22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/01(月) 23:57:59.34 ID:/P3ZXns1O
【第十四話 開幕】


御前試合は城下町で一番大きい羅雲寺にて行われる。

内藤と荒巻が鳥居をくぐると、今日の御前試合を見に来たであろう
武家の姿とその付き添いで場は賑わっていた。

その中には内藤を見覚えている者も多いらしく、ひそひそとささやく声がする。

/ ,' 3 「あそこじゃ」

荒巻の指す方を見ると、境内の一角が長大な白い幕で囲まれているのが見えた。
その中に既に藩主は来ているのだろう。
数人の槍を持った家来が物々しく見回っている。

( ^ω^)「あの中に殿が居られるのですかお」

/ ,' 3 「うむ。くれぐれも無礼の無いようにな。
    しかしまだちと早い。あの小屋で支度だ」

境内の片隅に小さく古い小屋がある。
二人は周りからの視線を一身に集めながら小屋に向かった。

23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/01(月) 23:59:48.92 ID:/P3ZXns1O
小屋に見えたが中は意外なほど広かった。
本日行われる試合の参加者は四人。それぞれの部屋が用意されていた。

六畳程の座敷に入ると、内藤はまず荷物を下ろした。

/ ,' 3 「わしは殿のお傍で解説する役を授かっておる。
    内藤、存分に奮えよ」

( ^ω^)「はい…必ずや武雲流の名に恥じぬ試合をお見せしますお」

/ ,' 3 「うむ、その心意気やよし。期待しておるぞ」

荒巻は内藤の目を一度じっと見つめると部屋を出ていった。

( ^ω^)「ふぅ…」

一息入れて着替えを始める。
袋に入った竹刀を壁に掛け、母に洗ってもらったばかりの稽古着と襷、鉢巻を取り出す。

( ^ω^)「よし」

鉢巻を強く頭に巻き付けた。身体と共に心が引き締まるのを感じる。

使いの者が来るまで、内藤は目を閉じ瞑想を始めた。

26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/02(火) 00:01:01.55 ID:V8lSSfrhO
瞑想中、ふと内藤は昔を思い出した。

( ^ω^)(ふむ、そうだお。この寺はあの時の)

内藤の脳裏に浮かんだのは幼少の時の思い出だった。

( ^ω^)(あの時は欝田と共に稽古の後にふらりと寄ったのだったかお。
      それで他流の年上の道場生に絡まれて…)

( ^ω^)(あの頃は幼かったお。結局叩きのめされて帰ると
     次の日ツンに叱られたのだお。何故仕返しに行かぬと……)

( ^ω^)(ツン…)

思いがけずツンを思い出してしまう。
しかし内藤はツンの昔からの負けん気を思い出し微笑んだ。

( ^ω^)(ツン。今度は負けぬお。そして必ず約束を……)

身体から力が漲るのを感じる。
内藤の身体も強者との立ち合いを求めているようだった。

27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/02(火) 00:02:55.48 ID:V8lSSfrhO
内藤は使いの者に呼ばれると、竹刀を手に小屋を出た。
多くの視線を感じながら堂々と白幕を目指し歩く。


幕に入る前に参加する四人が始めて顔を揃えた。
張り詰めた空気が漂う。


( ^ω^)「……」

( ・∀・)「……」

(´<_` )「……」

( ,_ノ` )「……」


藩外から一人、そして藩内から三人。
それぞれその名を藩内外に轟かす剣豪が集まった。

28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/02(火) 00:04:26.42 ID:V8lSSfrhO
四人は無言で視線を交じり合わせる。
そのまま並んで幕をくぐった。

幕をくぐった瞬間、四人は熱気に包まれた。
普段は顔を合わせることが無い藩の重役が一同に集まり、今入ってきた男達に視線を向ける。

幕の中心は細かい砂で丁寧に馴らされた試合場になっている。
その向こうに一際小高くされた場所があった。
その場所に座る男。
藩主美府之上である。

四人は並んでその前に進むと額を地につけた。

(`・ω・´)「おもてをあげよ」

存外に柔らかな声だった。
恐る恐る顔をあげるとそこには内藤が、いや内藤家が代々仕えてきた藩主の顔がある。

( ^ω^)(このお方が……)

美府之上は大柄な身体に意志の強そうな眼差しをしていた。
内藤の鼓動が高鳴る。

30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/02(火) 00:06:19.09 ID:V8lSSfrhO
横には筆頭家老の引家が、逆隣りには荒巻が座っている。
引家が場に響き渡る声で話しだした。

(-_-)「恐れながら紹介させて頂きます。
    まずは隣の矢追藩から呼びました入即流の渋沢弦一郎です」

( ,_ノ` )「……お目にかかれて光栄です」

(`・ω・´)「うむ。わざわざご苦労であった」

(-_-)「その隣が我が藩の流石一刀流道場から流石弟者」

(´<_` )「流石です。このような機会を与えて頂き心から感謝しております」

(`・ω・´)「うむ」


(-_-)「次が同じく我が藩から直心流の茂良兵馬」

( ・∀・)「全力を尽くします」

(`・ω・´)「そちは前回も出ておったな。期待しておるぞ」

( ・∀・)「勿体ないお言葉、ありがとうございます」

31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/02(火) 00:07:20.56 ID:V8lSSfrhO
次々に名が呼ばれていく。
内藤の額から汗が流れた。藩主を前に完全に畏縮してしまっていた。

(-_-)「最後に武雲流から内藤洞伊蔵です」

そう言うと引家が藩主に何事か呟いた。

(`・ω・´)「ほう、お主が。その節は苦労であった。期待しておるぞ」

(;^ω^)「有り難きお言葉ですお!」

内藤の身体が喜びに震えた。
武士として藩主に声を掛けられただけでも名誉であったが
そのうえ礼を言われたのだ。至上の喜びだった。


(-_-) 「以上四名です。審判は我が藩の剣術指南役、杉浦がつとめます」

内藤の隣に壮年のどっしりとした体格の男が進み出た。

( ^ω^)(このお方が杉浦どの……先生と長年刀を競ったと聞いたお)

33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/02(火) 00:09:10.53 ID:V8lSSfrhO
( ФωФ)「よろしくお願いします。では始めは渋沢と流石、前に出ろ」

渋沢と流石が支度を始め、内藤らは後ろに下がり用意された席に座る。

( ФωФ)「勝負は先に二本取った者の勝ちだ。竹刀以外での攻撃は禁ずる」

( ФωФ)「以上だ。何か質問はあるかな」

二人とも無言で首を振る。既にその目には気迫が漲っていた。

( ^ω^)(入即流。天下無双がいかほどのものか…見せてもらうお)

( ФωФ)「始めっ!」

ついに御前試合が始まった。
場内は一転して静寂に包まれる。
しかしその静寂が保たれるのはほんのひとときのことだった。



続く



('A`)(そろそろか…)
(;´A`)「ぐっ。腹が痛む。今日はこれにて失礼」


質問等


37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/02(火) 00:13:25.76 ID:P1m7wJYhO
最初、参考にしたとか、影響を受けたとか言ってた時代物の作者って誰だっけ?

39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/02(火) 00:16:07.40 ID:V8lSSfrhO
>>37
藤沢周平と高橋克彦、あとは浅田二郎辺りです
特に藤沢周平の影響は大きいですね

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