5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 03:04:08.50 ID:VBuWPcoa0

( ・∀・)「こっちか」

モララーの手には、ブーンからもらった手書きの地図が握られている。
近所の凄い巫女さんがいるという神社への地図だ。

川;д川「私お祓いされちゃうんですかね……」

( ・∀・)「大丈夫。呪いさえ解ければ俺は満足だし」

川*д川「ありがとうございます……」

( ・∀・)「感謝されてもね。あ、ひょっとしてここかな?」

住宅街のど真ん中で、小さな林と、長い階段を見つける。
階段の両側には赤い鳥居が連なっていた。

クー様神社。
鳥居にはそう書いてある。


8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 03:07:31.76 ID:VBuWPcoa0

( ;・∀・)「クー……様?」

川;д川「クー様……て書いてありますね」

( ・∀・)「うさんくせえ。君の先輩くらいうさんくせえ」

川д川「ペニサス先輩はうさんくさくなんか無いです……!」


 △
('、`*川『コカコーラってあるじゃん。あれって醤油をろ過したやつなんだよ』

川*д川『物知りダナー』


( ・∀・)「じゃあいってみようか。そういえば幽霊って神社の中に入れるのかな?」

川д川「え、何でです?」

( ・∀・)「神様の力に守られてるだろうから、幽霊は弾かれちゃうんじゃない? 何となくだけど」


10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 03:10:37.90 ID:VBuWPcoa0

川д川「……」

( ・∀・)「……」

普通に入れた。

( ・∀・)「うさんくささが増してきたぞー!」

川*д川「やだなあモララーさん……神様なんて非科学的な存在信じてるんですか?」

( ;・∀・)「幽霊いるんだから信じてもいいじゃん!」

モララーたちは階段を一段ずつ上っていく。
しばらく上ると、階段の切れ目が見えてきた。

終わりが見え始めると、二人は我慢出来ずに駆け上がってしまう。


11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 03:12:52.65 ID:VBuWPcoa0

( ;・∀・)「はぁ……はぁ……ゴール!」

川;д川「私のが早かったです……」

( ;・∀・)「写真判定が欲しいね。ん……?」



川 ゚ -゚)ジー



( ・∀・)

川д川

ほうきを持った巫女が、モララーたちの方をガン見していた。
どうやらブーンが言っていた人物は、あの女性のようである。


13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 03:15:15.65 ID:VBuWPcoa0


川 ゚ -゚)ジー


( ;・∀・)「見てる見てる見てる」

川;д川「何か怖いです……モララーさん先行って下さい……」

( ;・∀・)「わ、わかったよ」

なるべく不信感を与えないように、フレンドリーに話しかけてみる。

( ・∀・)「やあ巫女さん! 僕の名前はモララー! 今日も良い巫女日よりですね!」

川д川

川 ゚ -゚)

( ・∀・)


  _,、_
川 ゚ -゚)


15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 03:18:23.53 ID:VBuWPcoa0

  _,、_
川 ゚ -゚)ジー


川;д川「何なんですか巫女日よりって……!」

( ;・∀・)「俺人見知りするタイプなんだよ! 思わず緊張しちゃって……」

川;д川「も、もういいですよ……私が話しますから……」

( ・∀・)「ご迷惑かけます……」

おぼつかない足取りで、貞子は巫女に近寄っていく。

川;д川「あの……」

川 ゚ -゚)ジー

川;д川「ここの巫女の方ですよね……?」


16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 03:20:21.48 ID:VBuWPcoa0

川 ゚ -゚)「そうですけど」

川д川(通じた!)

川;д川「あのですね……呪いを解く方法なんかを教えて頂けたらなーと……」

川 ゚ -゚)「憑かれていますね」

( ・∀・)「おお! そうなんですよ!」

川 ゚ -゚)「私はスーパー美少女巫女クーですから、そのくらいの事わかります」

( ・∀・)「何か、ずいぶんと無駄な修飾が多いですね……」


18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 03:23:41.71 ID:VBuWPcoa0

川 ゚ -゚)「お若いのに大変ですね。今除霊してさしあげます。ていや!」

( ;・∀・)「痛!?」

持っていたほうきでぱしぱしと叩かれるモララー(20)。

川 ゚ -゚)「ていや! 死ね! 消滅しろ!」

( ;・∀・)「何すか何すか!?」

川 ゚ -゚)「悪霊め……しぶといな」

( ;・∀・)「……言っておきますけど、憑かれているのは俺ですからね?」

川 ゚ -゚)「……」

( ・∀・)「……」

川 ゚ -゚)「はは。冗談ですよ。はは」

( ;・∀・)「こいつはうさんくせー! ゲロ以下にうさんくせ――――!!」


21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 03:29:44.83 ID:VBuWPcoa0

( ;・∀・)「俺はただの大学生です」

川 ゚ -゚)「そうするとこちらが」

川;д川「私はただの幽霊です……貞子って言います……」

川 ゚ -゚)「なるほど。今全てを理解出来ました。
     ここでは話すのもなんですので、中へどうぞ」

手招きされるがまま、二人はクーのあとについていき、建物の中へ入っていった。
純和風に作られた家の和室に通される。

川*д川「落ち着く造りの家です……」

( ・∀・)「ああ、そっか。君はそうかもね」

川 ゚ -゚)「風呂はユニットバスですけどね」


23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 03:34:56.47 ID:VBuWPcoa0

川 ゚ -゚)「それで、呪いというのは?」

( ・∀・)「あ、ああ、そうそう。実は」

モララーは今までの経緯を全て話した。
よくわからない部分は、隣に座っている貞子が補足してくれた。

川 ゚ -゚)「そういう事でしたか」

( ・∀・)「除霊しちゃうのは可哀想なので、呪いだけ解いてもらえないですかね」

川 ゚ -゚)「……」

( ・∀・)「クーさん?」


24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 03:37:55.19 ID:VBuWPcoa0

川 ゚ -゚)「モララーさん。貞子さん」

( ;・∀・)「はい……」

川;д川「な、何でしょう……」

川 ゚ -゚)「死者の呪いというものがどういうものか、ご存知ですか?」

モララーたちは顔を見合わせた後、首を横に振った。

川 ゚ -゚)「幽霊が人に憑くというのは、人それぞれが持つ因果律が交わるという事です」

( ;・∀・)「日本語で……」

川;д川「おk……」

川 ゚ -゚)「つまりわかりやすく言うとですね」


25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 03:40:29.92 ID:VBuWPcoa0

川 ゚ -゚)「憑くというのは、くっつく、という事です。
     離す事は比較的容易ですが、呪いとなると話は違う」

( ・∀・)「え……」

川 ゚ -゚)「魂のレベルで交わった結びつきは、どちらかが消えるまで続きます。
     生者が行う呪いとは桁違いに効力が高い為、そうなるのです」

( ;・∀・)「ちょっとまって下さい。じゃあ、もしかして……」

川 ゚ -゚)「そうです」




川 ゚ -゚)「呪いを消す為には、貞子さんが消える他方法は無いんです」


27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 03:44:34.31 ID:VBuWPcoa0

( ;・∀・)「そんな」

川;д川「……」

(・∀・; )「知らなかったの!?」

川;д川「はい……ごめんなさい…………」

(・∀・; )「俺に謝っても……くそ!」

川 ゚ -゚)「それと、呪いを解くには時間がかかります。
     魂と魂が混合されている状態な訳ですから、そう、最低でも24時間はかかりますね。
     ビデオを見たのはいつですか?」

( ;・∀・)「六日前の深夜です……」

川 ゚ -゚)「ではもう時間がありません。除霊をするなら今しかない」


28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 03:47:06.01 ID:VBuWPcoa0

( ;・∀・)

川;д川

川 ゚ -゚)

( ;・∀・)「貞子はどうなるんですか」

川 ゚ -゚)「魂は在るべき場所に帰ります。
     輪廻転生の法則に従って、別の次元へと飛ばされます」

( ;・∀・)「完全に消える訳じゃ、無いんですよね」

川 ゚ -゚)「そうです。だから、死ぬとか、別れじゃないんです。
     彼女は旅立たなくてはいけない魂なんです。お気を落とさないで」

( ;・∀・)「……」


30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 03:51:38.70 ID:VBuWPcoa0

川д川「……モララーさん」

( ・∀・)「貞子」

川д川「私の事は気にしないで下さい。
     私だって、幽霊なんて中途半端な存在より、また人として生きたいんですから……」

川ー川「だから、大丈夫です」

( ・∀・)「……うん」

理屈はわかった。道理も通っている。
しかし何かが、気に入らなかった。

川 ゚ -゚)「ではすぐにでもお祓いを始めようと思います。
     お堂に行きましょう」

( ・∀・)


( ・∀・)「はい」


唐突に始まった何かが、唐突に終わろうとしていた。
仕方の無い事だと割り切ろうとしても、やはり何かが、モララーの中で引っかかった。


32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 03:54:30.71 ID:VBuWPcoa0
   _____
 /:\.____\
 |: ̄\∩川д川\<ノロマス!
 |:真  |: ̄ ̄ U ̄:|

34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 03:56:58.70 ID:VBuWPcoa0

アパートに戻ってくるまで、二人は無言だった。

川д川「あ、モララーさん」

( ・∀・)「え?」

部屋のドアを開けようとした時、貞子がそれを制した。

川*д川「ちょっと待ってください……」

貞子は一人で先に部屋に入ってしまった。
モララーは行動の意味が理解出来ずに、既に閉じられたドアの前で立ち尽くす。

「入ってきてもいいですよ」

( ・∀・)「う、うん……」


36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 03:59:47.38 ID:VBuWPcoa0

おずおずとドアを開けると、

川*д川「おかえりなさい」

玄関の前で立っていた貞子が、笑顔でモララーを出迎えた。

( ;・∀・)「これがしたかったの?」

川д川「新婚さんごっこです……」

( ・∀・)「君ってたまに変な行動するよね」

モララーがそう言うと、貞子は頬を膨らます。
それを見たモララーが、また笑う。

( ・∀・)「今日は久々に料理してみようかな」


38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 04:03:40.39 ID:VBuWPcoa0

川д川「モララーさん、料理出来るんですか……?」

( ・∀・)「一人暮らしを舐めちゃ駄目だぜ。といっても作るのはチャーハンだけどね。
      今ある材料で出来そうなの、それくらいだし」

川д川「お手伝いします……」

( ・∀・)「ありがとう」

二人は台所で、仲良く並んで料理を始めた。
幽霊と料理を作る事に違和感を覚えないのは、モララーが彼女に慣れすぎている為だ。

( ;・∀・)「卵割りすぎ割りすぎ! 明日の分が無くなる!」

川;д川「ごめんなさい……」


40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 04:07:13.87 ID:DJ3/iBut0

貞子の助けを借りつつ、二人分のチャーハンを作り上げる。
貞子は幽霊なので食事はいらないといったが、雰囲気だけでもとモララーが貞子の分まで作ったのだ。

( ・∀・)「いただきます」

川*д川「いただきます……」

小さなテーブルを二人で囲む。
これがずっと続けば良い。二人はそう願った。

それが出来ないからこそ、二人は強く、

( ・∀・)「おいしい。やっぱりご飯は誰かと食べるもんだね」

川*д川「ですねえ……」

願った。


41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 04:09:03.45 ID:DJ3/iBut0

 ホイ 川*д川
    と  つ
   ⊂_ ノ〜
  (( _し′))
   /\ \
(( /  \ \
  \   \ \
   \  / ̄/ ))
    \/_/

ホメテホメテ   ∩、、
    (( 〜ノ つ ))
      ノ  ノ
    川д*川つ
     し′
    / ̄/\
   / /  \
(( / /   / ))
  \ ̄\  /
   \_\/


46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 04:15:16.45 ID:DJ3/iBut0

食事を食べ終わり、する事が無くなると、二人は無言になった。
しかし気まずさなど無く、ゆったりと流れる時間を堪能しているようだった。

( ・∀・)「―――ねえ」

川д川「はい……」

( ・∀・)「どうして、君は幽霊になったの?」

川д川「……」

( ・∀・)「?」

川д川「実は、覚えて無いんです」

( ・∀・)「そんな……だって、生前は〜ってよく言ってたじゃん」

川д川「村で育った事は覚えてるんです。でも、どうして死んだかは覚えて無いんです」


47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 04:18:32.39 ID:DJ3/iBut0

( ・∀・)「そっか……幽霊ってみんなそうなのかな?」

川д川「違うみたいです……先輩は」


 △
('、`*川『今思い出してもムカつくわ〜』

川д川『何の事ですか?』
 △
('、`*川『私をひいたスクーターよ。それで死んじゃって今ここにいるワケ』

川#д川=3『酷い話ですね……』
 △
('、`*川『まあその時、銀行強盗して逃げてる途中だったんだけどね』


( ・∀・)「それは地獄行くわ」

川д川「閻魔様も即決ですよね……」


48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 04:20:49.51 ID:DJ3/iBut0

川д川「あと、どのくらいなんでしょうか……」

( ・∀・)「……」

貞子が言ったのは、あとどれだけ経てば、自分が消えるかという事だ。

( ・∀・)「たぶん、明日の夕方くらいだと思う」

川д川「……」

( ・∀・)「……怖い?」

川д川「え?」

( ・∀・)「消えるのって……やっぱり怖い?」


50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 04:24:09.64 ID:DJ3/iBut0

川;д川「い、いえ、全然そんな、大丈夫です……!」

( ・∀・)「そう……」

時計の針がカチカチと時間を刻む。
どれだけ望んでも、時は止まってはくれない。

( ・∀・)「俺は怖い」

( ・∀・)「こんなカタチで、せっかく仲良くなれたのに、また離れるなんて……怖いよ」

川д川「モララーさん……」

モララーにとって不思議な事だった。
たった数日間の付き合いなのに、自分を殺そうとしている幽霊なのに。

とても大切な存在となってしまった。


52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 04:29:22.83 ID:DJ3/iBut0

人見知りで、友達すら少ない彼にとって、恋など無縁な存在だった。
幽霊の彼女だからこそ、ここまで親しくなれたのだろう。

あるいは、最初の一目惚れの相手がたまたま幽霊だった。
そう言えるのかもしれない。

川д川「モララーさん……わがまま、言っていいですか?」

( ・∀・)「!」

( ・∀・)「いいよ。うん、何でも聞く」

川д川「私……その……」

貞子は顔を俯かせ、顔が赤くなっているのをばれないようにして言った。

川д川「最後に、デートっていうのを、してみたいんです―――」






54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 04:31:39.77 ID:DJ3/iBut0

川д川 オトシモノ…
(つ呪と)
 u―u


56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 04:36:09.63 ID:HDWRtzkT0

('A`)

('A`)「俺の名前は鬱田ドクオ」

('A`)「北半球で最もナイスガイともっぱら噂の男だ」

ドクオは再び、モララーのアパートの前に来ていた。
つい先日、泣きながらモララー宅を飛び出した彼だが、思うところがあったので帰ってきたのだ。

('A`)「よくよく考えればおかしい話だ」

('A`)「ピザとニートしか友達のいないあいつに彼女が出来るなんておかしい」

('∀`)「ククク……俺の勘だとあの子は幽霊だな。
    根暗なモララーだから幽霊を呼び寄せちゃったに違いない」

('∀`)「種がわかれば恐れるものなど何も無いものよ!」


57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 04:38:51.97 ID:HDWRtzkT0

バタン

('A`)「あ」

川*ー川「モララーさん……早く早く」

( ・∀・)「急がなくても遊園地は逃げないよ。あ、ドクオ」

川д川「こんにちは……」

('A`)

( ・∀・)「悪い。今からデートだ。用事があるならまた明日にしてくれ。じゃあな」

川*д川「失礼します……」

('A`)




。゜。゜(;A;)゜。゜。


62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 04:47:40.13 ID:HDWRtzkT0

貞子がデートをしたいと言った時、モララーが最初に頭に浮かんだのが近所の遊園地だった。
デートスポットとしてベターであるし、何より貞子が遊園地を知らないというのが決め手だ。

( ;・∀・)(どのタイミングで手を繋ぐか……それが問題だ!)

川*д川(ゆうえんちってどんなとこだろ……)

バスに乗って遊園地に向かっている最中、二人はそれぞれ別の意味でそわそわしていた。



川*д川「ほわああああ……!」

遊園地に着くと、貞子は観覧車やジェットコースターなどを見上げて、感嘆のため息をついた。
彼女はこれほど巨大な建造物を見たことが無かった。


65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 04:50:21.09 ID:HDWRtzkT0

川д*川「あれなんですか……?」

(・∀・ )「あれは中に乗ってぶんぶん振り回されるやつ」

川*д川「あっちのは……?」

( ・∀・)「中に乗って縦横無尽に振り回されるやつ」

川*д川「一緒に振り回されましょう……!」

貞子は目を輝かせて、子供のようにはしゃいでいた。

( ・∀・)「!」

この時モララーは気がついた。
自分が、絶叫系の乗り物が大の苦手だという事に。


67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 04:56:51.79 ID:HDWRtzkT0

( ;・∀・)(くそ! やられた! ちくしょうどうせなら格好いいところ見せたい……)

川*д川「早く乗りましょう……」

( ・∀・)(えーいままよ! 大体子供の頃苦手だったものが、今は大丈夫って結構あるもんな!
      わさびとか、ショウガとか、何かそういうのしか思いつかないけど……)

( ・∀・)「よし、行こう」

川*д川「はい……!」

モララーたちは意気揚々と、海賊船を模した例のあの乗り物に乗り込んでいった。



( ゚∀゚)「ゴク――――!! 天さ――――――ん!!」

川*д川「キャ――! キャ――!」


案の定こんな感じになった。


69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 04:58:16.88 ID:HDWRtzkT0

( ・∀・)

川*д川「ふああ目が回ります……」

( ・∀・)

川д*川「次はアレとかどうです……?」

(・∀・ )


<ぎゃああああ!
<うわあああああああ!


(・∀・ )

川д*川「みんな楽しそうですよ……」


72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 05:04:43.12 ID:HDWRtzkT0

( ゚∀゚)「ハァァァァァァァァンンンンンン!!」

川*д川「キャー!」

( ゚∀゚)「じゅじゅじゅ重力のの法則が乱れれれるるるうるうぅぅぅぅぅ」

川*д川「キャー!」

↑ちょっと慣れた




( ゚∀゚)「貞子、動物ふれ合いパークとかあるから、そこ行かない?」

川*д川「あの乗り物はなんですか……!?」

( ゚∀゚)「あれはね。ジェットコースターといってね。現代では頭が狂った人しか乗らないんだよ」

川д川「列に子供並んでますよ……」

( ゚∀゚)「末恐ろしいねえ。嫌だ嫌だ。これからの日本社会が思いやられるよ」


74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 05:07:37.66 ID:HDWRtzkT0

川д川「乗っちゃ駄目……?」

( ゚∀゚)




ゴォォォォォ

川*д川「キャ――! 速い速い!」

( ゚∀゚)

川*д川「回るぅ――!!」

( ゚∀゚)

↑気絶


77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 05:12:20.41 ID:HDWRtzkT0

( ・∀・)「貞子!」

川*д川「はい……!」

( ・∀・)「お昼ご飯を食べたいのだが、許可を頂きたい!」

川*д川「許可します」

( ;∀;)(助かった――! ああああ助かった――!)

これ以上連続で乗ったら本当に死にかねない感じだった。
絶叫が駄目な人にしかわからない、死とは別の恐怖というものがあるのだ。

( ・∀・)「軽いご飯にしとこう。ホットドッグとか」

川*д川「早く食べられるなら何でも良いです……さっき乗ったやつもっかい乗りたいから……」

( ;∀;)「俺ジュースだけでいいや。今何か食べても全部無駄になりそう」


79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 05:16:30.01 ID:HDWRtzkT0

ご飯を食べ終わると、モララーは貞子に手を引かれて、再び悪夢へと誘われる。

( ;∀;)

( ・∀・)「あ……」

歩いている途中、モララーはふと立ち止まった。
手を引いて先を歩いている貞子が振り返る。

川*д川「どうしたんですか……早く列に並びましょうよ」

( ・∀・)「いや、何でもない」

( *・∀・)(手、繋げてるじゃん)

モララーにとってこれは快挙だった。
今日の目標達成である。

川*д川「今度はじぇっとこすたーから乗りましょう」

( *・∀・)「あ、ああ!」


80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 05:18:52.20 ID:HDWRtzkT0

――にゃあああああああ!!

――あははは!


――ほおああああ死ぬ!! 死ぬる!!

――楽しいー!!


――……

――キャ―キャ―!!




( ゚∀゚)「貞子。お化けの君にぴったりの場所があるんだ。行かないかい?」

川*д川「行きます!」


81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 05:22:39.23 ID:HDWRtzkT0

片方の命が大分削られていったが、それでも二人は楽しんでいた。

(//‰ ゚)「グオオオ! イボイボだぞー!」

川*д川「初めまして……私、貞子と言います」

(//‰ ゚)「あ、はい。初めまして……」

( ;・∀・)「すすす、すいません! 貞子、お化け役の人に話しかけちゃ駄目!」

平日という事もあり、全てのアトラクションを制覇するのに、そこまで時間はかからなかった。
それでも楽しい時は過ぎるのが早く、太陽が沈み始めていた。

川*д川「……」

( ゚∀゚)「……」

二人はベンチに座って、しばし休憩を取っていた。


83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 05:26:39.19 ID:HDWRtzkT0

川*д川「はー疲れましたね……」

( ゚∀゚)「うん。精神的な部分で大いに」

川д川「……」

( ・∀・)「何を見てるの?」

川д川「あの乗り物……かんらんしゃ……でしたっけ」

( ・∀・)「ああ、そうだよ。また乗りたいの?
      さっきはつまらなそうにしてたのに」

川*д川「乗りたいです」

( ・∀・)「……うん、わかった」

夕陽が長い影を作る。
二つの影が、寄り添うようにして、繋がりあう。

二人は当たり前のように手を繋ぎながら、観覧車に向かって歩き出した。


84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 05:30:46.10 ID:HDWRtzkT0

(=゚ω゚)ノ「乗りたいのかよぅ」

( ・∀・)「乗りたいよぅ」

川*д川「乗りたいですよぅ……」

(=゚ω゚)ノ「真似するなよぅ。はい、どうぞ」

回ってきた車の扉を開けてもらう。
二人は手を繋いだまま乗り込んでいった。

川*д川「一周は何分でしたっけ」

( ・∀・)「十五分くらいかな……」

川*д川「もっとこう……びゅーん!って回れば、面白いと思うんですよね……」

( ・∀・)「もしこれがびゅーんって回るものだったら俺今乗ってないよ」

川*д川「ふふふ……でも……」


85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 05:34:06.19 ID:HDWRtzkT0

ゆっくり、ゆっくりと、観覧車は回る。
地面が離れていくにつれて、景色が広がっていく。

川д*川「こういうのも、良いですね……」

遠い空に、赤い夕陽が見えた。
貞子の横顔を、同じ色に染めていく。

( ・∀・)「……」

綺麗だ、とモララーは思った。
心の底から、そう思った。彼女の白い肌をじっと見つめ続けている。

川д*川「……」

( ・∀・)「……」

川д川「……モララーさん」

( ;・∀・)「あ、はい、何?」


86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 05:37:59.05 ID:HDWRtzkT0

見とれていたモララーは、声をかけられて現実に引き戻された。
それを知ってか知らずか、貞子は柔らかい笑顔を作りモララーを見つめ返す。

川*ー川「今日はありがとうございました……。
      良い思い出が出来ました。本当に、ありがとう……」

( ・∀・)

( ・∀・)「違うよ」

川д川「へ?」

( ・∀・)「礼を言うのは俺だよ」

川д川「……?」

モララーは、今ならどんなにくさい台詞でも喋られそうだと思った。


87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 05:41:49.44 ID:HDWRtzkT0

( ・∀・)「君に出会えて、それで君から、たくさんのものを貰った。
      今日の事も含めて。だから、違うんだ」

川д川「モララーさん……」

( ・∀・)「君に会えて良かった。ありがとう、貞子」

川*д川「……」

(・∀・ )「……綺麗だね」

川д*川「……うん」

夕日が、建物が作る地平線の向こうに沈もうとしていた。
この世で最も美しい景色なんじゃないかと二人は思った。

(・∀・ )

川*д川


89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 05:44:51.36 ID:HDWRtzkT0

川*д川「モララーさん」

( ・∀・)「何?」

川*д川「最後のわがまま、聞いてくれます……?」

( ・∀・)「……」

( ・∀・)「もちろん!」

川*д川「……」

一泊溜めてから、貞子は絞り出すようなか細い声で言った。


川*д川「私と――して貰えませんか……?」


肝心な部分が小さすぎて聞こえなかった。
それでもモララーは、耳じゃなく、もっと別の器官で、彼女の言葉を理解した。


90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 05:47:13.40 ID:HDWRtzkT0

( *・∀・)「い、いいの?」

川*д川「はい…………モララーさんなら…………」

( *・∀・)「お、俺、そういうの、経験無いんだけど」

川*д川「私も全く……」

( *・∀・)

川*д川


二人は無言で見つめ合った。
すると、貞子の方が席から立ち、モララーの隣に座った。

肩が触れあいそうになる程近い距離で、二人はまた見つめ合う。


91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 05:49:38.41 ID:HDWRtzkT0

( *・∀・)

川*д川

( *・∀・)「えっと、あの……」

川*д川「私から……で……」

( *・∀・)「あ、ああ、うん、わかった」


間近で見ると、貞子の白い肌のきめ細かさがよくわかった。
長い髪の間から見え隠れする整った顔立ちと、小さな唇が、徐々に近づいてくる。


モララーはそっと目を閉じた。


92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 05:51:21.65 ID:HDWRtzkT0


(…………)




(……?)



しかし、あの瞬間がやってこない。



「貞子……?」



返事すら無い。
モララーは閉じていた目をそっと開けた。



95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 05:54:03.25 ID:HDWRtzkT0










              ( ・∀・)









98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 05:58:12.57 ID:HDWRtzkT0

貞子はいなかった。
迎えの時がきたのだ。

( ・∀・)

(・∀・ )

夕日は既に沈んでいた。
空には夕日の名残だけが残っていた。

(・∀・ )

(・∀・ )

(・∀・ )「さようなら……貞子」

貞子が消えたのは、ちょうどてっぺんの位置だった。
少しずつ狭まる景色が、ぼやけて滲んだ。


100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 05:58:50.28 ID:HDWRtzkT0
  ∧∧
  /⌒ヽ)
〜(__)
"" """"" "


102 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 06:03:09.56 ID:HDWRtzkT0

行きと同じように、帰りもバスを使った。

( ・∀・)

二人分の座席の隣は、空いている。
ほんの十数分の道のりが、やけに長く感じられた。


アパートにつくと、彼は自分の部屋の前で立ち止まった。
誰かが中にいて、ドアを開けてくれないかと思ったが、いくら待ってもドアは開かなかった。

鍵を使って、自分でドアを開ける。
一人暮らしを始めてから、ずっとそうしてきたはずなのに、どこかぎこちない手つきだった。

( ・∀・)「ただいま」

真っ暗な部屋に呼びかける。

( ・∀・)「ただいま」

言葉を返す人はいない。


103 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 06:06:45.72 ID:HDWRtzkT0

部屋に上がると、財布と携帯をテーブルに置き、ベッドに寝転んだ。

( ・∀・)「!」

ふと思いつき、ゲーム機の電源に手を伸ばす。
しかし何度ボタンを押しても電源がつかない。

( ・∀・)「あ……そうか」

つかないのは当然だった。
これは一度水洗いされたものなのだから。


する事が無いので、クローゼットから漫画本を数冊取り出した。
それを全て読み終えると、腹が減ったので即席ラーメンを作った。

夕ご飯を食べ終え、面白いテレビ番組も無くなってきた頃、明日は朝からバイトだという事を思い出した。
テーブルを片付け、布団を敷き始める。


104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 06:09:18.96 ID:HDWRtzkT0

布団を掴んだ手に、水滴が落ちた。

( ;∀;)「あ……」

自分が泣いている事に気がついたのは、その時だった。

( ;∀;)

( ;∀;)「なあ、これでいいんだよなあ……?」

誰にともなく呟いた言葉は、涙声で裏返っていた。
ずっと狭いと思っていた自分のアパートが、今日はとても、広く感じた。



【終わり】



105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 06:10:29.99 ID:HDWRtzkT0



【終わり】



川 ゚ -゚)ヒョコ



   ガシ
川 ゚ -゚)つ【終わり】



【終わり】ミ

   ∩
川 ゚ -゚) ポイ



107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/25(月) 06:11:10.91 ID:HDWRtzkT0


川 ゚ -゚)「もうちょっとだけ続くんじゃ」

( ;・∀・)「え?」



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