- 2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/08(土) 22:41:29.29 ID:+ZmFfnoi0
-
ダイ25ワ セカイ ヲ コエテ オモイ ハ キット
巨大な次元の裂け目に起こった変異。
それが何か確かめる間もなく、答えはすぐに提示された。
それを何度か目にしているのであろう世界は、既にいつも通りの顔を見せていた。
_,
川 ゚ -゚) 「想定内の想定外だな……」
目の前に立つ男の姿に、私は額を押さえて呟いていた。
巨大な次元の裂け目が出来た時点で誰かがこの世界に来る可能性があった。
しかしよりにもよって、来るのがこの馬鹿だとは予測出来なかった。
(*・∀・) 「やー、クーちゃん、わざわざ出迎えてくれたんですか?」
無論、出迎えたつもりは微塵もないし、出来れば一旦戻って対策を考える為にもこちら側に誰も来て欲しくなかったというのが本音だ。
さらに来たのがこいつとなれば、私のテンションも自然とヒートアップする。
(*・∀・) 「しぃかも、お布団敷いてお待ちとは、やっと僕の愛──」
勿論、怒りの方向に。
- 3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/08(土) 22:42:48.07 ID:+ZmFfnoi0
川#゚ -゚) 「フンッ!」
ブベラッ!?
(#)・∀・).・。 ’
両手を広げて走り寄る馬鹿にハイキック一閃。
次元の裂け目の方に飛ばさないだけの分別を残していたのは我が事ながら褒めてあげたいと思う。
(#)-∀・)b 「あ、相変わらずで安心しましたヨ……」
突っ伏しながらもこちらに親指を立てるだけの元気はある様だ。
さらに止めを加えるべく歩み寄ろうとした私に背後から声が届く。
ξ;゚听)ξ 「……と、友達……じゃないわよね……」
ミセ;゚д゚)リ 「クー、怖い、クー」
川 ゚ -゚) 「む……私は怖くないぞ? それにあいつはただの仕事上の知り合いなだけで、友達扱いは勘弁だ」
呆れた表情を浮かべるツンと、振り落とされない様に必死に私の肩に掴まっていたミセリに弁解し、止めは諦めた。
私はこの場を離れていた兄者達が戻って来るのを待って、ツン達に皆にモララーの事と向こうの世界が取った対応、モララーを
送り込んで来た事情を説明する。
- 5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/08(土) 22:44:22.90 ID:+ZmFfnoi0
大方、私の手伝いという事だろうと思うが、モララーが訂正しなかった所をみるとどうやら間違いではないらしい。
( ・∀・) 「同時期に2つの次元の巨大な裂け目が出来たのは初めてですからねェ」
とはいえ、有事の際にはすぐに第二陣を送り込む手はずは整えていたらしい。
送り込まれた人員に不満はあるが、異常事態にこの速さで対応出来たのはそういう事情もある様だ。
私の反応を待つべきという意見もあったらしいので、出来ればそうして欲しかったとモララーに悪態を吐いておく。
同時に、ツン達全員の事をモララーに説明したが、モララーは自分達とは明らかに異なるツン達の姿形を見てさほど驚かなかった。
ミルナ伝いにじいちゃんから聞いていたのかと思ったが、そういう訳でもないらしく、単に異世界の人間ならそうであっても当然だ
という心構えが出来ていたらしい。
( ・∀・) 「というわけでみィなさん、はじめまして、私がクーちゃんの恋び──ゲハァッ!?」
( ´_ゝ`) 「はじめまして、俺がこの世界でのクーちゃんの恋び──グボァッ!?」
_,
川#゚ -゚) 「黙れ、馬鹿共」
再び馬鹿と悪乗りした馬鹿を蹴り飛ばし、黙らせる。
こんな場面でも相変わらずなのはある意味称賛に値するが、ウザい事には変わりない。
- 7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/08(土) 22:45:57.35 ID:+ZmFfnoi0
川 ゚ -゚) 「来てしまったものはしょうがないが……状況が変わってしまったな」
これで地球に1度説明に帰る事は出来なくなってしまった。
戻れるのはあと2回。
モララーを伝言係として帰らせれば済む事だが、新しく人員等を連れてくる事は出来なくなってしまった。
( <●><●>) 「1度戻られるつもりだったのですか?」
川 ゚ -゚) 「ああ、理由はさっき話し中だったこの星が滅ぶから、何らかの脱出手段を仕入れにな」
( ・∀・) 「なァにやら穏やかではない話になってますねェ」
早々と復活したモララーがようやく真面目な顔を見せる。
兄者は未だ爆散した分身を吸収してツン達にキモがられている様だ。
川 ゚ -゚) 「……すまんな、私の力不足に因る所だ」
私も真面目な顔でモララーに、というよりは地球側の人間に対して謝罪する。
たとえ、それが決まっていた運命だったとしても、この身の不甲斐なさはひしひしと感じている。
(´<_` ) 「それはクーの所為じゃないさ」
そう言ってくれる弟者に私は肩をすくめて返す。
ありがたい言葉だが、自分自身が納得いくにはきっと時間が必要なのだろうと思う。
- 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/08(土) 22:47:25.33 ID:+ZmFfnoi0
( ・∀・) 「……出来れば、順に話して頂ければ有難いのでェすが」
川 ゚ -゚) 「そうだな……」
2度手間ではあるが、もう1度最初からさっきの話をするべきだろう。
そう思い、口を開こうとするが、途中までは1度聞いた自分が説明すると弟者が申し出てくれた。
(´<_` ) 「クーはこの後も話す必要があるんだからな。話通しは疲れるだろう」
川 ゚ -゚) 「すまん、助かる」
( ・∀・) 「おお、素晴らしく紳士ですねェ。説明、お願いします。……あ、そうでェした」
突如ポンと手を叩き、モララーは次元の裂け目の方に向かう。
次元の裂け目の前には、向こうの世界から持ってきたらしい大きめボストンバッグが置いてある。
( ・∀・) 「これといって必要なものも思い付かなかったんでェ、甘いものを入れて来ましたのでよければどうぞォ」
見た目よりは重いのか、モララーはボストンバッグを引きずりながら持って来る。
____
/......┃┃.....\
| : ┗┛ : |
| : ‖ ‖ : |
 ̄~ ̄ ̄ ̄~ ̄
- 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/08(土) 22:49:06.73 ID:+ZmFfnoi0
しかし、この馬鹿にしてはなかなか気が利いているのではないかと思う。
私はモララーが恭しく指し示す手に従い、眼前に置かれたボストンバッグのチャックを開けた。
川 ゚ -゚) ジジー…
ヒョコッ
(゚、゚トソン_
/.~~┃┃.....\
| : ┗┛ : |
| : ‖ ‖ : |
 ̄~ ̄ ̄ ̄~ ̄
川 ゚ -゚) 「……」
(゚、゚トソン 「……」
川 ゚ -゚) 「……」
(゚、゚*トソン 「お久し──」
川#゚ -゚) 「うぉらぁぁぁーッ!!!」
ゴハァッ!?
(#)・∀・).・。 ’
- 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/08(土) 22:50:16.49 ID:+ZmFfnoi0
こんなのでも一応女性で後輩であるトソンを蹴り飛ばすわけにもいかず、奥にいたモララーを蹴り飛ばす。
そして鞄から顔だけを出しているトソンに詰め寄った。
川#゚ -゚) 「お前は何をやっている?」
(゚、゚*トソン 「何って……見ての通り先輩をお助けする為に次元を超えてやってきたのですよ」
(#)・∀・) 「何ァ故私が蹴られたのでしょうねェ〜?」
またも早々と立ち直ったモララーを睨みつけ、現状の説明を求める。
モララーはわざとらしく驚いた仕草で、自分にもわからないとぬかした。
( ・∀・) 「おかしいでェすね、来る前にちゃんとお菓子が入ってるの確認して持って来たのですが」
+(゚、゚トソン 「フッ……わずかな隙に潜り込む事など、この私にかかれば造作もないことです」
川;゚ -゚) 「お前な……」
得意気な顔をするトソンに私は深いため息を吐いた。
トソンは、こちらに来る人員として最終的に選ばれたのがモララーであった事に不満だったという。
言いたい事は色々あるが、2人で次元の裂け目を抜けて来るなど無謀にもほどがある。
- 17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/08(土) 22:52:07.92 ID:+ZmFfnoi0
d(゚、゚トソン 「その辺りはちゃんと計算してました」
トソンが言うには、ちゃんと次元の裂け目を抜けられるだけの強度を持つ設計をされたバッグであるので、その中ならば理論上は
問題ないはずだという事だ。
正直な話、私が来る際に質量の問題とかも聞いた気がするから、その理論だけでは抜けられない気はする。
それ以前にバッグに入るという発想がまずおかしいのだが。
( ・∀・) 「一応、あれからも機材の改良は進められておりましたからねェ」
新たな巨大な次元の裂け目が出来る度に調査が進められるわけだから、出来た直後は色々と得るものが多いのだとモララーは言う。
よく見るとこいつの耳にも私と同じイヤリングが付いている。
普通にAA界の住人と話しているところを見ると、翻訳機を再現する事に成功したようだ。
( ・∀・) 「まあ、私が軽いというのもあるのでェすが」
川 ゚ -゚) 「よし、死ね」
モララーの言葉に腹は立ったが、蹴り飛ばせばそれを認めた様で癪に障るのでここは堪えておいた。
確かに、男にしては華奢なイメージを受けるモララーだが、流石に女性である私より軽いという事はないだろう。
……ないはずだ。
川 ゚ -゚) 「……で、お前はいつまで鞄の中にいるつもりだ?」
- 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/08(土) 22:53:29.79 ID:+ZmFfnoi0
今更何を言おうが、来てしまったものは仕方がない。
私は諦めて話を続きをする事に決め、トソンに鞄から出るように言う。
(゚、゚トソン 「そうしたいのは山々なのですが……」
川 ゚ -゚) 「ですが?」
(゚、゚*トソン 「お恥ずかしながら、自分では出れないのですよ」
_,
川 ゚ -゚) 「ホントに恥ずかしいな、それ」
そもそもどうやって入ったんだと問う私に、関節を外してと、恐ろしくシンプルで阿呆な回答を述べるトソン。
そういえば私がこちらに来る時にもそんな事を言ってたなと思い出して頭が痛くなって来た。
川 ゚ -゚) 「じゃあ、引っ張り出すぞ?」
(゚、゚*トソン 「やさしくお願いしますね」
私はしゃがみ込み、鞄の中に手を入れる。
川;゚ -゚) (どうなってんだこれ? 間近で見ると気持ち悪いな……)
- 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/08(土) 22:54:54.01 ID:+ZmFfnoi0
鞄とトソンの身体の隙間に手を入れ、背中の方まで手を伸ばし、力を込める為にトソンの方に身を寄せた。
ボソッ
(゚、゚*トソン 「……紐の方ですか」
川 ゚ -゚) 「……あ、これ抜けねーな。ちょっとやり方変えるわ」
私はトソンが呟いた言葉を努めて平静な態度で聞き流し、一旦身体を離した。
そして徐に鞄の下に手を入れ、ゆっくりと担ぎ上げるように持ち上げる。
(゚、゚;トソン 「あの、先輩……何を?」
( ・∀・) 「わぉ、パァワフルですねェ」
トソンの問いもモララーの囃し立てる言葉も無視し、私は抱え上げていた鞄を空中で引っくり返した。
(゚、゚;トソン 「ちょ、先輩!? 落ちる!?」
川 ゚ -゚) 「中々出てこないな」
トソンの叫びを無視し、鞄を上下に振る。
段々トソンの叫び声が悲痛な響きを帯びてくるが、無視して振りまくるとようやく鞄からトソンの身体が抜け落ちた。
- 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/08(土) 22:56:19.05 ID:+ZmFfnoi0
(>д<;トソン 「へぶッ!?」
身体を不思議な形に折りたたんだトソンは、当然の如く受け身が取れるはずもなく、顔から勢いよく地面に飛び込んだ。
うん、まあ、私は何も手を出してないからね?
要望通り鞄から出してやっただけだし。
( ・∀・) 「相変わらず素敵なドSっぷりでェすね」
川 ゚ -゚) 「私はあいつの要望通り、鞄から出してやっただけだが?」
そ知らぬ顔でモララーの言葉を聞き流し、地面に突っ伏すトソンの方を見やる。
顔から落ちた割には大してダメージはないのか、ガコンとかギションとか、おおよそ人体が奏でる音とは思い難い異音を発し、
外していた関節を嵌めているようだ。
川;゚ -゚) (というか、こっちの世界に来て人間とは違う身体の構造の生物に慣れてはいたが、あれも大概だな……)
私はあまり深く考えない事にして、小声でモララーの方に問い掛けた。
川 ゚ -゚) 「しかしお前、何のつもりだ?」
( ・∀・) 「何のつもり、とは?」
- 26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/08(土) 22:57:50.60 ID:+ZmFfnoi0
とぼけるモララーだが、どう考えてもあの鞄にトソンが入ってた事に気付かないわけはないだろう。
この馬鹿が想定外の危険を冒してまでトソンを連れて来たのはどういう意図だろうか。
( ・∀・) 「いェいェ、ぜェ〜んぜェん気付きませんでしたよ〜?」
_,
川 ゚ -゚) 「そんなわけないだろうが」
再びとぼけるモララーを睨みつけ、その真意を探る。
しかしモララーは肩をすくめるだけで話すつもりはないようだ。
( ・∀・) 「一体いつの間に忍び込んだのでしょうねェ?」
_,
川 ゚ -゚) 「普通気付くだろ、入れていたのがお菓子や着替えならそう重量はない」
( ・∀・) 「そういえば私のパンチコーラ30kg分はどうしたんでしょうねェ?」
_,
川;゚ -゚) 「知らん……って、お前、何持って来ようとしてんの? 甘いものって言ってなかったか?」
そんなもの30kgも持って来てどうするつもりだったのか切に聞きたいところだが、こいつとまともに話そうとうする事
自体が無駄だと悟り、話を打ち切る。
トソンの方に目をやると、既に間接は嵌め終わったのか、軽く体操をしている姿が見えた。
- 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/08(土) 22:59:10.99 ID:+ZmFfnoi0
川 ゚ -゚) 「全く……馬鹿共の所為でだいぶ話の腰をへし折られたな」
私は増えたもう1人の事を説明する為、ツン達の方へ向き直る。
(;<●><●>)(;><)(;*‘ω‘ *)ミセ*゚ー゚)リξ;゚听)ξ( ^ω^)(;´_ゝ`)(´<_`;)
川;゚ -゚) 「何でお前らそんな遠くにいるの?」
(´<_`;) 「え、いや、その……」
(;´_ゝ`) 「流石の俺も少し引くかなと……」
川;゚ -゚) 「いや、向こうの世界の人間がこんなのばかりってわけじゃないぞ?」
たまたま変態が2人来ただけだと説明するも、地球側はこんなのしか送って来れなかったのかと自分で言ってて寂しくなった。
ξ;゚听)ξ 「ま、まあ、仕事で来てるんでしょうし……性格は……ねぇ?」
ミセ*゚ー゚)リ 「変態? クー、一緒?」
川;゚ -゚) 「こいつらと同類扱いだけは勘弁してくれ」
結局、話を再開するのにそれからまた数十分の時間を要する羽目になった。
- 29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/08(土) 23:00:22.41 ID:+ZmFfnoi0
-
・・・・
・・・
(´<_` ) 「とまあ、俺らがクーから説明を受けた話はここまでだ」
( ・∀・) 「……」
(゚、゚;トソン 「……」
色々と切羽詰ったこの星の事情を聞いたモララー達の顔から笑みが消える。
流石にふざけて聞いていられる話ではない。
この星が滅ぶ事、この星は滅びの星で、この星に住む人間が滅びの因子であった事。
現在、皆に話したのはそんな所だ。
それプラス、弟者はこの星の特徴や全員の紹介などもモララー達に向けて話してくれた。
川 ゚ -゚) 「ありがとう、弟者。2人とも、大体の話は理解出来たか?」
( ・∀・) 「出来た出来ないで言えば出来ましたがァ……予想以上に深刻なお話ですねェ」
(゚、゚;トソン 「そんな大変な事になっていたのですか……」
- 31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/08(土) 23:02:34.66 ID:+ZmFfnoi0
川 ゚ -゚) 「安心しろ、まだ大変な話は残っている」
涼しげに驚くモララーと大袈裟に驚くトソンに、先ほど他の皆にも詳しく話さなかったもう1つの滅びの話をする。
地球自身が滅びの星の後継者になることを受け入れた事。
我々が地球から見捨てられた事を。
( ・∀・) 「ワァオ、それはまた素晴らしく残念なお話ですねェ」
(゚、゚;トソン 「そ、そんな……」
川 ゚ -゚) 「残念ながら事実だ」
その理由は私が説明するまでもないだろう。
地球の歴史を顧みれば、地球がそういう決断を下したとしても何ら不思議はない。
我々人類は星を傷付け過ぎた。
(゚、゚トソン 「確かにそうですね……」
トソンは納得した顔で頷いて、辺りを見回した。
星の傷を修復する事を生業として来たトソンは、この様な原始的な風景が色濃く残る世界に何を思っているのだろうか。
( ・∀・) 「いくつか腑に落ちない点もあるのでェすが……」
川 ゚ -゚) 「だろうな。まだ全てを話していない」
- 33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/08(土) 23:04:08.15 ID:+ZmFfnoi0
川 ゚ -゚) 「さて、ちょっとばかりキツい話をするぞ」
私は襟を正し、その場の全員を見回す。
視線が合うと頷く者、きょとんとした顔をする者と様々であったが、私はそのまま話を続ける。
川 ゚ -゚) 「滅びの因子の話だ」
( <●><●>) 「我々全員がそうであった、という話ですね?」
私は、そうだとワカッテマスに頷いてみせる。
ただ、恐らくではあるが、ワカッテマスとちんぽっぽは若干その意味合いが違ってくる。
川 ゚ -゚) 「ワカッテマスとちんぽっぽはビロードと同じ星の出なんだよな?」
(*‘ω‘ *) 「そうだっぽ」
川 ゚ -゚) 「それなら恐らく、お前達2人は滅びの因子じゃなかったかもしれんな」
滅びの因子は各星に1人。
多分、2人はビロードとセットでこの星に流れ着いたに過ぎないのだろう。
この辺りは推測だが、間違いではないと思う。
彼らは一心同体ともいうべき状態で生きているらしいので、3人で1人と扱われたのだと考えている。
- 35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/08(土) 23:05:28.96 ID:+ZmFfnoi0
(´<_` ) 「各星に1人?」
川 ゚ -゚) 「ああ、そうだ」
彼女から明言はされていないが、滅びの因子がどんなものか考えればそれは当然の事だ。
何故なら滅びの因子は……
川 ゚ -゚) 「滅びの因子はその星を滅ぼす切っ掛けとなった人間だからな」
ξ゚听)ξ「え……」
私の言葉に、元々静かであった場がさらに水を打った様に静まり返る。
全員が驚いた表情のまま、私の顔を見詰めていた。
( ^ω^)
いや、1人だけいつもと変わらぬ様な、でも少しだけ寂しそうに見える顔でこちらを見ている者がいた。
私はブーンの方に向けて視線を固定するが、ブーンは何も言わず、その顔でずっと私を見詰めていた。
(;´_ゝ`) 「そ、それはどういう意味かな、クーちゃん?」
川 ゚ -゚) 「言葉通りなのだが、言葉通りではない……まずは私の話を黙って聞いてくれ」
- 37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/08(土) 23:06:42.57 ID:+ZmFfnoi0
震える声で兄者が沈黙を破り、問い掛けてくるが、私は両手を胸の前に広げてそれを制する。
そしてハインから聞いた滅びの因子の話、滅ぼす切っ掛けとなった話をそのまま全て包み隠さず話した。
川 ゚ -゚) 「……というわけだ」
(;<●><●>)(;><)(;*‘ω‘ *)ミセ*゚ー゚)リξ;゚听)ξ( ^ω^)(;´_ゝ`)(´<_`;)
沈黙。
先ほど、トソン達と私のやりとりを遠くで見守っていた時と似た表情で全員固まってしまっている。
ミセリはあまり事態を理解していない様だが、それは仕方ない事だろう。
川 ゚ -゚) 「聞いててわかったとは思うが、お前らの所為じゃない」
星を滅ぼす原因になったなど、ほとんど言い掛かりの様なものだ。
皆が気にする話ではないと私は話を結ぶ。
( <●><●>) 「ですが……」
川 ゚ -゚) 「皆に責任はない。……だろ?」
私は反論の言葉を遮りる様に断言し、皆に同意を求める。
しかし、誰もそれに頷く者はいない。
- 39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/08(土) 23:08:30.35 ID:+ZmFfnoi0
川 - -) (それも当然か……)
言葉の上では理解出来る話ではあろう。
不運だったとぐらいしか言い様がない。
しかしながら、それだけでは納得出来ない部分もある。
頭ではわかっていても、気持ちでは納得いかないものもあるのだ。
川 - -) (私が、ギコの事を納得出来ないように……)
どうしても割り切れないものは残ってしまうのだ。
(´<_` ) 「なあ、クー」
川 ゚ -゚) 「何だ?」
(´<_` ) 「直接的に関わったとはいえない俺が言うのもなんだが、クーは本当にそう思うのか?」
川 ゚ -゚) 「思ってるよ」
- 41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/08(土) 23:10:17.47 ID:+ZmFfnoi0
私は、彼らに責任はないと思っている。
たとえ、彼らがそれに納得いかなくても、彼らに責任はないのだ。
彼らはただ、生きていただけなのだ。
その結果、星が滅んだとしても、それは彼ら1人1人が原因ではなく、その星に住む全ての人間が選んだ道の結果が
滅びに繋がっただけなのだと私は思う。
(´<_` ) 「そうか……なら……」
川 ゚ -゚) 「……」
(´<_` ) 「俺達に責任はない」
弟者は振り向き、皆に向けてそう宣言した。
その言葉に、皆はまた驚いた様な顔を見せたが、すぐさま兄者が口を挟む。
( ´_ゝ`) 「しかしだな、弟者よ? 我々は結果的に星を滅ぼしたわけだぞ?」
( <●><●>) 「であるならば、我々は相応に──」
(´<_` ) 「本当にそう思うのか?」
- 43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/08(土) 23:11:43.14 ID:+ZmFfnoi0
兄者の言葉を継いだワカッテマスの言葉を弟者が遮る。
強い口調で、真剣な眼差しで。
( ><) 「だって、クーの話だと、僕らが……」
(´<_` ) 「違うな」
(*‘ω‘ *) 「何が違うっぽ?」
(´<_` ) 「星が滅ぶなんて、とてつもない事態だぞ?」
( ´_ゝ`) 「そりゃそうだろうな」
(´<_` ) 「そんな大変な事、人1人の力で起こせると思っているのか?」
(;´_ゝ`) 「それは……」
(´<_` ) 「そう思う事自体がおこがましい。こんなもの偶然に過ぎない」
(;´_ゝ`) 「……」
- 45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/08(土) 23:12:59.93 ID:+ZmFfnoi0
(´<_` ) 「たとえ兄者がいなくても、兄者の星は滅んださ、皆の星もな」
( ><) 「そ、それは……」
( ・∀・) 「まあ、そちらの弟者さんが言う事の方が正論でェしょうね」
(゚、゚トソン 「部外者である我々が口出しして良い問題かわかりかねますが、少なくとも、皆さんに責任はないと思います」
これまで沈黙を保っていたモララー達が助け舟を出す様な形で口を挟む。
それは本来ならば私の役割だと思う。
弟者がわざわざ私の思いを察し、言葉を継いでくれたのだ。
私はそれを皆に納得させねばならないのだ。
でなければ皆は、それぞれ重いものを背負って生きて行かなければならなくなる。
それが背負えるくらいのものならばまだいいのだが、その事を告げられた、じいちゃんが解放した人々はもう……
(;´_ゝ`) 「いや、理屈はわかるんだ、理屈は。でもな……」
言い淀む兄者。
私には痛いほど兄者達の気持ちがわかる。
- 47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/08(土) 23:15:58.39 ID:+ZmFfnoi0
だから、私は……
川 ゚ -゚) 「それでも、納得してもらえないか?」
(;´_ゝ`) 「けど……俺は……」
川 - -) 「それでも、生きてもらいたいんだ」
そう言って私は深々と頭を下げた。
随分と無責任な押し付けだとは理解している。
けれどもそれが、私の心からの気持ちなのだ。
そしてそれが彼らになら伝わると信じたからこそ、全てを話したのだ。
(;´_ゝ`) 「クー……ちゃん……」
ξ゚听)ξ 「納得は出来ないわ」
川 ゚ -゚) 「ツン……」
それまで何も言わずに聞いていたツンが口を挟む。
私はツンを懇願するような目で見詰めた。
- 49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/08(土) 23:17:43.99 ID:+ZmFfnoi0
ξ--)ξ 「……今すぐに、納得しろって話でもないんでしょ?」
川 ゚ -゚) 「え?」
ξ゚听)ξ 「だから、今は他にやる事があるんでしょうが?」
ツンが言う様に他にやる事、最後の滅びの因子を解放する事が残っている。
ξ゚听)ξ 「短絡的な結論は出さない。だから、少し時間をもらうわよ」
そういったツンの言葉は、どこか含みのあるものだった。
ツンは私が言いたい事、避けたい事に気付いているのだろう。
私は探るような目でツンを見る。
ξ゚听)ξ
ツンは私が解放したわけではない。
しかし、ツンも滅びの因子を持っていたはずだ。
ツンを解放したのは、恐らくじいちゃんなのだろう。
- 51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/08(土) 23:19:34.00 ID:+ZmFfnoi0
川 ゚ -゚) 「ツンはじいちゃんから何も聞かなかったんだな」
ξ--)ξ 「今の話であの時の事がようやく理解出来たわ」
じいちゃんが解放し、全てを告げた人間は皆自殺したとハインから聞いている。
であるならツンはきっとじいちゃんが最後の方に解放し、何も告げなかったのだろう。
川 ゚ -゚) 「黙っていてすまん」
ξ゚听)ξ 「クーが謝る話じゃないでしょ? アンタは昨日知ったばかりだって言ってたじゃないの」
川 ゚ -゚) 「それでもな。身内のし出かした事だし」
ξ--)ξ 「それが私の為だったんでしょ?」
私はツンの問いに深く頷いた。
ツンは全員にそれでいいかと問い掛ける。
( ><) 「正直に言うと、よくわかんないんです。どうすればいいのか、どうするべきなのか」
( <●><●>) 「それはツンが言う様に、時間をかけて考えて行くしかないんでしょうね」
(*‘ω‘ *) 「皆でだっぽ。ビロード1人じゃ絶対答えでないっぽ」
- 54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/08(土) 23:21:14.47 ID:+ZmFfnoi0
川 ゚ -゚) 「そうだな。私も出来得る限りの協力はする」
( ´_ゝ`) 「……」
(´<_` ) 「兄者よ」
( ´_ゝ`) 「……俺はさ、ずっと1人だった」
(´<_` ) 「ああ、ぼっち星人だったな」
( ´_ゝ`) 「だから、元の星が滅んだ原因が自分だと言われた所で、申し訳なく思う人もいないんだ」
(´<_` ) 「そうだな……」
( ´_ゝ`) 「でも、あの星自体は好きだった。そこに住む動物達や植物達も。意思は通わぬ相手だったけれども、好きではあったんだ」
(´<_` ) 「そうだったな……」
( ´_ゝ`) 「だからやっぱり、納得は出来ないし、申し訳なくも思う」
(´<_` ) 「……」
- 56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/08(土) 23:23:25.31 ID:+ZmFfnoi0
( ´_ゝ`) 「けど、俺は死ねないんだ。共に生きると約束したお前がいるから」
(´<_` ) 「兄者……」
( ´_ゝ`) 「だから、何とか折り合いを付けるさ。後悔はするし、その事は重荷として抱えて行くのだろうけど」
( ´_ゝ`) 「生きるよ、ちゃんとね」
(´<_` ) 「……ああ、生きよう、共にな。背負うものも共にだ」
川 ゚ -゚) 「ありがとう」
( ´_ゝ`) 「クーちゃんが礼を言う話でも謝る話でもないさ」
(´<_` ) 「これは俺達の問題で、俺達が答えを出さねばならん話だ」
川 ゚ -゚) 「かもしれないが……それでも……」
( ´_ゝ`) 「まあ、困った時は相談に乗ってもらうぐらいはお願いするさ」
(´<_` ) 「友達として、な?」
川 ゚ー゚) 「ああ、そのくらいはお安い御用だ」
- 58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/08(土) 23:24:48.08 ID:+ZmFfnoi0
私は、ようやく笑みを浮かべてくれた2人に微笑み返す。
まだ思う所は多々あるのだろうが、ひとまず納得してもらえたのだろう。
(゚、゚*トソン 「わぁ、お花が喋ってますよ。すごいですね」
ミセ*゚ー゚)リ 「すごい? ミセリ、すごい?」
ふと耳に、この場にそぐわぬ緊張感のないトソンとミセリの声が届く。
ツンの上にいたはずのミセリは、いつの間にかトソンの手の中にいた。
川 ゚ -゚) 「おい、トソン、乱暴に扱うなよ?」
(゚、゚*トソン 「はい、大丈夫ですよ。細心の注意を払って愛でてますから」
私は2人の方に向かい、トソンの手の中からミセリを取り上げる。
かわいいもの好きと自称していたトソンが少しだけ恨めしそうな顔をしたが、私はミセリに用がある。
ミセリを目の高さに掲げ、さっきの話が理解出来たか聞いてみたが、どうやら全くわかっていない様だ。
ならば無理に理解させる必要はないだろう。
ミセ*゚ー゚)リ 「クー? どうした、クー?」
川 ゚ -゚) 「いや、何でもないさ」
いつか今日の事を理解する日が来たら、その時はちゃんと話してやるつもりだ。
- 60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/08(土) 23:25:56.82 ID:+ZmFfnoi0
私はミセリを肩に乗せ、話の続きをする事にした。
勿論、もう1人の話を忘れたわけではないが、先に他の皆に残りを話し切ってしまおうと思う。
川 ゚ -゚) 「で、こいつの話だ」
私は正面にある巨大な次元の裂け目を指差す。
そして、ハインから聞いた解放の話、失敗の話を皆に話す。
( ・∀・) 「なァるほど、これはある種の伝達器官というわけですか」
川 ゚ -゚) 「そうなるな」
(;´_ゝ`) 「一歩間違えば俺達もこうなってたわけか」
川 ゚ -゚) 「……そうなるな」
実際にそうなったやつもいる事は今更言うまでもないだろう。
全員が昨日、目の当たりにした事でもある。
私はそれを止められなかった。
その事は、私の中でずっと後悔として残っていくのだろう。
それはいい。
いや、良くはないのだが、それは私自身の問題だ。
これから時間をかけて、私自身が折り合いを付けていく話で、彼らに背負わせるものではない。
今私がここでやるべき事は、最後の1人が次元の裂け目にならぬ様、解放する事だ。
- 62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/08(土) 23:27:23.27 ID:+ZmFfnoi0
川 ゚ -゚) 「さて、ブーン」
( ^ω^) 「お?」
私はミセリを肩に乗せたまま、ブーンの方に歩み寄る。
ブーンは笑顔のまま、近付く私達をじっと私を見詰めていた。
川 ゚ -゚) 「今までの話はわかったよな?」
( ^ω^) 「お、わかったお」
川 ゚ -゚) 「それならわかってると思うが、もう1人だけ滅びの因子を持った人間がいるんだ」
私は言葉を切り、ブーンの目を見詰める。
ブーンは相変わらずのいつもの笑顔のまま、表情を変えることなく見詰め返す。
川 ゚ -゚) 「それがお前だ、ブーン」
( ^ω^) 「うんお」
川 ゚ -゚) 「……ひょっとして、お前はその事に気付いていたんじゃないか?」
( ^ω^) 「……うんお」
ブーンは私の問い掛けに、はっきりと肯定の言葉で答えた。
第25話 了 紐を解き、結び直す世界 〜
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