面目ですし、いつも料理に時間を取らせてしまってますから、こうやって貞子が楽しそうなのは本当に嬉しいです。
 
私も、自分の意見を素直に述べ、貞子といっしょにあれがいい、これがいい、と色々と話し合いました。
 
・・・・
・・・
 
*(‘‘)* 「まあ、その書類の提出期限は週明けですし、時間はまだありますよ」
 
/ ゚、。 / 「準備期間も……長い……慌てるな」
 
一通りのお話を伺いましたが、未だ何のお店をやるか決めきれない私達に先輩達はそう言われ、
何かあれば連絡するよう言い残され、お帰りになりました。
 

33 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 22:04:43.17 ID:7FuxW4Ne0
 
(゚、゚トソン 「では、私達も帰りますか」
 
ζ(゚ー゚*ζ 「そうだねー。貞ちゃん、帰ろ?」
 
川д川 「あ、うん……。えーっと……、そろそろ気候的にも落ち着いてきたから、冷たいものはあんまりかな……」
 
ミセ*゚ー゚)リ 「よし、帰ろうぜー。超お腹空いたし! 今日はどうする?」
 
全員立ち上がりますが、貞子だけが少し挙動が遅く、未だ手に持った提出用の書類とにらめっこしています。
私はその様子を見て、ミセリの質問に答えます。
 
(゚、゚トソン 「今日は私が作りますよ。貞子はあれを考えたいでしょうし」
 
ミセ*゚ー゚)リ 「あはは、そうだね、今日は貞ちゃんはお休みさせてじっくり考えてもらいますか」
 
ζ(´ー`*ζ 「今日はお魚食べたいなー」
 
ミセ*゚ー゚)リ 「いいねー。シンプルに塩焼きとかいいよ」
 
(゚、゚トソン 「わかりました。じゃあ、買い物して帰りますから貞子を連れて先に戻っていてください」
 

36 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 22:07:21.23 ID:7FuxW4Ne0
 
ミセ*゚ー゚)リ 「荷物持ちは?」
 
(゚、゚トソン 「そんなに買うものもありませんから大丈夫ですよ」
 
私達の会話を聞いているのかいないのか、貞子は未だ小首をかしげ、うんうんとうなっています。
私は、貞子をよろしくと、歩き出そうとしましたが、デレに呼び止められました。
 
ζ(゚ー゚*ζ 「このまま帰っても考えまとまらなさそうだしさ、出店経験者に聞いてみるってのはどうだろ?」
 
(゚、゚トソン 「……なるほど」
 
私は頷き、買い物が終わったらそこで合流する事を約束して、1人商店街へ向かいました。
 
・・・・
・・・
 
(´・ω・`) 「へい、らっしゃい。やあ、トソンちゃんか」
 
(゚、゚トソン 「こんにちは。他の皆はこちらに?」
 
買い物が終わり、思ってたよりは重くなった買い物袋を提げてショボンさんのお店に向かいました。
ショボンさんは店の奥の飲食スペースを指差します。
 

37 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 22:08:58.94 ID:7FuxW4Ne0
 
ζ(゚ー゚*ζ 「お疲れさーん」
 
ミセ*゚ー゚)リ 「お疲れ」
 
川д川 「ご苦労様」
 
いつも通りのデレとミセリ、先ほどよりは幾分いつもの調子に戻った貞子が労いの言葉をかけてくれます。
私は、大した手間ではないと答え、席に着き、アイスグリーンティーをショボンさんに頼みました。
 
(´・ω・`) 「はい、お待たせ。話は聞いたよ。中々面白そうだね」
 
ショボンさんは、私にアイスグリーンティーを差し出されると、手近な席に腰掛けられました。
 
(゚、゚トソン 「お店のほうは宜しいのですか?」
 
(´・ω・`) 「今は接客だけだからね。お客さんも君達だけだし」
 
そう仰られて、ショボンさんは話の進み具合を説明してくれました。
お菓子を出すと言うところまで決まっているという事を。
 

38 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 22:11:23.40 ID:7FuxW4Ne0
 
川д川 「学祭に来る客層がね、お子さん連れとかお年寄りとか、意外と幅広いらしいんだって」
 
そういえばヘリカル先輩もそれらしき事を仰られてましたね。
客幅が広いから、何を出してもそれなりには客は見込めるような事を。
 
ミセ*゚ー゚)リ 「でも、やるからには手広く売りたいじゃん?」
 
(゚、゚トソン 「別に売り上げの競争をするわけではないですが、まあ、より多くのお客様のニーズに応えるものを
      考えるというのも面白そうではありますね」
 
(´・ω・`) 「割とオープンなお祭りだからね。僕も何度か足を運んだ事あるよ」
 
ショボンさんが見られたところ、やはり夏祭で見たような出店の定番メニューが多いので、
ちゃんとしたお菓子とかの方が競争相手は少ないんじゃないかとのご意見です。
ただ、和菓子は製作に手間がかかりますからね。作りおくにしろ大変です。
 
(´・ω・`) 「簡単なものもあるけどね。でも、それだとありがちなものになってしまうから……」
 
川д川 「それでね、洋菓子がいいんじゃないかってお話なの」
 
(゚、゚トソン 「洋菓子ですが……」
 

41 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 22:15:00.32 ID:7FuxW4Ne0
 
これは少々意外でした。てっきりここに相談に来た時点で和菓子の方向で決まるのかと思っていましたから。
私は、ショボンさんにその事を率直に聞いてみました。
 
(´・ω・`) 「ははは、確かにそう思われても仕方ないかもね。見ての通り、ここには基本的には和菓子しか置いてないしね」
 
ショボンさんは朗らかに笑いながら、言葉を続けられます。
 
(´・ω・`) 「洋菓子も作れるんだけどね。店のポリシーとして置いてないだけで。技術やアイデアを盗むために、
       洋菓子を作ったりもするしね」
 
ζ(゚ー゚*ζ 「そう言えば、私達が持ち込んだあの話はどうなりましたか?」
 
(;´・ω・`) 「あの話? あー……あの話かぁ……」
 
不意に割って入ったデレの質問に、ショボンさんは難色を示されました。
進んでないわけじゃないんだけどね、と弁解されますが、あまり上手く行ってないのでしょうか。
 
ミセ*゚ー゚)リ 「あの話って?」
 
(゚、゚トソン 「ペニサスさんの喫茶店で出す商品ですよ」
 
ミセ;゚д゚)リ 「あの砂糖の塊か……」
 

42 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 22:15:32.95 ID:7FuxW4Ne0
 
ミセリが顔をしかめ、身震いします。あの甘さを思い出しているのでしょうか。
あれから、ペニサスさんの喫茶店に行くと何度か試作品を出されましたが、その都度甘い物好きのブーンとミセリが食す事になっていました。
まあ、ブーンの感想が全く当てにならないから、ミセリにも食べさせていたのですが。
 
(;´・ω・`) 「作り方やらアイデアは出すし、ペニちゃんも途中まではそれを再現してくれるんだけど……」
 
川;д川 「ご自分で味の調整をされるんですね?」
 
味の調整、そう言えば聞こえはいいですが、要はペニサスさん好みの味に近付けてるわけで。
その結果、甘味の塊の出来上がりというわけです。
 
ミセ;゚д゚)リ 「何食べても味がほとんど同じってか、甘味しかわかんないんだよ?」
 
(;´・ω・`) 「どうしたもんかな……」
 
(゚、゚トソン 「まあ、あっちは気長にやっていくしかないんじゃないですか?」
 
緊急というわけでもありませんし、それに、どちらかと言えば、期間が長引く方がショボンさんにはいい事かもしれませんし。
私は、そんな事を考えながらグリーンティーをすすり、新製品のあんみつ羊羹を口に運んでいました。
 

43 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 22:17:15.77 ID:7FuxW4Ne0
 
(´・ω・`) 「そうだね、気長に付き合うしかないかな、うん」
 
ζ(^ー^*ζ 「そうそう。というわけで、今はこっちのお話ですね」
 
川д川 「作りおきが出来るもの、その場で簡単に出来るもの、万人受けするもの、目新しいもの、
     こんな感じで方向性は決まりつつあるんだけど……」
 
(゚、゚トソン 「まずは簡単に思い付くものからあげていきましょう」
 
ミセ*゚ー゚)リb 「万人受けするって言ったら、やっぱりケーキだよね」
 
取り敢えず、漠然としたものでもいいので、候補を決めようかと意見を募った所、すかさずミセリが言います。
確かに、ミセリの意見は間違っていないでしょうが、出店で出すには少し問題があります。
 
(゚、゚トソン 「今回は完全にテイクアウトのみですからね。持ち帰りしか出来ないよりは、
      その場でも食べられるようなものがいいのではと思います」
 
ミセ*゚ぺ)リ 「うーん、まあ、確かに……」
 
ζ(゚ー゚*ζ 「って事は、その場で食べられるようなケーキならいいんだね」
 

45 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 22:19:15.28 ID:7FuxW4Ne0
 
(゚、゚トソン 「何か思い当たりますか?」
 
ζ(゚ー゚*ζ 「いや、全然。……でも、こっちの2人なら思い当たるものがあるんじゃないかな?」
 
デレは大きく首を振り、自分に答えられない意を示しますが、直後、貞子とショボンさんを指してそう言いました。
指された貞子とショボンさんは顔を見合わせ、考え込みます。
 
川д川 「……シフォンケーキなら」
 
(´・ω・`) 「……いけるかもしれないね」
 
2人はほぼ同時に、その答えを導き出しました。
シフォンケーキ、確かその食感が絹織物(シフォン)のように軽い事から名付けられたケーキで、
メレンゲを使う以外はかなりシンプルな作り方だったはずです。
 
川д川 「うん、そんな感じ」
 
(´・ω・`) 「あれなら、手掴みでも大丈夫。なんなら、紙で包んでもいいしね」
 
川д川 「それに、シフォンケーキならバリエーション付けられますよね」
 

46 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 22:20:21.09 ID:7FuxW4Ne0
 
(´・ω・`) 「うん、液状のものなら大体混ぜ込めるからね。チョコはもちろん、紅茶や抹茶なんかもあるね。
       フルーツを練りこむのも」
 
川*д川 「あ、これは本当にいけるかも」
 
そんな感じで貞子とショボンさんは2人して盛り上がり、私たちが口を挟む暇もありません。
段々と会話の中身も専門化していき、ますます口出し出来なくなっていきます。
 
(゚、゚トソン 「……このあんみつ羊羹、美味しいですね」
 
ζ(´ー`*ζ 「美味しいーねー」
 
ミセ*゚ー゚)リ 「この位控えめな甘さがいいんだよね」
 
結局、2人の話し合いの結果、シフォンケーキともう1品、同じくメレンゲを使ったマカロンを作る事で方向性は
定まったようでした。
 
 
 〜 第三話 おしまい 〜
 
    − つづく −   
 

48 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 22:21:48.17 ID:7FuxW4Ne0
 
 〜 第四話 〜
 
 
(゚、゚トソン 「ブーン?」
 
(^ω^ ) 「おー?」
 
それから数日後、授業の3コマ目が休講になって大学が早めに終わった日の午後の帰り道、私は前方をトテトテと歩く、
お馴染みの白い姿を発見しました。
 
ヾ(〃^ω^)ノシ 「お! トソンだお!」
 
ブーンは私の声に気付くと、嬉しそうに駆け寄ってきます。
ただ、少し気になったのは、この道は家からいつもの公園に向かうには通らなくていい道なのですが。
 
( ^ω^) 「今日は僕1人だったからおさんぽだお!」
 
そう言えば、貞子は先に帰りましたね。ヒートちゃんとお昼ご飯にするからと。何故かミセリも着いて行きましたが。
 
ζ(゚ー゚*ζ 「あれ、ツンちゃんは?」
 
( ^ω^) 「ツンはお家だお」
 

50 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 22:23:32.56 ID:7FuxW4Ne0
 
何でも、今日は面倒くさいとか夜更かししたからとかの理由で家にいるらしいです。
 
ζ(゚ぺ*ζ 「もう、だから早く寝ようって言ったのに……」
 
(゚、゚トソン 「何をしてたんですか?」
 
ζ(゚ー゚*ζ 「読書だよ。昨日、大学の図書館で借りてきたの。はてしない物語って本」
 
(゚、゚トソン 「ああ、エンデの」
 
私も子供の頃に読みましたね。かなり面白かった記憶はあります。
子供が読むにはあの本はかなり分厚かった気はしますが。
 
ζ(゚ぺ*ζ 「ツンちゃん、読書モードに入っちゃうとすごい集中力だからなー」
 
( ^ω^) 「それ、どんな本なのかお?」
 
私は、ただ突っ立って話をしているのもブーンにはつまらないでしょうから、そのままブーンと散歩に行く事にしました。
デレはツンちゃんが心配だから先に帰る事にしたようです。
 

52 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 22:24:34.20 ID:7FuxW4Ne0
 
dζ(゚ー゚*ζ 「今日は私が晩ご飯作って待ってるから、お腹空かして帰ってきてね」
 
( ^ω^)「「……」」(゚、゚トソン
 
ζ(゚ー゚;ζ 「あれ?」
 
(゚、゚トソン 「食べられるものでお願いします」
 
ζ(゚ー゚;ζ 「うん、当たり前だよ?」
 
( ^ω^)「黒くないご飯がいいお」
 
ζ(´へ`;ζ 「大丈夫だよ! ちゃんと炊き上がった時は白いんだから」
 
(゚、゚トソン 「火の元には気を付けてください」
 
ζ(´へ`;ζ 「うん、火事怖いもんね」
 
( ^ω^)「ツンといっしょにがんばるお!」
 
ζ(´ー`;ζ 「うん……、ブーンちゃんは、私1人で作ると不安かな?」
 
(^ω^;) 「トソーン、お散歩行くお!」
 
 )三3 トテトテ
 

54 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 22:25:31.45 ID:7FuxW4Ne0
 
ζ(´д`;ζ 「ブーンちゃん!?」
 
(゚、゚トソン 「では、また。……念の為に何か買って来ておいた方がいいですか?」
 
ζ(´д`;ζ 「大丈夫だよ! 信じてよ!」
 
私とブーンは、デレの悲痛な叫びに見送られ、夏の残り香もだいぶ薄れてきた小道を並んで歩き出しました。
 
・・・・
・・・
 
(〃^ω^) 「おっおっお♪」
 
ブーンは何か歌を口ずさみながら、小道を右へ左へ、ブロック塀のそばの側溝を覗いたり、垣根の夏草を触って
しげしげと眺めたり、忙しなく散歩を楽しんでいます。
 
(゚、゚トソン 「刈り払へども生ひしく如し、ですかね」
 
( ^ω^) 「おー? 何だお?」
 
(゚、゚トソン 「いえ、草がいっぱい生えてますね、と思っただけですよ」
 

55 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 22:27:28.15 ID:7FuxW4Ne0
 
( ^ω^) 「おー! そうだおねー。トソンはこれが何かわかるかお?」
 
そういってブーンは1つの細長い草を差しますが、さすがに図鑑もない状態でこうも特徴もない草の名前はわかりません。
 
(゚、゚トソン 「残念ながらわからないですね。どんなのか覚えておいて、後で図鑑で調べてみましょう」
 
(〃^ω^) 「うんお!」
 
こうやって、私達2人の予定は少しずつ増えていきます。約束と言ってもいいのでしょうね、これも。
些細な事ですが、私達はそういう些事を積み重ねて、いっしょに歩いてきましたからね。
 
(〃^ω^) 「お! これはわかるお! 前に調べたお!」
 
(゚、゚トソン 「なんて名前でしたっけ?」
 
( ^ω^) 「お! ……おー?」
 
(;^ω^) 「おー……?」
 
人間は、悲しいかな、忘れていきます。
忘れないと生きて行くのに辛い事もありますから、それが悪いことだとは一概には言えないのですが。
 

56 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 22:28:02.35 ID:7FuxW4Ne0
 
(゚、゚トソン 「……ぎ?」
 
(;^ω^) 「おー……? ぎ……? おー……」
 
(〃^ω^) 「お! ぎしぎしだお! 思い出したお!」
 
(゚ー゚トソン 「はい、正解、羊蹄ですね。これは羊さんの足の裏みたいな形でしたでしょう?」
 
忘れたら、また思い出せばいいし、私達は2人いるのですから、どちらかかが覚えていれば、教えてあげればいい。
どちらも忘れてしまっていたら、また2人で、考えたり調べたり、答えを探せばいいのですからね。
 
(〃^ω^) 「おー! やったお! でも、この葉っぱ大きいおねー」
 
(゚、゚トソン 「そうですね、食用ではありませんが、薬用とかにはなったはずですが」
 
( ^ω^) 「おー? 食べられる葉っぱもあるのかお?」
 
(゚、゚トソン 「ありますよ、ほら、ブーンの好きな桜餅に付いてる葉っぱも食べられるでしょ?」
 
(〃^ω^) 「お! 食べられるお! お野菜と葉っぱは違うのかお?」
 

58 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 22:29:24.14 ID:7FuxW4Ne0
 
(゚、゚トソン 「大体は同じです。どちらも植物ですからね。例えばほうれん草とかは葉っぱを食べるでしょ?」
 
(〃^ω^) 「お! うんお! ほうれん草のバターのやつ美味しいお!」
 
(゚、゚トソン 「それに対して、ジャガイモとかは葉っぱじゃなくて根っこなんですよ」
 
( ^ω^) 「おー! 根っこなのかおー」
 
(゚、゚トソン 「野菜も植物ですが、どちらも食べられる場所が色々と違うのですよ」
 
(〃^ω^) 「なるほどだおー」
 
(゚、゚トソン 「こういう草とかで食べられるのは、春の七草がありましたね」
 
(〃^ω^) 「お! こうやって生えてるのがそのまま食べられるのかお?」
 
(゚ー゚トソン 「それはさすがに無理ですよ。ちゃんと洗って料理しないと」
 
(;^ω^) 「おー……」
 
(゚、゚トソン 「まあ、大体食べられる野草、こういう野に生えた草はですね、苦いのが多いんですけどね」
 

62 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 22:32:42.83 ID:7FuxW4Ne0
 
(゚ー゚トソン 「大体、ブーンは生野菜苦手でしょう?」
 
(;^ω^) 「お……、マヨネーズつければ食べられるお」
 
(゚、゚トソン 「じゃあ、セロリサラダでも作りますか?」
 
(;^ω^) 「セロリよりもポテトのサラダのほうがいいお……」
 
(゚ー゚トソン 「はいはい」
 
私達は、たわいもない会話をしながら、小道を散歩して行きます。
日差しはまだまだ夏ですが、風の匂いは少し秋の色に染まってきたようにも感じられます。
 
(゚、゚トソン 「そう言えば、秋にも七草がありましたね」
 
( ^ω^) 「お? どんなのだお?」
 
(゚、゚トソン 「確か……、萩、薄、葛、女郎花、藤袴、桔梗、撫子」
 
(;^ω^) 「おー……、全然わからんお!」
 
(゚、゚;トソン 「実は私も、名前だけしかわからないものがほとんどですね。言われれば気付くかもしれませんが」
 

63 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 22:33:12.30 ID:7FuxW4Ne0
 
いつもブーンに物事を教えている私ですが、わからない事は沢山あります。
私もまだまだ勉強中ですからね。ブーンといっしょに学んで行くのです。
 
(゚、゚トソン 「でも、1つだけはブーンもわかりますよね? 前に図鑑で見ましたし」
 
( ^ω^) 「お……? おー……お!」
 
(〃^ω^) 「ススキは知ってるお! 先っぽがフサフサしたやつだお!」
 
(゚ー゚トソン 「ええ、その通りです」
 
(゚、゚トソン 「以前に約束しましたよね?」
 
(〃^ω^) 「うんお! いっしょにススキ見に行くんだお! お月見するんだお!」
 
春に交わした約束を、ブーンはちゃんと覚えてくれていました。
私はブーンの頭を撫で、どこかでちょっと休憩しましょう、と提案します。
 
私達は、ジュースを買って、初めて来た公園のベンチで、秋空の下、秋風の中、いっしょにお月見の話をしました。
何気ない、秋の1日の事でした。
 
 
 〜 第四話 おしまい 〜
 
    − つづく −   
 

67 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 22:37:20.13 ID:7FuxW4Ne0
 
 〜 第五話 〜
 
ガチャ
 
ζ(´ー`*ζ 「おっかえりー」
 
ξ;゚听)ξ 「……」
 
バタン
 
(゚、゚トソン 「……」
 
(^ω^ ) 「……」
 
(゚、゚トソン 「今日は家で──」
 
バタン!
 
ζ(´д`;ζ 「何で帰ろうとするのかなぁー!?」
 
私達2人は、強引にデレに部屋に引っ張り込まれました。
 

68 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 22:38:11.96 ID:7FuxW4Ne0
 
散歩が終わり、自分の部屋で一休みしてからデレの部屋に向かいましたが、扉を開けるなり目に入った
ツンちゃんの苦渋の表情で、私達は引き返すことを決意したのですが……。
 
(゚、゚トソン 「急用が」
 
ζ(´д`;ζ 「あからさまにウソだよね?」
 
( ^ω^) 「僕、お腹いっぱいだお」
 
ζ(´д`;ζ 「ブーンちゃん、ブーンちゃん?」
 
デレは文句を言いながら、ぐいぐいと私たちを部屋の中へ押しやり、座って待っててねーと、明るい調子で料理に戻りました。
隣を見ると、ツンちゃんが疲れた様子で机に突っ伏しています。
 
(゚、゚トソン 「状況を聞いても?」
 
ξ;--)ξ 「なーんか妙に張り切っちゃっててね……」
 
疲れ切った様相のツンちゃんが状況をかいつまんで説明してくれます。
曰く、ツンちゃんは疲れてるから大人しく見てて。
時折聞こえる、あれ? とか、ドンマイ! とかの言葉。
聞く度に変わるメニュー。
 

72 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 22:39:15.03 ID:7FuxW4Ne0
 
ξ;--)ξ 「それと……」
 
(゚、゚;トソン 「もう結構です、ええ。やっぱり急用が……」
 
ξ;゚ー゚)ξ 「アタシが大人しく逃がすとでも?」
 
^ω^)ソーッ...
 
ξ;゚ー゚)ξ 「ブーン? あんた、逃げようとしてないわよね?」
 
(;^ω^) 「お! してないお!」
 
ζ(´ー`*ζ 「もうすぐ出来るからねー」
 
キッチンから、デレの楽しげな声が聞こえてきます。
いつになくやる気ですし、自信もあるようには見えますが、果たしてどうなのでしょうかね。
 
(゚、゚トソン 「ねえ、ツンちゃん、何故デレはあんなにやる気なのですか?」
 
ξ;--)ξ 「こっちが聞きたいわよ。帰ってくるなりあの調子だったんだから……」
 

74 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 22:40:52.56 ID:7FuxW4Ne0
 
そうですか。ならやはり、理由はツンちゃんでしょうね。
調子の悪いツンちゃんの為に、デレは張り切っているのでしょう。
それならば、ここは覚悟を決めて、最後まで付き合うしかありませんかね。
 
ζ(´д`;ζ 「あれ? あ、いや、大丈夫か……多分」
 
(゚、゚トソン 「……」
 
ζ(´ー`*ζ 「よしここで、これを入れて……、あ、こっちか。オッケー、混ぜれば問題なし」
 
( ^ω^) 「……」
 
ζ(´д`;ζ 「あ、失敗! ……ドンマイ」
 
ξ゚听)ξ 「……」
 
ζ(´ー`*ζ 「お、これでもいいかも。あれだね、失敗は成功のパパだね」
 
(゚、゚トソン 「……急用」
 
ξ;゚ー゚)ξ 「マジで帰らないで、ホント頼むから」
 
・・・・
・・・

75 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 22:41:42.88 ID:7FuxW4Ne0
 
ζ(´ー`*ζ 「出来たよー!」
 
それから約20分後、デレの料理は完成しました。
私達の目の前に置かれたのは丼が1つずつです。
 
(゚、゚;トソン 「ずいぶんとコンパクトになりましたね……」
 
ζ(´ー`*ζ 「作ってたら途中で減ったね」
 
主に材料が足りなくて、とデレは言います。
丼をよく観察してみると、なんでしょう、何と形容すればいいのかわかりませんが、サラダ丼ですか?
上には肉か何か炒めたものも乗っていますが、基本は野菜ですね。生と火を通したものの両方。
 
(;^ω^) 「おー……」
 
dζ(゚ー゚*ζ 「ブーンちゃんのはお肉大目にしといたよ。ホントは野菜もいっぱい食べなきゃダメなんだぞー?」
 
ブーンがおずおずとお箸を手にし、こんもりと積み重なった野菜をめくり、下のご飯を見ているようです。
私も気になったので、ブーンと同じように野菜をめくって下のご飯を見てみました。
今日は珍しく黒くないようです。黒くはないようですが……
 

77 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 22:43:29.84 ID:7FuxW4Ne0
 
ξ;゚听)ξ 「……何でご飯がピンクなの?」
 
ζ(´ー`*ζ 「隠し味ー」
 
ξ;゚听)ξ 「隠れてねぇぇぇぇ!」
 
ζ(゚ー゚*ζ 「野菜で隠しておいたよ?」
 
ξ;゚听)ξ 「隠し味はそういう意味じゃないわよ」
 
(゚、゚;トソン 「まあ、とにかく、頂きましょうか……」
 
   「「「「いたたぎまーす(お)」」」」
(;^ω^)ξ;゚听)ξζ(´ー`*ζ(゚、゚;トソン
 
      「「「「……」」」」
(;^ω^)ξ;゚听)ξζ(´ー`*ζ(゚、゚;トソン
 
いただきますと宣言をしたものの、誰も箸をつけようとしません。
互いの視線と手元を伺い、その動向を計ります。
デレは、皆が食べて何か反応するのを待っているのか、お箸をおいたまま、ニコニコと見ています。
 

82 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 22:46:04.54 ID:7FuxW4Ne0
 
ζ(´ー`*ζ 「……あれ、食べないの?」
 
(゚、゚;トソン 「食べますよ?」
 
(;^ω^) 「食べるお」
 
ξ;゚听)ξ 「食べるわよ」
 
私達は、ほぼ同時にそう答えましたが、やはり箸は動かず、お互いを見ています。
しかし、このままでは埒が明きませんし、ブーン達に毒──味見をさせるのも忍びませんから、
やはり私が食べるしかないのでしょうかね。
 
そう思い、箸を丼に近づけた所、ツンちゃんがため息を1つつき、おもむろに食べ始めました。
 
ζ(゚ー゚*ζ 「……どうかな?」
 
ξ゚听)ξ 「……全体的に味が濃いわね」
 
ζ(゚ー゚;ζ 「そう? ちょっとメリハリきかせたかったんだけど……」
 
私は、そんな2人のやり取りを見ながら、自分も箸をつけ、口に運びました。
 

83 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 22:46:35.67 ID:7FuxW4Ne0
 
(゚、゚トソン 「……意外に普通に食べられますね。あ、ブーンにはちょっと辛いかも」
 
(;^ω^) 「お? そうなのかお?」
 
ζ(゚ー゚;ζ 「意外に!? 辛いのはちゃんと対策してあるよ?」
 
デレは人差し指を立てて左右に振り、何故か胸を張って言います。
 
dζ(´ー`*ζ 「ブーンちゃん、ご飯といっしょに食べて見て」
 
( ^ω^) 「お。わかったお」
 
ブーンは早速丼に箸をつけ、デレに言われた食べ方を試しているようです。
私も、半信半疑ながらも同じようにやってみました。
 
( ^ω^) 「お? ちょっと甘いお? お、でも辛いお? 甘辛いお?」
 
(゚、゚トソン 「ご飯の方がえらく甘いですね。意外と具の辛さとあってますが……」
 
ζ(゚ー゚;ζ 「また意外!?」
 
(〃^ω^) 「お! これ結構おいしいお! 僕は好きだお」
 
ζ(´ー`*ζ 「ホントー? 良かったー」
 

85 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 22:48:03.96 ID:7FuxW4Ne0
 
(゚、゚トソン 「このピンクなのはあれですね──」
 
ζ(゚ー゚*ζ 「うん、サクラ田麩だよ。冷蔵庫にあったの。いつのかは不明」
 
等と多少不穏な事を言うデレですが、サクラ田麩はそれなりに賞味期限は長かった気はするので大丈夫でしょう。
何と形容していいかわからない創作料理ではありましたが、デレの意図した味にはなっていたようです。
 
デレは私達の反応に満足したのか、自分も料理を食べ始めます。
 
ζ(-へ-*ζ 「うーん……、ツンちゃんが言うように、ちょっと味の濃淡が強過ぎたかもね」
 
ξ゚听)ξ 「これはちょっとってレベルじゃないわよ。……まあ、あんたにしちゃ食べられる味だけどね」
 
ζ(^ー^*ζ 「えへへ、ありがとう、ツンちゃん」
 
・・・・
・・・
 
私とブーンは食事を終え、食後の会話を楽しんでいましたが、ツンちゃんが眠そうに見えたので、
早めに部屋に戻りました。
 

86 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 22:49:05.38 ID:7FuxW4Ne0
ガチャ
(〃^ω^) 「ただいまーだお」
 
(゚、゚トソン 「はい、おかえりなさい」
 
(〃^ω^) 「お!」
 
(゚ー゚トソン 「ただいま」
 
(〃^ω^) 「おかえりーだお」
 
部屋で迎えてくれる誰かがいるのは嬉しいものだと、以前にブーンに話したら、2人で外出した時も、こうやって
挨拶をしあうのが当たり前になってしまいました。
ずっといっしょにいたのだから、意味のない行為かもしれませんが、それでも何故か嬉しく感じているのも確かです。
 
私はポットのお湯を沸かし直し、コーヒーを2人分淹れました。
 
(〃^ω^)U~ 「ありがとうだお」
 
~U(゚、゚トソン 「今日は何もない1日でしたね」
 
( ^ω^) 「お? そうかお? 色々あったお」
 

91 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 22:59:27.06 ID:Jifvy4YaO
 
いつもとさして変わらない平和な日常、そんな意味で私は何もない1日と言いました。
しかし、ブーンは今日あった些細な、しかし、沢山の様々な事をあげていきます。
 
朝ちょっと寝坊して、朝ご飯抜きにされそうになった事。
私がいない午前中の間に、机の周りを掃除した事。
お昼ご飯の玉子焼きがとっても美味しかった事。
公園に行ったけど誰もいなかったからちょっとがっかりだったけど、私と散歩できて嬉しかった事。
デレのご飯が黒くなかった事。
 
(〃^ω^) 「お! そうだお! 図鑑であの草調べなきゃだお!」
 
(゚、゚トソン 「そうでしたね、どんな草だったか覚えてますか?」
 
(〃^ω^) 「お、確か緑色で細長くて──」
 
私にとっては何事もない1日でも、ブーンにとっては色々な事があった楽しい1日だったようです。
私は、それが少しうらやましいと思います。
私もそんな風に考えられたら、きっともっと毎日が楽しくなるのでしょうから。
 
(〃^ω^) 「お! これじゃないかお? ほら、トソン、これこれ!」
 
(゚、゚トソン 「どれですか? ……ああ、何となくこれっぽいですね。でも、ちょっと違うようなあってるような……」
 

92 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 23:00:16.01 ID:Jifvy4YaO
 
(;^ω^) 「おー……、そう言われるとちょっと違ったようにも見えるお……」
 
ブーンは私がそう言うと、少々自信無げに首を傾げます。
私も、真面目に思い出そうとしますが、今一つ、特徴のない草だったのでこれと言い切る自信がありません。
 
(゚、゚;トソン 「……困りましたね、考えれば考える程どうだったかわからなくなりました」
 
(;^ω^) 「おー、僕もだお。緑で細長かったのしかわかんなくなったお」
 
(゚、゚;トソン 「……」
 
(;^ω^) 「……」
 
(゚ー゚トソン 「……フフ」
 
(〃^ω^) 「……おっお」
 
私達は顔を見合わせて笑いました。
私は、すごくどうでもいい事なのに、必死になって考えているのがおかしくて。
ブーンが何故笑ってるのかわかりませんが、ひょっとしたら私が笑ってしまったからなだけかもしれません。


94 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 23:04:03.51 ID:Jifvy4YaO
 
(゚、゚トソン 「もう、何でブーンはちゃんと覚えてないんですか?」
 
( ^ω^) 「おー? トソンだって覚えてなかったお?」
 
(゚ー゚トソン 「あー? 私のせいにするんですか?」
 
ヾ(〃^ω^)ノシ 「おっおっお。トソンもちゃんと覚えておいてお!」
 
私は生意気な事を言うブーンを捕まえて、後ろからくすぐりました。
もちろん、ふざけて言っているのはわかってますが、私もふざけてやっていますからおあいこでしょう。
 
(゚ー゚トソン 「人のせいにしちゃダメでしょ?」
つ〃^ω^) 「おっおっお! くすぐったいお! やめてお!」
 
結局、また2人で見に行って確かめるということで落ち着きました。
ほんの些細な事ですが、また2人の約束が増えましたね。
 
こうやって、何事もないようで色々ある毎日を、これからも私達はいっしょに過ごしていくようです。
 
 
 〜 第五話 おしまい 〜
 
    − つづく −   
 

95 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 23:04:39.08 ID:Jifvy4YaO
 
 〜 ( ^ω^)の日記 〜
 
 9月×日 はれ
 
今日はちょっとねぼうしちゃったお。
そしたら、トソンが、ねぼうする子は朝ごはんぬきですってこわかったお。
ごはん食べられないとしょんぼりだお。
朝ごはん食べられたけど、明日はちゃんと早おきするお。
 
お昼の玉子やきもおいしかったお。
トソンの玉子やきはおいしいお。甘いやつがおいしいお。
トソンはしょうゆあじのこいのもおいしいって言うけど、ぼくは甘いほうがすきだお。
 
いつものこうえん行ったけど、今日はツンもヒートもいなかったからおさんぽにしたお。
そしたら、トソンがいたお。いっしょにおさんぽしたお。
やっぱり1人のおさんぽよりたのしいお。つぎ行くときは、あの草のことをちゃんとおぼえるお。
 
ばんごはんはめずらしくデレが作ったお。
黒くなかったお。びっくりだお。
ちょっと甘くておいしかったお。デレもやればできるお。すごいお。
 
今日はいっぱい、たのしいことがあったお。
明日もぜったい、たのしいことがいっぱいあるお。
 

98 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 23:07:21.01 ID:Jifvy4YaO
 
 〜 (゚、゚トソンの日記 〜
 
今日は日記を書く前に、ブーンの日記を見せてもらいました。
なんでもないように見える1つ1つの事が、楽しい出来事であり、ブーンにとっての思い出なのですね。
 
私は毎日の出来事を日常という枠にはめ、同じことの繰り返しとすることで、毎日を平坦にし、
楽にすることでつまらなくしていたのかもしれませんね。
 
同じ事なんてないはずなのに。
 
下手をすると、朝ご飯の献立すら覚えてないかもしれません。
 
反省、というのもおかしな話ですが、毎日の1つ1つの事を楽しまないのはもったいないのかもしれませんね。
 
もっとも、ブーン達がそばにいる時点で、毎日は賑やかで楽しいものですけどね。
 
私は毎日笑顔でいられますから。
 
時々、羽目を外し過ぎて疲れさせられることもありますけど、それもそれで、後になったら思い出の1つ、
私達の過ごした毎日の結果です。
 

99 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 23:07:39.29 ID:7FuxW4Ne0
 
そろそろ季節も進み、気候も穏やかになってきました。
衣替えも近いですし、洋服の入れ替えもやらないといけませんね。
 
ブーンにも、上着ぐらいは着せた方がいいのでしょうかね。
さすがに寒さは感じるみたいですし。
ジャンパーとかの方がいいですかね。どうせ走り回って暑くなって脱いだりするでしょうし。
子供用の服とかわかりませんし、調べないといけないでしょう。
 
そう考えると、私の毎日もやはり色々とやる事がありますね。
同じじゃない1日が明日も待っています。
 
今日もいっぱい、楽しい事がありました。
同じじゃない今日を、ブーンといっしょに過ごしました。
そして──
 
 
(゚ー゚トソン 「明日も絶対、楽しいことがありますよね、ブーン?」(〃´ω`)zzz
 
 
 − 十七章 残暑と私と秋の風 おしまい −
 
 
   − 夢は次章へつづきます −   
 

106 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 23:19:01.95 ID:7FuxW4Ne0
 
< 商店街 12月某日 >
 
 
(゚、゚トソン 「もうすぐクリスマスですね。街に飾り付けが増えました」
 
( ^ω^) 「おー? くりすます?」
 
(゚、゚トソン 「元々はキリスト教という宗教のお祭りだったのですが、今は単に12月24日からのお祭りですね」
 
(〃^ω^) 「おー! じゃあ、この赤とか緑の飾りはお祭りのかお! どんなお祭りだお」
 
(゚、゚トソン 「そうですね、チキンとケーキを食べて、サンタさんからプレゼントをもらうぐらいですか」
 
(〃^ω^) 「おー! ケーキ食べられるのかお! すごいお、くりすます!」
 
( ^ω^) 「でも、さんたさんって誰だお? 知らない人から物もらっちゃダメだお?」
 
(゚ー゚トソン 「あー……、まあそうなんですが、その人は特別なんですよ」
 
・・・・
・・・
 

107 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 23:19:31.23 ID:7FuxW4Ne0
 
(゚、゚トソン 「──というわけなんですよ」
 
( ^ω^) 「お! わかったお。サンタさんは赤いおひげのおじいちゃんだお!」
 
(゚、゚トソン 「ところで、ブーンは何か欲しいものはありますか?」
 
( ^ω^) 「おー? おー……」
 
(゚ー゚トソン (図鑑とかでしょうかね? それとも、そろそろ金魚さんを飼いたいとか……)
 
( ^ω^) 「おー……」
 
(゚ー゚トソン (ジャンボハンバーグとか食べ物の線もありますね……)
 
( ^ω^) 「お。別にないお」
 
(゚、゚;トソン 「……え? ないって、欲しいものは何にもないんですか?」
 
( ^ω^) 「欲しいものはあるお。でも、もう持ってるお」
 
     ギュッ
(〃^ω^)つ(゚、゚トソン
 

108 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 23:21:40.99 ID:7FuxW4Ne0
 
(゚ー゚*トソン 「……ブーン、ありがとう」
 
(゚、゚トソン 「でも、本当に何もないんですか? 読みたい本とか、食べたいものとか」
 
(〃^ω^) 「そういうものあるけど、サンタさんにお願いしなくても大丈夫だお」
 
(〃^ω^) 「今度また、図書館に連れて行って欲しいお」
 
(゚、゚トソン 「ええ、今借りてる本の期限がもう間もなくですから、返す時にいっしょに行きましょう」
 
(〃^ω^) 「あと、今ちょっとお腹空いたから、ショボンまんじゅう食べたいお」
 
(゚、゚トソン 「ああ、ショボンさんが手を振っておられますね。ちょっと寄ってみますか」
 
(〃^ω^) 「うんお!」
 
(〃^ω^) 「お! 僕のお願い全部かなったお! サンタさんにお願いしなくても大丈夫だお」
 
(゚、゚トソン 「ブーン……」
 

111 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 23:23:56.25 ID:7FuxW4Ne0
 
(´・ω・`) 「やあ、いらっしゃい。早速注文を聞こうか?」
 
(〃^ω^) 「こんにちはですお。ショボンまんじゅうくださいですお!」
 
(´・ω・`) 「ブーン君はいつも元気がいいね。よし、今日は特別に開発途中の
       ギガショボン饅頭を食べてもらおうかな」
 
(〃^ω^) 「おおー! でっかいお!」
 
(´・ω・`) 「うん、そうなんだ。昨今のラージサイズブームに乗っかってだね……」
 
(゚、゚;トソン 「少し遅くないですか、そのブーム?」
 
・・・・
・・・
 
< 貞子宅 12月某日 >
 
 
(゚、゚トソン 「──というような事が数日前にあったんですよ」
 

113 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 23:25:51.35 ID:7FuxW4Ne0
 
ミセ*゚∀゚)リ 「くぁー! ブーンちゃん健気だねー。良い子過ぎんだろ」
 
ζ(゚ー゚*ζ 「ホントだねー」
 
(゚、゚トソン 「ブーンが良い子なのはわかりきってますよ。そんな事ではなくてですね……」
 
川д川 「遠慮し過ぎる子にしちゃったかも、って心配?」
 
(゚、゚トソン 「それもあります」
 
ミセ*゚ー゚)リ 「あー、なるほどね……」
 
ζ(´へ`;ζ 「トソンちゃん、時々鬼のように厳しいからねー」
 
(゚、゚;トソン 「そ、そうですか?」
 
川ー川 「そんな事はないと思うよ」
 
ミセ*゚ー゚)リ 「まあ、そんな事はあるんだけど、多分、ブーンちゃんはそう思ってないし、
       遠慮もしてないと思うな、私は」
 

114 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 23:27:42.20 ID:7FuxW4Ne0
 
(゚、゚;トソン 「前半は置いておくとして、後半の根拠は?」
 
ミセ*゚ー゚)リ 「だって、ブーンちゃん正直な良い子じゃん」
 
(゚、゚トソン 「……」
 
ミセ*゚ー゚)リ 「と言うか、無いって言ってるんじゃなくて、もう持ってるって言ってるんだからさ、
       トソンがいっしょにいてあげればそれでオッケーなんでしょ?」
 
川ー川 「そうだね」
 
ミセ*゚皿゚)リ 「妬けるけどな。コンチクショーめ。うらやましいんじゃ!」
 
ζ(^ー^*ζ 「やっぱそうだよねー。私もツンちゃんといっしょにいてあげないと」
 
(゚、゚トソン 「あ、参考までにツンちゃんにも聞いた所、ゼアー・フォッターの最新刊が欲しいそうですよ」
 
ζ(´д`;ζ 「ツンちゃん!?」
 
川;д川 「……クリスマスにあげる物が事前にわかってよかったね」
 

117 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 23:30:12.50 ID:7FuxW4Ne0
 
ζ(´д`;ζ 「うん、明日買ってくるよ。最新刊って何てタイトルだっけ?」
 
川д川 「ええっと( ∴)ゼアー・フォッター氏の悲報だったかな?」
 
ミセ*゚ー゚)リ 「ヒートちゃんは?」
 
川ー川 「ブーンちゃんと似てるかも」
 
(゚ー゚トソン 「そうなのですか」
 
川ー川 「それプラス、美味しいご飯だったけどね」
 
ミセ*゚д゚)リ 「それは私も欲しいなぁー」
 
ζ(゚ー゚*ζ 「あ、私も」
 
(゚、゚;トソン 「立ち直り早いですね」
 
ζ(゚ー゚*ζ 「まあ、ツンちゃんも色々と気を使ってくれてるんだろうしね」
 
(゚、゚トソン 「それはどういう?」
 

119 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 23:32:45.93 ID:7FuxW4Ne0
 
ミセ*゚ー゚)リ 「優柔不断なデレがプレゼント決め切れないと踏んだかな?」
 
川д川 「かと言って、何もしないと自己嫌悪しそうだもんね、デレちゃん」
 
(゚、゚トソン 「なるほど」
 
ζ(-へ-*ζ 「加えて予算の範囲内。我が家の経済事情までちゃんと把握しちゃってるよねー」
 
(゚ー゚トソン 「ツンちゃんらしいですね」
 
ミセ*゚ー゚)リb 「結論、皆良い子」
 
川ー川 「……だね」
 
ζ(゚ー゚*ζ 「まあ、わかってたことだよね」
 
ミセ*゚ー゚)リ 「……んで、トソンはどうしたいの? それもあるって事は他にもあるって事だよね?」
 
(゚、゚トソン 「ええ、ですからデレや貞子と同じですよ。ブーンの気持ちはわかった上で、私も何かあげたいのです」
 
ζ(゚ー゚*ζ 「うん、それで?」
 

120 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 23:34:26.40 ID:7FuxW4Ne0
 
(-、-トソン 「何かブーンの欲しがりそうなものに心当たりはありませんかね?」
 
川д川 「それはトソンちゃんが1番わかるんじゃないのかな?」
 
(゚、゚トソン 「候補はいくつかあるのですが、今一つ決め切れなくて……」
 
ζ(゚ー゚*ζ 「トソンちゃんがあげるんなら、何でも喜びそうだけどね」
 
ミセ*゚ー゚)リ 「だとしても、その中でもっともブーンちゃんが喜びそうなものがいいってとこかな、欲張りさんめ」
 
(゚、゚*トソン 「そんな所ですね」
 
川ー川 「そっかそっか、それなら色々アイデア出してみよっか」
 
・・・・
・・・
 
(゚、゚トソン 「……うーん、皆の発想も私とほぼ同じですね」
 
ζ(´へ`*ζ 「本にペット、食べ物、動物園の入場券(トソンちゃん付き)」
 
川д川 「私はヒートちゃんにマフラーも編んでるけど、今からじゃさすがに無理だよね、そういうのは」
 

121 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 23:38:22.13 ID:7FuxW4Ne0
 
ミセ*-へ-)リ 「まあ、皆の意見が揃って同じって事は、その辺は確実に大喜びするって事ではあるんだろうけどね」
 
(-、-トソン 「ですよね……。ですが……、今一つ、私達の、何ですかね、この何と言うか、その……」
 
川д川 「珍しく歯切れが悪いね」
 
ζ(゚ー゚*ζ 「いつもはえぐる様にずけずけと直球なのにね」
 
(-、-;トソン 「上手い表現が見つからないのですよ。……と言いますか、デレ、私は普段そんなにひどいですか?」
 
ミセ;゚ー゚)リ 「自覚が無い時点で……」
 
ζ(゚ー゚;ζ 「ひどいんじゃないかなー……」
 
・・・・
・・・
 
< トソン宅 同日 >
 
(゚、゚トソン 「……結局決まらずですか」
 

123 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 23:42:49.30 ID:Jifvy4YaO
 
(-、-トソン 「あの中なら何でもいいのでは、と皆は言いますが……」
 
(-、-トソン 「私の中で何か引っかかっているんですよね……」
 
(゚、゚トソン 「ブーンはまだ帰ってこないですね」
 
(゚ー゚トソン 「この寒いのに、今日も元気に走り回ってるのでしょうね」
 
私は、部屋の中を見回しました。
この部屋で、私はブーンと出会いました。
 
あの時と違って、部屋には色んなものが沢山並べられています。
その中には、私が1人で暮らしていたら、絶対に置いてないようなものもあります。
 
(゚ー゚トソン 「もう……、本は読んだらちゃんと片付けましょうって、いつも言ってるのに……」
 
この図鑑だってそうですね。
私は動物や魚、植物も嫌いではありませんが、図鑑を買って置いておくことはしなかったでしょうし。
 
私は、図鑑をブーン用の本棚のスペースに並べます。
そこには、何冊かの図鑑、絵本など共に、私1人では絶対に手に入らなかったものも並んでいます。
 

124 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 23:44:24.56 ID:Jifvy4YaO
 
(゚、゚トソン 「この日記も、何冊目ですかね……」
 
その1つ1つに、私達2人の思い出が詰まったブーンの日記帳。
どのページをめくっても、私はその時の事を思い出し、笑顔が溢れてしまいます。
 
(゚ー゚トソン 「ああ、こんなこともありましたね。……そういえば、一番最初はどんなこと書いてたんでしたっけ?」
 
(゚、゚トソン 「……」
 
(゚、゚トソン 「……これは」
 
私は植物図鑑を手に取り、気になったページをめくろうとします。
しかし、私が見たかったページは、探すまでもなく自然に開かれました。
 
(゚、゚トソン 「……このページ、随分と開かれた跡がありますね」
 
(-、-トソン 「……ブーン、そうですね、そうでした。あなたはちゃんと、覚えているんですね」
 
・・・・
・・・


126 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 23:46:38.69 ID:Jifvy4YaO
 
< トソン宅 12月24日 貞子宅でのパーティー後 >
 
 
(〃^ω^) 「お腹いっぱいだおー! トソンも貞子も料理上手だお!」
 
(゚、゚トソン 「ちょっと食べ過ぎですよ。よく入りましたね?」
 
(〃^ω^) 「お祭りだお! いっぱい食べるお! チキンもケーキも美味しかったおー!」
 
(゚ー゚トソン 「ええ、美味しかったですね」
 
(〃^ω^) 「楽しかったお!」
 
( ^ω^) 「……おー、もうこんな時間だお。お風呂入って寝るお」
 
(゚、゚トソン 「あ、ブーンは先にお風呂に入ってください」
 
( ^ω^) 「お! わかったお!」
 
・・・・
・・・
 

127 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 23:48:39.52 ID:Jifvy4YaO
 
ヾ(〃^ω^)ノシ 「お風呂あがったお。ポッカポカだお──お?」
 
( ^ω^)つ□「これ、何だお?」
 
(゚、゚トソン 「先程、サンタさんが見えられまして、ブーンにプレゼントだそうです」
 
(;^ω^) 「おー? でも、僕、サンタさんにお願いしてないお?」
 
(゚、゚トソン 「良い子にしている子供の所には、サンタさんは来てくれるんですよ」
 
(;^ω^) 「おー……」
 
(゚、゚トソン 「開けて見てください」
 
( ^ω^) 「お! うんお!」
 
( ^ω^)つ□ ガサガサ
 
( ^ω^)つU 「お?」
 
( ^ω^)つU 「……おー!?」
 

129 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 23:51:45.60 ID:Jifvy4YaO
 
( ^ω^)つU 「これ、スミレさんのカップだお」
 
(゚、゚トソン 「そうみたいですね。ブーンはこれが欲しかったのですか?」
 
(〃^ω^)つU 「おー! うんお! これ、欲しかったんだお!」
 
(;^ω^) 「あ、でも、違うお! 欲しかったのは僕のじゃないお! これ、トソンにあげたくて──」
 
U⊂(゚、゚トソン スッ
 
(;^ω^) 「お?」
 
(゚、゚トソン 「私も頂きました」
 
( ^ω^) 「おー……」
 
(゚ー゚トソン 「私も良い子にしていたので、サンタさんがプレゼントしてくれたのですよ」
 
(〃^ω^) 「おー! そうだお! トソンはすっごく良い子だお!」
 
(〃^ω^) 「いっつも早起きしてご飯作ってくれるお! お片付け忘れないお! お掃除ちゃんとやるお!」
 
(〃^ω^) 「晩ご飯おいしいお! いっしょにおさんぽに行ってくれるお! それから、それから──」
 

132 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 23:53:42.75 ID:Jifvy4YaO
 
(゚、゚トソン 「ブーン? サンタさんからのプレゼント、受け取ってもらえますか?」
 
( ^ω^) 「お……」
 
( ´ω`) 「おー……。このカップ、すっごく嬉しいお。……でも、また割っちゃうかもだお」
 
(゚、゚トソン 「大丈夫ですよ。あの頃とはブーンもだいぶ違います」
 
(゚、゚トソン 「毎日お片づけ手伝ってくれましたし、お掃除もちゃんとできるようになりました」
 
(゚、゚トソン 「お勉強もがんばってますし、早起きは……まだまだですが、好き嫌いもありますけど、でも──」
 
(゚ー゚トソン 「あの頃よりはずっとお兄ちゃんになりましたよ」
 
(〃´ω`) 「おー、ホントかお? 僕、もうカップ割らないかお?」
 
(゚、゚トソン 「ええ、割りませんよ。それに──」
 
(〃´ω`) 「お?」
 
(゚、゚トソン 「言いましたよね、形あるものはいつか壊れるのものなのです、と」
 

133 :◆iW2kGg44LU :2008/12/24(水) 23:56:45.23 ID:Jifvy4YaO
 
(゚、゚トソン 「使っていればいつかは壊れるかもしれません。失敗して、割ってしまうかもしれません」
 
(゚、゚トソン 「その時は、コーヒーカップに今までのお礼を言って、また今度は失敗しないよう、長く使えるよう、
      次のカップを大事に使ってあげましょう」
 
(〃´ω`) 「おー……」
 
(゚、゚トソン 「ブーンはもう、コーヒーカップをちゃんと大事に使えるお兄ちゃんです。胸を張ってそう言えます」
 
(゚ー゚トソン 「今までちゃんと、がんばってきたでしょう?」
 
(〃´ω`) 「うんお……、僕、お兄ちゃんになれるようがんばったお」
 
(゚ー゚トソン 「だったら、いっしょに使いましょう、この、スミレさんのコーヒーカップ」
 
(〃´ω`) 「……お」

(゚ー゚トソン 
 
(〃^ω^) 「うんお!」
 
(^ー^トソン 
 

136 :◆iW2kGg44LU :2008/12/25(木) 00:00:02.91 ID:m9bhzjIw0
 
(;^ω^) 「お、でも今まで使ってたあのカップはどうするお? 壊れてないのに使わないのはかわいそうだお?」
 
(゚、゚トソン 「そうですね……、あっちのステンレス製のはココア用、こっちのカップはコーヒー用って事にしませんか?」
 
(〃^ω^) 「おー! それはいい考えだお!」
 
(゚、゚トソン 「じゃあ、そういうことで……」
 
(゚ー゚トソン 「早速コーヒーを頂きましょうか?」
 
(〃^ω^) 「お! 僕が淹れるお!」
 
 
 
 
 − クリスマス特別編 ブーンと私とスミレのカップ おしまい −
 
 
  Merry Christmas!
 
(〃^ω^)U~ ~U(゚ー゚トソン
 

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