- 4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/07(水) 22:07:24.06 ID:oa1BgBbhO
-
ダイ24ワ ホシ ノ ナカ モウ ヒトリ ノ セカイ
それからしばらく、いくつかの事象の説明を彼女から受けた。
その1つが、じいちゃんが解放した相手の事。
30年前、初めてじいちゃんがこの星に来た時は接触だけで終わり、ほとんど問題解決の為の活動はしなかったという。
その時に彼女はこの星の事、地球との繋がりの事はじいちゃんには説明したという事だ。
从 -∀从 「いずれそうなるから、地球から逃げられるなら逃げろと伝えたんだがな」
しかしじいちゃんはそれから20年後、またこの星に戻って来た。
現在の地球の技術力では別の星への脱出は難しいという事もあり、またこの星の人間を放っておけないという事で。
彼女から得た情報を元に、じいちゃんは何人かの人間を解放した。
从 -∀从 「解放出来た人間には、ロマは全て説明した」
その身に起きた事、滅びの因子であった事を。
だが……
- 6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/07(水) 22:09:11.86 ID:oa1BgBbhO
从 -∀从 「……伝えられたやつらは全員自殺した」
わからない話ではない。
住んでいた星が滅び、自分1人残され、そしてそれが自分の所為とわかれば……。
勿論、当人の所為ではないし、それは説明したのだろう。
しかし、そう簡単に割り切れないのが人というものだ。
私が、ギコのことを割り切れない様に。
从 -∀从 「そういう事があったから、多くを伝えるのを止めたのさ」
私に与えられる情報が少なかったのも、それが原因である部分があったらしい。
川 ゚ -゚) 「なるほどな……。色々と納得はいったよ」
切迫した状況であるなら、そう悠長なことも言ってられなかったはずだが、まだまだ時間はあったからと彼女は言う。
ブーンや兄者達、未だ残されていた滅びの因子である彼らの寿命は相当長いからと。
从 ゚∀从 「正直な話、この条件下であれだけ速いペースで解放してくれるとは思わなかったよ」
流石、優秀な外交官だと彼女は笑う。
馬鹿にしているわけではないのだろうが、私には少々複雑な響きを帯びて聞こえてしまう。
解放が早まれば、それだけ彼女の生命の終わりも早まるのだから。
- 7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/07(水) 22:10:22.10 ID:oa1BgBbhO
自分の滅びは、過去に滅びを告げる星としての役目を引き受けた時から決まっているものだから気にするなと彼女は言う。
从 ゚∀从 「で、あと聞く事は?」
川 ゚ -゚) 「ワタナベの事、それと、今この星にいる皆の事だ」
彼女は1つ頷き疲れてないかと聞いてきたが、私は首を振る。
星の意思だという彼女に疲れの概念はあるのかと聞き返してみたが、ワタナベの肉体が疲労するだろうという答えが返って来た。
从 ゚∀从 「ワタナベはこの星で生まれた人間の最後の1人だよ」
家族や周りの人々は全て死に絶え、最後に1人残された死を待つだけの存在だったワタナベ。
彼女はそんなワタナベに宿ったという。
彼女がそうした理由、それは……
从 -∀从 「後悔……だろうな」
人と接触を図るに便がいい人間の肉体を手に入れる事もあったのだろうが、それ以上に後悔の念の方が勝ったのだと、彼女の
表情から窺い知れる。
从 ゚∀从 「日中はワタナベに身体の主導権を渡してあるが、告げる役目の時は私が身体を操っていた」
川 ゚ -゚) 「だろうな……」
- 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/07(水) 22:11:49.98 ID:oa1BgBbhO
-
あの時感じた異質なものはそういう事だったのだろう。
異質と言うより畏怖かもしれない。
あの時の私は恐らく足がすくんでいた。
しかし、今は何ともない。
あの時のワタナベ、いや、彼女の悲壮な決心がそうさせたのだろうか。
川 ゚ -゚) 「ワタナベは事情は知っているのか?」
从 ゚∀从 「曖昧にはな」
全ては教えていないと彼女は言う。
必要な役割は彼女がこなすのだから、それ以外はワタナベの好きに生きていればいいのだと。
下手に教えると、ワタナベの性格上、余計なことまでうっかり漏らしかねないからという理由もあったらしいが。
川;゚ -゚) 「なるほど、あの性格は地なのだな」
从 -∀从 「何にも弄ってはいない。あれがワタナベさ……」
川 ゚ -゚) 「そうか……」
私は、ほんの少し緩みそうになる頬を押さえ、誤魔化すように頷く。
ワタナベのあのやさしさが、作られたものでなかった事は素直に嬉しいのだが、同時に喜べない1つの可能性にも気付いてしまった。
- 10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/07(水) 22:13:15.37 ID:oa1BgBbhO
-
川 ゚ -゚) 「……この星に残った皆を助ける手段はあるのか?」
从 ゚∀从 「あるよ。好きに逃げてくれればそれでいい。解放されたやつらはもう、この星との因果は切れている」
川 ゚ -゚) 「……では、物理的な手段は?」
从 -∀从 「……今はないな」
だが、すぐにこの星が滅ぶわけでもないから、脱出艇を作る時間ぐらいあるんじゃないかと彼女は言う。
_,
川 ゚ -゚) 「作る技術がないんだが……?」
当然、私の持つ地球の技術力では宇宙船なるものをこの場で作成するのは不可能だ。
残念ながら彼女も宇宙船は作れないと言う。
この家は彼女が作ったのではと思ったのだが、確かに作りはしたが、それほど高い技術を使用しているわけではないという。
食料などは星の力で生成していたというような話で、あれらの機械の中身は存外にアナログらしい。
川 ゚ -゚) 「兄者達なら作れるかもしれんが……」
物理的な手段が整ったとしても、まだ問題はいくつかある。
その最大のものが……
- 14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/07(水) 22:14:57.80 ID:oa1BgBbhO
-
从 ゚∀从 「この話をあいつらにもするのか?」
川 ゚ -゚) 「……すると約束はした」
約束はしたが、私はどうするべきか迷っている。
先のじいちゃんの話で、伝えた結果、死に追いやるほどの絶望を与えかねないという事もわかっている。
ならばこのまま、何も知らない方が良いのかもしれない。
川 - -) 「……いや、伝えるべきだろうな」
从 ゚∀从 「何故だ?」
川 ゚ -゚) 「知った上で、どうするかを自分で決めるべきだ。でなければ、本当に解放されたとは言えないさ」
彼らに罪はない。
しかし、彼らはきっと罪の意識を感じるだろう。
それならばいっそ伝えない方が良いと思うが、自分が同じ立場だったらどう思うか。
川 ゚ -゚) 「全てを知らせた上で、どうするべきかを共に考えようと思う」
色々と知った今なら、彼らをここに連れて来て、脱出までの時間を共に暮らすのもありだろう。
長い時間を掛けてでも、彼らが生きる為に私は何かをしてあげたいと思う。
- 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/07(水) 22:16:07.48 ID:oa1BgBbhO
-
从 ゚∀从 「私は構わないが、クーはそれでいいのか?」
川 ゚ -゚) 「……それも辞さない覚悟さ」
ここで時間を費やすという事は、私が地球に返れなくなるという事だ。
巨大な次元の裂け目は、半年もせずに塞がるはずだから。
脱出艇を作れたとして、行き先を地球にする事も考えられるが、地球がどの位置にあるかわからない以上、それは難しいかもしれない。
川 ゚ -゚) (地球に……か……)
ブーンの滅びの因子を解放すれば、地球はひとまず救われる。
しかしながら、地球自体は我々人間を疎ましく思っている事が今回の件でわかった。
少なくともその事はミルナ達に伝えたいと思う。
自分達人間の所業を悔い改める為にも。
川 ゚ -゚) (一旦、次元の裂け目から戻って、今回の次元の裂け目でこっちに来るという手もあるな)
いい考えかもしれないが、ひょっとしたら既に今回出来た次元の裂け目から誰かを派遣する手はずが整っている可能性もある。
それだと最悪すれ違うことも考えられるし、こちらに来る手段がなくなってしまう。
片道切符でいいなら、1度くらいは使えそうではあるが。
- 17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/07(水) 22:17:22.76 ID:oa1BgBbhO
-
川 ゚ -゚) 「一番いいのは、全員を地球に連れ帰ることかもしれんな」
从 ゚∀从 「受け入れてくれるか?」
最終的に思い付いた手段を口にしてみたが、確かにあれほど姿形の違うブーン達を地球が受け入れ切れるか難しい話だ。
奇異の目を向けられる事は簡単に予測出来る。
何というか、単一種族というものは閉鎖的なものかもしれない。
愛玩動物扱いされるのも避けたいと思う。
とはいえ、幸い私は外務課の人間で、彼らを守るぐらいの権力は持てるのではないかと思う。
今回の件を盾にミルナから色々引き出すのもありだろう。
川 ゚ー゚) 「なに、交渉事は専門分野だ。いくらでも彼らの居場所を作ってやるさ」
从 ゚ー从 「そいつは頼もしい」
ひとまずそういう方針で行こうと思う。
考えてみれば、脱出艇を作るよりは次元の裂け目を全員で抜ける手段を考える方が難易度としては低い様にも思える。
勿論、ブーン達がそれに納得してくれたらの話だが、私は明日からはその手段を考える事に決めた。
川 ゚ -゚) 「……全員連れ帰りたいと言いたいとこなんだが、いくつか確認したい事がある」
- 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/07(水) 22:19:22.41 ID:oa1BgBbhO
-
ブーン、ツン、ビロード、ワカッテマス、ちんぽっぽ、兄者、弟者、ミセリ、彼ら8人は当然連れて帰るものとして、残り3人。
川 ゚ -゚) 「あの花火はなんなんだ?」
从 -∀从 「ああ、あれか……。どちらかといえば星の一部なんだが……」
川 ゚ -゚) 「星の一部?」
ギコの話ではそれなりに研究された生物の様な印象を受けたが、どうやら正しくは生物ではないらしい。
星の余剰エネルギーを放出する為の擬似的な生物だとかいう話だ。
从 ゚∀从 「まあ、研究してもわかんねーんじゃねーかな?」
これもある意味、創造主が作ったシステムの様なものだからと彼女は言う。
川 ゚ -゚) 「つまり意思等はないのか」
となれば花火、オワタと名付けられたそれは置いていって構わないという事になるのだろう。
川 ゚ -゚) 「では、ワタナベは?」
从 ゚∀从 「……」
- 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/07(水) 22:20:53.55 ID:oa1BgBbhO
-
川 ゚ -゚) 「連れて帰っても……いや、それ以前に連れて帰れるのか?」
私の言葉に、彼女は何も答えずにただこちらを見詰める。
それが答えなのだと理解しながらも、私は再度彼女に問う。
川 ゚ -゚) 「ワタナベは……助けられるのか?」
从 -∀从 「……すまん」
川 ゚ -゚) 「……そうか」
私は居住まいを正し、布団の上で姿勢を改める。
はいそうですかと簡単に納得出来る話ではない。
私は彼女にその理由を問う。
从 -∀从 「ワタナベは……一度死んでいるんだ……」
川;゚ -゚) 「死んで……!?」
正しくは、そのままでは遠からず死ぬしか道はなかったワタナベの身体に、彼女が宿る事によってその機能を補っているから
今も生きていられるという話らしい。
- 24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/07(水) 22:22:14.79 ID:oa1BgBbhO
-
从 -∀从 「当然、私はこの星から離れられない」
彼女が星自身であるから。
その答えで、私の想定していた残りの3人全てが連れ帰れなくなってしまった。
川 ゚ -゚) 「星の意思……お前だけでも逃げ出せないのか?」
从 ゚∀从 「無茶言うな。私はここでこうしてクーの前に立ちはしているが、この星自身であり、星と繋がっているんだ」
切り離す事は出来ないと彼女は言う。
川 ゚ -゚) 「だが……」
从 ゚∀从 「諦めろ。いや、考えるな。私も、そして今はワタナベもこの星自身なんだ」
川 ゚ -゚) 「……」
从 -∀从 「滅ぶ事を自分自身で選んだこの星なんだから……」
川 - -) 「……」
私は彼女の言葉に何も言えず、視線を床に落とした。
- 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/07(水) 22:24:10.37 ID:oa1BgBbhO
-
この星を、彼女を、ワタナベを救う事は私には出来ない。
そしてそれを望まれてもいないとはっきりわかってしまった。
私は……
从 ゚∀从 「割り切ってくれ」
川 - -) 「無茶を言う」
从 ゚∀从 「クーの言い分も無茶なんだ」
川 - -) 「それでも、何か手は……私は……」
そう簡単には割り切れない。
ギコの事も、ワタナベの事も、そして彼女の、この星の事も。
そう告げようと、伏していた顔を上げようとした瞬間、何かが私の視界いっぱいに広がるのが見えた。
それが彼女の笑顔だと理解した瞬間、私は彼女に抱き締められていた。
从 -∀从 「ありがとう、クー。その気持ちだけで十分だ」
川 ゚ -゚)
- 29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/07(水) 22:25:25.12 ID:oa1BgBbhO
-
从 -∀从 「クーで良かったよ。クーが来てくれて、私は最後に罪滅ぼしが出来そうだ」
彼らを頼むと、彼女は優しげな口調で私に告げる。
私はやはり、彼女がこの星でこの世界の母なのだと漠然とだが理解出来た。
川 - -)「ああ、任せろ。あいつらは必ず私が何とかする」
同時に、どうやっても彼女を、そしてワタナベを救えない事も。
彼女の決めた事を、彼女の覚悟を私は理解した。
从 ゚∀从 「これで全て、かな?」
これで全て、彼女から聞くべき事は聞き終えた。
この星で起こっているの全ての事。
この星に住む人々の事。
そしてこれから私が取るべき道の事を。
从 ゚∀从 「そうか……では……」
彼女は立ち上がる。
私は座したまま、それを見上げた。
- 32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/07(水) 22:26:51.41 ID:oa1BgBbhO
-
从 ゚∀从 「もう会うこともないだろうな」
川 ゚ -゚) 「そうなるのかな……」
彼女と話す事はもうない。
ワタナベとはまだ話せるのかもしれないが、彼女に、星に聞く事はもうなくなった。
あとはやるべき事を知った私自身が何とかすべき問題なのだ。
从 ゚∀从 「……色々と悪かったな」
私は無言で首を振って見せ、気にしていない事を示した。
彼女の思いは理解出来たし、こちらの行動も結局自分達の為でもあるのだ。
私は彼女に礼を言う必要こそあれ、恨む必要はない。
彼女に……
川 ゚ -゚) 「じいちゃんは何て呼んでたんだっけかな?」
確か後ろのやつとかそんな感じで彼女の事を呼んでたんだっけ?
彼女が言うには、後ろの、とかそんな略し方で呼んでいたらしい。
何だよ、後ろのって。どこの百太郎だよ。
- 35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/07(水) 22:28:28.51 ID:oa1BgBbhO
-
川 ゚ -゚) 「やれやれ、昔からあの人はセンスがないと言うか、デリカシーがないと言うか……」
彼女がこの星であるならば、我々の星を地球と呼ぶのと同じ様に、彼女自身が星の名を名乗ってもよさそうなものだが。
時に私が口にしたAA界というのはあくまで地球の人間がこの世界に付けた名前だ。
私がそんな事を言うと、彼女は少し寂しそうに星の名を名乗らない理由を告げる。
从 -∀从 「あの名前は、昔ここに住んでいた人間がつけたものだからな……」
それを切り捨てた私が名乗ってよいものではないだろうと彼女は言う。
川 ゚ -゚) 「……」
私に彼女の判断の是非を論ずる資格はない。
滅びの道を選ばずとも、いずれ彼女という星は滅び、必然的にそこに住まう人々も滅ぶ運命だったのだ。
ただ、彼女の寂しそうなその顔がきっと彼女の答えなのだと私は思う。
川 ゚ -゚) 「さて、明日から更に忙しくなりそうだし、そろそろ寝させてもらうよ」
从 ゚∀从 「ああ、ゆっくり休んでくれ」
明日は少し遅めに起こす様、ワタナベに伝えておくと彼女は私に背を向けた。
- 37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/07(水) 22:29:36.34 ID:oa1BgBbhO
-
川 ゚ -゚) 「ワタナベ自身が寝坊しそうだがな」
从 ゚∀从 「それはあるかもな」
川 ゚ -゚) 「兎に角頼むよ……ハイン」
从 ゚∀从 「ああ……ん?」
私の言葉にある違和感に気付いたのか、彼女、ハインはこちらを振り向く。
川 - -) 「後ろのやつじゃ無粋過ぎるからな」
後ろ、behaind、長いからハインだと私はその名を告げた。
ハインは少しぽかんとした表情していたが、呆れた様な顔で笑ってくれた。
从 ゚ー从 「何だそれ? もう会わないってのに今更呼び名なんてどうでもいいだろ?」
川 - -) 「会うさ。明日からも、私はしばらくお前の上にいるんだ」
必要なら助けろと、私もハインに笑ってみせた。
- 39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/07(水) 22:30:58.54 ID:oa1BgBbhO
-
从 ゚ー从 「やれやれ、偉そうに……急に人使いが荒くなった」
川 ゚−゚) 「誰の為にこんな事をしてると思ってるんだ?」
私達はしばし見詰め合い、ほぼ同時に笑い出した。
从 ゚∀从 「さて、それじゃあ今度こそ私は行くよ」
川 ゚ -゚) 「ああ……」
彼女は襖に手を掛け、部屋を出る。
そしてこちらを振り向くことなく、後ろ手で襖を閉めた。
遠ざかる足音に、布団をかぶって寝てしまおうとしたが、足音が途中でぴたりと止まる。
「……名前、ありがとな」
川 ゚ー゚) 「気にするな……友達だろ?」
またハインが笑ったような気配を感じ、私も自然に微笑んでいた。
こちらでのホストで交渉相手でこの星自身だったハインだが、これだけ私の、そして地球の為に便宜を図ってくれたのだ。
友達と呼んでも、構わないのではないかと思う。
向こうがどうあれ、私はそう思っている。
- 42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/07(水) 22:32:23.10 ID:oa1BgBbhO
-
再び遠ざかる足音に、私は勢い良く布団に倒れこんだ。
川 - -) 「明日からまた、がんばらねばな……」
自分の為に、地球の為に、この星の皆の為に、そしてハインの為に。
私は決意を新たに眠りに着く。
辿り着いた真相に、高揚して眠れないかと思ったが、思ってた以上に疲れていたのかすぐに眠りに落ちていた。
・・・・
・・・
川 ゚ -゚) 「さて、行こうか」
翌日、予想通り寝坊したワタナベの作ってくれた食事を平らげ、私はマシンに跨った。
ワタナベとは昨夜の話はしていない。
ワタナベが全てを理解していてそうしているのか判断はつかなかったが、いつも通りの態度のワタナベに合わせる事を私は選んだ。
- 43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/07(水) 22:34:13.52 ID:oa1BgBbhO
-
川 ゚ -゚) 「まずはブーン達の事だ」
ワタナベの事はその後にしようと決めた。
勿論、まだ諦めたわけではない。
現状では何も思い付かないが、手段を探すなら大勢の方がいいだろうと、まずは他の皆に全てを話すつもりだ。
川 ゚ -゚) 「皆はきっと協力してくれる……と思う」
よく晴れた空の下、この世界に来た当初より少し背の伸びた気がする緑の草を掻き分けマシンは軽快に走る。
私は昨夜ハインに告げた通り、皆に全てを話すつもりだ。
話す事で起こり得る問題点も聞いたが、その点は注意して話さねばならないだろう。
川 ゚ -゚) 「最終的にはあいつらを信じるしかないんだがな……」
信じるしかないと言うよりは、信じているから話すつもりなのだが。
何にせよ、その身に起こった事を何も知らずして一件落着とされるのは当人達も納得がいかないだろう。
私自身がその立場ならきっとそう思う。
全てを知って生きたいと思う。
私はマシンの速度を上げ、一路皆がいる山を目指した。
- 44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/07(水) 22:36:12.66 ID:oa1BgBbhO
-
・・・・
・・・
ミセ*゚ー゚)リ 「おはよう! クー、おはよう!」
ξ#゚听)ξ 「こら、人の頭の上で跳ねないの! あ、おはよう、クー」
川 ゚ -゚) 「やあ、おはよう、ミセリ、ツン」
山に着いた私をまず迎えてくれたのはツンとミセリの2人だった。
元々、近くに住む者同士、それなりに仲は良かったのだが、歩ける様になって好奇心から色々とやらかしそうなミセリをツンが
よく面倒を見てくれているようだ。
川 ゚ -゚) 「他の連中は?」
ミセ*゚ー゚)リつ
ξ゚听)ξつ
私の問いに2人は無言で森の奥の方を指差す。
正確にはミセリのそれは指ではないが、どうやら皆はあの巨大な次元の裂け目の近くにいる様だ。
- 46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/07(水) 22:38:36.96 ID:oa1BgBbhO
- _,
川 ゚ -゚) 「不用意に近付くのはあまりお勧めしないのだが……」
興味本位で近付くには危険なものだと思うが、兄者達辺りは調査対象として見てくれているのかもしれない。
ビロード達はただの野次馬な気はするが、意外だったのはブーンだ。
川 ゚ -゚) 「ブーンも向こうに?」
ξ゚听)ξ 「ええ、あれに興味があるみたいね」
川 ゚ -゚) 「そうか……」
私はツンを抱き上げ、ミセリを自分の肩に乗せる。
話があるからと2人に告げ、皆の所に行く事にした。
ミセ*゚ー゚)リ 「ミセリ、クー、いっしょ」
川 ゚ -゚) 「ああ、約束したからな。落ちるなよ?」
ξ*゚听)ξ 「私は降ろしなさいよ!」
ツンの抗議を軽くあしらい、私は山の奥へ進む。
- 47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/07(水) 22:40:38.60 ID:oa1BgBbhO
-
川 ゚ -゚) (ブーンがあの場に留まったという事は、やはり……)
私は、ギコの最後の言葉を思い出していた。
あの時は状況が状況だけに考える余裕もなく、何のことやらさっぱりわからなかったが、今なら少しわかる気がした。
川 ゚ -゚) (わざわざギコが感謝の気持ちとして残してくれたんだ……きっと……)
正直、あの件で感謝されたくもなかったが、折角のアドバイスを無碍にするのも申し訳ないと思う。
ξ゚听)ξ 「それで、何の話なの?」
川 ゚ -゚) 「ん? ああ、そうだな……全て、かな?」
ミセ*゚ぺ)リ 「全て? 何の? 全部?」
川 ゚ -゚) 「色々だよ。色々、全部さ」
着いてから皆の前で話すからと2人を納得させ、さらに山の奥に進む。
既に木々の間からあの巨大な次元の裂け目は見えている。
遠目に見てもその巨大さはよくわかった。
- 48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/07(水) 22:42:26.07 ID:oa1BgBbhO
-
( ´_ゝ`) 「おお、来たね、クーちゃん」
(´<_` ) 「おはよう、と言うには少し遅いが……どうやら遅れた分、準備は万端の様だな」
( ><) 「おはようなんです! これの秘密、知りたいんです!」
( <●><●>) 「おはようございます。ですからこれは次元の裂け目で、空間が歪み……」
(*‘ω‘ *) 「おはようだっぽ。だから馬鹿ビロードにそんな小難しい説明じゃわかんないっぽ」
川 ゚ -゚) 「やあ、おはよう、皆。揃ってるようだな」
私は居並ぶ面々の顔を見渡し、最後に最も巨大な次元の裂け目の近くにいたブーンの方に顔を向けた。
川 ゚ -゚) 「おはよう、ブーン。よく眠れたかな?」
( ^ω^) 「おはようだお、クー。ぐっすり眠れたお」
その言葉通り、晴れやかな笑顔を見せるブーンにこれといって普段と違った点は見受けられなかった。
私はひとまず話をすべく、皆に集まってもらう。
- 52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/07(水) 22:44:14.84 ID:oa1BgBbhO
-
( ^ω^) 「クー、座るかお?」
川 ゚ -゚) 「いや、このままでいい。ちょっと真面目な話だしな」
私は自分の上に座るように提案してくれたブーンの申し出を丁重に断り、皆の顔を見回す。
川 ゚ -゚) 「さて、何から話すべきかな……」
全てを話すと決めてはいたが、話す順番等は全く考えてなかったので少し考える。
取り敢えず共有している知識に差がある様なので、私がここに来る事になった経緯から順を追って話す事にした。
川 ゚ -゚) 「私がこの世界に来たのは……、いや、来れたのはこの次元の裂け目が私のいた世界と繋がったからだ」
まず次元の裂け目の話。
この世界に出来た次元の裂け目が私のいた世界に及ぼす影響、この星が滅びの星であり、その引継ぎ相手に選ばれた事を説明する。
ξ;゚听)ξ 「あんた、今、さらっと言ったけどそれって……」
川 ゚ -゚) 「ああ、この星が滅ぶ事は決定事項で、あと1つ問題を解消しないと私のいた星も滅ぶ」
私の発言に、流石に皆はショックを受けた表情でこちらを凝視する。
ただ1人を除いて。
( ^ω^)
- 55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/07(水) 22:46:04.40 ID:oa1BgBbhO
-
(;´_ゝ`) 「少しは事情を知っていたつもりだったが……」
(´<_`;) 「まさかそこまで大変な話だったとはな……」
川 ゚ -゚) 「すまん、別に隠していたわけではないんだが……」
私も昨夜知った話だと兄者達に説明する。
同時に他の皆に兄者と弟者の2人にはある程度事情を話して協力してもらっていた事も説明する。
(*‘ω‘ *) 「何でこの2人だったんだっぽ?」
ξ゚听)ξ 「協力なら、もう少しマシなやつに頼っても……」
(;´_ゝ`) 「おいおい、ひどい言われようだな……」
川 ゚ -゚) 「それもすまん。タイミングとか色々条件があったんだ」
私は、不服そうな顔をするツン達に重ねて説明する。
兄者達に話せた理由、ツン達に話せなかった理由。
この星の滅びを決める因子の話を。
- 57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/07(水) 22:48:10.25 ID:oa1BgBbhO
-
川 ゚ -゚) 「この星は滅びの星で、他の星に滅びを告げて回った。そして、同時に滅びの因子も回収してたんだ」
( <●><●>) 「……それはやはり」
察しのいいワカッテマスが自分、正確には自分達を指差す。
私や兄者達の様子から薄々は感じ取っていたのか、その顔は至って冷静な表情を浮かべている。
川 ゚ -゚) 「そうだ。この星にいる人間自身だ」
私の言葉にまた居並ぶ皆が驚いた表情を見せる。
予測していたワカッテマス、話の流れからそれが自分達だと予測出来たであろう兄者達も苦々しい表情を浮かべた。
川 ゚ -゚) (さて……ここからだな)
ここまでは特に問題はない。
この星に起こった事実を、ありのまま告げただけだ。
問題はこの先、なぜ自分達が滅びの因子として選ばれたかだ。
(´<_` ) 「自分達が次元の裂け目の発生原因になっていたのは知っていたが、それがこの星を滅ぼす事に繋がっていたとはな……」
川 ゚ -゚) 「兄者達はその原因であった心因を私が一番最初に解放した人間だったんだ」
だから、現在の状況を話して協力を頼んだ事を皆に説明する。
- 58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/07(水) 22:50:02.29 ID:oa1BgBbhO
-
ミセ*゚ぺ)リ 「心因?」
川 ゚ -゚) 「心の問題、簡単に言えば悩みだな」
ξ゚听)ξ 「それって……」
川 ゚ -゚) 「そう、こいつもそうだったのさ」
私はそう言って、ミセリの頭を撫でる。
兄者、ビロード、ミセリ、ギコ、そしてもう1人。
川 ゚ -゚) 「その5人が滅びの因子だった……いや、残された滅びの因子だった、かな?」
(;><) 「僕もだったんですか?」
(*‘ω‘ *) 「今の流れなら、ちょっと考えればわかる話っぽ」
( <●><●>) 「残された……ですか?」
川 ゚ -゚) 「ああ、この星にいる人間は全員滅びの因子だったはずだ」
- 59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/07(水) 22:52:23.30 ID:oa1BgBbhO
-
ξ;゚听)ξ 「どういう事よ? それと、もう1人は誰よ?」
矢継ぎ早に質問してくるツンに、そういえばハインに聞きそびれた事があったのを思い出した。
しかしながらハインが何も言わなかった所をみると、さして問題のない話か、私の考えがあっているかのどちらかなのだろう。
私は恐らく後者だと判断している。
川 ゚ -゚) 「少し話を戻すが滅びの……ん?」
突如、ざわりと木々が揺れる音が聞こえた。
風が出て来たのかと思ったが、異変はそれだけに止まらなかった。
(;><) 「何なんですか!?」
(;*‘ω‘ *) 「風……強くなってるっぽ?」
( <●><●>) 「……問題は風の吹いて来る方向でしょうね」
地面がわずかに震える。
ワカッテマスの言葉を聞くまでもなく、異変の原因がどこにあるのか私は気付いていた。
私の真向かい、居並ぶ皆のさらに向こう。
川;゚ -゚) 「全員次元の裂け目から離れろ!」
- 60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/07(水) 22:54:51.73 ID:oa1BgBbhO
-
ξ;゚听)ξ 「何が起こるのよ!?」
川;゚ -゚) 「わからん! しかし、これは──」
揺れていると言うより歪んでいると言うべきか。
巨大な次元の裂け目周辺の空間がぼやけた様に見える。
何が起こるのかはわからないが、兎に角この場から離れるべきだと私の勘が告げている。
( ^ω^) 「クー! 僕をかぶるお!」
川;゚ -゚) 「何を──そうか!」
私は近くにいたツンを抱え、ビロードたちを呼ぶ。
兄者達も呼ぼうとしたが、流石にそれは無理だと気付き、2人にはこの場から全力で離れるように怒鳴る。
(;´_ゝ`) 「おk、この場は逃げる事にする」
(´<_`;) 「兄者、あっちの崖から川に飛び込むぞ!?」
私は2人が走り去るのを目で追い、ビロードたちが私の足にしがみ付いたのを確認してブーンを掴んで頭からかぶる。
川;゚ -゚) (大気圏を単独で抜けたブーンなら……)
並大抵の衝撃ぐらいなら持ち応えられるだろう。
しかしながら、ブーンごと吹き飛ばされる可能性も高いし、よく考えずとも無謀な賭けだったかもしれない。
- 62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/07(水) 22:58:52.29 ID:oa1BgBbhO
-
( ^ω^) 「おー、すごい揺れてるおね」
そんな私の心配を余所に、ブーンは普段通りの緊張感のない声で状況を説明してくれる。
さすがに顔は内側に入れた方がいいんじゃないかと提案しようとした瞬間、辺りに轟音が響いた。
川;゚ -゚) 「ッ──!?」
( ×ω×) 「うぉっ!? 眩し!?」
ブーンの内側にいた私にはわからなかったが、どうやら次元の裂け目は音だけではなく閃光も発した様だった。
思ったよりは衝撃は来なかったのは、ブーンの吸収性能のお陰か、それとも現象自体が大した事なかったのかはわからないが、
すぐに世界は静けさを取り戻した。
川;゚ -゚) 「……終わったのか?」
私は、ツン達全員が無事なのを確認し、かぶっていたブーンを降ろそうとしたが、それより早くどこか懐かしいムカつく声が響いた。
「おんや? こんな所に布団が。なァるほど、おもてなしの準備は完璧という事ですか」
_,
川 ゚ -゚) 「……このふざけた声は」
( ^ω^) 「お?」
( ・∀・) 「お?」
開けた視界に映ったものは、紛れもなく御馴染みの馬鹿の姿だった。
第24話 了 ただ救う為に、そして自分の為に選んだ道 〜
次へ/
戻る