4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/26(水) 00:43:24.68 ID:nw8L0Va6O
【第十一話 勘】


いつものように道場で稽古に励んでいると、内藤はふと違和感を覚えた。

( ^ω^)(……?)

視線だと気付き格子戸を見る。
一瞬だが何者かが顔を隠すのが見えた。

( ^ω^)「……」

( ゚∀゚)「気付いたか。まぁ気にするな」

長岡がそっと声を掛ける。既に気付いていたらしい。

( ゚∀゚)「どこの道場の者かは知らぬがよくある事だ。
    それだけ御前試合とは出る者にとって命運を懸けると言っても過言では無いからな」

( ^ω^)「はい」

静かに返事をし稽古を続ける。
その後も何度か視線を感じたが暫くするといつの間にか消えていた。

5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/26(水) 00:44:40.83 ID:nw8L0Va6O
荒巻に挨拶を済ませると内藤は長岡と共に道場を出た。
欝田は近頃勤めが忙しいらしく今日は顔を見せていない。

( ^ω^)「先程の視線の者は一体どこの輩でしょうかお」

( ゚∀゚)「さあな。間違いなく御前試合に関わりのある者だとは思うがな。
    さすがに藩外の者は無いとして、流石一刀流。もしくは直心流か」

( ^ω^)「……直心流は無いと思いますお」

内藤は一度直心流の茂良と立ち合って負けている。
わざわざ偵察に来るとは思えなかった。

( ゚∀゚)「そんなことは分からんぞ。あそこは不祥事を起こしたばかりだ。
    面目を取り戻そうと必死だろうよ」

不祥事と聞いて内藤は中嶋に襲われた夜を思い出す。
そのことは荒巻と欝田以外には話してはいなかった。

7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/26(水) 00:46:22.41 ID:nw8L0Va6O
事件はその後の調べで、中嶋が暗殺を生業としていたことを露見した。

即刻中嶋家の御家取り潰しが決まったが、問題は道場主が居なくなった道場である。
城内では暗殺との関わりを疑う声から潰すべきだという意見があったが
現在の要職に就く者の中には直心流道場の出身も多く、同情的な意見の方が多かった。

結果、まだ若いがその才能を知られる茂良が道場主となり存続されることになったのである。

( ゚∀゚)「まぁ今は下手な小細工を考えるより己の腕を磨くべきだ。
    しかし近頃のお前の成長は目を見張るものがある。自信を持つのだな」

( ^ω^)「ありがとうございますお!」

長岡に言われると不思議に本当に自信がつくのを感じる。
内藤は疲れを忘れ軽い足取りで家路に着いた。

8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/26(水) 00:48:08.60 ID:nw8L0Va6O
家に着き食事を済ませると内藤は庭に出た。
灯りを縁側に置くと木刀を振るう。
ようやく夜は涼しくなったが、それでも全力で木刀を振るうとすぐに汗が吹き出てくる。

(;^ω^)「ふっ!ふっ!」

十分に身体を暖めると、技の稽古を始める。
夜の鍛練は、技を閃き荒巻に指摘された日から既に日課となっている。

( ^ω^)(ようやく分かってきたお)

日頃の成果か少しずつだが形になってきていた。
本当は実際に人を相手にしたかったが、それは荒巻に禁止されている。

(;^ω^)「ふぅ…」

手を止めて夜空を仰いだ。

9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/26(水) 00:49:00.70 ID:nw8L0Va6O
稽古に加えての技の鍛練はつらいものがあったが、今は少しでも力をつけたかった。

( ^ω^)(負ける訳にはいかぬお……
     道場の皆の期待に応えるために…ツンのために)

( ^ω^)(……そして)

内藤は気付き始めていた。御前試合に自分が出ると決まる前は無かった感情だ。

( ^ω^)(拙者は強い者と戦いたいんだお……
     そして確かめたいお。一人の刀に生きる者として…自分の腕を)


戦乱の世は終わり、今は泰平の世である。
内藤が生きる間に戦が起こることはまず考えられなかった。

武士のたしなみとしてではない。
内藤は刀に生きる意味を御前試合に見いだしたかったのである。

( ^ω^)「……」

目の前の闇を見つめる。
見えない敵に向かって再び木刀を振るい続けた。

11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/26(水) 00:50:11.93 ID:nw8L0Va6O
道場へと向かう道、内藤は前を歩く欝田に気付いた。

( ^ω^)「おーい。欝田」

小走りに追い付く。欝田も気付いて立ち止まった。

('A`)「おう、内藤」

( ^ω^)「昨日も道場に顔を出さなかったお。そんなに忙しいのかお」

('A`)「そろそろ稲刈りの時期だからな。昨日も村を廻っていたのだ」

( ^ω^)「ふむ。それは大変だお」

('A`)「しかも俺の祝言の前祝いだと言っては何かと呑みに連れて行かれてな」

( ^ω^)「お主は酒を呑まぬとなかなか自分の話をせぬしの」

('A`)「…まあな。しかし近頃は城内でも御前試合の話で持ちきりだぞ。
   藩外から出る者について聞いているか」

( ^ω^)「む。なんでも入即流と言ったかお」

13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/26(水) 00:51:00.94 ID:nw8L0Va6O
('A`)「そうだ。隣藩では敵無しという腕前らしいな。
   なにより不敵なことに天下無双を謡っているらしいぞ」

( ^ω^)「それは大きくでたものだお。
     しかし余程の自信が無ければ天下無双は名乗れまいお。侮れぬ」

('A`)「余程の阿呆かも知れぬがな」

道場が近づいてきた。いつものように気合いの入った声が響いている。
ふと、内藤は礼をして道場に入ろうとする欝田を止めた。

('A`)「どうした」

( ^ω^)「む、ちと気配を消して追いて来てくれお」

二人は静かに道場の裏に向かった。
道場の道は林が広がっており、今の時期は草が生い茂っているため滅多に人は来ない。

15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/26(水) 00:53:03.89 ID:nw8L0Va6O
音をたてないように注意しながら進む。
そっと顔だけ出して覗くと、格子戸から道場を覗く男が見えた。

( ^ω^)「何者だお!」

欝田と共に内藤は飛び出した。
男は驚きで一瞬全身を跳ね上げるとおそるおそるといった感じで振り返る。

(;´_ゝ`)「いやいや、拙者、怪しい者ではないでござる」

('A`)「誰も怪しいなどと言っておらぬ。
  しかし自分から言うとは何かやましい事でもあるのかな」

(;´_ゝ`)「そそ、そんなものは無い。ちと道に迷っただけで」

( ^ω^)「ここは林しか無いお。それに何故道場を覗くお」

(;´_ゝ`)「う、あれだ!山菜などを探しておったのじゃ。
     それで道を聞こうとしてだな…」

('A`)「ならば尚更、何故道場へ入らん。それにそれが山菜を取りに来たという格好か」

17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/26(水) 00:53:47.35 ID:nw8L0Va6O
男の出で立ちはとても山菜を取りに来たという格好では無い。
しかも頭にはほっかむりをしている。どう見ても怪しかった。

(;´_ゝ`)「拙者はいつもこの格好なのだ。道場へは入り口が分からなくての」

( ^ω^)「……」

無言で男を睨み付けた。沈黙が流れる。
男の顔から汗がひっきりなしに流れ出ている。



(#´_ゝ`)「なんだ!さっきからちまちまと小さき事を!
     そんな事では御前試合も知れたものだな内藤!」

突然、男が声を荒げた。今にも刀を抜きそうになる。

( ^ω^)「……何故拙者の名を知ってるんだお」

(;´_ゝ`)「……勘だ」

( ^ω^)「……」

('A`)「……」

19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/26(水) 00:54:48.66 ID:nw8L0Va6O
('A`)「名を名乗れ」

( ´_ゝ`)「断る」

('A`)「一声出せば道場生が集まるぞ。絞めあげられたいか」

(;´_ゝ`)「……」

男はそれでも黙っている。尋常では無い汗をかいていた。

( ^ω^)「もういいお欝田。そこの者も帰っていいお」

(;´_ゝ`)「本当か!?すまぬ、恩に着るぞ」

('A`)「しかし内藤。こやつ怪しすぎるぞ」

( ^ω^)「なに、御前試合の関係ならこのような小細工をする者など怖くないお」

(;´_ゝ`)「なんだと!貴様、流石一刀流を愚弄するか!」

( ^ω^)「流石一刀流?」

(;´_ゝ`)「くっ。それでは御免」

男は足早に林の中へと消えて行く。
二人は暫くその場で呆然と立っていた。

20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/26(水) 00:55:46.36 ID:nw8L0Va6O
('A`)「なんだあれは。結局全て吐いていったぞ」

( ^ω^)「流石一刀流かお。場所が遠くて詳しくは知らぬお」

('A`)「謎が多い流派だ。確か一子相伝の技があるとか……しかし」

そこまで言って欝田が堪えきれないといった感じで笑いだした。

('∀`)「うはははは!なんだあいつは!うひひひ」

(*^ω^)「確かにひどい言い訳だったお!勘と来るとは」

その後二人は声に気が付いた道場生が駆け付けるまで笑い続けた。
内藤はともかく欝田の笑っている姿を見た道場生は目を丸くするのだった。



続く



( ´_ゝ`)「どこだここは」
(´<_` )(兄者おそいな…)

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