- 6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/15(土) 00:15:15.01 ID:YW3nnlYVO
- 【第七話 因縁】
一連の騒動から五日後。
内藤と欝田は筆頭家老である引家慎之上の屋敷に呼ばれていた。
(-_-)「津出から話は聞いておる。このたびの働き、見事であった」
藩政を十年以上もの間支配し続けてきた男を前に、二人は完全に畏縮している。
( ^ω^)(この御方が引家様かお……)
目の前にいるのはなんの変哲も無い小柄な老人にしか見えない。
しかし切れ長の細い目からは常に鋭い眼光が二人に放たれていた。
(-_-)「弍田は近頃こそこそと何か画策しておったようじゃがの。
最後は呆気ないものであったわ」
( ^ω^)「……」
内藤は藩を揺るがした大処分を思い出した。
- 7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/15(土) 00:16:45.67 ID:YW3nnlYVO
- 藩主の帰城後の引家の行動は早かった。
すぐさま家老を集めると弍田の不正を御前で激しく糾弾したのだ。
弍田も必死で反論したが
動かぬ証拠を突き付けられると押し黙るしかなかったという。
幾人かの家老は激怒し弍田にその場での切腹を迫ったが
長年の藩政への貢献を認めた藩主は藩外追放の処分を下した。
しかし本当の処分はこれからである。
引家はその後、徹底的なまでに弍田派の藩政からの追い出しを行ったのだ。
様々な理由をつけては降格や減禄の処分を行い
逆に引家派の人間を各要職に引き上げた。
もはや藩政は引家派に占められ、弍田派は完全に力を失っていた。
- 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/15(土) 00:17:43.48 ID:YW3nnlYVO
- ( ^ω^)(恐ろしい御方だお……)
内藤は藩政の権力争いの恐ろしさというものを身をもって実感していた。
(-_-)「さて、内藤洞伊蔵は禄は七十石であったな」
(;^ω^)「はいですお」
(-_-)「今回の働きを認め三十石加増の百石を禄とする」
( ^ω^)「はっ。ありがたき幸せですお」
(-_-)「次に欝田毒男。お主は二十石加増の九十五石とする」
('A`)「ありがとうございます」
(-_-)「うむ。これからも藩の為尽くすがよい。
ではわしはまだ用事があるでの」
まだ処分の件が完全に片付いていないのだろう。
そう言うと引家は立ち上がり足早に広間を出ていった。
- 11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/15(土) 00:19:13.68 ID:YW3nnlYVO
- 引家の屋敷を出ると二人は並んで道場へ向かった。
('A`)「何やら疲れたな。今日くらい休んで呑みに行かぬか?」
( ^ω^)「今休むわけにはいかぬお。少しでも稽古せねば」
内藤はツンとの約束以来ますます稽古に明け暮れている。
先程の加増の喜びは確かにあったが御前試合に勝たねば意味が無い。
今は少しでも強くなりたかった。
('A`)「まったく。融通の効かぬやつだ」
欝田は未練がましく内藤を睨むが渋々といった感じでついていった。
- 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/15(土) 00:21:21.29 ID:YW3nnlYVO
- 二人が礼をして道場に入ろうとすると女中に呼び止められた。
荒巻が内藤を呼んでいるらしい。
内藤は道場を迂回し荒巻の住む屋敷に回った。
( ^ω^)「失礼しますお」
荒巻は読み物をしていたようだ。
/ ,' 3「来たか。内藤。よく稽古に励んでいるようじゃな」
( ^ω^)「はっ。御前試合も近いですお。
道場の看板を汚さぬ為にも後れを取るわけにはいきませぬ」
/ ,' 3「その心意気やよし。そこで話とはの…」
/ ,' 3「お主には明日から出稽古に出てもらう」
( ^ω^)「出稽古ですかお?しかし長岡どのに……」
/ ,' 3「今のお主に必要なのは様々な相手との立ち会いだ。
場所は隣町の直心流。誰がおるかはお主も知っておろう」
- 17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/15(土) 00:22:44.22 ID:YW3nnlYVO
- 直心流は小さいながらも数々の剣豪を輩出してきた歴史ある道場である。
そして現在、武雲流の長岡を凌ぐとまで言われる天才がいた。
( ^ω^)「茂良与之助どのですかお」
実際に茂良は前回の御前試合において長岡を下していた。
/ ,' 3「御前試合に奴も出る。向こうも手の内は見せぬだろうがの。
しかしこの申し出は向こうからきたものなのじゃ。喰えぬ男よ」
/ ,' 3「茂良については長岡に聞くがよい。下がってよいぞ」
内藤が礼をし座敷を出ようとすると荒巻が呼び止めた。
/ ,' 3「忘れるところであった。津出に言われたのじゃが」
/ ,' 3「弍田が藩を出る際に刺客を雇ったという噂があるらしいのだ。
狙いは内藤。お主だ」
(;^ω^)「……!」
- 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/15(土) 00:23:53.57 ID:YW3nnlYVO
- / ,' 3「ただの噂であれば良いが、用心をするようにとのこと。
余程の相手でなくばお主が後れをとることは無かろうがの」
( ^ω^)「……承知しましたお」
内藤は座敷を出ると道場へ向かった。
( ^ω^)(やはり争いは恨みを生むお。)
自業自得とはいえ一族郎党引き連れて
長年親しんだ藩を出ていかねばならなかった弍田。
逆恨みとはいえ、その悔しさは想像を絶するものだったろう。
( ^ω^)(嫌な話を聞いてしまったお)
その日内藤は不安を斬り捨てるが如くがむしゃらに稽古に励んだ。
ツンとの約束で多少浮かれていた気持ちは既に微塵も無くなっていた。
- 22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/15(土) 00:25:26.16 ID:YW3nnlYVO
- 次の日。
内藤は勤めを終えるとその足で隣町へと向かった。
荒巻の話を聞いてから内藤は常に警戒を怠らぬようになっている。
辺りに気を配りながら足早に進んだ。
やがて道場が見え始めた。
威勢のいい掛け声が離れた場所からもよく聞こえる。
( ^ω^)「武雲流道場からきた内藤洞伊蔵ですお!」
門をくぐると内藤は道場の声に負けぬ威勢のいい挨拶をした。
静まり返る道場内。
道場中の目が一斉に内藤に向けられる。
- 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/15(土) 00:26:29.30 ID:YW3nnlYVO
- すると道場の奥から一人の恰幅のいい壮年の男が出てきた。
( ,'3 )「これは内藤どの。本日はわざわざお越し頂きかたじけない。
わたしはここで道場主をしている中嶋と申します」
( ^ω^)「礼には及びませぬお。お招きに感謝いたしますお」
( ,'3 )「いやはや、内藤どののご活躍。こちらの耳にも届いておりますぞ」
( ,'3 )「おい!茂良!挨拶しなさい」
すると一人の長身の男が前に出た。
見た瞬間、内藤は茂良の強さを悟る。
それ程までの威圧感。
年は内藤とさほど変わらないようだが
茂良の鋭い視線に、一瞬自分が怯むのを感じた。
- 25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/15(土) 00:28:26.72 ID:YW3nnlYVO
- ( ・∀・)「……茂良だ。支度が済んだら立ち合うぞ。急げ。」
茂良のぶっきらぼうな態度に中嶋は何か言おうとしたが口をつぐんだ。
( ^ω^)「承知いたしたお」
これから幾度と無く刀を競わせる男との
初めての立ち合いが始まった。
続く
川 ゚ -゚)「欝田毒男か…」川 ゚ -゚)「……」
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