2 :1 ◆Ir.VJFFAYE:2009/08/21(金) 22:17:17.85 ID:RBFe/DM5O
無償の愛、とはどこぞの宗教の教祖が唱えた言葉だ。
つまるところタダでいいことしてりゃいいことありますよってことだろう。
しかしながら模範的日本人である俺は無宗教であり、
右の頬を張られたときは相手の左頬を張る短気な男でもある。
そんなことを思いながらなかなか変わらない大通りの信号を待っていた時の話だ。


( ゚∀゚)「くっそ、この信号長いっつの」


左手の腕時計を見る。
大学の講義の時間が迫っていた。
この大型幹線道路の信号が青になるにはもう少しかかりそうだ。

3 :2 ◆Ir.VJFFAYE:2009/08/21(金) 22:21:47.86 ID:RBFe/DM5O
なかなか変わらない信号と、迫り来る開講時間にイライラしていると、
横にパーマを当てた女性が並んできた。


ξ゚听)ξ


年齢は自分と同じぐらいだろうか。
身長は160ぐらいだが、背筋がピンと張って身長以上の凛とした感じを思わせる。
真っ直ぐ信号を見つめる大きな瞳は見るもの全てを恋に落としそうなものだった。


( ゚∀゚)(……ふーん)


美人。
彼女を表すにはそんな言葉がぴったりだ。

4 ::2009/08/21(金) 22:26:39.29 ID:RBFe/DM5O
そんなこんなで彼女を見ていると、信号が変わるのなんてすぐだ。
今まで道を塞いでいた車の流れを許していた青信号が黄色に変わる。
腕時計を見る。9時10分。


( ゚∀゚)「あ」

ξ゚听)ξ


先ほどの彼女が――まだ信号が青ではないにも関わらず――横断歩道を渡り始めた。
そして、右側からは黄色の内に交差点を通過しようと、ミニワゴンが迫っていた。


ξ゚听)ξ「え」

( ゚∀゚)「あ」


そして、彼女は轢かれた。

7 :4 ◆Ir.VJFFAYE:2009/08/21(金) 22:32:31.51 ID:RBFe/DM5O
俺は、その瞬間を余すところなく見てしまった。
まるで、その時だけ自分の瞼がまばたきを忘れたような――。
自分の視力が眼前の美人殺戮ショーに注がれ、代わりに嗅覚や聴力が消え失せる。


( ゚∀゚)


彼女の右大腿にバンパーがめり込む。
大腿はバンパーの円いフォルムに沿って、しなって、折れる。
衝撃で彼女の足が浮き上がり、ボンネットに体が乗っかる。
フロントガラスにその端正な顔をぶつけ、ひびを入れる。

8 ::2009/08/21(金) 22:36:57.02 ID:RBFe/DM5O
一回限りの車部品ツアーを楽しんだ彼女は、一回転して、車道に投げ出される。
その時、彼女の右腕は捻れ、もう本来の用途を果たすことはないように思われた。


( ゚∀゚)


彼女の体がアスファルトの地面に、打ちつけられる。
首は明後日の方を、向く。
だらりと日曜の猫のように四肢を投げ出した彼女にミニワゴンの後輪が迫る。
ミニワゴンは速度を落とすことはしない。

10 ::2009/08/21(金) 22:44:14.39 ID:RBFe/DM5O
右後輪が、彼女の体を通過する。
車の全荷重が彼女の華奢な体にかかる。
胸にタイヤが乗る。肋骨が折れる。
腹にタイヤが乗る。裂傷と共に内臓が潰れる。
そして数メートル進んだあと、ミニワゴンがようやく停まる。
彼女の下げていた――そして衝突の時に舞い上がった――ポーチが、落ちる音がした。


( ゚∀゚)


殺戮ショーが終わり、一瞬の静寂が訪れる。
そして、観客たちはスタンディングオベーションとばかりに悲鳴を上げた。

11 ::2009/08/21(金) 22:49:13.98 ID:RBFe/DM5O
( ゚∀゚)「……」


ミニワゴンから50代ぐらいのご婦人が青ざめた顔で轢いた挽き肉を確認する。
周りには倒れる女性や嘔吐する男性、救急車や警察を求める怒号が鳴り響く。


( ゚∀゚)「……」


腕時計を見る。9時17分。
なんということだ。これでは講義に間に合わない。
俺はその原因となった挽き肉に目線をチラリとやる。
――今日はハンバーグにでもしようか。
そうして一応大学に向かおうと青信号を確かめ一歩を踏みだそうとして――気づいた。

12 ::2009/08/21(金) 22:53:23.87 ID:RBFe/DM5O
( ゚∀゚)「おいおい……」


お気に入りのポロシャツに、血がベッタリついていた。
白だから尚更目立った。どうしようか。一度帰るか。それとも――。


( ゚∀゚)「……チッ」


大きく1つ溜め息をつき、当たりを見回す。
どこのお人好しが呼んだのだろうか、サイレンを鳴らした挽き肉専用タクシーがやってきた。
腕時計を見る。9時19分。


( ゚∀゚)「……9分」


ああ、それにしても面倒くさいことになった。

13 ::2009/08/21(金) 22:58:36.82 ID:RBFe/DM5O
( ゚∀゚)「……リセット」


俺がその言葉を発した瞬間、世界が歪んだ。
怒号やサイレンがくるくると渦を巻くように歪み、巻き込んでいく。
そしてついには、俺や、挽き肉や、ミニワゴンや、太陽や、ミミズや、
信号や、タクシーや、挽き肉の写メを撮る女子高生や、興奮気味に電話をかけるサラリーマンや、
植木や、関係代名詞や、熱力学の第二法則や、箒星を巻き込んで――
渦が全てを覆い尽くして――








――信号の前に立った。
腕時計を見る。9時10分。
隣には、


ξ゚听)ξ


えらい美人がそこにいた。

14 :10:2009/08/21(金) 22:59:59.59 ID:RBFe/DM5O
――俺は、9分前に戻ってきた。












( ゚∀゚)は巻き戻すようです











16 :11:2009/08/21(金) 23:08:04.21 ID:RBFe/DM5O
先ほどと同じ世界。
しかし、そこには挽き肉もミニワゴンも専用タクシーもいない。
ごく当たり前の普通の信号待ちの風景。


( ゚∀゚)「……ふん」


俺には、時間を巻き戻せる力があるらしい、と感じたのは中3の時だった。
高校受験に失敗し、その日のベッド。


『リセットできたらいいのに』


そんな俺の呟きに呼応して、時間が受験1日前に巻き戻った。
問題がわかっていて、解けないようなアホではなかったので、余裕の合格を決めた。


( ゚∀゚)「……」


アニメや漫画の主人公がこんな力を持ったら、どうするだろう。
とりあえず、世界の平和のために使うのだろう。
一言。クソくらえだ。

17 :12:2009/08/21(金) 23:15:10.85 ID:RBFe/DM5O
しょうもない。
なぜ、こんな力を他人のために使わなければならない。
この巻き戻しだって、服が汚れて、クリーニングが面倒くさかったからだ。
だいたいこいつが赤信号で飛び出すから――


( ゚∀゚)「っと」

ξ゚听)ξ


そんなことを考えていると、早速女が飛び出そうとしていた。
車部品ツアーは楽しかったのだろうか。きっと楽しかったのだろう。
そうでなければもう1回やろうとするはずがない。
まあ、俺以外の人間の記憶は根こそぎ巻き戻っているようなので仕方ないか。

19 :13:2009/08/21(金) 23:21:02.16 ID:RBFe/DM5O
( ゚∀゚)「よっと」

ξ;゚听)ξ「!?」


おもむろに女の左腕を取る。
女のバランスが崩れる。しかし気にせずこちら側に引っ張る。
いきなりのことに女は尻餅をついた。


ξ#゚听)ξ


イラついた視線が俺を刺す。
心外だね。助けてやったのに。


ξ#゚听)ξ「なにすんの」


よ、辺りで黒いミニワゴンが道路を通り過ぎた。
なぜ、自分が引き倒されたのかようやく分かったらしい。
気まずそうに目を伏せる。


( ゚∀゚)「気ぃつけろ」


そう吐き捨て、女を無視して信号を渡る。
腕時計を見る。9時14分。こりゃどっちにしても遅刻だな。

20 :14:2009/08/21(金) 23:26:47.13 ID:RBFe/DM5O
結局遅刻した俺は、教授のお小言を右から左に受け流しつつ、友人である内藤の隣に座った。
内藤の逆側の隣にはこれまた友人である茂等もいた。


( ・∀・)「よう」

( ゚∀゚)「おう」

( ^ω^)「また遅刻かお」

( ゚∀゚)「不可抗力だ」

( ^ω^)「よく言うお」


退屈な授業では教授のありがたい講義を左から右へと受け流し、あっという間に自由な時間がやってきた。
単位? どうせ落としたら巻き戻すからいいのさ。

22 :15:2009/08/21(金) 23:33:14.97 ID:RBFe/DM5O
( ・∀・)「聞いたかよ」

( ゚∀゚)「なにが」


場面は変わり昼時。我が大学の食堂は大勢の人間でごった返していた。
うぜえな。全員殺してやろうか。
――それもいいかもしれない。後で巻き戻せばいいだけだしな。


( ^ω^)「あれかお? さっき美府交差点で」

( ・∀・)「おう、内藤は情報が早いな」

( ゚∀゚)「……知らんな」


美府交差点。
さっき巻き戻しで女を助けてやった所だ。
……まさか、あの女は本当に自殺志願者だったのだろうか。
もしそうなら、俺のポロシャツに血がつかない範囲で死んでほしいものだ。

24 :16:2009/08/21(金) 23:38:19.47 ID:RBFe/DM5O
( ・∀・)「あそこにでっかいラブホの看板あるだろ?」

( ゚∀゚)「……ああ」


そういえば、あそこにはやけにけばけばしいピンクの看板があった。
1回使わせてもらったこともあるが、まあ普通のラブホといった感じだ。


( ゚∀゚)「……で?」


話の流れ的にあの女ではなさそうだ。
いくばくか安心して話の続きを促す。


( ^ω^)「あの看板、ネジがかなり緩んでたらしいお」

( ・∀・)「あの鉄の塊が落ちて下敷きになって3人死亡だと」

( ゚∀゚)「かー。やだねえ、ラブホに潰されて死ぬのは」

25 :17:2009/08/21(金) 23:43:57.45 ID:RBFe/DM5O
( ・∀・)「違いねえ」

( ^ω^)「だおだおー」


この話題はここで終わりらしい。
結局、自分に関係ない奴が死のうと、当然ながら何の関係もない。
この力を自覚してからというもの、何か、『死』に相対するのが多くなったように思う。


( ゚∀゚)「……」


しかし、それは俺に関係ない『死』であり、力を持っているからといって干渉する気はない。
だいたい巻き戻しは酔うのだ。口内炎も巻き戻しする度に酷くなる気がする。


( ・∀・)「……い……おい、長岡」

( ゚∀゚)「ん……わりぃ、考えごとしてた」

26 :18:2009/08/21(金) 23:48:58.01 ID:RBFe/DM5O
( ・∀・)「ちゃんと聞いとけよなー」

( ゚∀゚)「わりぃって」


そう言って残っているカレーをかき込む。
安物のカレーらしく、レトルトの味がした。


( ^ω^)「クーがストーカーに困ってるらしいお」

( ・∀・)「なんか最近つけられてるようなきがするんだってよ」

( ゚∀゚)「気のせいじゃねえの」


お冷や、別名水道水で口の中のカスを流し込む。
冷たさに思わず頭が痛くなる。

27 :19:2009/08/21(金) 23:57:07.73 ID:RBFe/DM5O
( ゚∀゚)「……まあ、話だけでも聞いてやるか」


付き合い上、そう答える。
クー、本名・須名空は俺が入っているサークル、風土地理研究会の会員だ。
もちろん真面目に風土地理を研究する訳もなく、お遊びサークルに成り下がっている。
その中で、男性女性を問わず人気のある人物、それが須名。


( ゚∀゚)「正直あいつをストーカーする気が知れんがな」

( ・∀・)「美人じゃねえか」

( ^ω^)「だおー」

( ゚∀゚)「なんだよあの男言葉は。ふざけてんのか」


チッチッチッ、と内藤が指を振る。
気持ち悪いがこいつは嫌いではないので許す。


( ^ω^)「そこがいいんだお」

( ゚∀゚)「気持ちわりい」


心底、吐き捨てた。

28 :20:2009/08/22(土) 00:03:36.86 ID:NEE5UePWO
川 ゚ -゚)「やあ、よく来てくれたな」

( ^ω^)「クーの頼みとあれば海千山千だお!」

( ゚∀゚)「……」


風土地理研究会があるサークル棟の一室に集まる。
普段の活動もへったくれもないので、部室には俺達以外にはいない。


( ・∀・)「ストーカーだって?」

川 ゚ -゚)「ストーカー候補、だな。お願いというのはだな……」

( ^ω^)「そいつを捕まえて、やっつければいいんだお?」

川 ゚ -゚)「いや、そこまでは……」

( ゚∀゚)「……お前の自意識過剰なんじゃねえの」


ピシリ、という音が聞こえた気がした。
内藤が須名に向けていた首を、油の切れたロボットのようにこちらに向ける。

29 :21:2009/08/22(土) 00:07:14.73 ID:NEE5UePWO
川 ゚ -゚)「……ふふ」


目の前の女は氷のような微笑を浮かべる。
そして、その顔のまま言い放った。


川 ゚ -゚)「それが、お願いなんだ」

( ・∀・)「……というと」

川 ゚ -゚)「本当に私が感じた奴がストーカーなのか確かめてほしい」

( ゚∀゚)「……」


ふざけんな。探偵にでも頼め。
そう言いかけた俺の口は、内藤の発言によって遮られた。

30 :22:2009/08/22(土) 00:11:15.22 ID:NEE5UePWO
( ^ω^)「まかせるお!!」

川 ゚ -゚)「ふふ。ありがとう」

(*^ω^)「おっおっ」


――豚が。


( ゚∀゚)「……チッ」


小さく、聞こえないように舌打ちをする。


川 ゚ -゚)「……」

32 :23:2009/08/22(土) 00:16:38.09 ID:NEE5UePWO
川 ゚ -゚)


須名が帰り道を歩く。


(*'A`)


変な男が須名をつける。


( ゚∀゚)( ・∀・)( ^ω^)


そして、それをつける俺達。


世界で最高に間抜けで胸糞悪い行進だ。
まず先頭が須名というところが気に入らん。


( ^ω^)「なんで長岡は……その、クーが好きじゃないんだお?」

( ゚∀゚)「さあな、なんとなく嫌いなんだよ」

( ^ω^)「……」

『嫌い』をわざと使わなかった内藤にわざと『嫌い』を使う。
なんとなく嫌いなのだ。理由なんてそれで十分だ。

33 :24:2009/08/22(土) 00:23:49.48 ID:NEE5UePWO
( ゚∀゚)「つーか、もうあいつでいいだろ」


こんなのはとっとと終わらせて惰眠を貪るべきだ。
事実先ほどから俺は睡魔と戦っていた。
これ以上長引けば敗北もあり得る。


( ゚∀゚)「おい」

(*'A`)「ん?」


振り向いた所で顔面に拳を叩き込む。
なかなかの手応えがあった。鼻ぐらいは折れたかもしれない。


( A )「――っ!!」


鼻を押さえてのたうち回る男。
こんな奴に俺の睡眠時間を奪われたと思うと泣けるね。
抗議の年を込めて腹に一発。


( A )「ぐっう!!」


変な声を出しながら胃の中の物を吐きだす男。
――楽しい。

36 :25:2009/08/22(土) 00:30:07.61 ID:NEE5UePWO
(#^ω^)「おおおっ!!」

( ゚∀゚)「!」

( A )「ぐえっ!!」


そんな感想を抱いていた刹那、内藤からも攻撃があった。
どこからか調達してきたらしい鉄パイプで殴る殴る。
人目についてはダメだと男を路地裏に引っ張る。

そこからは内藤の独壇場だった。


(#^ω^)「ムカつくんだお、お前」

(;A;)「ひっ……」

( ^ω^)「なあっ!」


――1発。
男の顔が苦痛に歪む。

37 :26:2009/08/22(土) 00:35:43.07 ID:NEE5UePWO
それからはもう、男が呻いては内藤が殴るの繰り返し。
見てる分には問題ないがやる方はしんどいんじゃないだろうか。
見ると茂等は我関せずとばかりにタバコをふかしている。


( ゚∀゚)「……」


内藤はあれで手加減しているらしい。
何回も殴ってはいるが骨が折れるほどではない。
それはあの男にとって幸か不幸かはわからない。


川 ゚ -゚)「タバコをくれないか」

( ゚∀゚)「てめえにやるならドブに捨てる」

川 ゚ -゚)「つれないな」


そう言って茂等にタバコをせびる。
月の光に照らされ、タバコを吸いながら殴打される男を見つめる美人。
クソったれだな、と思った。

39 :27:2009/08/22(土) 00:48:18.78 ID:NEE5UePWO
俺達が男をボコボコにしてから数日後。
俺は須名に呼び出された。


川 ゚ -゚)『どうやらまだあいつがいるようなんだ』

( ゚∀゚)『そこまで慕われているなら付き合ってみたらどうだ』


少なくとも俺ならあれだけボコられたら須名には近づかないね。
あの男には敬意を表明しよう。


川 ゚ -゚)『彼氏のフリをしてくれないか』

( ゚∀゚)『断る』

川 ゚ -゚)『……そうか』

41 :28:2009/08/22(土) 00:52:33.98 ID:NEE5UePWO
川 ゚ -゚)『……巻き戻し』

( ゚∀゚)『…………』

川 ゚ -゚)『彼氏になる気になったか?』

( ゚∀゚)『……ああ』


それから俺は必要最低限の会話のみをして、須名と別れた。
……須名の放った、『巻き戻し』という言葉。
決して当てずっぽうの言葉ではないだろう。
なぜ。あいつが俺の力を知っている。


( ゚∀゚)「……チッ」


忌々しい。
須名は俺の力の、どこまで知っている?

42 :29:2009/08/22(土) 00:56:13.40 ID:NEE5UePWO
川 ゚ -゚)「やあ、待たせたな」

( ゚∀゚)「……」


初夏の日差しうららかな日曜朝。
駅前におしゃれな服装に身を包んだ須名が現れた。
その姿は、忌々しくも、似合っていた。


( ゚∀゚)「お前は、俺の、どこまで知っている」

川 ゚ -゚)「そんな怖い顔をするな。今日はデートだ、楽しく行こう」

45 :30:2009/08/22(土) 01:01:08.57 ID:NEE5UePWO
デート、とはいいながら、須名も本当にデートする気はないらしい。
一般的なデートコース――喫茶店や遊園地――に行く気はなさそうだ。
須名と会話する気も起きないので、ずんずんと進む須名について歩く。


川 ゚ -゚)「……」

( ゚∀゚)「……」


俺が気づいたのは、3回目ぐらいの須名が立ち止まった時だった。
須名は無計画にずんずん道を進むが、たまに立ち止まるポイントがあった。
――俺が、時間を巻き戻して誰かの命を救ってやったところだ。

46 :31:2009/08/22(土) 01:05:39.07 ID:NEE5UePWO
俺が命を救ってやったのはさほど多くはない。
だいたいが気まぐれだし、救ってやった奴の顔も覚えていないのが大半だ。
だから、そんなに数はないはずなのだが、中学生からの積み重ねは案外多いらしい。


( ゚∀゚)「……」


昼にファミレスに入って(不本意ながら俺の奢りだ)、更に歩く。
そして、俺は更に気がついた。
須名は、ポイントで立ち止まり、手を合わせている。


川 - )「……」


目を瞑り、何かに念じる須名。
どうやらこいつは、俺の力の深いところまで知っているらしい。

49 :32:2009/08/22(土) 01:08:33.76 ID:NEE5UePWO
あらかた街を練り歩く勢いで歩き、日も夕暮れになってきたころ。
須名はまた立ち止まった。
いつもより、長く、長く。手を合わせる。


川 - )「……」


まったくなんなのだろうかこいつは。
人の休日を潰して何かの巡礼ツアーに巻き込んだだけだろうか。

51 :33:2009/08/22(土) 01:12:44.59 ID:NEE5UePWO
だいたい何故手を合わせる必要がある。
俺は――仕方なしにとはいえ――命を救ってやった。
感謝されこそすれ、非難されるいわれなどない。
しかしこいつはさっきから俺のことを恨みがましく睨みつけるのだ。
忌々しい。


川 ゚ -゚)「……ここで最後だ」


そう言われてついたのは、私鉄ローカル線の近くにある古ぼけたビルだった。
電車が通る度にぐらぐらと揺れそうなビルだ。
さっさと入る須名を追って中に入る。
こいつがどこまで知っているか聞き出さなくてはならない。

52 :34:2009/08/22(土) 01:16:14.11 ID:NEE5UePWO
極めて前時代的なことに、このビルにはエレベーターが着いていなかった。
黙々と登る須名に従ってずんずん登る。
ふと、階段の下に人物が見えた。


('A`)


全身包帯を巻いた、あの男。
マジか。あの純情、生まれる時代をちゃんとすれば小説の主人公ぐらいにはなれるかもな。
とりあえず無視して階段を上がる。

55 :35:2009/08/22(土) 01:19:36.48 ID:NEE5UePWO
やっとの思いで屋上へたどり着く。
鍵は壊れていた。不用心だね。不審者が入るぞ。


川 ゚ -゚)「隣に来たらどうだ」

( ゚∀゚)「……」


反論する理由も見当たらない。
なので何も言わず隣へ。


川 ゚ -゚)「君の知りたいことはなんだ」

( ゚∀゚)「……」


夕陽が街を染めているが何の感慨も湧かない。
多分、隣がこいつのせいだな。

56 :36:2009/08/22(土) 01:24:17.84 ID:NEE5UePWO
川 ゚ -゚)「……君の力は、だいたい知っている」

( ゚∀゚)「……」

川 ゚ -゚)「君の、罪もな」

( ゚∀゚)「……罪?」


心外である。確かに入試の時には力を使わせてもらったりしたが、それは罪か?
俺の代わりに落ちた奴には悪いと思ってるよ、小さじ1杯ぐらい。


川 ゚ -゚)「そんな可愛いもの、罪とは言わないさ」

( ゚∀゚)「……じゃあ、なんだ」

57 :37:2009/08/22(土) 01:27:53.77 ID:NEE5UePWO
川 ゚ -゚)「君は、命を救うなどと言って、自己満足に浸っているだけだ」

( ゚∀゚)「……自己満足として、それのなにが悪い」


本当は特に積極的に人を救ってやったことはないがな。
全部気まぐれとかだ。
それで助かった奴はラッキーだな。


川 ゚ -゚)「……君は、君の行動が何を引き起こすのか、理解していない」

60 :38:2009/08/22(土) 01:30:39.21 ID:NEE5UePWO
川 ゚ -゚)「……人が死ぬ、ということは、既に決められていること。いわゆる、運命だ」

( ゚∀゚)「うさんくせえな」

川 ゚ -゚)「本来は、その運命通りに、人は死ぬ」

( ゚∀゚)「……」


陽が落ちてきた。
いつまで須名の演説を聞けばいいのだろうか。
帰っていいかな。


川 ゚ -゚)「それをひん曲げるのが……君の力だ」

61 :39:2009/08/22(土) 01:35:34.58 ID:NEE5UePWO
( ゚∀゚)「もしそうだとしたら、なんだってんだ」


若干イライラしながら須名に訪ねる。
結局何が言いたいのだろうか。


川 ゚ -゚)「……君が運命をねじ曲げても、帳尻は必ず合うようになっている」

( ゚∀゚)「……」

川 ゚ -゚)「心当たりはないか? 最近なら、美府交差点とかな」

( ゚∀゚)「……!」



( ^ω^)( ・∀・)

あいつらとの食堂の会話。
確か、ラブホの看板が外れて3人が死んだ――と。


川 ゚ -゚)「運命は変わらない。1人を助けても、必ず他の誰かが死ぬ」

63 :40:2009/08/22(土) 01:41:25.29 ID:NEE5UePWO
川 ゚ -゚)「それどころか、運命を無理やりねじ曲げた歪みは、無関係な人を巻き込む」

( ゚∀゚)「……」

川 ゚ -゚)「君が助けたのは1人。でも歪みで死んだのは3人」

( ゚∀゚)「……」

川 ゚ -゚)「運命の歪みは、何倍にもなって返ってくる」

( ゚∀゚)「……」


須名は、言ってやったと言う顔でふんぞり返っている。
正直、ぶん殴りたい。


川 ゚ -゚)「それが、君の罪だ」

( ゚∀゚)「……なぜ、そんなことがわかる」

65 :41:2009/08/22(土) 01:46:27.13 ID:NEE5UePWO
川 ゚ -゚)「世の中には、いろんな人がいるんだよ」

( ゚∀゚)「……」

川 ゚ -゚)「時間を巻き戻す人や」

( ゚∀゚)「……」

川 ゚ -゚)「それを探知できる人や」


須名は、小さい子供に話しかけるような声色で話す。
それが、異様に鼻を突く。


川 ゚ -゚)「かつ、運命の歪みで最愛の男を失った者とかな」

( ゚∀゚)「! ……」

川 ゚ -゚)「私は、貴様の気まぐれで起こした運命の歪みで死んだ男の、彼女だよ」

67 :42:2009/08/22(土) 01:51:55.79 ID:NEE5UePWO
( ゚∀゚)「……」

川 ゚ -゚)「ここは、その彼が歪みで死んだ……いわば、墓標だ」

( ゚∀゚)「……」

川 ゚ -゚)「忘れたとは言わさんぞ? ここで貴様が起こした歪みを」

( ゚∀゚)「……」


ここで時間を巻き戻したのは、言われてみると確かに覚えていた。
確か、自殺願望を持っていたババアが飛び降りたのだが、血しぶきが俺にかかって最悪だったのだ。
たがら巻き戻した。それだけ。

68 :43:2009/08/22(土) 01:57:11.77 ID:NEE5UePWO
川 ゚ -゚)「私がなぜ、貴様を呼んだかわかるか?」

( ゚∀゚)「いんや」

川 ゚ -゚)「今日、決められている運命は、ここで誰か1人が死ぬ」

( ゚∀゚)「……俺を殺す気か」


思わず、一歩二歩と後ずさりする。
ドアに近いのは俺だ。いざとなれば逃げれる。


川 ゚ -゚)「そうだな。それも魅力的だ」


須名は余裕綽々と言わんばかりに笑う。
ふざけんな。こんな妄言に付き合ってられるか――
そう思い、ドアノブに手をかけ、開いた瞬間――
脇腹に、鋭い痛みが走った。


川 ゚ -゚)「――それは、私の役目ではないからな」

70 :44:2009/08/22(土) 02:02:17.42 ID:NEE5UePWO
(;゚∀゚)「ぐっ……あっ……」


脇腹を見る。
ごついアーミーナイフが、刺さっている。
その、持ち主を、見る。


(#'A`)「昨日は、よくも、やってくれたなあ……」


ああ、こいつが、つけてたのは
すなじゃなく、おれ、だった


(#'A`)「バカにしやがって! 死ね!死ね!死ね!」


いたい、いたい、いたい
はやく、はやく、まきもどせ


(#'A`)「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!!
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!!
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!!」


でも、うんめいの、ひずみは?
――しるか、そんなの。

71 :45:2009/08/22(土) 02:04:55.13 ID:NEE5UePWO
( ∀ )「リせットォぉ!!」


巻き戻っていく。
全てが。
血溜まりに墜ちた自分も。
狂気に染まった男が振るうナイフも。
あの月の下のように笑う女も。




――巻き戻っていく。

75 :46:2009/08/22(土) 02:10:28.28 ID:NEE5UePWO
(;゚∀゚)「!!」


渦を抜け、目が覚める。
脇腹をさする。大丈夫。何もない。
思わずドアから離れる。


川 ゚ -゚)「……使ったか」

(;゚∀゚)「……悪いか」

川 ゚ -゚)「……」


その瞬間、ドアが勢いよく開く。
とっさのことで、大した時間は戻れなかった。


(#'A`)「バカにしやがって! 死ねぇぇぇ!!」


だから、こいつはまだいる。

76 :47:2009/08/22(土) 02:15:28.13 ID:NEE5UePWO
(;゚∀゚)「くっ……」


やはり、狙いは俺。
――なら。
チラリと後ろを――低い柵しかない――見る。


(#'A`)「あああああああああああ!!!」


ナイフを持って突進する男。
運命の歪みが本当にあると言うならば――俺の代わりに――


( ゚∀゚)「お前が死ね」


そう言って突進してくる男を受け流す。
柵に当たった男を抱き上げて――下に落とした。
断末魔を上げた男は、ぐちゃ、という音を上げ動かなくなった。

77 :48:2009/08/22(土) 02:20:45.27 ID:NEE5UePWO
川 ゚ -゚)「……」


一部始終を見ていた女。
眉一つ動かさない。


川 ゚ -゚)「……それで?」

( ゚∀゚)「……はあ?」

川 ゚ -゚)「言っただろう。歪みは何倍にもなって返ってくると」

( ゚∀゚)「……」

川 ゚ -゚)「ここは元々、歪みが大きくなっていた場所だ」

( ゚∀゚)「……」


下では、警察を呼ぶ声が聞こえる。
逃げた方がいいか?

80 :49:2009/08/22(土) 02:24:53.02 ID:NEE5UePWO
川 ゚ -゚)「さっきの貴様の巻き戻しで、歪みは決定的なものになった」

( ゚∀゚)「……」

川 ゚ -゚)「今日貴様を呼び出したのは、貴様の罪の大きさを認めさせるためだ」


……下の怒号に混じって、電車の音が近づいてくる。
――まさか。


川 ゚ -゚)「目に焼き付けろ。クソやろう」


刹那、この世が終わったかのような爆音が響き渡った。
前時代的ビルはゆらゆらと揺れる。

83 :50:2009/08/22(土) 02:30:51.86 ID:NEE5UePWO
(;゚∀゚)「……」


私鉄ローカルの電車――が――横倒れになって、すぐそこの住宅街に――
脱線。
頭に浮かんだのはその二文字。


川 ゚ -゚)「……これが、貴様の罪だ」

(;゚∀゚)「……」


下では、さっきとは比べモノにならないぐらいの騒ぎになっている。
母を求めて泣き叫ぶ子供。
ちぎれた子供を抱きかかえる母。
頭から血を流して動かないOL。
茫然自失となっているサラリーマン。
潰れた車両。


足が震える。手が震える。
こんなのは初めてだ。
須名の顔をまともに見れない。
我慢ができない。
ダメだ。ダメだ。ダメだ――!

85 :51:2009/08/22(土) 02:37:40.00 ID:NEE5UePWO
( ;∀;)「ははははははははは!!」


笑いが、止まらなかった。
なんだろう、何を言ってるんだこの女は。


( ;∀;)「ははははははははは!!」

川 ゚ -゚)「……壊れたか」

( ;∀;)「壊れてねえよwwwこれがお前の罪ってwww厨二かよwww」

川;゚ -゚)「……どういうことだ」


心底当てが外れた顔をしている。
なんだろうこの女は。
俺がこんなのにダメージを受ける男だと思ったのか。


( ;∀;)「この事故は事故だろwww俺のせいじゃねえじゃんwww」

川;゚ -゚)「き、貴様の巻き戻しの歪みが……」

( ゚∀゚)「それを証明するのは誰だよ」

川;゚ -゚)「!?」

88 :52:2009/08/22(土) 02:47:35.63 ID:NEE5UePWO
( ゚∀゚)「落ちた男を殺したのは俺だよ。でもそれだって正当防衛だ」

川;゚ -゚)「……」

( ゚∀゚)「俺は線路に置き石したわけでもない」

川;゚ -゚)「……」

( ゚∀゚)「よしんば俺の罪があったとして、それは誰が裁いてくれるんだ?」

川 ゚ -゚)「……私が裁いてくれようじゃないか」

( ゚∀゚)「……銃? 物騒だね」

川 ゚ -゚)「貴様の力に比べれば児戯さ」

89 :53:2009/08/22(土) 02:50:52.76 ID:NEE5UePWO
( ゚∀゚)「なあ……」

川 ゚ -゚)「大人しく罪を認めれば見逃すのも考えたが」

( ゚∀゚)「なあって」

川 ゚ -゚)「黙れ。殺す」


須名の手に握られた銃は真っ直ぐこちらを見つめている。
淀みなく発射準備が整えられていくそれは、まさに死神だ。

90 :54:2009/08/22(土) 02:53:17.89 ID:NEE5UePWO
川 ゚ -゚)「……最期に言い残すことは?」

( ゚∀゚)「……」

川 ゚ -゚)「……そうか」


この状況。どうするべきか。
銃は真っ直ぐこちらを見つめている。
須名はすっかり興奮していて、話が通じそうにない。
しかし、今の俺にはこの状況を抜け出す甘美な誘い文句を持っていた。

92 :55:2009/08/22(土) 02:56:00.54 ID:NEE5UePWO
川 ゚ -゚)「さよなら。クソ野郎」


須名の人差し指がトリガーにかかり、弾が発射されようとする瞬間――
俺は、カードを切った。


( ゚∀゚)「過去に行かないか?」

川 ゚ -゚)「この期に及んで……」

( ゚∀゚)「須名の彼氏が死ぬ直前まで」

川;゚ -゚)「!」

94 :56:2009/08/22(土) 02:59:19.36 ID:NEE5UePWO
( ゚∀゚)「どうだ? 俺を殺して憂さ晴らしすんのもいいが……」

川;゚ -゚)「……」

( ゚∀゚)「俺の力を最大活用するのも悪くはないと思わないか?」

川;゚ -゚)「……2年前だぞ? どれほどの歪みが出ると思ってる」


へえ、2年前か。

96 :57:2009/08/22(土) 03:03:51.51 ID:NEE5UePWO
( ゚∀゚)「……2年前へ」


これほど派手に巻き戻すのは初めてだ。
できるだろうか。いや、しなくては本当に死んでしまうのだから。
やらなくてはならない。


川;゚ -゚)「まてっ!」


待たない。
人に散々ご高説垂れた奴が彼氏の死にどう対応するのか。
見極めてやるさ。


( ゚∀゚)「リセット」


渦が、全てを呑み込んで――

99 :58:2009/08/22(土) 03:09:11.33 ID:NEE5UePWO
( ゚∀゚)「……」

川;゚ -゚)「……」


リセットした時に須名の腕を掴んでおいた。
こうすれば一緒に記憶を失わずに巻き戻すことができると思うから。
実際それはあっていたらしい。
須名は少なからず動揺している。


( ゚∀゚)「………ははは」


須名はここが彼氏の墓標と言った。
ならば、そろそろ須名の彼氏は死ぬはずだ。
――須名が、ちょっかいを出さなければ。


川;゚ -゚)「……」


――歪み。
こいつが散々言ってきたことだ。
彼氏か、歪みか。
さあ、選べ――須名。

102 :59:2009/08/22(土) 03:13:58.38 ID:NEE5UePWO
川;゚ -゚)「!」


屋上のドアが開く。
そして屋上に入ってきた人物。
それを見た瞬間、須名の動揺は頂点に達した。
――あいつか。


( ^Д^) 「……空? どうしたんだ、こんなとこに」


須名の下の名前、ぶら下げた弁当箱、男の格好。
どうも会社の昼休みらしい。気づけば落ちていた日も頭上でさんさんと降り注いでいる。
時差ボケになりそうだ。

104 :60:2009/08/22(土) 03:18:37.17 ID:NEE5UePWO
須名は、彼氏がどうやって死んだか、わかっているはずだ。
そして、何もしないと彼氏が死ぬことも。
運命をねじ曲げると、歪みが発生する。こいつが散々言ってきたこと。


川;゚ -゚)「い、いや……ちょっとな」

( ^Д^) 「? まあいーや、飯食うべ」

川;゚ -゚)「!」


……須名の反応でわかった。転落死だ。
あの柵、2年後の小振りな柵より大分古い。
多分、あの男は柵の劣化か何かが原因で死ぬ。
となれば、時間はあまりない。
すべては、須名にかかっている。

105 :61:2009/08/22(土) 03:22:27.57 ID:NEE5UePWO
川;゚ -゚)「い……」


さあ、どうする?


( ^Д^) 「?」


さあ、彼は柵にもたれようとしてるぞ?


川;゚ -゚)「あ……」


さあ、彼か歪みか、大事なのはどちらだ?


( ゚∀゚)「……」


さあ―――

108 :62:2009/08/22(土) 03:27:16.12 ID:NEE5UePWO
川;゚ -゚)「もたれるなぁ!!」

(;^Д^) 「うわ、びっくりした。なんだよ」

川;゚ -゚)「い、いや……その柵、危なくないか?」

( ^Д^) 「え……? うわ、本当だ。ユルユルだな。こりゃ報告しないと」

川;゚ -゚)「あ……えっと……」

( ^Д^) 「ありがとな」


そう言って彼は須名の頭を撫でる。
いいねえ。アツアツカップルじゃないか。


川;゚ -゚)「……」


そんな顔でこっちを見るな、須名。
それが、お前の選択だろう?
彼が生きればそれでいいんだろう?
そのために何人死のうが知ったことではないんだろう?

110 :63:2009/08/22(土) 03:30:07.82 ID:NEE5UePWO
高笑いを抑えて、屋上から出て行く2人を見送る。
須名は青い顔をしていた。
しかし知ったことではない。
自分の判断のリスクぐらいは背負って欲しいものだ。


( ゚∀゚)「はは……ははははは!!」


結局。
偉そうにしてた奴であれだ。
まったく、笑わせてくれる。

111 :64:2009/08/22(土) 03:33:46.03 ID:NEE5UePWO
( ゚∀゚)「ははははは……あ」


そういえば、2年戻ってきてしまったから今の自分は高校生だ。
しまったな。また受験か。


( ゚∀゚)「まあ……いいか」


次はもっとレベルの高い大学に行こう。
人を鉄パイプで殴る奴のいない大学。
自分の力を最大活用しよう。
もう一度モラトリアムを堪能するため、俺は歩き出す。
いずれ歪みに巻き込まれるであろう、哀れな墓標を背に。


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