30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/12(水) 00:54:03.70 ID:CGmKlpe4O
【第二話 護衛】


( ^ω^)「はぁっ!」

内藤の目にも止まらぬ打ち込みが幾度と無く長岡を襲った。

( ゚∀゚)(見えるっ!)

長岡はそれらを躱し、時には落ち着いて捌いていく。
焦りからか内藤の足が止まった。

(#゚∀゚)「おらぁっ!」

完璧に木刀の軌道を読みきり、内藤の木刀を跳ねあげた。
木刀は内藤の手を離れ、派手な音をたて道場に転がった。

(#゚∀゚)「足を止めるな!武雲流の基本だろうが!」

(;^ω^)「はいですお!」

(#゚∀゚)「もう一本だ!来い!」

道場は長岡の怒声が響き渡っていた。
道場内にはまだ数人が残っていたが今は手を止めて二人の立ち合いに見入っていた

('A`;)「すごいな・・・」

欝田もその中にいた。
二人の稽古は日が暮れるというのに逆に加熱していくようだった。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/12(水) 00:54:59.79 ID:CGmKlpe4O
( ゚∀゚)「今日はここまでとしよう」

道場に欝田を含む三人だけになった時
長岡がようやく終わりを告げた。

(;^ω^)「ありがとうございましたお・・」

内藤は息も絶え絶えといった感じである

( ゚∀゚)「内藤。くれぐれも武雲流の基本を怠るな。」

( ゚∀゚)「武雲流の真髄は基本の積み重ねから生まれる。
極めればどのような流派の者であろうと」

( ゚∀゚)「敵では無くなる!」

長岡は防具を乱暴に脱ぎすて
裏の井戸に体を拭きに向かった。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/12(水) 00:56:23.48 ID:CGmKlpe4O
('A`)「激しい稽古だったな内藤。大丈夫か?」

( ^ω^)「お。長岡どのはやはりお強い。
先日の立ち合いは本気ではなかったと見えるお」

('A`)「あの時は少々冷静さを失っていたようであったしな」

('A`)「しかしお主も何本か取っていたではないか。あまり案ずるな。」

( ^ω^)「・・・」

御前試合まであと一月。

内藤は多少の焦りはあったものの
長岡との稽古において確実に力がついていくのを実感はしていた。

( ^ω^)(もう少しで何かつかめる気がするお・・・)

また激しい稽古の中で内藤は
自分の中で新たな感覚が生まれるのを感じていた。

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/12(水) 00:57:22.17 ID:CGmKlpe4O
('A`)「もう日も暮れる。帰ろう」

二人が道場の片付けをすませ体を清め荒巻に挨拶をし
外にでると、既に日は落ちていた。

( ^ω^)「すっかり遅くなってしまったお」

('A`)「仕方あるまい。近頃は日も短い」

('A`)「ところでどうだ?一杯やっていかんか?」

( ^ω^)「お、欝田から誘うとは珍しいお。しかしあまり遅くなると」

('A`)「そう言うな。お互い所帯をもたぬ身。付き合え」

そう言うと欝田は前を歩きだした。
内藤も諦めたのかだまってついて歩く。
道場で内藤の稽古が終わるまで待たせた負い目も手伝った。

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/12(水) 00:59:17.90 ID:CGmKlpe4O
町外れに旨い肴をだす二人の馴染みの店があった。
料亭や待ち合い茶屋が軒を連ねる通りとは大分離れているが
町人に混じり気を使わずに呑めるいい店であった。

欝田は何も言わずその店に向かっているようである。

道中、内藤は御前試合で立ち合うであろう
顔も知らない相手のことを考えていた。
相当の手練がくるのは間違いない。

( ^ω^)「力を出し切るのみだお・・・」

そう思うのだが、道場の看板を背負うという重みが
晴れることはなかなか難しかった。

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/12(水) 01:00:23.28 ID:CGmKlpe4O
店はいつにもまして賑わっていた。
町人にまざってちらほら下級藩士も混じっているのが見える。

('A`)「まず一献」

( ^ω^)「お。ほれ欝田も」

疲れ切った体に酒が染みた。
しばらく他愛の無い会話を続けていると
欝田が真剣な顔で口を開いた。

('A`)「実は話しておかねばならねことがある」

(;^ω^)「なんだお?突然」

('A`)「実は秋に祝言をあげることになった」

( ^ω^)「ほう、めでたいお。どなたがだお?」

('A`;)「・・・俺だ」

( ^ω^)「?欝田が・・」

( ^ω^)「・・・」

( ゚ω゚)「なんということでござろおおーーー!」

内藤の口調は驚きのあまりおかしくなった。

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/12(水) 01:01:14.92 ID:CGmKlpe4O
('A`;)「落ち着け。家同士が決めたことだ。俺の意志はない」

(*^ω^)「そういうなお!して、相手は!」

('A`)「父上の付き合いのある家らしい。家柄も釣り合うらしいしな」

('A`)「隣町の砂尾家の次女だ」

( ^ω^)「砂尾・・確か馬廻り組のかお?」

('A`;)「知っていたか。顔は知らんがな」

(*^ω^)「ふむ、あの町は役目で行くことも多い
欝田の代わりに品定めしておいてやるお」

('A`)「その時はお前を斬る!」

(;^ω^)「冗談ではないか。」


二人の話は尽きることが無かった。
内藤もめでたい話に久しぶりに心の底から楽しんだ。

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/12(水) 01:02:18.49 ID:CGmKlpe4O
(;^ω^)(すっかり遅くなってしまったお)

欝田と別れた内藤は酔いも忘れて小走りになった。
内藤は屋敷の前に着くと一度大きく息を吐いて
戸を開けた。

( ^ω^)「只今帰りましたお」

奥からドカドカと足音が聞こえた。

ξ#゚听)ξ「随分と遅いお帰りですね。内藤様」

(;^ω^)「ツンどの!?」

J( 'ー`)し「あなた様の帰りを待ってくださっていたのですよ」

(;^ω^)「お?」

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/12(水) 01:03:16.25 ID:CGmKlpe4O
津出ツンは藩から三百石の禄高を受ける上士の娘であった。

幼少の頃は欝田を含めた三人でよく遊ぶ仲であったし
道場にも三人一緒に通い始めた。

しかし年ごろになり世間の目や身分の違いを感じるようになると
自然と内藤や欝田はツンと距離を置くようになった。

そのツンが目の前にいた。

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/12(水) 01:04:09.33 ID:CGmKlpe4O
(;^ω^)「それは申し訳ないことをしたお。して、用とは?」

ξ゚听)ξ「父上がお呼びです。
どのような用かは教えてくださりませんでしたが」

( ^ω^)「津出様が・・・?」

ξ゚听)ξ「急ぎの用らしいです。
内藤様の家だからということで私がきました」

( ^ω^)「・・・しかしもう遅いお。屋敷までお送りするお」

( ^ω^)「明日改めて・・・」

ξ゚听)ξ「父上は遅くなっても構わないそうです。行きましょう」

(;^ω^)「・・・分かり申したお。では母上、行って参ります」

J( 'ー`)し「分かりました。父上には私から申しておきます」

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/12(水) 01:05:16.81 ID:CGmKlpe4O
ツンの少し前を提灯を下げて歩きながら
内藤は欝田のことを思い返していた。

( ^ω^)(あの欝田が祝言をあげるのか)

( ^ω^)(いつか拙者も妻をめとる時が来るのかお)

ふと少し後ろを歩くツンが浮かんだ。

( ^ω^)「身分が違いすぎるお・・・」

ξ゚听)ξ「え・・?」

(;^ω^)「な、なんでもござらんお!」(声に出してしまったお)

ξ;゚听)ξ「何を慌てているのよ。ところでアンタ」

ξ゚听)ξ「たまには顔出しなさいよ。アンタ達が来なくて暇なのよね」

(;^ω^)「は、はぁ」

ツンは二人きりになると幼少の頃のような口調になった。
内藤はそれを恥ずかしく思うが少し嬉しくも思う。

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/12(水) 01:06:28.26 ID:CGmKlpe4O
その後二人は欝田の祝言の話で盛り上がった。
ツンは驚きながらも祝福していた。

ξ#゚听)ξ「しっかしアイツ私に一言あってもいいのに」

( ^ω^)「拙者もさっき聞いたばかりだお」

ξ゚ー゚)ξ「とにかくおめでたいわね。楽しみだわ」

津出家の屋敷が見え始めた。
夜だというのにかがり火が至るところに焚かれ遠くからもよく見えた。

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/12(水) 01:07:30.40 ID:CGmKlpe4O
屋敷のかがり火でお互いの姿がよく見えるまでになった時であった。

( ^ω^)「お・・・」

( ^ω^)(見られてるお。一・・・いや二人)

内藤の足が少し遅くなる。

( ^ω^)「ツンどの、近くへ」

ξ//)ξ「な、なによ!急に」

ツンは恥ずかしそうに内藤に言うが
提灯に照らされた内藤の真剣な顔を見ると黙って傍に寄った。

内藤は気付かれないように刀の鯉口を切った。

( ^ω^)(殺気は感じられぬお。見張り・・か?)

こちらから仕掛けることも無い。
しかも今はツンもいる。
内藤は気を配りながらも足早に門をくぐった。

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/12(水) 01:08:39.29 ID:CGmKlpe4O
迎えに出た下男にそっと外に注意するよう伝えると
幼少の頃何度も訪れた屋敷の長い廊下をツンと共に進んだ。

( ^ω^)「失礼いたしますお。内藤です」

障子越しに声をかけた。

「む、入れ。ツンは戻りなさい」

ツンに目で挨拶を交わし膝をついたまま障子を開けた。

(,,゚Д゚)「急に呼びだしてすまんな。」

( ^ω^)「いえ、遅くなりまして申し訳ありませんお」

(,,゚Д゚)「気にするな。こちらが呼んだのだ。」

ツンの父、津出儀小朗は深夜だというのに帯刀している。

(,,゚Д゚)「唐突で悪いが、今夜からお前にはこの屋敷にいてもらう」

(;^ω^)「お!?」

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/12(水) 01:09:29.51 ID:CGmKlpe4O
この日から内藤は藩を揺らがす
騒乱に巻き込まれていくことになる。

月の無い暗く静かな夜だった。



続く



('A`)「俺の嫁・・・」
('∀`)「フヒヒ」

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