3 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 21:29:36.18 ID:orm2JtK/0

 − 第二十章 ミセリと私と白い部屋 −

 〜 第一話 〜


おはようございます、都村トソンです。

年も明け、冬季休業も終わり、大学が始まりました。
今の時期は特に行事もなく、定期試験などもありませんので、比較的落ち着いた毎日をおくれています。
いつものように私はブーンと、そして皆といっしょに日々を過ごしているわけです。

ζ(゚ー゚*ζ 「おはよー、ミセリちゃん」

ミセ*゚ー゚)リノ 「よ、お2人さん、今日も仲良く同伴出勤ですか。かー、妬けるねー」

(゚、゚トソン 「おはよう、ミセリ。朝から頭の中身が焼けてるのですか?」

大学への登校途中、ミセリが合流してきました。
軽口はいつもの事ですが、今日のはまた一段と意味がわかりませんね。

ミセ;゚ー゚)リ 「おはよう、相変わらず冷たい返しだな……。少しはノレよ」


5 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 21:31:04.60 ID:orm2JtK/0
  ムギュゥ
(゚、゚((^ー^*ζ 「私とトソンちゃんはラブラブだから! こんな感じ?」

(゚、゚トソン 「デレを1人で行かせると大学に辿り着けない恐れがあるから仕方ないでしょう」

ζ(゚ー゚;ζ 「全スルー!? 冷た!」

いちいち乗るのも面倒なので、スルーして応対したのですが、デレはそれが不満なようでした。
ついでに大学も、流石にもう迷わないとデレは言いますが怪しい所です。

ミセ*゚ー゚)リ 「まあまあ、こいつに面白い反応を求めてるのが間違ってるんだって」

ζ(゚ー゚*ζ 「まあ、そうなんだけどね」

(゚、゚トソン 「面白味がなくてすみませんね」

ζ(゚ー゚*ζ 「トソンちゃんを面白くしたい時は、想定の範囲を越えた行動を取らなきゃダメそうだもんねー」

(゚、゚;トソン 「無理に奇行を演じなくてもいいですから」

ミセ*゚∀゚)リb 「デレの場合は、普通にやってても奇行に近いんだから無理では──」


6 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 21:33:15.07 ID:orm2JtK/0
─┘ゴシャッ!
ミセ*。 。)リ ゲホァ!

話の途中で突然ミセリが地面に沈みました。
ミセリの頭に乗っている足を見れば、その原因は特定できますが──

ヽ/ ゚、。 /  「よ」

ζ(゚ー゚*ζ 「あ、ダイオード先輩おはようございます」

(゚、゚;トソン 「おはようございます、ダイオード先輩。今日は斬新なアングルからきましたね」

d/ ゚、。 /  「かかと落とし……休み中に……覚えた……」

ミセ*;ー;)リ 「だから、何で蹴るんですか!? おはようございます!」

(゚、゚;トソン 「何故、そんな技を?」

/ ゚、。 /  「これ蹴るのも……マンネリ化してきた……気分一新?」

ミセ*;ー;)リ 「その為だけに!?」


9 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 21:34:50.74 ID:orm2JtK/0

ζ(゚ー゚*ζ 「ミセリちゃんだけの為になんだから、喜ぶべきとこなんじゃないかな?」

ミセ;゚д゚)リ 「喜べるかぁぁぁぁ!」

/*゚、。 / ポッ

ミセ;゚д゚)リ 「そこでノラなくていいですから!!!」

全く、毎度の事ながら騒がしい事ですね。
私は、バカバカしくて賑やかなこのじゃれ合いを苦笑しながら眺めていました。

ζ(^ー^*ζ 「これは想定の範囲外だった?」

(゚、゚トソン 「どういう意味ですか?」

デレは私が笑っていた事を目ざとく見つけ、指摘してきました。
私は、肩をすくめ、しかし、少しばかり口の端を歪めてデレに言います。

(゚ー゚トソン 「まあ、かかと落としは想定できませんでしたね」

私達は、ぶつぶつと文句を言うミセリをなだめつつ、からかいながら大学へ向かいました。


12 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 21:36:13.67 ID:orm2JtK/0
・・・・
・・・

ミセ*>д<)リ ハックション!

ζ(゚ー゚*ζ 「あれ? ミセリちゃん、風邪?」

2コマ目の授業が終わり昼食の時間となりましたが、流石に冬場は芝生で、とはいかず、次の授業の講義室で取る事にしています。
そうするようになってからは、購買に買いに行くよりはお弁当が増えました。
ブーンのお昼も用意しますし、その方が経済的ですからいい事ではあります。

ミセ*゚ー゚)リ 「んー、違うとは思うけど、流石に外は寒いねー」

デレですらお弁当を作るか、前日からパンなどを買ってたりしていますから、
お昼に購買まで買いに行くのは、ここの所ミセリ1人です。
たまに貞子がお弁当を与えたりもしていますが、それ以外はほぼ購買か学食で済ませています。

(゚、゚トソン 「風邪は引かなさそうですが、寒いならお弁当を自分で用意しておけばいいものを……」

ミセ*゚ぺ)リ 「だって料理できないし」

ミセリはそう言って頬を膨らましながら、購買の袋からパンを取り出します。
買ってくるものも大体決まっていて、いくつかの種類からローテーションを組んでいるようです。


14 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 21:37:36.79 ID:orm2JtK/0

(゚、゚;トソン 「またそれですか……」

ミセ*゚∀゚)リb 「これ、美味いんだって」

川д川 「うん、前に食べてみたけど、意外に美味しかったよ」

貞子がフォローを入れますが、私はミセリが取り出したその、金平ゴボウパンに顔をしかめます。
これと肉じゃがコロッケパンがミセリのお気に入りのようです。

ζ(゚ー゚*ζ 「コロッケパンの方は文句なしで美味しかったよ?」

ミセ*゚ー゚)リ 「どっちも美味いって。オススメ、オススメ」

(゚、゚トソン 「不味いとは言いませんが、むしろ、わざわざ貞子がそれを買って食べていたのが驚きですね」

川д川 「あ、ミセリちゃんにおごってもらったの」

何でも、いつもお世話になっているから、との事らしいですが、それならば貞子には及ばぬものの、
私もお世話をしているような気がしますが。


16 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 21:38:39.69 ID:orm2JtK/0

ミセ*゚ー゚)リ 「ん? 半分食べる?」

(゚、゚;トソン 「いえ、いいです」

川ー川 「食わず嫌いはもったいないと思うけどね。こう、意外な組み合わせって面白いよね」

食わず嫌いではなく、ミセリの食べかけの半分をもらうのに抵抗があっただけですが。
しかし、貞子が勧めるのなら、次回購買で昼食となった時は買ってみましょうかね。

(゚、゚トソン 「貞子はパンも作るつもりですか?」

川ー川 「その内作りたいとは思ってるよ。今は安価でホームベーカリーがそろえられるしね」

ζ(゚ー゚*ζ 「今は多機能な炊飯器で焼けたりするらしいね」

ミセ*゚ー゚)リb 「貞ちゃんがパン焼く日が来たら、ぜひ、貞ちゃんの和風テイストな料理を具にしたパンを
        色々焼いて欲しいものだねー」

何故、和風? と、思いもしましたが、存外に貞子が乗り気なので何も言わない事にしました。
和風でも焼きそばパンとか美味しいですしね。あれが和風なのかわかりませんが。


18 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 21:41:27.42 ID:orm2JtK/0

何にせよ、ケーキも焼く貞子です。貞子が焼くパンを食べられる日もそう遠くはない気がします。

ミセ*゚ー゚)リ 「筑前煮パンとか良くない?」

(゚、゚;トソン 「水気が多いのは止めた方が……」

ζ(´ー`*ζ 「サクラ田麩パンとか見た目が良さそうだよね」

(゚、゚;トソン 「サクラ田麩のみですか?」

川д川 「……うん、それならその2つを合わせると──」

(゚、゚;トソン 「貞子、ひょっとして真面目に考えてます?」

2人の適当な意見に、貞子の目が料理人のそれに変わります。
止めるべきなのか迷いましたが、貞子が作る以上、食べられないものにはならないでしょうし、
試食はミセリがやるでしょうから口を挟むのは止めました。
代わりに自分も、意見を出すことにしておきました。

d(゚、゚トソン 「冷奴パンとかどうですかね?」


 〜 第一話 おしまい 〜

    − つづく −   


19 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 21:43:09.25 ID:orm2JtK/0

 〜 第二話 〜


(゚、゚トソン 「……今日も寒いですね」

目を覚ますと、今日も底冷えのする冬の朝でした。
布団から出るのが億劫ですが、無情にも、本日も1コマ目から授業があります。

(〃´ω`) zzz

隣を見ればブーンはまだ、幸せそうに眠っています。
起こすのはかわいそうですが、これから布団を出ねばならない身の上の私が、多少うらやましがっても
それは仕方のない事でしょう。
私は、冷えた手を暖かいブーンの頬にそっと当てました。

(〃´ω`(⊂(゚、゚*トソン

・・・・
・・・


21 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 21:45:31.38 ID:orm2JtK/0

(〃つω`) 「おはようだお。今日も寒いおね」

(゚、゚トソン 「おはよう、ブーン。もうすぐ朝ご飯ですから、お顔を洗って座っててくださいね」

それからしばらくの後に起き出して来たブーンは、トテトテと洗面所へ歩いて行きます。
ブーンは朝は苦手ですが、寒さはそうでもありません。
流石に、この時期の水は冷たいですが、それでも朝は目を覚ますために顔を水で洗っているようです。

(;^ω^) 「おー、冷たかったおー」

(゚ー゚トソン 「お湯でお顔を洗ってもいいのですよ?」

( ^ω^) 「それだとまた寝ちゃうお。ちゃんと起きるお」

ブーンはいつかの約束を守るべく、朝、ちゃんと起きる努力をしています。
早起きはまだ苦手ですが、1度起きたら2度寝はしないようにがんばっているみたいです。
まあ、お昼寝は時々しているみたいですがね。
私としては、朝、ブーンがちゃんと起きてくれてお見送りしてくれるのは素直に嬉しいものです。

(〃^ω^) 「今日の朝ご飯なんだお?」

(゚、゚トソン 「昨日の残りで申し訳ないですが、シチューです」


23 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 21:46:16.48 ID:orm2JtK/0

ヾ(〃^ω^)ノシ 「お! 僕シチュー大好きだお!」

(゚ー゚トソン 「ええ、ですから少し多めに作っていましたけどね」

連日になるとわかってて作り、そしてそれをブーンが気にしないことを前提で謝っているのですから、何ともおかしなものですね。
謝罪と言うよりは前置きか、謙遜のようなものでしょうか。少し違う気もしますが上手い言葉が思い付きません。
いい加減、要件だけで話せればいいのですが、如何せん、長らく染み付いた性質はそう簡単には変わりません。
それでも、最初の頃よりは大分砕けてきたとは皆から言われてはいるんですけどね。

(〃^ω^) 「お昼もシチューかお?」

(゚、゚トソン 「流石にそれは飽きるでしょうからパスタを作っておきました。暖めて食べてくださいね」

ブーンはお昼もシチューでも良かった様な事を言いましたが、食事が偏るのも宜しくないのでちゃんと別に作りました。
まあ、シチューならバランスよく食材も入ってはいるんですけどね。
むしろパスタの方が偏りが大きいので、サラダもいっしょに作って置きました。残さず食べて欲しいものです。

( ^ω^) 「おー? でも、シチューがちょっと余っちゃったお?」

(゚、゚トソン 「これは私が持って行きますので」


24 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 21:48:20.51 ID:orm2JtK/0

と言っても、私が食べるのではなく、ミセリに食べさせようと思っての事です。
昨日は家に来ませんでしたし、ミセリもシチューは好きみたいですからね。

( ^ω^) 「お? でも、冷たいお? 冷たいとシチューはおいしさ半分だお」

確かにブーンの言う通りですが、どうせミセリに食べさせる……ではなく、私達はヘリカル先輩のつてで、
ゼミ室の電子レンジ自由に使わせてもらっているので、その点は安心です。
総代の特権だとヘリカル先輩は仰られてましたが、私や貞子も自由に使わせてもらっています。
ダイオード先輩が仰るには、それは当たり前、との事ですが、まあ、確かに、私達は4人で総代をやっているようなものですからね。

(〃^ω^) 「おー、大学でもチンって出来るのかお。すごいお」

(゚ー゚トソン 「大学も一応は人が暮らす場所ですからね」

他の大学の例を知らないので比較などはできませんが、うちの大学ではゼミ室は割と自由な環境のようです。
お湯も使えますので、お茶やコーヒーなども持ち込んで淹れてもいいと言われています。

(〃^ω^) 「おー、大学便利だおー。また行ってみたいお」

(゚、゚トソン 「お勉強するところですから、普通の日はブーンにはあまり面白くもないと思いますけどね」


26 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 21:52:47.86 ID:orm2JtK/0

そう言いはしましたが、明らかにブーンの目が行きたいと主張しているので、今度の休みにでも学内を散歩がてら歩いてみますかね。
何かあればまた、ブーンをぬいぐるみだと主張すれば何とかなるでしょう。
……なるのでしょうか?

(゚ー゚トソン 「その内散歩にでも行きましょう。授業のない時なら多分大丈夫ですから」

ヾ(〃^ω^)ノシ 「うんお! お散歩行くお! 大学行くお!」

私は、ブーンと約束をして、ついでに食事の後片付けもお願いして、大学へ出かけました。

(〃^ω^)ノシ 「いってらっしゃーいだお」

(゚ー゚トソン 「いってきます」

やはり、見送ってくれる人がいるのは嬉しいですね。
私は、改めてそう思い、デレを迎えに階段を上がりました。

・・・・
・・・


27 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 21:54:38.69 ID:orm2JtK/0

ζ(゚ー゚*ζ 「あれ?」

(゚、゚トソン 「どうかしましたか?」

大学への通学途中、急にデレが疑問の声を上げました。
私は立ち止まり、同じく立ち止まったデレの顔を見て聞きます。

ζ(゚ぺ*ζ 「いつもならこの辺でミセリちゃん合流してこない?」

確かに、いつもならこの辺りでひょっこりと出て来ますね、ミセリは。
よくわからない軽口を叩きながら。

(゚、゚トソン 「寝坊でしょう」

元々、ミセリはそんなに時間に几帳面なタイプではありません。
夏前まで、この辺りで合流していっしょに通学することは稀でした。
私達は、デレがぐずらない限りはほぼ同じ時間にここを通りますので、特に約束はしていないミセリが
合流するかしないかはミセリ次第でした。

ζ(゚ー゚*ζ 「最近はずっといっしょだったからねー。ちょっと珍しいかな、って」


29 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 21:56:36.21 ID:orm2JtK/0

そう言われてみればそうだった気もします。
少なくとも冬に入ってからは、1コマ目がある日は毎日、私達は3人で通学していました。

(゚、゚トソン 「まあ、ミセリの事ですから遅刻する日もあるでしょう」

ζ(゚ー゚*ζ 「それもそうだね。今日はダイオード先輩と遭遇する日でもないしね」

(゚、゚トソン 「今日は漫才は無しですね……」

いつもの賑やかな掛け合いが見れない事を、少し残念がっている自分に気付き、軽く頭を振りました。

(゚、゚トソン 「取り敢えず、大学へ向かいましょう」

私はデレを促し、再び大学への道を歩き始めました。

・・・・
・・・

川д川 「おはよう……あれ? ミセリちゃんは?」

既に1コマ目の講義室に到着していた貞子は、挨拶に続いてミセリの事を聞いてきます。
貞子にも、私達が3人で通学しているイメージが根付いているのでしょうか。


31 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 21:59:43.99 ID:orm2JtK/0

ζ(゚ー゚*ζ 「おはよー。何か来なかったね。遅刻かも」

(゚、゚トソン 「まだ来ていませんか?」

川д川 「見てないし、2人より先に来るのは考え難いね」

そうなるとやはり遅刻でしょうか。寝坊でもしたのかそれとも……。
取り敢えず私達は電話をしてみる事にしました。

【川д川 「……繋がらないね。……あ、貞子です、大学に来てないので電話しました。どうしたのかな?」

ζ(゚ぺ*ζ 「留守電かー」

ミセリは、と言いますか、現代の大学生ならばほぼ携帯は肌身離さず持っているでしょうから、
何かしらあったのかもしれませんね。
などと少し心配になって来たところに、ミセリからのメールが貞子の携帯に届きました。

川;д川 「……ありゃ、ミセリちゃん風邪みたい。『熱あるから休む。ノートよろしく』だって」

(゚、゚;トソン 「ミセリが風邪ですか……」


34 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 22:03:07.57 ID:orm2JtK/0

これまでお腹1つ壊す事もなかったミセリですからかなり珍しい事です。
そもそも風邪を引かない子だと思っていた部分もありますし。

ζ(-へ-*ζ 「珍しいね。いわゆる、鬼の乱獲ってやつ?」

(゚、゚;トソン 「霍乱ですよ。鬼をいっぱい捕まえてどうするんですか……」

言葉は間違えていましたが、私もデレと同じ感想です。
ミセリが病気で休むという考えは全く頭にありませんでしたし。

しかしそうなると、ミセリ用に持ってきたシチューはどうしましょうかね。

(゚、゚トソン 「授業が終わったらお見舞いに行ってみますか」

風邪で寝込んでいるならある意味シチューは丁度いいかもしれません。
何も食べていない可能性もありますし、シチューなら食べやすいでしょうし。
この季節なら傷む事もないでしょうしね。

川д川 「そうだね……あ、でも、家の住所、聞いてる?」

(゚、゚トソン 「あ──」


37 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 22:07:46.66 ID:orm2JtK/0

そういえばそうでしたね……。
何度か聞きはしたのですが、あっちの方だとか色々と適当にはぐらかされた覚えがあります。
私も、ミセリは常に私か貞子の部屋にいたので、さほどの必要性も感じませんでしたからしつこく聞いてはいません。

手紙等は出す機会もありませんし、年賀もメールでした。
その日に顔を合わせるのにメールの必要性があるか疑問でしたが、今はそういう問題ではないので置いておきます。

川;д川 「知らないよね、ミセリちゃんの住所」

(゚、゚;トソン 「常に我々の部屋にいましたからね。自分の部屋には寝に帰ってたぐらいですよね」

ζ(゚ー゚*ζ 「あ、私聞いてたよ。近く通った時にこの辺の何とかってアパートって聞いた」

(゚、゚トソン 「そうなのですか? それは良かっ──」

これで道が開けそうな気がしましたが、私はある事を思い当たり、言葉を切りました。
そして再度質問をデレにぶつけます。

(゚、゚トソン 「それは住所を書いた紙か何かを受け取りましたか?」

ζ(゚ー゚*ζ 「違うよ。近く通った時に教えてもらっただけ」


39 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 22:08:35.43 ID:orm2JtK/0

(゚、゚トソン 「では、何丁目辺りですか? 行けばわかりますか?」

ζ(´ー`*ζ 「あれは何丁目だっけ? ……この街って何丁目まであった? あれ? 10? 20?」
 _, ,_
(-、-トソン 「デレ、建物の名前は正確には何でしたか?」

ζ(´ー`;ζ 「……えーっと……何とか……パセリだっけ? ……それしか覚えてないかなー」

川;д川 「……ダメかな、これは」

ええ、ダメでしょうね。極度の方向音痴のデレですから。ここを頼るのは危険でしょうね。
下手をすると、今日中にミセリの家には辿り着けない可能性もあります。

ひょっとするとそれがわかっていてデレには教えていたでしょうか。

(゚、゚トソン 「……となれば仕方ありませんね」

・・・・
・・・


40 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 22:11:29.69 ID:orm2JtK/0
コンコンコン
(゚、゚トソン 「失礼します」
 
( ゚д゚ ) 「ん? 都村か。どうした?」

3コマ目の授業が終わり、私は指導教官であるミルナ先生の部屋を訪れていました。
本当は昼休みにもお伺いしたのですが、生憎、御留守のようで、放課後にようやく捕まえる事が出来ました。

(゚、゚トソン 「少々お尋ねしたい事が──」

私は、現状をかいつまんで説明し、ミセリの住所を教えて欲しい旨をお伝えしました。

( ゚д゚ ) 「なるほど……。しかし、なんと言うか……」

(゚、゚;トソン 「ええ、少々不自然と言うか間抜けなお話なのは承知しています」

( ゚д゚ ) 「あ、いや、まあ……、そうじゃな……くもないな。本当にお前らはいつもいっしょにいるもんな」

(゚、゚;トソン 「いつもってわけでもないんですけどね。違う授業も受けてますし、夜は自分の家に帰ってますし」

( ゚д゚ ) 「いっしょに暮らしてんのじゃないかとか、できてんじゃないかとか色んな噂も聞いたぞ?」
 _, ,_
(-、-;トソン 「さすがにそれは勘弁してください」

特に後者は。何ですかそれは。


43 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 22:12:58.12 ID:orm2JtK/0

そんな噂が立ってるのは知りませんでしたが、恐らくヘリカル先輩辺りが面白おかしく告げたのかもしれませんね、
ミルナ先生に。割と仲良さそうでしたし。

と言いますか、そういう話をこうもフランクに当人にしますかね?
軽くセクハラのような気もしなくはないですが、この方は本当にただの世間話程度に話している様にしか見えませんから
今は流しておきます。

( ゚д゚ ) 「わかった、住所だな。本当なら当人に許可を取るべきかも知れんが……まあ、都村になら教えても
      かまわんだろうな……」

そう仰られて、ミルナ先生は書棚のファイルを取り出し、住所録を探し始められたようでした。
ミルナ先生の目の前にはPCのディスプレイが鎮座していますが、そちらで閲覧できるわけではないようです。

( ゚д゚ ) 「あった、あった、これだな。ほれ」

私はミルナ先生が差し出されたファイルを受け取り、住所を手帳に書き写しました。
同時に、この住所が大体どの辺りかの見当を頭の中でつけておきました。

(゚、゚トソン 「どうもありがとうございました。助かりました」

( ゚д゚ ) 「いや、かまわんよ。お前がやってる事は褒められるべき行為だしな」


45 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 22:14:00.43 ID:orm2JtK/0

(゚、゚;トソン 「大袈裟ですね。そんな大層な事ではないかと」

( ゚д゚ ) 「普通にそう思える事が、お前達がいい関係なんだと想像できるな」

やけに褒めてこられるミルナ先生に、背筋に何かむず痒いものを感じ、退席すべく謝辞を述べました。
ミルナ先生は笑って、友達は大事にしろよ、と仰られました。

(゚ー゚トソン 「ええ、大事にします。一応、友達ですからね」

( ゚д゚ ) 「うん、そうか。じゃあ、来佐にお大事にと──ひょっとして来佐の家の事とかも何も知らなかったりするのか?」

(゚、゚トソン 「……ミセ──いや、来佐さんの御実家の事ですか? ええ、特に聞いた覚えは……」

言われてみれば、ミセリから家族の話など聞いた事はないような気がします。
私自身がほとんど家族の話をしなかったせいもあり、特に気にしてはいませんでしたが……。

(;゚д゚ ) 「そうなのか? あ、いや、聞いてないならいいんだ、うん」

(゚、゚;トソン 「何ですか、その露骨な訳有り感は……」

気になったのでミルナ先生をやんわりと問い詰めてみましたが、今から行くのなら本人から聞けばいいと、もっともな逃げ口上を
述べられましたので、冷たい視線を送る程度で止めて、再度礼を言ってミルナ先生の部屋を出ました。


48 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 22:18:03.29 ID:orm2JtK/0

(゚、゚トソン 「……しかし」

考えてみれば、私を含め、3人とも思った以上にミセリの事を知りませんでしたね。
何と言っていいのかわかりませんが、少なくとも、わずかに寂しさを感じたのは事実です。
いつもそこにいるのが当たり前で、いつだろうと連絡も付いたから気にも留めていませんでしたが。
ある意味では希薄な関係だったのかもしれませんね。

(-、-トソン 「……ですが」

私達は上辺だけの関係だったとは思っていません。
知らなかったのなら、これから知ればいいだけですからね。

少なくとも──

(゚、゚トソン 「これまで過ごしてきた時間はウソではないのですからね」

ミセリに何かしら理由があったのは察しは付きますが、それが風邪を引いた友達を見舞いに行かない理由にはなりませんからね。
私は、書き写した住所に再度目を通し、急ぎ足で歩き出しました。

*(‘‘)* 「おう、トソン、住所はわかりましたですか?」


50 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 22:20:32.00 ID:orm2JtK/0

(゚、゚トソン 「はい、お陰様で」

しかしながら、歩き出してすぐにヘリカル先輩に止められてしまいました。
ヘリカル先輩には昼にミルナ先生が捕まらなかった時に事情を話しています。
ミルナ先生がこの時間ならいるという情報も、ヘリカル先輩から教わった物です。

*(‘‘)* 「それじゃあ、これから見舞いですか?」

(゚、゚トソン 「ええ、そのつもりです」

*(‘‘)* 「そうですか……」

私は、建物がすぐに見つかる保証もないので急ぐ旨を伝え、その場を離れようとしましたが、ヘリカル先輩に引き止められました。
しかし、珍しくヘリカル先輩は歯切れが悪く、用件を切り出されません。

(゚、゚トソン 「……あの、ヘリカル先輩? どうかされましたか?」

*(;‘‘)* 「べ、別にどうもしてませんですよ。ただ──」

(゚、゚トソン 「ただ?」


52 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 22:22:29.68 ID:orm2JtK/0

*(;‘‘)* 「こ、こいつを渡しといてくれですよ。み、見舞いですから!」

ヘリカル先輩は早口にそう仰り、私にビニール袋に入った何か固い物を押し付けて去っていかれました。
私は、しばし呆然としていましたが、今の行動の意味をようやく理解して、1人吹き出してしまいました。

(゚ー゚トソン 「普通に渡してくれればいいものを」

何だかんだで心配なのですね。いい先輩でミセリが羨ましいです。蹴られたくはないですけども。
まあ、私の先輩でもあるのですが。私が風邪を引いたら、私にも何か差し入れしてくれるのですかね?

そんな事を考えつつ、私は再び歩き出しました。少し足を速め、道を急ぎます。
外は少し風の強い、冬の午後の空でした。


 〜 第二話 おしまい 〜

    − つづく −   


54 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 22:23:54.11 ID:orm2JtK/0

 〜 第三話 〜


(゚、゚トソン 「この辺りのはずですが……」

メゾン・ド・ペルシル、なんとも大層な名前ではありますが、大概において、マンションやアパート名はとかく誇張されがちです。
私は、住所が示す番地辺りに辿り着き、その名前の建物を探していました。

デレと貞子は相談の結果、病人の家に大勢で押しかけるのも良くないだろうという結論に達し、今回は私1人での訪問となっています。
デレには、万が一ミセリに看病が必要な場合、ブーンのご飯を用意してもらえるよう頼んでおきました。
その場合は一度家には帰るとは思いますが、念の為の措置です。

(゚、゚;トソン 「……これ……ですかね?」

その建物は先ほどから何度か前を通りはしましたが、さすがにこれではないだろうとスルーしていたものです。
しかし、メモしてきた住所はこの建物を指し、よく見ればマンション名もちゃんとメゾン・ド・ペルシルと書かれているようです。

これまでに得られた情報は、この建物をミセリの家だと指してはいるのですが、どうにも頭が受け入れを拒否しています。
何せこの建物は──

(゚、゚;トソン 「……大きいですね」

メゾン・ド・ペルシルは私の住んでいるホワイトVIPとは比べ物にならないほど大きく、立派な建物でした。


55 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 22:24:34.84 ID:orm2JtK/0

(゚、゚;トソン 「守衛さん(?)とかいますね。あそこで受け付けをしないと入れないのでしょうね……」

正直なところ、こういう高級感溢れる建物にお邪魔した経験はないので、どうすればいいのかどうにも勝手がわかりません。
多少逡巡いたしましたが、私はただ友達のお見舞いに来ただけですので、開き直って入り口の方へ向かいました。

(-@∀@) 「こんにちは。どういったご用件でしょうか?」

ドアを開け、中に入ると入り口に接した小さな部屋のような物の中から、先ほど見えた守衛さんらしき方が声を掛けてこられました。
見た所、40〜50代の、あまり力仕事には向いていなさそうな感じの方です。

(゚、゚トソン 「こちらの1001号室に住んでいる来佐ミセリさんの大学の友達です。
      風邪で寝込んでいるみたいなのでお見舞いに伺いました」

そこまで詳しく用件を言う必要があったかはわかりませんが、守衛さんはそうですかー、と人の良さそうな笑みを浮かべ、
今、部屋に問い合わせると仰って、奥に引っ込まれました。

待つ間、手持ち無沙汰になった私は、改めて建物内を観察します。
インテリアや壁など見てもよくわかりませんが、どことなく上品な雰囲気で、高価な物のように思えます。
ここから先はロックされているようで、居住者から許可がなければ立ち入れないようですね。


57 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 22:25:30.14 ID:orm2JtK/0

(;-@∀@) 「すみません、1001号室の来佐さんと連絡がつかないのですが……」

しばらくして、先ほどの守衛さんが申し訳なさそうにそう告げてこられました。
ミセリは熱があるようなので、寝てしまっていて連絡がつかないのでしょうかね。

私は、ミセリが病人で、倒れている可能性もあると説明しますが、守衛さんは難色を示されます。
どうにもマニュアル対応しか出来ない方のようですね。

(゚、゚トソン 「わかりました。ちょっと電話してみますね」

朝、貞子がかけた時はつながりませんでしたし、出る可能性は低いですが、ダメ元でかけてみます。
メールを打つ元気があるのですから、電話に出れなくもないかもしれません。

【(゚、゚トソン 「……出ませんか──ミセリ?」

そろそろ留守電に切り替わるかと思った矢先に、電話がつながりました。
返事はありませんが、確かにつながっている音はしています。

【(゚、゚トソン 「ミセリ? 生きてますか? 私がわかりますか?」

「……トソン? ……何か用? ちょっちヤバいってか、寝てるから用件は簡潔に……」


59 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 22:27:23.90 ID:orm2JtK/0

【(゚、゚トソン 「今あなたの部屋の下に来てます。鍵を開けてもらえませんか?」

「……は? 何で……ここが?」

【(゚、゚トソン 「後で説明しますから、とにかく部屋に上げてください」

「……いや、来てもらってなんだけど、大した事ないから……」

【(゚、゚トソン 「さっき自分で“ヤバい”と言っていたでしょ? 御託はいいからとにかく鍵を開けなさい」

「何で命令形──」

【(゚ー゚#トソン 「開けろ」

「……はい」

私は交渉の結果に満足し電話を切りました。
各部屋からもここの扉の鍵は開けられるようです。

(゚、゚トソン 「と言うわけで、開けてもらえるようです」

(;-@∀@) 「最後の方、脅してませんでした?」


62 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 22:29:45.85 ID:orm2JtK/0

(^ー^トソン 「気のせいですよ」

次からは顔パスでお願いしますねと、多少無茶なお願いに笑顔を添えて、私は中の扉を開け、エレベーターへ向かいました。
守衛さんが心なしか引きつって見えていたのは目の錯覚でしょう。

私は、エレベーターに乗り込み、10階のボタンを押しました。

(-、-トソン 「冷静に考えれば、1001号室で大きな建物だと気付くべきでしたね……」

私は、静かに上昇するエレベーターの中で今の状況を整理し直していました。

・・・・
・・・

(゚、゚トソン 「……」

1001号室の前に立ち、ネームプレートに書かれた“KISA”という文字で、
ここがミセリの部屋だというのは改めて確認できました。

私は、呼び鈴を鳴らすべく手を伸ばしかけましたが、鍵が開いているのならわざわざ病人を起こして応対させる事もないので、
ノックだけしてからドアを開けました。


65 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 22:31:46.26 ID:orm2JtK/0
ガチャ
(゚、゚トソン 「ミセリ? 入りますよ?」

<「うわ……ホントに来てるよ、こいつは……」

部屋の中から、多少かすれ気味ながらもいつもの調子のミセリの声が聞こえてきたので少し安心しました。
私は、ドアの鍵を閉め、玄関を上がり、部屋の奥に進みました。

(゚、゚トソン 「……広い部屋ですね」

間取りは私の部屋と同じ1ルームのキッチン付きといった所ですが、明らかにこちらの方が広いです。
室内にはそれなりに家電製品は揃い、なかなか充実した設備のようです。
ようなのですが……。

(゚、゚トソン 「……生きてますか?」

その部屋の一番奥の窓際に、ベッドが1つ置かれています。
布団がこんもりと持ち上がり、そこに誰かが寝ているのはわかりますが、布団を頭から被っているので顔はわかりません。
その布団の隙間から、私の問いに答えるように1本の腕が出てきてひらひらと存在を主張するかのように振られました。

(゚、゚トソン 「……布団を被ってると暑くないですか?」

返事はありませんが、元よりあまりしゃべらせない方がいいでしょうから、気にせずベッドに近付き、ゆっくりと布団をめくります。


66 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 22:32:18.79 ID:orm2JtK/0

ミセ; − )リ 「……」

(゚、゚トソン 「熱は……あるようですね。冷やした方がいいですね」

私は、ミセリの額に手を当て、様子を伺いました。
ひとまず手持ちのタオルで軽く汗を拭き、立ち上がります。

(゚、゚トソン 「勝手に設備は借りますよ?」

ミセ; − )リ 「……何で」

(゚、゚トソン 「……」

ミセ; − )リ 「……何で来たのさ?」

ベッドから離れようとした私に、ミセリは絞り出すような声で問いかけます。風邪で喉がおかしいのでしょう。
電話の時からわかってはいましたが、それならばそんな無意味な事は聞かなければいいのにと思います。

(゚、゚トソン 「……歩いて?」

ミセ; д )リ 「……そ」


68 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 22:34:10.20 ID:orm2JtK/0

私の見当違いの返答に、ミセリは口をパクパクさせ、何かを言おうとします。

(゚、゚トソン 「冗談です。無理にしゃべらなくていいから、聞いててください」

ミセ; д )リ 「……う」

私は、今の自分の気持ちをあまり考えない事にしました。
自分が今、ただ心配なのか、怒っているのか、それとも他の何かなのかは。

(゚、゚トソン 「あなたは、デレが風邪を引いたらどうしますか?」

ミセ; − )リ 「……」

(゚、゚トソン 「貞子が風邪を引いたらどうしますか?」

ミセ; − )リ 「……」

(゚、゚トソン 「そして私が風邪を引いたら……」

ミセ; д )リ 「……」

(゚、゚トソン 「それだけですよ。理由は友達が風邪を引いたから。その友達が1人暮らしならなおさらです」

ミセ; − )リ 「……」


70 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 22:34:59.98 ID:orm2JtK/0

それだけ言うと、私は台所へ歩いて行き、先程のタオルを水で洗います。
冷蔵庫を開けると、ほぼ空っぽの中にミネラルウォーターのペットボトルが入っていましたので、それをコップに注ぎ、
続いて冷凍庫を開けました。
残念ながら、氷嚢的なものはありませんでしたので、先程のタオルに氷を包みます。

(゚、゚トソン 「手持ちのタオルだけでは足りませんので、勝手に開けて探しますよ」

返事は期待してませんが、一応宣言だけして洋服ダンスと思わしきものの前に向かいます。
適当に開けて1枚タオルを取り出しましたが、何となく埃っぽかったので、再度物色し直しました。
その内の数枚は使った形跡があり、洗濯されているようでしたので、それを使う事にします。

即席の氷嚢を更にタオルで包み、冷たくなり過ぎないようにして、ミセリの頭に乗せます。
それでも冷たかったのか、何事かをうなるようにつぶやきましたが、氷嚢が頭からずり落ちるような事はありませんでした。
そして水を飲ませ、改めてミセリの状態を確認します。

(゚、゚トソン 「シャツを替えるべきかもしれませんが……」

シャツは大分汗を吸っているようで、湿った感じがします。
手にも汗が浮いていますし、身体は拭いた方がいいと思われます。
しかし、動かされると現状では体力的にきついかもしれません。
それに、まあ……


73 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 22:37:57.59 ID:orm2JtK/0

(゚、゚トソン 「どうしますか? 身体を拭いてシャツを替えますか? ……恥ずかしいなら自分でやりますか?」

同姓で、見慣れた、と言うと色々と誤解を招きますが、同じ温泉にも入ったような身ですし、今更恥ずかしがるような事でも
ないかもですが、それでも、病院でもないのに家族以外にそうされるのは恥ずかしいかもしれませんから、
私はミセリの返答を待ちました。

ミセ; − )リ 「……お願い……してもいいかな?」

しばらくの間の後、ミセリは苦しそうにそう答えましたので、私は極めて事務的にその作業をこなしました。

・・・・
・・・

ミセ* − )リ zzz

(゚、゚トソン 「……少し落ち着いたみたいですね」

着替えを終えたミセリに、安静にして寝ているようにと告げ、私はベッドのそばにキッチンの椅子を持ってきて座っていました。
時折、額の汗を拭いたり、タオルを替えたりと看病らしき事をしていたら、
ミセリの荒かった呼吸が静かになり、眠る事が出来たようでした。


75 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 22:39:30.55 ID:orm2JtK/0

(゚、゚トソン 「……しかし」

私は、改めて室内を見回します。
テレビやコンポを始め、一通りの家電製品は揃っています。
キッチンを見ても、炊飯器や電子レンジなど、生活に必要なものはほとんどあるのでしょう。

(゚、゚トソン 「……」

このマンションだとわかった時点で、ミセリが裕福な家庭の出なのは想像できました。

ミセ* − )リ zzz

普段の行いからは、これがお嬢様とは思い難い点も多々ありますが、改めて思い返すと、そういった物の知らなさ、嗜好などは
見受けられてた様にも思えます。
事実を知って初めて符合がいったという感じですが。

(゚、゚トソン 「……でも」

なんでしょうね、この感じは?
色々と物があり、快適な空間なはずのこの部屋が、何もない、真っ白な部屋に見えてしまいます。

私は、そんな違和感に引っ張られるように立ち上がり、テレビの前に立ちました。


76 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 22:41:42.88 ID:orm2JtK/0

(゚、゚トソン 「掃除はマメにしないと……」

テレビの上にはうっすらと埃が積もっています。
手持ち無沙汰になったとは言え、さすがに今掃除をするのは埃が舞ったりとまずいでしょうからしませんが、
この部屋は全体的に掃除が行き届いてませんね。

私は、ミセリを起こさない程度に静かに部屋を見て回りました。
掃除は行き届いていませんが、全体的に整った、綺麗な部屋という印象は受けました。

(゚、゚トソン 「生活感がないんですね……」

私は不意に、そんな答えが思い浮かびました。
この部屋に欠けている物。この部屋が白く感じるその理由。

考えてみれば、食事やお風呂など、一通りの生活に必須な行動は私や貞子の部屋で賄っていますからね。
ここでやっている事は、自分でやれと追い出された時の大学の課題とかぐらいなのではないでしょうか。
テレビぐらいは見ているかもしれません。以前話していたゲームには、埃が積もっていて、最近触られた形跡はなさそうでしたが。

(-、-トソン 「後はただ、寝るだけの部屋……」

私はまた、ミセリが眠るベッドのそばに近付きます。
いつの間にか外はだいぶ薄暗くなってきていました。冬の日は落ちるのが早いものです。


79 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 22:42:18.87 ID:orm2JtK/0

電気を点けようかと思いましたが、起こす可能性もありますので、そのままで私は、今度は椅子には座らず、床にそのまま腰掛け、
ベッドに背中を預けました。
そうすると丁度、眠っているミセリと同じぐらいの頭の高さになりました。

ミセ* − )リ zzz

(゚、゚トソン 「……何故でしょうね」

静かな寝息を立てるミセリに、答えの返って来ない質問をつぶやいていました。
その意味も意図も、私自身が理解していない質問を。

薄暗い部屋で、こうして座っていると、何だか昔を思い出してしまいました。
帰りの遅い両親を待つ小さな私。
何故か電気を点けずに、ただじっと、その時はベッドではなくソファーでしたが、同じように床に座り、背中を預けて。

何故でしょうね、その時電気を点けずに待っていたのは。
そうする事で、両親が早く帰って来るわけでもないのに。
暗闇にいる事で、自分の暗い気持ちを誤魔化せると思っていたのかもしれません。

年を取るにつれ、いつしか両親を待つ事はなくなり、私は私の生活をし出しました。
それはある種の諦めで、1人でいる事を当たり前とする事で。


80 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 22:43:21.49 ID:orm2JtK/0

別に両親が嫌いだったとか、仲が悪かったということはなくて、仕事で遅いのも理解していましたし、
育ててくれた事に感謝もしています。
ただ、そういった両親と触れ合う時間に期待をしなくなっただけで。仕方がない事だと納得しただけで。

(-、-トソン 

私はふと、ブーンの丸い、朗らかな笑顔が思い浮かびました。
今となっては、小さい頃のような1人の時間は耐えられないかもしれませんね。
ブーンのせいで、ブーンのお陰で。

そう言えば、デレに電話をしないといけませんね。
帰るのが遅れるかもしれません。ブーンのご飯、ちゃんと作ってもらわないと。

そんな事を考えてはいましたが、いつの間にか私は、まどろみの世界に落ちていきました。
ミセリの規則正しい寝息のリズムに誘われるかのように。


 〜 第三話 おしまい 〜

    − つづく −   


82 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 22:47:57.12 ID:orm2JtK/0

 〜 第四話 〜


小さな私。

暗い部屋。

まどろみ。

枕の感触。

また1人。

同じ毎日。

ただ1人。

これは夢です。それはわかっています。問題は、何故今こんな夢を見るのか、これは何の夢なのか。

見覚えのある部屋、見た事もない部屋。大きな人影が2つ、大きな人影が1つ。

待っている1人、待っているもう1人。諦めた1人、待ち続ける1人。

1人は私、それとも──


84 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 22:48:31.69 ID:orm2JtK/0

(-、-トソン 「……ん」

(゚、゚トソン 「……ここは」

私は、ミセリの部屋に見舞いに来ていたはずですが、どうやら少し眠ってしまっていたようです。
そこまでがすぐに知覚でき、私は、暗い室内を見渡し、蛍光素材で作られた時計を探し当てます。
時刻は午後9時。3時間ほど眠ってしまったようですね。

(-、-トソン 「何をやっているのやら……」

<「おはよう」

見舞いに来て患者を放り出して寝ていた自分への戒めと、デレに電話し損ねてブーンを放って置いてしまった自分への悔恨が詰まった
つぶやきに、背後から穏やかな聞きなれた響きが届きました。

(゚、゚トソン 「具合はどうですか?」

ミセ* ー )リ 「大分楽になったねー」

私は、ミセリの額のタオルを取り、手を当ててみましたが、確かに少し熱が下がったようにも感じられました。
といっても、まだわずかでしょうが、それでも本人の言葉通り、楽になっているような印象は受けました。


87 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 22:51:07.18 ID:orm2JtK/0

私は、すぐにタオルを濡らしにキッチンへ行きます。

ミセ* ー )リ 「……サンキューね」

(゚、゚トソン 「……病気の時ぐらいは」

気にするな、という言葉は敢えて続けず、額にタオルを当て、布団をめくり汗の状態を確認します。
また少し汗をかいているようですが、本人がまだ大丈夫というので、そのまま布団を綺麗にかけ直しました。

ミセ* ー )リ 「……」

(゚、゚トソン 「……」

特に話す事はありません。
まだあまりしゃべらせるべきではないでしょうし、本人が話したくない事を聞くつもりもありません。

ミセ* − )リ 「……あのさ」

(-、-トソン 「まだあまりしゃべらない方がいいですよ? のどの調子も悪いでしょうし、体力を消耗します」

ミセ* − )リ 「……うん、でも、ちょっとだけ、話聞いてもらえるかな」


91 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 22:52:59.93 ID:orm2JtK/0

今話さなければ、次に話す機会が来るのはいつかわからないから、ミセリはつぶやく様にそう言って、私の返事を待っているようです。
私は、無言で立ち上がり、冷蔵庫からミネラルウォーターと氷を入れたコップを持って戻ってきました。
電気は点けていませんので、転ばない程度にゆっくりと歩きました。

ミセ* ー )リ 「ありがと」

(゚、゚トソン 「……私は、いえ、私達はあなたが何であれ、友達です」

ミセ* ー )リ 「うん……わかってる」

私は、ミセリの方は見ずに、先程までと同じ位置に腰掛けました。
背中を預けたベッドから、つぶやくようにミセリが語り始めます。

ミセ* − )リ 「オワタ・バンクって知ってる?」

(゚、゚トソン 「名前ぐらいは。ITベンチャー企業上がりの中堅どころの会社でしたか」

ミセ* − )リ 「……あれ、うちのお父さんの会社」

(゚、゚トソン 「なるほど」

それがこの部屋の理由の半分ですね。
私は、暗いままの部屋を見るとはなく見回しました。


93 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 22:54:33.61 ID:orm2JtK/0

ミセ* − )リ 「別に隠したかったわけでもないんだけどね……」

(゚、゚トソン 「まあ、言い触らさない方が正解でしょう」

ミセ* − )リ 「うん、その方が──」

(゚、゚トソン 「その方が会社の信用を損なわずに済みますからね」

ミセ* д )リ 「そっちか──ゲホッ! ゲホッ!」

(゚、゚トソン 「風邪なんですからあまり興奮しないでくださいね」

ミセ* − )リ 「……お前は……」

ミセリは苦しそうに声を絞り出します。
私は水を注いだコップをミセリに差し出しました。

ミセリの危惧していた事はわかりますが、それは今更どういったところで考えても仕方のない事でしょう。
最初から、自分の出自を吹聴していれば、もっと色んな人からちやほやされたかもしれませんが、そうしなかったのは
ミセリが決めた事でしょうからね。


96 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 22:55:32.64 ID:orm2JtK/0

ミセ* ー )リ 「全く……まあ、そこはいいや。要するに私はお嬢様だったってわけですよ」

(゚、゚トソン 「はいはい、寝てるので寝言と聞き流してあげますから続きをどうぞ」

ミセ* − )リ 「この部屋も、最初、お父さん買おうとしたんだよ? 大学出たらこの辺で暮らすかどうかもわかんないのにね」

この部屋にあるもののほとんどが、お父さんが買い揃えさせたもののようです。
必要、不要はあまり考慮せず、一般的なモデルルームを参考にして。

ミセ* − )リ 「まあ、そうしたがる訳はわからなくもないけどね」

(゚、゚トソン 「……」

ミセ* − )リ 「私は、ほとんどお父さんと会ってないからね……」

(゚、゚トソン 「……お仕事ですか?」

ミセ* − )リ 「イエース。ほぼ正解」


101 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 22:57:27.23 ID:orm2JtK/0

仕事でいない両親が、せめてと、物で繕うのはわからなくもありません。
私自身にも思い当たる節が有りますから。

(゚、゚トソン 「ほぼ?」

ミセ* ー )リ 「それプラスαがあるのだよ、トソン君」

私が、そのプラスαとやらを考えていると、ミセリはさらりとした口調で、事も無げに言い放ちます。

ミセ* − )リ 「お母さんは小学生の頃に死んじゃってね……」

(゚、゚トソン 「……」

ミセ* − )リ 「でも、今は一応いるんだ。いわゆる、後妻ってやつ? 義母」

(゚、゚トソン 「……それがプラスαなのですか?」

ミセ* − )リ 「……もうちょい続きあってね」

その義母には連れ子がいた事。8つ下の義弟、9つ下の義妹が突然出来た事。
弟妹が出来た事は嬉しかった、でも、義母とはあまり上手くいかなかった事。
ミセリは淡々と、ただ過去の事実として思い出を語ります。


104 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 22:59:26.21 ID:orm2JtK/0

ミセ* ー )リ 「私は邪魔だったんじゃないかな、あの人から見たら」

(゚、゚トソン 「……」

ミセ* ー )リ 「自分の実の子達のほうが可愛いだろうし、後継ぎとかそんな風な話もね……」

(-、-トソン 「そういうのは、子供が考えるべき話じゃありませんね……」

ミセ* ー )リ 「そうだねー……。でも、普通に考えて、そういう風に理解してたなー」

中学生の時から。ミセリはそう言って、自嘲気味に笑います。
ミセリのお父さんが再婚なされたのがミセリが14の時。
ミセリは賛成したそうです。それでお父さんが元気になるのならと。

ミセ* ー )リ 「まあ、結局、仕事一筋の不器用なお父さんなわけで……」

(゚、゚トソン 「……」

ミセ* ー )リ 「私は……1人だったなー……」

チビ共とは仲良かったんだけどね、と、ミセリは続けますが、それも義母があまりいい顔をしなかったから
大っぴらには相手が出来なかったようです。


107 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:00:45.59 ID:orm2JtK/0

表面上は問題のない母娘のような関係で、その実は冷めたものだった、と、ミセリは言います。

ミセ* ー )リ 「私はさ……中学、高校と友達がいなかった」

全くいなかったわけではないけど、それも学校で話す程度の、クラスメートレベルの関係だったとの事です。
家に友達を呼ぶのも、何かはばかられたからと。
友達の家に行くのも、家を空けていいものか躊躇われたからと。

確かに、そんな付き合いの悪い人間に親しい友達は出来ない気はします。これは経験側ですが。

ミセ* ー )リ 「そんなこんなで大学へ。まあ、あれだね、大学デビューってやつを狙ってみたわけだよ」

(゚、゚トソン 「……」

ミセ* ー )リ 「佐藤さんはね、高校3年間ずっと同じクラスで出席番号が私の次だったんだ」

私は、ミセリが最初に私に話しかけてきたときの事を思い出しました。

ミセ* ー )リ 「明るくてね、いつも友達の輪の中心にいるような人だった」

もちろん、私はその輪の外枠にもいなかったけども、とミセリは変わらぬ調子のままで言い、少しの沈黙が場を支配します。


109 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:02:34.73 ID:orm2JtK/0

私は、再びコップに水を注ぎ、ミセリに手渡します。
ついでに、額のタオルを取り替えるべく立ち上がり、キッチンへ向かいました。

ミセ* ー )リ 「結局、3年間事務的な事と朝の挨拶ぐらいしか話してないかもなー」

(゚、゚トソン 「……」

私は、高校時代の友人の顔を順に思い出していました。
そう多いわけではなかったですが、少なくとも、遊びに行ったり来たりする友達の数人ぐらいはいました。
私のように、不器用で無愛想な性格ででもです。

ミセ* ー )リ 「あの時ね、結構テンパってたんだよー? 逆にそれがハイテンションな変なやつって感じで自然に見えたのかもだけど」

(゚、゚トソン 「……でも、あなたはあなたなのでしょう?」

ミセ − )リ 「聞かないの?」

(゚、゚トソン 「何をですか?」

ミセ − )リ 「いつまで演技をしてたのか? とか、騙していた罪悪感はないのか? とかさ?」


113 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:03:21.87 ID:orm2JtK/0

(゚、゚トソン 「アホ」

ミセ; д )リ 「……は?」

(゚、゚トソン 「ドアホ」

ミセ; д )リ 「……何それ? てか、質問の答えに──ゲホッ!」

(゚、゚トソン 「アホだからアホだと言ってるんですよ」

ミセ; д )リ 「いや──ゲホッ! ゲホッ!」

(゚、゚トソン 「ミセリが私の事を人を見る目がない人間だと馬鹿にするからです」

ミセ; д )リ 「だから──」

(゚、゚トソン 「水! 少し黙っていてください。……最初から言ってるでしょう?」

ミセ; д )リ 「……ゼーゼー」

(゚、゚トソン 「あなたはあなたで──私達の友達でしょう?」


114 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:04:01.03 ID:orm2JtK/0

ミセ д )リ 「……私は」

(゚、゚トソン 「あなたがあなたを演じてたと言うのならそれもいいでしょう。ただし、ド下手な大根役者です」

結局出ているのは地なんですよ。ミセリはミセリでしかない。
私達と出会ってから、ずっと変わらずミセリはミセリでした。

ミセ − )リ 「……これからも演じてろ、って事?」

(゚、゚トソン 「大アホ」

ミセ; д )リ 「え?」

(゚、゚トソン 「あなたは、私達と無理をして付き合ってましたか?」

ミセ − )リ 「……」

(゚、゚トソン 「あなたが何かしら無理をしていたら、私が──いや、私は兎も角、ブーン達が気付かないとでも思いますか?」

ミセ; − )リ 「……そこで他力なの?」

(゚、゚;トソン 「思いますか?」


118 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:05:16.55 ID:orm2JtK/0

ミセ; − )リ 「……いや」

ミセ* ー )リ 「バレるね。ツンちゃんとか鋭いし、ブーンちゃんも意外とね、よく見てくれてる」

(゚ー゚トソン 「そういうことですよ」

(゚、゚トソン 「あなたは無理をしていたわけじゃない。演じていたわけじゃない。むしろ演じていたのは──」

ミセ* − )リ 「……昔の私の方か」

(゚、゚トソン 「あなたは今、これまで押し殺していた本来の自分でいるだけです」

ミセ* − )リ 「……」

(゚、゚トソン 「……」

ミセ* − )リ 「……ごめん」

(゚、゚トソン 「アホ」

ミセ; д )リ 「!」


121 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:06:14.98 ID:orm2JtK/0

(゚、゚トソン 「アホ」

ミセ* ー )リ 「……ありがとう」

(゚、゚トソン 「いいからさっさと風邪を治してください。あなたが風邪を治さないと帰れないじゃないですか」

ミセ* へ )リ 「……帰りゃいいじゃん、愛するブーンちゃんの元へ。もうだいぶ楽になったからさ」

(゚、゚トソン 「アホ。あなたを放っておいて帰ったらブーンが心配するでしょう?」

ミセ* ー )リ 「……がんばって早く治すよ」

(゚、゚トソン 「アホ。そう簡単に治るわけないでしょ?」

ミセ; д )リ 「どうせいと──ゲホッ!」

(゚、゚トソン 「水! いいからちゃんと寝てなさい。色々と余計な事は気にせず、私達に甘えてください」

ミセ* ー )リ 「……うん」


126 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:07:23.66 ID:orm2JtK/0

そこで会話が途切れました。私が言うべき事は、大体言えたかとは思います。
聞くべき事は、いえ、聞くべき事は特にありませんでした。ミセリが話したければ話せばいい事です。
ミセリはミセリです。ただそれだけです。
ミセリが思うミセリよりは、自分がこれまで接してきて知っているミセリがミセリです。

(゚、゚トソン 「……」

(-、-トソン 「……今日の事は忘れた方がよいですか?」

ミセ − )リ 「……ううん、覚えておいて。出来れば──」


ミセ ー )リ 「一生……」


(-、-トソン 「……ええ」


再び会話は途切れ、暗闇と静寂に満ちた世界が広がります。
恐らくこれは、私とミセリが、過去に見ていた世界と同質の、しかし、今はもう──

(゚、゚トソン 「……さすがにお腹が空きました。食べられますか?」

ミセ − )リ" コクッ


128 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:09:17.16 ID:orm2JtK/0

(゚、゚トソン 「この部屋には米すらないのですね。おかゆぐらいはと思っていましたが……シチュー、食べますか?」

ミセ − )リ" コクッ

(゚、゚トソン 「……私の分がないのでちょっと買い物してきますね。10……20分ほどで戻りますから、鍵はお願いしますね」

ミセ − )リ" コクッ

(゚、゚トソン 「いってきます……」

ミセ*;−;)リ 「いってらっしゃい……」

私は、暗い部屋の中を躓かない様にゆっくりと玄関へ向かいます。
何かをすする様な音が聞こえましたが、布団カバーの変えはあったかどうか定かではありません。


 〜 第四話 おしまい 〜

    − つづく −   


133 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:10:57.89 ID:orm2JtK/0

 〜 第五話 〜


ミセ*゚∀゚)リ 「シチューウマー!!!」

買い物を済ませ、少し時間をつぶしてミセリの部屋に戻ると、電気が点いた明るい部屋でミセリはベッドに腰掛けていました。
本人の申告では、熱は問題ないぐらい下がったのでシチュー! ということでしたので、私は電子レンジでシチューを温めました。

(゚、゚トソン 「……ハァ」

ミセ*゚ー゚)リ 「ん? どしたの?」

(゚、゚トソン 「いえ、それだけ元気なら帰っていいですかね? ブーンも待ってますし」

ミセ;゚д゚)リ 「ええ!? さっき甘えていいって!」

露骨に慌てるミセリですが、残念ながら先ほど電話でブーンのことはデレに頼んでおきました。
ブーン本人とも電話で話しましたが、ちゃんとミセリのお世話をしてあげてということだったので、今日は泊まる予定ではいます。
ただ、ブーンの晩ご飯はどうやらカップ麺だったと推測されましたので、明日はちゃんと用意してあげないとかわいそうですね。

ミセ*゚ー゚)リ 「ねーお母さん、あれが食べたいなー」


134 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:11:47.33 ID:orm2JtK/0

(゚、゚;トソン 「お母さんは止めてくださいと……。あれとは?」

シチューを食べ終わったミセリは、再びベッドに横になり、本格的に甘え出して来ました。
病人じゃなかったら確実に黙らせていると思います。何か、武力的なもので。

ミセ*゚ー゚)リ 「あれはあれだよ、ほら、風邪といったら?」

d(゚、゚トソン 「……プリンですか?」

ミセ*゚д゚)リ 「惜しい! あ、そっちかー。そっちも捨てがたいけどさ、そっちじゃなくて……」

(゚、゚トソン 「……これですか?」

私は、そう言いながらキッチンのテーブルに置いたままにしておいたビニール袋を取り、中身を出してミセリに見せました。

ミセ*゚∀゚)リ 「そうそう、それそれ! すでに準備済みとは中々気が利くね! さすがトソン」

(゚、゚トソン 「お褒め頂き光栄ですが、残念ながらこれは私ではなく、ある方からの差し入れです」

ミセ*゚ー゚)リ 「マジ? 誰だれ? そんなナイスなセンスの持ち主は」

(゚、゚トソン 「ヘリカル先輩です」


137 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:12:38.20 ID:orm2JtK/0

ミセ*゚д゚)リ 「……は?」

私の答えに、間抜けな声をあげ、間抜けな顔で固まるミセリ。
私は、缶切りがあるかどうか、食器棚を物色することにしました。

ミセ;゚ー゚)リ 「え? 何で? え? いや、え?」

硬直が解けたミセリは、あからさまに頭にハテナマークを浮かべて狼狽します。
幸いにも、缶切りはありましたので、そのまま黄桃の缶詰を開けることにしました。

ミセ;゚ー゚)リ 「何でヘリカル先輩が? ……それ、開けて大丈夫? 何か仕込まれてない?」

(゚、゚トソン 「大丈夫ですよ」

ミセ;゚ー゚)リ 「何で言い切れるの? 何でヘリカル先輩が私にお見舞いの品なんか……」

(-、-トソン 「あなたが心配だからに決まってるじゃないですか」

ミセ;゚д゚)リ 「ウソだー!!!」

(゚、゚;トソン 「何故そう言い切れるのですか? 普段から仲が良いんですから、心配もするでしょう」


141 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:16:12.41 ID:orm2JtK/0

ミセ;゚д゚)リ 「いつも蹴られてるじゃん! どこが仲良いのさ!」

(-、-;トソン 「あなたは……、空気を読むのは得意じゃなかったのですか?」

ミセ;゚д゚)リ 「得意だよ? うん、多分。でも、え? ええ……?」

(゚、゚トソン 「まあ、とにかく、ヘリカル先輩が真面目に心配してたのは察してあげてください」

何だかんだで、私達の中ではミセリが一番付き合いが多いのですから。
夏祭りを始め、各種バイトにしろ、普段のスキンシップにしろです。

ミセ;゚ー゚)リ 「あれ、スキンシップなの? ……まあいいや、うん、ごちそうになります」

(゚、゚トソン 「毒見でもしますか?」

私は、そう言いながらミセリの前に黄桃を入れた小さめの深皿を差し出します。
ミセリは無言で首を振り、それを受け取りました。

ミセ*゚ー゚)リ 「つか、トソンも食べなよ」


143 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:17:36.38 ID:orm2JtK/0

(゚、゚トソン 「私は風邪を引いてるわけではありませんよ?」

ミセ*゚ー゚)リb 「食後のデザートってことでね」

風邪に桃缶、この発想はどこから来ているのかわかりませんが、少なくとも、このイメージは私だけのものではないようでした。
久しく食べていませんでしたし、せっかくですから頂いてみましたが、何とも懐かしい味で、思いの外、美味しく感じました。

ミセ*-∀-)リ 「美味いなー。何だろ? 何かホッとするって言うか……」

(゚ー゚トソン 「同感です。今度ブーンにも食べさせてあげましょうかね」

ミセ*゚−゚)リ 「ブーンちゃんか……」

(゚、゚トソン 「?」

ミセ*゚ー゚)リ 「いや、何でかなーって思ってね」

ミセリは、桜桃を口に運ぶのを止め、まっすぐにただ前を見て言います。
私はその目から読み取れる感情が何なのかわからずに言葉の続きを待ちました。


147 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:19:15.23 ID:orm2JtK/0
ミセ*゚ー゚)リ 「トソンにブーンちゃん、デレにツンちゃん、貞ちゃんにヒーちゃん」

ミセ*゚−゚)リ 「そして私には……」

(゚、゚トソン 「……これから、現れるのかもしれません」

ミセ*゚−゚)リ 「うん」

(゚、゚トソン 「現れないかもしれません」

ミセ*゚−゚)リ 「……うん」

私は、これまでにブーンと接してきて感じた事、ドクオさんから聞いた話、私の抱いてる危惧、
それらの、まだ話していなかった事を全てミセリに話しました。

ブーンの夢を、どうするべきなのか。

ミセ*゚−゚)リ 「……ごめん」

(゚、゚トソン 「……何故謝るんです?」

ミセ*゚−゚)リ 「私はただ、ブーンちゃんといっしょにいるのをうらやましいとしか思ってなかった……」


149 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:20:38.77 ID:orm2JtK/0

(-、-トソン 「バカですね……。そう見えて当然ですよ。私は、ブーンといっしょにいるのがすごく幸せなんですから」

ミセ*゚ー゚)リ 「そっか……そうだね」

(゚ー゚トソン 「私は、ブーンに幸せにしてもらいましたから、私も出来るだけ、ブーンを幸せにしたいんですよ」

ミセリは、それならいっしょにいるだけでいいんじゃないかと言います。
その言葉は、以前ブーン自身からも言われた覚えがあります。

ミセ*゚ー゚)リ 「だったらそれでいいじゃん」

(゚、゚トソン 「その上でさらに、ちゃんとブーンの夢を見つけてあげたいんですよ」

ミセ*゚ー゚)リ 「……そうだね、見つけてあげたいね。私も……いっしょに探してあげたい」

(゚、゚トソン 「よろしくお願いしますよ」

ミセ*゚ー゚)リ 「よし、そうしよう! うん、そうする! ってなところで、お母さん、おかわり!」

そう言ってミセリはにこやかにお皿を私に突き出します。
いい加減お母さんは止めて欲しいものですが、今までよりはその響きが少し違ったものに聞こえているかもしれません。


150 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:21:32.84 ID:orm2JtK/0

ですが、それを肯定する気はありませんので、私はやはりそれを訂正しておきます。

(゚、゚トソン 「お母さんは止めてください」

それはミセリ自身が、自分で解決しなければいけない問題なのでしょうから。
私が代わりを務める事は出来ませんから。

・・・・
・・・

(゚、゚トソン 「さて、もう寝てくださいね。確かに調子はだいぶ戻ったようですが、まだ熱はありますので」

ミセ*゚д゚)リ 「はーい」

ミセ*゚ー゚)リ 「……まだ帰らないの?」

(゚、゚トソン 「今日は泊まっていきますよ。布団、勝手に借りますね」

ミセ*゚ー゚)リ 「え、そうなの……? あ、いや、でも、ブーンちゃん──」

(-、-トソン 「デレに頼んでおきました。ツンちゃんにも。まだ治ったわけではないのですから、仕方ないでしょう?」

あなたは1人暮らしなんですから、と続け、病人は病気を治すことだけに専念しろと再度言い含めます。


152 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:22:36.74 ID:orm2JtK/0

来客用の布団はありましたが、ずっと仕舞われていたせいか、カビのような匂いがわずかに鼻を突きます。

(-、-トソン 「……布団ぐらいマメに干しましょうね」

ミセ*゚ー゚)リ 「ごめーん」

私はテーブルをずらし、ミセリのベッドの横に布団を敷きました。
仕舞いっ放しだったとはいえ、質自体は上等のものらしく、寝心地は良さそうです。

(゚、゚トソン 「電気消しますよ?」

私は返事を待たずに消灯し、布団の中へ入ります。
一応、一言二言、ミセリ状態確認の質問をしました。

ミセ*-ー-)リ 「取り敢えず問題ないよ。汗も収まったしね」

(-、-トソン 「何かあったら遠慮なく起こしてください。そのために泊まってるのですから」

ミセ*-ー-)リ 「うん」

(-、-トソン 「では、おやすみなさい」


157 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:23:51.09 ID:orm2JtK/0

ミセ*-ー-)リ 「……ねえ、トソンの夢って何?」

(-、-トソン 「ありません」

ミセ;゚ー゚)リ 「即答なの?」

(-、-トソン 「ええ、ちゃんと考えた結果、自分には夢がないのだとわかっています」

そして今、探している最中だということも。
ブーンといっしょに探しています。

ミセ*-ー-)リ 「そっか……まあ、そうだね、大学入って進路探したりはそんなに珍しくもないよね」

(-、-トソン 「夢と進路をいっしょにするかはわかりませんけどね。……でも、少しはやりたい事が見えてきたかもしれません」

今はまだ教えませんが、と聞かれる前に回答を拒否しておきます。
ミセリはそれに対し、不平を洩らしましたが、うてあわないでおくとやがて静かになりました。

このまま寝かせておく方が良いのでしょうが、一応、気にはなったので質問を返してみます。

(-、-トソン 「ミセリの夢は何ですか?」

ミセ*-ー-)リ 「私? 私は──」


160 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:25:05.77 ID:orm2JtK/0

ミセ*゚ー゚)リ 「お嫁さんかな」

(-、-トソン 「……ベタですね」

ミセ*゚д゚)リ 「ないやつに言われたくはないわ」

ミセ*-ー-)リ 「まあ、お嫁さんって言うかね、幸せな家庭を築きたいな……ってね」

(-、-トソン 「……いい夢ですね」

ミセ*-ー-)リ 「おう。……というわけで、私をブーンちゃんのお嫁さんにしてよ」

(゚д゚;トソン 「は?」

ミセ*-ー-)リ 「そうすれば気兼ねなく、トソンをお義母さんって呼べるじゃんか」

(-、-トソン 「……バカ」

ミセ*-ー-)リ 「うーん……じゃあ、トソンのお嫁さんは?」

(-、-トソン 「……アホ」


163 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:26:49.88 ID:orm2JtK/0

ミセ*-ー-)リ 「ひど……。いいじゃんか、どうせ貰い手の当ても──何でもないです、ごめんなさい、
       謝るから布団に変な圧力かけないで」

ミセ*-ー-)リ 「じゃあ、お婿に行ってあげ──うん、悪かった、ホントごめん、布団はがさないで、寒いから」

(-、-トソン 「……いいからさっさと寝てください」

ミセ*-ー-)リ 「はいはい…………今日は、ありがとね」

(-、-トソン 「……タダじゃないですから」

ミセ*-ー-)リ 「いつか返すよ、必ずね」

(-、-トソン 「気長に待ちますよ。どうせ私達は──」

「ずっと友達だから──」

私はいつの間にか、眠りに落ちていました。
その夜は一度も起こされる事はありませんでした。


 〜 第五話 おしまい 〜

    − つづく −   


165 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:28:01.32 ID:orm2JtK/0

 〜 ( ^ω^)の日記 〜

 1月×日 くもり

今日はトソンがいないお。
ミセリがかぜをひいちゃったから、そのおみまいに行って帰ってこないお。

ミセリに早くよくなってほしいから、トソンがかんびょうするのはしかたがないんだお。
僕は1人でも寝れるからさびしくないお。

でも、今日はデレとツンのお家で寝るお。
1人だとしんぱいだってトソンが言ってたお。
僕はお兄ちゃんになるんだから、1人でも大丈夫だお。さびしくないお。

でも、トソンが早く帰ってきてくれるとうれしいお。
さびしくはないんだお。ホントだお。僕はお兄ちゃんだお。

さびしくないけど、ミセリのかぜが早くなおって、トソンが帰ってくるといいお。
やっぱり、トソンといっしょがいいお。


169 :トソンの風邪 ◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:28:47.30 ID:orm2JtK/0

< トソン宅 早朝 >

カチ ガチャ

(゚、゚トソン 「ただいま……。ブーンはまだデレの部屋ですよね……」

ヾ(〃^ω^)ノシ 「おかえりーだお!」

(゚、゚;トソン 「ブーン!? 何でここに? 昨日はデレの部屋に泊まったのでは?」

(〃^ω^) 「お! デレが、トソンは朝に帰ってくるはずって言ってたから、早起きして待ってたんだお!」

(゚、゚*トソン 「そうですか……。ありがとう、ブーン。朝ご飯にしましょうか。ご飯は炊いてないからパンですかね」

(〃^ω^) 「うんお! お手伝いするお!」

(゚、゚トソン 「じゃあ、まず机の上を片付けて──」

(>、<トソン ハクション!

(;^ω^) 「お? 大丈夫かお?」

(゚、゚;トソン 「大丈夫です。ちょっとくしゃみが出だだけですから別に……」


173 :トソンの風邪 ◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:30:22.03 ID:orm2JtK/0
・・・・
・・・

< 大学 講義前 >

川д川 「じゃあ、ミセリちゃんはもういいんだ」

(゚、゚トソン 「ええ、今朝の段階で熱も大分下がってましたし、食欲もありましたしね。明日には学校に来るんじゃないですか?」

川д川 「今日は私が様子見と差し入れしてくるね」

(゚、゚トソン 「何かあれば連絡してください。その時はヒートちゃんはうちで預かりますので」

川ー川 「うん、その時はよろしく」

ζ(゚ぺ*ζ 「しっかし、意外だなー。ミセリちゃん、お嬢様だったんだー」

(゚、゚トソン 「中身は全然伴ってませんけどね」

川д川 「多少はそれっぽい傾向も見られてたけどね。何か世間知らず的な」

(゚、゚トソン 「おバカなだけでしょうけどね」


181 :トソンの風邪 ◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:32:25.27 ID:orm2JtK/0

ζ(゚ー゚*ζ 「まあ、でも……」

川ー川 「ミセリちゃんはミセリちゃん……」

ζ(^ー^*ζ 「だよね」

(゚ー゚トソン 「ええ、ミセリは所詮ミセリで──」

(>、<トソン ハクション!

ζ(゚ー゚*ζ 「……うつされた?」

(゚、゚;トソン 「大丈夫だとは思ってますが……」

・・・・
・・・

< トソン宅 翌朝 >

σ(-、-;トソン 「……風邪ですね、ええ」


183 :トソンの風邪 ◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:33:28.56 ID:orm2JtK/0

(〃´ω`) zzz

(゚、゚;トソン 「うつすとよくないので、デレの部屋に行ってもらいますかね……」

・・・・
・・・

< トソン宅 昼 >

カチ ガチャ

( ^ω^)ソーッ……

( 、 ;トソン 「……またお見舞いに来てくれたのですか?」

(;^ω^) 「お! ごめんお、起こしちゃったかお?」

( ー ;トソン 「大丈夫ですよ、眠ってはいませんでしたし。ありがとう、ブーン」

(〃^ω^) 「お! 早くよくなってくださいお」

( ー ;トソン 「ええ、早く治して、またいっしょにお散歩に行きましょう」


188 :トソンの風邪 ◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:34:57.56 ID:orm2JtK/0
ガチャ
ξ゚听)ξ 「こら! またこっちに来てる。静かに寝かせとけって言ってるでしょ?」

(;^ω^) 「おー……、でも、トソンが心配で……」

ξ゚听)ξ 「心配なのはわかるけど、私達は医者じゃないんだし、治せないでしょ?」

( ´ω`) 「ごめんお……」

( ー ;トソン 「ブーン、ありがとう。ブーンがお見舞いに来てくれると元気になりますよ」

( 、 ;トソン 「……でも、風邪をうつしてしまうかもですから、今はデレのお部屋に、ね?」

(〃´ω`) 「お……。うんお」

( 、 ;トソン 「ツンちゃん、お手数ですが──」

ξ゚听)ξ 「わかってるって」

ξ゚ー゚)ξ 「病気の時ぐらい甘えなさいよ」

( ー ;トソン 「……ええ」


194 :トソンの風邪 ◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:37:15.99 ID:orm2JtK/0

ξ゚ー゚)ξ 「後で様子見に来るわ。ブーンといっしょにね。おやすみ」

(〃´ω`) 「トソン、おやすみだお」

( ー ;トソン 「ありがとう、2人とも。おやすみ」

・・・・
・・・

< トソン宅 午後 >

( 、 ;トソン (少し落ち着きましたかね……。これなら眠れそうです)

カチ ガチャ ドタドタ ドタ

( 、 ;トソン 「?」

ミセ*゚∀゚)リ 「うお! ホントに寝てやがるよ!」

dζ(-へ-*ζ 「だから言ったでしょ、風邪だって」

川;д川 「2人とも、起こしちゃうから静かに……」


200 :トソンの風邪 ◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:40:25.73 ID:orm2JtK/0

( 、 ;トソン 「もう起きてますけどね。……何の用ですか、3人揃って?」

ミセ*゚д゚)リ 「何の用って、そりゃお見舞いに決まってるじゃんか」

( 、 ;トソン 「寝てれば治りますから、放っておいて大丈夫ですよ」

ミセ*゚∀゚)リ 「何言ってんのさ? 病気の時ぐらいお友達に甘えなさいってば!」

( 、 ;トソン 「……何ですか、このハイテンションは?」

川;д川 「ごめんね、一応止めたんだけどね。何か病み上がりの反動か、朝から妙にテンション高くて……」

ミセ*゚ー゚)リ 「ほらほら、遠慮せずにお姉さんに何でも言ってみ? 桃缶かな? それともプリンかな?」

( 、 ;トソン 「ウザいので黙って──ゴホッ、ゴホッ」

ミセ;゚д゚)リ 「うお!? 咳き込んどる! どうしよ!?」

ζ(゚ー゚;ζ 「こ、こういう時は──なんだっけ? えっと、あれかな? 心臓マッサージ?」

ミセ*゚д゚)リ 「よし来た! それ! いーち! にー!」


201 :トソンの風邪 ◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:41:19.89 ID:orm2JtK/0

川;д川 「ちょっと、何やってんの!? 背中さするぐらいでいいんだよ!」

( 、 ;トソン 「重──痛──ゴホッ! ゲホッ!」

ミセ;゚ー゚)リ 「あれ? ……ごみーん」

川;д川 「と言うか、咳ぐらいなら何もしなくていいから」

ミセ;゚ー゚)リ 「うん、そうだよね。さすがに心臓マッサージは何か違うかなと思った。どこが胸かもわかんなかったし」

( 、 ;トソン 「殺──ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ!」

川;д川 「悪化しそうだから離れてて、ね?」

( 、 ;トソン 「ハァハァ──」

川;д川 「ホント、ごめんね。ちょっと汗がひどいね。シャツ替える?」

( 、 ;トソン 「大丈夫──ゴホッ」

ミセ*゚д゚)リ 「いや、大丈夫じゃないねー。よし替えよう! 汗拭こう!」


204 :トソンの風邪 ◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:42:16.69 ID:orm2JtK/0

川;д川 「私がやるから、ミセリちゃんは──」

ミセ*゚ー゚)リ 「私もやってもらったからね。今度はこっちがちゃんとやってあげないと」

( 、 ;トソン 「気にしないで──ゴホッ」

ミセ*゚ー゚)リ 「それに、私がうつしたんだし、再度私にはうつらないだろうから、
        私がお世話した方がこれ以上広がらなくていいでしょ?」

川;д川 「それはそうかもだけど……」

ミセ*゚∀゚)リ 「よーし、じゃあ早速、シャツ脱がして──デレ、暴れる患者さんを押さえて」

ζ(´ー`*ζ 「いえっさー!」

川;д川 「あれ? 1人でやるんじゃないの?」

ミセ*゚ー゚)リ 「デレはうつらなさそうだし」

川;д川 「でも、ミセリちゃんも引いた風邪だよ?」

ミセ;゚д゚)リ 「え? それ、どういう意味?」


208 :トソンの風邪 ◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:43:21.36 ID:orm2JtK/0

( 、 ;トソン 「離して──くすぐった──ゴホッ! ケホッ!」

ミセ*゚∀゚)リ 「いいからいいから、お姉さんに全部任せて……ね?」

ζ(´ー`*ζ 「はい、タオルー」

川;д川 (私も手伝った方が被害は少ないかな……)

川д川 「取り敢えず手早くね、寒いから」

ミセ*゚ー゚)リ 「オッケー」

ζ(´ー`*ζ 「はーい」

( 、 ;トソン 「──もう──ゴホッ!」

・・・・
・・・

( 、 ;トソン 「……」

川;д川 「何か色々とごめんね……」


213 :トソンの風邪 ◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:44:40.92 ID:orm2JtK/0

( 、 ;トソン 「……いえ、ありがとう。少し楽になりました」

川;д川 「お水、飲む?」

"( 、 ;トソン コクッ

川;д川 「……ミセリちゃんとデレちゃんはお買い物。てか、ツンちゃんに怒られてたから遠ざけられたのかな」

( 、 ;トソン 「随分とはしゃいでいましたね」

川ー川 「そうだね…………私も、ミセリちゃんのお話し聞いちゃった」

( 、 ;トソン 「そう……ですか……」

川ー川 「……私も、トソンちゃんと同じ気持ちだった」

( ー ;トソン 「そうですか……」

川ー川 「ミセリちゃんはミセリちゃん、だね」

( ー ;トソン 「ええ……。あのバカはあのバカですよ」


216 :トソンの風邪 ◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:46:05.78 ID:orm2JtK/0

川д川 「こういう、お友達のお見舞いも初めてなのかもね……」

( 、 ;トソン 「かもしれませんね……」

川д川 「申し訳ないけど……」

( 、 ;トソン 「……治るまでは付き合いますよ」

川ー川 「早く治さないとね。ブーンちゃんもすっごくしょんぼりしてるし」

( 、 ;トソン 「……貞子にうつして治しますか」

川;д川 「それは止めて欲しいかな……」

( ー ;トソン 「大丈夫ですよ、ちゃんと3人でお見舞いに行きますから」

川;д川 「うつしてもいいから、それだけは止めて欲しい……」

ガチャ
ミセ*゚∀゚)リ 「プリン買って来たよー!」

ξ#゚听)ξ 「だから静かにしろって言ってんでしょうが!」


218 :トソンの風邪 ◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:47:15.30 ID:orm2JtK/0

ミセ*゚ー゚)リ 「ほーれ、プリンだプリンだー! 食え食え!」

川;д川 「いや、だから静かに──」

( 、 ;トソン 「ミセリ──お皿──」

ミセ*゚ー゚)リ 「ん? 皿? 皿が何?」

(゚ー゚;トソン 「プリンはプッチンしてお皿に乗せるものでしょう?」

ミセ*゚ー゚)リ 「!」

ミセ*゚∀゚)リ 「オッケー!」

ξ゚听)ξ 「無理に付き合わなくてもいいのに……」

(゚、゚;トソン 「無理ではないですよ。だいぶ楽なのは確かですしね。……ブーン、いるんですよね?」

(〃´ω`) 「おー?」

(゚ー゚トソン 「いっしょに、プリンを食べましょうか?」


222 :トソンの風邪 ◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:48:06.64 ID:orm2JtK/0

( ^ω^) 「……お!」

ヾ(〃^ω^)ノシ 「うんお!」

(゚、゚トソン 「ミセリ、プリンもう1つ追加で。それとりんごジュースもお願いします」

ミセ*゚д゚)リ 「お? 急に人使い荒くなりやがって。オーケィ、ちょい待ち」


ξ゚听)ξ 「全く……」

川ー川 「まあまあ。また誰かが風邪引いたら、他の皆が看病すればいいから、ね」

ξ--)ξ 「全員風邪引いたらどうすんのよ……」

川ー川 「フフフ……」


 − トソンの風邪 おしまい −


228 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:49:35.34 ID:orm2JtK/0

 〜 (゚、゚トソンの日記 〜

ここの所の、風邪などで満足に日記をつける機会がありませんでしたが、
ようやく落ち着いたので改めて書く事にします。

ミセリ──
まあ、あれは私が完治した瞬間にシメましたが、何と言いますか、人にはそれぞれ理由があるのですよね。
今更のような事ですが、理由があって今ここにいるわけで。

確かに、ミセリの家の事や内に秘めたものには全くと言っていいほど気付きませんでした。
でも、私達は今ここにいるミセリと、これまでの間付き合ってきたのです。
その時間はウソではありません。

共に笑ったあの時間は本当の物です。
だから私は、ミセリの話を聞いても、別段何も変わらないでしょう。

その事で何か頼まれたら、友達として出来る事はしますし、相談にも乗ります。
でも、その話で、生まれや育ちで、今更線を引くほど阿呆ではありませんから。


232 :◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:50:33.70 ID:orm2JtK/0

ミセリはミセリです。ただそれだけです。

そして私は私です。

ミセリはバカですけどね、友達です。
もっとも、私もバカですから丁度いいでしょう。

きっとずっと、友達なのでしょうね。
バカ同士。デレも貞子も、皆バカです。あの2人もお人好しという名のバカですから。
だから私達は、明日からも変わらず私達なのでしょうね。

私はミセリの親にはなれませんから。親友にはなれますけどね。

ちなみに──

d(゚ー゚トソン「貞子は見事に風邪を引きましたので、私達3人でお見舞いに行きました」


 − 第二十章 ミセリと私と白い部屋 おしまい −


   − 夢は次章へつづきます −   


233 :お節も良いけどカレーもね ◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:51:22.53 ID:orm2JtK/0

< 貞子宅 正月3日 >

川д川 「さすがに3日目ともなるとお節は飽きてくるよね」

dζ(゚ー゚*ζ 「お節も良いけどカレーもね」

ヾ(〃^ω^)ノシ 「カレーもいいけどハンバーグだお!」

ノハ*゚听) 「ハンバーグもいいが、焼いた肉だぞぉぉぉぉ!」

ξ゚听)ξ 「焼肉も美味しいけど、もっとあっさり目のがいいわね、おそばとか」

(゚、゚トソン 「あっさりなら冷奴もいいですね」

ミセ*゚∀゚)リ 「肉じゃが! 鯖味噌! 金平ゴボウ!」

ζ(゚ー゚*ζ 「パスタもいいよね。ペペロンチーノ!」

ヾ(〃^ω^)ノシ 「から揚げも美味しいお!」

ノハ*゚听) 「ラーメンも美味いぞぉぉぉぉ!」

ξ゚听)ξ 「天ぷらもいいわね、おそばとあわせたり」


237 :お節も良いけどカレーもね ◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:52:13.31 ID:orm2JtK/0

(゚、゚トソン 「今の季節、グラタンも美味しいですね」

ミセ*゚∀゚)リ 「ほっけ! アジの開き! ブリ大根!」

川;ー川 「食べたいものバラバラだね。何日かに分けて順にって事でいいかな?」

ミセ*゚∀゚)リξ゚听)ξノハ*゚听)「「「「「「オッケー(だお)!」」」」」」ζ(゚ー゚*ζ(^ω^〃)(゚、゚トソン

川ー川 「うん、じゃあ、まずは……」

ノハ*゚听) 「にくぅぅぅぅ!」「カレー!」ζ(゚ー゚*ζ

ミセ*゚∀゚)リ 「肉じゃが! 鯖味噌! 金平ゴボウ! ほっけ! アジの開き! ブリ大根!」

ヾ(〃^ω^)ノシ 「ハンバーグだお!」「冷奴を」(゚、゚トソン

ξ゚听)ξ 「順にって言ってるでしょうが……。順番は貞子に任せるかおそばからよ」


川ー川 「今年もご飯、作り甲斐がありそうだね」


 − お節も良いけどカレーもね おしまい −


242 :はねつき ◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:52:54.61 ID:orm2JtK/0

< 公園 正月 >

ミセ*゚ー゚)リ 「この、はねつきミセちゃんと呼んでいた私に勝負を挑むとは命知らずなヤツめ」

ζ(゚ー゚*ζ 「ミセリちゃんがやろうって言い出したんだけどね」

ミセ*゚ー゚)リ 「負ければもちろん」

ζ(゚ー゚*ζ 「墨だね?」

ミセ*゚∀゚)リ 「んじゃ、はねつきファイト!」

ζ(゚∀゚*ζ 「レディーゴー!」

・・・・
・・・

ζ(´へ`牛ζ 「しょぼーん」

ミセ*゚ー゚)リ 「これが実力の差ってやつだね」


249 :はねつき ◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:55:15.39 ID:orm2JtK/0

ξ゚听)ξ 「んじゃ、アタシがリベンジって流れかしらね」

ミセ*゚ー゚)リ 「ほほう、この自称・はねつきの帝王に挑むとは、今時骨のある若者じゃのぉ」

ξ;゚听)ξ 「何キャラよ」

・・・・
・・・

アホ;゚д゚)ス 「うへぇ、ボロ負け!?」

ξ゚听)ξ 「口ほどにもないわね」

アホ;゚ー゚)ス 「リーチ、移動範囲共に勝っていたはずなのに……」

ξ゚听)ξ 「あんたは読みやすいのよ。……さて、次は──」

    肉
ヾ(〃^ω^)ノシ 「じゃあ、僕! 僕がやるお!」


252 :はねつき ◆xJGXGruetE:2009/01/08(木) 23:55:53.86 ID:orm2JtK/0

ξ;゚听)ξ 「既に書かれてるー!」

(゚、゚*トソン 「書いてみたかったので、つい本気でやってしまいました」

   肉
(〃^ω^) 「おー?」

川;д川 「ブーンちゃん書きやすそうだもんね……」

ノハ*゚听) 「私も書いてみたいぞぉぉぉぉ!」

   肉
(〃^ω^)ζ(´ー`牛ζ 「ステーキー」

ξ;゚听)ξ 「結構気に入ってる!?」


 − はねつき おしまい −


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